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【社説】

中台関係 「力比べ」で展望開けぬ

 中国と台湾の関係にさざ波が立っている。中国は軍事、外交両面で圧力を強め、台湾は米国との関係緊密化でけん制する。「力比べ」は中台の溝を広げるだけで、未来への展望は開けぬだろう。

 二〇一六年台湾総統選で国民党候補を破り、政権交代を実現した民進党の蔡英文政権は五月下旬、任期四年の折り返し点を過ぎた。

 民進党綱領は「独立」を掲げるが、蔡氏は中台関係の「現状維持」政策をとってきた。中国を刺激しない現実的な姿勢を示したことは、東アジア情勢の安定にもつながったと評価できる。

 だが、台湾は最近、急速に対米関係を強化しており、中台関係への負の影響が懸念される。

 米国では三月、米台高官の相互訪問を促す「台湾旅行法」が成立し、台湾の潜水艦建造計画に米企業が参加する動きもある。

 発足時に50%を超えた蔡政権支持率は最近、30%台前半で低迷する。秋には統一地方選がある。対米傾斜は、蔡氏の対中政策を「弱腰だ」と批判する民進党支援者の声を意識した面もあろう。

 だが、何よりも台湾海峡の波を高くしている主因は、中国の露骨な台湾への圧力だといえる。

 台湾は中国の不可分の領土という「一つの中国」原則を認めるよう求める中国は、台湾と外交関係のある国を断交に追い込む圧力を続けている。

 五月に西アフリカのブルキナファソが台湾と断交し、中国と国交回復することで調印。これで蔡政権発足後、台湾と断交したのは四カ国に上り、外交関係がある国は十八カ国に減った。

 スイスで五月に開かれた世界保健機関(WHO)総会に台湾は二年連続で招かれなかった。台湾は〇九年から一六年までオブザーバー参加しており、台湾は「中国の圧力」と反発を強めている。

 中国軍は昨夏以降、台湾を周回するようなルートで戦闘機の飛行訓練を繰り返している。

 だが、自由で民主的な社会を築いた台湾を力による威嚇でのみこもうとしても、台湾人の反発を招くだけであろう。国際社会もそんな強硬姿勢は認めまい。

 中国の習近平国家主席が四月、南シナ海で軍事演習を視察したことに対し、軍艦に乗船し台湾の軍事演習を視察した蔡総統は「演習は力比べではない」と述べた。

 中台双方の指導者とも、「力比べ」は対立を深めるだけであり、平和的な対話の先にしか未来がないことを肝に銘じてほしい。

 

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