竹田恒泰(作家)
「5ちゃんねる」というウェブ掲示板で5月15日に立ち上がった「YouTubeのネトウヨ動画を報告しまくって潰そうぜ」というスレッドがある。そこには、彼らが攻撃対象とするユーチューブのチャンネルのリストが掲載されていて、ユーチューブへの通報のやり方を懇切丁寧に説明している。
これは、多くのユーザーが一斉に特定の投稿動画を「差別的」などと通報することで、その動画を削除し、攻撃対象とするチャンネル自体を停止させるという、極めて攻撃的な「政治キャンペーン」である。
彼らは、3カ月以内に3本の投稿動画が削除されたアカウントを停止するユーチューブのルールを恣意(しい)的に利用し、ほぼ同時期に3本の動画を削除して短期間の内にアカウント停止に追い込む戦法である。アカウントが停止されると、そのアカウントで過去に投稿した全ての動画が一斉に削除される。
この政治キャンペーンの結果、7月上旬の時点で、既に203チャンネルが永久凍結され、22万本以上の動画が削除されたという。また、彼らの攻撃を恐れて自主的に全部あるいは大半の動画を削除したチャンネルも97あり、合わせると28万本以上の動画が削除されたという。
それでも飽き足らないのか、攻撃すべきチャンネルを何百も列挙し、どの動画のどの点を攻撃するように具体的な「攻撃指示」を並べている。また、ユーチューブの運営母体が米国のグーグル社であることからか、丁寧にも英語で通報するための例文まで掲載している。
確かに、表現の自由には限界があり、個人の名誉を毀損(きそん)し、あるいは特定の民族を差別するような不適切な表現は削除されて然(しか)るべきである。
しかし、どうやらユーチューブは厳密な審査をしていないように見受けられる。その理由は後に述べるが、そのようなユーチューブ側の体制の虚(きょ)を突くような形で、気に入らない何十万本もの動画を削除に追い込んだ。
そもそも、ネットに個人が投稿した動画で気に入らないものがあれば、見なければよい。もし虚偽や不当な表現があれば、反論すればよい。言論に対しては言論で挑むのが正道ではなかろうか。気に入らない主張をするチャンネルを、チャンネルごと潰すというのは「言論人の暗殺」にほかならず、邪道の極みといわねばならない。
私がユーチューブで配信していた『竹田恒泰チャンネル』も、彼らの攻撃目標とされ、5月24日未明にアカウントごと停止された。一本目の動画が削除されてからアカウントが停止されるまでの経緯は次の通りである。
『竹田恒泰チャンネル』の動画一本が削除されたのは5月23日夜のことだった。対象になった動画のタイトルは「韓国外交、八方塞がり・・・。中国の禁韓令に日本の大使召還、アメリカもダメだコリャ。。。」である。