オーバーロード シャルティアになったモモティア様建国記   作:ヒロ・ヤマノ
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前回おっぱいネタ入れてなかったじゃないか…ホント何やってるんだよ俺は…(絶望


『霧の巨人』

「いったあぁー!…くないかやっぱり」

 

 ユグドラシルでも見たことがない攻撃方法と相手に驚いてしまい、まともに攻撃を受けてしまったがシャルティアの体どころかヒラヒラしたボールガウンの装飾も汚れ一つない。逆に背後の岩肌に大きな凹みとヒビが入り前方周囲、扇状に大小さまざまな形の岩や石が散らばっていた。そしてその向こう側には原因たる雲の中に巨大な手が存在していた。

 

(一旦離脱しよう)

 

 相手の不意打ちの攻撃をまともに食らって防具さえなんともない事から戦力差は楽観してもいいかもしれない。だが、意表を突かれたのは事実の上なにより未知の相手を観察したい欲求が勝った。

 瞬時に戦術、もとい観察方法を考えた後スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンをアイテムボックスにしまいつつ飛行魔法を発動する。と同時に前方の雲だった敵の姿がはっきり見え始める。

 

「ほう、ミストフォームが使える巨人。と言ったところか」

 

 右手を大きく振りかぶった姿を見下ろし、離れた上空から観察を始める。それと同時に投石、もとい視界を覆うほどの大岩が飛んできたが瞬時に発動した魔法の矢(マジック・アロー)で粉砕する。

 散り落ちる破片を一瞥した後、改めて観察を始める。肌の色は人間で言えば病的に青白く、髪や髭は周囲の雪と同化してしまうほど白い。その髪と髭が顔を覆っており表情を伺うことはできないが大きさは十メートル程だろうか、ユグドラシルの巨大ボスと比べればやや貧弱に見えた。

 

 続く飛んできた大岩を今度は右手で殴りつけてみる。思った通り右手に痛みを覚えることもなく、逆に岩の方が二つに割れ地表に落下していく。

 

(ひょっとして、攻撃方法はこれだけなのかな?だとしたら拍子抜けなんだけど…)

 

 おそらく髪越しの視線を此方に向けたまま硬直していると思われる巨人を見つめる。第三者が見れば睨み合いをしているように見えるが、実際は違う。少なくとも空を漂う少女は相手を観察するように瞳を輝かせていた。

 

「ウ、ウボオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 突如巨人の体が動く。両手を握りしめ空に向かって咆哮を吠えた口から徐々に消え霧状に変化していく。(随分と変化が遅いな)モモンガの主観ではあったがユグドラシルにおけるミストフォームは初心者が使っても瞬時に変化が可能であった。無論使用するタイミングと熟練度がある上級者との壁はあるが、巨人が使うミストフォームによる変化はあまりにも

 

「本当に遅い…」

 

 思わずひとりごちてしまう。相手が思ったより弱い事に安堵する以上に、山頂にいるのだからこの辺りではかなり強い存在だと思っていた敵対者に対する失望感がやや上回ってしまう。思えば夢のような自然の中で『山頂』という存在に夢を抱きすぎたのかもしれない。リアルなのだから強者や特別な存在がそんな分かりやすい場所にいるとは限らないのだ。これは早々にこの敵対者を倒してしまい他の知的生物を探した方が得策と思われた。

 モモンガが頭の中で方針転換している間に、ゆっくりとした動きでミスト状態と化した巨人が目の前まで飛んできた。無論考えながらもそれを見逃したモモンガは最後まで観察する事にする。

 

(最後に何をしてくれるのかなぁ)

 

 途端に目の前の霧が濃くなり雲のように変化した中から再び拳が飛び出してきた。「またか…最初に戻るわけだ」落胆の色を隠せなくなったモモンガの瞳は興味を失ったように輝きを失い、気だるげに言い放った。同時に相手の拳をその小さな手で受け止める。傍から見れば空に浮かんだ可憐な少女が雲から生えた巨大な拳を片手で受け止めている、誰もが見れば夢か幻を疑うような状況だった。

 

「よ!っと」

 

 モモンガはわずかに気合の声を出すとともに、受け止めている右手に少しだけ力を入れ上にあげる。途端に相手の拳が生やしている雲ごと何の抵抗もなく頭上に移動した。相手の動揺が拳を通して伝わるが、最早作業モードと化していたモモンガは何の反応も示さない。そのまま大きく振りかぶる。

 闇夜に輝く銀髪とヒラヒラ舞うボールガウンのスカート、反らした胸からはおおきな膨らみがふるふると揺れた。月光の下で描くその体は見る人が見れば芸術的な美しさに見えただろう。右手から上を見なければという注釈はつくが。

