【大相撲】朝乃山、ブリになる 自己最速9日目で勝ち越し2018年7月17日 紙面から
◇名古屋場所<9日目>(16日・ドルフィンズ アリーナ=愛知県体育館) 西前頭13枚目の朝乃山(24)=高砂=が東前頭15枚目の石浦を押し出し、1敗を守り勝ち越した。新境地を開拓しようと突き押し相撲にも磨きをかけている最中。早速本場所で成果を出し、師匠の期待に応えた。関脇御嶽海(25)=出羽海=は大翔丸を寄り切り全勝を堅持。東前頭6枚目の遠藤(27)=追手風=は豊山に突き出され、2敗目を喫した。 得意の右四つを出さずとも、文句なしの圧勝だった。朝乃山が、立ち合いから過去3戦全勝の石浦を寄せ付けず、最後は右腕全体を使って押し出し。相手を土俵下まで吹っ飛ばし、自己最速の9日目で勝ち越しを決めた。 「一歩成長したと自分で思うと、てんぐになっちゃう。やめておきます」。新入幕だった昨年秋場所は10勝を挙げて敢闘賞。若手がまず掲げる2つを軽々と達成しただけに、目標は高い。「12、13勝…、違った。優勝だ」と笑顔を見せた後で「チャンスはめったにないから、モノにしたい」。勝ち越しは通過点にすぎない。 夏場所は12日目に7勝目を挙げながら、その後の3連敗で負け越し。左足首を痛めた影響はあったものの、右四つ頼みに限界を感じていた。相撲の幅を広げるため、着目したのは突き押しだった。 威力を自ら「ちょこちょこ」「ぺちぺち」と、自虐気味に表現するように、まだまだ発展途上。それでも、大事な一番で白星を呼び込み、師匠の高砂親方(元大関朝潮)の「突っ張る相撲を覚えないと。右四つだけじゃ現状維持が精いっぱい。大きな相撲を取らないと」という声に、満点の答えを示してみせた。 今場所前、角界の頂点を目指す覚悟を自腹で注文した浴衣地に込めた。あしらったのは地元の富山の名産で、自身の化粧まわしにもデザインされている出世魚のブリだ。 1敗で並んでいた遠藤が後退し、全勝の御嶽海を追って単独2番手となった。「ブリは横綱だと思っている。自分はまだまだ金魚ですけど」。謙虚さは、伸びしろそのもの。優勝争いの主役として、でっかく成長する舞台は整った。(志村拓)
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