俺は超越者(オーバーロード)だった件   作:コヘヘ
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漆黒の英雄は望まない名声を高める。
どこまでもどこまでも


第十六話 漆黒の英雄

バハルス帝国とスレイン法国の要所となる境界にある城塞都市エ・ランテル。

 

国王直轄領であり、毎年バハルス帝国との戦争が南東のカッツェ平野で行われている。

 

カッツェ平野にはアンデッドが湧くため、定期的に冒険者の狩りが行われている。

 

そういった事情から、交通量は多く、人・物・金等、様々なものが行き交い栄えている。

 

実際は毎年の戦争で王国は国力が落ち、エ・ランテルが帝国領になるのも時間の問題だ。

 

王国の上層部の一部しかわかっていない。大多数は私利私欲で目がくらんでいる。

 

そんなことは露知らずに今日もエ・ランテルの住民は賑やかに過ごしている。

 

最後にどうなるかは他国の采配次第だというのに。

 

 

 

以上が法国の陽光聖典から情報収集したエ・ランテルだ。

 

まるで深淵の狂気を感じさせる予言に宗教国家なのを感じさせられた。

 

 

まぁ俺はアンデッドの魔王であり、そんなことを言われても困るだけだが。

 

 

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漆黒の全身鎧と赤マントを靡かせ、背には二本のグレートソードで街を闊歩する男。

 

 

付き従うは異国情緒あふれる黒髪のポニーテールの美女。

 

お淑やかそうな顔立ちに深い茶色のローブ、170センチ程度の飾り気のない杖(スタッフ)により、美女がマジックキャスターだと気付かせてくれる。

 

その美貌により、何の変哲もない服装と杖が彼女にかかると豪華な衣装のようにも思えてくる。

 

 

 

二人組がでてきたのは「冒険者組合」。

 

銅の小さなプレートなど、普段なら興味などわかない。

 

どこにでもいる駆け出しとしか思わない。

 

だが、男の威容と女の美貌が街の皆は目を離せなかった。

 

 

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…杖の選択を誤ったかもしれない。

 

もっとこう女性受けする綺麗な方が良かったのだろうか?

 

比較的地味な実用性に特化したスタッフだからナーベの服装にはあっている。

 

そう思ったのだが。

 

よくよく考えたら女性にプレゼント何てしたことがない。ユグドラシル以外で。

 

友人の子供みたいな感覚で与えていた。しかも、完全に実用品を与えてしまった。

 

そのことをパンドラズ・アクターもデミウルゴスも気にしていたのだろうか?

 

だったらはっきり言って欲しかったが、そればかりは仕方がない。

 

ナーベラルは恐れ多いと言いながら感謝して受け取ってくれたが。

 

本当に気にしていないだろうか?

 

こう両手で持たなくて良いし、胸に抱きかかえなくても良い。

 

人化の影響で俺の理性がたまにヤバい。与えた杖を抱いて寝ることはやめてくれ頼む。

 

 

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初日は冒険者組合で登録し、エ・ランテルを大体見て回った。

 

 

 

冒険者組合の登録では案の定ごろつきに絡まれた。

 

そのごろつきをその場で360度回転させたら黙った。

 

ただ、目を離した隙に他の冒険者からどこか触られたらしいナーベラルが激怒。

 

セクハラしたと思われる男冒険者を投げ飛ばした。

 

結果、鉄級の女冒険者のポーションを割ってしまった。

 

 

 

人化の影響で慌てて、ユグドラシル時代の癖で赤いポーションを渡してしまった。

 

あの頃の四六時中ダンジョン突撃で毎回ポーションを渡していた癖。

 

人化の影響もあり抜けない。

 

 

 

ストックは腐る程あるが情報漏洩もあり得るし、金を渡せば良かった。

 

 

今回、セバス達の商人のアンダーカバーのお陰で現地の金銭は予め確保できていた。

 

 

ミスリル冒険者程度なら持っていても不自然じゃない額を持ってはいた。

 

…正直、セバス達に現地ポーション等も用意して貰って置けば良かった。

 

万が一、逃げたり隠蔽したりする対策等の他は最低限しか用意していなかったのは悔やまれる。

 

 

 

今回は『原作』と違い、必ずしもンフィーレアが釣れるとは限らない。

 

 

 

ナーベラルには謝られたが、セクハラされれば誰だって怒る。

 

