(英エコノミスト誌 2018年7月14日号)
すべての通商交渉担当者が承知しているように、「お返し」は同様な関税の導入を常に意味するとは限らない。
2004年に最初に放送されたリアリティー番組「アプレンティス(徒弟の意)」の第6回で、ドナルド・トランプ氏はいつものように、氏の会社に職を得ようとほかの出場者と競っていた女性を1人クビにした。
交渉人として最悪だ、とトランプ氏は言った。また、この女性はチームメートにけなされた際、反撃できなかった。このエピソードには「しっぺ返し」というタイトルが付けられていた。
これと同じ相互主義の原則は、大統領としてのトランプ氏の通商政策の指針にもなっている。そしてこの原則が今日の中国との関税戦争を勢いづけている。
米国は7月6日、約340億ドル相当の中国からの輸入品に25%の関税を課した(これ以外にも160億ドル相当の輸入品に関税をかける予定)。
中国はこれを受け、同様な金額の米国製品に関税をかける対抗措置を講じた(その発表の数時間後に大連の港に到着した「ピーク・ペガサス号」に積まれていた大豆も、早速課税された)。
しかし、どれが何の仕返しなのかについて、両国の認識は一致していない。中国側は、米国側が攻撃してきたために同額の対抗措置を取っていると思っている。
ところが米国側も、自分たちが行っているのは報復だと考えている。中国は米国の技術を盗むなど、貿易・投資面で罪を犯しているから罰を加えている、というわけだ。