非核化への動きを後戻りさせてはならない。首脳会談からわずか一カ月で、米朝両国の食い違いが浮き彫りになった。日米韓の緊密な連携を維持しつつ、今後も粘り強く交渉を続けてほしい。
六月十二日にシンガポールで行われた米朝首脳会談後、非核化につながる北朝鮮側の動きが、全く見えなくなった。
逆に米メディアは最近、北朝鮮が複数の秘密施設で兵器用の核燃料を増産したとする、米情報機関の分析を伝えている。
そんな中、六~七日にかけてポンペオ米国務長官の訪朝が実現した。ポンペオ氏は計九時間近くにわたった協議について、「極めて生産的だった」と評価した。
しかし、それからわずか五時間後に、今度は北朝鮮外務省報道官が「非核化協議で強盗のような要求があった」と米国を非難する談話を発表し、双方の溝の深さを鮮明にした。
交渉の行方には、暗雲が広がっていると言わざるをえない。
対立点は北朝鮮の大量破壊兵器を完全に申告し、それを放棄する手順、日程を示す「行程表」を作成することだ。完全な非核化には、この行程表が欠かせない。
ところが北朝鮮側は、行程表の前に、休戦中である朝鮮戦争の「終戦宣言」実現を求めた。
体制の保証を確実にしながら、段階的に非核化に応じる、という交渉姿勢が表れている。
ただ、米国はすでに、韓国との定期合同軍事演習の中止を決めている。次は北朝鮮が、具体的な行動に踏み出す番ではないか。
北朝鮮外務省報道官は批判の一方で、「トランプ大統領をまだ信頼している」とも語っており、対話は今後も続きそうだ。
ポンペオ氏訪朝の成果として、十二日にも板門店で、朝鮮戦争で亡くなった米兵の遺骨送還に関する米朝協議が行われる。
北朝鮮には米兵五千三百人分の遺骨が残されているとされる。北朝鮮はこの作業に協力し、米国との信頼関係を構築してほしい。
ポンペオ氏は八日、日韓の外相と会談し、訪朝結果を説明した。
三カ国は、北朝鮮のCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)が実現するまで、経済制裁を解除しないと再確認した。
交渉を長引かせても、北朝鮮はこの三カ国から何も得ることはできない。逆に、国際社会に進出する貴重な機会を失ってしまうことを、認識しなければならない。
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