俺は超越者(オーバーロード)だった件 作:コヘヘ
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それは、かつて九つの世界を救おうとした『魔王』再来の鐘の音だった。
冒険者モモンへの緊急依頼。
話題沸騰中のオリハルコン級冒険者である俺への冒険者組合長からの直接要請。
…相当なものだろうと予測できた。
先約の北上してきたゴブリン部族連合の殲滅は基本ナーベラルに任せるべきだろう。
俺がアダマンタイト級冒険者になった辺り。
つまり『英雄』になったら、
法国でスルシャーナ復活及び鎖国宣言が出されることになっている。
スルメさん曰く、もう既に準備はできたとのことだった。
反面、「やり過ぎた」とも言っていた。
…あの人が反省するレベルというのは恐ろしくて正直想像したくない。
だが、早ければ早いほど良い。
このときの為に、様々なことを今まで仕込んできた。『魔王』、『英雄』として。
ツアー達との会談後の俺は常に細心の注意と緊急性を伴う日常だった。
さらにかなりの自己判断が求められていた。嫌になるくらい。
だが、『御伽噺』の『英雄』と『魔王』のマッチポンプまで行けば、もはや打ち合わせ通り。
『主役』は俺とパンドラズ・アクター。
『出演者』はナーベラル、アルベド。
『スタッフ』がNPC達。
『観客』はこれまでの『英雄』が築いてきた友人達。
強いて言えば、何故かやたら張り切っているアルベドが心配だが、
休日を取らせたのできっと大丈夫なはず。
必要最低限の『策』はほぼ完了する。帝国も王国どころか『世界』が詰む。
…元々だけど。
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緊急依頼内容は超希少薬草の採取だった。
どんな病も癒せる薬草で守秘義務が伴う仕事。さらに達成は非常に困難だという。
自生している場所は判明しているとだったので教えて貰えた。
三十年前のアダマンタイト級冒険者チームにミスリル級冒険者チーム二つがようやくという仕事だそうだ。
これは確実にアダマンタイト級冒険者になれるだろうと予想できた。
だが、それと同時に俺は気が付いた。
…薬草の生息地が、ツアーが教えてくれた『破滅の竜王』の封印場所と合致する。
これまで忙しくて『破滅の竜王』を捕まえるのは延期していた。
超希少薬草そのものか、たまたま近くにあるだけか、体のどこかにくっついているのか?
体にこびり付いているものだと、毎日の『サンドバック』に『薬草』の回収作業が追加されるな。
冒険者稼業の合間に行ったボール・シリーズの検証及び捕らえたモンスターについての研究。
召喚したモンスターの死体の一部なら残ることが判明した。
具体的に言うと、モンスターの『目』だけ抉り出して殺すと体は消え『目』だけ残る。
次の日、再召喚しても『目』はそのままだ。
…これはデミウルゴスがいなければ気が付かなかった。
ナザリック以外での使用不可、利用不可とした。
こんな怖い道具表に出せるか!
ただ量は腐る程あるんだよなぁ…。実際役に立っている。ナザリックでは。
知性のない暴力的生物だけとはいえ、毎日好き勝手できる生物。
しかも、存在していても周りに害しか与えないような知能がないものたち。
『悪』のナザリックでは素晴らしい発見だった。
嗜虐設定のNPCとかなんか特に。強いて言うならルプスレギナ。
もっと大きいのや強いのが欲しいと『お願い』が来るんだよ。本当に。
考えてみてくれ、遠回しに勿体ぶって目を潤ませて頼まれるんだ!
見た目は幼い子供や美女(NPC)に。
断れないよな、なぁ!
だから、『破滅の竜王』をナザリック専用サンドバックにしようとした俺は正常なんだ。
そう、スルメさん達のような『変態』ではないんだ!…多分。
俺はアウラに『山河社稷図』を装備して、護衛幾人かと共にトブの大森林前。
というかカルネ村の前に来るように指示した。
ツアーとスルメさんにもメッセージを送った。
『サンドバック』を捕獲すると。
スルメさんからは、友の『唯一』の子孫を派遣するので観戦させてやって欲しいと言われた。
俺は、了承し、場所についたらメッセージを送るので、『転移門(ゲート)』で送ってくれと伝えた。
楽しみだ。
決してユグドラシル最終日二日前に『流れ星の指輪(シューティングスター)』を横取りされた恨みがあるわけでは決してない。
そう、決して。
問題は、この依頼を引き受けるのが俺の一人になる件だった。
実力的に全く問題ないわけだが、エ・ランテルに取って貴重な人材。
単独行動をおいそれと許されるはずがない。
ただ、他の冒険者チームがいたら非常に面倒臭い。
割と仲良くしている自覚あるし、口封じとか論外。殺したいわけがない。
必然的に、北上してきたゴブリン部族連合の殲滅もナーベラルが単独で引き受ける話になる。
幸い、魔術師組合長ラケシルさんがやたら俺達を評価してくれていたお陰で、
簡単にそれぞれ単身(正確には俺とハムスケは一緒)での依頼に取り付けた。
ラケシルさんには確実に奥の手の存在を悟られているが、
それがまさか第六位階どころか第十位階魔法とは思うまい…
北上してきたゴブリン部族連合の殲滅には念のため、
ナーベラルにエントマとルプスレギナを同行させる。ストレス発散にもなるだろう。
ルプスレギナの性格的にはしゃぎそうだが、お目付け役が二名いるし問題ない。
甚振るのが大好きな典型的ナザリック体質。結構我慢させているのは申し訳ない。
可哀想だが、何言ってもダメだ。まだ、我慢して貰わないといけない。
だからって村人に悪戯するな。助ける振りして止めさそうとするな。
ンフィーレアの周りでタップダンスして煽るな。それは俺が死ぬ。
…設定的に外に出してやれないシズのこともその内考えてやらないといけない。
スルメさんは罠製作特化の幻術使い。
万が一も考えてシズの『記憶』を一部変えるべきだろう。
ナザリック内部の罠の配置等も変えておくべきだろう。
ないとは思うが、念には念を。
…上に立つ者として必要とはいえ『友』を疑うのは辛い。
スルメさんは俺が問えば、全部言い出しそうで逆に怖い。
法国の未来は大丈夫なんだろうか?
復活させたのは俺だけどさ。