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【大相撲】

御嶽海が初優勝 平成生まれの日本出身力士、長野生まれで初

2018年7月22日 紙面から

初優勝を決め、タイを手に笑顔を見せる御嶽海(中)。右は出羽海親方=愛知県犬山市の出羽海部屋宿舎で(榎戸直紀撮影)

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◇名古屋場所<14日目>

 歴史的な優勝に男泣き。1敗で単独トップに立っていた関脇御嶽海(25)=出羽海=が東前頭13枚目の栃煌山(春日野)を寄り切り、13勝目を挙げた。2敗力士がいないため初優勝が決定。初土俵から21場所目での優勝は史上3位のスピードだった。テレビの優勝インタビューでは感無量の涙でしばらく言葉が出なかった。名門・出羽海部屋の力士としては38年ぶり、長野県出身者では初の美酒。秋場所では大関とりに挑む。 

      ◇

 千秋楽を待たず、御嶽海が初優勝で大相撲の歴史に新たな1ページを刻んだ。栃煌山と左四つに組んでも慌てず、右を素早く巻き替えてもろ差し。最後は快進撃の余韻に浸るように、じっくり寄り切った。「拍手の嵐でしたね」と長野県出身力士として、優勝制度が制定された1909年以降では初めてという歓喜の瞬間を実現させた。

 花道を下がるまではクールに振る舞ったが、握手や抱擁で念願がかなったことを実感。復活の期待を一身に担った角界きっての名門・出羽海部屋にとっても80年初場所の横綱三重ノ海以来という優勝に、TVのインタビュー室では、こみ上げる感情を抑えきれなかった。

 30秒近く涙を拭ってから「すごい緊張したんですけど、周りの声援とか聞いて『優勝しなきゃいけない』って感じになって…。何とか勝てました」と声を絞り出した。

 同じ出羽海一門の栃ノ心が初場所で初優勝したことを刺激に、有言実行を続けた。場所前、七夕の短冊には「イケメンになる」。ファンレターが少ないことを悩みに挙げていたが、決して受け狙いではなかった。2差で独走状態になった終盤戦、ようやく真意を明かした。

 「地位を上げる。勝つのがかっこいいということ」。さらに、この日は愛知県犬山市の部屋宿舎での朝稽古後、宿舎へ引き揚げる前に「またここで夕方」と乾杯を見越し、不敵な笑みで勝利宣言した。土俵上での鋭い出足と同様、強心臓ぶりが際だっていた。

 長野出身として、最強の異名を取った江戸期の力士をクローズアップさせた。優勝制度が定まるはるか前、信州生まれの雷電が最後に優勝したのは1810年。当時は大関が最高位だった。

 秋場所では、同郷のレジェンドと地位で肩を並べることが目標になる。大関とりの場所になるか、と問われた八角理事長(元横綱北勝海)は「そういうことになるだろうね。真価を問われる。横綱、大関が出てきて」と明言した。

 平成生まれの日本出身力士として初優勝にたどり着いた25歳。次の地位に「それはまだまだ、これからじゃない?」ととぼけたが言葉とは裏腹に、気合十分にうなずいた。平成最後の名古屋場所。白星締めで賜杯を抱き、世代交代のスタートを宣言する。 (志村拓)

 

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