俺は超越者(オーバーロード)だった件 作:コヘヘ
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全てはただ一つのために。
アルベドは渋る御方、アインズ・ウール・ゴウン様、真名『モモンガ』様を無理やり説得してまでこの会議の場を開いてもらった。
お心を害してしまわれたのは理解しているが、これは必要なことだとデミウルゴス共々説得した。
ナザリックの頭脳を集めて会議を行いたい。
至高の御方を侮辱するような真似に死をも覚悟したが、受け入れてもらえた。
言い方は悪いが賭けに勝った。不敬過ぎる考えを不快な気分を押し殺してまで決行した。
なので、本音から話す。あの道化師と。
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「児戯は辞めて正直に話し合いましょう。パンドラズ・アクター」
アルベドは知っている。この目の前の男の本質を。
数度しか会ったことはないが、守護者統括として、絶対者が創造されたNPCを注目しないわけがない。
観察していたので、理解した。
おそらくナザリックで自分とデミウルゴスしか理解していないこの男の本質。
ふざけているようで、道化のように振舞い、絶対に重要なところだけは守る。
ナザリック内で最も清濁含めた柔軟な思考を持ったこの道化こそ、宝物殿の領域守護者に相応しい。
しかし、今はその秘する心を知らなければならない。愛する御方を守るためには。
「悔しいですが、パンドラズ・アクター。
ナザリック全ての存在の中でモモンガ様のお考えを一番把握しているのはあなたでしょう。
私からもお願いします」
デミウルゴスは知っている。モモンガ様が死力を尽くしてナザリックを守ってきたことを。
今でこそ偉大なる存在とはいえ、モモンガ様達は当初ナザリックと敵対していたはずの人間種とも交流してまでナザリックを守った。
だからこそ、自分の嗜好等よりも優先すべきことはわかっている。
自分の世界征服路線が間違っている可能性も考慮しなければならない。
目の前の道化師が、あの偉大なる御方のお心に一番近いとわかっているから。
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二人の思いをくみ取ったドッペルゲンガーは話さなければならない苦痛を理解する。
自分が想定している唾棄すべき最悪の考えを。
「はい。私の名前はパンドラズ・アクター。
種族は上位二重の影(グレータードッペルゲンガー)。
大よその人々の考えは全て察することができます」
大げさに二人の前で道化師は自分の能力を説明する。
「とはいえ、流石に超越者(オーバーロード)であるモモンガ様のお心を読むことはふぅ可能!」
自分の能力すら通じない至高の神。思わず絶対者たる創造主を自慢してしまう。
二人が激怒しかけているのを察し、修正する。
「…ですが創造主たる御方の、モモンガ様の焦りぐらいでしたら察することができます」
慎重にだ。まず言うことは決まっている。
「頂いたワールドアイテムの御力により有する能力は完全催眠。
そして私の本領は役者。影武者としては身代わりとしてはうってつけです!」
そう。自分の本音をまず言うべきだ。この二人に協力してもらうためには。
「これから言うことはおそらくです。推測です。戯言です。
最悪ですよ。私がそんなことさせません」
これから言うことは考えたくない。
だが、必要なのだと理解してしまう自分の頭脳が憎ましい。
創造主から頂いた誇るべき頭脳のはずなのに。
何故か焦る気持ちが抑えられない。究極の役者として創造されながら。隠しきれない。
「モモンガ様は最悪死ぬ可能性も考えておられる」
二人は目を見開く。当然の反応だ。それ以上の内心はわかっている。
これを聞いてそう思わない。そんな存在はナザリックに必要ない。
二人とも根拠もなしに自らが言うわけがないと理解しているからこそ黙って聞いている。
自分でなければ即座に殺されていただろう。
「最悪残された我らでもナザリックを運営できるようにしているとしか思えません」
そうだ。本来ここまでする必要がない。
強引に自分達を使うだけで想像を絶する余程のことがない限り世界など簡単に消せるだろう。
それをしない理由は、ナザリックの保全ただ一つ。
知らない世界。絶対な超越者を超える者の存在を危惧している。
「モモンガ様の常日頃の発言から察するに自分から去られる可能性は絶無でしょう。
だからこそ、あまり敵対者を作りたくない。
無意味な殺戮を避けられているのだと私は愚考します」
