テクノロジーを使って不正出品はどこまで見つけることができるか。諦めないメルカリの取り組み

昨今、UberやAirbnbといったプラットフォームの存在感が大きくなってきている。しかし、利用者が増えると同時に、トラブルも増えている。

そのため、プラットフォーマーは利用者の審査や行動の規制/制限、リスクに対する啓蒙や問題発生時の緊急対応といったトラブル対策が求められる。

今回は、そのようなプラットフォームにおけるリスク対応の方針から、今後のプラットフォーマーの未来を考えたい。

目次

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伊豫健夫(Takeo Iyo) ※写真中
大学卒業後、松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)、株式会社野村総合研究所を経て、2006年に株式会社リクルート入社。中長期戦略策定および次世代メディア開発など、大小問わず多数のプロジェクトを牽引したのち、2015年3月に株式会社メルカリへ参画。2016年8月より執行役員。US版メルカリのプロダクトマネジメントを担当後、2017年4月よりJP版メルカリのプロダクト責任者を務める。

山田和弘(Kazuhiro Yamada)※写真左
株式会社ミクシィのカスタマーサポート部門の責任者として約7年間従事。ソーシャルゲーム業界団体・JASGAの立ち上げ、青少年保護に関わるサービス健全化施策を実施。 2014年5月に株式会社メルカリに参画。カスタマーサポート部門のマネージャーに就任し、仙台拠点の立ち上げやカスタマーサポートの業務設計、メンバーの採用・育成を担う。2017年2月執行役員就任。

森山大朗(Tairo Moriyama)※写真右
早稲田大学卒業後、株式会社リクルートやHR系スタートアップ立ち上げを経て株式会社ビズリーチに入社。求人特化型検索エンジンの開発と自然言語処理技術を駆使した検索改善に従事。2016年11月にメルカリに入社してからは、プロダクトマネージャーとしてUS/JP版メルカリの検索改善やパーソナライズ、AIを活用した新機能をリリース。2018年1月からは並行してCustomer Reliability Engineering(CRE)チームを立ち上げ、カスタマーサポート(CS)の技術的な改善を推進する。

プラットフォームはどうすればトラブルを未然に防げるのか

プラットフォームのトラブルと対策の事例として、たとえば、Uberは、ドライバーと利用者の相互評価やドライバー採用時の身元調査を行っている。しかし、それでも事件は避けられず、2016年にドライバーによる乗客の殺人事件があった。最近では、2018年5月にも殺人事件が発生している。

それに対し、Uberも積極的にトラブル対応には力を入れている。24時間対応でのカスタマーサポートの対応や電話番号の匿名化、公的な機関と協力した犯罪者の追跡協力、飲酒運転防止会と協力した飲酒運転の防止。他にも各種のフィードバックデータを使い、ドライバーや乗客の危険行為を予防する仕組みを整えている。今年5月にはアプリに警察への緊急通報ボタンを導入した。

また、Airbnbでも、事件が起こっている。2017年Airbnbを利用してメルボルンに旅行をした男性がホストに殺害された。このような事件を防ぐため、多くの取り組みが行われている。たとえば、利用時に数百ものシグナルから、事件の予兆分析を行いリスク評価を行い、問題が生じる前に疑わしい動きの検知や調査を行っている。また、国内外のホストおよびゲスト情報をテロリスト等のリストと照合し、スクリーニングの徹底に努めている。それ以外にも、防災ワークショップを開催したり、緊急時避難情報の提供、詐欺対策など多面的にリスクをへらす試みを行っている。

他にも、世の中には、旅行や飲食、教育など多くのマッチングプラットフォームがあり、利用者が増えれば増えるほど、トラブルは避けられず、それらへの対応が求められている。今後、プラットフォームの利用者が増えるにつれ、ますますこの問題は大きくなる。

それはプラットフォーマーの責任を問う問題でもある。現状、プラットフォームで起きる問題に対して、プラットフォーマーの責任はどこまでなのか統一された基準はない。そのため、プラットフォーマーは独自に規制を導入するなど様々な手段を通じて、プラットフォーマーとしての責任と社会からの期待に応じ、またユーザーの自由を鑑みながら、より適切なサービスの提供に取り組んでいくことになる。

