高校に入ると数Ⅰの因数分解の分野で、「たすきがけのやり方」を習います。そして、高校数学では、この「たすきがけ」をマスターできるかどうかが非常に大切になってきます。
しかし、多くの子は、この「たすきがけ」でつまづいてしまいます。私も、高校生の時、たすきがけを使いこなせるまでに苦労したことを、今でもよく覚えています。
そして、私の教えている生徒さんも、「たすきがけが嫌い!」とか「たすきがけのやり方がわからない」と聞いてくる子が多いです。
ということで、今回は「たすきがけのやり方やコツ」を、問題を使って解説していきます。たすきがけが苦手な方やできない人はぜひ見ていってください。
例1 たすきがけで、x2+4x+3を因数分解してみよう。
この問題は、はっきり言って、中学レベルなので、「こんなのたすきがけを使わなくても、(x+1)(x+3)に決まってるじゃん」と思われるかもしれませんが、何事も基本が大切なんで、あえて中学レベルの問題をたすきがけで解いてみましょう。
それでは、ここからは、見ているだけでなく、実際に自分の手を動かして、やってみてください。たすきがけのコツは、何と言っても、手を動かして慣れることです。
①下のような図を書く。

まず、左図のように書いてみてください。これが、たすきがけをするための最初の作業です。そして、 最終的に右図のように、9か所の?の部分に適切な値を入れることができたら、たすきがけの完成という流れになります。では、次の作業に行きましょう。
②x2+4x+3の数字を図の下の位置に書く。

左から、「1 3 4」と書いていますが、1はx2の係数(x2の前についている数字のこと)で、3は定数項(xがついていない数字のこと)、4はxの係数を書きます。
係数や定数項など難しい言葉を使いましたが、要するに〇x2+△x+口を因数分解するときは、一番左に〇の値を、真ん中には口の値を、一番右には、△の値を入れればOKです。
③一番左の1の上に、かけて1になる2組の数を書く。

次に、左の1の上の空欄に、かけて1になる2組の数を書きます。かけて1になるような2組の数は、 1×1=1なので、1の上の空欄に「1と1」を書きます。
④真ん中の3の上に、かけて3になる2組の数を書く。

次に、真ん中の3の上の空欄に、かけて3になる2組の数を書きます。かけて3になるような2組の数は、1×3=3なので、3の上の空欄に「1と3」を書きます。
⑤一番右の4の上に、③と④で書いた数字を斜めにかけた数を書き、足した数が4になればOK。

次に、③と④で書いた数字をそれぞれ斜めに書けます。斜めに書けると図のように、「1×3」と「1×1」なので、その答えである「1と3」を一番右の4の上の空欄に書きます。
この「1と3」を足すと、下の4にぴったり合うので、最後に⑥の作業をして終わりです。もしここで、4にならない場合は、③と④に戻って数字の組み合わせを変えてやり直します。
⑥一番左の上の2組の数字の横にxをつけて、点線部分のように分ける。

最後に上図のように、一番左の上の2組の数字の横にxをつけて完成です。左上の2組の数は、1と1なので、1の横にxをつけて、後は点線部分のように、横に区切って x+1 と x+3 と見ます。1xの1は普通は省略するので、答えは(x+1)(x+3)です。
例2 たすきがけで、x2-5x-6を因数分解しよう。
この問題も、中学レベルなので、答えは(x-6)(x+1)とわかると思います。しかし、④の作業で、たすきがけを使う際のポイントがあるので、この問題で解説していきます。
①x2-5x-6の数字を図の下の位置に書く。

〇x2+△x+口をたすきがけを使って、因数分解するときは、一番左に〇の値を、真ん中には口の値を、一番右には、△の値を入れればよいので、左から、「1 -6 -5」と書きます。例1と違って、今回は、-の数が入るので注意してください。
②一番左の1の上に、かけて1になる2組の数を書く。

左の1の上の空欄に、かけて1になる2組の数を書きます。かけて1になるような2組の数は、 1×1=1なので、1の上の空欄に「1と1」を書きます。ここは、先ほどの問題と同じですね。
③真ん中の-6の上に、かけて-6になる2組の数を書く。