これには、ポーションを持っていなければ他の冒険者から舐められること。

 

薬師ンフィーレアへの撒き餌にもなったから問題ないと伝えた。

 

半殺しにするとかならともかく、今くらいの対応ならお前は悪くない。

 

寧ろ被害者だと言って慰めた。

 

というかそいつはどこ行きやがった。友人の娘にセクハラしやがって。

 

 

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二日目の今日は仕事探しだ。冒険者組合へ行き仕事を見つける。

 

 

 

俺が作ったエルダーリッチに負けていられないので、王国語は問題なく覚えた。

 

エルダーリッチ達が他の潜入工作するシモベのために作成した教材を借りた。

 

俺が休んだ振りをして徹夜で毎日勉強した成果だ。他国語はまだ無理。

 

俺が作ったはずなのにあいつら凄く優秀過ぎる。

 

 

 

なので、依頼表が読める。結果、張り出されているのはほぼ微妙な依頼しかなかった。

 

このミスリルの依頼ならギリギリだ。

 

 

「これを頼む」

 

 

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流石に規則で無理だった。

 

 

仕方がなく銅級で一番良い依頼を頼んでいたら、『漆黒の剣』のペテル・モークに誘われた。

 

後、ニニャと他二名もいた。

 

 

ペテルは銅より上の銀級とはいえ、冒険者とは思えないほど知的で礼儀正しかった。

 

ナザリックで調べた事前情報のお陰で、色々話せて楽しかった。

 

あのセクハラ野郎(何があったのかは見てないが)は例外かもしれない。

 

 

だが、ルクルットはナーベを口説いているのを見て、

 

ペテルの方が例外なんだろうなと思った。苦労してそう。

 

 

ルクルットはナーベの虫けら発言も気にしていないようだ。

 

しかし、それは冗談ではなく本気で言っている。

 

ルクルットが少々可哀想なので、言葉を控えるように注意したりした。

 

 

ニニャのタレント『魔法適正』をまるで皆自らのことのように誇っていた。

 

こうして話してみるとわかるが、チームの仲が本当に良い。

 

…ニニャの言葉の端々から腹黒そうな印象を受けた。

 

 

やや個性的な面々だが、この世界に転移して初めてまともな現地人と会話した。

 

 

 

対話を求めているのに天使達を突撃させられた挙句命乞いし始めた。

 

助けたと思ったら神か何かのように崇められた。

 

ナザリックでは当然のように絶対的支配者兼魔王だ。

 

今まで碌な対人関係を築けていない。

 

 

 

そう言った意味でも普通のやりとりが嬉しかった。

 

皆でモンスター駆除を行うことになった。幸い近辺の情報は揃えていた。

 

ナーベラルに無理しないで可能な範囲で良いので彼らを守るように伝えた。

 

本音を言えば森に生息している知性のないモンスターを捕まえたかった。

 

パンドラズ・アクターの言っていたことを検証したかった。

 

そればかりは我儘だし、仕方がない。

 

 

 

そう思っていたら、ンフィーレアから個人依頼が来た。

 

これは確定だ。本当に『原作』同様に釣れるとは…

 

エンリと本当に夫婦になれるのか?完全に友人扱いだったぞ。

 

 

エンリと話したが、友人を利用することは心苦しいですがって。

 

 

『原作』だとどうやって口説いたのだろうかンフィーレア。ジゴロなのか?

 

とはいえ護衛と採取なら、『漆黒の剣』の方が適任だ。

 

『漆黒の剣』のレンジャーのルクルットが周囲を警戒、ドルイドのダインが採取を手伝うのが適切と説得した。

 

 

実際は俺やナーベラルなら広範囲で警戒できるが言わない。

 

ワールドアイテムを併用すれば薬草も採取可能だが言わない。

 

 

いずれ名を高めるつもりではあるが、まず現地人とまともな友好関係を築きたい。

 

 

…ここまで『原作』どおりだとあの痴女と不愉快な仲間達がいるな。

 

 

ハムスターの登録で遅くなった?のが原因のはず。

 

今回は名を上げるよりも普通に護衛すべきだな。

 

ハムスターで名を上げるのは、もう一度近くの任務をこなした後で良い。

 

メリーゴーランドに乗るおっさんとか嫌だ。

 

念のため、襲われても助けに行けるように従属NPCにメッセージで監視するように伝えた。

 

