重症熱中症患者さんのエピソード
ここで具体的な熱中症の症状についてご紹介します。昔、私が診療した熱中症患者さんのエピソードに、いくつか加味してお話ししましょう。個人情報のため、年齢や性別などは変えてあります。また、「この患者さんはうちの家族かも」と思った方がいらしても、そうではありません。典型的なケースはしばしば似通っているのです。
8月の初め、救急車で運ばれてきた患者さんは90歳近い男性でした。救急隊から聞くとお一人暮らしで、エアコンが以前から壊れていたとのこと。近所の人が心配して様子を見に行ったところ、自宅で倒れていたそうです。
病院に到着した時は、皮膚はカサカサに乾き、触るとかなり熱い体でした。体温は39度。病院のカルテを見ると、心臓病と糖尿病で月に1回通院されていました。
意識はもうろうとし、わけの分からないことをおっしゃっています。我々はすぐに点滴をし、服を全て脱がせて霧吹きで水をかけ、うちわで扇ぎました。扇いでいる私たちも汗だくになっていました。
採血検査結果では、凝固機能(血がもともと持っている、血を固まらせる機能)が悪く、さらに肝臓と腎臓の数値も悪くなっていました。治療を続けましたが、途中肺炎を合併してしまい、亡くなりました。
暑くなります、お気をつけて
このケースのように、「一人暮らし」や「エアコンがない」などは熱中症を起こす原因と言えます。また、前出のガイドラインでは、「こういう人が熱中症の危険あり」として、「男性」「高齢」「独居」「日常生活動作の低下」「精神疾患や心疾患などの基礎疾患を有すること」などを挙げています。典型的には熱中症で死亡するのは高齢者が多いのですが、若い人でも亡くなることはあります。
これからますます高齢社会が進み、一人暮らしの高齢者が増えていく中で、このような不幸な転帰(病気が進行して行きついた状態)の方を減らすにはどうしたらいいか。これはもはや医療の分野をはるかに超えて、政治や行政とともにやっていかねばならないのでしょう。大学院で学んでいると、現場で過重労働をやっているよりも、そちらの方がより社会を良くするのではないか、と思うこともあります。
なんにせよ、今年の夏も暑くなりそうです。皆様、そして皆様の親御さんも十分ご注意を。
最後になりましたが、わたくし来(8)月6日に「医者の本音」というタイトルの新書を出版いたします。タイトル通りの「本音」ですからとっても書きづらかったのですが、身を切って書きました。
これまでの医者本との違いは、
- 著者が最前線ど真ん中の若手現役医師
- すぐ使える情報多し
- 製薬会社との関係や医局などの話あり
- 年収・恋愛の話あり
という点です。現在でもアマゾン・ドット・コムで予約できますし、8月6日には全国の本屋さんに並びます。ご興味のある方はぜひどうぞ。
それではまた次回。
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