美少女とイチャイチャしたい!……まあ、ある種の夢ですよね。美少女はイケメンに置き換えることも可。人によってはオジサマだったり、オバサマだったり、はたまた別のサムシングだったりするかもしれないですけどね。
そんな欲望を叶えつづけてきたのがゲームでしょう。美少女・乙女ゲームはオタク文化発展とともに成長してきました。ま、この辺はワタシがいまさら語っても仕方がないことでしょう。
ただひとつ言いたいのは、大きく成長すればは当然海外のゲーマー、クリエイターに届くようになるということ。今日、美少女・乙女ゲームは海外にも根強いファンがいるジャンルへとなり、海外産の作品も作られるようになりました。爆発的なヒットを飛ばす名作もバシバシ生まれていますから、すごいことです。この流れを受けてでしょうか?近年では日本の美少女ゲームデベロッパーもPC、Steamへと参入しています。今後、美少女・乙女ゲームはニッチなジャンルではあるものの、さらなる盛り上がりを見せることでしょう。
さて、皆さんのまだ知らないかもしれないPCゲームの世界を紹介する『PCゲーム極☆道(きわめみち)』。今回はそんな海外ディベロッパーから近日発売され、発売すぐ話題となった美少女育成ゲーム『Lu Bu Maker 여포키우기』(以下『呂布メーカー』)を紹介しましょう。
『呂布メーカー』を開発したのは韓国の美少女ゲームデベロッパーTALES shop。このディベロッパーは韓国スマートフォン用のゲームを開発してきた会社で、今年で設立6年の実力派です。実は日本ではSteamでのみの展開ですが、本国ではスマートフォン向けにもリリースされています。
そんなTALES shopには自社作品を日本進出させたいという野望があるようです。なんと会社紹介にまで日本進出についての項目があるほど。
実はすでに『我が家の子猫ちゃん(原題:우리집 아기고양이)』という作品が日本の株式会社賈船によってスマートフォン向けに展開されており、現在第2弾として『僕の彼女は人魚姫!?-My Girlfriend is a Mermaid!?-(原題:방구석에 인어아가씨)』がNintendo Switch向けに開発が進められています。今後、日本でも注目されるディベロッパーになるでしょう。本作もそうした日本進出という野望のため、韓国語、英語実装についで、日本語を実装してくれています。
すでにお気づきの方はいらっしゃるでしょうが、本作は三国志演義をベースにした作品です。ぶっちゃけ日本語なんかより、中国語ローカライズしたほうがぜったいに商機があるんです!これが、日本への並々ならぬ情熱……!日本人のオタクとして、遊ばずにいられますか!
『呂布メーカー』は三国志において最強の武将、呂布を育て上げる育成ゲームです。この美少女が何を隠そう暴虐の限りを尽くす武将、呂布奉先です。韓国の声優さんによるフルボイス音声までついています。めっちゃかわいい。
……オタク文化に浸かりすぎたせいでボクは呂布が美少女なことに「ああ。そういう設定なんだね。」となんの疑問も抱かないんですが、普通の方はいまごろ疑問符でいっぱいでしょう。導入のストーリーをさらっとお伝えしますね。
21世紀の現代人であるプレーヤーはなぜか三国志の時代へ飛ばされ、董卓へと転生した。しかもこの世界は自分の知る三国志と違い、三国武将たちが全員女の子という異世界だった。プレーヤーは乱世を生き残るため、がむしゃらに生き抜いてきた。すると、不思議と自分の知る史実の董卓と同じ道程を歩んでいた。
なんとか洛陽入りを果たし呂布を手中に納めたプレーヤーだったが、プレーヤーは当然知っているのだ。
自分は数年後、呂布に裏切られ首を切られる。
自分の命を守るため、プレーヤーは思いつく。この粗暴で、世間知らずで、わがままな呂布を一から育てなおそう。学をつけて敵武将にだまされないように、信頼させて裏切られないように、呂布を改造するのだ!
プレーヤーは呂布を養子として迎え入れることにした。董卓の生存をかけた呂布育成計画が始まる!
……転生モノラノベかよ!「美少女だらけの三国時代で董卓になったオレだが、愛娘の呂布に殺されそうです」とかそんな感じのタイトルか! いやー。あまりにも完璧な転生モノの文脈でビビりますね。隣国でもこの文脈が通じ、ある種ジョークとして成り立つというのが驚きですね。
さてさて呂布という最強のカードであり最悪のババを手に入れたプレーヤーは、彼女を再教育しなければいけません。なぜって?このままだと死ぬから。
しかしわがままな呂布を教育するのは大変です。すぐサボるし、臣下や領民からの信頼は最悪です。しかもすぐに人を殺したがる呂布は何をするかわかりません。そんな彼女をしっかりと教育しつつ、かといって嫌われないよう、最新の注意を払って17歳から22歳までの4年間を彼女と過ごします。
これまで様々な美少女を育てよう!というゲームがたくさん生み出されましたが、ここまで切実な設定のゲームはなかなかありませんよね。なにせ死にますからね!謀反起こされますからね!
