東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社説・コラム > 社説一覧 > 記事

ここから本文

【社説】

ブロック塀倒壊 無責任が犠牲を生んだ

 守れたはずの命だった-。こんな後悔を二度と繰り返さないように備えたい。大阪府北部地震の強い揺れは、ブロック塀の倒壊という人災に転化し、幼い命を奪った。大人の無責任が奪ったのだ。

 地震はブロック塀を凶器に変える。危険性が知られるきっかけは、一九七八年の宮城県沖地震だった。その反省から八一年の建築基準法の見直しに併せ、ブロック塀の耐震基準が強められた。

 しかし、小学四年の女児が下敷きとなった高槻市立寿栄小学校の塀は、旧基準にさえ違反したまま放置されていた。しかも、三年前に防災専門家が警告したのに、市教育委員会と学校は結果として生かせなかった。

 直ちに撤去したり、改修したりしていれば、と思い返すのもくやしい。

 ブロック塀の高さは三・五メートルと、上限の二・二メートルを大幅に超えていた。旧基準の上限ですら三メートルだった。加えて、高さが一・二メートルを超える場合には、塀を内側から支える「控え壁」を設けなくてはならないのに、それもなかった。

 危険性を指摘され、建築職をふくめた市教委職員らが塀の点検に出向いたが、こうした違法性を見逃していた。亀裂や傾き、劣化度合いのみを確かめ、安全性に問題はないと判断していたという。

 子どもを守るべき安全管理態勢としては、あまりにずさんかつ無責任というほかない。

 学校の耐震強化策といえば、校舎や体育館などの建物ばかりに目が向きがちだ。外部からの不審者の侵入を防いだり、視線を遮ったりする役目を期待されてきたブロック塀も、当然ながら安全対策の対象だったはずだ。

 もちろん、学校だけの問題ではない。今度の地震では、通学路の見守り活動をしていたお年寄りの男性も、民家の塀の下敷きになり、亡くなった。

 街路に立つ塀や壁の安全性について、地域ぐるみであらためてチェックしなくてはならない。

 国土交通省は点検すべき項目を公表している。高さや厚さは適切か、傾きやひび割れはないか、控え壁はあるか、地中に基礎はあるか。

 疑問があれば、専門家に相談したい。必要に応じて補修や撤去を急ぐべきだ。自治体は助成金を出す制度を整えている。当面、注意表示を掲げるのも有効だ。

 地震はいつ、どこで発生するか分からない。しかし、天災が人災に転じるのは防ぐことができる。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】