プラットフォームで避けられないトラブルを未然に防ぎ、いかに健全な取引を実現するか。メルカリにおいても、同じ問題を抱えている。

そこで、今回は、メルカリのプラットフォーム運営方針に関して、事業に深く関わる3人に話を聞いた。

メルカリのコミュニケーション介在方針

ーコミュニケーションの介入に関して、メルカリの考えを聞かせてください

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伊豫: あるべき姿としては、お客さま同士で自由に使って頂けるのが、メルカリらしいプラットフォームだと思っています。

しかしながら、ただ「自由に使ってください」という方針だけでは、やはり安心安全のプラットホームの提供としては足りないと考えていて、トラブル発生の抑止や不適切な出品の制限を行うことによって、お客さまに気持ちよく使っていただける場を作れると考えています。

現状、ほとんどの取引は問題なく行われております。ただ、わずかではありますが「届いたものが思ったものと少し違う」といったことや「不適切な出品」などがあるのも事実です。

そのため、「違反出品の制限や出品監視の強化などによりトラブルを未然に防ぐ」、そして「トラブルが発生してしまった場合のサポートや補償」の観点からも積極的に対応を進め、不安のない取引をしていただける環境作りをしています。

1点目のトラブルの未然対応に関して、例えば、お客さまに悪意がなかったとしても、売ってはいけないものと気づかずに売ってしまうことがあります。そのため、そのような出品の規制は、プラットフォーマーの責任としても対応していく必要があると考えています。

また2点目のトラブルなどの補償に関しては、例えば、「ものが届かない」「届いたものが破損していた」といったケースなどへの補償はルールに基づきサポートしています。スピード感を持った対応にも力をいれており、お問い合わせには、スピーディに対応する体制を整えておりますので、もし取引でトラブルがありましたら、お気軽にご連絡いただければと思います。

ーこのような取り組みの背景を教えてください

伊豫: 2017年の初頭から利用してくださるお客さまの数が急激に増え、それに伴い予想もしなかった使われ方が出てきました。結果としてお客さまと世間に対して、少しでも不安感を与えてしまったのであれば、反省すべきところだと思います。

これはメルカリに対する社会からの期待値が、僕らが思っていた以上に、ある意味インフラとして求められているのだなと理解しました。

海外のプラットフォーマーの事例をみると、サービスが大きくなるにつれ、稀ではありますが、命に関わる事件が起こっています。たとえば、Uberドライバーが乗客に発砲するという事件や、Airbnbを利用した宿泊客がホストに殺害されるといった非常に痛ましい事件です。両社は審査などにより、このような事件を防ぐための対応をしていたはずです。ただ、それでもこのような予想しえなかった悲惨なトラブルが発生しているのも事実です。

メルカリとしては、そのようなことが絶対に起きないよう、ありとあらゆる手段を用いて防いでいかねばならないと考えています。そのため、起こる確率が少ない事件でも防げる仕組みづくりに取り組んでいます。

これは、自動車メーカーの取り組みにも近いかもしれません。自動車は、もし欠陥があると大きな事故にもつながるものです。そのため、自動車メーカーは長い期間をかけ徹底した品質管理を行っています。たとえ起こる確率が少ないトラブルであってもその可能性を想定し、設計をしています。その結果、今では多くの人たちが不安を感じずに自動車を利用しています。それくらいの意識でメルカリも安心して使っていただけるようなプラットフォームを目指しています。

メルカリがより多くのお客さまに安心して使っていただけるようになるためには「皆さまの期待に応える」だけでは不十分で、今後、想定される課題に対しても「先んじて対応ができる」ようにしっかりと対策を施し、目に見えない安心感を与えられるようなプラットフォームを目指すべくすすめています。

例えば違反出品物の出品制限に関しても、今後起こりうる最悪のケースも想定し、網羅的・積極的に検討を行っています。

メルカリで売れないものの理由

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ー違反出品物の出品規制の方針に関して、詳しく教えてください

伊豫: お客さまのニーズと法改正などにあわせる形でこれまでも都度方針をアップデートしてきましたが、今までは「サービスとしての使いやすさ・手軽さ」と「安全・安心なプラットフォームの構築」はバランスを取りながらすすめていました。しかし、今回、改めて「お客さまの安全・安心」を最優先に考えるという方針は変えないことを決めました。

