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【社説】

地上イージス 導入は見直すべきだ

 米朝首脳会談後の情勢変化にもかかわらず、安倍内閣は地上配備型迎撃システムの導入を進めるという。防衛力は脅威の度合いに応じて節度を保って整備すべきだ。計画を見直すべきではないか。

 弾道ミサイルを迎撃ミサイルで撃ち落とす弾道ミサイル防衛システム。安倍内閣は昨年十二月十九日、海上自衛隊の護衛艦に搭載する従来のシステムに加え、地上に配備する「イージス・アショア」を二基導入する方針を閣議決定した。

 秋田県と山口県にある陸上自衛隊の演習場に配備、日本全域をカバーするという。

 導入理由に挙げていたのが北朝鮮による核・ミサイル開発だ。安倍晋三首相は「北朝鮮による核・ミサイル開発がこれまでにない重大かつ差し迫った脅威となっている」と説明していた。

 しかし、北朝鮮の脅威の度合いは今月十二日の米朝首脳会談後、明らかに変化している。それは安倍内閣も認識しているはずだ。

 菅義偉官房長官が「日本にいつミサイルが向かってくるか分からない、安全保障上の極めて厳しい状況はかつてより緩和された」と述べたのは、その証左だろう。

 にもかかわらずイージス・アショア導入方針を堅持するという。小野寺五典防衛相はきのう秋田、山口両県を説明に訪れ、「脅威は変わってない」と述べた。菅氏の発言との整合性を欠いている。

 導入には一基一千億円程度かかるという。迎撃ミサイルの命中精度にも懸念がある。国際情勢が好転の兆しを見せる中、高額装備の導入をなぜ急ぐ必要があるのか。

 その背景に米国からの防衛装備品の購入圧力があると疑わざるを得ない。トランプ米大統領は昨年十一月六日、日米首脳会談後の記者会見で「首相は米国からさまざまな防衛装備を購入することになる。そうすればミサイルを撃ち落とすことができる」と述べ、首相は「北朝鮮情勢が厳しくなる中、日本の防衛力を質的に量的に拡充しないといけない。米国からさらに購入するだろう」と応じた。

 イージス・アショア導入を閣議決定したのはその約一カ月後だ。脅威が差し迫っているのならまだしも、緊張緩和局面での計画強行は、米国の意向に沿った、導入ありきとの批判は免れまい。

 政府は北朝鮮の弾道ミサイルを想定した住民避難訓練を当面中止することを決めた。同様にイージス・アショア導入も見合わせてはどうか。防衛政策は情勢の変化に応じて不断に見直す必要がある。

 

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