私にとって、七味唐辛子といえばこれ。
長野県の老舗・八幡屋礒五郎の「七味唐からし」です。「日本三大七味唐辛子」の一つとも言われるものです。
タクシーの運転手が「どの家も1本は持ってますよ。やっぱり味が違うね」とごく自然に太鼓判を押すほど、長野県民に古くから愛されています。
そんな八幡屋礒五郎が、「ガラム・マサラ 」を発売していると聞きつけました。
七味唐辛子メーカーなのに、なぜインドを代表するミックススパイス?
そこで、本店に足を運びました。
その名も「七味ガラム・マサラ」。象のイラストがとてもかわいい。
原材料は唐辛子、クミン、コリアンダー、ブラックペッパー、クローブ、シナモン、陳皮。
「七味」だけに、7種類なんですね。
日本のカレーにかけると、本場インドの味に近づくのでしょうか。
そう思って、お土産として購入。東京に戻って、試してみることにしました。
コンビニで買ったカレーに、パラパラとかけて。
七味ガラム・マサラをかけた状態、かけない状態でそれぞれ、職場の同僚に食べ比べてもらいました
まずは普通のカレーを一口。
同僚A:「うん、美味しいカレーだね」。
そして、七味ガラム・マサラをかけたカレーを食べると、すぐにこの表情に。
同僚A:「辛い!『わし辛いで』感すごい!すぐ汗かいて、涼しくなる。これ好き!」
騒ぎを嗅ぎつけたのか「コメントに定評のある俺をなんで呼ばないんだよー」と近寄って来たのは、副編集長。
副編集長:「辛っ!!」
食べた途端、顔が一変。とても笑顔だったのに...。
副編集長:「あ、でも、おいしいね。さわやかな辛さでうまい」
ここで、約3年のインド滞在歴を持つ同僚Bが登場です。
前職時代は、インドのモディ首相にインタビューしたほど、インドに精通している記者です。
勢いよくパクり。
同僚B:「ん?!」
同僚B:「インドのガラムマサラと比べて、辛さが先に主張する」
「カレーに入っているガーリックの香りが強いので、クローブやシナモンの香りは打ち消されるけれど、南インド風の辛いカレーになっておいしい」
では、インド人はこの「七味ガラム・マサラ」をどう思うのでしょうか?
協力してくれたのは、アランバムさん(44)。同僚Bと長い付き合いがある友人で、インドから来日中でした。
アランバムさん:「インドのガラム・マサラに比べて、シナモンとクローブの香りが強いね。分からない香りも混じっている」
おそらく陳皮の香りだと思われます。実際に食べてもらうと...。
アランバムさん:「辛くておいしい。いいね!」
インド人に「辛い」と言わせるのってすごい。
アランバムさん:「インドでは、ガラム・マサラにはあまり唐辛子を入れないんだ。辛さは胡椒(ペッパー)で出すことが多い。でも、これには唐辛子が入っているから、違う辛さを感じる」
インド人も認める一品のようです。
なぜ、七味唐辛子メーカーなのに、ガラムマサラを発売しようと思ったのでしょうか?
八幡屋礒五郎の室賀豊社長が答えてくれました。
七味唐辛子は、うどんや豚汁にかけるものというイメージが強く、これ以上普及しないのではないかとの思いがあったんだとか。
そこで、「七味=和食」の概念を破りたいと考え、今まで扱っていなかった素材も、店頭調合で取り扱い始めました。
すると、来店客から「七味をカレーにかけて食べる」という多くの声が。
それなら、と 「ご家庭のカレーを手軽に本格カレーに」とのコンセプトのもと、「七味ガラム・マサラ」を生み出したそうです。
室賀社長は「長年の七味製造から生まれた焙煎と粉砕粒度の調整技術は、弊社ならではのもの」と自信を見せます。
「お子様のいる家庭では、カレーを最初からあまり辛くできず、物足りなさを感じる親御さんもいらっしゃいます」
「その、もっと辛く、もっとカレーらしくという声に応えるべく、唐辛子のダイレクトな辛さを感じられ、カレーらしさの主役であるクミンが引き立つような調合としました」