【大相撲】御嶽海、王手 豪栄道撃破1敗守った きょう勝って信州初Vだ2018年7月21日 紙面から
◇名古屋場所<13日目>(20日・ドルフィンズ アリーナ=愛知県体育館) 単独トップの関脇御嶽海(25)=出羽海=が初優勝に王手をかけた。13日目は大関豪栄道(32)=境川=を送り出し、1敗を守った。14日目で御嶽海が平幕栃煌山(31)=春日野=に勝つか、負けても3敗で追う平幕朝乃山(24)=高砂、豊山(24)=時津風=がともに敗れれば、千秋楽を待たずに御嶽海の初優勝が決まる。優勝制度が確立された1909年以降、長野県出身の優勝は初めてで、出羽海部屋にとっては1980年初場所の横綱三重ノ海以来の賜杯となる。 ◇ 賜杯がはっきり見えてきた。御嶽海は立ち合いで、豪栄道に左で前まわしを取られて上体が浮きかける。そこから、瞬時に左に動いて左上手で深くまわしを引くと、形勢逆転。出し投げから背後に回り込み、最後は前のめりになった大関を送り出した。完勝で後続との2差をキープ。初優勝まで、いよいよ“マジック1”となった。 「気持ちだけは、しっかり余裕を持っていた。大きいと思いますよ。上位が少ないですから」 この日は何が何でも勝ちたい相手との結びの一番だった。3横綱に加えて新大関栃ノ心も休場した今場所。対戦できる番付上位は大関2人だけになった。12日目は高安に惜敗。同じ出羽海一門で稽古から何度も胸を借りて、砂まみれにされた豪栄道への挑戦が、最短距離にいる賜杯の価値を守るためのラストチャンスだった。 普段は勝った相撲しか振り返らない。しかし、高安戦の初黒星の映像は目に焼き付けた。「かっこいい取組を見たい。男たるもの。仮面ライダー、ウルトラマン。それと一緒」。ヒーローたちを自身に重ねた言葉の通り、ご当地場所の主役という自覚がある。だからこそ、こだわりを曲げてまで結果を求め、悔しさを力に変えた。そんな執念が結実した攻めだった。 3敗の豊山と朝乃山が敗れれば、無条件で初優勝が決まる14日目。「まだ終わってないからね」と油断はない。「しっかり自分の相撲を取れば、いけるんじゃないでしょうか。ここまできたら気持ちだけ」。千秋楽までもつれさせる気はまったくなさそうだ。 ちなみに、王手のご褒美は、会心の相撲の映像だ。帰り際、「格好良い自分がいそうか?」という問いかけに、「いるでしょう。120%」と口元をほころばせた。そんな満足感を超え、最高の輝きを放つ歓喜の瞬間はすぐそこだ。もちろん、勝って決める。白星を手に入れて、長野県出身の初優勝に花を添えてみせる。 (志村拓)
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