改訂版・最強生物の副船長


 

第1話:その男、名はライコウ

 
前書き
この物語はルフィが旅立つ16年前からスタートします。
名前も何もかも大分変わった、新しい「最強生物の副船長」をお楽しみに。 

 
偉大なる航路(グランドライン)後半の海「新世界」。
一騎当千の大海賊達が君臨し、常識外れな事象もさらに増す、世界で最も航海が困難である「最強の海」。
その新世界にある無人島で、彼らは宴を催していた。

?「……酒が切れかけてやがる、早く調達しなきゃいけねェな。」

空になった瓢箪を持って言う男の名は、“百獣のカイドウ”。
一対一(サシ)でやるなら、カイドウだろう」と言われる、生きとし生けるあらゆる者の中で“最強の生物”と呼ばれる海賊だ。
彼が率いる海賊達はほぼ全員が気性が荒い、ザ・無法者…一筋縄では行かない曲者揃いだが、そんな彼らでも頭の上がらない人物がいる。
それが、“剣帝(けんてい)”の異名を持つ百獣海賊団副船長・ライコウだ。

ライコウ「カイドウや、ならばこのミナモト島のヘイアン村へ行かんか?」

カイドウ「ミナモト島?」

ライコウ「俺も一度行ってみたくてな……ここの千年酒は“幻の酒”と言われている。 この島をナワバリにすれば、貰えるかもしれんぞ。」

カイドウ「ウオロロロロ…!! そりゃあいい。」

カイドウとライコウ。
この2人は大海賊時代開幕以前……“海賊王”ゴール・D・ロジャーが存命してた頃からの古い付き合い。ルーキー時代から頭角を現し、今では新世界ではその名を知らぬ者はいないほどの海賊団の礎を築いた猛者だ。
すると、金属製の大きなマスクを口元にはめた巨漢が現れた。名をジャックと言い、“旱害(かんがい)のジャック”と呼ばれて恐れられている大物海賊だ。

ジャック「出航の準備なら整ってます、いつでも構わねェ。」

ライコウ「そうか……あとは船長命令次第、だな。」

すると、数人の部下がジャックに尋ねてきた。

「ジャック様、ライコウ様って本当に強いんですかね…?」

「あんまり戦ったところ、見たことないですし……。」

ジャック「バカ野郎、それはお前らが知らねェだけだ。 ライコウさんの強さは洒落にならねェ……怪物だ。」

ジャックは動物(ゾオン)系悪魔の実“ゾウゾウの実・古代種マンモス”の能力者。強大なパワーで敵を蹴散らす、海賊団でも指折りのファイターなのだが、そんな彼でも“怪物”と称する程ライコウは強いのだ。

ライコウ「ハッハッハ、怪物か……否定はできんな。」

その時だった。
部下達が慌てて詰め寄って来たのだ。どうやら敵襲のようだ。

「カイドウ様ァ~~~!!! ライコウ様ァ~~~!!!」

「敵襲です!!! 海軍が攻めてきたァ~~~!!!」

「「海軍?」」

2人は声を揃え、互いに顔を見合わせる。
そして……笑みを浮かべる。

ライコウ「……分かった、今回は俺が出張ろう。 他の者は来なくても良い。」

『えェっ!!?』

「無茶ですよ!! 相手は軍艦3隻ですよ!!?」

ライコウ「八宝水軍を相手にした時の方がよっぽど骨が折れたさ、問題無い。」

ライコウはそう言って愛刀である最上大業物“鬼王(きおう)”を携え、1人艦隊を相手に立ち向かうことに。

「おいおい、大丈夫かよ……いくら何でも無謀すぎるだろ!!」

「だが、もう行っちまったし……。」

「止められねェよ、俺達じゃあ…。」

すると、狼狽える部下達をジャックは冷静に一喝した。

ジャック「バカ共、一々心配すんじゃねェ。」

『ジャック様!!』

ジャック「あの方は強い……お前らの100倍はな。 必ず無傷で戻ってくる。」

『……!!』

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海軍の艦隊を率いるのは、サカズキ中将。周囲からは“赤犬(あかイヌ)”と呼ばれ、大海賊時代開幕以前から生粋の海兵として活躍している軍内屈指の実力者だ。
彼はマグマグの実のマグマ人間……各攻撃が火山の噴火や火砕流を思わせるほど大規模で威力も絶大な能力であり、新世界の海賊達も警戒するほどの存在だ。

サカズキ「あの無人島にゃァ、百獣海賊団が滞在しておる。 今の内に攻めて根絶やしにするんじゃァ!!」

『はっ!!』

海兵達は準備を始め、砲撃の用意をする。
その時だった。

ライコウ「それは少し困るな。」

サカズキ「何っ!!?」

突如甲板に現れた、狩衣姿でコートを羽織った剣客。
その姿を見た海兵は驚愕する。

「“剣帝”ライコウだァァ!!!」

ライコウは欠伸をしながら辺りを見回す。
海兵の数はおおよそ200人といったところだろう。
ふと、ライコウはサカズキと目が合った。

ライコウ「海軍中将が率いてたとは……ハハハ、これは驚いた。」

サカズキは腕から大量の煮え滾るマグマを噴き出し、ライコウは鬼王に手を添える。

サカズキ「大人しく()られるんなら、一思いに殺しちゃる。」

ライコウ「図に乗るな、そう易々と殺されるほど俺は甘くはない。」

睨み合う2人。

サカズキ「所詮、海賊は海賊……“正義の力”を思い知れィ!!!」

ライコウ「この俺を試そうと? 面白い!!」

サカズキの“マグマの拳”と、ライコウの“鬼王(かたな)”が激突する。
そこから先は、常人では介入できない壮絶な戦いが始まり一進一退の攻防を繰り広げる。

ライコウ「フゥ……灼熱の溶岩は厄介だな、互いに覇気を纏ってるから尚更だ…。」

サカズキ「ぐぅ…!!」

ライコウ「しかし、怠けているとやはり……勘が鈍るな…。」

ライコウは副船長だ。
基本的にはジャックが部下達をまとめて戦うため、自分から戦うことはない。しかし実力は本物……海軍中将ぐらいなら本気でなくとも優勢になれる。

ライコウ「仕方ない、少し本気を出させてもらうぞ!!」

サカズキ「!!?」

ライコウは隣の軍艦へ移動し、覇王色で海兵達を威圧して吹き飛ばす。

ライコウ「行くぞ!! “奥義・船割(せんかつ)”!!」

ライコウは鬼王を天高く掲げ、一気に振り下ろす。
それは巨大な三日月状の斬撃と化し、サカズキらに襲い掛かる。

サカズキ「おんどれェ!! 軍艦(ふね)ごと斬る気かァ!?」

さすがのサカズキもこれは避けざるを得なかった。
サカズキが避けた瞬間、斬撃はそのまま3隻目の軍艦を貫通。轟音を立てて真っ二つに斬られた。
普段のサカズキなら問答無用で追撃するが、島にはあの怪物(カイドウ)がいる。ライコウ一人でこの被害なのだ、カイドウまで出張れば一巻の終わりだ。
こうなった以上は退かざるを得ない。

ライコウ「すまんが、この軍艦は俺達が有効活用する!! センゴクによろしく言っといてくれ!!」

ライコウは手を振り、笑顔でサカズキに語りながら島へ戻っていった。

サカズキ「っ……おんどれェ……!!」

力の差を見せつけられたサカズキは、苦虫を噛み締めた表情でライコウの後ろ姿を睨むのだった。 
 

 
後書き
ライコウの設定です。セツラの設定を受け継いでますよ。

【ライコウ】
身長:345cm
年齢:第1話時点・28歳→原作開始時点・44歳→2年後・46歳
懸賞金:第1話時点・7億ベリー→原作開始時点・15億ベリー
誕生日:5月2日
容姿:長髪で顔には刀傷がある。服で隠れて見えないが、身体にも刀傷や火傷の痕がある。身体は鍛え上げられてるが割りと華奢な方。
武器:日本刀(最上大業物“鬼王”)
服装:行灯袴を愛用し、狩衣姿で黒いコートを羽織っている。
好きなもの:酒、賭博、宴
嫌いなもの:邪魔者、筋を通さない者
所属:百獣海賊団/副船長
異名:“剣帝”、“カイドウの右腕”、“百獣海賊団の頭脳”
イメージCV:杉田智和
性格:マイペースで大らか。家事も教養もこなす典型的なオカンであり、さらに頭も切れるという副船長として申し分ないほどのサポーターである。ただし一度キレると手に負えないタイプ。
戦闘力:作中最強クラスで、非能力者だが“剣帝”の名に恥じぬ凄まじい剣術と居合術を誇る。また覇王色・武装色・見聞色の3つの覇気を扱え、中でも覇王色は海兵を吹き飛ばすほど強力な威圧を有する。格闘にも優れ、「覇王拳」と呼ばれる覇気を纏った我流拳法を用いる。
モデル:源頼光、足利義輝(戦国BASARA)、宇練銀閣(刀語) 

 

第2話:戦闘後

 
前書き
感想で「主人公の名前を何故変えたんですか?」という意見が出たんですが、実はライコウはセツラの初期設定だったんです。
容姿とかは同じなんですが、服装を浪人風か貴族風かで悩んだので。
カイドウは酒呑童子みたいな印象だったので、酒呑童子を倒したとされる平安時代の武将・源頼光か、同じ鬼で羅刹のどちらかを名前の由来にしようかと思いまして。
悩んだ末に選んだのは、ライコウでした。 

 
「海軍中将の船をあっという間に……!!」

「スゲェ……相手は鍛え抜かれた精鋭軍人だぞ!!?」

ジャック「だから言っただろう。“お前らの100倍は強い”とな。」

たった1人であっという間に海軍を壊滅させたライコウの実力の片鱗を垣間見て、衝撃を受ける部下達。
これが、百獣海賊団副船長(ライコウ)の実力。その圧倒的な武力を目の当たりにし、思わず冷や汗を流す部下達。

「それにしても……副船長、何で軍艦持ってきたんです?」

ライコウ「決まってるだろう……補充だ。」

ライコウ曰く、海軍の軍艦を百獣海賊団の船に改造したり武器や弾薬を独占するために軍艦を必ず1隻奪うとのこと。運が良いと極秘情報を得て世界政府の動きを察知できるとのこと。

「極秘情報って……ジャック様は見たことあるんですか?」

ジャック「あぁ、実際俺もこの目で見た。 海軍がワールド海賊団の時みてェに海賊達を買収して俺達を潰そうとした計画に関する資料があったしな。」

『!!?』

ワールド海賊団。
それは、“世界の破壊者”と呼ばれ恐れられた大海賊バーンディ・ワールドが率いた海賊団だ。かつてセンゴク、ガープ率いる海軍とワールドに恨みを持つ海賊達による連合軍と交戦し、撤退寸前まで追い詰めたが、部下として潜入していた世界政府の諜報機関「CP(サイファーポール)」の諜報員及び彼らに買収された部下の裏切りによって船団が総崩れとなり、更に船長のワールドが捕えられ壊滅した。
それを百獣海賊団相手にも実施しようとしたのだ。

ジャック「その時は副船長が奪った軍艦から極秘資料を手に入れて看破したから事なきを得た。 まぁ看破しなくとも、この俺が本気を出せば何とかなったがな。」

「副船長、パネェ……。」

「オカン気質が生んだ奇跡か……!?」

副船長の万能ぶりに舌を巻く一同。
するとそこへカイドウが介入した。

カイドウ「バカ野郎、お前らがしっかりしねェだけだ。」

『カイドウ様!!』

カイドウ「お前ら、俺とライコウに何回救われたと思ってやがる?」

すると、今度はライコウが介入した。

ライコウ「いや、お前酒飲んでばっかだろうが!!! 全部俺に任せて飲んじゃァ暴れて飲んじゃあァ暴れて……船長だろ、いい加減大人の階段を上れ!!」

カイドウ「あ゛ァ゛!!? 俺が誰だか分かって言ってんのかァ!!?」

ライコウ「お前と一番古い付き合いなんだ、お前の体たらくさぐれェ知ってるわィ!!」

口論を始めるカイドウとライコウ。

「あの……昔からこうなんですか?」

ジャック「結成当初からこんな感じだが、それがどうした?」

「……何でもありません。」

その時、黒いコートをなびかせて鋭い目付きの男が現れた。
“海賊男爵”として恐れられる百獣海賊団航海総長のバロン・ブラックだ。
彼もまた、百獣海賊団結成当初からの古株だ。

ブラック「副船長、軍艦にこんなモンがあった。」

ブラックが取り出したのは、あるノートだった。
ライコウはそれを貰って、ページを捲る。

ライコウ「こ…これは……!!」

カイドウ「……!!」

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偉大なる航路(グランドライン)前半-

ここはマリンフォード。
世界中の正義の戦力の最高峰「海軍本部」があり、能力者から巨人族など数多くの一騎当千の猛者達が属し、大量の重火器を搭載した軍艦を多数保有するなど、極めて強大な戦力を擁する。
その海軍本部の元帥室に、数人の海兵が集っていた。
中央の席に座るは、全兵を統べる海軍総大将コング元帥がおり、最高戦力であるセンゴク大将もいた。

コング「そうか……これほどの被害とは。」

サカズキ「完全なわしの失態ですけ、異論はありゃあせん。」

コング「無傷でサカズキの部隊を壊滅させた上に全力でない……これはかなり重い事態だな…。」

コングは、ロジャーがまだ生きていた頃から海軍元帥を務めている猛者だ。だからこそ、ロジャーが生きていた時期のルーキーも警戒していた。
そのルーキーの中で最も強力だったのがカイドウとライコウ率いる百獣海賊団だったのだが、まさかこれほどまで強大になるとは思わなかったようだ。