 本人はそんなことを全く考えず、目的地へ向かう途中にお互いが不幸にも出会ってしまった面倒な雑魚モンスターを相手するかの如く、淡々と投石のお返しと言わんばかりに山頂へ雲と拳を投げ捨てた。

 

 周囲の山脈を震わすような轟音が闇夜に響き渡る。同時に雲の代わりに大量の土煙が山頂周囲を覆った。

倒したかと思ったがセンス・エネミーによる敵の反応は変わらず山頂を示しており、トドメをさす手間が増えた事に一瞬不満を覚えるも、昼間に使えなかった上位魔法を実験がてら使えばいいと前向きに切り替えることにした。

 

「せっかく真っ暗なんだし、見た目も派手な魔法を使ってみようかな」

 

 元からこういった確認作業が好きなモモンガは途端に機嫌を取り戻し使って確認すべき魔法を思い浮かべる。

 

星に願いを(ウィッシュ・アポン・ア・スター)をこんなところで使うわけにはいかないし…)

 

 時間を掛けず瞬時に決定を下したモモンガは両手を広げそのまま行使する。

 

「よし決めた、第十位階魔法。〈隕石落下(メテオフォール)〉」

 

 途端に闇と月光に染まった山脈を紅い光が覆う。無事行使できた事を確認できたモモンガはそのまま結果を表す頭上を見上げ同時に、予期せぬ結果に瞳を見開くことになった。

 

「え?あれ?」

 

 モモンガの使った第十位階魔法〈隕石落下(メテオフォール)〉。それはその言葉の通り巨大な隕石を一つ召喚し地表へ落下させる、ユグドラシルの世界でも上位者の中ではそれなりにポピュラーな魔法だった。

 周囲の環境は違うがユグドラシルでも見慣れた熱せられた巨大な光が地上に落下していく様は飛んでいるモモンガには見慣れた物として確認できた。――だが。

 

「数が多すぎる、ってまさか!」

 

 頭上を覆う闇夜を切り裂く光、それは一つに留まらず視界に収めただけでも数十の紅い光の源が山頂へ向かって落下していく。止めることもできたが敵性目標に問題がない事を確認し今までの実験結果を思い出していた。

 昼間に確認した数々の魔法も全てではないが同じように威力の上がっている物もあった。それと同じ効果がこの〈隕石落下(メテオフォール)〉にも適用されているとすれば…。

 

(低位の攻撃魔法ではあまり実感はなかったんだけど、これは。どうしよう)

 

 空気を震わせながら様々な形をした隕石が土煙に覆われた山頂へ落下する様を一応の退避のため上昇しながら見下ろす、「いつか試さなきゃいけないことだし」と自分を納得させることにする。なによりギルドメンバー数人と魔法をかけ合わせなければ不可能なこの雨のような隕石落下(メテオフォール)を自分一人で出来たことにわずかながら抑制された精神が喜びを覚えてしまった。

 

「まぁバグかチートっぽいけど…ね。」

 

 落胆するような独り言とともに、周囲を地震と巨大な爆発音が包んだ。

 

 

 

 

 

 

「山がなくなっちゃったよ」

 収まった後、すぐさま確認のため土砂と土煙を魔法で吹き飛ばしその威力にも少し驚いた後、改めて山頂であった場所を見降ろした。

 

 山頂であった面影は見る影もなく山の高さはほぼ全て削られてしまっていた。積もっていた雪は見る影もなく蒸発し、山のあった辺り一帯は岩肌がむき出しになっており、その周囲の山脈にも目を凝らせば岩肌が露出しており同じく蒸発したのかとも思ったが、近くの山は兎も角離れた場所では現在進行で地震による雪崩が起こっていることが伺えた。

 

「十位階魔法でもとんでもない威力だな、気を付けて使わないと」

 

 いくら敵を倒したといってもこの世界の自然をこの山のように無くしてしまうのはモモンガとしても本位ではない。

 

「もし超位階魔法まで威力が上がっていたら」

 

 思わず身震いしてしまう、同時に「よほどのことがない限り実験もできないな」と自らの中で結論を出した。同時に仮にも敵対した巨人について考える。装備は貧弱な服のみ、攻撃方法も原始的な攻撃で全く相手にならなかった。他にもあった可能性はあるがあの様子では期待できない。

 

「一先ず、脅威となる強者ではなかったか」

 

 考えていた逃走方法も使用することなく軽い落胆と安堵を僅かに感じつつ考察と今後の作業確認を頭の中で整理すると、最初に考えていた生物と会った際の基本対応で重要な事を忘れている事に気づいた。

 

「あ!しまった、意思疎通ができるか確認するのを忘れてた」

 

 最初から相手は不意打ちで敵意むき出しだったしいいか、と納得することにした。

 

 




モモンガさん一人だと台詞回しが厳しいので早々に次でキャラを出す






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