「社内のロボットスーツをかき集め、大急ぎで災害現場向けにプログラムを書き換えました」──筑波大学発のベンチャー、サイバーダイン(茨城県つくば市)の中澤泰士さん(営業部)はそう振り返る。
2018年6~7月に発生した西日本豪雨の被害を受けた岡山県で、装着型のロボットスーツが活躍した。がれきや泥の撤去など、物を持ち上げたり運んだりする重労働で作業員の負担を軽減したという。
同社が開発しているロボットスーツは、人が動こうとした時に生じる微弱な電気信号(生体電位信号)を皮膚表面に取り付けたセンサーで検出。その信号に応じてモーターを動かし、人の動作をアシストする。今回使った「作業支援用」は、工場や建設現場などで腰の負荷を軽減することを想定したものだ。
きっかけは1件の問い合わせだった。7月11日、サイバーダインの販売パートナーである井原精機(岡山県井原市)から「社員20人の家屋が被害にあった。災害支援活動にロボットスーツを活用できないか」と相談があった。サイバーダインは社内にあるロボットスーツをかき集め、計12台を用意。災害現場の過酷な環境に合わせるために、動作プログラムも短時間で書き換えた。
12日早朝、同社社員が社用車にロボットスーツを積み込み、つくばを出発。同日中に岡山県入りし、13日から災害現場に実戦投入した。
現地では、スコップでかき出した泥を土のう袋に詰めたり、がれきが入った袋をトラックの荷台に積み上げたり、家財道具を屋外に搬出したりといった作業でロボットスーツを活用した。装着した人からは「腰の負荷が軽減したことを実感した」「1日の作業を終えても、疲れが残らなかった」といった声が上がったという。腰痛持ちだという中澤さんも、腰痛を発生させることなく3日連続で活動できたと話す。
「サイバーダイン社員とボランティアスタッフに装着してもらいました。お互い顔を合わせるのも初めての現場でしたが、不思議と連帯感が増した感じがしました。物珍しさもあり、移動中に他のボランティアの方々や、被災した方々から注目され、よく声を掛けられました。暑いところなど過酷な環境下でも、お互い笑顔で話していたのが印象に残っています」(中澤さん)
現場で実用性が評価されたことで、ボランティアからは他の被災地でも使いたいといった声も寄せられたという。
「ボランティア活動は重労働作業がほとんどで、腰への負担は想像以上に過酷なものでした。(ボランティアスタッフには)女性や高齢者もいるため、ロボットスーツのサポートが欠かせません。今後は行政による導入支援の仕組みも整備される必要があると感じています」(中澤さん)
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