センゴク「コングさん…やはりこの2人は危険ですな。」

コング「うむ。 暴れさせれば手に負えん…しかし奴らによって護られてる者達もいる以上、迂闊に動けん。」

コングは「全く頭の痛い話だ」と呟く。
新世界の海賊達は、ナワバリを持つことで自らの力を誇示したり何らかの利益を得ることで海の覇権争いに名乗り出る。
白ひげのように義理人情を重んじて見返り無しで護る者もいれば、女大海賊で“ビッグ・マム”の異名を持つシャーロット・リンリンみたいに完全なビジネスとして護る者もいる。
カイドウ率いる百獣海賊団は、ある程度の利益を得ているので一応ビジネスタイプと思われるが、ビッグ・マムの様に要求をクリア出来なかった場合は滅ぼすというような行為をしないため、そこまで凶悪ではないらしい。

コング「何れにしろ無視できない存在だ。 だが戦闘する際は必ず援軍を呼ぶ必要があるぞ。」

コングはそう言って、会議を終わらせた。
続々と元帥室から出る海兵を見つめながら、コングは茶を啜った。

コング「アイツらもよく成り上がったな……結成時はたった4名のルーキーが、今ではナワバリを持つほどの大海賊とは……。」

コングは、4枚の手配書を見ながらそう呟くのだった。 
 

 
後書き
バロン・ブラックの設定は次回お伝えします。
因みに現時点での懸賞金は以下の通り。あと肩書きも多少変えました。

百獣海賊団船長“百獣のカイドウ”……8億5000万ベリー
百獣海賊団副船長“剣帝”ライコウ……7億ベリー
百獣海賊団マンモス師団長“旱害のジャック”……4億ベリー
百獣海賊団航海総長“海賊男爵”バロン・ブラック…3億ベリー 

 

第3話:カイドウとライコウの過去

百獣海賊団は、ライコウが海軍から奪った巨大監獄船を改造した海賊船に乗って新世界の海を進んでいた。
その船の副船長室で、ライコウはブラックから貰ったノートを読んでいた。
実は軍艦を奪った際にブラックが得たノートには、海軍が全く新しい兵器を導入する計画が記されていたのだ。
計画名は「パシフィスタ計画」とあり、何と人間兵器を造り出そうとしているのだ。

ライコウ「(ここまで進んでいるとはな……。)」

そんな極秘ノートと睨めっこ中のライコウにブラックは声を掛ける。

ブラック「一応まだ計画の段階だが……確実に実行されると思う。」

ライコウ「だろうな。 ロジャーの死後、海賊達の数は膨れ上がってる以上新型兵器の1つや2つ造ってもおかしくなどない。 それにしてもよくやったよ、あの軍艦のどこで見つけた?」

ブラック「金庫があってな、武装色の覇気で殴りまくって取った。」

ライコウ「そうか……ごくろうさん、これで海軍の事情が分かった。 戻っていい。」

ライコウにそう言われ、ブラックはその場を後にする。

ライコウ「あれからもう10年か……。」











ライコウの部屋をブラックは、ラム酒を飲みながら甲板へ出ると、酒をガブ飲みしているカイドウに声を掛けられた。

カイドウ「……ノートをガン見か?」

ブラック「世情とか世界情勢に敏感だからな、あの人は。」

カイドウの座るイスの横で胡坐を掻くブラック。
すると、部下達がわんさか出て来て尋ねた。

「カイドウ様!! そういやあ気になったんですが…。」

「この百獣海賊団は、どういった経緯で結成されたんですか?」

カイドウ「……。」

カイドウは酒をグビグビと飲みながら、静かに語り始めた。

カイドウ「全ての始まりは、ロジャーが死ぬ5年前だ。」

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-大海賊時代開幕より5年前-

その日、カイドウは死に場所を探していた。
殺してほしく、致命傷が欲しく、強者を欲していた。
これは彼が自傷する思考ではない。ただ、戦って暴れたいのだ。
あまりにも生命力・耐久力が高すぎて今まで死ぬことどころか致命傷すら負うことが出来なかったカイドウは、世界に退屈し始めていたのだ。

カイドウ「クソッタレ……この俺を殺せる奴は出て来ねェのかァァァ!!?」

カイドウが天に向かって叫んだ時だった。


ドゴォォン!!


カイドウ「!?」

カイドウの背後に、何かが落ちた。
何事かと思って振り向くと、そこには人型の穴が開いていた。

カイドウ「……!?」

暫く見つめていると、再び轟音と共に粉塵が舞い、狩衣と行灯袴を着用した1人の男が現れた。
それが、ライコウだった。

ライコウ「クソ、頭痛ェ……!! いきなり突き落としやがって……神様め、後で覚えてろ……!!」

カイドウはライコウの支離滅裂な言葉に疑問に思いつつも、歓喜していた。
「天は、俺に死に場所を与えてくれた」と。

カイドウ「おい、お前。」

ライコウ「あ? 何だy……うぉぉ!? 何じゃこりゃ!? バカでけェ鬼!!?」

ビクッと身体を震わし驚愕するライコウを見たカイドウは、手にした金棒を振るった。

ライコウ「ちょ、ま…バカ野郎、転生したばっかだぞ!!?」

ライコウは再び謎の台詞を言った後、刀を抜いて真っ向からぶつかった。
轟音が島中に響き、天が割れる。

カイドウ「俺と同じ、覇王色か……!!」

ライコウ「クソ、何つーバカ力だ!! 初戦からこんな化け物か!!?」

その後、金棒と刀による剣戟が始まる。
金属音が鳴るたびに周囲へ衝撃が走り、一撃一撃が急所を狙っている。

カイドウ「ウオロロロロ、やるじゃねェか…!!」

ライコウ「余裕ぶっこきやがって、腹立つ……!!」

ライコウはカイドウの攻撃を躱し、跳んだ。
そして刀を鞘に納め、抜刀の姿勢を取る。

ライコウ「“零閃(ゼロせん)”!!」


斬!!


カイドウ「!!?」

一瞬刀が光ったと思えば、カイドウの身体に一筋の刀傷が。
そこからは血が流れており、浅いが斬れている。
カイドウは獰猛な笑みを浮かべた。
これを待っていたのだ。こうでないと「戦闘」とは言えない。

ライコウ「おいおい、冗談だろ……今の結構本気(マジ)だったんだぜ? お兄ちゃん精神的に傷つくわ。」

カイドウ「ウオロロロロ、言ってくれるじゃねェか。」

再び武器を構える2人。

カイドウ「そういえば…お前、名は?」

ライコウ「……ライコウ。 この海における最強を目指す男だ。」

カイドウ「……“最強”?」

カイドウはライコウの言葉に引っ掛かった。
かつてカイドウは、この世界の海における「最強の座」を求めて1人で海軍や大海賊達に挑んでいた。しかし勝利することよりも敗北することが多く、最強となることを諦めかけてた。

カイドウ「(あの男……。)」

言い方を変えれば、目の前の男……ライコウはかつてのカイドウ(じぶん)なのだ。
かつての自分と同じ夢を見て、それに突き進む男。
「この男が仲間なら、やってくれる」……そう確信したカイドウは…。

カイドウ「ライコウ…俺と共に“最強の海賊団”を作らねェか?」

もう一度、この海における「最強の座」を目指した。

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カイドウ「その後、白ひげのジジイやロジャーと乱闘して今に至るのさ…。」

「いや、大分おかしいんですけど。 空から落ちてきた人間に出会っていきなり喧嘩して、いきなり勧誘してOKもらうって、デタラメ過ぎるんですけど。」

「ライコウ様は懐や器がデカイっていうのか、ただ抜けているだけなのか…。」

「しかもハショりまくってるし……。」

カイドウは事実を言っているだろうが、部下達は「信じていいのか?」と思い、困惑する。
副船長は空から降って来るは、カイドウはとりあえず戦闘するわ、自己紹介の後勧誘するわ、本当にデタラメである。
「副船長はよくこんな無茶ぶりを引き受けたな」と思い、感動すら覚えてしまう。

「じゃあ、ジャック様とブラック様は?」

ジャック「俺は元々マンモス海賊団を率いててな…2人に喧嘩売って負けて副船長に勧誘された。」

ブラック「俺は元賞金稼ぎでな…副船長を殺そうとしたらバレてフルボッコにされた後勧誘された。」

『(黒歴史だ!!!)』

偉大なる幹部達の黒歴史を垣間見る部下達。

ブラック「まぁ、何だかんだ言って感謝してるぜ…こんなに楽しい生活は地獄に落ちてもねェからな。」


ガシッ!


ライコウ「随分と余裕じゃないか、ブラックよ。」

ブラック「……副船長…?」

ライコウ「お前だろう、俺から30万ベリーパクったの。」

メキメキメキ、とブラックの肩を強く握るライコウ。
笑顔ではあるが…目が笑ってない。むしろ覇気を放っている。

ブラック「いや、あれは……その…。」

ライコウ「ちょっと来てくれ、話し合いたい。」

ブラック「話し合う気なんかねェだろ!!」

ライコウ「黙れ、小僧♪」

ライコウに引きづられていくブラック。
そんなブラックを哀れんだ目で見つめ続けるジャック達であった。 
 

 
後書き
ブラックの設定で~す。11月3日に身長を改正しました。

【バロン・ブラック】
身長:306cm
年齢:第1話時点・20歳→原作開始時点・36歳→2年後・38歳
懸賞金:第1話時点・3億ベリー→原作開始時点・8億3000万ベリー
誕生日:9月6日
容姿:黒髪で鋭い目付きをしており、左頬をはじめ全身に傷がある。
武器:片手用の散弾銃(ショットガン)
服装:ラフな服装に腰布を巻き、ロングコートを羽織っている。
好きなもの:酒、賭博、煙草
嫌いなもの:しつこい性格の人間
所属:百獣海賊団/航海総長
異名:“海賊男爵”
イメージCV:中村悠一
性格:冷静沈着な愛煙家。常識人でもあり、百獣海賊団の中では比較的穏健な部類。しかしライコウとカイドウに影響されてか海賊らしく好き勝手な行動をすることもある。
戦闘力:「ガン=カタ」と呼ばれる近接格闘術を得意とする。狙撃の腕前は超一流で、早撃ちの名人でもある。また武装色・見聞色の2つの覇気を扱え、海軍大将も警戒する腕っぷしを有する。
モデル:XANXUS(家庭教師ヒットマンREBORN!)、ベン・ベックマン(ONE PIECE) 

 

第4話:新入りによる幹部紹介

よぅ、俺の名前はシープスヘッド…新入り中の新入りだ。
この百獣海賊団に所属したのは、昨年…海賊歴1年のルーキーだ。
この船は、色んな意味で規格外な方が多い。
その中でも一際規格外な4人を紹介しようと思う。
まずは船長“百獣のカイドウ”様。

カイドウ「おい、酒が切れちまったじゃねェか…クソが…!」

カイドウ様は海の皇帝「四皇」の一角で、この百獣海賊団の頂点に立つ5月1日生まれの大海賊。この世における最強生物で、「一対一(サシ)でやるなら、カイドウだろう」と称されるほどの実力者だ。
金棒を武器としており、自分自身は滅多に戦場に出ないが一度暴れたら塵一つ残らない。戦ったところは一度も拝んじゃいないが、まぁあのお方をブチギレさせたら破滅は免れないな。戦闘力は間違いなく最強クラスだし。
俺が思わず見上げちまう程の巨漢で、角が生えてるわ龍の鱗のような入れ墨があるわ…桃太郎も真っ青な極めて荒々しい外見で、まさに“鬼”。しかし性格は意外といい人っぽかった。

カイドウ「ライコウがいねェってことは…アイツが作った酒のつまみが食えねェじゃねェかよ、うおお~ん…!!」

『(……声掛けづらい…!!)』

この人、結構感情の起伏が激しい。
ちょっとした事でも子供の様に泣きじゃくったりキレたりする。
この前カイドウ様がキレた時ヤバかったんだぜ?暫く夢に出た。

ライコウ「ただいま……って、またグレてるのかウチの頑固親父は。」

そう言って現れた、狩衣姿でロングコートを羽織っている剣客。
この人こそ、“剣帝”と呼ばれる偉大なる副船長・ライコウ様だ。

ライコウ「しょうがない、いつもより多めに作ってやるから部下に迷惑かけるな。」

カイドウ「おォう、気が利くじゃねェか…!!」

ライコウ様の最大の特徴は、オカン気質なところだ。
マイペースで大らか・器が大きいお方だが、副船長としての使命である「船長のサポート」を極めるべく、炊事、洗濯、掃除、やりくり、部下の教育、裁縫など、大海賊でありながら「古き良き母親」と化している。下手すればビッグ・マムのババアより家庭的だ。時々育児疲れした母親のような顔を見せることもあり、正直自分が情けなく思えてしまうぜ。
しかし、そこは副船長…実力は桁外れだ。居合斬りを得意とし、“零閃(ゼロせん)”という技のすさまじさは想像を絶する。覇王色・武装色・見聞色の3つの覇気を扱えるので、“剣帝”の名に恥じぬ圧倒的実力を有している。

ジャック「副船長、近頃暴れてる“ヨイスギ海賊団”が現れたが…潰していいか?」

ライコウ「構わない、日頃の鬱憤晴らしには丁度いいだろう。」

次にジャック様を紹介しよう。
一度でも通った後は干魃が起こったかのように朽ち果て滅びることから“旱害のジャック”の異名を持つジャック様。
あのお方は絶対的な自信家で、自分の意思を曲げることは決してない強い信念の持ち主だ。正直憧れちまうんだぜ。
戦闘力もかなりのもので、悪魔の実の動物系(ゾオン)古代種の能力者で、何とマンモスに変身できる。5日間休まずに戦い続けられるという逸話があるほどとんでもないスタミナの持ち主で、曲がりくねった特殊な刀を使う剣士でもあるんだ。勿論、ジャック様は覇気も扱える。
海賊らしく、豪快に暴れるのを好む人だ。