ゲーム内容はシンプルです。タイトルから分かるとおり『プリンセスメーカー』シリーズをフォローした作りで、同作のプレーヤーなら違和感なく遊ぶことができます。
プレーヤーは呂布の1ヶ月の予定を10日刻みで3つ選び、呂布に実行させます。呂布は父であるプレーヤーの指示をしぶしぶながら従い、予定をこなします。
予定をこなす呂布がピコピコ動くアニメーションで描かれるのがかわいいですね。このへんもかなり本家を意識した作りです。余談ですが、休暇に出ると一枚絵がバーンと出るところなんかめっちゃそのままで笑ってしまいました。
予定をこなす呂布ですが、渋々ですから最初はサボったり単純に失敗したりします。呂布の教育には呂布が仕事で稼いできたお金を使うので、サボられると露骨に影響が出ます。
頼むから真面目に働いてくれと思いますが、呂布は人殺し以外まったくできないバカなので失敗もサボるのも仕方がありません。彼女の初期パタメータは体力が100、武芸が200で、あとは10か0ですからね。そんなやつに仕事させるのが無茶ってもんです。
呂布の教育に国庫から予算を割り振るなんてことをすれば、それこそ史実の董卓が巡ったように領民の支持を失い失脚しますからね。じっと耐え、彼女が育つのを待つ必要があります。
ただ厄介なのが、休みの日です。休みを入れなければいかに呂布と言えど疲れてしまいます。でも、休みの日に呂布を放ったらかしにしたら、何をしでかすかわからないんですよ。放置するとランダムイベントが発生する可能性がでてきて、きまぐれに賊を殺してきたり、洛陽なんかいやだと愚痴ったり、様々なバッドステータスを持ち帰ってきます。
こうした行いを抑えるには、金を上げておとなしくさせるか、監視をつける必要があります。当然、監視すれば呂布は嫌がります。嫌がらせ続ければ当然プレーヤーの首は体とオサラバすることになります。でも、呂布が真面目に働かない以上、おとなしくさせるのは難しいわけで……。
序盤の金策をいかにするか。それが自分の命を守る最初の第一歩というわけですね。まあ、嫌がっていた仕事も能力が上がるにつれサボらなくなってきますから、案外お金問題は解決するんですけどね。粗暴だ!わがままだ!といいつつ、なんだかんだ聞き分けのいい娘なんですよ、ウチの呂布は……。実際すぐに軌道に乗って、呂布のいい子ちゃんぶりが発揮されます。
ただ、能力が高まってくれば呂布という武将の価値はぐんぐんと高まっていきます。有力な武将が董卓とかいう地方上がりに従いていることを、他の武将が見過ごすはずがありません。劉備やら曹操やらがバンバン呂布を引き込もうと、あるいはプレーヤーである董卓を失脚させようと呂布に接触してきます。
愛娘に寄ってくる悪い虫を退け、呂布ちゃんの忠誠を守ることができるのかどうか?プレーヤーの君主としての、パパとしての能力が試されます。
もうね。このゲームは発想の勝利ですよ。呂布という三国志史上もっとも強く、もっともわがままで、もっとも危険な武将をですよ? 女の子にして、なおかつ娘にしたら、強さもわがままさも、ぜーんぶかわいく見えてしまう。俺がこの子を立派に育て上げるんだと、親心まで芽生えてしまう。このゲームは、そういう発想で作られているんですよ。
4年間、手塩にかけて育てた呂布がね。ワタシ〇〇になる!と自分の人生を決めるわけですよ。自分の命さえ奪いかねないほど乱暴でわがままだったうちの娘が、ついに独り立ちしたんです!これが、嬉しくないわけがない!!
で、もし呂布の心が離れて首を切られてしまったとしても、それはもう呂布のせいじゃない。プレーヤー、父親である自分の責任ですよ。うまく導いてあげられなくてごめん。いわまのきわにあっても、呂布に寄り添ってしまうわけです。
気づけばプレーヤーはもう、パパになっている!そんなね。呂布という誰しも知っている人物の隠れた「ムスメみ」を見つけ出したゲームなんですよ。天才か!
楽しいゲームですが、予定を決める以外にほとんどやることがなく、育成期間も短いゲームです。なので、単調さは感じてしまいますね。ただ、周回プレイをしてエンディングを集めることも目的のゲームなので、短く遊びやすく作っているのかな?という印象もあります。
各エンドにはそれぞれ個別のクリア報酬アイテムが存在し、遊ぶたびにどんどんとクリアが楽になっていくのもこのあたりを意識していると感じます。なんせ、バッドエンドにすらクリア報酬がありますから。海外ではスマートフォンでも展開している作品らしい、気軽に楽しめる作りと言えるかもしれません。
三国志演義のネタもちらちらと顔を見せるので、単調ながらも飽きさせない工夫をしている作品です。ちょっと評価は分かれるかな?という気はしますが、ぜひ遊んでほしい作品です。
こういう天才の仕事が海を超え日本進出を狙っているというのは、プレーヤーとしてはうれしい限りですね。今後もさらなる天才の登場に期待をしたいところです。