俺は超越者(オーバーロード)だった件   作:コヘヘ
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某事件の法国視点。
法国の皆さんのアイディアロールは失敗しました。
成功していたら100d100のSAN値チェックです。


閑話 誰も知らない気づいてはならない

神官長会議が別の議題に移る。それに伴い第一席次は退出する。

 

その顔立ちはまだ幼さを残している。

 

だが、神人の力を後世に残すため早く子をなせと、早く誰かと結婚しろと毎日のように上から言われる。

 

今回の会議はそのことではない。たまに議題に取り上げられるが。

 

 

 

退出し、少し経ったところでため息をつく。

 

漆黒聖典は現在、破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)を支配下に置くための準備に忙しかった。

 

そんな中で呼ばれたのだから当然であってもおかしくはない。

 

 

だが、そうではない。

 

 

呼ばれたことで破滅の竜王への準備の意味がなくなった。

 

 

 

会議の始まりはガゼフ・ストロノーフの暗殺失敗。

 

帝国騎士に偽装した数名の法国兵士が王国側に捕縛された。

 

さらに暗殺任務に従事していたはずの陽光聖典が突如、法国に帰還。

 

陽光聖典には1名の行方不明者。それ以外は全員無傷で帰還した。

 

陽光聖典はガゼフ・ストロノーフ暗殺任務に関する全ての記憶を喪失していた。

 

 

また、暗殺任務中、定期的に魔法儀式が行われていたはずの土の巫女姫での事件。

 

土の巫女姫の第8位階魔法『プレイナーアイ/次元の目』の儀式に参加していた神官や衛兵の装備及び日用品が喪失した。

 

『プレイナーアイ/次元の目』には破滅の竜王が映っていたという。

 

しかもそれは目撃した全員の証言が法国側で所有している破滅の竜王の情報と完全に合致していたという。

 

 

 

端的に言ってありえない。

 

破滅の竜王なら何故、ガゼフ・ストロノーフは生きているのか?

 

破滅の竜王なら何故、1名を除いて陽光聖典は帰還できた?

 

帰還した陽光聖典の全員が何故、記憶喪失していたのか?

 

 

それらを否定するはずの土の巫女姫の儀式従事者全員が破滅の竜王を目撃していた。

 

 

仮にフェイクだとしても目撃情報と法国側の持つ破滅の竜王の情報とが完全に合致することがありえるのか?

 

そもそも土の巫女姫の儀式従事者には、極秘任務である破滅の竜王の情報が一切なかった。

 

破滅の竜王についての情報を本当に知らなかったのかは魔法を使った聞き取りも行った。

 

 

結果、間違いなく事前には知らなかった。知ることは不可能。

 

しかし、目撃した全員がほぼ同じ証言をしている。

 

 

会議に出席した漆黒聖典第一席次は破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)であるはずがないとしか発言する他なかった。

 

神官長達は王国側に潜入している風花聖典からの情報を待つ他ないこと、原因究明まで漆黒聖典の待機が結論づけられそう命じられた。

 

突然の待機命令。それをどう隊員達に伝えればよいのか。表現しようがない現象に困り果てていた。

 

 

 

ふと、かしゃかしゃという音に気が付く。

 

会議室近くまで来れて、会議に参加していない人物はたった一人しかありえない。

 

何より六大神が広めた玩具であるルビクキューを最近お気に召していたのは知っていた。

 

十代前半にしか見えない目の前の少女は自分の生まれる前からこの容姿だったという。

 

一瞬耳に目を向けそうになるが、見たらまた馬の小便で顔を洗わされかねない。

 

 

目の前にいる少女こそが漆黒聖典最強の番外席次『絶死絶命』。

 

5柱の神の装備を守る番人である。

 

 

「何話していたの?」

 

気になるなら会議に参加すれば良かったのにと思うが口には出さない。

 

この分だといつも通り報告書も読んでおらず、また自分に報告させる気だ。

 

ただ、今回の事件をどうまとめたらよいか見当がつかない。

 

 

「破滅の竜王(カタストロフ・ドラゴンロード)への漆黒聖典の派遣延期が決まりました」

 

答えになってないのを自覚し、はっとなる。

 

 

「答えになってないじゃない」

 

番外席次はそのオッドアイでこちらを見る。

 

顔には笑みが浮かんでいる。経験上非常に不味い。

 

 

「正体不明の未知の戦力と思わしき存在があるかもしれないという報告でした」

 

ふわっとし過ぎているがこう答える他ない。全くわからないからだ。

 

 

「へぇ…強いの?」

 

強さ何てわかるはずもない。だが、嘘をつけばわかってしまう。

 

半分本当ならともかく全部嘘だと経験則でバレる。伊達に年を….

 

 

「しっ!」

 

番外席次は第一席次を蹴り飛ばす。何となくだ。

 

 

「グヘァ」

 

甘んじて受け入れる。何を考えていたと聞かれたら死ぬからだ。

 

 

「まぁ、正体不明ってことね。全く、最初からそう言えば良いじゃない」

 

言った。言ったのに蹴ったと思うが言わない。

 

これで済めば良いなと思いなおす。

 

悟られないよう心を無にする。

 

 

「強さがわからないんじゃあ、私も敗北を知れるかもしれないわね」

 

番外席次はそう言って第一席次を一瞥もせずに去っていった。

 

 

正直、今日は踏んだり蹴ったりでもう休みたい。

 

だが、これから隊員にそしてカイレ様に会議の内容を報告しに行かなくてはならない。

 

番外席次との会話は情報の良い整理となった。そう思う。いや、思わなければ。

 

 

第一席次は義務と務めを思い出して切実に休暇が欲しいと神に願った。

 

 

 

番外席次は笑みを浮かべていたが誰にも気づかれることはなかった。

 

 








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