ブラック「いい匂いだな……飯でも作ってんのか?」

ライコウ「カイドウの酒のつまみだ。 食いたいならカイドウ(ほんにん)に言うんだな。」

最後に、バロン・ブラック様を紹介だ。
“海賊男爵”と呼ばれるこのお方は、一味でも断トツの狙撃手(スナイパー)だ。片手用の散弾銃(ショットガン)を愛用するブラック様は、狙った獲物は確実に仕留める狙撃の達人で、早撃ちもかなりの腕前。武装色・見聞色の2つの覇気を扱え、格闘も得意という万能ぶりもある。
散弾銃(ショットガン)自体もかなり強力で、噂だと能力者の天敵ともいえる“海楼石”の弾丸も所持しているらしい。新世界でも屈指の狙撃手と言えるな。
この方はこの百獣海賊団の航海総長であり、その航海技術も天下一品だろう。
だが、この人は結構遊び呆けている時もあり、時々ライコウ様の雷を落とされてるとか落とされてないとか……。

ライコウ「そういやあ、拠点を移す計画あったな。 ワノ国でOK出したが大丈夫か?」

ブラック「問題無いだろ。 そもそも船長が決めたこと……意に反しねェよ。」

ライコウ「いや、ぶっちゃけた話アイツはただ冬が好きなだけだからね。 この前滞在した島も冬島だからね。」

そうそう、実は俺達百獣海賊団は拠点を移すことになったんだ。
場所は、ワノ国。新世界にある世界政府未加盟国で、世界政府の軍隊である海軍ですら容易に手出し出来ないという“侍”と呼ばれる剣士達の力により外敵を一切寄せ付けず、独立を保持している国だ。
噂によればかの海賊王ロジャーや白ひげと親交があったらしい。しかし海賊を快く思わない者が大多数であることは変わりないためどうしようか悩んでるらしい。

ライコウ「こういう時に海賊がワノ国攻めてくれたら好都合なんだがなァ。」

ブラック「そんなオイシイ話ありっこねェって。」

「ライコウ様~~~!!! 見えました!!!」

「島です!! 多分ワノ国だ!! だが海賊に襲われてる!!」

マジかよ!!?タイミングバッチリ!!

ライコウ「ジャック達は!?」

「ついさっき戻りました!!」

ライコウ「よし…ブラック!! お前が率いて海賊達をボッコボコにして来い!! 俺は酒のつまみ作ってて手が空いてないから!!」

いや、酒のつまみくらい後でいいでしょう!!?

ブラック「分かった!! ジャック、手ェ貸してくれ!!」

ジャック「あぁ、そのつもりだ。 シープスヘッド、お前も来い!!」

おっと、ジャック様に呼ばれちまった。
じゃあな、またな!! 
 

 
後書き
次回辺りに新キャラを追加しようと思います。
物凄い過去の持ち主であるという設定だけお伝えしましょう。 

 

第5話:ワノ国にて

-新世界・ワノ国-

「海賊だァ~~~!!」

「女子供だけでも逃がすんだ!!」

この国は今、海賊の襲撃を受けていた。
襲っているのは懸賞金3億5000万ベリーの“刀狩りのサカリ”の一味……その名の通りサカリは島に立ち寄っては人々が持つ武器を奪い、市場で奪った武器を売りさばくという手口で儲けていた。
抵抗する者は女子供も容赦なく攻撃するので、凶悪性の高い海賊だ。
サカリにとって、ワノ国は芸術品クラスの武器が揃っている宝の山。見逃すはずがない。

「怯むな、この国を護るのだ!!!」

「命に代えてでも!!」

ワノ国の侍達はとても強力だ。1人いれば海賊100人分なんて猛者もいる。
相手は5000人の海賊団だが、その気になればいつでも潰せる筈だった。
しかし、そうはいかなくなった。サカリは悪知恵を働かせ、女中達を人質にとったのだ。
人質を取られ、迂闊に動けなくなった侍達は苦戦を強いられているのだ。

「何という悲運……!!」

「くっ…!!」

「さァ侍共、刀を寄越しな!! 人質の頭を吹き飛ばされたくなきゃあな!!」

「「「ギャハハハハハ!!」」」

人質達に拳銃を突き付けながら笑う海賊達。

「さぁ、どうする!? 刀を寄越すか、それとも人質のあt」


ドォン!!


全員「!!!?」

海賊が言い切る前に響いた銃声。
銃を突き付けていた海賊は血塗れで吹き飛んだ。
振り向けば、そこには黒いコートをなびかせ散弾銃(ショットガン)を携えた男が。

「な、何者だてめェ!!?」

ブラック「俺達は百獣海賊団。 この国を荒らすゴミ共を掃除しに来た。」

「ひゃ、百獣海賊団だと!!?」

「四皇カイドウの一味じゃねェか!!」

「何でそんな大物がこんな所に!?」

サカリの部下達は動揺する。

サカリ「バカ野郎共、怯むんじゃねェ!! 相手はカイドウとライコウじゃねェ……返り討ちにしろ!!」

サカリの言葉を聞いた部下達は雄叫びをあげてブラックに迫る。
剣や刀、斧を持って立ち向かってくる。

「ブラック様、ここは俺達に!!」

「ゲヘヘヘ、血が騒ぐぜ!!」

「久しぶりの戦闘だ!!」

血気盛んな百獣海賊団も武器を構えて笑みを浮かべる。
だが……。

ブラック「いや、俺一人で構わねェ。」

「えェ!?」

何とブラックはたった1人で始末するという。

ブラック「久しぶりに暴れられそうだ……ジャック、手ェ出すなよ!!」

ジャック「……好きにしろ。 だが万が一の場合が起きたら嫌でも助太刀する。 異論はねェな?」

ブラック「5000人ぐれェなら屁でもねェさ!!」

ブラック、一人で挑む。 

 

第6話:散弾銃一丁

 
前書き
少しグロい表現かも知れません。
ご了承を。 

 
ブラックVS約5000人の海賊。
ジャック達はあえて傍観し、洒落にならない状況に成ったら援護するという立場を取ったので、実質暴れたい放題だ。

ブラック「(さてと、どうするか…こっちは上下2連銃の散弾銃(ショットガン)のみ。 使える銃弾は“バックショット”が30発と破壊力が最も大きい“一粒(スラッグ)弾”が20発、切り札である海楼石で出来た“特製バックショット”が10発……5000人相手には物足りないが、問題無いか。)」

ブラックの愛銃は片手用の散弾銃(ショットガン)で、海賊達がよく使うフリントロック式の拳銃(ピストル)とはレベルが違う威力を有している。
しかも対人用ではなく猟銃……生命力が凄まじい(ヒグマ)などを倒すための銃のため、かなり厄介だ。下手すれば拳銃を破壊しかねない程だ。

「死ねェェッ!!」

ブラック「(雑魚は格闘でいいか。)」

ブラックは一太刀目を難無く躱した後、拳打を炸裂。
顎目掛けて振り上げたブラックの拳は見事にクリーンヒット。敵はそのまま宙へと吹っ飛ばされた。

サカリ「…え?」

「んな……!?」

「じょ、冗談だろ…。」

ブラック「久しぶりだからよ、楽しませてくれよ?」

そこから先は面白いほど一方的なものだった。
ブラックは愛銃を一切使わず蹴りや拳打で敵を薙ぎ倒していく。
それは四皇の幹部の名に恥じぬ戦いであり、敵を畏怖させるのには十分だった。

シープスヘッド「な、何て強さだ……!!」

百獣海賊団でも新米であるシープスヘッドは、驚愕する。
相手は3億越えの賞金首が率いている海賊団……それをたった1人で圧倒しているのだ。しかも素手で。

ジャック「奴は覇気使いな上、天性の狙撃手(スナイパー)だ。 アイツを敵にしたらタダじゃあ済まねェ……射程範囲に入った瞬間あの世行きだ。」

「それほど強いブラック様でも、カイドウ様とライコウ様には及ばないって……。」

「ハハ、だとしたらあのお方達は天災だな……。」

一方のブラックは……。

ブラック「(大分減ったな…7割くらいか? これなら問題無いな。)」

ブラックは愛銃を構える。
それを見たサカリは警戒するよう部下達に促す。

ブラック「さて…まずは誰から…。」

最初に突撃したのは、剣を持った海賊5名。

ブラック「……少しくらい考えれば、勝機があったものを。」


ドンッ!


銃声が響く。
それは何と一発で海賊を3人も仕留めた。
その後襲い掛かって来た2名はこめかみを殴られ、気絶した。

「な……バカな、一発で3人仕留められるなんて…。」

ブラック「武装色の覇気を纏わせ、威力を上げたんだ。 まぁ、一発で3人仕留められるのは俺自身の腕前だ。」

ジャック「(要は“自分は一発で3人仕留められる”って言いてェんだろうが…。)」

すると、身の丈5mはある巨漢が斧を振りかざした。

「真っ二つにしてやる!!」

ブラック「じゃあ、俺はお前の頭を吹き飛ばしてやろう。」


ドンッ!!


先程よりも大きな銃声が響く。
巨人の頭は完全に吹き飛んでおり、鮮血が噴水の様に流れる。
ブラックはすさまじい破壊力を有する“一粒(スラッグ)弾”を使用し、覇気を込めて引き金を引いたのだ。

サカリ「ヒ……ヒィィィィ!!!」

サカリは今までの余裕が一瞬で消え失せ、顔を青褪めた。
これを見ていた侍を含めた全ての者が、放心状態になる。
そしてサカリの部下達は、悲鳴を上げて一目散に逃げていく。

「た、助けてくれェェェ!!」

「し、死にたくねェよォォォォ!!」

サカリ「バ、バカ野郎!! 俺を置いて行くな!!」

ブラック「あのデカイの、副船長っぽかったようだな。」

サカリ「ヒィッ!!」

ブラックは弾を込め、サカリの心臓に銃口を向けた。

ブラック「今なら一発で勘弁してやる。 女子供に手ェ掛けるクズはここでゲームオーバーだ。 死ぬか生きるかの覚悟も出来ねェ小物は、“本物の(・・・)海賊達”にてめェの全てを否定されて逝く……それが新世界だ。」

ニヤリと笑みを浮かべるブラック。
絶体絶命のサカリにとって、それは悪魔の笑みでもあった。

ブラック「教えてやろう。 お前が今までやってたことは全部……“海賊ごっこ(・・・・・)”なんだよ。」


ドンッ!


鮮血をまき散らし、倒れるサカリ。
ブラックは笑みを深めて侍達に微笑む。

ブラック「これで終わった。 大丈夫か?」

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-3日後-

ライコウ「それにしてもブラック、よくやった。 改めて礼を言う…これで新世界の覇者に一歩近づいた。」

カイドウ「ウオロロロロ……さすがじゃねェか!」

ブラック「それは勿体無い言葉だな。」

サカリの一味を全滅させた後、カイドウと共に上陸したライコウはワノ国の将軍と謁見した。
将軍は海賊嫌いだが、百獣海賊団の助け舟には心から感謝しており、ワノ国を百獣海賊団の拠点兼ナワバリにすることを普通に許可した。
国一つを丸ごとナワバリにしたため、周囲の大物達にはかなり衝撃的だったらしく、ついには「白ひげの次に“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”に近い海賊」と言われ始めるようになった。
それほどワノ国は影響力の大きい立場らしい。

カイドウ「この俺に相応しいシマだ!!」

ライコウ「そうだな……この冬景色はどの冬島よりも美しい。」

雪景色に見惚れるトップ2名。

カイドウ「これからどうする?」

ライコウ「そうだな……“ロード歴史の本文(ポーネグリフ)”を所持している今、あまり考えては無いが……やりたいようにやるのが一番だろう?」

カイドウ「ウオロロロ!! そりゃあそうだ!!」

こうしてワノ国をナワバリとして獲得した百獣海賊団。
しかしこの後、新世界のパワーバランスを滅茶苦茶にしかねないとんでもない少女を拾うことになる。 
 

 
後書き
次回、新キャラ登場!!
どんなキャラなのかは、お楽しみに。 

 

第7話:蛾の少女

ワノ国を拠点として早一年。
強者・曲者揃いである百獣海賊団の根城は、妙な静けさに包まれていた。
皆の視線はとある一点に集まっている。業を煮やしてシープスヘッドがついに口を開いた。

シープスヘッド「……ブラック様、それは…?」

ブラック「…違うぞ、断じて違う。」

皆の視線を集めている男、この一味の幹部である航海総長・ブラックは断固として首を縦には振らなかった。いや……振れる筈もなかった。

ジャック「お前……。」

ブラック「違うと言っているだろうが。」

再び妙な静けさに包まれる。ただ走るのは沈黙のみ。
だが、その沈黙を破るカウントダウンはすでに始まっていた。
地鳴りのような重く荒い足音と、下駄の鳴る音が近づいてくる。そう長い時間もかからずに2人は現れた。

カイドウ「どうした、シラケた面ァ並べやがって…。」

ライコウ「何かトラブルか?」

『!!』

静寂を破り現れた2人の男…船長・カイドウと副船長・ライコウは、ふと彼らの視線の中心にいるブラックを見た。
目があった3人。どうやらこの奇妙な空気にもようやく収まりがつきそうだ。
だがブラックは顔を引き攣らせ、カイドウは何も言わず酒を一気飲みにし、ライコウは苦笑いする。

カイドウ「ウオロロロロ…お前にそんな趣味があるとはな。」

ブラック「冗談はよしてくれカイドウさん!!!」

ライコウ「じゃあ……お前の生き別れた娘か?」

ブラック「いや違ェから!! それ以上ボケたら撃つぞコラァ!!」

散弾銃(ショットガン)を構え、殺気を放つブラック。
眉間に青筋を浮かべて声を上げる彼の背には、がっしりとしがみついて離れぬ少女の姿が。

ブラック「おい…もう離れろ。」

ブラックが背に向かってそう言うと、今まで微塵も動かずへばりついていたその体がピクリと動いた。
ライコウはコートをなびかせて少女に近づき、優しく頭を撫でながら訪ねる。

