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15年の関東・東北豪雨でも避難指示に遅れ
一方、避難指示の発令が河川氾濫よりも遅くなってしまったのが岐阜県関市だ。市内の上之保地区では7月8日未明、県が管理する津保川が氾濫して広い範囲で浸水被害が発生した。
市は8日の午前2時37分に上之保地区と武儀地区を合わせて約4800人に避難指示を出したが、津保川はその30分ほど前に氾濫していた。上之保地区の水位に避難指示の基準値を設定していなかったため、発令が遅れたという。
15年に発生した関東・東北豪雨でも、避難指示の基準を定めていなかったことが被害を拡大させる一因となった。鬼怒川の堤防が約200mにわたって決壊した際、一部の地域で避難指示を出さなかったり発令が遅れたりした。
茨城県常総市が16年にまとめた検証によると、基準の不備のほか、避難所の受け入れ準備が整うまで避難勧告の発令を待ったことが遅れの原因となった。
基準を定めていない理由の1つが、十分な水位データを取得できないことだ。河川の水位はその地域の降雨量だけでなく、支川の流量など様々な要因に左右される。降雨量と水位の関係などのデータがそろっていなければ、予想の精度は著しく低下する。
水位計は1台当たり数百~数千万円するため、津保川のように自治体が管理する河川では設置が進んでいない。しかし、河川の複数の場所でタイムリーに水位の変化を把握できなければ、避難指示の発令に活用できない。
そこで国交省は17年から、洪水時の計測に特化することで価格を100万円以下に抑える「危機管理型水位計」の開発や実証試験を進めた。20年度までに全国5800カ所に設置する計画だ。