次に、真ん中の-6の上の空欄に、かけて-6になる2組の数を書きます。かけて-6になるような2組の数は、-1×6=-6や1×(-6)=-6などがあります。
とりあえず、「-1と6」を-6の上の空欄に書いてみましょう。
④一番右の-5の上に、③と④で書いた数字を斜めにかけた数を書き、たした数が-5になればOK。

次に、③と④で書いた数字をそれぞれ斜めに書けます。斜めに書けると図のように、「1×6」と「1×(-1)」なので、その答えである「-1と6」を右の-5の上の空欄に書きます。
この「-1と6」を足すと、-1+6=5となり、下の-5に合いません。ということで、③に戻って、値を入れ変えてみましょう。
⑤もう一度、真ん中の-6の上に、かけて-6になる2組の数を考える。

先ほどの④のところで、たすきがけの結果が合わなかったので、もう一度、真ん中の-6の上の空欄に、かけて-6になる2組の数を考え直してみます。
かけて-6になるような2組の数は、他に1×(-6)=-6もあるので、今度は、「1と-6」を-6の上の空欄に書いてみましょう。
⑥一番右の-5の上に、③と④で書いた数字を斜めにかけた数を書き、たした数が-5になっていればOK。

斜めに書けると図のように、「1×(-6)」と「1×1」なので、その答えである「1と-6」を一番右の-5の上の空欄に書きます。
この「1と-6」を足すと、1-6=-5となり、下の-5と同じ数になりました。これで、たすきがけの完成です!
⑦一番左の上の2組の数字の横にxをつけて、点線部分のように分ける。

最後に、一番左の上の2組の数字の横にxをつけて完成です。上図より、答えは(x+1)(x-6)です。今回は、④の作業で、あえて間違った組み合わせの数字を入れました。
たすきがけは、慣れていないと④のように、数字が合わないことがよくあります。しかし、たすきがけに慣れてくると、どの数字を入れたら良いかがわかってきます。
こればっかりは、たくさん練習してもらわないと、実感できませんので、たくさん練習問題をやってみてください。
例3 たすきがけで、2x2+3x+1を因数分解しよう。

今までは、中学生レベルでしたが、ここからは、おまちかねの高校生レベルの問題です。たすきがけの流れは上の①~⑤のようになります。同じように手順を解説しましたので、実際に手を動かして理解してください。
①2x2+3x+1の数字を図の下の位置に書く。
〇x2+△x+口をたすきがけを使って、因数分解するときは、一番左に〇の値を、真ん中には口の値を、一番右には、△の値を入れればよいので、左から、「2 1 3」と書きます。
②一番左の2の上に、かけて2になる2組の数を書く。
左の2の上の空欄に、かけて2になる2組の数を書きます。かけて2になるような2組の数は、 2×1=2なので、「2と1」を上の空欄を書きます。今回で3回目なので、そろそろ慣れてきましたか?
③真ん中の1の上に、かけて1になる2組の数を書く。
次に、真ん中の1の上の空欄に、かけて1になる2組の数を書きます。かけて1になるような2組の数は、1×1=1や-1×(-1)=1などがあります。とりあえず、「1と1」を1の上の空欄に書いてみましょう。
④一番右の3の上に、③と④で書いた数字を斜めにかけた数を書き、たした数が3になればOK。
斜めに書けると図のように、「2×1」と「1×1」なので、その答えである「2と1」を一番右の3の上の空欄に書きます。この「2と1」を足すと、2+1=3となり、下の3に合ったので、完成です!
⑤一番左の上の2組の数字の横にxをつけて、点線部分のように分ける。
最後に、一番左の上の2組の数字の横にxをつけて完成です。上図より、答えは(2x+1)(x+1)です。
今回は高校生レベルの問題でしたが、難しかったでしょうか?この問題は、たすきがけを使う問題の中では一番基本的な問題なので、しっかりできるようにしていただけたらと思います。
例4 たすきがけで、2x2-7x-15を因数分解しよう。