ライコウ「童女(わらわめ)よ、ブラックを知っているのか?」

すると少女は、満面の笑みでこう言った。

?「私のお兄ちゃん!!」

次の瞬間、空気が凍り付いた。
言葉を失った部下達は次第に言葉の意味を理解すると、驚愕に目を見開いた。

『えェ~~~!!!?』

カイドウ「……。」

ライコウ「ハッハッハ。」

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改めて状況を整理する。
あの少女は名を“マナト・ヒオ”と言い、海で遭難して海岸に打ち付けられたとのこと。
しかも話を聞くとヒオは“北の海(ノースブルー)”のロリシカ王国の王女で、護身術といて覇気を会得してるらしい。

ライコウ「“北の海(ノースブルー)”からよく新世界(ここ)に来れたな……誰かに連れて来てもらったのか?」

すると、ヒオは真っ暗な表情を浮かべる。
どうやら、強制的に連れて来られたらしい。

ヒオ「……攫われたの。」

ライコウ「誰にだ?」

ヒオ「……ジェルマ王国の人達に。」

『!!?』

ヒオの言葉を聞いた全員が、目を見開いた。
ジェルマ王国とは、かつて“北の海(ノースブルー)”を武力で制覇した「ヴィンスモーク家」が収める国家で、世界唯一の国土を持たない海遊国家である。国民のほぼ全員が男であり兵士である軍事国家で、科学戦闘部隊である“ジェルマ66(ダブルシックス)“は“戦争屋”として裏社会で名を轟かしている。

ブラック「ヴィンスモークって、確か“人殺しの一族”だよな……!?」

ジャック「あァ……4年に一度マリージョアで行われる“世界会議(レヴェリー)”への参加も認められている海遊国家だ。 だが何故“ジェルマ”がお前を狙う?」

ヒオ「……この石のせい…。」

ヒオが取り出したのは、1つの小さな石。

ヒオ「この“ロリシカ鉱石”を狙われたの……。」

ヒオ曰く、“ロリシカ鉱石”は電流を流すと30秒ほどだが直径20㎞圏内に“念波嵐(ねんぱあらし)”という強力な波動エネルギーを発する鉱物らしい。

ヒオ「念波嵐は電伝虫の電波を遮断するどころか、島の磁気も狂わせて色んな機械を一時的にだけど再起不能にさせるの。」

ジャック「そんな代物が戦争屋や軍事国家に渡っちまったら……。」

ブラック「…全世界の軍事バランスが崩壊しかねないな。」

軍事兵器に利用すれば世界を混沌の渦に巻き込むほどの影響力のある鉱石を、ジェルマは狙ったのだということが容易に想像できた。

カイドウ「…ロリシカ王国はその後どうなった?」

ヒオ「……。」

ヒオは黙ったまま答えない。
どうやらジェルマと戦って滅ぼされたのだろう。

カイドウ「てめェは無力なガキだったから手を出されずに生きてられたんだな。」

ヒオ「違います……私は能力者だったから…。」

すると、ヒオの身体に変化が。
頭には2本の触覚が生え、背中からは美しく大きな羽が。
手にも変化が現れ、爪が鋭くなっている。

ヒオ「私は“ムシムシの実・モデル巨大蛾”の能力者です。 私の“鱗粉”を採取して生物兵器を造ろうとしてたんです。」

カイドウ「……。」

ブラック「…そうだったのか……。」

ライコウ「参ったな、これでは放っておけんな。」

思わず項垂れる幹部達。
ヒオをこのまま追い出せば、裏社会の大物達に狙われ、何れ世界中を巻き込む大事件に発展しかねない。海軍も血眼で探しているのだろう。
しかし、この幼い少女を海賊の道へ歩ませるのもどうなのか。

カイドウ「俺としては引き入れたい。 俺の夢に能力者は必要だからな。」

カイドウの夢は、海賊の歴史上最強の海賊団を率いること。
そのために、超人(パラミシア)系・動物(ゾオン)系・自然(ロギア)系の能力者の猛者が必要であり、カイドウにとってヒオは貴重な戦力と踏んだのだ。

ライコウ「だがヒオがそれを望むか……よし、ブラック。 訊いてこい。」

ブラック「俺が!!?」

カイドウ「お前に一番懐いてんだ、当然だろうが。」

ブラックは溜め息を吐きながらヒオに近づく。

ブラック「ヒオ……俺と来るか?」

ヒオ「来るっ!!」

即答。

ライコウ「早いな……。」

カイドウ「お前、幼女にモテるタイプか。」

ブラック「テッペン2人、何てこと言ってくれんだ!!」

カイドウとライコウに揶揄(からか)われるブラック。

ライコウ「まぁ、むさ苦しい野郎共しか揃ってねェ一味に初めて紅一点(はな)が入団したんだ…新たな仲間(クルー)を歓迎しようか。」

冬景色の中、盛大な宴が催された。 
 

 
後書き
ヒオの設定です。
完全にモスラの擬人化ですね、うん。

【マナト・ヒオ】
身長:第7話時点・160cm→原作開始時点・180㎝
年齢:第7話時点・12歳→原作開始時点・26歳→2年後・28歳
懸賞金:第7話時点・0億ベリー→原作開始時点・4億4000万ベリー
誕生日:7月30日
容姿:肩まで生えたオレンジ色の髪で、スタイルはイイ方。
武器:なし(強いて言えば能力で使う糸)
服装:羽毛のマントとパーカーを愛用し、ブーツを履いている。
好きなもの:ジュース、プリン
嫌いなもの:苦い食べ物、辛い食べ物
所属:百獣海賊団/航海次長
異名:蟲姫
イメージCV:金元寿子
性格:天真爛漫かつ不器用で、天然っぽいところもある。
戦闘力:ムシムシの実・モデル巨大蛾の能力者。鱗粉による攻撃や羽を用いた突風攻撃、強靭な糸を武器とするのを得意とする。自衛のために武装色・見聞色の覇気も会得しており、まずまずの戦闘力。獣型だと羽の美しい巨大な蛾に、人獣型だと羽と触覚が生えた形態になる。
モデル:モスラ(ゴジラシリーズ)、倉橋陽菜乃(暗殺教室) 

 

第8話:科学者登場と元奴隷の侵入者

 
前書き
新たにオリキャラ2名が登場します。今回はそのうちの1人です。
どんなキャラかは、お楽しみに。 

 
百獣海賊団は、海賊である一方で軍隊のような組織構成(システム)である。
ナワバリを拡大する度に増強していく戦力に伴って、オカン副船長・ライコウが整備化したのだ。

ライコウ「今月は海軍船の強奪と海賊艦隊襲撃における利益が莫大だから……6億4890万ベリーの黒字だな。 みかじめ料の酒も良好だし、問題無いな。」

カイドウ「相変わらずのオカンだな。」

ライコウ「誰のせいでそうなったと思ってるんだか。」

普段は酒を飲んでばっかの頑固親父・カイドウを最高指揮官(せんちょう)とし、一味の中で一番の苦労人である司令長官(ふくせんちょう)・ライコウの下、ブラックを総長とする少数精鋭の「航海部」、現時点ではライコウが兼任している「参謀部」と「船医部」、そしてジャックがまとめている主戦力の「師団部」に分けられている。
それぞれの役割は軍隊とは一味違うのが特徴だ。
航海部は少数精鋭で航海士の役割を果たしている。船医部も同様で、船医として仲間達の命を預かる。参謀部は重大な仕事・作戦を取りまとめる。師団部は戦闘で最前線に立つ。
どの部も戦闘部隊としての機能がちゃんとなされており、事実上は四皇で最も優れた組織機能を持っている。曲者が多すぎるが。

ライコウ「(あと気掛かりなのは、ロリシカ鉱石か。)」

ロリシカ鉱石はは電流を流すと30秒ほどだが直径20㎞圏内に“念波嵐”という島の磁気をも狂わせる強力な波動エネルギーを発する鉱物。ライコウは部下に依頼して鉱石の解析を行わせている。

ライコウ「(どんな結果が来るのだろうか…。)」

その時だった。
金髪碧眼のスタイル抜群の女性が、満足そうな笑みを浮かべて2人の前に現れた。
彼女の名は、ナリウス・アリスティア。周囲から“アリス”と呼ばれる、百獣海賊団参謀次長の科学者だ。

アリスティア「皆さん!! 大発見です!!」

カイドウ「…?」

ライコウ「大発見?」

アリスティア「はい!! ロリシカ鉱石の新発見ですよ!!」

アリスティア曰く、ロリシカ鉱石は周囲に強烈な念波嵐を起こすが、実は電圧を調整すれば念波嵐の威力を制御できるという不思議な性質を持っているらしい。

アリスティア「それを元に造ったのが、これです!!」

アリスティアが出したのは、高さ50㎝ほどの箱型の機械。
アンテナや電源があり、念波を発生させる装置のようだ。

アリスティア「これにはロリシカ鉱石が搭載してあって、僕のスペシャルな技術によって“念波発生装置破壊兵器”となったのです!!」

アリスティアの発明品であるこの念波発生装置破壊兵器は、一度スイッチを入れれば発生した念波嵐で電伝虫や機械を一時的に再起不能にさせる強力な武器だという。あくまで試作品だが、改良を重ねれば多くの機能を果たせ小型化も出来るという。

カイドウ「そうか…そりゃあ朗報だな。」

ライコウ「新世界は情報戦も重要だ、情報漏洩の防止や敵対勢力の妨害も可能という訳だな……よくやった。」

アリスティア「エヘヘへ、それほどでも……。」

カイドウとライコウに褒められ、顔を真っ赤にして照れるアリスティア。
その時だった。

ジャック「カイドウさん、ライコウさん。」

カイドウ「んぁ?」

ライコウ「どうした?」

ジャック「侵入者です。 今捕らえたばかりで……。」

カイドウ「……ウオロロロロ、面白ェ…俺の首でも取りに来たってか?」

侵入者に興味を持ったカイドウは、ジャックに連れて来るよう命令した。

ジャック「おい、連れて来い!!」

ジャックがそう言うと、取り押さえられながら1人の青年が現れた。

ライコウ「……見ない顔だな。」

ジャック「何でも、マリージョアから逃げ出したらしい。」

ライコウ「……奴隷だったのか。」

ライコウには心当たりがあった。
丁度1週間ほど前、魚人島出身の探検家フィッシャー・タイガーが単騎で世界政府の本拠地マリージョアを襲撃し奴隷解放を行った、世で言う「マリージョア襲撃事件」。捕まった男は、その1人だと推測したのだ。

ライコウ「お前……名は?」

?「……ギルド・テゾーロだ…!」

ライコウ「テゾーロというのか……何故ここにいる? 四皇の拠点に辿り着くのは容易ではないが……。」

テゾーロ「そこのデカブツの船に乗り込んだだけだ……お前ら“海の皇帝”の莫大な財産を奪うためにな!!!」

ジャック「コイツ……!!」

アリスティア「スゴイ執念……。」

テゾーロは自らの目的を吐露する。
どうやら死に物狂いでジャックの船に乗って、一味の財産を奪う気だったようだ。
すると、それを聞いたカイドウは意外なことを口にした。

カイドウ「……酒じゃねェんだな?」

テゾーロ「……は?」

カイドウ「酒を奪いてェ訳じゃねェんだなと訊いてんだ。」

テゾーロ「……あぁ。」

カイドウ「……ライコウ。」

ライコウ「……あい、分かった。」

カイドウの意図を察したライコウは、下駄の音を鳴らして鉄の扉の前に立つ。
そして扉を開け、中から金塊を取り出した。

ライコウ「持ってく?」

テゾーロ「!!?」

アリスティア「何やってんですかーーーーーーーーーー!!!?」

アリスティアの叫びが木霊(こだま)する。

ライコウ「どうした?」

アリスティア「盗みに来た人に金やります普通!!?」

カイドウ「酒じゃねェならどうだっていい。 金なんか適当に襲えばすぐ手に入る。」

アリスティア「そ、それはそうですけど……!!」

ライコウ「それにこれから先を生きてくのに金無いのは地味に辛いぞ? ましてやここは新世界……金の力も色濃く影響する。」

アリスティア「しかし…。」

ジャック「やめておけ、2人が意気投合したら誰も逆らえねェぞ。」

カイドウとライコウが一度意気投合したら、何をしでかすか分からない上誰にも止められない。あのジャックでさえ逆らえないのだ、アリスティアが異議を唱えたところで何も変わらない。

ライコウ「持って行け、ちと重いが。」

テゾーロ「……何故助けた…アンタの金を奪おうとしたんだぞ…?」

ライコウ「ウチは酒を盗む奴らを絶対に許さねェんでな…金で良かった。」

ライコウは一枚の紙を取り出し、引き千切ってテゾーロに渡した。

テゾーロ「これは……!!」

ライコウ「俺のビブルカードだ、一応持っておけ。 これもまた奇縁……いつか会える日を楽しみにしてる。 あぁ……一応お前のための小船も手配してる。」

テゾーロ「……恩に着る。」

テゾーロはそう言い、無言で立ち去っていった。

ライコウ「これでいいのだ!」

アリスティア「よくないですよ!! 勝手に他人に金渡して!!」

元奴隷の青年・テゾーロと出会ったカイドウ達。
彼が後に“新世界の怪物”として君臨し海軍や海賊達からも恐れるほどの強大な力を持つようになるのは、まだ少し先の話。 
 

 
後書き
オリキャラ・アリスティアの設定です。

【ナリウス・アリスティア】
年齢:第8話時点・17歳→原作開始時点・32歳→2年後・34歳
懸賞金:第8話時点・2億ベリー→原作開始時点・4億ベリー
誕生日:7月3日
容姿:金髪碧眼のスタイル抜群の女性
武器:対能力者用の銃剣
服装:白衣を羽織り、瓶底眼鏡を額に上げている。
好きなもの:研究
嫌いなもの:詐欺師
所属:百獣海賊団/参謀次長
異名:海姫
イメージCV:遠藤綾
性格:好奇心旺盛で研究者気質。研究者としてとことん追求するため、一味で使う武器や道具の開発を一任されている。
戦闘力:超人(パラミシア)系・ウミウミの実の能力者の「海人間」で、その身体は海と同じ性質を持つという能力者にとって天敵のような存在。能力の影響か海の生物と意思疎通をはかることが可能。純粋な戦闘能力は一味の仲ではさほど高くないが、戦術や武器などで埋めることで格上にも勝てる典型的なテクニックタイプ。また、武装色の覇気も扱える。
モデル:無し 

