関係改善を優先して、懸案の非核化を動かそうという試みだろう。米国と韓国が恒例の合同軍事演習の中止に踏み切った。次は、北朝鮮が約束通り、「完全な非核化」に向けた行動を示す番だ。
軍事演習は、「乙支(ウルチ)フリーダムガーディアン」と呼ばれ、毎年八月に実施されている。
朝鮮半島で全面戦争が起きたと想定し、コンピューターを使って対応能力を点検するシミュレーション訓練だ。
韓国軍約五万人、米軍約二万人が参加する大規模なもので、北朝鮮は再三、中止を求めていた。
きっかけは、米朝首脳会談でまとめられた共同声明の中にある。
「完全非核化」の原則は盛り込まれたものの、具体的な手順や日程が明示されておらず、内容が不十分だと批判されている。
しかし一方で、声明には「新しい米朝関係の樹立」と「相互の信頼醸成による非核化促進」という注目すべき条項も盛り込まれた。
相互不信の中で非核化交渉が中断した経験を踏まえ、まず信頼関係を築いて、非核化のプロセスを進めるという新たな考え方だ。
トランプ米大統領も首脳会談後の記者会見で、「(北朝鮮と)交渉中という状況の下で、(米韓)軍事演習を行うのは不適切」と語った。この約束が、さっそく実行されたことになる。
演習中断には、「北朝鮮の具体的な行動がない段階で、譲歩しすぎ」との批判もある。
しかし、過去にも北朝鮮の核問題解決のため、米韓合同軍事演習が中止されている。今回も、協議を進めるための環境づくりとして、理解できる。
それでも気になるのは、北朝鮮の動きが見えないことだ。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は、首脳会談で「ミサイルエンジン実験場の破壊」を表明したが、まだ確認されていない。
ポンペオ米国務長官が共同声明を具体化するため、近く訪朝する予定だ。正恩氏は、非核化を進める手順や期限を早期に提示し、実行に移してほしい。
韓国国防省は、軍事演習は完全な中止ではないとしている。北朝鮮の誠意ある行動がなければ、いつでも再開するという意味だ。
一方、正恩氏は十九日、北朝鮮に理解を示す中国に、三回目となる訪問を行った。仮に非核化への取り組みを遅らそうと狙っているのなら、国際社会の目は厳しくなり、経済制裁もいっそう強化される。忘れてもらっては困る。
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