現状Appstoreゲームランキングの上位に君臨し続けている「女王」こと、『ダンジョンメーカー』。
基本的なルールは、ダンジョンを作り、罠やモンスターを配置して、迫り来る勇士たちを撃退し、報酬としてランダムに得られる罠やモンスターを選択し、更にダンジョンを強化するといもの。
1日でも長くダンジョンを維持することが目標だが、ダンジョン最奥の魔王が倒されても「転生」という形で、魔王そのものを強化したり、恒久的に引き継げる能力のガチャを引く事が出来る。
元々韓国のGameCoasterが、8本の失敗作の上にようやく完成に至った作品らしく、そこにSNSでの口コミ等が加わって日本国内で爆発的にヒット、今に至るようだ。
GukHwan Kim:
実は、『ダンジョンメーカー』を開発する前に、同じようなコンセプトのゲームを8本つくり、8つとも失敗したために会社は危機にありました。
その中で、最後に我々が作りたいと思ったプロジェクトが『ダンジョンメーカー』でした。
ダンジョン系ゲームと似て非なる作品
実際遊んでみて思ったが、いや確かに凄い。世間で絶賛されるのも頷ける面白さ、というよりも中毒性だ。
この作品は、一見してピーター・モリニューの『Dungeon Keeper』や、そのフォロワーである『巣作りドラゴン』、『勇者のくせになまいきだ。』の外見を借りているが、実際遊ぶと似て非なるゲームであることがわかる。
基本的に、これらの作品はストラテジーゲームだった。先に相手が難題を問い、それに我々が正解を提示する。ただしその道のりはプレイヤーの自由である。こうした作品の戦略性はじっくり腰を据えてプレイする分には奥深いと評されるが、スマホで遊ぶにはちと集中力が保たない。
一方で、この作品は「難題」らしい難題は、せいぜい20ステージ毎にあるボス面ぐらいだ。まず大前提としてボス面までの装備収集の段階があり、その間には相応の運要素が絡む。
ゲームプレイの大部分は、頭をひねって戦略を考えるよりも、まず19ステージの間に黙々と勇士たちを処理して装備を整えることに費やされる。そして、その間の小さな選択を糧に1ステージのボス面に挑むのだ。
即ち本作は本質的にローグライクであり、適度な難題はありながらも、基本的にはダラダラ寝転んで遊べるゲームだ。これが日本で爆発的にヒットした理由であろう。
そんな本作で特に面白いのが、罠を組み合わせて特殊な罠を作る「特殊改造」だ。
この手の作品では、モンスター同士をかけ合わせてより強力なモンスターを作る…システムは定番だが、こうしたシステムは結局レシピさえ覚えてしまえば、あとは素材となるモンスターをいかに早く集めるか、という運ゲーになりがちだ。
だが罠の場合、モンスターのように無尽蔵にストックできるわけでなく、必ずダンジョン内に仕掛ける必要がある。つまりスペースを確保するリスクがある。
2つで作れる罠はまだ良いが、強力な特殊改造罠のために3つもスペースを確保すれば、必然的に取捨選択を迫られる。仮に使えない罠であっても、合成先が強力な罠なら確保しておく、というように。
しかも罠を融合すると、当然ながら素材となる罠は消えてしまうので、当分はダンジョンに罠のない空白地帯が発生するリスクがある。
特殊改造罠は、融合する前も直後も隙が生まれるリスクは大きいが、完成した罠は非常に強力だ。故に、前方に完成した融合罠を仕掛け、後方に素材となる罠を抑える等、プレイヤーのセンスが問われるわけだ。
もう一つ感動した点が、モバイル向けに操作性やUIが極めて洗練されていることである。
例えば、基本画面となるこの簡易的な見取り図のようなダンジョン。最初は、少し物寂しく感じるが、スマートフォンの処理能力との兼ね合いや、何より一発でダンジョンの構造を把握しながら、次の一手を考えるという点では、大変優れたデザインだ。
この種のゲームの大半は操作量が多く、やや初心者にとってとっつきにくい。何よりスマホ等のポインティングデバイスでは相当遊びづらいであろうことは容易に想像ができる。
本作の「中毒性」は、運と選択の連続からなる古典的なローグライクとしての魅力もさながら、モバイル向けに最適化されたUI及び操作である。どんな初心者でもすぐルールを覚えられるし、そこまで操作が忙しくないので布団に籠もりながら遊ぶのにも不都合しない。(そして寝坊する)
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荒削りな部分も垣間見える
だが遊んでいくと、本作が荒削りな部分も、大抵のプレイヤーが気づくはずだ。
まず、この作品には色々なモンスターや勇士が存在しており、どのドット絵も個性豊かでかわいらしいのだが、ゲーム内の性能はあまり差別化できていない。
特に問題なのは勇士である。基本的にどの敵も突っ込んで殴るだけな上に、こちらも特にアンチユニット等も存在しないので、時折ぶっ飛んだ強さを持つ個体を除いて、そこまで個性がない。これではドット絵が惜しい。
例えば、『Dungeon Keeper』の「規格外の強さだが、極めて横暴」で有名なHorned Reaperのようなモンスターを作るとか、勇士側も突入順序を決める等することで、少しは構成に頭をひねるかもしれない。
ビジュアルは敵も味方もかわいい。そしてかわいい。
また本作は強い罠やユニットの定石が決まっているので、序盤である程度ダンジョンが整えば、基本的にボス以外は勇士がキリングフィールドに突っ込むのを待つだけな作業になる上、勇者のAIがかなり悪くエリアをぐるぐる回ったりするので、テンポの悪さが感じられるようになる。
一方、本作はその定石への対策としてゲームクリア時の報酬を使ってガチャを回し、より強力な魔王やレシピを解禁していくシステムを採用しているが、そうなると回転率を上げるため効率を求めてしまい、ますます「ダンジョンを守る」という醍醐味が希薄になる、というジレンマがある。
転生時に得られる能力は若干OPな感が否めない。実績の兼ね合いを考えると、序盤は100階踏破した時点でさっさと切り上げ、報酬を確保してからリトライした方が効率的だったり。
まぁ多少荒削りといえ、価格が360円であることを考えれば、あってないような欠点である。実際この値段でこのクオリティの作品が、しかも韓国から出た事には驚愕するしかない。巷で噂の「中毒性」も納得の作品だった。
しかし、昨日紹介した『Muse Dash』も中国の開発だったし、台湾の文化的背景を元にした『Detention』はSteamで絶賛されていた。今年訪れたBitSummitでは、中国の『Death Coming』を含めた様々な作品に触れられた。
昨今、日本を除く東アジアのゲーム開発情勢は、目覚ましい進歩を遂げている。長年、海賊版の問題もあり注目されていなかった地域だが、今後とも刮目したい。