パンドラズ・アクターは全てを察した。カルネ村での行いから不合理な合理性を。
「守護者統括アルベド様、守護者デミウルゴス様。
私は世界征服などよりも世界をモモンガ様に依存させるようにすべきだと考えます。
例えモモンガ様がこの世界に征服するだけの価値を見出していたにしてもです」
世界を美しいと言った。創造主はされど自分達を選ぶであろう。慈悲深い心のままに。
だからこそ、最低限で確実に守る道を取る。少なくとも自分は。
「まぁ、多分これ以上を我が神は想定されていると思います。
偉大なる超越者(オーバーロード)で有らせられる御方のお考えを推察すること自体が烏滸がましいと思われます」
本音をぶちまける。
必要だとは理解しているがここまで内心に踏み込まれたのはかなり不快だ。
それをわかっているからだろう。二人は簡単な挨拶だけして去って行った。
…後で謝罪すべきだ。我が創造主がその時を早めに与えてくださると有難いのだが。
「ああ、もうマジックアイテムを磨きましょう。
確か磨くのに最適な生物のデータがあったはずです」
乱雑になる心を回復する清涼剤。流石は我が神。最適な人材配置だと感嘆する。
「確か…猫とかいいましたか?」
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アインズ・ウール・ゴウンと公的には名乗る。ただそれだけのはずだった。
あの後、滅茶苦茶揉めるに揉めた。前世の携帯ゲームだったか?英雄は名前を伏せる。
『真名』を知られることは死につながる情報漏洩だか言ってみた。
ナザリックでのみ名を呼ぶことを許可する。
ナザリック全NPCだけの特権だと言ったら納得してもらえた。
ただ、カジータがあそこ迄の変態だったとは…
フールーダだったか?「原作」のアレに近い。
普通にNPCとしての崇拝も含んでいる。いつまでもああ何だろうなと思うと辛い。
るし☆ふぁーさんが対策のアイテムを渡していなければ心労で倒れてた。
俺アンデッドなのに…
しかし、何だ。対策アイテムが古代中国のゲームの設定集?恋〇†無〇?。
何で三国〇双の説明で納得できたのかがわからない。
ペロロンチーノ様垂涎のどうこう言ってた気がするが、後半疲れて聞いてなかった。
何故か急に説明のために呼びだされたシャルティアがアルベドと揉めたせいでスキルや魔法を試す時間がなくなってしまった。
時間の浪費だとしか思えなくなってきた辺りで流石に怒った。
「魔王」スキルが使えたお陰で最低限の確認にはなったが結果論だ。
「児戯は辞めよ」からの魔王ロールで第六階層の闘技場へ集団転移した。
マーレとアウラにはいきなりで大人数で来て、びっくりさせてしまった。
セバス及び従属NPCからの情報は草原ということくらいしかわからなかったが、
それだけでもまず敵が側にいないというのはホッとした。
序盤の町で魔王にかち合う勇者(俺は魔王だが)にならずに済んだのは幸いだ。
さらに守護者達の忠誠は理解できた。ナザリックの栄光は変わらなかった。
それが堪らなく嬉しかった。
従属NPCとの関係性もほぼナザリックの存在と変わらないことがわかった。
ただ、従属ギルド時代のことも覚えているらしい。
今度スルメさんのこととか聞きたいな。
マーレと従属NPC達に隠蔽を任せた。土被せても問題ない。
ただ、鉱山をしきりに掘りたがるNPCがいたのは想定外だった。
自分達の存在理由だが、モモンガ様のためならばと血涙でも流しそうな二人の少女。
鉱山掘るマシーン1号・2号(従属ギルドNPCの愛称。内心確定)には地下からなら掘ってよいと許可を出した。
喜びはしゃいでいる二人の少女を見て地下から掘らせる自身が情けなくなり、心が痛んだ。
…どう考えても隠蔽を優先する俺の方が正しいよな?誰か肯定してくれ。頼むから。
他には、情報特化NPC達と隠密特化傭兵モンスター達に周囲の監視網の構築を要請。
明日からは近辺の村や都市を探してもらうことにしたりして解散。
ナーベラル達の所に行って進捗状況も確認すべきだろう。
しかし…疲れた。精神的疲労は初日でピークに近い。
もう、俺頑張った。ちょっとくらい抜け出しても罰は当たらんだろう。
何か良くないフラグを立てた気がするが、何だったかな?まぁ、いいだろう。
それよりも星空か…楽しみだなぁ。
ブルー・プラネットさんがいればどれだけは熱弁を奮ってくれただろうか。
俺は過去を思い返しながら、童心に返ったような気持ちになった。
そしてリング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使い、第一階層入口付近へ転移した。