今度は少し難しいたすきがけの問題を解説していきます。難しいといってもやり方は同じなので、①~⑤のようになります。引き続き、手を動かして慣れていってください。
①2x2-7x-15の数字を図の下の位置に書く。
〇x2+△x+口をたすきがけを使って、因数分解するときは、一番左に〇の値を、真ん中には口の値を、一番右には、△の値を入れればよいので、左から、「2 -15 -7」と書きます。もうここは大丈夫ですよね?
②一番左の2の上に、かけて2になる2組の数を書く。
左の2の上の空欄に、かけて2になる2組の数を書きます。かけて2になるような2組の数は、 2×1=2なので、「2と1」を上の空欄を書きます。
③真ん中の-15の上に、かけて-15になる2組の数を書く。
次に、真ん中の-15の上の空欄に、かけて-15になる2組の数を書きます。かけて-15になるような2組の数は、3×(-5)=-15や-5×3=-15、-15×1=-15、-1×15=-15などがあります。とりあえず、「3と-5」を-15の上の空欄に、順番に書いてみましょう。
④一番右の-7の上に、③と④で書いた数字を斜めにかけた数を書き、たした数が-7になればOK。
斜めに書けると図のように、「2×(-5)」と「1×3」なので、その答えである「-10と3」を一番右の-7の上の空欄に書きます。この「-10と3」を足すと、-10+3=-7となり、下の-7に合ったので、完成です!
なお、③のところで、「-5と3」や「-15と1」を書いたりすると、当然、この④での計算が合いません。③で書くべき数字の組合せは「3と-5」が正しかったということです。
⑤一番左の上の2組の数字の横にxをつけて、点線部分のように分ける。
最後に、一番左の上の2組の数字の横にxをつけて完成です。上図より、答えは(2x+3)(x-5)です。たすきがけの問題は、難しくなると、②と③での数字の組合せが複雑になります。
なので、慣れるまでは、こんなにスムーズに解けるとは限りませんが、たくさん問題を解けば、適切な組合せを選べるようになります。
例5 x2+(a+b)x+abを因数分解しよう。

今までは、表に入れた値が数字だけでしたが、今度は文字が入ったたすきがけの問題を解説していきます。ここからが、たすきがけの応用問題となってきます。
①x2+(a+b)x+abの数字を図の下の位置に書く。
〇x2+△x+口をたすきがけを使って、因数分解するときは、一番左に〇の値を、真ん中には口の値を、一番右には、△の値を入れればよいので、左から、「1 ab a+b」と書きます。文字aとbが入ってきましたね。
②一番左の1の上に、かけて1になる2組の数を書く。
左の1の上の空欄に、かけて1になる2組の数を書きます。かけて1になるような2組の数は、 1×1=1なので、「1と1」を上の空欄を書きます。
③真ん中のabの上に、かけてabになる2組の数を書く。
次に、真ん中のabの上の空欄に、かけてabになる2組の文字を書きます。かけてabになるような2組の文字は、a×b=abがあるので、「aとb」をabの上の空欄に、入れましょう。
④一番右のa+bの上に、③と④で書いた数字を斜めにかけた数を書き、たした数がa+bになればOK。
斜めに書けると図のように、「1×b」と「1×a」なので、その答えである「bとa」を一番右のa+bの上の空欄に書きます。この「bとa」を足すと、b+a=a+bとなり、下のa+bに合ったので、完成です!
⑤一番左の上の2組の数字の横にxをつけて、点線部分のように分ける。
最後に、一番左の上の2組の数字の横にxをつけて完成です。上図より、答えは(x+a)(x+b)です。たすきがけの問題は、応用問題になると、このように文字が入ってきます。
例6 x2+(3y+1)x+(y+4)(2y-3)を因数分解してみよう。

