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感想『BLEACH』 僕は、ついてゆけるだろうか 実写映画版BLEACHのスピードに

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「青春ささげた系」の作品はいくつかあるんですけど、私にとってのそのひとつが、『BLEACH』。

 

BLEACH 1 (ジャンプ・コミックス)

BLEACH 1 (ジャンプ・コミックス)

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お年玉を注ぎ込んで単行本を大人買いしたり、藍染が黒幕だと判明した時はクラスメイトと大興奮したり、アニメのオリジナル展開に一喜一憂し、消失編における一護の戦闘コスチュームデザインの攻めっぷりに苦笑いし、そして万感の思いと共に終わっていった作品、『BLEACH』。

 

色々とネタにされることも多いけれど、作者・久保帯人先生の突出したデザインセンスと演出力、キャラクター造形の巧みさや能力バトルのジャンプ的醍醐味など、やはり何度読んでも大好きな作品である。

 

映画 BLEACH 写真集 DEATHBERRY DAYS DOCUMENT

映画 BLEACH 写真集 DEATHBERRY DAYS DOCUMENT

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そんな『BLEACH』が実写映画化するのであれば、観に行かない訳にはいかない。

ハリウッドに権利が渡ったとの話もあったが、紆余曲折を経て和製アクション映画として完成。近年、『るろうに剣心』を筆頭に「アクションが結構すごい実写映画化」がポツポツと続いているが、その最新作にも数えられるだろう。

 

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率直な感想として、「普通に良かった」。

漫画やアニメの実写映画化が時に陥る事故のような惨劇とは、はるかに遠い。シナリオも映像も至る所に創意工夫が散りばめられており、原作ファン・アニメファンの立場でもある自分も、概ね満足することができた。

 

何より、主人公・黒崎一護を演じるのが福士蒼汰、というのが良い。

福士蒼汰が不良チックな高校生を演じるとあっては、どうしても『仮面ライダーフォーゼ』の如月弦太朗が脳裏によぎる訳だが、それも含めての絶妙な安定感であった。

 

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飄々とした佇まいながら、芯は泥臭くて熱血な、線が細いスマートな高校生。そんな一護というキャラクターを、見事に体現していたと思う。オレンジと言い張りながら茶髪にしたのも良い判断。

 

加えて、杉咲花のルキアも中々の完成度。

 

彼女の演技はドラマ『花のち晴れ』で最近まで毎週観ていたけれど、表情の演技が繊細で、何より声が好きですね。ちょっと舌っ足らずな雰囲気もありながら、ハキハキと発声する感じ。

彼女の持って生まれた雰囲気とその演技プランは、小柄な妹属性ながら一護を完全に尻に敷く朽木ルキアというキャラクターと相性が良いと感じた。

 

杉咲花、「ハッ」とした時の顔が良いんですよね。凛々しい。予告でも印象的だった、「後方から木刀で斬りかかる一護を振り向かずにテキパキとさばいていく」シーンなんか、とってもルキアしてました。

あと、実写版ルキアの右の前髪を垂らす髪型、左の前髪が垂れている白哉兄様との対比なのかな、とも思ったり。兄様の影響か、掟をしつこく主張するキャラになっていたのは、良い改変でした。

 

江口洋介の一心は続編を見越したかのようなキャスティングなので、むしろ貴方みたいなワイルドナイスガイが普通にパパやってるの違和感すごいよ、という感じ。

 

続く長澤まさみは、原作の「黒崎家の圧倒的シンボル」として崇められるキャラクターに引けを取らない存在感とオーラで、はまり役だったと思う。短い出番ながら、象徴としての完成度が高い。

リビングに飾ってあるブロマイドの牽引力にも良い意味で笑ってしまう。

 

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さて、本作のトピックは大きくふたつ。

 

まずひとつは、原作からのシナリオの再構成。

私は、元が週刊連載の作品って、実は実写化にはあまり向いていないと思っていて。それは、「毎週の盛り上がり」「毎週のヒキ」という構成手法が、約120分で語る映画という媒体と食い合わせが悪いから。

だから、過去も沢山の実写映画が、「エピソードを並べただけ」の串団子状態に陥ってきた。

 

今回の『BLEACH』は意識的にそれを避けるような構成を採用している。

原作序盤の盛り上がりエピソードだけをピンポイントで抽出し、時間軸や語り口を細かく変えながらひとつの映画としてまとめあげる。織姫やチャドに石田といったクラスメイトらの背景をばっさりカットして、一護とルキアの「護り護られる関係」にウェイトを置く。

こうすることで、人気キャラクターである恋次や白哉をルキアのバックボーンと絡めて早期に登場させられるし、原作では結局一護が倒しきれなかった母親の敵(かたき)・グランドフィッシャーと遂に正式に対決することができる。

 

しかし一方で、その若干詰め込みすぎた感じが所々にしわ寄せを生んでおり、特に石田雨竜というキャラクターは彼が持つ美味しいところを表面的になぞっただけで終わってしまった。

吉沢亮が熱演しているだけに、非常にもったいない。

 

また、恋次らを早めに登場させた弊害か、一護が普通に死神代行してホロウを倒すシーンが皆無に近い結果になってしまっている。

「死神代行篇」特有の、学園生活しながらちょっとコメディテイストでホロウを斬って人助けをしていくあのニュアンスが、成果物からはあまり感じられなかった。

 

まあ、グランドフィッシャーとの因縁に絞って、そこはしっかり過去と向き合わせた上で清算させているので、あえてこっちを取るという判断なのだろう。

 

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もうひとつのトピックは、アクションシーンにある。

 

昨今、ワイヤーを駆使した邦画超絶アクション映画が増えてきたが、本作もかなりの凝りようであった。

死神だからこそできる人間離れしたアクションを、軽快なステップと空中を大きく移動する縦軸で解釈。くるくる回って飛んで跳ねてガキンガキンと剣が交わるあの感じは、確かに『BLEACH』のそれだった。キャスト陣も相当練習を積んだものと思われる。

 

目を見張ったのはクライマックスのセット。かなり大規模に組まれていたのが見応え抜群であった。

 

「日常風景をバックに戦うと死神たちのコスプレ感が増して浮いてしまう」という意見も目にしたが、自分はこれ、むしろ逆なんですよね。『BLEACH』の序盤って、日常風景である街並みの「見えないところ」で戦っているのが醍醐味に感じていて、その食い合わせの悪さというか、むしろ浮く感じが良いというか。

恋次と一護の初戦が住宅街の夜道とか、メノスが普通に市街地に出てくるとか、そういうのが好きだったので、実写版における「駅前セット」は大好物でした。

 

 

あと、セットを豪快に破壊しながら暴れるグランドフィッシャーは、怪獣映画チックな魅力もありましたね。

予算的に厳しかったと思うけど、もっと引きの画でも観たかったな。

 

見所である斬魄刀の解放もありつつ、セリフのチョイスも原作ファンにはニヤニヤで、思うところが無くは無いもののストーリーも概ね再構成が成功していて、やはり「普通に良かった」作品である。しかも、ここにフォーゼキャスティングボーナスが超銀河フィニッシュで乗っかってくる。

まあ、全体的に演出が湿っぽくて、テンポが良いシーンもあれば間延びしているところもあったり、もう少しトントントンと進行して欲しかった印象もある。

 

「普通に良かった」は、反面、「突出して熱く語れる部分」が少なかったことも意味してしまう。スマッシュヒットからの続“篇”に期待したいが、果たしてどうなることか・・・。実写で動く十三隊、観たいよなあ。

 

BLEACHイラスト集 JET (愛蔵版コミックス)

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