論理的な解説に定評があるMBさんのワードローブに興味津々
おしゃれな大人が定番アイテムとスタイリングを披露する連載の第4回は、メンズのファッションブロガーとして日本一の人気を誇るMBさんが登場。着こなしのすべてをロジカルに解説するMBさんがどんな定番服を選んでいるのか。詳しい解説とともに披露してもらいます。
自分らしいバランスを見つけるのがおしゃれの楽しみ
“MBメソッド”と呼ばれる着こなし術のポイントは、ドレスとカジュアルのバランス。ドレス7:カジュアル3が大人の最適解と提唱しています。ただし、定番の服を選ぶポイントはそれだけにとどまりません。
「ワードローブ選びにおいて意識していることは“大人っぽくする”と“地味にならない”。これらは相反する要素だと思っていて、大人っぽくするなら無地やモノトーンを選ぶことになるのでおのずと地味になってしまうし、かと言って派手な色や柄を求めると大人っぽさは失われていきます。まさに究極の構図だと思うんですけど、2つの要素はシーソーというか、トレードオフの関係にあるんです。そのなかで、大人っぽいけど地味でもないというベストなバランスを考えるのが、おしゃれの楽しさのひとつだと感じています」
大人っぽい印象を与えるためのファクターを把握する
自分らしいバランスを見つける以前に、どうすれば大人っぽく見せることができるのかという要素を知っておくことが大前提。
「大人っぽく見せる主な要素は、“無地などのシンプルなデザインを選ぶ”、“色使いをモノトーンで統一する”、“シルエットを細身のIラインにする”、“上質感のある素材や光沢のある生地を選ぶ”ということ。これは最も大人っぽいドレスな着こなしであるスーツスタイルに通じています。上質なスーツはツヤのある生地を使っていますし、革靴はピカピカに磨き上げて履きます。色やデザインもシックで上品ですよね。それゆえにドレスな要素を取り入れると大人っぽく見せることができるのです」
夏のコーディネートでは手首がポイント
暑い季節のスタイリングに関しては、ほかの季節と異なる大切なポイントもあります。
「目につくところはコーディネートの先端部分である“首”、“手首”、“足首”。なかでも夏に意識したいのは手首です。半袖のトップスを着た場合、手首に何もないとコーディネートが寂しいので腕時計やブレスレットが不可欠。何を着ければいいかわからなかったら、100円ショップのヘアゴムでもいいと思うので試しにつけてみてください。それだけでも印象の違いがわかりますから」
MBさんらしいバランスに不可欠な定番アイテムとは
ブログなどで紹介するアイテムはすべて実際に着用するというMBさんのワードローブは膨大ですが、そのなかから最近のスタンダードとなっているアイテムを10点に絞って紹介。独自のバランスや審美眼をチェックしていきましょう。
MY定番1何も考えずかっこよくキマる“リネンのセットアップ”
リネンにレーヨンやコットン、ポリウレタンを混紡した生地を使用した『GU』のリネンブレンドジャケットとリネンブレンドイージートラウザーのセットアップ。上下ともにスリムですっきりしたシルエットに仕上がっていて、上品で大人っぽい雰囲気です。
「結局はセットアップが楽なんですよね。何も考えずにコーディネートが組めますから。とりあえず黒のセットアップを選んでTシャツやスニーカーを合わせて着崩せば、それなりにかっこよく仕上がります。実は面倒くさがりなので、パッと選んでかっこよくまとまるセットアップはある意味、究極だと思っています。『GU』のセットアップはシルエットがきれいだし、麻100%でないからこそシワシワにならずダラしなくなり過ぎることがありません。価格も7,000円位とほぼ完璧ですね。ただし、ややゆったりめのサイズ感に要注意です。私は普段Lサイズなんですが、ジャケットはMでパンツはSサイズを着用しています」
MY定番23つの要素でセレクトした“大人なプリントTシャツ”
『クラネ』のTシャツはブランドの定番ボディを使用。そこに“ART IMITATES LIFE”(=人生はアートの模倣)というプリントを加えることで旬なストリート感を加味しています。
