スポンサーサイト
賀茂斎院と伊勢斎宮
2014/11/29(Sat)
またまたご無沙汰しています、この秋はちょっと仕事が忙しくなってばたばたしており、なかなか落ち着いてゆっくりブログを書く時間が取れませんでした。それでちょっと煮詰まった反動で賀茂斎院サイトの方をちまちま修正していたのですが、こんな時に限ってとんでもないことを思いついてしまうもので、何故か本日突然「そうだ、伊勢斎宮のリストを作ろう!」等と思い立ってしまったのです。もっとも実を言えば、以前から伊勢斎宮の一覧も載せたいなとは密かに思っていました。何しろ賀茂斎院というものは、その誕生からして伊勢斎宮なしには存在し得なかった制度であり、伊勢斎宮を賀茂斎院なしに語ることはできてもその逆はあり得ません(いやもちろん、斎院が生まれてからは斎宮とて斎院なしには語れないのですが)。
というわけで、そもそも千尋自身最初に興味を持ったのは伊勢斎宮の方だったので、実はリストも既に作成済みだったりもするのです。しかし現在のサイトとはちょっと違うフォーマットで作ってしまったもので、手直しが微妙に面倒だったのですよね(苦笑)。
加えて単に伊勢斎宮のリストというだけなら、本場中の本場である斎宮歴史博物館様を始め、Wikipediaや歴史サイト様などネット上に多数公開されています。それなのに今さら自分が作っても仕方がないかなと思ったのも、何となく二の足を踏んでいた理由でした。
しかしながら、そもそも拙宅はまがりなりにも「賀茂斎院専門」と銘打ったサイトです。日本史には素人の多分に自己満足的作品とはいえ、どうせ作るなら他にたくさんあるような斎宮一覧表ではなく、「賀茂斎院サイト」ならではの何かしら独自の要素を持つものでなければ、微妙に畑違い?の斎院サイトでわざわざ掲載する意味はあまりありません。
そこで考えた結果、それじゃあ各斎院ごとに「同時期に斎宮だった人物のリスト」をつけたらどうだろう、と思ったわけです。元々「在任時の天皇」は基礎データとして一通りリストに挙げていましたので、それと同様に在任時の斎宮のリストを追加して、ついでに各斎宮の卜定から退下までのデータもつけてみました。さすがに結構な量でちょっと大変ではありましたが、作ってみるとなかなか楽しく、一人の斎院に対して同時期に何人もの斎宮が交替する例はわかっていましたけれど、逆に斎宮一代に複数の斎院が交替している時期も意外にあり、また同時期の斎宮・斎院の血縁関係も見事なくらいにまちまちなのも面白かったです。中には「いとこ孫の子(=いとこの曾孫)」等というややこしいものもあり、系図に書き出してみないと私自身も混乱してしまいそうでした。(今回ちょっと系図までは手が回らなかったので、またおいおい修正・追加していく予定です)
ところで今回、これなら独立した伊勢斎宮一覧はうちのサイトには必要ないかなと思ったのですが、最後の方でちょっとそれを考え直す結果になりました。というのも、出来上がった斎宮のデータには、平安末期の潔子内親王だけが入っていないのです。
これについては既に35代斎院礼子内親王の項で【後鳥羽・土御門朝の斎院卜定事情について】に書きましたが、潔子内親王が斎宮だった1185年から1198年までの間は平氏滅亡後のまだ混乱が続いていた時期でした。しかも当時は斎宮・斎院になれる未婚の内親王・女王が潔子以外に殆ど存在せず、また即位したばかりの後鳥羽天皇も幼少であったため、新たに斎宮・斎院候補となる皇女が生まれるまでに10年もかかってしまったのです。
というわけで、結局潔子内親王は13年にわたる任期の間、ついに同時期の賀茂斎院を持たずに終わった、嵯峨天皇以降の平安時代では唯一人の斎宮だったのです。最後の頃には姪にあたる昇子内親王と粛子内親王が生まれていましたが、後鳥羽天皇はその在位中に斎院を任じることなく、彼もまた平安時代で唯一、賀茂斎院を持たない天皇として治世を終えたのでした。
なお後鳥羽の異母兄で非業の死を遂げた安徳天皇は逆に、その短い治世で伊勢斎宮を持つことなく終わったこれも平安時代唯一の天皇でした(ちなみに安徳朝の斎院だった範子内親王は、高倉朝の斎宮功子内親王と任期が重なっていたので、同時期の斎宮を持たなかった斎院は存在しません)。しかし即位後1年足らずで父高倉上皇が崩御し(注・諒闇中1年間は新斎宮・斎院の卜定もできません)、さらにその後平家一門の都落ちという不運が重なった安徳はともかく、何故後鳥羽天皇は自身の皇女が生まれた後も斎院を卜定させようとしなかったのか、理由がわからず気になります。そのくせ息子の土御門天皇の時代には後鳥羽の皇女礼子内親王が賀茂斎院として復活しており(結局彼女が史上最後の斎院となってしまいましたが)、歴史上屈指の動乱期であったとはいえ、この頃の斎王制度は色々奇妙なことが多いのですよね。
ともあれ、こうして伊勢斎宮と賀茂斎院を両方揃えて改めて見ることで、今まであまり意識しなかったことに色々気付かされました。以前歴代斎院候補一覧を作った時も面白い発見がたくさんありましたが、既に調べ尽くしたつもりのデータからもこうした掘り出し物?が見つかるあたりが油断できないというか、一度始めたらやめられない楽しさでもあります。飛鳥時代から南北朝まで続いた伊勢斎宮に比べれば、わずか400年足らずという歴史の短い賀茂斎院ですけれど、まだまだ開拓の余地はたくさんありそうで嬉しいですね。
関連参考図書:
伊勢斎宮と斎王―祈りをささげた皇女たち (塙選書) (2004/06) 榎村 寛之 商品詳細を見る |
斎宮入門書として必見の一冊。著者の榎本氏は、斎宮歴史博物館の研究者でいらっしゃいます。
タグ :