俺は超越者(オーバーロード)だった件 作:コヘヘ
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現地勢最強は番外ちゃんでした。
さっさと『破滅の竜王』ならぬ『破滅のサンドバック』を回収する予定だった俺だが、
どう見ても目が死んでいる、中二病ファッションの女の子を見て急遽予定を変更した。
宿泊も視野に入れていたため、グリーンシークレットハウスを野営予定地に展開。
アウラとハムスケと護衛を各部屋に待機させた。
俺は法国から来た少女と一つの部屋で直接話した。
中二病の塊みたいな外見には絶対に触れない。
おそらく気にしているだろうことが、
『鈴木悟』サラリーマン時代の、『営業』の勘が教えてくれる。
話しやすいようになるべく優しく接することができるように
俺は、完全催眠や各種幻影を解除した。
俺は『魔王』ではなく、『人間』として目の前の少女に接することにした。
俺の突然の人化に驚かれたが、
俺は人間にもなれるから、気持ちがわかる安心して話して欲しいと少女に告げた。
…過去に戻れるなら、俺に警告したい。
泣いて俯いているように見えるよな。それは罠だ。
そんなことは知らない俺は少女の話を紳士に聞いた。
少女曰く、
「私は五柱の神々の財と装備を守るために生きてきたのに、その神が変態だとわかった。
しかも、それを反論しようにも『死の神』は経典を用いて全て反論し返した。
実際、経典的にも間違ってないので誰も反論できなかった。
いつの間にか法国の中心街に謎の説法師とその従者が現れた。
『死の神』スルシャーナ様だった。
彼の神は人間とは自由気まま欲望のままに生きるべき。
我慢は自分のためにならない。好きにいきなさい。
上手く行かないことは世間が悪い。
あなたが悪いわけではありませんと等とわけのわからないことを説法し始めた。
法国にはニート予備軍が大量に増えた。止めたくても『神』なので誰も止められない。
クアイエッセの馬鹿を中心に全力で応援し始めて、法国は変態都市になった。
良かったことを強いて言えば、戦争を一瞬で止めたことくらいだ」
という話だった。これ以外にも色々あるが酷い。酷すぎる。
俺は法国の者でないから全部スルメさんに任せていた。
ナザリックとは不俱戴天の仇になり得る可能性を秘めていた法国だったし。
それを放置した結果が、悲劇を生んだ。彼女だ。
俺は情報収集すらきちんとしていなかった。実際、法国の情報入手は難しかったし。
これは鎖国するわ。本当に酷い。
俺は、すぐさま行動を開始することにした。
力を見せつけるのではなく、馬鹿を叱りに。
グリーンシークレットハウスから出た法国から来た少女を含む俺達は、
とっとと『破滅の竜王』を片づけるため、アウラに範囲一帯に矢を降らせた。
現れたのは、100mを超す、ガルガンチュアよりもでかい『魔樹』だった。
薬草は頭頂部にこびり付いていた。
悲鳴を上げるピスニンを放置して、アウラにレベルを測定させた。
解析させたレベルは、バーが三本。つまりLv80~85だった。
HPは膨大で計測不能らしい。
素晴らしいサンドバックだ。
色々と感心したが、とっとと片づけるために動く。
アウラに「山河社稷図」を展開させる。
魔樹と俺達を『世界』が包み込んだ。
俺は生命の精髄(ライフ・エッセンス)等の魔法を使用。
『破滅の竜王』のHPを見ながら魔法を連打した。
勿論、薬草には当たらないように注意しながら。
時間停止(タイム・ストップ)も使用したが、対策されていた。
そのため触手による叩きつけや、種子と思われる爆弾を射出したを食らった。
触手による叩きつけは剣で捌き、爆弾は転移で躱した。
もちろん爆弾が後ろにいかないように後方は魔法で防御済みだ。
こちらにダメージは一切ない。
正直、魔法で防御すれば良かったが、それは後の祭りだ。
余裕を持って『破滅の竜王』のHPを半分くらい減らした。
俺は持てる全てのオーラ系を放出する。
絶望のオーラ、魔王のオーラ、いてつくはどう、漆黒の後光。
その他意味のないファッション魔法まで展開していく。
「ゆけ、ボール・マスター!!」
叫ぶ。とっとと終わらせるという決意を込めて。
ヴン…ヴンヴン…ポカン。
そんな効果音が鳴り響く。成功だ。
そして、
「行け、カタストロフ・サンドバック!!」
俺は叫ぶ新しい名前を。今後の未来を名に託した。
カタストロフ・サンドバックは薬草と共に現れる。
暴れないように、魔法と純粋なステータスのゴリ押しでサンドバックを縛り上げた。
アウラに薬草採取させた。
そして、
「魔法三重化・朱の新星(トリプレットマジック・ヴァーミリオンノヴァ)!!」
一撃で殺すための魔法で沈めた。
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「やぁ、済まないな。急いでしまったので驚かせたかもしれない」
俺は今更ながら後悔していた。
目の前の少女はどうみても幼い。
そんな子に一応『破滅の竜王』を瞬殺させる光景を見せてしまったと。
このとき、俺は素で忘れていた。何せプレイヤーの子孫の前だったから。
この世界の人間の習性を、だ。
「そ、そんなことありません!とっても、とっても凄かったです!!」
きゃっきゃっとはしゃぐ年相応の少女を見て俺はほっとした。
だが、
「『魔王』アインズ・ウール・ゴウン様…
スルシャーナ様より命じられていたことがございます…」
俺はこの目の前の少女が法国の使者であることを改めて思い出した。
「ああ、何かな?」
そうなるべく優しく声をかける俺。
後ろからのアウラが「うわぁ」という小さな呟きに俺は気が付かない。
「スルシャーナ様よりこう命じられております。
『魔王』様の力を見定めて、
法国と『アインズ・ウール・ゴウン』様の架け橋として契りを結べと。
子を孕めと命じられています」
爆弾発言をした。
俺はキレた。
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依頼そっちのけで、法国のスルメをぶん殴りに転移した。
止める周りの変態共を縛り上げ、俺は『死神』に言い放つ。
「遺言はあるか?」
まさしく『魔王』に相応しい発言だった。
「わ、我が盟主!我は、いや私はそこまで言ってませぬ!!本当に、マジで!!」
喚く『変態』。だが、認めた。
「見苦しい。大体『そこまで』ということは類することは言ったのだな?」
見苦しい悲鳴が上がった。
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その後、俺は『変態』を襤褸雑巾にして、すぐに転移。
王国の冒険者組合に薬草を渡した。
ようやく落ち着いて、アウラやナザリックにメッセージを送ってないことに気づいた。
何より『少女』を放置してしまっていたことに今更ながら気づいた。
俺はこのとき知らなかった。
彼女が『番外席次』であり、あの『変態』の子孫であったことを。
これら全ての流れが『彼女』により、完全に計画されていたものだということを。
俺がメッセージを送ったときには、ナザリックと法国の友好の懸け橋として、
全てが完全に認知されていた。
...これは俺悪くない。スルメさんが悪いと思う。