「プリントの印象が大人っぽいかどうかは3つのポイントで決定されると考えています。それは色数、色彩、面積。色数は少ないほど落ち着いた印象になります。色彩は原色が1番強くて子どもっぽい印象になり、濃いダークトーンや淡いペールトーンは大人っぽい印象。面積はプリントの大きさで、全面プリントよりも小さなワンポイントのほうが大人です。ということで、このTシャツは大人っぽいプリントTシャツ」
「プリントの意味はわかりづらいくらいがちょうどいいと思っているんですが、それはイメージも重要だから。例えばデザインやフォルムがおしゃれなTシャツも、ど根性ガエルのプリントが入っているだけでイメージはおしゃれよりもピョン吉のほうに持っていかれますよね? メッセージプリントなども一緒で、意味がわかるとそのイメージが強くなってしまうので、わかりやすい陳腐なワードを選ぶくらいなら意味がわからないほうが変なイメージがつかなくて使いやすいと思います」
MY定番3光沢感による気品と機能性を兼備する“イタリア産Tシャツ”
適度な光沢がエレガントなTシャツは、『インターナショナルギャラリー ビームス』のオリジナルブランド『クワトロッキ』の定番品。細い糸を使用しながらも耐久性が高く、通気性や速乾性にも優れるフィーロ・ディ・スコッツィアという生地を使用しています。ややワイドな現代的シルエットを採用する一方、ボディラインを美しく見せるパターンも圧巻です。
「毎年のように買い足しているTシャツ。10年くらい前に新潟の『ビームス』で見つけて以来、気に入って買い続けています。ほかにはないくらいの強い光沢が特徴的。光沢があるということは糸が細くてもろい生地になるはずなのに、このTシャツは洗ってもあまり伸びたりしないんです。変なテカリも出てこないので、最初の風合いが続きます。でもそれ以上にガンガン洗って着回してますし、新色も出たりするので気付いたら買い足してますね。また、ツヤのある生地に上質感があるので、オレンジのような色で遊んでも子どもっぽく見えることはありません」
MY定番4上質な生地感が大人っぽさを醸し出す“ニットTシャツ”
『ユニクロ』のウォッシャブルクルーネックセーターは、シンプルで着回しやすいデザイン。その名のとおり、家庭の洗濯機で気軽に洗えるため、この時期の人気アイテムのひとつとなっています。
「同じ半袖のTシャツでも、素材がニットというだけで急に大人っぽくなります。ニットはスーツのインナーにも使うほどドレスライクな素材なので、落ち着いて見えるわけです。ということで半袖ニットを好んで活用しているんですが、上品なハイゲージニットのTシャツって昔は少なかったし高価なモノしかありませんでした。2万円くらいで手に入れて大事に使っていたんですが、今なら『ユニクロ』で1,000円~2,000円程度。しかも洗えて傷みも毛羽立ちも少ないし、本当にいい時代になったと思います(笑)。これはグレーですが、キャメル、ブラック、ネイビー、カーキという全カラー揃えています」
MY定番5今どきのストリート調を加味した“オリジナルのバスクシャツ”
オリジナルの『MB』ブランドで製作したバスクシャツは、生地から別注したこだわりの逸品。ほかにはない配色と旬なネオンカラーのスパイスも特徴的です。ロゴプリントに記されているのは“Pour etre different, il faut etre irremplacable.”(≒差別化するためには、かけがえのない人間になる必要がある)。
「もともとフレンチカジュアルが好きで、その象徴ともいえるバスクシャツを自分でも作りたいと思っていたんです。ちなみに、1番好きなデザイナーであるジャンポール・ゴルチエ氏は『セントジェームス』のそれが定番でしたし、ココ・シャネル氏もバスクシャツを愛用していました」
「そんなバスクシャツの魅力は、生地のハリ感。ツヤ感もあって適度に大人っぽい雰囲気なんです。また、身幅が広い上にボートネックなのでインナーにシャツなどを合わせやすい点もポイント。だからこそ着回してしまうんですが、たいていネイビー×白のボーダーなのでそれがつまらなくなってきたんです。オリジナルのデザインを考えていたところ、たまたま貼った付箋の色がかっこよくてそのまま採用しました(笑)」
