俺は超越者(オーバーロード)だった件 作:コヘヘ
<< 前の話 次の話 >>
早朝、私はバレアレ家に来ていた。
ンフィーに以前、頼んでいたポーションを受け取りにきていた。
「ありがとう!ンフィー。これで村の人達の疲れを癒せるわ!」
ンフィーにお願いしていた。このポーション。
アインズ・ウール・ゴウン様から頼まれたお仕事の休みを使って作って貰った。
「そ、そうかい…それは良かった!」
顔を赤くするンフィー。気持ちを利用するのは心苦しい。
今回作って貰った、働きづめの村人のための、たくさんの『滋養回復用』ポーション。
訓練場の改修を何人かに『お願い』していた。それも少しだけ『急いで』。
嘘ではない。『村』に必要なことだから『急いで』貰っただけ。
誰もが納得している。この『村』を守る『訓練』の大切さは。
...『利用』したわけではない。『早めた』だけだ。
ただ、それは言わなくてもいい。
…ゴウン様が人間にもなれるのは知っている。『体』で知っている。
だからこそ、『成果』を上げないといけない。
『村』として、『村長』として、
ゴブリンさん達の『指揮官』としてできる私の『全力』は行っている。
両親の応援、何よりゴウン様より頂いたこの『腕輪』がなければできなかっただろう、
色んな事を学ぶ時間を確保することなど。
上に立つ者として必要最低限の知識、ブリタさんの冒険者時代の『経験』。
ンフィーの薬師、錬金術師としての『技術』。
ラッチモンさんの野伏(レンジャー)としての『知識』。
『経験』と『知識』、『技術』を用いてジュゲムさんたちと行った森での『実践』。
その成果は『村』にとって必要なものであり、必要なものになった。
元々強力だったジュゲムさん達は、『村』としての『戦力』の要にはなっている。
皆、私の大切な『家族』とも言える存在だ。
『村』に『溶け込めた』ホブゴブリンのアーグ君やオーガ達も含めて。
でも、足りない。
アルベド様は私のことを大切な『友人』と言ってくださるが、わかる。
『私』はそこで終わりだと。きっとアルベド様は思ってらっしゃる。
私は『人間』だ。『寿命』で終わるのは仕方がないだろう。
だけど…私はアルベド様より先んじている。
笑みが浮かびそうになるだが、ここはンフィーの家の中だ。
ここではダメだ。
...アルベド様が考えているであろう最終的な『勝利』なんて『人間』である私には関係ない。
全てを捧げるのに、女としての矜持に優劣等ない。
だから、私は『負けない』ことを選ぶ。
たとえ、私を思ってくれているンフィーを『利用』したとしても。
ルプスレギナさんがンフィーのことを揶揄うのは、辞めてもらわないといけない。
ゴウン様が傷つくし、ンフィーだって働けなくなる。
ルプスレギナさんもそれに気づいてくれたら、
きっと『私』の話も聞いてもらえるだろう。
ほんの少しだけ聞いてもらえばよい。
同じ思いを抱えた女の子なんだから。
きっと協力できるはず。大丈夫。
私ならきっとルプスレギナさんとも『仲良く』なれる。
元々仲が良いのだから、ルプスレギナさんは私を気に入ってくれているのだから、
ほんのもう少し『仲良く』なるだけ。
...『友達』って素敵な言葉だよね。ンフィー。
…いけない。これ以上は不自然だ。
「じゃあね!ンフィー。このポーションを『皆』に届けてくるね!」
そう言ってバレアレ家を後にする。
訓練場に向かう。働いている皆も喜んでくれるはずだ。このポーションは。
訓練場に到着した私は、そこで、
「ほう…中々良くできているな。訓練場は。特に的が」
ゴウン様が来てくださった。
ポーションのこと等忘れてしまう。
いや、忘れても村の皆は気にしないだろう。
『村』の恩人であり、『神』様みたいなお方のことなのだから。
「おはようございます!ゴウン様!」
私は幸せだ。今日一日が幸せだと確信した。
「お、おはようエンリ…朝から元気なのは良いことだ」
嬉しい。
でも、訓練場を見ていたということはそれに類する用なのだろうか?
「村の、いえ『魔王国』の訓練についていらっしゃったのですか?」
私は失礼を承知で先に尋ねる。
私にとっては大切でも、ゴウン様にとってはたかが『村』なのだ。
きっとカルネ村だから、お役に立てることがあるに違いない。
「あ、ああ。話が早くて助かる。実は…」
...私は、アンデッドの軍勢や『破滅の竜王』なんてどうでも良かった。
いや、ゴウン様のお言葉は絶対だ。だからどうでも良いわけがない。
それでも、私が、『村』の皆が、お役に立てる嬉しさ。
私は間違いなく、幸せだった。
ヤベェよ。この女...