こんな事例を観測しました。
経緯としては、
・「体育館のエアコンについて、2500円電気代がかかるので使うな」という教育委員会からのお達しがきた、とツイートした人がいた
・脊髄反射で教育委員会への批判が集まりまくり、RTもされまくった
・脊髄反射で教育委員会への批判が集まりまくり、RTもされまくった
・Togetterまとめに大量のブクマが集まった
・箕面市長の否定によってデマと判明した
・箕面市長の否定によってデマと判明した
という流れです。比較的よく見る案件ですよね。
これについては以前も書いたんですが、「何かに憤って攻撃しようとするとき、普段よりガードを下げてしまう人」ってものすごーーく多い、というか殆ど人間の本能みたいなものなんじゃねえかと私思ってまして、今回の件はその端的なサンプルなのかなーと感じたんです。
id:tyoshikiさんもおっしゃってますが、はてブの方々ってwebでもかなりリテラシー高い人たちだと思うんですよ。嘘ニュースとか、デマまとめだとか、そういう案件は良く観測されていて、普段から冷静なデマ指摘をされている人も多いと思っています。それでも時にはこういう事例が発生してしまうのは、誘い受け事例の誘因力の高さというか、「これはひどい話だ!」と感じた時の叩きたい欲求の強さみたいなものをつくづく感じるわけなんです。
以前も、「分かりやすい悪役を見つけた時はちょっと立ち止まった方がいい」という話を書きました。下記エントリーです。
手前味噌で申し訳ないのですが、繰り返しになるのもなんなので、ちょっと内容を引用します。
ただ、「分かりやすい悪役がいるニュース」については、特にガードを高くすることを徹底すべきだ、と私は考えている。理由は二つある。・「分かりやすい悪役がいるニュース」は、感情を煽る力が高く、物凄い勢いで拡散されてしまうケースが多いから。
・「分かりやすい悪役」が実際にはおらず、単に誤報か、あるいは情報の偏向であるケースが割と多いから。前者の理由については、皆様経験則としてご存知なのではないかと思う。分かりやすい悪役を見て、正義感を煽られてしまう人は非常に多い。彼らは、瞬間湯沸かし器の様に頭を沸騰させた上で、ソースの確認なく情報をがんがん広めてしまう。それがデマなのかどうかは関係なく、「ソースの確認なく情報を広める」という行為は本来とても危険なのだが、ガードが下がった人はそんなことは気にしない。あたかもあしたのジョーのごときノーガード戦法である。カウンター狙いの戦術であるならまだしも、一般的には彼らのことを「猪突猛進」と呼ぶ。
今回の事例ですと、エアコンについて理不尽な要請をつきつけた教育委員会が、非常に分かりやすい「悪役」ですよね。
やっぱり、普段から反感を持っている組織とか、反感を持っている個人が「分かりやすい悪役」になっていれば、取りあえず叩きたくなるんですよね。その気持ち自体は分かるんです。
webにおいて「分かりやすい悪役」になりやすい主体って幾つかありまして、具体的な組織で言うと「NHK、電通、JASRAC」の三つはすげー藁人形になりやすいなーと思ってます。あと、「政治家、マスコミ、教育組織」も同じような感じで、やっぱこの辺がおかしなことをしているような情報に触れると、ついつい叩きたくなってしまうんですよ。
これはよーーく分かります。私だって全然人のことは言えません。言っちゃってますけど。
これは飽くまで個人的な経験則なのですが、「うわこの話ひどい」とか「こいつ許せん!!」みたいなことを感じるエピソードについて、ソースが明確に提示されていない場合は、大体7~8割くらいは何らかの誇張が入っているか、情報が偏向しているか、最悪話自体が創作であるケースが占めているように思います。デマとまでは言いませんが、いや冷静に考えるとそれちょっとおかしいんじゃない?なんか誇張入ってない?みたいに感じるケースはかなり多いです。
ですので、「これ許せん!!」と思った時程、ちょっと一旦立ち止まって様子を見ることにしています。ソースを確認出来そうなら確認しますし、確認出来なさそうなら追加で情報が出るまで待ちます。または、「後で反応する」ラベルをぺたっと貼っておいて一旦忘れます。
私自身は、これでデマの拡散に加担せずに済んだなーと思ったことが何度もあるんですが、損したなー、拡散しておけばよかった、と思ったことは殆どありません。
ただ、もしこれで何かを損してしまうとすれば、それは多分「速攻でその話に触れることによって得られていた筈の利益」ですよね。脊髄反射することによるメリット。先行者利益。
「速報性」というものは確かに貴重でして、何かの情報、何かの感想を、速く発信出来る人、というのはそれだけで凄い強みを持ってるな、とは思うんですよ。それは、アンテナの敏感さ、情報収集力の高さの証明でもあります。やっぱり、同じ感想を表明している人であれば、先に表明している人の方を展開したくなりますよね。
ここでちょっとはてブの話に移ります。
私、はてなブックマークは良く使いますし、個人的にも好きなサービスではあるんですよ。ただ、はてなスターに限っては正直あんまりいい仕組みじゃないんじゃないかなーと思ってまして。
つまり、
・先に反応した人程スターを集める機会が多く、そのコメントが「人気のコメント」に掲示される為、更に目立ちやすくなる
→脊髄反射することに大きなメリットがあるような作りになっている
→脊髄反射することに大きなメリットがあるような作りになっている
ことが気になっているんです。
冒頭であげた事例は単なる丁度いいサンプルでして、この件自体がどうこうって訳ではないんですが、Togetterのブコメページを見てみると、やっぱり「最初の5,6個のコメント」が大量にスターを集めて、人気コメントにもなっているんですよね。トップブコメは2つ目についたコメントです。
最初の方にコメントをつければつける程、たくさんの人にコメントを見てもらえる。必然、鋭いことを言っていればスターがつきやすいし、ついたスターが更に注目を集めてよりたくさんのスターを集めやすくなる。
自分のコメントにスターがつくのってやっぱり嬉しいし気持ちいいんですよね。たくさんの賛同者が自分に味方してくれるように思える快感。トップブコメになった時の気持ち良さって、やっぱ大きな魅力なんです。
つまり、はてなスターの仕組みって、基本的に先行者に大きなメリットがある構造になっているんです。
これ、うっかりすると、「ソースをいちいち確認しない」ということ、ガードを下げて脊髄反射することに対する動機づけになりかねないなーと。
はてなスターって、この先行者利益の話を置いても、「どちらかというと過激なコメントの方が受けやすい」という傾向もあるように思いまして。過激なコメントほど可視化されやすいという、現状デメリットがかなり大きい状況になってしまっているんじゃないかなーと考えるわけなのです。
個人的には、「はてなスターはあっていいけど、「人気のコメント」欄は要らないんじゃねーか?」とか思っています。あるいは、「人気のコメント」はちょっと時間が経ってから集計する仕組みでもいいのかもしれません。
繰り返しになりますが、はてブ自体は好きなサービスですので、是非今後とも継続して欲しいところではあるんですが、重要なインフラだからこそ「デマを拡散しにくい仕組み」みたいなものはあっていいんじゃないか、と思いまして。皆さまには、「脊髄反射しないことによるメリット」について、是非検討頂けないかなーと考える次第なのです。
長くなりましたが、今日書きたいことはそれくらいです。