俺は超越者(オーバーロード)だった件   作:コヘヘ
<< 前の話 次の話 >>

12 / 29
オリジナル設定だけを見ていたら、原作に加えて幽遊白書やドラクエ。elona等々。
本当に何でもありそうなユグドラシル世界になっていた件。


第十一話 未知であり既知の洗礼

我に振り返った俺は既にサーバーダウンの時間がとっくに過ぎていることに気づく。

 

 

「どういうことだ!」

 

自身のあまりにも間抜けな最後と混乱から怒りの声を出してしまう。

 

すると突然感情が抑制される。

 

 

「これは…」

 

これには心当たりがある。『原作』の感情抑制だ。

 

 

「どうかなさいましたか?モモンガ様?」

 

初めて聞く、いや微かな前世の記憶の残滓が覚えている。思い出した。

 

呆気に取られながらも声の発生源は既に知っていた。

 

顔を上げたアルベドの物だった。

   

 

「アルベド、そして、いや…」

 

『知っていた』から冷静に判断できる。

 

それにかつての仲間ぷにっと萌えさんの教え『焦らない冷静な論理的思考』があったからこそだ。

 

まずは状況を確認する。

 

 

「シマバラよ。外はどうなっている?」

 

17世紀から20世紀にあったとという京都の六花街の一つ。

島原遊郭から名を取ったという情報特化従属ギルドNPC『シマバラ』。

 

彼女にはナザリック内外を監視させていたはずだ。

 

 

「はい。現在の入口付近には草原が広がっております。

 

ナザリックはグレンデラ沼地から転移されたと思われます。

 

…私の感知をすり抜けて」

 

シマバラは一見すると冷静を装ってはいる。

 

しかし、最後の言葉からは恐れ、情報に特化した自分が気づけなかったという自尊心が傷つけられたのか微かな怒りを感じさせられた。

 

その言葉にその場にいた全てのNPC達が驚愕しているようだった。

 

シマバラの能力は『魔王』モモンガの都合上、彼らの目の前で良く使っていた。

 

従属ギルドがいた頃は、従属ギルドを重要視しているよというアピールも含めていた。

 

 

だが、情報特化でも情報系魔法は奥深過ぎる。

 

いきつく先は持てる魔法と勘。腹の読みあいになる。

 

そのため、状況に応じて別の情報系魔法が使用できるナザリックの情報特化NPCニグレドとの使い分けもしていた。

 

とはいえ、基本な魔法や能力は同じ。

 

問題ない平時にはニグレドに会いに第五階層の氷結牢獄まで行くのと『あの』儀式を毎回こなすのはちょっと、いやかなり面倒だった。

 

なので、移動させやすいシマバラを俺は多用していた。

 

 

そのため、シマバラの監視の目をすり抜けるのはNPC的には不可能と思っていてもおかしくはない。

 

俺がそれだけ重宝していたから。いや、してしまっていたからと言うべきか?

 

 

「申し訳ございません!この罪は守護者統括たる私が!」

 

アルベドは慌てて謝罪する。

 

その場にいる全NPCを代表して気づかなかった失態を詫びている。

 

 

「よい、アルベド。これはおそらく私以外気づくのは不可能だった。

 

さらに言えば、今はそれどころじゃない」

 

これらの反応から忠誠心は『原作』同様のものであると推測できた。

 

とはいえ、従属NPCとナザリックNPCとの扱いの差。

 

念のため本当に忠誠があるのか等は後で確認すべきだ。

 

慢心して驕り高ぶって蹴落とされるということがなくても。

 

忠誠に胡坐をかいた結果NPC達から失望はされたくない。

 

 

「今の発言を聞き、他に異常に気が付いた者はいるか?」

 

一応確認する。無いとは思うのでセバスとプレアデスに…

 

 

「はい。モモンガ様」

 

意外過ぎる答えがナーベラルから来た。

 

 

「ナーベラル教えてくれ」

 

何かあったか。ナーベラルの設定や構成から気づくことなんてあったか…?

 

 

「はっ!恐れながらモモンガ様より授かりました。

 

ワールドアイテムの力『賢者の呪帯』にこれまでなかったはずの魔法が。

 

膨大ともいえる様々な魔法が登録可能になっています」

 

ナーベラルの答えを聞き、確認した俺は同じことを気づく。

 

 

 

ナーベラルと製作特化NPCオーバーロードのカジータに与えたワールドアイテムの力。

 

ワールドアイテム『賢者の呪帯』。帯というよりは包帯で作られた腰当て。

超経験値が必要な成長型ワールドアイテムである。

 

効果は『第六位階までの全ての魔法から選択した魔法が取得可能になる』というもの。

 

ただし、それなりの個数を取得するとなると膨大な狩りをしていた俺ですらうんざりする程の経験値が必要だ。

 

俺は初期装備状態の3つと百五十。

累計153個の魔法を『賢者の呪帯』により習得している。

 

勿体ないので百個は取得しないで残っており今すぐにでも百の魔法は取得可能だ。

 

 

ナーベラルの発言から取得可能な魔法の一覧をさらっと確認した俺は驚いた。

 

警報(アラーム)、蟲殺し(ヴァーミンベイン)。

 

『原作』において確か前者はニニャ、後者はイビルアイが使用していた魔法だ。

 

異世界で開発された魔法も取得可能なのかと驚愕したが、それ以上に安堵した。

 

 

 

この異世界が『原作』と同じ、あるいは近似した世界であることが確定した。

 

無茶苦茶なドラゴ〇ボールのような異世界じゃないことをまず喜んだ。

 

 

 

似たようなワールドアイテムがある。

 

大溶岩流(ストリーム・オブ・ラヴァ)や神炎(ウリエル)、朱の新星(ヴァーミリオンノヴァ)等ありとあらゆる炎系魔法がカルマ値等の減退なく使えるワールドアイテム。

 

『地獄鳥の殺生石』。指輪型のワールドアイテムだった。

 

そちらの能力を見ても今までなかったはずの魔法が確認できた。

 

こちらはかつての仲間達が誰も望まなかったので誰にも与えていない俺だけの知識。

 

いや、一人ワールドアイテムの力だけなら…ってあ…ちょっと待て

 

 

 

今は関係ない。確認が先だ。

 

決して。そう、決して現実から逃げているわけではない。

 

 

 

「素晴らしいぞナーベラル!