 

第9話:VSゲッコー・モリア

 
前書き
ヒオちゃんがちょっと頑張る回です。
そういえばモリアって、よくカイドウと張り合えたよね、うん。 

 
新世界に皇帝のように君臨する4人の大海賊「四皇」。
現時点の四皇は、海賊王ロジャーと覇を競った世界最強の大海賊・白ひげ、「この世における最強生物」と称される実力者“百獣のカイドウ”、四皇唯一の女性“ビッグ・マム”、世界四大剣豪の一角である“赤髪のシャンクス”の4名だ。
いずれも幾つもの船団や拠点、傘下を従えており、ちょっと動くだけで海軍は最厳戒態勢となる。その戦闘の規模は「戦争」と言われており、新世界において海賊達は「四皇に従うか、抵抗するか」のどちらかと言われてもいる。
無論、海賊王になるには四皇を越えなければならない。ほとんど返り討ちで終わるが。
そして今、百獣海賊団はある海賊と抗争を繰り広げていた。

ブラック「クソ、不死身の軍隊を相手にしてる気分だ!」

ジャック「思いの外手強いな…カイドウさんとライコウさんがいねェ今を狙うとは!!」

?「キシシシシ!! あの怪物2体がいねェ今がチャンスだ!!」

ブラック達が相手にしてるのは、ゲッコー・モリア。3億2000万ベリーの大物海賊で、最近新世界に進出したばかりの海賊だ。
正直な話、ゲッコー・モリア自身の実力はそこまで高くはない。だが、彼の能力が厄介だった。
モリアはカゲカゲの実という、敵の影を取って死体や物に入れ兵士を作ったり、自分に取り込み体を強化させたりすることが出来る能力を有する「影の支配者」。敵の数が多ければ多いほど、モリアの戦力は大きくなる。ましてや四皇ともなると部下の数が多すぎるため泥沼試合となりかねないのだ。
しかも厄介なことに、百獣海賊団はライコウに扱かれ一兵卒に至るまでかなりの腕っぷしを有している。影は元の持ち主の強さにも反映するため、モリアが取り込めばモリア自身にそれなりのパワーを与えてしまうのだ。

ジャック「ちっ、埒が明かねェ……!!」

ブラック「舐めんじゃねェよ、でからっきょ!!」

モリア「キシシシシ、何とでも言え!! 強ェか弱ェかなんて結果が決めるモンだ!!!」

すると、突然突風が吹き荒れ、モリアの部下達が吹き飛ばされていく。

モリア「!? 何だァ!!?」

ふと振り返ると、そこには巨大な蛾が宙に浮いていた。
かなり巨大であり、モリアよりも大きい。

ヒオ「大丈夫ですか!?」

ブラック「ヒオ!? お前、能力発動するとそうなるのか!?」

モリア「キシシ……キシシシシ!! 面白ェ、動物(ゾオン)系昆虫種の能力者か!!」

モリアはヒオの姿を見て歓喜する。
一方のヒオは獣型の形態を解き、触覚と翼が生えた人獣型に姿を変える。

ヒオ「助太刀します!!」

ブラック「な!? お前、武器持ってないだろう!?」

ブラックがそう指摘すると、ヒオは口から白い糸を出す。
両手で器用に織り込み、何と弓と矢を作った。

ジャック「……器用だな。」

ヒオ「百発百中、頑張ります!」

ブラック「いや、それ以前に成虫が口から糸を出すのか?」

ジャック「細けェこと言ってる暇あるなら戦え。」

現在、モリアとその軍勢と戦えるのはたった3人。百獣海賊団が優勢だが、部下達はモリアの仲間に苦戦している。
3人は武器を構え、戦闘態勢に入る。

モリア「“欠片蝙蝠(ブリックバット)”!!!」

モリアは自分の影の中から小さな蝙蝠のような影を作りだし、それを大量にけしかける。

ヒオ「“毒蛾の矢”!!」

ヒオは身の丈程ある矢を放った。
それは影の蝙蝠達を次々に貫通し、モリアに迫った。

モリア「クソッ!! “角刀影(つのトカゲ)”!!」

モリアは大量の“欠片蝙蝠(ブリックバット)”を一つに束ねて刃を作る。本来は敵を刺し貫くための技だが、バリアの様に使ってヒオの矢を防ぐ。

モリア「クソ、厄介な小娘を……“影箱(ブラックボックス)”!!」

モリアはヒオの周囲を“欠片蝙蝠(ブリックバット)”で囲み、立方体状の影の壁を作り出して閉じ込めた。

ブラック「ヒオ!?」

モリア「キシシシシ!! まずは一匹だ、俺の奴隷にしてやる!!」

モリアがそう言い放ったその時だった。


斬!!


「「「!!?」」」

突如“影箱(ブラックボックス)”に無数の筋が通り、粉々に砕け散った。

ライコウ「“零閃(ゼロせん)編隊・五機”。」

モリア「何ィ!!?」

ブラック「副船長……!! ってことは…!!」

ライコウの後ろに現れる巨大な影。
そう……カイドウだ。

ジャック「カイドウさん!!」

カイドウ「随分手古摺(てこず)ってるらしいじゃねェか。」

四皇とその副船長の登場に動揺するも、モリアは笑みを浮かべる。

モリア「キシシ……キシシシシシ!! 無駄だ、いくら最強の生物でも俺の影軍団には敵w」


ドパァン!!


モリア「こ、今度は何だァ!?」

モリアの影軍団に降りかかったのは、海水だった。
モリアの作り出した影軍団は、一定量以上の塩分を摂取すると、塩が秘めている「海の力」によって肉体と影が結合していられなくなり、元の持ち主に戻ってしまうという弱点がある。
これにより、影軍団は無力化していく。

アリスティア「やはり海水が弱点でしたね!!」

モリア「て、てめェ……!!」

モリアは青筋を浮かべ、怒りを露にする。
そして“最後の手段”に出た。

モリア「“影の集合地(シャドーズ・アスガルド)”!!!」

モリアがそう言った瞬間、影軍団から抜け出た影がモリアに吸収されていく。
それと共にモリアは急速に巨大化し、カイドウよりも大きくなっていた。

モリア「キシシ……キシシシシシシシ…!! 終わりだァ……島ごと海に沈めてやる!!」

モリアは巨大化した腕を振るう。
それを見たシープスヘッド達は絶叫し、逃げ出す。

ライコウ「カイドウ、俺がやるか?」

カイドウ「いや……俺がやる。」

カイドウは金棒を取り出した。
そして、モリアの剛腕を右手で受け止めた。

モリア「……ハ…!?」

カイドウ「他人様の拠点(いえ)を……。」

カイドウは金棒に武装色の覇気を纏わせて、力任せに振るった。


ゴッ!!


カイドウ「荒らしてんじゃねェよォ~~~~~~~~~~!!!!」


ドゴォン!!


『うわああああああ!!!?』

ライコウ「うぉ!?」

ブラック「ぐあぁ!!」

ジャック「ぐぅ!?」

カイドウがモリアを殴り飛ばした瞬間、凄まじい衝撃波が周囲を襲った。
モリアは悲鳴を上げる暇も無く何処かへと消えていった。
カイドウ渾身の一発を見たライコウは「相変わらず惚れるねェ」と言いながら顔を引き攣らせ、ブラックやジャック達は完全に震え上がっていた。

カイドウ「ライコウ、酒盛りの準備だ。」

ライコウ「あいよ、今日はどんな酒にするんだい?」

凍りついたような静寂の後、いつも通りの会話をし始めるカイドウ。
それを見て、ライコウ以外の全員がこう思った。
「カイドウさんに逆らうのやめよう……殺される」と。 
 

 
後書き
次回、急展開。
ローとサボを仲間にするべくライコウが旅に出ます。 

 

第10話:シリュー・D・イリス

 
前書き
お待たせしました。
ローとサボ、コアラを仲間にする旅の始まりです。 

 
百獣海賊団の根城では、今日も宴が催されていた。
それは通常運転。何事も起きない、ある意味平和な日常……になる筈だった。

ライコウ「何!? 本当か!?」

?「確かな情報です、場所は“北の海(ノースブルー)”で間違いありません!!」

ライコウに情報を提供しているのは、ジャックの部下である美女・ジンラミー。
彼女が持ってきた情報は、衝撃的なものだった。

ジンラミー「“オペオペの実”の取引が、近い内に行われます!!」

オペオペの実……それは、「究極の悪魔の実」とも呼ばれる超人(パラミシア)系悪魔の実で、“改造自在人間”になれる能力。
放出するドーム状のエリア内で移動、切断、接合、電撃など一般的に外科手術で必要なあらゆる行為を自在にできるようになる、とどのつまり「医療に特化した悪魔の実」であるため、かつてこの実を口にした者の中には世界的な名医になった者もいたという。
実を言うとカイドウはこのオペオペの実を長年探し回っており、自らの野望である「最強の海賊団」の実現のために役立てようとしているのだ。

カイドウ「ようやくか……!!」

ライコウ「よし…宴は終わりだ!! これより俺は“北の海(ノースブルー)”へ向かいオペオペの実を奪取する!! ブラック、スコッチを呼べ!!」

ブラック「分かった。」

ライコウ「他の者は俺が不在の間、ナワバリを護れ!!」

ライコウの命令が下り、部下達は宴をやめて船の出航の準備をする。

ライコウ「間に合えばいいが……“北の海(ノースブルー)”は最近慌ただしいからな…。」

ライコウはオペオペの実をどう奪うか考えていた。
北の海(ノースブルー)”には“ジェルマ66(ダブルシックス)”を保有する海遊国家・ジェルマ王国がある。それだけではなく、最近名を馳せてきた犯罪組織のような海賊団“ドンキホーテファミリー”も狙っているだろう。
四皇・ドンキホーテファミリー・戦争屋による三つ巴の「戦争」もあり得る話だ。さらに海軍も介入すれば、“北の海(ノースブルー)”を滅亡しかねない。その前に奪うのだ。

ライコウ「(出来る限りの抗争は避けたいが……そう上手く行くのか…。)」

ブラック「副船長、準備が整った。」

ライコウ「!!」

ブラック「いつでもOKだとよ。」

ライコウ「分かった……行くぞ!!」

ライコウ達はオペオペの実を奪うべく、“北の海(ノースブルー)”へと向かうのだった。

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-聖地マリージョア-

国際統治機関世界政府の本拠地である聖地マリージョアのある一室に、5人の老人が海兵からの報告を受けていた。
彼らこそ、世界政府の最高権力である“五老星”だ。

「何!? ライコウが!?」

「ええ…不穏な動きを。」

黒い帽子を被った左目付近に傷のある巻き髪の老人は、驚く。

「むぅ……あの男が動くとなれば、何か大きな目的があるようだな。」

頭に痣のある白い口ひげを蓄えた老人は、眉間にしわを寄せる。
その後、巻き髪の老人が再び口を開く。

「うむ、それは確かに。 だが“剣帝(ライコウ)”は暴れさせればこそ手に追えんが、自ら混沌を望むような男ではない……下手に動かず様子を見るのだ、奴を刺激するのは危険だからな。」

すると、坊主頭で眼鏡を掛け刀を持った白い着物姿の老人が海兵に尋ねた。

「ところで…イリスは帰って来たのだな?」

「はっ、シリュー・D・イリス大将は無事帰還されまして、此度の集会に参加するよう通知を送りました。」

「おぉ、やっと帰ったか。」

「久しぶりに顔が見たいものだ。」














-マリージョア、海軍元帥室-

海軍元帥であるコングは、2人の海兵を呼んでいた。
1人は、“仏”の異名を持つセンゴク大将。“英雄”モンキー・D・ガープらと共に大海賊時代の幕開けより前から海の平和に大きく貢献している伝説的海兵の1人だ。
そしてもう1人は、シリュー・D・イリス大将。トキトキの実の時間人間である剣士で“世界四大剣豪”の一角だ。

イリス「コングさん、何故呼んだんですか?」

コング「……センゴク、話してやれ。」

コングがそう言うと、センゴクはある資料をイリスに見せた。
それは、“北の海(ノースブルー)”で行われるオペオペの実の取引についてだった。

イリス「…これとどういう関係が?」

センゴク「これは我々海軍との取引でもあるが、ライコウが奪おうとしている。」

イリス「ライコウが…!?」

目を見開いて驚くイリス。

コング「奴が動くとなると、艦隊では相手にならん。 そこでお前に頼みがある。」

イリス「まさか……。」

コング「取引が終わるまで、ライコウを妨害し続けろ。」

イリス「……分かりました、そういうのなら…。」

センゴク「気を付けろよ、イリス。」

イリス「分かってます、ライコウを舐め切って破滅した海兵・海賊は山ほどいる。」

イリスはコートをなびかせ、元帥室から去った。

センゴク「(ロシナンテ……これでお前も安全だ。)」

センゴクはそう思いながら、ペットのヤギを撫でるのだった。 
 

 
後書き
ついに登場・世界四大剣豪の一角!!
海軍最強の海兵・イリスの設定で~っす。設定多少変えたけど。

【シリュー・D・イリス】
身長:198㎝
年齢:ガープやセンゴクと同世代
誕生日:10月10日
容姿:10代後半から20代前半くらいに見える茶髪の女性で、スタイル抜群。
服装:黒いスーツを着用し、フード付きのコートを羽織っている。
好きなもの:和食
嫌いなもの:白ひげやシャンクスなど一部を除いた全ての海賊
標語:護り切る正義
異名:“黒龍(こくリュウ)
武器:日本刀(最上大業物“神薙(かんなぎ)”と“葉隠(はがくれ)”)
所属:海軍本部/大将
イメージCV:能登麻美子
性格:温和かつ冷静で、己の正義を軸に判断・行動する。部下に対しては非常に優しく、五老星からも高く評価されている女傑。
戦闘力:トキトキの実を食べた時間人間。自身や周囲のものの時間を自在に操ることが可能というチート能力で、食べたら年を取らないという効果がある。チートと呼ぶに相応しい最強クラスの能力だが、乱用すると体力を激しく消耗するなどの複数の弱点もある。また、覇気も扱えるが武装色が最も強力。世界四大剣豪の一角でもあるため剣術も得意。
モデル:無し 