MY定番6リラックスできてハイセンスな“道着風イージーパンツ”
『レインメーカー』のドウギパンツは、素材のバリエーションが豊富な定番アイテムです。今の時期はデニムやワッシャーリネンなども展開されていますが、これは最も快適なタイプ。トリアセテートと高収縮ポリエステルの異収縮糸を組み合わせることでライトウェイト生地に仕上げています。シルキーな光沢がエレガントですが、ワンウォッシュしたようなマイルドな風合いはカジュアル。そのバランスが絶妙です。
「3年くらい前から買い始めたんですが、かなり気に入っているパンツです。スーパーワイドともいえるシルエットが特徴で、柔道着のパンツみたいに紐でウエストをギュッと絞ることでギャザーが生まれます。それが装飾になって小洒落たインパクトが出るという仕掛けです。楽ちんなのに生地感がスラックスのようで大人っぽくて、欠点が見当たらないので毎日のようにはいてます。人にはスキニーパンツをおすすめすることが多いですし、誰でもかっこよくはける本命のシルエットはスキニーだと思っていますが、これはやっぱり楽なので手放せません(笑)」
MY定番7ブラック基調の着こなしも明るく見せる“白いキャップ”
やや浅めのキャップは『ディスカバード』製。シンプルな中にアイキャッチとなるプリントがあしらわれています。
「比較的モノトーンの着こなしが好きなんですが、それには顔つきが子どもっぽいという理由もあり、大人っぽくまとめたいんです。半袖やショートパンツを着用することも多い夏は、落ち着いて見えるブラックを使わないと嫌なのですが、黒がメインだと季節感はなくなりますよね。そこで活用するのが白いキャップです。身体の先端部分は目立つので、キャップはかなり印象的なアイテム。そこがホワイトだと全身も明るく見えて、夏っぽく仕上がります。ですから、上下とも黒というスタイルのときには必ず白いキャップを合わせるようにしています」
MY定番8使い勝手の良いサイズ感にこだわった“小ぶりなクラッチバッグ”
MBさんは、DMMオンラインサロンで「MB LABO」という会員制コミュニティも運営。その活動の一環であるレビューサイト『服ログ』のオリジナルブランドから生まれた第1弾のアイテムがこのクラッチバッグです。
「メンズ向けのクラッチバッグはA4サイズを収納できるサイズが売れ筋。それはビジネスでも使用できるからです。でも実は、小さめのクラッチバッグのほうが冠婚葬祭でもじゃまになりませんし、バッグインバッグとしても活用できます。そもそもオフで使用するなら財布やスマホ、タバコなどが入れば十分だなと。そんな理想を追いかけて、可能なかぎりサイズダウンし、ツヤのある上品なレザーを選び、値段も抑えて完成したのがこの商品というわけです。シンプルなデザインですが、内側にはコンパートメントがあってスマホなども収納しやすくなっています。実際に便利なので結構使ってます」
MY定番9普段使いから旅行まで対応する“大容量で独創的なボストンバッグ”
コラボで誕生したゴールド×ブラックの『Gショック』が先日発表されたことでも話題を集めた『カラー』。独創的な色使いや斬新な素材開発などに定評があり、その世界観がバッグ類にも反映されています。このボストンバッグもさりげなく個性的。シボ感のあるレザーがメインですが、サイド部分は耐久性の高いナイロン生地で切り替えられています。
「ひねくれたデザインが多いので『カラー』のバッグはすごく好きなんですが、これはとくに気に入ってます。ハンドルだけでなく、バッグ本体の取っ手を掴むデザインがほかにはないんです。ブラック×ゴールドの色合いもラグジュアリー。最近はリラックスできるシルエットのTシャツなどが主流なので、カジュアルなサコッシュなどより、わざとらしいくらいラグジュアリーなレザーバッグを合わせたほうが大人っぽくてバランスが良いんです」
MY定番10夏のコーディネートに欠かせない“手首周りの3点セット”
