ロスネフチ、「サハリン1」で日本勢などを提訴

環境エネ・素材
ヨーロッパ
2018/7/24 4:53
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 【モスクワ=小川知世】ロシア国営石油大手ロスネフチが樺太沖の資源開発「サハリン1」で不当な収入を得たとして、日本の官民が出資する資源開発会社など5社に対し、総額891億ルーブル(約1570億円)の支払いを求めて提訴したことが分かった。ロスネフチは詳細を明らかにしていないが、係争が続けば今後の開発や日ロ間の協力が停滞する可能性がある。

ロスネフチは資源開発事業「サハリン1」の権益を持つ5社を提訴した=ロイター

 タス通信などが23日に伝えた。サハリン1の権益を持つ5社が対象で、経済産業省や伊藤忠丸紅などが出資するサハリン石油ガス開発(SODECO)や米エクソンモービル、インド国営石油会社のほかロスネフチ子会社2社を含む。30%を所有するSODECOへの請求額は267億ルーブル。

 訴状を受理したサハリン州仲裁裁判所の発表によると、訴訟は「不当な収入」と「他者の資金の利用」に対して申し立てられた。サハリン1に隣接するロスネフチ管轄の油田との原油生産の分配を巡り、5社とロスネフチの間で意見の相違があったとの情報もある。

 ロスネフチは23日、日本経済新聞の取材に「コメントしない。技術的な問題だ」と答えた。エクソンモービル側は提訴を不服として対抗措置を検討する考えを示した。

 5社とロスネフチは和解に向けて水面下で協議を続けてきた模様だ。金額面などで折り合いを付けるのを待たずにロスネフチが提訴に踏み切ったとみられる。同社は米欧による対ロ制裁の指定を受けて資金調達が制限されており、現金の確保に動いたとの見方もある。

 ロスネフチを率いるイーゴリ・セチン社長はプーチン大統領側近の実力者とされる。過去には同社による企業買収に絡み、法廷闘争や現役閣僚の逮捕に発展した例があり、今回の提訴の行方も注目を集めるのは必至だ。

 サハリン1は2005年に原油生産を開始し、06年に日本などへ出荷が始まった。経産省によると、サハリン1を含むロシアからの原油は日本の輸入量の6%を占める。日本側の関係者は「訴訟は取引に影響しない」としている。日ロ間ではサハリン1以外にも複数の資源開発事業の共同実施が検討中で、裁判が長引けば対ロ投資への懸念が広がる可能性がある。

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