例5から文字が入ったたすきがけの問題を紹介しましたが、今回も同じような問題です。この問題は、例1~例5が基礎になるので、まず例1~5を解けるようになってからチャレンジしてください。
①x2+(3y+1)x+(y+4)(2y-3)の数字を図の下の位置に書く。
〇x2+△x+口をたすきがけを使って、因数分解するときは、一番左に〇の値を、真ん中には口の値を、一番右には、△の値を入れればよいので、左から、「1 (y+4)(2y-3) 3y+1」と書きます。
文字が入って難しそうですが、例1~例5と同じやり方をすれば絶対に解けますので、何度も言いますが、手をちゃんと動かして、頑張って理解してください。
②一番左の1の上に、かけて1になる2組の数を書く。
左の1の上の空欄に、かけて1になる2組の数を書きます。かけて1になるような2組の数は、 1×1=1なので、「1と1」を上の空欄を書きます。
③真ん中の(y+4)(2y-3)の上に、かけて(y+4)(2y-3)になる2組の数を書く。
次に、真ん中の(y+4)(2y-3)の上の空欄に、かけて(y+4)(2y-3)になる2組の文字を書きます。かけて(y+4)(2y-3)になるような2組の文字は、(y+4)×(2y-3)=(y+4)(2y-3)があるので、「y+4と2y-3」を(y+4)(2y-3)の上の空欄に書いてください。
④一番右の3y+1の上に、③と④で書いた数字を斜めにかけた数を書き、たした数が3y+1になっていればOK。
斜めに書けると図のように、「1×(2y-3)」と「1×(y+4)」なので、その答えである「2y-3とy+4」を一番右の3y+1の上の空欄に書きます。この「2y-3とy+4」を足すと、2y-3+y+4=3y+1となり、下の3y+1に一致するので、これで完成です!
⑤一番左の上の2組の数字の横にxをつけて、点線部分のように分ける。

最後に、一番左の上の2組の数字の横にxをつけて完成です。上図より、答えは(x+y+4)(x+2y-3)です。この問題を解くことは、かなり難しいと思いますがどうでしたでしょうか?
難しいと感じるようでしたら、まず例1~5の問題を余裕に解けるようになってから、この問題を解いてみてください。
例7 2x2+(5y-1)x-(3y-2)(y-3)を因数分解しよう。

今回の問題は、例6よりも文字の組合せが複雑な問題です。この問題ができるようになれば、たすきがけの問題も残りわずかです。
①2x2+(5y-1)x-(3y-2)(y-3)の数字を図の下の位置に書く。
〇x2+△x+口をたすきがけを使って、因数分解するときは、一番左に〇の値を、真ん中には口の値を、一番右には、△の値を入れればよいです。
2x2+(5y-1)x-(3y-2)(y-3)より、〇=2、△=5y-1、口=-(3y-2)(y-3)なので、空欄には左から、「2 -(3y-2)(y-3) 5y-1」と書きます。
②一番左の2の上に、かけて2になる2組の数を書く。
左の2の上の空欄に、かけて2になる2組の数を書きます。かけて2になるような2組の数は、 2×1=2なので、「2と1」を上の空欄を書きます。
③真ん中の-(3y-2)(y-3)の上に、かけて-(3y-2)(y-3)になる2組の数を書く。
次に、真ん中の-(3y-2)(y-3)の上の空欄に、かけて-(3y-2)(y-3)になる2組の文字を書きます。かけて-(3y-2)(y-3)になるような2組の文字は、-(3y-2)×(y-3)があります。
他にも、マイナスを逆にした-(y-3)×(3y-2)がありますが、とりあえず、上の空欄に-(y-3)、(3y-2)の順に書いてみます。
④一番右の5y-1の上に、②と③で書いた数字を斜めにかけた数を書き、たした数が5y-1になっていればOK。
斜めにかけると図のように、「2×(3y-2)」と「1×-(y-3)」なので、その答えである「6y-4と-y+3」を一番右の5y-1の上の空欄に書きます。
この「6y-4と-y+3」を足すと、6y-4+(-y+3)=5y-1となり、下に書いてある5y-1に一致するので、これで完成です!
なお、③の空欄で、上から順に「-(y-3)、(3y-2)」と書きましたが、これを「(y-3)、-(3y-2)」や「-(3y-2)、(y-3)」など、マイナスをつける位置や、順番が違うと、5y-1にはなりません。
⑤一番左の上の2組の数字の横にxをつけて、点線部分のように分ける。

