「誰もいないよ……。どういうことだ……?」
懐中電灯で周囲を照らし、暗い街を歩く細胞がひとり。
「うう……、怖い……」
ナイフを握ってはいるものの、その足取りは頼りなさげ。
被った帽子には「NAIVE」の文字があり、彼が「ナイーブT細胞」であることを示しています。
したたる水音に怯えながら探索していると、
「出たーーーーっ!? な、なんだこいつっ!?」
奇妙な帽子を被った細胞に出くわしました。
見た目ゾンビです。
うじゃうじゃいます。
マクロファージ。
「抗原発見っ!」
特殊能力「遊走」により、組織内を通過してきた白血球さんに助けられたナイーブくん。
ちなみにナイーブくんは、抗原を一度も認識したことのない未熟なT細胞です。実戦経験がないんですね。だから頼りなさげなんですね。
「こいつらはただの一般細胞さ。ただ……、感染してしまったらしいな」
そう語る白血球さんの周囲には、インフルエンザの脅威が押し寄せます。インフルにかかった細胞がぞろぞろ。
インフルですから、それはもう強敵です。増殖します。怖いです。
白血球さんが援護を頼むも、ナイーブくんは「僕には無理ですっ! ウイルスなんてっ!」と弱腰。
と、そこに。
「あらあら」
巨大な鉈を引きずり引きずり、やって来たのは御令嬢。
そう、マクロファージさん。
白血球の一種で、体内の掃除屋でもある、こう見えて強者です。待ってました。
「さあ、お仕事お仕事♪」
瞳を輝かせると、鉈の一振りでインフルゾンビを蹴散らしました。
キラーT細胞。
「はい。分かりました。はい、では」
マクロファージから連絡を受け、体内にB型インフルエンザが侵入している知らせを受けた樹状細胞さん。
免疫の司令官・ヘルパーT細胞へ伝えたことより、すぐにキラーT細胞(CV:小野大輔さん)がかけつけるとのこと。リンパ球のモノノフたちですから、百人力ですね。
しかし、現場のナイーブくんは不安そう。
厳しい先輩たちなので、戦闘経験のない自分がしごかれてしまうのです。
樹状細胞。
インフルエンザウイルスとの激戦が続く戦場から、逃げ出してしまったナイーブくん。
己のふがいなさに涙を流していると、
「どうしたの? 君、T細胞だよね? 何かあったの?」
樹状細胞さんが声をかけました。
先ほども活躍した通り、免疫系の連絡係さんです。鉄道員っぽい外見です。
「もしかして、苦戦中なのかい? わかった、すぐに連絡を……」
「ちがう! 僕は逃げて来たんだ。あんな怖い奴らと戦えっこない。僕は、僕は……」
「白血球さんやマクロファージさんや先輩たちみたく、強くないんだ……っ! 僕みたいな弱虫なんていない方がいいんだ……っ!」
自分を責めるナイーブくんを、優しく励ます樹状細胞さん。
「そんなことないよ、ナイーブT細胞くん。最初から強い人なんて、いないんだよ……」
樹状細胞さんに、先輩たちの昔の写真を見せられたナイーブくん。
そう、今でこそたくましいキラーT細胞軍ですが、初めはみんなナイーブT細胞。
そこから戦いを経てエフェクターT細胞へ進化し、更にはキラーT細胞やヘルパーT細胞へ分化を果たすのです。
ほんと勉強になるなぁ。
「先輩たちが君に厳しくあたるのも、昔の自分と今の君を、重ねてるからじゃないかな……」
「そうだったんだ……」
「大丈夫。怖がることないよ、ナイーブくん。みんながいるから」
「みんなが……」
「白血球さんがパトロールして、敵を見つけて。マクロファージさんが、敵の情報を伝えてくれる。そのおかげで、ヘルパーT細胞さんが指示を出せて、キラーT細胞さんたちが、やっつけてくれる。ね? 皆で協力して、プライドを持って仕事している仲間がいるんだ」
「だから、君がすべきことは、分かるよね……?」
覚醒のエフェクターT細胞。
樹状細胞さんの導きにより、マッチョへと覚醒したナイーブT細胞くん。
いや、今や立派な「エフェクターT細胞」さん。
「「「活性化してるーー!?」」」
「分裂・増殖もしてきましたぁ!」
「「「増えてるーー!?」」」
抗体を産生したリンパ球・B細胞と共に、感染を続けるインフルエンザウイルスを蹴散らし、体内の平和を守ったのでした……。
まとめ。
ナイーブくんを元気づけた樹状細胞さんですが、ナイーブT細胞を活性化させるのも、実はお仕事の一部だそうです。
ヒダマルはここ十年、インフルエンザと縁のない生活を送っておりますが、それもこれも免疫細胞さんたちが頑張ってくれてるからだよなぁ……。
「発熱」や「食欲減退」、「発汗」など各機関の連携の様子も描かれており、ほんと勉強になるアニメだ。
そして次回は「食中毒」。
金髪ツインテールっ子が出るみたいです。