その施策の1つとして、出品物の出品可否についての見直しについて、法や関係省庁、お客さまのご意見を元に、これまで以上に積極的に取り組んでいます。

繰り返しになりますが、ほとんどの取引はスムーズかつ安心安全なお取引です。ただ、ほんのわずかでも法的、倫理的に望ましくない出品や取引があれば、安全・安心なプラットフォームとしては完全ではないと思っています。そのため、特に優先度の高いものから重点的に対策を講じています。

具体的には、「人命」「犯罪」「未成年トラブル」。この3つで、問題が起こる可能性をもったものに関しては、積極的にルールを作っていこうとしています。

ー各種の規制方針を詳しく聞かせてください。「人命」に関わる規制はどのようなものでしょうか

伊豫: 例えば、食品は口にするものなので、人命のリスクがあるものです。そのため、今回、メルカリは安全性を最優先し、多くの出品物を禁止にしました。たとえば、保健所許可や営業許可のない食品、賞味期限/食品表示の記載のない個包装食品、生の食肉や魚介類など広い範囲で出品禁止物としています。

参考:主な出品規制をしている飲食品

・開封済みの食品(複数の開封済みの食品を詰め合わせにする場合も含む)
・消費(賞味)期限の記載のない食品
・消費期限および食品表示の記載のない個包装食品
・消費期限が既に切れている食品
・消費期限が到着後1週間以内に切れる食品
・生の食肉、魚介類
・保健所などの許可がない加工食品、その他食品類
・健康増進法に違反する食品

ー「未成年のトラブル」「犯罪」に関してはいかがでしょうか

伊豫: 未成年がトラブルに巻き込まれ得るものや未成年の購入を推奨しないものに関しては制限を設けているものもあります。たとえば、お酒やエアガンなどの出品物については、購入時に年齢確認を設けることで、未成年の購入を防いでいます。またタバコは未成年に限らず出品禁止物としています。

山田: 「犯罪」に関しては、まず法律に抵触するものに関しては当然ながら必ず対応することとしています。それ以外にも、利用者の安全を守るために積極的な監視と自主的な対策も行っています。 これは、ゆくゆくは悪用される可能性が高いものや、直接ではなくても違法行為の幇助にあたるものなどに自主規制をいれようという犯罪の未然防止を目的としています。

ー禁止されたものが出品された場合は、どのような仕組みで対応をしているのでしょうか

森山: 規制の仕組みはいくつかありますが、例えば規制に関する過去の大量のデータを学習したAIが、出品された商品をリアルタイムで監視しています。

AIによって、効率化だけでなく、不正出品を発見する精度も上がっています。例えば、正規品ではないブランドの商品を見つける時には、目視よりも、AIの方が高い確率で見分けられるのです。

一方で滅多に出品されず、なかなか見つけるのが難しい不正出品物もあります。ただ、そのようなものでも、できる限り検知できるように、何種類か不正の事例を元にAIが全てを監視しています。このような仕組みは盗品の監視にも活用しています。

ー盗品と判断するのは、難易度の高い印象があります。どういった仕組みを作っているのですか?

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山田: 盗品や不正流通品を出品する方の傾向はあります。詳しくは言えないのですが、そのような傾向を分析し、、機械学習を活用して盗品の出品を制限する仕組みを導入しています。

森山: ただ、「このようなケースが盗品でした」という事例は非常にわずかです。そのため、盗品を発見するモデルは、試行錯誤しながら作っている最中ですね。AIは大量のデータを必要とするので、盗品に限らず過去の出品物のデータを元に分かってきた傾向を監視ルールの中に盛り込んで、実際に自動で検知しています。

ー盗品や不正流通品対策に力を入れる背景をお聞かせください

山田: 警察からの照会件数などを考えると、実際に盗品や不正流通品が出品されるケースは全体の取引量からするとごくわずかだと考えています。しかし、そのわずかなものでもきっちり対策をしていきたいです。

盗品や不正流通品が出品されるようなマーケットプレイスは、決して健全なプラットフォームではないですし、お客さまに安心して、好んで使ってもらえるようなサービスでは無いと思っています。何よりも、犯罪に使われたくないという思いがあります。

伊豫: 我々はメルカリを通して社会をよりなめらかにして、個人をエンパワーメントしたいと思っています。そのなかで、少しでも犯罪の助長をしてしまっている可能性があるとしたら、当然ながら本意ではないですし、メルカリがオーナーシップを持って犯罪を防いでいかねばと思っています。