手首周りに着けるアクセサリーは主にこの3点。左から腕時計は『カルティエ』、チェーンブレスレットは『マーズ』、コードブレスレットはオリジナルの『MB』です。『カルティエ』はフランスの名門ジュエラーとして有名ですが、実は世界で初めて腕時計を生み出したブランドでもあります。この時計は2016年に発売されたモデル「ドライブ ドゥ カルティエ ウォッチ」。
「腕時計の販売をやっていたことがあるのでそれなりに詳しいつもりなのですが、高級でエレガントな時腕計のなかでも『カルティエ』は一段違うという認識。やっぱりオリジナルですから。機械式でこれほど薄い時腕計はそうそうありませんよ。インデックスはプリントじゃなくて立体的。ギョーシェ彫りも各所に施されています。シンプルだからこそ細部にこだわっていて差が感じられますね。シルバーのブレスレットは3年ほど使っているんですが、あえて経年変化でくすませています。コードのブレスレットは自分で作ったモノですが、3年前に作ってからずっと愛用。目立ち過ぎない細身が好きなんです」
大人っぽいけど地味でもない。絶妙なバランスで作るMBさん流コーデとは
最後は、定番アイテムを中心に組み立てた普段のコーディネートをお披露目。大人っぽくて個性もあるバランスの取れたスタイルはさすがです。着こなしやテクニックを盗んで自分のスタイリングのブラッシュアップを!
コーデ1モノトーンでまとめた大人で地味じゃないセットアップスタイル
セットアップ、Tシャツ、キャップは定番として紹介したアイテム。「ブラックの上下ですが、白いTシャツとキャップを合わせることでカジュアルな雰囲気や涼しげな印象をMIXしています」。また、『アダム エ ロペ』のスリッポンはパンツと同色の黒。パンツと靴を色でつなげて脚長に見せる定番的なテクニックです。
前出の3点セットを両腕の手首に分けて着けるのが基本。「手首が寂しいので、できれば両手に。ゴールドのアクセサリーを着けることもありますが、重ね着けする際は悪目立ちしないシルバーが定番です」
コーデ2お気に入りのパンツで引き締めたエッジィなカジュアルコーデ
「ボーダーのバスクシャツがカジュアルなので、黒いパンツで引き締めています。かなりワイドなシルエットですが、生地感やギャザーが上品じゃないですか?」。Aラインのシルエットは挑戦するのが難しいですが、MBさんの着こなし方は参考になります。ツヤ感のあるクラッチバッグを持つことで大人っぽさを加えているのもポイント。
バスクシャツのプリントが装い全体のアクセントとして効いていて、地味じゃないバランスに。「たまたま辿り着いた色ですが、トレンドでもありますし、ネオンカラーのピンクが本当に気に入ってます」
バランスが重要だと意識するだけでセンスアップにつながる
冒頭でも解説したように、MBさんのワードローブやスタイリングは“大人っぽいけど地味じゃない”というバランスが巧妙。
「“大人っぽくする”と“地味にならない”がトレードオフの関係にあるということを知って意識するだけで、服選びの指針になると思います。意識するかしないかでも大きく変わるはず」
相反する2つのポイントですが難しいと思わず試してみるべし。自分のなかでのベストなバランスを見つけていくことがセンスアップのカギになるでしょう。
プロフィールMB/ファッションブロガー、作家
アパレルショップのスタッフ、店長、エリアマネージャー、バイヤー、コンサルタント、ECサイトの運営者などを経て独立。その経験を活かして論理的に着こなしを解説するブログ
「KnowerMag」
が人気に。年間1,500万円以上を洋服代に費やし、自分で買って試したアイテムしか紹介しないのが鉄則です。メールマガジンやオンラインサロンなども手掛け、著書は累計100万部。最新作「世界一簡単なスーツ選びの法則」(ポプラ新書)も好評発売中です。また、7月19日には六本木に「スナックMB」を開店。
photo_Yuta kono
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