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【社説】

富山交番襲撃 銃を奪われない体制に

 仕事熱心な警察官が落命したのは悔しいが、奪われた拳銃が使われ、市民が殺害されたのは由々しき事態だ。日ごろの管理に抜かりはないか。警察当局は猛省し、再発防止策を徹底せねばならない。

 富山市内の富山県警の交番で二十六日昼下がり、警察官が刃物で刺されて拳銃を奪われ、近くの小学校の正門で工事車両の誘導に当たっていた警備員が撃たれた。残念ながら二人とも亡くなった。

 殺人未遂の疑いで、現行犯逮捕されたのは、元陸上自衛官の二十一歳の男だった。学校の敷地内で、駆けつけた警察官に撃たれ、重体となったという。

 米国の学校で後を絶たない銃乱射事件が、脳裏をかすめた人もいたのではないか。児童たちが無事だったのは不幸中の幸いだ。大人はしっかりと寄り添ってほしい。

 なぜ交番を襲い、銃を奪ったのか。なぜ小学校へ向かったのか。予兆はなかったのか。男の動機をはじめ、全容解明が急がれる。

 市民を守るために警察官に所持が許されている拳銃が、凶悪犯罪に使われたのは、警察当局の失態といわざるを得ない。地域を恐怖と不安に陥れた責任は免れまい。

 犠牲となった警察官は、交番の所長を務める警部補だった。不測の事態に備えて訓練を積んでいたはずだが、裏口からの不意打ちをかわしきれなかったのだろう。男は自衛隊で鍛え上げた高い戦闘能力を身につけていたのか。

 警察官は制服を着て仕事をする場合には、原則として銃を携帯する。ふだんは頑丈な金属製の芯を通したつりひもでつなぎ、腰ベルトのホルスターに収めている。それでも、強奪事件が絶えない。

 二年前の米紙ワシントン・ポストによれば、英国(北アイルランドを除く)やアイルランド、アイスランド、ノルウェー、ニュージーランドの五カ国では、地域を巡回する警察官は特段の事情がない限り、拳銃を持たないという。

 英国の警察官は、市民の守護者を自任し、市民との間に障壁をつくらないように伝統的に非武装を貫いているようだ。武器を持てば、かえって犯罪者の武装を誘発しかねないとの意識がある。

 日本警察の交番は、非常事態に対処する最前線としての機能のみならず、市民のよろず相談窓口の役割を果たす。危険と隣り合わせだが、地域に開かれた場であってこそ、安全安心を担保できる。

 もはや銃を奪われない体制づくりは喫緊を要する。武装のあり方から抜本的に見直してはどうか。

 

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