一つの対策例としては、「問題のある取引」を見つけるために、元々行っていた外部監視を更に強化し、最近では外部のSNSや掲示板、ブログなどをはじめ、メルカリ以外のモニタリングにも注力しています。

伊豫: 時には、お客さまの需要やメルカリの事業成長と反するところがあったとしても、お客さまの安全や社会的責任を優先した出品物の規制に取り組んでいます。

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ーとはいえ、不正出品をすべて発見するのは難しいのではないですか

山田: 現状、すべての不正出品を見つけ出せてはいないかもしれません。しかしながら、100%に向けて努力しているところです。まだ完璧ではないかもしれませんが、できる限り、先んじて対応できるような仕組みを作り、更に日々改善を行っています。

ーこれらの出品規制に関する取り組みに対する思いをお聞かせください

伊豫: より多くのお客様が利用してくださることに伴い、出品の種類も増え、想定していない出品も考えられます。そう考えると、もし対策が遅れれば、大きな事件に繋がる可能性もゼロではありません。

我々としては、そういったことを絶対に起こすことのないよう、小さな危険性であっても強い危機感を持つ必要があります。出品規制にとどまらず、利用の啓蒙などを含めプラットフォームの安全性担保に向けて取り組んでいきます。

プラットフォーマーとして目指す世界

ープラットフォーマーであるメルカリとして、目指す場の方針はありますか

山田: CS(カスタマーサポート)として意識しているのは、やはりお客さまの安全・安心であったり、利用して困ったことがある時に「スムーズにトラブルが解決していくから、メルカリを使い続けよう」と思っていただけるようになることです。

例えば買ったものが届かない時や、梱包時や配送などによる破損に対して補償を受けられたりとか、お客さま同士のやり取りで予期せぬトラブルが起きた時、スムーズに取引をキャンセル出来るようにするといったことですね。

森山: 他にも、メルカリ利用時に困っているお客さまへのサポートも検討しています。

例えば、配送ページで滞在時間が長かった場合に「配送で困っていませんか」という形で、質問を行い、メルカリ利用時におけるストレスを少しでも減らせるような取り組みですね。

伊豫: また今後は、マイナスを0にする施策に限らず、0をプラスにするような取り組みも積極的に進めていきます。

一例として、会話の長さや種類などプラットフォーム上で交わされた言葉からお客さまの感情を推定し、トラブルを未然に防げるようにしていきたいと思っています。お客さま同士のトラブルをキャッチして、介入するといったことです。

仮に、「届いたものを開けてみたら想定と少し違っていた」といった場合があるとします。

このような場合、必ずしも、お客さま同士で「では、私が事務局に連絡します」とスムーズにコミュニケーションが進むわけではありません。またお客さまが感情的になってしまうこともあり、事務局には連絡がこないこともあります。そのような場合にメルカリが速やかに仲介に入って問題を解決する、といったようなこともできればと思っています。

そういう事前対応まで出来るようになれば、よりアクティブなサポートが実現するのでは、という気はしていますね。

森山: 実際に、テクノロジーでコメントの監視もして、トラブルを防ぐ努力をしています。そうすることにより「このコミュニケーションは80%の確率で感情的になっている」といったことを理解し、必要に応じて、介入の支援をできるようにしています。

ー少し話はそれますが、私自身も経験があるのですが、お客さま対応をしていると、お客さまから強い言葉もいただくこともあるかと思います。そういう時、私だとへこんでしまうのですが、CSのメンバーはそういうことはないのでしょうか

山田: 特に難しい案件ばかり対応しているチームメンバーの疲弊感は、やはりかなりあると思います。お客さまの問題を解決したいと努力しますが、1日中、強い言葉を頂いた時や難しい問題に対峙した時は、やはり心が挫けそうになります。

そういう時に、お客さまの悩みを解決したいという思いと同時に、サービスを作っている人間の顔が思い浮かぶことがあります。メルカリでは、サービスを作る人とCSは近いので、実際にサービスを作っている人を知っていて、あの人が頑張って作り上げているサービスなんだと思うと、「まだ頑張れる」と感じると感じることはあります。「あの人が作っているサービスをサポートしているんだな」という感覚が、モチベーションになっていたりしますね。

しかしなによりも、我々CSはお客さまのサポートをする者として、ただただお客さまに納得して安心してご利用いただきたい、その純粋な気持ちが私達CSの原動力となっています。

