俺は超越者(オーバーロード)だった件 作:コヘヘ
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それは一個人である限りわからない。少なくとも協力を...諦めれば良かったのかもしれない
後期には戦士モモン計画等半ばはっちゃけていたが、
普段はユグドラシル金貨や経験値を必死に集めたりしていた。実を言うと情報収集のため色々検索していたら、滅茶苦茶胡散臭いサイトに私が考えた最強のプレイヤーというのが載っていた。それがカタログスペックだけ見れば俺に匹敵するものだったのだ。
NPC皆を守るつもりではいるがあんなのに毎回攻められたらNPC達の協力や犠牲が出てしまう。ただでさえ俺には前世があるのだ。魔王である俺を倒すために神とやらが送り込んできてもおかしくない。
理論上あれが十数体いても余裕で迎撃できる第8階層だがこの世界ではほとんど発動していない。毎日波状攻撃されれば百年持たない可能性が高い。
持ち出すことを躊躇していた強欲と無欲を持ちだした。
その結果とんでもないことがわかった。まず、PKか最高難易度のダンジョンじゃないと碌に経験値が稼げない。それ以外のダンジョンだと最低経験値しか稼げない。根こそぎ殲滅しているが割に合わない。
かといって最高難易度ダンジョンを毎回好き放題したりPKばっかりしていたら、待っていましたと言わんばかりに転生オリ主とその仲間達とセラフィムの糞共が颯爽と現れるだろう。
強欲と無欲が奪われたり、ナザリック地下大墳墓に攻め込まれたら話にならない。
そこで俺は考えた。無人魔王スクロール販売所の「魔王警報」だ。
まず、課金アイテム、最悪熱素石を常に持ちナザリックに転移できるようにする。
次に高位ポーション等をいくつか店で買っておく。
最後にあらゆるダンジョンを駆逐する前に販売所にて本日の「魔王警報」を出す。
警告したダンジョンではこれまで一々気にしていた他プレイヤーの誘爆も無視する。
誘爆したら「魔王警報」をしておいたのだから自業自得という旨の魔王ロールをする。
無論殺したいわけではないので予め他の店で購入しておいたポーションを売ったりする。もちろんダンジョン価格でだ。
勝手にキレて襲い掛かってくる奴がいたら自業自得なので経験値にする。
これを繰り返して最高難易度のダンジョンを転々とする。上位ギルドに目を付けられない様に偶に低位のダンジョンを蹂躙する。
上手くいくはずがないと思っていた。正直わざわざ警報だしたらセラフィムのカスがオリ主的な何かを引き連れてくるかもしれないと恐怖した。
結果全く問題なかった。
そもそも大魔王モモンガの悪名と実力は俺の想定以上だった。
俺が誘爆しないように気をつけていたなんて誰も知らなかった。
なので、大概の無関係なプレイヤーが高く設定したはずのポーションを感謝して買う。
本当はただで譲ってもおかしくないのに。
「挑むために探していたんだよ!」と襲い掛かかってくる奴もいた。
後で知ったがユグドラシル関係じゃないスレ名で隠蔽に隠蔽を重ね、暗号化までした『大魔王モモンガ行動予想スレ』(暗号化済み意訳)というものがあった。
これまでの目撃情報から推測した行動パターンの分析。
心理学を用いた性格傾向予想や諸外国の言語や技術を用いた暗号化等、転移後の魔王ロールに大変参考になった。
プレイヤーを巻き込まない様に事前の情報を収集してランダムで襲撃しているという予想がなかった。
偶に当たるが知らずに俺はPKプレイヤーだと思って対処していた。
中々当たらないがそれでも何回か当たっていたので皆更に勘違いしていた。
中にはこのスレが気づかれていて敢えて避けている可能性を考える者もいたが、偶に当たるのは何でだろうかと疑心暗鬼になっていたらしい。
上記の内容は本当に高度な暗号化がされており当時の俺では一切理解できなかった。異世界転移後、俺が作ったはずのエルダーリッチ達が報告してきて初めて分かった。
当時の俺は魔王警報を始めてしばらくして新しく常設されたユグドラシル関係スレ『大魔王モモンガ行動予測スレ』(暗号化解除)を見て、
「魔王は俺たちのことを見つけていてくれたんだ!」や
「これでわざわざ予測しなくて済むぜ。あの嘘つきのセラフィムめ!」
という歓喜に満ちた書き込みから本当に迷惑かけていたんだなぁと反省していた。
彼らはもはや不要だからとこれまで毎回隠蔽していた過去ログを晒した。
それを見てわざわざ余所にスレ立てて暗号化してまで俺を避けていたのかと落ち込んだ。
念のため知らない情報がないかと過去ログをサルベージして「ジャンク部屋」に放り込んだ。
魔王警報作ったのに何故かPKプレイヤー増えたな思ったが、経験値と金とアイテムになるならいいやと本気でわからなかった。
上位ギルドは何故か来なかったが、上記の予測スレで「あいつらは俺たちの予測を利用して魔王を避けていたんだ」という書き込みを見て納得した。
無関係な一般プレイヤーを利用していたセラフィムの糞共を警報と同時に襲撃したい気持ちでいっぱいだったが我慢した。
こうした必死に敵対を避けていた無辜のプレイヤーにこれ以上迷惑かけられないと自分に言い聞かせた。実際は逆だったが。
ナザリックに攻め込んでくる奴らは課金アイテムを使う前に従属NPCLv150と超級ゴーレムが駆逐したとの報告が入った。本当に瞬殺だった。