 

第11話:最高峰の剣戟

偉大なる航路(グランドライン)を逆走し、“北の海(ノースブルー)”へ辿り着いたライコウ達。
そんな中、ライコウは仲間を集めて会議をしていた。

ライコウ「オペオペの実の取引は、今から6日後のルーベック島で行われる。 そして取引の3日前にドンキホーテファミリーが実を奪いに来るとの情報が入った。」

ブラック「!? どこからそんな情報が……!?」

ライコウ「黒電伝虫で、ドンキホーテファミリーの会話を盗聴に成功した。 恐らくファミリー総出で奪いに行くだろう。」

すると、それを聞いた傘下の海賊“アイアンボーイ”スコッチが口を開いた。

スコッチ「ファミリーだけとは到底思えねェんですがね…海軍も絡んでるんでしょう? ライコウさん。」

ライコウ「その通り。 ドンキホーテファミリーは大参謀・おつるに追われている立場…恐らく彼女も早速動いているだろう。」

“大参謀”の異名を持つ海軍本部中将・つる。
伝説的海兵であるガープ・センゴク・ゼファーの同期であるウォシュウォシュの実の能力者で、あらゆるもの・人間を洗濯物のように洗って干し、悪の心も洗われるという海賊達にとってはある意味一番恐ろしい能力の持ち主だ。
彼女が動いているとなると、余程の大事である証拠……オペオペの実の取引はそれほど重大なのだ。

ライコウ「問題は、イリス辺りに妨害されなければいいがな……。」

その時だった。

「ライコウ様、海軍だ!!」

「しかも“黒龍”だ!!」

ライコウ「……“噂をすれば影を差す”とはこういうことか…お前ら、下がれ。 お前らじゃあイリスには勝てないぞ。」

ライコウは愛刀・鬼王を携えて甲板に出る。
甲板に出ると、すぐ目の前に若い女性がコートをなびかせて立っていた。
すぐ横には軍艦が停泊しており、1人で乗り込んだというところだろう。

ライコウ「何故お前がここにいる? イリス。」

イリス「上層部(うえ)の命令よ、あなた達を妨害する。」

ライコウ「……成る程、“保険”か。」

ライコウは海軍上層部の目的を瞬時に理解した。
イリスを寄越したのは、海軍でライコウ相手に張り合えるのは現時点では彼女以外いないからだ。正確に言えばゼファーやガープを向かわせてもいいが、ゼファーはもう前線復帰は望まないだろうしガープに至ってはやる気なし。
よって、消去法で残った最強枠のイリスを向かわせたのだろう。

ライコウ「……悪いが、俺は急いでいる。 邪魔するのなら、いくらお前とて本気で潰しに行くぞ。」

ライコウは覇王色の覇気で威嚇する。
四皇(カイドウ)を支える大海賊(ライコウ)の圧倒的威圧感を感じ、海兵達は顔を青褪め怯む。

イリス「……正直な話、私もあなたとは戦いたくない。 誰一人部下の命を失いたくないの。」

「大将殿……!!」

「イリス大将……!!」

イリス「でも、分かってるはずよ。 私は海兵、あなたは海賊……どれほど足搔いても戦う宿命なの。」

イリスは最上大業物である長刀“神薙(かんなぎ)”を抜いて構える。

ライコウ「……俺も出来る限りの戦闘は避けたいが…やむを得んな。 ここは一対一(サシ)で解決だ。」

ライコウも鬼王(かたな)を抜き、構える。

イリス「……いざ!!」

ライコウ「尋常に勝負!!」

2人は同時に動き、剣を交わせた。
その瞬間、互いの覇気が激突して衝撃波が周囲を襲った。

ヒオ「キャッ!?」

ブラック「下がれ!! 巻き込まれるぞ!!」

海軍大将と大海賊による鍔迫り合いの後、すさまじい斬撃のぶつかり合いが起こる。
世界最高峰の剣客同士の斬り合いは、壮絶の一言に尽きる。数十…百にも届きそうな剣刃の激突は、恐らく常人では視認すらできないだろう。

ライコウ「“零閃(ゼロせん)編隊・十機”!!」

ライコウは超高速の居合“零閃(ゼロせん)”による斬撃を10連続で放つ。
本来ならばそれは躱すことなどほぼ不可能の一撃必殺の技。しかし、イリスは例外だ。

イリス「“時間停止(タイム・ブレーキ)”!!」

イリスは薄い円球状の膜を張る。
すると、その膜に入った斬撃は全て止まった。

イリス「“時間逆行(タイム・リバース)”!!」

イリスがそう唱えた瞬間、ライコウが放った斬撃は全てライコウへ向かう。

ライコウ「相変わらず厄介だな、トキトキの実は。 だが…。」

ライコウは“零閃(ゼロせん)”を放ち、たった一太刀で全ての斬撃を打ち消した。

イリス「っ…!!」

ライコウ「自分の技の放ち方を知っている者はな、自分の技の相殺の仕方(・・・・・)も知っているんだよ。」

イリス「……ルーキーの頃から一筋縄では行かない相手であることは把握してるつもりでしたが…。」

ライコウ「思い通りにいかないから、生きるのが面白いんだよ。」

イリス「……フフ♪ そうかもね…。」

ライコウとイリスは互いに笑みを浮かべる。
立場は違うが、やはり共感する部分はあるようだ。

ライコウ「……どうする? まだやるか?」

イリス「だから私はあなたを足止めなきゃいけないの。 そうじゃないと始末書書かされる。」

ライコウ「ハハハ!! それは大変だな、ならばもう暫く付き合うか!!」

ライコウはそう言った瞬間、消えた。
それと共に、甲板中に大量の足音が響く。

ブラック「これは、まさか……!!」

イリス「“縮地(しゅくち)”!!?」

“縮地”とは、驚異的な脚力で初速から一気に最高速に達し、一瞬で相手の間合いを侵略することができる幻の移動術。
六式という超人的体術の“(ソル)”という技は瞬時に地面を10回以上蹴り、瞬発的に加速するのだが、それを遥かに凌ぐ速さで移動するのが“縮地”だ。

イリス「(速い!! 私の能力が発動するよりも早く移動してる!?)」

イリスは窮地に追い込まれていた。
イリスは全ての覇気を扱えるが、実は見聞色・覇王色の覇気が未熟……正確に言えば“弱い”のだ。覇気の熟練度・強力さはライコウが圧倒的に上であり、イリスの見聞色では“縮地”を発動したライコウを捉えきれないのだ。
そして……。

ライコウ「終わりだ!」

イリス「!!」

ライコウの剣刃が、イリスに迫る。
イリスはかろうじでそれを神薙で受け止める。

イリス「(ここだ!!)」

イリスは左手で小太刀の“葉隠(はがくれ)”を逆手で斬りかかる。
だが、それは鬼王の鞘によって弾かれてしまう。

イリス「っ!?」

ライコウ「鞘も立派な武器だ!!」

ライコウはそう言ってイリスを蹴る。
武装色の覇気を纏って蹴られたため、イリスはそのまま軍艦まで蹴り飛ばされた。

「大将殿!!」

イリス「大丈夫……。」

すると、百獣海賊団の船から葉隠が投げ渡された。

イリス「……。」

ライコウ「急いでいるんだ、ここは失礼する。」

ライコウはそう言い、その場を去ろうとする。

「大将殿、追撃しましょう!!」

イリス「いえ……もう結構です。 それよりもセンゴクさんとおつるさんに伝えて、オペオペの実の取引介入の許可をもらってください。」

「は……はっ!!」

イリスはライコウの妨害を諦め、恐らく壮絶な戦闘になるであろうオペオペの実の取引における「海軍の援護」を優先するのだった。 

 

第12話:ドフラミンゴとコラソンと

-3日後-

北の海(ノースブルー)”のスワロー島に停泊した百獣海賊団は、「オペオペの実争奪作戦」の打ち合わせをしていた。

ライコウ「オペオペの実を所持しているのは元海軍将校で海賊のX(ディエス)・バレルズ。 バレルズ海賊団の船長だ……奴は政府と50億ベリーで取引しようとしている。」

ブラック「海軍出身の海賊か……。」

スコッチ「腐ってますね。 あぁ、随分前からか。」

ライコウ「この近くに海軍の軍艦が4隻停泊している……戦闘準備をしておけ。 オペオペの実は必ず奪うぞ!!」

その時だった。
ふいに辺りが明るくなった。何事かと思って振り向くと、ミニオン島から火の手が上がっていた。

「ライコウ様!! ミニオン島で異変が!!」

「建物が爆発しました!!」

スコッチ「(おかしい…何故音がしない!?)」

音も無く火の手が上がったことに疑問を抱くスコッチ。

ヒオ「ライコウさん……。」

ライコウ「始まったようだな、急ぐぞ!!」

ライコウはブラックとヒオ、スコッチを連れてミニオン島へ上陸した。
その時、糸の束のような何かが空中に伸び、巨大な糸の檻のように展開された。

ブラック「何だありゃあ……!?」

ヒオ「糸……!?」

ライコウ「(“鳥カゴ”か……早めに奪った方がいいか…!!)」

スコッチ「ライコウさん、進みましょう!!」

ライコウ「……あぁ。」

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-バレルズ海賊団のアジト-

海賊達を撃ち殺したドフラミンゴは、バレルズ海賊団の宝物を奪っている。
しかし、それは「ついで」に過ぎない。
本当の目的は、「裏切り者の始末」だ。
実はドンキホーテファミリーにはコラソンという海兵が潜伏しており、直属の上司であるセンゴクに通じていたのだ。
これを知ったドフラミンゴは怒り、血眼でコラソンを探しているのだ。

ドフラミンゴ「どこに行った……!?」

すると、甲高い声が特徴の最高幹部・ピーカが叫んだ。

ピーカ「ドフィ!! コラソンは見つかったようだ!!」

ドフラミンゴ「!」

ドフラミンゴが外に出ると、コラソンが部下のグラディウスにボコボコにされていた。
同じ部下であるラオGに諌められるも、グラディウスの怒りは収まらず暴行を受けるコラソン。

コラソン「グウ…アウ…!」

ラオG「おい、若が来たぞ!!」

コラソン「ハァ…ハァ…!」

眉間に青筋を浮かべながら、ドフラミンゴはコラソンの前に立つ。

ドフラミンゴ「半年ぶりだな…コラソン…。」

コラソン「M・C(マリンコード)01746…“海軍本部”ロシナンテ中佐だ…。 ドンキホーテ海賊団船長ドフラミンゴ!! お前がこの先生み出す惨劇を止める為潜入していた…俺は“海兵”さ…!」

そう言ってドフラミンゴに銃を向けるコラソン。
するとコラソンは宝箱に意味ありげに音をたて、もたれ掛る。
実は宝箱の中には、オペオペの実を食べた少年・ローがいたのだ。

コラソン「ウソをついて悪かった…お前に嫌われたくなかったモンで…!!!」

ロー「今頃何言ってるんだ!? そんな事とっくに知ってる!!」

だがローの声はコラソンの能力であるナギナギの実の効果のせいで届かない。
ナギナギの実は防音壁を張ったり無音にさせる能力なので、誰にもローの声は届かないのだ。

ドフラミンゴ「? …つまらねェ冗談言ってねェで質問に答えろ! オペオペの実とローはどこだ!?」

コラソン「オペオペの実はローに食わせた、アイツはもう能力者だ。」

ドフラミンゴ「何だと…!?」

コラソン「上手く檻の外へ出て行った。 今頃、海軍本部の監視船に保護されてる頃だ。 手だしはできねェ…。」

すると、上空から偵察していた部下のベビー5が声を掛けた。

ベビー5「若様! 確かにさっき“少年を保護”と海軍が通信を…!」

ドフラミンゴ「!? 何故それを早く言わなかった!!」

ベビー5「まさか、それがローとは…!」

コラソン「(少年を? 何の偶然だ!? ローはここにいる…!!)」

ドフラミンゴ「クソ……確認を急げ!! “鳥カゴ”を解除する、出航の準備をしろ!! 事実なら海軍の監視船を沈めてローを奪い返すぞ!!」

コラ「よせ、ローを追いどうする…!?」

ドフラ「ローをどうするかだと? 決まってるだろ、オペオペの実を食ったなら俺の為に死ねるように(・・・・・・・・・・)教育する必要がある!!!」

それを隠れて聞いていたローは、背筋を凍らせる。

ドフラミンゴ「余計な事しやがって…何故俺の邪魔をするコラソン!! 何故俺が実の家族を二度も殺さなきゃいけねェんだ!!?」

そう言って、ドフラミンゴはコラソンに銃を向ける。

ドフラミンゴ「お前に俺は撃てねェよ。 お前は父によく似ている…。」

するとコラソンはヨロヨロと立ち上がりながら言う。

コラソン「ローは、お前に従わねェよ…3年後に死ぬって“運命”に勝ったんだ…自分を見失い…“狂気の海賊”の元へ迷いこんだあの日のローじゃねェ…!! 破戒の申し子の様なお前から得るものは何もない!! もう放っといてやれ!!! アイツは自由だ!!!」