最後に、-(y-3)=-y+3、(3y-2)=3y-2のように、カッコをはずして、一番左の上の2組の数字の横にxをつけて完成です。上図より、答えは(2x-y+3)(x+3y-2)です。
例8 たすきがけで、2x2+5xy-3y2-x+11y-6を因数分解してみよう。
この問題は、今までの問題と違って、〇x2+△x+口の形ではないので、まず自分で、〇x2+△x+口の形に変形する必要があります。
① 2x2+5xy-3y2-x+11y-6
↓ 〇x2+△x+口にするため、x2とxとxがついていない値の仲間を集める。
② 2x2+5xy-x-3y2+11y-6
↓ 〇x2+△x+口にするため、カッコでくくる。これを数学では「xの降べきの順にする」と言います。
③ 2x2+(5y-1)x-(3y2-11y+6)
↓ 3y2-11y+6は因数分解できるので、たすきがけで因数分解する。
④ 2x2+(5y-1)x-(3y-2)(y-3)
②から③のところは、〇x2+△x+口の〇と△と☐の値がわかりやすいように、カッコでくくっておきます。このとき、-3y2+11y-6をカッコでくくる場合は、-3y2がマイナスなので、カッコでくくると符号が変わることに注意してください。
なお、このタイプの問題は〇x2+△x+口にすると、必ず口が因数分解できるようになっています(この問題では、3y2-11y+6のこと)ので、④のように因数分解をします。すると、この問題は、上の例7と同じ問題になるので、後は例7のように解いてください。
これで、たすきがけの問題も終了です。この問題ができれば、たすきがけの問題は、ほとんどの問題ができると思います。理解できましたでしょうか??
たすきがけの問題は高校1年生の最初の壁となる分野だと思いますが、「超重要分野」です。最後までしつこいですが、何度も手を動かして、たすきがけの作り方を理解してください。
しかし、多くの子は、この「たすきがけ」でつまづいてしまいます。私も、高校生の時、たすきがけを使いこなせるまでに苦労したことを、今でもよく覚えています。
そして、私の教えている生徒さんも、「たすきがけが嫌い!」とか「たすきがけのやり方がわからない」と聞いてくる子が多いです。
ということで、今回は「たすきがけのやり方やコツ」を、問題を使って解説していきます。たすきがけが苦手な方やできない人はぜひ見ていってください。
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例1 たすきがけで、x2+4x+3を因数分解してみよう。
この問題は、はっきり言って、中学レベルなので、「こんなのたすきがけを使わなくても、(x+1)(x+3)に決まってるじゃん」と思われるかもしれませんが、何事も基本が大切なんで、あえて中学レベルの問題をたすきがけで解いてみましょう。
それでは、ここからは、見ているだけでなく、実際に自分の手を動かして、やってみてください。たすきがけのコツは、何と言っても、手を動かして慣れることです。
①下のような図を書く。
まず、左図のように書いてみてください。これが、たすきがけをするための最初の作業です。そして、 最終的に右図のように、9か所の?の部分に適切な値を入れることができたら、たすきがけの完成という流れになります。では、次の作業に行きましょう。
②x2+4x+3の数字を図の下の位置に書く。
左から、「1 3 4」と書いていますが、1はx2の係数(x2の前についている数字のこと)で、3は定数項(xがついていない数字のこと)、4はxの係数を書きます。
係数や定数項など難しい言葉を使いましたが、要するに〇x2+△x+口を因数分解するときは、一番左に〇の値を、真ん中には口の値を、一番右には、△の値を入れればOKです。
③一番左の1の上に、かけて1になる2組の数を書く。
次に、左の1の上の空欄に、かけて1になる2組の数を書きます。かけて1になるような2組の数は、 1×1=1なので、1の上の空欄に「1と1」を書きます。
④真ん中の3の上に、かけて3になる2組の数を書く。
次に、真ん中の3の上の空欄に、かけて3になる2組の数を書きます。かけて3になるような2組の数は、1×3=3なので、3の上の空欄に「1と3」を書きます。