テクノロジーによる可能性

ー今までのお話を踏まえると、今後、AIを含めたテクノロジーの活用がますます増えるかと思います。今後、テクノロジーを使って、やりたいことはありますか

森山: 1つとして、例外検知というものをやりたいと思っています。いま、メルカリでは、「感動出品」という名前で出品の支援をしています。過去のデータを使って、お客さまが出品をした時にその商品を特定することによりスムーズに出品ができるようにしています。

それとは逆で、通常のデータとは異なる商品が出た場合に、「怪しいのではないか」という検知をできるように検討しています。

ーそれは画像を用いてですか

森山: あらゆるものを含めます。詳しくはいえないのですが、かなり多様なデータを使っています。人力でやるのは不可能なレベルの検知です。テクノロジーで例外を見つけることができる仕組みを取り入れていきたいと思っています。Airbnbでも予約時に数百のシグナルから、問題のありそうな方の予約を検知する仕組みを導入しているそうです。

山田: テクノロジー活用として、監視の仕組みであったり、CSで使うツールであったり、全て内製で作っているというのは、メルカリのこだわりとしてあります。それによって対応のスピードが上がったり、精度がアップしています。そういう点では、CSの基盤は、そのような内製ツールによって支えられています。

森山: あと少し話はそれますが、法律を補完するものとしてテクノロジーを活用できないかと考えることもあります。

もともと法律で保護したかったものが、時代が変わり、その法律の意図通りにはワークしていないと感じるときがあります。例えば、銀行口座を開く時には、本人確認が求められますが、住所にハガキを送るといった方法が取られています。しかし、今の時代では、それは非常に手間がかかることですし、他でより簡易にかつ精度の高い本人確認をする手段もあるのではないかと考えています。例えば、免許証や顔写真をオンラインで確認するといったことで。

※取材後にオンラインでの口座開設を可能とする方針を決めるという発表がありました。

テクノロジーを使うことによって、法律が保護したい内容を保護の水準を下げることなくより確度高くかつ簡易に解決できるのではないか、という思いがあり、そのような点は引き続き考えていきたいと思っています。

諦めないチャレンジ

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伊豫: 改めてですが、現状はほとんどの取引が問題なく行われている状態です。その上で、ごくわずかな問題に関しても起こらないようなプラットフォームを目指しています。

そのため、メルカリでは、今いったような、CSの人力やツール、AIの仕組み、テクノロジーなどをフル活用して、総合的に問題に取り組んでいます。

今後、メルカリで得たノウハウや知見はAPI等を通じてオープンにして、業界全体で取り組むといったことも大事かもしれません。近い事業をされている方みなさまと一緒に「このロジックをみんなでブラッシュアップしようよ」という取り組みをすることで、業界全体の底上げも可能なのではないかと考えています。

「この仕組みを導入していることが、オンラインCtoCコマースの義務です」ともしなれば、精度も高く、お客さまへの制限も最小限にできます。

森山: ある出品者は、メルカリでも、他社のプラットフォームでも不正流通品を販売していた、というケースもありました。もしそのような情報が横断でスムーズに共有できていれば、事前に摘発ができたかもしれません。あるいは、警察や外部事業者とも連携し、事前に不正流通品の情報を共有いただき、その不正流通品に集中的に対応するといったこともできるかもしれません。

「不正流通品の出品は絶対に防がなくてはならない」ことは間違いないのですが、「出品元が明らかでない=不正流通品の可能性あり」と短絡的に考えるだけでは、対象があまりに広範になってしまい有効な対応は困難です。そこで、不正流通品に関する情報が事前にわかっていれば「この出品物は怪しい。このような出品行動は怪しい」といった目星をつけることはできると思います。そういう点で、このような情報連携も解決方法の1つだと思います。

ーそこは諦めていないと

伊豫: はい、簡単な問題ではないですが、私たちが諦めずに努力を続けるのはもちろん、社会を巻き込んで取り組んでいければ、解決できていく問題だと信じています。

ーありがとうございました。

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  • Written by 近藤世菜、 原田和英(Mercari, Inc.)
  • Edit by 原田和英(Mercari, Inc.)、笹木葉子(Mercari, Inc.)
  • Photo by 熊田勇真、稲川亮輔(Mercari, Inc.)