No.1「罰ゲーム」
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『据え膳食わぬは男の恥』ということわざが存在する。
女が言い寄ってくるのに対し、誘いから逃げる事は男の恥であるという意味で使われている。
これは単純に性的な意味で使われるのだが、俺にとって当分の間無縁の言葉だと思っていた。
そう、昨日までは……
すこし時間を巻き戻してみよう。
今日、俺こと
スクールカーストも低いとは言えず、どちらかというと高い位置に存在しているものの、そこまで自己主張が強いというわけでは無い。
クラスではムードメーカー的な役割を押し付けられたりと、ボッチでもなければ、かなりの人から慕われているわけでも無い。
自己判断だが、容姿もそこら辺を歩いている人と同じレベル。
自慢できる事は特に無いというのが俺の自慢でもある。
そんな俺はいつも通り学校へ通学し、ホームルーム数分前まで友達と喋っていた。
「春に恋人できればおもろいのにな!」
「えー、春くんに恋人できたら遊ぶ時間無くなるじゃーん」
「でも、間切くんが付き合うってなったら佐倉先輩かな?」
「おいおい、なんで俺の出来るはずもない恋人の話になってんだよ……」
机に突っ伏した俺を囲うように近くの椅子に座り出す三人。
周りもあまり気にした様子はなく、おしゃべりだけが進んでいく。
「春くん自己評価低いよねー?結構女子から人気だよ?たしか……7位だったかな?」
「なんだ、その中途半端な順位……」
「でも間切くんと同じクラスにならないとたしかに気にも留めないかも……」
「さりげなく貶されてんなっ!」
「ち、違うよっ!そういう意味じゃなくて……」
「あははwりんりんかわいぃ〜」
「もぅ、狭霧ちゃんまでっ」
女子二人が戯れているとホームルームのチャイムが鳴り、先生が教室へ入ってきた。
一旦解散となり、ボケ〜っと先生の話を聞く。
「じゃあホームルーム始めっぞ。っつっても連絡事項は無い。くれぐれも怪我しないようにだけは気をつけろよ」
「「「ういー」」」
「ハキハキと挨拶ができんのか、このクラスは……」
「春があんなんじゃできませーん」
「春、お前しっかり人の話を聴けよな……」
「なんか俺のせいにされたし……」
あははwとクラスに笑いが広がり、ホームルームが終わった。
各自、授業の準備をして余った時間は歩き回って自由にしている。
「なぁ、罰ゲームを掛けたテストの点数勝負しねーか?」
「どうしたのよ、いつも負ける癖に」
「希望無いんだから諦めた方がいい……と思うなぁ……」
「りんりんとさぎっちゃんの言葉が胸に刺さるぅっ!だが、今回はしっかり勉強してきた。問題ない!」
胸を張る隆二。
鈴と狭霧は俺の方を見てくる。
「まぁいいんじゃね?」
「春くんがいいなら別にいいかなー」
「私も狭霧ちゃんと同じ意見です」
「よっしゃー!決定!」
隆二が顎に手を添え、何かを考え出したかと思えばすぐに閃いたようで、汚い笑みをもらした。
「じゃあ春が負けたら佐倉ちゃん先輩に『胸揉ませてください』って言うでどうだ?」
「なにそれ、マジドン引きなんだけど!でも、私的に有りだと思うっ!」
「さすがにそれは……」
「あぁ、流石に罰ゲームが酷すぎるぞ……」
「その代わりだ!俺も同じことやるし、お前らはなにやる?」
「うーん。高2だし、適当な男に股開いちゃう?」
「狭霧ちゃんそれもちょっと……」
「というか、高2って関係あんのか?」
「ほら、高2って援交とかしててもおかしく無さそうじゃん?まぁ、さすがに冗談ということにしておいて……じゃあ、りんりんなんかある?」
「えぇ……えっと、こっ、告白とか……」
顔を真っ赤にさせて、俺の方をチラチラ伺う。
俺は特にいう事はないので、隆二に判断を任せることにした。
「まぁいいんじゃね?狭霧も同じでいいか?」
「いいよー。だって負けないもん。ねぇ、りんりん♪」
「う、うん。いつも通りにやったから問題ないかな?」
そうこうしているうちに担当の先生がやってきて、授業が始まった。
「今日は前回やったテストの返却と回答合わせだー。出席番号順に来なさい」
鈴と狭霧はなんだかんだ言っても、成績トップクラスである。
俺は中間位だし、隆二に関しちゃ下から二番目くらい。
当然勝負になるはずないと思っていたが、結果は残酷な物だった。
一番手の狭霧はガッツポーズをしてテストを掲げた。
なんと、100点である。
続けて鈴も100点。
そして俺はというと74点。
まぁまぁとった方である。
問題は隆二だったのだが、ここで大きく番狂わせしてしまった。
なんと、99点である。
これに関しては俺だけに至らず、クラスメイト全員が呆然としてしまった。
そして全員ハモってしまった。
「「「カンニングしたな!正直に答えろ!」」」
「そんなカンニングなんて……俺の周りは全員バカばかりでカンニングすら出来ねぇよーだ!」
という隆二に対し、周りの生徒は落ち込んでいる様子である。
雰囲気的に本当にテストの結果が悪かったのだろう。
「あ?ってことはまさかっ!」
と、クラスメイトが一斉にこっちを向いてニヤッと笑った。
当然事の重大さに今更気づいた俺は冷や汗が半端じゃない。
「罰ゲームキタコレ!」
「隆二に……負けただとっ……」
隆二に負けたことによる罰ゲームが俺に下った。
つまりどういうことかというと……
「佐倉ちゃん先輩の連絡先しってる人、春に送ってやって。春は今日の放課後に屋上呼び出して罰ゲーム執行なっ!」
その瞬間三人の女子から通知が届き、佐倉さんの連絡先を手に入れてしまった。
「ぐぬぬ……逃げるにも証人が多すぎる……」
「まぁ、これだけは譲歩してやんよ!」
といい、すぅーっと息を吸う隆二は一瞬間を開けてから叫ぶように呟いた。
「覗き禁止だっ!」
「はぁぁぁ?!」
それはクラス全員が楽しみにしていたであろうことを封印されたことによる不満爆発だった。
だが、みんなよく考えてみると、それも当然だということに気づき、嫌そうにしながらも仕方ない感じで報告を待つことにした。
「というわけだ、頼むぞ、大将っ!」
「わ……わかったよ、やりますよ……やってやりますよ!」
『うおぉぉぉぉ!』
「あのぉ、授業中なんでお静かにしてもらいたいんだけど……」
先生の声が消えるくらいにクラスメイトの歓声はうるさかった。
という訳で、俺は放課後、佐倉先輩を屋上に誘う事になりました。
まだ続きます。
楽しんでくれました?
頑張りますっ!