コーヒー好きを自認する人は多いと思いますが、そのなかで何人が好みのコーヒー豆を知っているでしょうか。
好みのコーヒーショップでお任せのコーヒーを飲むのも、前知識なしに新たなコーヒーとの偶然の出合いを楽しむのも良いですが、やはりコーヒー豆の種類、そしてその個性を知っていれば、よりいっそう味の違いを堪能することができるはず。
コーヒー豆の基本をおさえて、自分好みの豆を見極めましょう!
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コーヒー豆の2大品種をチェック!
200種類を超えるとも言われるコーヒーの品種。こう聞くと、膨大過ぎて把握することが不可能と感じられるかもしれませんが、主に日本で親しまれているのはアラビカ種とロブスタ種の2種。まずはこの2種のコーヒー豆のキャラクターを知るところから始めてみましょう。
バランスに長けた「アラビカ種」
病害虫に弱く、標高の高い地域での栽培が基本ですが、コーヒー豆総生産量の約70%を占めるほど普及しているのがアラビカ種。なかでも豊かな香りと苦み、甘みを持つ一級品は、スペシャルティコーヒーとして高く評価されています。自然交配や改良により品種が細かく分かれており、特にブルボン種、ティピカ種は世界各地で収穫されています。
クセが魅力の「ロブスタ種」
ロブスタ種は低地栽培ができ、病害虫にも強いため、生産量が安定しているのが特徴。ただし、特有の泥臭さがあり、そのまま飲むには適さないとされています。コクを増幅させるアクセントとして、エスプレッソに少量混ぜて使うのが一般的で、アラビカ種より劣る性質とされてきましたが、最近では良質なロブスタ種が出現し注目を集めています。
個性の異なる2つのスタンダード
そもそもコーヒーの栽培は年間を通して平均20℃程度で、生長期に十分な雨量のあること条件。最も適するには赤道付近の温暖な地域で、南米、アフリカ、東南アジアと帯状に生産地が連なるため、コーヒー生産に適したこの一帯は「コーヒーベルト」と呼ばれています。
飲用のコーヒー豆は、上で紹介したアラビカ種とロブスタ種(カネフォラ種の一種)に大別され、味としては前者が優れているとされてきました。コクと香りが豊かで酸味があり、レギュラーコーヒーに最適だからです。日本の自家焙煎コーヒー店も、まずアラビカ種を扱うところが多いのはこうした理由が背景にあります。アラビカ種の原産国はエチオピア。現在ではブラジルやコロンビア、中米からアジアで栽培されています。突然変異や改良により分化し、2004年にはパナマ国際オークションで最高落札価格を記録したゲイシャ種が話題となりました。
一方ロブスタ種は、アラビカ種より栽培管理しやすく、収穫量が多いのが特色です。安価なため、インスタントコーヒーにも使用されていることを覚えておきましょう。
アラビカ種の代表品種を知れば理解が深まる
お伝えした通り、2大品種のひとつであるアラビカ種は様々に枝分かれし、「コーヒーのスタンダード」として世界中に広まっています。コーヒーのツートップを知ると同時に、アラビカ種については品種までを知っておくと良いでしょう。
ここでは人気が高く、日本でも口にしやすい代表種を紹介します。
ブルボン
アラビカ種を代表する2大品種の一翼
ブルボン島、現在でいうレユニオン島へイエメンから移入された豆が突然変異して生まれたブルボン種。風味は抜群なものの病害虫や霜に弱く、品種改良が盛んに行われてきました。
カトゥーラ
ブルボン種から発生した中米のメジャー銘柄
低温や病害虫に影響されにくく、ブルボン種と同様の豊かな酸味と甘みが味わえます。グアテマラをはじめ、中米各国で主要品種に君臨。
ゲイシャ
生産性こそ劣るが風味はピカイチ
2004 年にデビューした、エチオピア原産の栽培品種。他にないフルーツのような香りと希少価値の高さで、世界中のバイヤーが注目しています。
ティピカ
ポテンシャルが高く近年その実力が見直されている
アラビカ種の原種とも言われる古い品種です。病害虫への耐性が低く、生産性に難があるとはいえ、好条件下では豊かな甘みを持つことも。
パカマラ
エルサルバドル出身で香りと粒に特徴あり
ティピカ種の突然変異であるマラゴジペ種と、ブルボン種から派生したパカス種をかけ合わせたものがパカマラ種。粒が大きく、特有の香りを持つのが特徴です。
ムンドノーボ
高い生産性を武器にブラジルで広まった品種
ブルボン種とスマトラ種を交配した品種で、前者に近い風味を持っています。病害虫に強いため収穫量が多く、ブラジルの主力品種として浸透しています。
覚えやすい”国名品種”で知識を広げる
コーヒーは豆の名前=国名となるケースが多いのもポイントです。見方を変えれば、国名が付いた品種の味わいを知れば、産地ごとの特徴が把握できるということ。ここでは5つの代表的な”国名品種”をキャラクターとともにご紹介します。
マンデリン
しっかり重めが好みならぜひフルボディで
コク深さで知られ、主な産地はインドネシア。ボディの強さが生きるよう、深く煎って苦みを楽しむのがセオリーとされています。とはいえ、中煎りでも個性は十分出る品種です。
■代表的な産地:インドネシア(マンデリン、トラジャ)、インド
グアテマラ
フレッシュな酸味が効果的なアクセントに
良質な中米産の豆は、華やかな香りと明るい酸味が魅力。煎り過ぎると酸味が消えてしまうので、個性を生かすなら浅~中煎り程度がおすすめ。ブレンドに混ぜるのも一興です。
■代表的な産地:グアテマラ、コスタリカ、エルサルバドル、ニカラグア
ブラジル
クセが少なく飲みやすさに定評あり
酸味と苦みのバランスが良く、万人受けしやすいのがブラジル種。従って、ブレンドのベースとして使われることが多く、焙煎度合いにかかわらず安定した風味を楽しめます。
■代表的な産地:ブラジル
ケニア
果実感のある爽やかな香りが◎
甘く爽やかな酸味と香りが持ち味で、とてもフルーティ。特にカシスやブルーベリーを彷彿とさせる風味が素晴らしく、日本だけでなく欧米各国でも高く評価されています。
■代表的な産地:ケニア、エチオピア、ルワンダ、パナマ
コロンビア
コクと甘さを兼備する優等生
コーヒーらしいナチュラルな甘さと重量感のあるコクを持ちます。ロースト加減を調整し、口当たりスッキリなら中煎り、厚みがある深い味わいが好みなら深煎りがおすすめです。
■代表的な産地:コロンビア、ボリビア、パプアニューギニア
豆を指定して豊かなコーヒーライフを!
駆け足で紹介してきましたが、ここまで読んでいただいた方はざっと10種類はコーヒー豆を知ることができたということです。
基本の豆の名前と特徴を、実際に味わいながら覚えれば、例えば「ティピカが好きなので、似た味わいの品種を」などと、新しい豆を探すヒントとなるはずです。
コーヒーは嗜好品。だからこそ、自分の好みを知って、思う存分にコーヒーのある生活を楽しみたいものです。
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文:諸橋 宏(Hiroshi Morohashi)
写真:是枝右恭(Ukyo Koreeda)