(台北 11日 中央社)市民記者を自称する女性が、戦後に中国大陸から台湾に移住したいわゆる「外省人」の高齢男性を、「中国の難民は祖国に帰れ」などと罵倒している様子を撮影した動画が、大きな波紋を呼んでいる。
女性は、台湾の所有権は日本の天皇にあると主張し、日本への復帰などを目指す「台湾民政府」に参加。紹介ページでは市民記者を名乗っている。新北市では10日夜、女性の発言に不満を持つ男性が、同団体の関連施設に対して、卵を投げつけるなどの抗議を行った。
台湾民政府は11日、桃園市亀山区にある本部にバリケードを設置して警戒を強める一方、同団体には市民記者はおらず、女性の言動とは無関係であるとの立場を表明している。
女性の発言について、蔡英文総統は10日夜、フェイスブックで、どのようなヘイトスピーチであっても、我々は非難しなければならず、いかなるエスニック・グループに関する偏見の拡散も直ちに止めなければならないと強調。人々に「多様性と平等、尊重と寛容」を心に銘記するよう呼びかけた。
一方、馬英九前総統は、男性が「栄民(栄誉国民)」と呼ばれる元軍人であることを念頭に、栄民は抗日戦争に参加し、台湾を中華民国に復帰させるなどの功績を残したと指摘。彼らの血と汗の犠牲がなければ、台湾の自由と民主主義はなかったと述べている。
また、野党・国民党の洪秀柱主席は11日、「反エスニック・グループ差別法」の成立を目指すと発表。これに対し、与党・民進党や第三党の時代力量などは一定の評価を与えている。
(邱俊欽、王承中、程啓峰/編集:杉野浩司)