 

与えた能力を持っているだけでは、把握していなければ発見できない。

 

未知の知識があることを『魔法』の存在がお前のお陰で発見できた」

 

俺はナーベラルを心の底から称賛する。

 

自ら考え行動したということは、『原作』同様に経験や知識面で俺たちは成長できる。

 

 

この段階で異世界の脅威を知ることができたのは素晴らしい。

 

名前だけでも大体の魔法が効果を多少類推できる。蟲殺し(ヴァーミンベイン)とか。

 

『〇〇・ルンドクヴィスト・〇〇』シリーズとか明らかに個人名が入っているため、効果が推測できない魔法もある。

 

俺も『スーパー・モモンガ・ウルトラファイヤー』とか作りたい。異世界人ズルい。

 

 

 

「今後は都市等へ調査に向かうかもしれない。誰か他にはいるか?」

 

ナーベラルのこともあるし、さらに念を押してみるが流石に誰もいない。

 

 

「では、アルベド。第一階層に待機している戦闘特化従属NPC。

 

その中から選抜した調査隊を作り、二人一組か三人一組で周囲を調査させろ。

 

調査範囲は周囲数キロ程度で構わない。

 

調査する者にはメッセージが使用可能な者を確実に同行させろ。

 

現地の知的生命体が居れば最大限譲歩して、出来ればナザリックに来てもらいたい。

 

いや、無理なら友好関係を築きたい。可能な限り温厚な者を選抜し、調査に回せ。

 

セバスはナーベラル以外のプレアデスの一人と共に調査隊と合流せよ。

 

それまでにわかった範囲の情報を持って3時間後に第六階層の闘技場へ来い」

 

念には念を入れて徹底的に。

 

未知の脅威はシマバラとナーベラルで判明したからわかってもらえるはず。

 

温厚という点と人数で選抜の時間がかかるかもしれないが。それは必要な時間だ。

 

 

「畏まりました。ナーベラルとの会話と並行して大よそ考えておりました。

 

メッセージを送ればすぐにでも編成し、調査可能です」

 

アルベドは本当に有能だな。俺いらない子じゃないかこれ。

 

 

「素晴らしい!ではそのようにしてくれ。

 

ナーベラルはカジータを呼んで共に…最古図書館(アッシュールバニパル)に行け。

 

司書長を始め司書たちの知識と照らし合わせて未知の魔法を確認して欲しい。

 

『賢者の呪帯』で新しく判明した魔法名を全て書き留めて報告書を作成してくれ。

 

ただし、習得はするな。あれは新たに覚えるための経験値がかなりかかる。

 

50個程度ならナザリックの秘宝、ワールドアイテム『強欲と無欲』のストックの少しを使えば容易だが今はダメだ。

 

これは今後の方針に関わる重要な仕事だ。できるな?」

 

 

さらっと見た俺ですらわかる。

 

膨大な量の魔法があり過ぎること、単調な作業で気が滅入ること間違いなしだ。

 

 

もし今後「原作」同様に戦士モモンで情報収集するなら、

 

人間として行動できて現地魔法が使えるようになれるナーベラルが最適だ。

 

プレイヤーがいれば魔法から現地人という偽装及び証明が可能だ。

 

 

ただ、『原作』と同様ならナーベラルの人間軽視はやや問題だ。

 

正直俺がナーベラルを完全にフォローできる自信がない。

 

 

「はっ!命に代えましても必ずやご期待に沿えるよう努めます!」

 

ナーベラルが死を覚悟した戦士のような意気込みを語る。

 

いや、そこまで気にしないでいいから。可能なら都市部への調査とかも頼みたいし。

 

想像以上に忠義が重い。

 

『原作』の俺良く頑張った。偉い。ストレスで死ぬ。

 

慣れるまでしばらくはオーバーロード状態じゃないとストレスで死ねる。

いずれ人化状態での忠誠も確認しなくてはならないだろう。

 

 

「…では、今の方針に従い行動を開始せよ。

 

アルベドとシマバラ以外に命令が与えられていない者は元の持ち場に戻ってくれ」

 

俺がそう命じると忠義の礼を取った後、皆が行動し始める。

 

まるで俺、『魔王』じゃないか全体的に。かなり練習したけどさ。

 

 

 

さて、三時間も取った理由だが、『原作』じゃないんだし、いらなかった気がする。

 

というかアルベド以外は『原作』でも大丈夫だったはず。

 

さっさと終わらせて、アウラやマーレのところに行ってスキルや魔法を確認したい。…一応ゴーレムもだな。

 

転移前に全部確認したはず。でも未だに怖いんだが、るし☆ふぁーさん。

 

仲間達が作った物だ。俺は全てを許そう…。

 

 

気を取り直そう。何、ささっと終わる。

 

「アルベド、シマバラよ。

 

私はな。かつての仲間達、皆を探すために『アインズ・ウール・ゴウン』に一時改名を…」

 

俺はそう言って二人の様子を伺おうとした。

 

 

「ダメです!」「死人が出ると思われます」

 

即答で却下された。

 

何でさ!?

 

 








※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。