物価の基調コアコアCPI、予想外の鈍化-日銀に影響との見方
日高正裕-
コアCPI0.8%上昇、予想と同水準-伸び率4カ月ぶり拡大
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フォワードガイダンスが出される可能性とJPモルガン証券
総務省が20日発表した6月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比0.8%上昇(予想は0.8%上昇)となり、エネルギー価格の押し上げによって4カ月ぶりに伸びが拡大した。ただ物価の基調を示す生鮮食品とエネルギーを除く全国コアコアCPIは0.2%上昇(予想は0.4%上昇)にとどまり、3カ月連続で伸び率を縮小した。
先行指標である東京都区部のコアコアCPIが宿泊料や外国パック旅行費などの上昇を受けて伸び率を高めていたため、全国も伸びが加速するとみられていたが、予想外の伸び鈍化となった。物価の弱さが裏付けられ、日本銀行が月末に開く金融政策決定会合にも影響を及ぼすとの見方も出ている。
総務省によれば、コアコアCPI減速の主因は、昨年6月の酒類値上げの影響一巡による生鮮食品を除く食料の伸び縮小と、NTTドコモの5月末の新料金プランによる携帯通信料の下落幅拡大だ。食料と通信料が全国の消費に占める割合は東京よりも高く、物価の伸びを抑制した。
上昇したのはガソリン(16.1%)や電気代(3.1%)、灯油(20.5%)などエネルギー関連が目立つ。日銀は従来、物価は「プラス幅の拡大基調を続け、2%に向けて上昇率を高めていくと考えられる」との見方を示してきたが、基調にはっきりとした改善は見られず、コアCPIの上昇はエネルギーに左右されている。
農林中金総合研究所主席研究員の南武志氏は電話取材で「消費の勢いのなさが、物価の低調さをつくりあげている」と分析した。西日本豪雨の影響で野菜の値段が上がった場合、他の消費が減速し、コアCPIやコアコアCPIは「軟調になる」可能性もあるとみている。
異次元緩和が始まって5年以上たった今も目標達成への道筋は見えない。金融正常化が進む米欧との距離が広がる中、大量の国債購入を続ける異次元緩和の副作用への懸念も強まっている。日銀は30、31の両日、金融政策決定会合を開き、経済・物価情勢の展望(展望リポート)で2020年度までの物価見通しを見直すとともに、物価の低迷が続いている背景を検討する。
JPモルガン証券の鵜飼博史チーフエコノミストは電話取材で「日銀にとっても物価の基調の減速は大きな問題」と指摘し、「どう対応するか真剣に考えなければならないだろう」と述べた。リポートでは、日銀は物価見通しを下げても政策は維持すると考えてきたが、追加緩和策として長短金利を一定の条件を満たすまで引き上げないと約束する「フォワードガイダンスが出される可能性が高まった」と予想した。
メリルリンチ日本証券のデバリエいづみ主席エコノミストも、ブルームバーグテレビジョンの取材に、コアコアCPIの低迷は「日銀にとって痛手となるだろう」との見方を示した。現行の長短金利操作については「政策変更を示唆する段階ではない」とみている。
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