写真はイメージ=PIXTA いよいよ夏本番。「家の中が暑すぎる」という人は、窓の交換や断熱工事などをする「省エネリフォーム」も選択肢の一つだ。光熱費の節約効果に加え、税金の減額措置もある。制度の内容を確認して上手に活用したい。
省エネリフォームはサッシやガラスの交換、内窓の設置などの窓回りや、天井や壁、床などの断熱工事が代表的。
床面積50平方メートル以上の自宅なら、これらの改修を行うと工事代金の一部が所得税から差し引かれる税額控除を受けられる。エアコンや給湯器を省エネタイプの機器に交換した場合の費用も対象になる場合がある。
所得税の控除を受けるためには窓の改修が必須だ。工事後の居住が2017年3月以前からの場合、「全居室の全ての窓」を改修する必要がある。17年4月以降に住み始めたのなら、住宅性能評価機関が発行する評価書などで省エネ効果が保証されれば「全て」の必要はないが、窓の改修が条件なのは同じだ。
実際、一般社団法人日本建材・住宅設備産業協会(東京・中央)によると、冷房使用時に外部から熱が入る箇所は「開口部」が約7割。省エネ効果を高めるには、まず窓回りの改修が有力候補になる。
所得税の減税は、工事代金の支払い方で利用できるタイプが決まる。10年以上のローンを組めば通常の「住宅ローン減税」も利用できるが、10年未満のローンや一括払いは「投資型」と「ローン型」から選択する。両者の併用はできない。投資型は一括払いでもローンを組んでも利用できるが、ローン型は5年以上のローンのみ。5年未満のローンは投資型のみ利用できる。
投資型とローン型では工事費用の計算方法が異なる。ローン型はあくまで実費だが、投資型は国が工事内容と地域ごとに定めた「標準的な工事費用相当額」を当てはめる。実費ではないので見積もりの際などに確認した方がいい。「内窓の新設」は首都圏や関西圏では7700円に家屋の床面積の合計を乗じた金額、「エアコンの設置工事」は全国一律で1台当たり9万1200円、といった具合だ。
工事費用から補助金などを差し引いた「控除対象額」で控除額が決まる。消費税率8%の場合、控除対象額の上限は250万円だが、太陽光発電設備を設置すると投資型に限り350万円まで引き上げられる。投資型は対象額の10%が単年、ローン型は最大で同じく2%ずつが最長5年間控除される。上記の例だと約22万円の減税になる。
補助金などの支援制度を確認するには、一般社団法人住宅リフォーム推進協議会(東京・千代田)が運営する「地方公共団体における住宅リフォームに関する支援制度検索サイト」(http://www.j-reform.com/reform-support/)などが参考になる。
ローン型を利用した場合、省エネとは関係のない増改築、バリアフリーなどの改修費用も減税対象になる。控除対象額の上限は「省エネ分」と「省エネ分以外」で1000万円。省エネ分以外は工事費用相当分の年末ローン残高の1%が控除される。いずれも確定申告が必要だ。
断熱リフォーム前(写真上)と後(LIXIL提供) 省エネリフォームを行うと、翌年の家屋分の固定資産税も3分の1減額される。工事終了後3カ月以内の申請期限があるので要注意。申請に必要な書類は事前に確認し、早めに手配しておこう。
そもそもリフォームが必要なのかどうかを判断するには、環境省の「家庭エコ診断制度」などが参考になる。公的資格である「うちエコ診断士」らが、専用ソフトなどを使って各家庭の実情に沿った省エネ対策を診断・助言する。
賃貸物件を無断でリフォームできないのは当然だが、所有する物件が集合住宅だと、管理規約などで改修を制限している場合が少なくないので、事前に確認が必要だ。
リフォームというと大掛かりな印象もあるが、内窓の設置など工事自体は1日程度で済むものもある。脱衣所の断熱など、冬に向けた対策も含めて今から検討してもいいだろう。省エネ減税だけでなく、他の助成制度との併用も含め、費用対効果を見極めたい。
(嘉悦健太)
[NIKKEIプラス1 2018年7月14日付]
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