 

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おまけ

 

 

戦士モモン計画の供をナーベラルに伝えた。

 

俺的には仕事を取り上げてしまって落ち込んでいたからと気を使ったつもりだった。

 

ところが、ナーベラルはそれであれば守護者のアルベドが供として適任だと言い張った。

 

俺はアルベドを連れていけないし、その理由を説明して納得させた。

 

 

 

ただ、ナーベラルを供にすることを反対したのもアルベドだった。

 

戦士モモンの仲間なら同じ戦士のアルベドよりもマジックキャスターのナーベラルが合理的だ。

 

何よりそう、角が隠せてない。幻影でも見破られる可能性がある。

 

そもそも鎧をずっと着ているつもりなのか?

 

ナーベラルはつい先日まで現地の魔法を研究していたし、現地の重要性も理解している。

 

強さもLv113で現在わかっている範囲では十分な強さのはずだ。

 

 

そこまで言ったらアルベドが反論できなくなってしまって、半泣きされてしまった。

 

 

俺は慌ててアルベドを必要としているからこそナザリックにいて欲しいのだと伝えた。

 

守護者統括として俺が不在でも守ってくれることにいつも感謝しているだと。

 

 

アルベドはすぐさま回復し、失態を詫びられた。

 

もっと前に相談していなかった俺が悪いと謝った。

 

どちらも謝るのを繰り返しそうになりかけた。

 

 

途中、デミウルゴスがアルベドに何か吹き込んでさらに元気になって認めてくれた。

 

 

デミウルゴスは何言ったのだろうか。

 

 

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パンドラズ・アクター「あれは素でやっておられるのでしょうか?

           …核地雷設置して去られるのは止めてください我が創造主!」

 

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おまけ2

 

 

「ナーベ。とりあえずここまでは予定通りだな」

 

今日は冒険者組合に登録し、宿へ行く。ナーベラルは報告し、俺は街を見てくる。

 

人化してこの世界の人間を観察してくる予定だ。

 

 

「はい。モモンガさ…」

 

おい、こら。さっき説明しただろう。

 

 

「モモンな。そしてお前はナーベだ」

 

一度くらいは仕方がない。間違いやすいと思うし。

 

 

「はい。モモン様!」

 

『様』はやめるんだ!幸い人いないのは確認済みだけど。

 

 

「モモンで良い。その深いお辞儀はやめよ。

 

 仲間、そうパーティだからな。私たちは」

 

そう、固いぞ。モモンに言いたいこと言って良いのだからな。杖が不満ですとか。

 

 

「はい。モモンさ―ん」

 

うん。まぁ許容範囲だろう。

 

 

「よし。それでよい」

 

ちゃんと言えば問題ないな。

 

 

「はっ!」

 

ついさっきやめろと言っただろうにまぁでもなぁ…

 

 

「…だからお辞儀はやめろと言っただろう?」

 

初日だから仕方がない。というか俺が逃げ道塞いでから供を頼んだようなものだ。

 

その気はなかったのだが、俺のせいでやりたくないことをやらせている可能性が高い。

 

多少のミスは許すべきだ。

 

 

「申し訳ございません!」

 

直角にお辞儀をするナーベラル。いかんこのやりとりだと俺、パワハラ上司だ。

 

 

「やめろ。…ああ、すまん。私が我儘を言ったからだな」

 

支配者だからなぁ…社長にくっついて働くようなものだ。

 

ストレスから口を滑らすのも仕方がない。

 

 

「そんなことは!」

 

いかんこの言い方も不味かったか。

 

 

「今回お前を供にするのは、私がお前を望んだからなのだ。至らないのは私が悪い。

 

 …先ほど宿を取ってから報告をお前に命じていた。だが、まだ時間はある。

 

 一緒に街を散策してみないか?少し急ぎ過ぎていたし、今後について話がしたい」

 

セバス達のお陰で最低限、この国の金は用意できた。

 

そこらの喫茶店で人間観察するだけでも街の様子はわかる。

 

初日ならば十分だろう。

 

 

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アルベド「報告が遅い(怒)!ナーベラルはモモンガ様と何をやっているの?

     …くぅぅ!やはり今からでも!!」

 

護衛  「アルベド様御乱心!待機していらっしゃる守護者の方々を呼べ!」

 

その後、報告の内容で発狂した。

 

 








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