ドフラミンゴ「……ふざけやがって…!!」

ドフラミンゴが引き金を引こうとしたその時だった。

ライコウ「取り込み中悪いが……オペオペの実はどこだ?」

「「!!?」」

ロー「え…?」

ドフラミンゴの後ろに現れた影。
その正体は、ライコウだった。

グラディウス「な、何でここに…新世界の大海賊(・・・)がいるんだよ!!?」

コラソン「……“剣帝”…!!!」

剣帝、降臨する。 

 

第13話:逃走開始

コートをなびかせ、ドフラミンゴの後ろに立つライコウ。
世界四大剣豪の一角である大海賊の登場に、緊張が走る。
張り詰めた空気を破ったのは、ドフラミンゴだった。

ドフラミンゴ「……何故ここにいる、“剣帝”…!!」

ライコウ「カイドウがオペオペの実を欲している。 この島付近で取引するという情報を耳にして新世界からわざわざ奪いに来たという訳だ。」

ドフラミンゴ「……フフフ、成る程……。」

ライコウ「さて訊こうか。 オペオペの実はどこだ?」

ドフラミンゴ「俺に訊くな……今は急いでいるんだからな。」

ライコウ「この場には無いと?」

ドフラミンゴ「ローってガキに食わせたんだよ、あの愚弟(バカ)が。」

ライコウ「ならば奴に訊くべきか。」

ライコウはコートをなびかせてコラソンに近づく。

ライコウ「お前がコラソンか?」

コラソン「ハァ…ハァ……あぁ、そうだ…!!」

ライコウ「……ローという少年は?」

コラソン「海軍に保護されてる……無駄だ、外にはつる中将がいる…追ったらタダでは済まねェ…!!」

ライコウ「成る程……。」

ライコウはコラソンの背後の大きな宝箱に目を向けた。
その上には、小さな宝箱が置いてある。

コラソン「(ま、まさか……!?)」

ライコウは小さな宝箱をどかし、大きな宝箱を開けた。

コラソン「や、やめてくれ!! そこには…!!」

ライコウは大きな宝箱の中から少年を取り出した。
そう……ローだ。

ライコウ「(やはり、“(カーム)”は音だけしか消せないようだな。)」

ライコウは「悪魔の実大図鑑」で悪魔の実のついてのほとんどを熟知している。
ナギナギの実についても当然その能力の長所と短所を知っているのだ。

ピーカ「ロー!!?」

ディアマンテ「コラソンの野郎、能力者だったのか!!」

今までコラソンが能力者であることを知らなかったファミリーは、驚愕する。
そして、ドフラミンゴは怒りを露にした。

ドフラミンゴ「……中々味なことをしてくれるな、コラソン…その能力で俺を欺いたのかァ!!!」


ドォン!!


コラソン「ぐあぁ!!」

ロー「コラさん!!!」

ブチギレたドフラミンゴは、銃でコラソンの足を撃ち抜く。
それと共にコラソンの能力は解除され、ローの声が響く。

ドフラミンゴ「あの話も筒抜けだったか、ロー。」

するとドフラミンゴはローに銃口を向けた。

コラソン「おい…何をする気だ……!!?」

ドフラミンゴ「あの話筒抜けなんだろ…海軍に保護されたら奪い返せなくなる…だから殺す!!! ローの代わりに俺の為に死ぬ奴はいくらでも準備できるからな!!!」

ドフラミンゴはそう言って引き金を引こうとした。


斬!!


ドフラミンゴ「!!?」

ドフラミンゴの銃は、突然砕け散った。
それと共に、刀を鞘に納める音が響く。

ドフラミンゴ「何故2人を庇う、これは身内(・・)の問題だ……!!」

ライコウ「そうも言えないんだ、これから仲間になるんだしよ。」

ライコウはローとコラソンを庇い、ドフラミンゴの前に立つ。

コラソン「アンタ……。」

ライコウ「選択肢をやろう。 1つはこのまま死ぬか…もう1つは俺と共に来るかだ。」

コラソン「……アンタと行く…ただし、ローもだ…!!」

ライコウ「決まりだな。 スコッチ、ヒオ!! 2人を逃がせ。」

すると、森からスコッチとヒオが現れ、ローとコラソンを逃がした。
それを見たファミリーの者は戦闘の準備をする。

ラオG「おのれ、小童共め!!」

グラディウス「逃がさねェぞ!! セニョール!!」

セニョール「分かってる。」

3人はロー達を追おうとする。
その時、3人の前に斬撃が走った。

ライコウ「……俺をお忘れかな?」

セニョール「……この線は…!!」

ライコウ「越えないことを勧める。」

しかしそうはいかない。
問答無用でファミリーはローを追う。

ライコウ「人の話はちゃんと聞くべきだって。」

ライコウは抜刀し、セニョール達に斬りかかるが、ドフラミンゴによって阻止される。
それと共にディアマンテが剣で攻撃してきた。もちろん、ライコウはこれを躱す。

ライコウ「……最高幹部と船長が相手か。」

ディアマンテ「ウハハハハハ、卑怯とは言わせねェ、俺達もアンタを妨害する(・・・・)んだからな。」

その後、同じ最高幹部のトレーボルが口を開いた。

トレーボル「そもそも、ドフィの“鳥カゴ”から逃げられるはずないモンね~!!」

ライコウ「ならば、お前達を倒すまでだ。」

ライコウはそう言った瞬間、消えた。
そして、雪をまき散らしながら超高速で移動する。

ドフラミンゴ「“縮地”か……!!」

ピーカ「速すぎる……!!」

ディアマンテ「任せろドフィ!! “陸軍旗(アーミーバンテラ)”!!」

ディアマンテは地面をまるで旗の様にはためかす。
彼は“ヒラヒラの実”の能力者で、鋼鉄をもはためかすことができる(フラッグ)人間になれるのだ。

ディアマンテ「ウハハハハ、どうだ!? 移動しずらいだろう!!?」

ライコウ「……。」

ライコウは“縮地”による移動をやめた。
波の様にはためく地面は足場の悪さが想像を絶するため、“縮地”による移動は逆に体力の無駄となるのだ。

ディアマンテ「“半~~月~~”……“グレイブ”!!!」

ディアマンテは剣を頭上に掲げてから一気に振り下ろし、ライコウに向けて剣圧を走らせて攻撃をする。
それを見たライコウは鬼王に覇気を集中させ、構えた。

ライコウ「“次元斬(じげんざん)”!!」

ライコウは得意技である“零閃(ゼロせん)”以上の速さで抜刀した。
無数の斬撃が放たれ、ディアマンテの斬撃を打ち破りながらドフラミンゴ達に近づいた。

ドフラミンゴ「“蜘蛛の巣がき”!!」

ドフラミンゴはイトイトの実の能力によって発生させた糸を 巨大な蜘蛛の巣状に展開させて盾にした。
斬撃をかろうじで受け止めるが、あまりの威力に押されてしまう。

ピーカ「今度は俺が相手だ!!」

ライコウ「っ!? ……ハハハハハハ!! 何だよその声!!!」

ピーカ「っ…!!!」

ピーカの厳つい見た目とは真逆の甲高い声に爆笑するライコウ。
それにキレたピーカは身の丈をも上回る程の大太刀を携えてライコウに斬りかかる。
しかしライコウはそれを何と片手で受け止めた。

ピーカ「この俺がブチ殺してやる!!!」

ライコウ「ハハハハハ、止めてくれその声!!! 勝負に集中できん!!」

ピーカ「っ~~~~!!! おのれ~~~……!!!」

ピーカは激昂して猛攻するが、ライコウに弄ばれる。

ライコウ「これは俺が指導した方がいいか?」

ピーカ「貴様、図に乗るな!!!」

ピーカはさらに激昂して、能力を発動した。
ピーカは岩や石と同化することで自在に操ることができるイシイシの実の能力者。島すらも彼の武器なので、かなりの脅威なのだ。

ピーカ「“石押(イシウス)”!!」

ピーカは内側に無数の棘の生えた岩壁を2つ作り、ライコウを挟み込もうとした。

ピーカ「ピッキャピッキャピッキャララ…これで終わりだ!!」

ライコウ「それで倒せると? 甘いわ!!」

挟みこまれる瞬間にライコウは“次元斬”で岩壁を粉砕した。
そして再び居合の構えを取り、抜いた。

ライコウ「“零閃(ゼロせん)編隊・五機”!!」

ライコウは5連続で“零閃(ゼロせん)”を放ち、ピーカを倒す。

ディアマンテ「ピーカ!!」

血を吐いて倒れるピーカに、ディアマンテが詰め寄る。

トレーボル「よくもピーカを……!!!」

ライコウ「さぁ…どうする“天夜叉”。」

ドフラミンゴ「っ……!!」

ライコウの圧倒的な実力に、窮地に立たされるドフラミンゴであった。 

 

第14話:「俺はもう自由だ」

一方、スコッチとヒオはローとコラソンを連れて逃走していた。
後ろにはファミリーの猛者達が追ってきており、追いつかれるのも時間の問題だ。

コラソン「ハァ…ハァ…よせ、いくら何でも2人じゃ無謀だ…!!」

スコッチ「誰が“2人”だと言った? まだあの人(・・・)がいる…それまでふんばれ。」

ヒオ「スコッチさん、前!!」

スコッチ「!!」

スコッチの前に、平泳ぎで男が現れた。
あらゆるところを泳げる“スイスイの実”の能力者であるセニョール・ピンクだ。

セニョール「お嬢ちゃん、いくら何でも無謀すぎるぜ。」

それと共に、ファミリーの者達がスコッチ達を囲った。
スコッチは右腕の銃口を、ヒオは能力を発動して弓矢を構える。

セニョール「……俺達だって百獣海賊団(アンタら)とはぶつかりたくない……。」

ラオG「その2人を渡してもらおうか!!」

セニョール達は少し慎重な態度で交渉を始めた。
カイドウ及び百獣海賊団の勢力は、日に日に増しており、新世界において揺るぎない地位を築いて君臨している。そんな大海賊団の追及の前に、いくらドンキホーテファミリーといえど破滅を免れない。
よって、「殺して奪う」のではなく「交渉して丸く収める」ことにしたのだ。
だが、その程度で百獣海賊団は妥協しない。

ヒオ「ライコウ様の命令は絶対……2人は渡さない!!」

ヒオは矢に覇気を纏わせ、戦闘準備をする。

グラディウス「ならば、力ずくで奪うまでだ!!」

グラディウスがそう言うと、銃を構えた。
その時だった。

ブラック「気に入らねェなァ。」

グラディウス「!!?」

グラディウスの後頭部に、銃口が突き付けられる。
そう、ブラックが先回りしていたのだ。

ヒオ「お兄ちゃん!!」

スコッチ「航海総長!!」

強力な助っ人に喜ぶヒオとスコッチ。

コラソン「“海賊男爵”バロン・ブラック……本物は初めてだ…!!」

長い海兵歴で初めて出会った大物の登場に、冷や汗を流すコラソン。

ブラック「どうする? 俺はアンタら全員撃ち抜く腕前はあるぜ。」

すると、三角形の眼鏡をかけた中年の女が声を荒げた。
彼女の名はジョーラ……触れるとアート化する煙を出す“アトアトの実”の能力者だ。

ジョーラ「そ、そんなものハッタリざます!! この人数で勝ち目は無いざます!!!」


ドォン!!


ジョーラ「ヒィッ!?」

ブラックは何の躊躇いも無くジョーラに発砲した。
銃弾はジョーラの顔の3㎝右を掠ったが、威嚇するには十分だった。

ブラック「言っておくが……俺は百獣海賊団で一番の狙撃手(スナイパー)だ。」

そう豪語するブラック。
辺りに緊張が走り、ファミリーの者達は冷や汗を流しながら後ずさる。
その時だった。

グラディウス「!? “鳥カゴ”が無くなる!!?」

ジョーラ「まさか、若様が倒された!!?」

するとその直後、子電伝虫が鳴った。

ブラック「……俺だ。」

ライコウ《出航の準備を急ぐぞ!! おつるとイリスが合流して挟み撃ちにしようとしてる!!》

ブラック「……マジかよ…!!」

ライコウ《ローとコラソンを連れて船に戻れ、出航するぞ!!》

ブラック「ドフラミンゴは!?」

ライコウ《交戦中に身代わり作って逃げたよ……早く急げ、砲弾の雨が降るぞ!!》

その時、海岸にサングラスをかけたフラミンゴを象っている海賊船が現れた。
そこには、ドフラミンゴがいた。

ドフラミンゴ「おつると“黒龍”の軍艦だ、早く乗れ!!!」

ドフラミンゴは声を荒げて命令し、グラディウス達はローとコラソンを睨んだ後そのまま船に飛び乗った。

ディアマンテ「…よかったのかドフィ、アイツら逃がしちまってよ…!」

ドフラミンゴ「あァ、今はいいさ…下手に戦ってお前らを失うわけにはいかねェ。」

ドフラミンゴはピーカとトレーボルの痛々しい姿に目を向けながら言う。
ピーカを倒された後、怒ったトレーボルがライコウと戦ったのだが惨敗し、糸人形を複数作ってドフラミンゴはディアマンテと共に瀕死のピーカとトレーボルを連れて退却したのだ。