⑤一番右の4の上に、③と④で書いた数字を斜めにかけた数を書き、足した数が4になればOK。
次に、③と④で書いた数字をそれぞれ斜めに書けます。斜めに書けると図のように、「1×3」と「1×1」なので、その答えである「1と3」を一番右の4の上の空欄に書きます。
この「1と3」を足すと、下の4にぴったり合うので、最後に⑥の作業をして終わりです。もしここで、4にならない場合は、③と④に戻って数字の組み合わせを変えてやり直します。
⑥一番左の上の2組の数字の横にxをつけて、点線部分のように分ける。
最後に上図のように、一番左の上の2組の数字の横にxをつけて完成です。左上の2組の数は、1と1なので、1の横にxをつけて、後は点線部分のように、横に区切って x+1 と x+3 と見ます。1xの1は普通は省略するので、答えは(x+1)(x+3)です。
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例2 たすきがけで、x2-5x-6を因数分解しよう。
この問題も、中学レベルなので、答えは(x-6)(x+1)とわかると思います。しかし、④の作業で、たすきがけを使う際のポイントがあるので、この問題で解説していきます。
①x2-5x-6の数字を図の下の位置に書く。
〇x2+△x+口をたすきがけを使って、因数分解するときは、一番左に〇の値を、真ん中には口の値を、一番右には、△の値を入れればよいので、左から、「1 -6 -5」と書きます。例1と違って、今回は、-の数が入るので注意してください。
②一番左の1の上に、かけて1になる2組の数を書く。
左の1の上の空欄に、かけて1になる2組の数を書きます。かけて1になるような2組の数は、 1×1=1なので、1の上の空欄に「1と1」を書きます。ここは、先ほどの問題と同じですね。
③真ん中の-6の上に、かけて-6になる2組の数を書く。
次に、真ん中の-6の上の空欄に、かけて-6になる2組の数を書きます。かけて-6になるような2組の数は、-1×6=-6や1×(-6)=-6などがあります。
とりあえず、「-1と6」を-6の上の空欄に書いてみましょう。
④一番右の-5の上に、③と④で書いた数字を斜めにかけた数を書き、たした数が-5になればOK。
次に、③と④で書いた数字をそれぞれ斜めに書けます。斜めに書けると図のように、「1×6」と「1×(-1)」なので、その答えである「-1と6」を右の-5の上の空欄に書きます。
この「-1と6」を足すと、-1+6=5となり、下の-5に合いません。ということで、③に戻って、値を入れ変えてみましょう。
⑤もう一度、真ん中の-6の上に、かけて-6になる2組の数を考える。
かけて-6になるような2組の数は、他に1×(-6)=-6もあるので、今度は、「1と-6」を-6の上の空欄に書いてみましょう。
⑥一番右の-5の上に、③と④で書いた数字を斜めにかけた数を書き、たした数が-5になっていればOK。
斜めに書けると図のように、「1×(-6)」と「1×1」なので、その答えである「1と-6」を一番右の-5の上の空欄に書きます。
この「1と-6」を足すと、1-6=-5となり、下の-5と同じ数になりました。これで、たすきがけの完成です!
⑦一番左の上の2組の数字の横にxをつけて、点線部分のように分ける。
最後に、一番左の上の2組の数字の横にxをつけて完成です。上図より、答えは(x+1)(x-6)です。今回は、④の作業で、あえて間違った組み合わせの数字を入れました。
たすきがけは、慣れていないと④のように、数字が合わないことがよくあります。しかし、たすきがけに慣れてくると、どの数字を入れたら良いかがわかってきます。
こればっかりは、たくさん練習してもらわないと、実感できませんので、たくさん練習問題をやってみてください。
例3 たすきがけで、2x2+3x+1を因数分解しよう。
今までは、中学生レベルでしたが、ここからは、おまちかねの高校生レベルの問題です。たすきがけの流れは上の①~⑤のようになります。同じように手順を解説しましたので、実際に手を動かして理解してください。
①2x2+3x+1の数字を図の下の位置に書く。