よくよく考えてみれば一人ひとりがレイドボス一歩手前の戦闘特化NPC。
従属ギルドがギルドの名をかけて組み込んだ戦闘AIとナザリック提供の材料を用いて神器級で装備を統一。ナザリックを知り尽くしたヘロヘロさんが行動パターンを組み込んでいるのだ。
出稼ぎ(ダンジョン蹂躙)に出ている間に怖くて仕方がなく、新たに配置した探知特化の高レベル傭兵モンスター及びナザリック地下大墳墓内部からの簡易ワールドアイテムを用いた情報特化NPCの警戒網を突破するような奴はいなかった。
仮にいたとしても攻め込んだ時はなるべく早く蹂躙を切り上げるよう心がけていた。全滅の知らせはワールドアイテム用いても隠蔽不可能なはずとはいえ全力で蹂躙し早めに帰った。
稀に傭兵モンスターの被害が出たが、その度に補填したし毎回いつ全滅する等被害がでても問題ないように傭兵モンスター召喚書物をコピーしまくった。
最古図書館(アッシュールバニパル)はギルドメンバーがいた頃拡張したが、当時の度重なるPKギルド襲撃の収穫でほぼ埋まっていた。
俺はこれ以上思い出を弄りたくなかったのでジャンク部屋を第二の図書館にした。
前買い込んだ本も相まってモモンガ専用の図書館という規模になってしまった。
見栄えの為に読まないような高尚な本を入れた。
安値で手に入れた低位の魔法が込められた本やイベントアイテム・外装データ等をありったけぶち込んだ。
まとめ買いをしてかなりの安値で手に入れ、見栄えだけのために突っ込んだ。
結果ナザリックにないような価値の低いアイテムが多くなったが俺は気にしない。
元々異世界用の『弱い』アイテムが増えただけだし、広すぎて量にすればかなりの財があるはずの部屋が、スカスカなのを少しでも埋めたかった。
無人魔王スクロール販売所は売れに売れた。
ちょっと寄ったから何か買おう精神なのかわからないが基本即日完売になってしまった。
俺は魔王警報をだすためだけに低位のスクロールをまとめ買いし、製作系NPCを全力投入して低位のスクロールに魔法を込めまくった。
狩りの後、大量のレアアイテムとゴミアイテムを選別しながら魔法のリキャストタイムをコンマ1秒以下で見切り魔法を込めた。
普段使わない魔法の腕が上がった。それでも即日全部高値で売れる。
俺の行動は段々ルーティン化していった。
狩り→店の売り上げを受け取る→
低位スクロールを込められる規定数ギリギリまでまとめ買い→
余った売上を即座に散財する(ドラゴンハイドや低~高位マジックアイテム等)
→製作NPCが作成したスクロールに魔法を最短で込める
当時の俺は気づかなかったが、魔王スクロールを売り出す前は全盛期とくらべ天と地程の差がある閑散とした街並みだった。
その為に信用できる大ギルドアインズ・ウール・ゴウンは店を簡単に買うことができた。
アインズ・ウール・ゴウン全盛期2500人討伐した際に魔王モモンガが少量売ったスクロール。それを大規模で売り出したときの古参プレイヤーや噂にしか聞いていなかった全盛期にプレイを始めたプレイヤーは飛びついた。
そういった客と売り上げを即日散財する魔王モモンガの存在。
魔王スクロール販売所の周りには様々な店が増えていた。
低位スクロールをまとめ売りする店。変な効果がある面白アイテム屋。
普通の本の中にこっそり自分で書いた小説を安値で売る本屋。
個人的に作った変な外装を売る店。普通にまともな高位素材を売る店。
中古マジックアイテムショップ等色々増えていた。
その場で魔王スクロールの売り上げ全部を散財し、店が増えそれに伴い魔王スクロール以外を買いにくる客がゲーム内の経済を活性化させたのに俺は気づかなかった。
九つの世界の一つ。たった一か所小規模な。
でも全盛期のユグドラシルはそこにあったのだ。
そんな大事なことに気づかずこの頃の俺は発狂していた。
戦士モモン計画はこのあたりで頭おかしくなった俺が全力でふざけた結果である。
とはいえいきなり魔王警報を辞めるとおかしいし、怪しいと変なところで冷静だった。
段々攻略するダンジョンの難易度を下げ時間を作成し、戦士モモンとして活動時間を増やすという涙ぐましい努力の成果だった。
当時、俺は「原作」開始までギリギリだったため必死だった。
『ナザリック』を守るため。
無駄かもわからない戦士モモンや魔王モモンガのロールプレイ、役作りのための帝王学学習等リアルと現実を辛うじて区別できている状態だった。
リアルの情報収集をニュースくらいしか見ない程度に疎かになっていた。ユグドラシル関係スレやサイトの大多数を読まずにそのままデータ化したりしていた。
その日『大魔王モモンガ行動予測スレ』では、激論が交わされていた。
「無人魔王スクロール販売所の『魔王警報』減退」という彼らの存在理由がそのものが危ぶまれる事態が発生していたからだ。
様々な解釈の末とある筋の確実な、それでいて切実な情報が入ってきた。
「公式が魔王モモンガによるユグドラシル活性化に伴い運営延長を要請したが、
会長が『所詮個人の活躍を当てにする等馬鹿げている』と一蹴したからだ」
とリアルで無駄に洗練された高度な技術を持つ情報収集の変態(エキスパート)達はそう結論付けた。
俺は知らなかった。もう少しで完全な「原作」改変ができたことを。
そして後悔することになった。自分の視野の狭さを。