こんにちは、パオロ・マッツァリーノです。ここしばらく原稿執筆を優先していたので、ブログを書くのは久しぶりです。その間、世間ではいろいろあって私が思ったのは、やっぱりベーシックインカム、本気で検討するべきじゃないか、ってことでした。
日本にいるかぎり、どこに住んでいようと地震などの自然災害からは逃げられません。大規模な自然災害ともなると、人間の努力や心掛けで防ぐのは不可能です。地球規模の気候変動に見舞われている以上、今後、自然災害は増えることはあっても減ることはないでしょう。日本で暮らしていれば、だれもが一生に一度は被災者になるといっても過言ではありません。
で、被災したときになんらかの援助を受けるには、罹災証明とかを申請しなきゃいけないわけですよ。被災直後のタダでさえ肉体的・精神的ダメージが大きいときに、そんな申請すること自体がみじめでイヤな感じになるんじゃないですか。しかも災害直後は役所のほうだって復旧作業にてんてこまいだから、書類の審査とかはどうしたって後回しになってしまいます。
ベーシックインカム(BI)をやってれば、なにも申請せずとも、毎月の決まった金額がいつもどおり自動的に口座に振り込まれるんですよ。いつ、いくらもらえるのかわからない義援金や見舞金よりも、確実に生活の足しになります。突然の災害で家を失おうと職を失おうと、BIだけは生きてるかぎり無条件に誰もがもらえるんです。BIは誰も見捨てません。困ったときに、これほどあてにできる画期的な福祉システムが他にありますか。
先日から『健康で文化的な最低限度の生活』というドラマもはじまりましたけど、もちろんBIの本来の目的は、世界中の国で破綻しかけている、生活保護など福祉制度全般の再生にあります。
福祉が目の敵にされがちなのは、それを不公平だとカン違いしてるひとが多いからです。
しばらく前に、ガイ・スタンディングさんの『ベーシックインカムへの道』という本を読みました。これまでのBIをめぐる論点はほぼ押さえられてるので、入門書としてもおすすめです。
この本によると、世界中で似たような世論調査結果が出るそうです。「BIを受け取っても、自分は仕事を辞めたり減らしたるするつもりはない。でも、自分以外の人はBIを受け取ったら怠け者になる」という理由でBIに反対する意見が多いとのこと。
要するに、「よのなかの連中はみんな怠け者だが、私は少数の勤勉な人間である」と、「多数の」ひとが考えてるわけです。なんという矛盾。この矛盾した人間不信&自己過信は世界共通の現象なんです。
日本人もねえ、自分らは勤勉だが外国人は怠け者だと長年いってきましたけど、いまや日本のコンビニや外食産業は勤勉な外国人労働者に支えられてます。
実際には、世界中の人間の多くは勤勉なんです。もしも世界中が怠け者ばかりだったら、とっくのむかしに地球の文明社会は崩壊してます。
でも勤勉なひとほど、自分だけが必死に働いていて、他人は怠けてるという被害妄想に取り憑かれやすく、福祉制度はマジメな自分が払った税金を怠け者に与える不公平な制度だと敵意を抱いてしまいがち。
ほら、だから、BIなんですよ。BIは最初からすべてのひとに平等に支給されます。究極の公平な制度です。
困ってない人にまであげる必要はない、って考えが、そもそも間違ってます。だって災害の例でもわかるように、一生に一度くらいは、だれもが必ず困るんです。困ってからもらったんじゃ遅い。困る前に支給されてれば、困ったときにすぐ使えます。
悪いようにはなりませんて。BIはきっと有意義に使われます。なにしろ、よのなかのほとんどのひとは勤勉なのだから。
[ 2018/07/19 21:24 ]
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