〇x2+△x+口をたすきがけを使って、因数分解するときは、一番左に〇の値を、真ん中には口の値を、一番右には、△の値を入れればよいので、左から、「2 1 3」と書きます。
②一番左の2の上に、かけて2になる2組の数を書く。
左の2の上の空欄に、かけて2になる2組の数を書きます。かけて2になるような2組の数は、 2×1=2なので、「2と1」を上の空欄を書きます。今回で3回目なので、そろそろ慣れてきましたか?
③真ん中の1の上に、かけて1になる2組の数を書く。
次に、真ん中の1の上の空欄に、かけて1になる2組の数を書きます。かけて1になるような2組の数は、1×1=1や-1×(-1)=1などがあります。とりあえず、「1と1」を1の上の空欄に書いてみましょう。
④一番右の3の上に、③と④で書いた数字を斜めにかけた数を書き、たした数が3になればOK。
斜めに書けると図のように、「2×1」と「1×1」なので、その答えである「2と1」を一番右の3の上の空欄に書きます。この「2と1」を足すと、2+1=3となり、下の3に合ったので、完成です!
⑤一番左の上の2組の数字の横にxをつけて、点線部分のように分ける。
最後に、一番左の上の2組の数字の横にxをつけて完成です。上図より、答えは(2x+1)(x+1)です。
今回は高校生レベルの問題でしたが、難しかったでしょうか?この問題は、たすきがけを使う問題の中では一番基本的な問題なので、しっかりできるようにしていただけたらと思います。
例4 たすきがけで、2x2-7x-15を因数分解しよう。
①2x2-7x-15の数字を図の下の位置に書く。
②一番左の2の上に、かけて2になる2組の数を書く。
左の2の上の空欄に、かけて2になる2組の数を書きます。かけて2になるような2組の数は、 2×1=2なので、「2と1」を上の空欄を書きます。
③真ん中の-15の上に、かけて-15になる2組の数を書く。
④一番右の-7の上に、③と④で書いた数字を斜めにかけた数を書き、たした数が-7になればOK。
なお、③のところで、「-5と3」や「-15と1」を書いたりすると、当然、この④での計算が合いません。③で書くべき数字の組合せは「3と-5」が正しかったということです。
⑤一番左の上の2組の数字の横にxをつけて、点線部分のように分ける。
最後に、一番左の上の2組の数字の横にxをつけて完成です。上図より、答えは(2x+3)(x-5)です。たすきがけの問題は、難しくなると、②と③での数字の組合せが複雑になります。
なので、慣れるまでは、こんなにスムーズに解けるとは限りませんが、たくさん問題を解けば、適切な組合せを選べるようになります。
例5 x2+(a+b)x+abを因数分解しよう。
今までは、表に入れた値が数字だけでしたが、今度は文字が入ったたすきがけの問題を解説していきます。ここからが、たすきがけの応用問題となってきます。
①x2+(a+b)x+abの数字を図の下の位置に書く。
②一番左の1の上に、かけて1になる2組の数を書く。
左の1の上の空欄に、かけて1になる2組の数を書きます。かけて1になるような2組の数は、 1×1=1なので、「1と1」を上の空欄を書きます。
③真ん中のabの上に、かけてabになる2組の数を書く。
④一番右のa+bの上に、③と④で書いた数字を斜めにかけた数を書き、たした数がa+bになればOK。
⑤一番左の上の2組の数字の横にxをつけて、点線部分のように分ける。
最後に、一番左の上の2組の数字の横にxをつけて完成です。上図より、答えは(x+a)(x+b)です。たすきがけの問題は、応用問題になると、このように文字が入ってきます。
例6 x2+(3y+1)x+(y+4)(2y-3)を因数分解してみよう。
①x2+(3y+1)x+(y+4)(2y-3)の数字を図の下の位置に書く。
文字が入って難しそうですが、例1~例5と同じやり方をすれば絶対に解けますので、何度も言いますが、手をちゃんと動かして、頑張って理解してください。
②一番左の1の上に、かけて1になる2組の数を書く。
左の1の上の空欄に、かけて1になる2組の数を書きます。かけて1になるような2組の数は、 1×1=1なので、「1と1」を上の空欄を書きます。
③真ん中の(y+4)(2y-3)の上に、かけて(y+4)(2y-3)になる2組の数を書く。
