ドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)の7月16日放送回では、宇多田ヒカルの曲作りの舞台裏に初密着した「宇多田ヒカル スペシャル」の模様がオンエアされた。
宇多田ヒカルが6月27日にリリースした7thアルバム『初恋』。1月のロンドン、10カ月前から始まった同アルバムの制作は、まさに佳境を迎えていた。
宇多田ヒカルのレコーディングは決まって、バンドの演奏から始まる。メンバーは事前に宇多田ヒカルが音楽ソフトで作ったメロディや仮の歌が入ったデモ音源を基に演奏を行う。楽曲作りにおける宇多田ヒカルの役割は、すべて。歌のメロディを作る作曲、作詞、楽器の編成、バンドやオーケストラなどの旋律やリズム、弾き方に至るまでを設計する。宇多田ヒカルは一人で作ることに長年こだわり続けてきた。
『初恋』の収録曲「Good Night」で描いたのは、“思春期の恋心”。制作過程で宇多田ヒカルはドラムを担当したアールに「(主人公の)少年は年上の女性に恋してしまう」「サウンドに若々しさや純粋さが必要なの」「でも実際には12歳の曲は書けないから、彼が20代になって昔を思い返している曲にした。だから12歳のサウンドでなくていいけど、ほろ苦いノスタルジーが必要なの。思いきりやって」と楽曲の詳細を説明しながら、出して欲しい音やニュアンスを伝える。宇多田ヒカルが大切にするのは、“曲に込めた感情”だ。
自身の音楽作りで貫き通す想いについて尋ねられた宇多田ヒカルは、「やれることをやっても本当に意味がないと思っているので、やってみてどうなるのかわからない、もしくはやれるかどうかわからないことをやるっていうのが、物をつくる現場なので、探検隊みたいな感じで入っていって、うっそうとしたジャングルなのか荒野なのか。冒険という意味では(ミュージシャンたちが)同じ風景を見ようとしてくれるので、そこへの行き方のルートを一緒に考えてくれるみたいな感じで、自分じゃ絶対できなかった、自分だけでは行けなかったところにも行けますね」と答え、彼女にとって、ものづくりは冒険であることを語る。
また宇多田ヒカルは、すべての演奏を録り終えたあと、作詞に取りかかっていた。「作業部屋で(歌詞が)あと1時間ぐらいで終わらなかったら、終わっているなって思って。終わっているっていうよりも、もう無理だと思って」と話す宇多田ヒカル。歌詞が完成したのは今朝だと言い、「今回は本当、終わらないっていうか間に合わないと……」と苦戦していたことを明かす。歌詞は、幾度もの演奏を積み重ねたその先に、ようやく姿をあらわすという。「音楽が脚本で、そこにストーリーとか感情が全部入っているから、それを演技するみたいなのが歌詞と歌うこと」と宇多田ヒカルは自身の考えを述べた。
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