2018年08月31日
イラストレーターの藤田香先生がお亡くなりになりました
みなさんにかなしいお知らせがあります。「黒魔女さんが通る!!」シリーズなどの挿し絵を描いてくださっているイラストレーターの藤田香先生が、さる7月13日6時45分お亡くなりになりました。すい臓がんでした。1年半のあいだ、希望をもってきびしい治療と向き合いながら、たくさんの絵を描き続けてくださいました。
藤田香先生は、1971年1月24日生まれの47歳。青い鳥文庫では、アンソロジー『おもしろい話が読みたい!青龍編』(2005年発売)のなかの短編「黒魔女さんが通る!!」(石崎洋司/作)ではじめてお仕事をされました。読者のみなさんが考えたキャラクターが藤田先生の楽しい絵で次々に登場、活躍する「黒魔女さんが通る!!」シリーズはその後、累計400万部をこえる大人気シリーズになり、テレビアニメにもなりました。また、「若おかみは小学生!」シリーズ(令丈ヒロ子/作 亜沙美/絵)とのコラボ作品では、亜沙美先生と2人で1枚の絵を描くという技に挑戦、わたしたちを驚かせてくれました。
そのほか「若草物語」シリーズや『秘密の花園』、『聖書物語』など名作の挿し絵も藤田先生の仕事です。カバー絵を手がけたノンフィクション『青い鳥文庫ができるまで』(岩貞るみこ/文)の作中人物・緑川カエル先生のモデルにもなりました。
青い鳥文庫の公式キャラクター、あおぴーも、藤田先生が産みの親です。
「青い鳥文庫はわたしの青春でした。」と言ってくださった藤田先生。読者のみなさんからのはがきやお手紙をとても大切にされていました。
絵を描くのが本当に大好きで、病室でも楽しそうにチョコちゃんたちを描いていた姿が忘れられません。
この先もずっと一緒にいろんなことができると思っていました。残念でなりません。
いまは、病からも解放され、好きな絵を思うぞんぶんに描いていらっしゃることでしょう。
「ほら、こんなのどうですか?」と、いつかそれを見せていただけることを信じています。
13年間、ご一緒できたこと、楽しかったです。忘れません。ほんとうに、ありがとうございました。
「藤田香さんは、本だなの星になりました……」
石崎洋司
藤田香さんが、亡くなられました。
悲しいです。つらいです。心が苦しくてなりません。
藤田さんと初めて仕事をしたのは、「黒魔女さんが通る!!」を始める四年ほどまえ、「4年の科学」(学研)という雑誌で連載をはじめたときでした。
すぐに、すごいイラストレーターさんだってことがわかりました。
連載の次の月にはもう、読者が藤田さんの絵をまねして、投稿してきたからです。
子どもたちが、描きたくてたまらなくなるイラスト。
そういう絵を描ける人は、子どもの本の世界では、みんな、人気イラストレーターになっています。だから、担当の編集者さんが、
「特集記事の次に、人気があるコーナーになりました!」
と、うれしそうに報告してくれたとき、ぼくは、
(藤田さんのイラストのおかげだな)
って、思いました。
「黒魔女さんが通る!!」も同じです。
藤田さんに絵を描いていただいていなかったら、十数年間にわたって、みなさんに愛されるシリーズになど、絶対になっていなかったでしょう。
作者のぼくにとっても、藤田さんは、かけがえのないパートナーでした。
「黒魔女さんが通る!!」を書いているとき、ぼくの頭の中には、まるで映画やアニメを見ているように、「世界」が広がっています。
でも、ぼくは、それを言葉でしか表せないし、その「世界」のすべてを書ききれません。
ところが、藤田さんは、その「世界」のすべてを絵にしてしまうのです。
(ぼくの頭の中を、のぞいたんじゃないの?)
イラストを見るたび、ぼくは腰を抜かすほど、おどろきました。
いったいどうすれば、あんなことができるのでしょう。いまだにわかりません。
もしかしたら、藤田さんこそ、ほんとうの魔女だったのかもしれません。
そんな藤田さんは、旅立たれました。
いま、ぼくは翼をもがれたような気持ちです。
でも、ふと、本だなをふりかえって、はっとしました。藤田さんが描いた、黒魔女さんや6年1組のみんなが、いつもの通り、笑っていたからです。
あなたの本だなは、どうですか?
オヤジギャグをとばすギュービッドさまも、げんなりするチョコちゃんも、「おねえちゃん!」ってはげます桃花ちゃんも、ちゃんといますよね?
いま、黒魔女さんを愛読してくれているみなさんだけではありません。
かつて、いっしょうけんめいに応援してくれた、大きいおねえさんやお兄さんたち。
もしかしたら、みなさんの本だなからは、黒魔女さんはいなくなってしまったかもしれないけれど、でも、あなたたちが通った小学校や中学校の図書室や学級文庫では、藤田さんの描いた黒魔女さんたちは、いまもニコニコしているでしょう。
みんなが手にしてくれたおかげで、ちょっとしわしわになっているかもしれないけれど、でも、いつでも会いに来てくださいねって、藤田さんの描いたキャラクターたちは、いまも微笑んでいるでしょう。
そして、図書館や書店さんでは、まだ幼いけれど、もうすぐ字の詰まった物語を読めるようになる、未来の黒魔女っ子たちを、藤田さんは待っています。
大切な人がなくなると、「空に輝く星になった」といったりしますね。
でも、藤田さんはちがう。
藤田さんは、本だなに輝く小さな星になったんだ。
日本じゅう、いや、アジアの国々をふくめて、ホタルのように小さな、でも、いつでも手をのばせる、何百万もの小さなきらめきになったんだ。
ぼくは、いま、そう思っています。
そして、これからも「黒魔女さんが通る!!」を書き続けようと思います。
「いつまで、書いてるの?」
そう笑う人もいるかもしれません。
でも、本だなの星になった藤田さんの輝きが、くもったりしないよう、ひとつひとつ、ていねいに磨くように、「黒魔女さんが通る!!」を書き続けるつもりです。
それだけが、ぼくにできる、藤田さんへの恩返しです。
藤田さん、いままで、ほんとうにありがとうございました!
最後に、みなさんにお知らせがあります。
藤田さんが亡くなられたいま、もう新しいイラストが見られないと、悲しんでいる方がいるかもしれません。
でも、もうひとつ、あります。
次の『6年1組黒魔女さんが通る!!06』のカバーです。
原稿を読んでくれた藤田さんは、病院のベッドで、いつものように楽しみながらラフ・スケッチを描いてくれたのです。
そして、それを亜沙美先生に託されました。若おかみ・黒魔女コラボで、むずかしい共同作業をくりかえしていたときから、藤田さんは、亜沙美先生を「自分の世界をまかせられる後輩」と、とても信頼されていたからです。
みなさん、どうか、藤田さんのアイデアによる、最後の黒魔女さんのカバーイラストを楽しみにしてくださいね。
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藤田香先生ありがとう!の追悼メッセージを募集いたします。
集まったみなさんからのメッセージは、サイトに掲載し、ご遺族の方へお渡ししたいと思います。
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