アメリカでファンの多い公共ラジオ局がある。NPR(National Public Radio)だ。NPRは地元局を通して全米で放送されており、車社会の米国では運転中に同局に合わせて番組を聞いている人がたくさんいる。いや、家の中でもNPRのニュース番組やインタビュー番組を毎日楽しみにしている人々が多い。
番組のクオリティーが高く、それでいてわかりやすい。アメリカのテレビ番組はやたら騒がしいものが多いが、もっと静かに知的な時間を過ごしたい人々が、このNPRの視聴者層である。
NPRはウェブサイトの作り方もユニークだ。普通、ラジオ局のウェブサイトと言えば、番組の紹介をしたり出演者のプロフィルを掲載したりするのに使うだろう。番組や番組制作のバックグラウンドを伝えるメディアという位置づけだ。
ところが、NPRはまるでアーカイブのようにウェブサイトを利用している。聞き逃した番組、あるいはもう一度聞きたい番組を必ず聞くことができるのだ。たとえば、ニュース番組ならばセクションごとに区切られ、それぞれでMP3ファイルがストリーミングやダウンロードできるようになっている。
時間に余裕のある時に、関心のあるトピックにじっくり耳を傾けることができるのはありがたい。しかし、それだけではない。アーカイブであると同時に、ラジオ局であってもウェブサイトはまったく別のメディアであり得るという視点からサイトの構成が考えられているのがわかるのだ。
たとえば、どの番組でも文字を起こしたテキストが読めるようになっている。ニュースやインタビューはもとより、社会問題を取り上げたセクションや健康情報など、放送された内容のほとんど全てが文字で読める。7分のセクションをもう一度聞いている時間はないが、ざっと目を通したいということであれば、たった数分で内容が把握できるだろう。