④一番右の3y+1の上に、③と④で書いた数字を斜めにかけた数を書き、たした数が3y+1になっていればOK。
⑤一番左の上の2組の数字の横にxをつけて、点線部分のように分ける。
最後に、一番左の上の2組の数字の横にxをつけて完成です。上図より、答えは(x+y+4)(x+2y-3)です。この問題を解くことは、かなり難しいと思いますがどうでしたでしょうか?
難しいと感じるようでしたら、まず例1~5の問題を余裕に解けるようになってから、この問題を解いてみてください。
例7 2x2+(5y-1)x-(3y-2)(y-3)を因数分解しよう。
①2x2+(5y-1)x-(3y-2)(y-3)の数字を図の下の位置に書く。
2x2+(5y-1)x-(3y-2)(y-3)より、〇=2、△=5y-1、口=-(3y-2)(y-3)なので、空欄には左から、「2 -(3y-2)(y-3) 5y-1」と書きます。
②一番左の2の上に、かけて2になる2組の数を書く。
左の2の上の空欄に、かけて2になる2組の数を書きます。かけて2になるような2組の数は、 2×1=2なので、「2と1」を上の空欄を書きます。
③真ん中の-(3y-2)(y-3)の上に、かけて-(3y-2)(y-3)になる2組の数を書く。
他にも、マイナスを逆にした-(y-3)×(3y-2)がありますが、とりあえず、上の空欄に-(y-3)、(3y-2)の順に書いてみます。
④一番右の5y-1の上に、②と③で書いた数字を斜めにかけた数を書き、たした数が5y-1になっていればOK。
この「6y-4と-y+3」を足すと、6y-4+(-y+3)=5y-1となり、下に書いてある5y-1に一致するので、これで完成です!
なお、③の空欄で、上から順に「-(y-3)、(3y-2)」と書きましたが、これを「(y-3)、-(3y-2)」や「-(3y-2)、(y-3)」など、マイナスをつける位置や、順番が違うと、5y-1にはなりません。
⑤一番左の上の2組の数字の横にxをつけて、点線部分のように分ける。
例8 たすきがけで、2x2+5xy-3y2-x+11y-6を因数分解してみよう。
この問題は、今までの問題と違って、〇x2+△x+口の形ではないので、まず自分で、〇x2+△x+口の形に変形する必要があります。
① 2x2+5xy-3y2-x+11y-6
↓ 〇x2+△x+口にするため、x2とxとxがついていない値の仲間を集める。
② 2x2+5xy-x-3y2+11y-6
↓ 〇x2+△x+口にするため、カッコでくくる。これを数学では「xの降べきの順にする」と言います。
③ 2x2+(5y-1)x-(3y2-11y+6)
↓ 3y2-11y+6は因数分解できるので、たすきがけで因数分解する。
④ 2x2+(5y-1)x-(3y-2)(y-3)
②から③のところは、〇x2+△x+口の〇と△と☐の値がわかりやすいように、カッコでくくっておきます。このとき、-3y2+11y-6をカッコでくくる場合は、-3y2がマイナスなので、カッコでくくると符号が変わることに注意してください。
なお、このタイプの問題は〇x2+△x+口にすると、必ず口が因数分解できるようになっています(この問題では、3y2-11y+6のこと)ので、④のように因数分解をします。すると、この問題は、上の例7と同じ問題になるので、後は例7のように解いてください。
これで、たすきがけの問題も終了です。この問題ができれば、たすきがけの問題は、ほとんどの問題ができると思います。理解できましたでしょうか??
たすきがけの問題は高校1年生の最初の壁となる分野だと思いますが、「超重要分野」です。最後までしつこいですが、何度も手を動かして、たすきがけの作り方を理解してください。
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コメント
コメント一覧
コメントありがとうございます。まさにおっしゃる通りです。ご指摘ありがとうございました!
私も「たすきがけ」が苦手だったので、お役に立ててよかったです。応援ありがとうございます。これからもお互い頑張りましょう!!
とてもわかりやすかったです!!
応援してます!!