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【社説】

パナマ文書報道 公平へのたゆまぬ努力

 世界の政治リーダーや王室、著名人らの税逃れの実態を暴露した「パナマ文書」で新たな報道があった。日本人が個人情報を流用された被害も判明した。不公平根絶に向け、歩みを進めたい。

 二年前と同じ中米パナマの法律事務所から流出した文書百二十万通を、共同通信社などが加盟する国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が分析、報道した。

 税金がゼロか極端に低いタックスヘイブン(租税回避地)は、秘密保持を売り物にして、世界中から税逃れの資金が集まる。そこでは法律事務所などが窓口になり、ペーパーカンパニーの設立などさまざまな税逃れの手段を富裕層らに指南し、報酬を手にしている。

 タックスヘイブンの罪深さとは何か。それは報酬を支払うことができる金持ちが税を逃れ、彼らが支払うべきだった税まで金持ちでない人が負担するという不条理である。

 本来なら税の所得再分配機能が格差を縮小するはずだ。それが反故(ほご)にされ、まったく逆の事態になる。より格差を広げ、不公平を助長する。こんなあしき仕組みが許されていいはずはない。

 パナマ文書の報道は、こうしたタックスヘイブンの秘匿のベールを剥ぎ、著名人らの実名と税逃れの手段を白日の下にさらした。秘密が守られないリスクを富裕層らに知らしめ、恐怖心を植え付ければ大きな抑止力となるはずだ。

 今回も資金流用疑惑で捜査されるマレーシアのナジブ前首相の兄弟やアルゼンチンのマクリ大統領、さらにサッカーの同国代表、メッシ選手の名前が報道された。

 日本人絡みの不正被害も発覚した。タイを旅行中にマッサージ学校を利用した日本人がパスポートの写しをとられ、タックスヘイブンに設立された法人の代表者として無断で登録されていた。

 タックスヘイブンは秘匿性が強いゆえ、こうした組織的な不正行為にも利用される実態が明るみに出た。ICIJのような報道の繰り返しとともに、国際機関や各国政府が連帯して撲滅に動く必要があるのは言うまでもない。

 経済協力開発機構(OECD)などが中心となり、ブラックリストづくりや金融機関の口座情報の交換などの対策を進めている。

 だがG7の中心として取り組むべき米英両国が、国内や属領などにタックスヘイブンを温存しているという矛盾がある。これを放置したままでは問題は解消しない。

 

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