俺は超越者(オーバーロード)だった件 作:コヘヘ
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「行くのかい?スルメ」
無謀な作戦を立てる。昔からのコイツ等の常套句だ。
我が父、竜帝に腐り肉を食わせたあの糞『エレア』。
『至上の光』を自称し、他種族の有力な王族達の頭髪を消し飛ばした『天使』。
子供を守るという名目で襲われている村々を救っては、子供の親にしばかれてた『聖騎士』。
幼かった七彩の竜王(ブライトネス・ドラゴンロード)に異常性癖を植え付けた『女森祭司』
ありとあらゆる手段で弱みを握り、嬉々として公表しまくった『糞鳥』。
彼らは、自分をさらけ出し全力で世界を煽りながら人類をまとあげて救った。
彼らはこの世界のあらゆる存在に恩を押し付けた。
あらゆる意味で屈辱的な行為を行うが、それ以上の恩義で縛ることで滅びる定めにあった人類を救った。
その奇人・変人・狂人共のまとめ役こそ目の前の『死神』スルメだ。
「笑止!この蜥蜴は相変わらずの臆病者よ!」
蜥蜴言うな殺すぞ。内心思うが、洒落にならないので今日は言わない。
「この作戦。成功するにしても失敗するにしてもおそらく君は死ぬ。もう復活も」
突然現れた八欲王なる存在はあらゆる存在を犯し、殺し、騙し、奪った。
ついには魔法体系すらも変えられ、ワイルドマジックでの死者蘇生もほぼ不可能になった。
秘宝を除けば『死神』の最大の切り札『流れ星の指輪(シューティングスター)』を作戦に使う。
彼が身に着け一時的に力を取り戻して、特攻する。
残り二回の使用権をめぐって互いに争い、崩壊する。
たったこれだけ。もちろん様々な手順は踏むが。
要は、それだけの価値のある指輪なのだ。
だが、『流れ星の指輪』が無ければ目の前の男は死ぬ。もう生き返らないだろう。
散々嫌がらせを受け続けたが、死んで欲しくはない。
竜帝の息子として育てられた、誰からも恐れられた存在だった僕に、初めてできた『友達』だから。
「まだ勝ち目はあるかもしれない。できればかつて君たちの描いた夢を見たい」
勝ち目なんかない。
初期対応の重要性を散々喚き散らした『死神』の言う事を楽観視した父を始めとした愚か者達。
かつての六人がその膨大な生命力を、殲滅に委ねれば世界を滅ぼせたことに気づかなかった。
彼らは『優し過ぎた』のだ。
「フハハハハ!…ハハハ!」
精神鎮静化を何度も起こしているのだろう。だが、笑いが止まらないのは何故?
「何を笑っているんだい?」
素直に聞こう。もはや止められないことがはっきりした。
いつもなら『俺たちの戦いはこれからだ』と全力で斜め上の作戦を立て始める。
それがないというのは死ぬ気なのだ。この『死神』は。
「いや…何かつての我らが盟主様のお言葉を思い出したのだ」
盟主なんていたのか。引っ張ってきて百年前に戻ってこいつら止めさせたい。
「盟主?そんな存在がいたのかい?…恐ろしい」
いや、本当に。
「正確には私だけかな…だが、我らが国を、基礎を作りたもうたのは我が盟主その人!」
あの六人に優る変態か…
「あれ?でも君たちと一緒に来てなくないか?」
そんな存在いたら異常性癖で世界は満たされているはずだ。
「ハハハ!いずれ来る。…必ずな」
そう悲しそうに呟く『死神』。会えないことが無念なのかもしれない。
だが、私は決意する。そいつにこれまでの責任取らせよう。
何、一人だったら勝てるはず。
「そうか…だけど、人間達は勝手に滅びるかもしれないよ?もしくは僕が」
あの秘宝で増長するかもしれない。人以外を排斥するようになるかも知れない。
人が弱いのは、彼らの方が良く知っているはず。
「……」
急に黙る。私の発言に思うところがあるのだろう。
だからこそ、
「君たちは彼らを守っていたのではなかったのかい?」
止めたい。既に『死』を覚悟していると知っても我儘を言う。
できれば、一緒に戦って…
「これは我々の、ユグドラシルの者の責任だ。
この世界にしてきた全ての行いの終止符を私が打つ。
これだけは友よ。私の誇りが許さない」
静かに、ただ誰にも譲れない思いを感じ取る。
私にできるのは先ほど求められた作戦の援護くらいしかない。
「………そうかい」
それが堪らなく悔しい。
「今度こそ去らばだ…友よ」
『死神』は行く、破滅という名の『死』を届けに。
「ああ、待ってくれ!一つ尋ねたい」
彼のことを伝えなければ、やがて来るであろう存在に。
「その盟主の名前を教えて欲しい」
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そんな遠い日を思い出す。ついにきた。あいつ等を止めなかった糞盟主が。
『魔王』然としたこの風格。聞き覚えがある。
あの変態共の真の『王』とやらに違いない。
「初めまして。ツァインドルクス=ヴァイシオン殿。私の名はアインズ・ウー」
名乗り上げる『王』の言葉を、だが、
「君が『魔王』モモンガだね。初めまして。ツアーと愛称で呼んでくれて構わない」
せめて呆気を取らせる。
うん無理、こいつ絶対勝てない。存在の格が違う。