ドフラミンゴ「クソ……厄介な連中にオペオペの実が渡ったな…!!」

ドフラミンゴは、苦虫を噛み潰したような顔でそう呟くのだった。

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-3日後-

コラソン「ん……!?」

コラソンは、ある船室で目を覚ました。
身体は包帯まみれであり、治療されていたようだった。

コラソン「…ロー!! ロー、どこd…ぐぅっ!?」

ライコウ「無茶をするな…あれほどの銃弾を浴びてたんだ、身体に障るぞ。」

コラソン「ロ、ローは…!?」

ライコウ「お前の左隣だ。 かなりボロボロだったぞ。」

酒を飲むライコウは笑いながら、ぐっすりと眠っているローを見る。

ライコウ「“海兵”に戻るのも自由だ……もし百獣海賊団(ウチ)に入りたくなければ近くの島で下ろすが?」

コラソン「いや……俺は独断で“オペオペの実”を奪ったから海軍にはもう戻れねェよ。 それにミニオン島でアンタらに恩もあるしな。」

その時、ローが目を覚ました。

ロー「……ここは…?」

コラソン「ロー!! 良かった、無事で何よりだ!!」

コラソンは号泣しながらローに抱き付く。
ローは「痛ェよコラさん…!!」と言いながらもがく。

コラソン「……ロー、これからどうする? 何かやりたい事あるか?」

ロー「……ライコウ…つったな…。」

ライコウ「何だ?」

ロー「アンタの船に乗りたい。」

コラソン「!!」

口角を上げるロー。

ロー「俺はもう自由だ…だから、世界を知りてェし面白ェ奴らにも会いてェ!!」

ライコウ「……フフ、いい答えだ。 だが腹括っとけよロー、ウチの船長は昔から気性が荒い飲んだくれの頑固親父だぞ。」

こうして、ローとコラソンが仲間入りを果たした。 

 

第15話:次の目的地へ

オペオペの実の争奪に成功したライコウ達。
ライコウはその事を新世界にいるカイドウに電伝虫越しで報告していた。

カイドウ《元珀鉛病患者のガキ…? フレバンスの生き残りか?》

ライコウ「あぁ…その子がオペオペの実の能力者だ。」

カイドウはライコウの話に驚いていた。
カイドウ自身、フレバンスの話は知っているが、まさか生存者がいたとは思わなかったようだ。

カイドウ《……一応奪取には成功はしたんだな。 ご苦労だったな。》

ライコウ「まぁな。 あぁ、俺はこれから“東の海(イーストブルー)”へ向かうから、もう少し時間掛かるから。」

カイドウ《“東の海(イーストブルー)”に何の用だ? ロジャーの弔いか?》

ライコウ「……少し…話をしたい奴がいる。」

カイドウ《お前が…か?》

ライコウは「“東の海(イーストブルー)”に必ず会っておきたい人物がいる」と言う。
カイドウはそのことに関しては深く探ろうとはせず、スルーした。

カイドウ《いつ頃戻る?》

ライコウ「3週間後ぐらいだ。」

カイドウ《そうか…くれぐれもそのガキを置いてくなよ。》

ライコウ「あいよ。」

そう言って通話を終えるライコウ。

ライコウ「……エースに親父(ロジャー)のこと教えなきゃな…。」

ライコウが会いたい人物とは、エースという少年だ。
実はエースという少年は、海賊王ロジャーの実子であり、言わば“鬼の子”なのだ。原作においてエースは自らの父親を憎んで生きてきており、マリンフォード頂上戦争で戦死するまで父親(ロジャー)を否定していた。
ライコウはルーキー時代から在りし日のロジャーを相手にしていた。自らの経験を語って少しでも父親に対する偏見を変えようと兼ねてより思っていたのだ。勿論、それには相当な時間が掛かるだろうが。

ライコウ「“Dの血族”はどんなデケェ花火を打ち上げるのかねェ…。」

ライコウは獰猛な笑みを浮かべて甲板に出る。
すると……コラソンが燃えていた。

ロー「コラさんが燃えてる!!」

スコッチ「誰か水持って来い!!」

ライコウ「……ドジにも程があるだろ…。」

コラソンはドジっ子であるとは聞いていたが、ここまでとは思ってなかったライコウはドン引きしている。
それを見かねたライコウは鬼王を抜いて逆手に構え、振るった。
すると突然暴風が発生し、コラソンのコートを燃やす火を一発で消した。

コラソン「お……おぉ!! 火が消えた!!」

ブラック「(剣圧で火を消しやがった……相変わらずの化け物ぶりだな副船長は…。)」

ライコウ「全く、何をどうしたらそうなったんだ…。」

鬼王を鞘に納め、コラソンに近づくライコウ。
するとライコウは、あることに気が付いた

ライコウ「コラソン、その空っぽの酒瓶は?」

コラソン「ん? あぁ、喉渇いたから飲んだ。」

煙草を咥えながら応えるコラソン。
ライコウは出火原因(・・・・)が分かり、顔に青筋を浮かべた。
酒を飲んでいたら煙草の火で偶然引火したのだろう…しかも腹立たしいことに、飲んでいた酒は自分のお気に入り。
ナギナギの実の能力でこっそり奪われたと思うと、怒りが止まらなくなる。

ライコウ「コラソン……。」

コラソン「い、いや…酒はいっぱいあるから一本ぐらいはイイだろ!?」

ライコウ「お前、ちょっと反省しろ。」

ライコウはそう言ってコラソンの身体を持ち上げ、海へ投げた。
盛大な水しぶきを上げてコラソンは着水する。

ライコウ「ブラック、後頼む。」

ブラック「わ、分かった…。」

その後引き上げられたコラソンは、ライコウに土下座したとか。

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-マリンフォード-

海軍本部の一室。
海軍の最高戦力の1人である大将センゴクの自室では、センゴクがイリスからの報告を聞いていた。

センゴク「そうか……ロシナンテはカイドウの一味に…。」

イリス「一緒に連れていた少年も、百獣海賊団に拾われました。」

センゴクは複雑な表情を浮かべる。
身寄りも居場所も無くなって放浪していたロシナンテを保護したセンゴクは、その当時は海軍中将であった。ロシナンテを海兵として育てながら、その一方で実の息子の様に愛情を注いでいたセンゴク。そんな彼にとって、義理の息子(ロシナンテ)が海兵でなく取り締まれる側(かいぞく)になったのは怒りというより寂しさを感じていた。
センゴクは数多の海兵達を見てきた。現に、自分の親族が犯罪者であるのは同僚にもいる。軍務経験が長いと辛い思い出もたくさんあるのは十分理解しているが、センゴクは情を捨てて自らが大切に育てたロシナンテに手を掛けることはさすがにできないらしい。

イリス「センゴクさん、気に病まなくてもいいでしょう。 命ある分まだいい方ですし、ライコウがいる以上カイドウ達がロシナンテに手を掛けるマネはしないでしょう……。」

センゴク「あぁ…分かっている。」

イリス「では、私はこれにて。」

センゴク「あぁ、ごくろう。」

イリスはそう言ってセンゴクの部屋を出るのだった。 
 

 
後書き
次回はサボが仲間になる章です。 

 

第16話:邂逅の時

 
前書き
やっといいところまで来ました。
ここら辺からちょっと面白くなるかも。 

 
ローとコラソンが加入してから早1週間…ライコウ達は“東の海(イーストブルー)”のドーン島・フーシャ村に停泊した。

コラソン「センゴクさんが“平和の象徴”というだけある、のどかだな。」

ライコウ「“最弱の海”って呼ばれてるが、出身者はとんでもない大物ばっかだがな。」

スコッチ「それはどういう意味で?」

ライコウ「この海はロジャーとガープが生まれた海だぞ? 何気にとんでもない場所なんだよ。 昔はロジャーとよく戦ったよ、海の覇権を争ってさ。」

過去の思い出に浸るライコウを他所に、船の錨を下ろして上陸の準備をする一同。

コラソン「(まぁ…その分ここも“闇”は深いんだよな……。)」

このドーン島には、「“東の海(イーストブルー)”で最も美しい国」と言われるゴア王国がある。しかし、その裏では王族や貴族によって不要なものを全て不確かな物の終着駅(グレイ・ターミナル)に淘汰した極端な隔離社会が築かれている「偽りの美しさ」であり、犯罪と病気が蔓延する無法地帯も多い。
この話はガープやセンゴクからも聞いており、元海兵のコラソンは心の内では嫌悪感を露にしている。

ロー「コラさん、どうした?」

コラソン「……この島にある王国の事を思い出したんだよ。」

ロー「…?」

ライコウ「海兵時代のことでも思い出したか。」

コラソン「うぉ!? アンタ、いつの間に……。」

ちゃっかり話を聞いていたライコウにビックリし、盛大に転ぶコラソン。

ライコウ「どこでもコケれるんだな。」

コラソン「何その言い方!? 俺はボケ担当じゃねェぞ!!」

スコッチ「ところで、航海総長は?」

ライコウ「ブラックか? 村長と交渉中だ。」

ブラックは村長と絶賛交渉中であるようだ。

ライコウ「俺、ちょっと用事あるから船番よろしくなスコッチ。」

スコッチ「はっ…。」

コラソン「ちょ、ちょっと待て!! アンタどこ行く気だ!?」

ライコウ「……野暮用だよ。」












-フーシャ村から離れて30分後-

ライコウ「随分と山奥で暮らしてるんだな…。」

酒を飲みながら山の中を歩くライコウ。
見聞色の覇気を発動しながら周囲を窺うも、何の反応も無い。

ライコウ「もう帰ったか…?」

その時、急激に3人程の気配を感じ取った。
それと共に、何か巨大なモノが接近していた。

ライコウ「(何かに追われてるのか…?)」

すると、鉄パイプを携えた3人の子供が悲鳴を上げてライコウの前に現れた。
その直後、森の木々を盛大に薙ぎ倒して巨大な虎が現れた。

ライコウ「(でか…。)」

虎の巨大さに呆然とするライコウ。
ライコウの知る虎は、大きくても3m程……目の前の虎は明らかに10mは優に超えている。どうやらこの山はルスカイナにも勝るとも劣らぬ巨大猛獣の住処のようだ。

?「ぎゃああああ!! 助けてくれェェ!!」

?「ルフィ、お前が穴に石ころなんか投げつけるからいけねェだろうが!!」

?「エース、そんなこと言ってないで早く仕留めないとヤベェぞ!! あそこの兄ちゃん襲われたら責任とれねェよ!!」

ライコウ「(気付いてたんだ…。)」

どうやら1名だけライコウに気付いてたようだ。
すると案の定、虎はライコウに目を向け、襲い掛かった。

「「「危ねェ!!!」」」

少年3人は叫ぶが、ライコウは気にも留めずそのまま逃げずに立つ。
そして、虎を威嚇した。


ドクンッ!!


突風のような波動を間近で浴びた虎はピタリと止まった。
その顔は汗だくで、ライコウに完全に怯えていた(・・・・・)

ライコウ「……失せな。」

巨大な虎はその場から逃げるように森へ向かって去っていった。

ライコウ「……お前らも大丈夫か?」

3人に目を向けるライコウ。

?「あ、あぁ……。」

?「スゲェ……手ェ出さねェで追い払った……!!」

?「ハハ……参ったよ…。」

3人共ライコウの実力の片鱗を垣間見て驚く他無いようだ。
それもそうだろう、手を出してないのにあのような凶暴極まりない猛獣を追い払ったのだから。

?「お前誰だ?」

ライコウ「……そっちこそ名乗って欲しいものだ。」

?「俺はルフィ!! 海賊王になる男だ!!」

?「俺はサボ。」

?「……エースだ。」

ライコウ「そうか……俺はライコウ…現役の大海賊(・・・)だ。」

ライコウ、3人の悪ガキと邂逅を果たす。 

 

第17話:人生の大先輩として

-ある海岸にて-

ルフィ「えぇ~~~!!? 海賊王と戦ったのかァ~~~!!?」

ライコウ「あぁ、俺が10代後半から20代前半の頃の話だがな。」

サボ「あの海賊王と戦ったって……マジかよ…。」

エース「…。」

ライコウは3人を相手に酒を口にしながらロジャーとの思い出を語っていた。

ライコウ「ロジャー、白ひげ、金獅子…海賊王時代(かつて)の海を彩る伝説達が海の覇権を競ったあの日々は今でも頭に覚えてる……特にロジャーとの戦闘はな。」

ライコウはルーキー時代、カイドウ・ジャック・ブラックのたった4名で海賊として名乗りを上げ、伝説的な猛者と戦ってきた。
だからこそ、ライコウのような実際にロジャーと出会った者にしか分からないこともある。

ライコウ「ロジャーは、決して逃げなかった。 逃げることも戦いでは重要だったが、ロジャーはそれを絶対にしなかった。」

サボ「どんな敵でもか? 逃げる時は逃げた方がいいんじゃ…。」

ライコウ「ロジャーが逃げない時は、自分の背後に仲間がいる時。 もし目の前の相手を逃がしたら、愛する仲間が危険に晒される……ロジャーは、愛する者を失うのを死ぬより恐ろしく感じ、忌み嫌ってた。 敵から仲間を必死で護る時のロジャーはまさに修羅そのもの…そりゃあ鬼の様に恐れられて当然だわな。」

ロジャーの強さを語るライコウに目を輝かせるルフィ。

ライコウ「一度怒れば手に負えない暴れん坊である一方で、子どものように無邪気で単純、やること成すこと常に豪快で派手なのを好んだ。 そんな無茶な生き方をして得たのが海賊王…世間の評判は最低最悪でも、仲間からの信頼は絶大で出会った人間からは無類の好感を得ていた男…それがロジャーさ。」

ライコウの話を聞いたエースは、目を見開いた。
自分の父親…ロジャーは世間から「生きてて迷惑、死んでも迷惑」だの「ゴミ野郎」だの、恐れ蔑んでいた。
なのに、目の前の男は蔑まず、むしろ称えているような発言をしている。
エースはそれが信じられなかった。「嘘をついているんじゃないか」と思ってしまうほどに。

エース「じゃあ……もしロジャーの息子がいたら、アンタどうすんだよ。」

ライコウ「!」

エースの質問の後、静寂が辺りを包み込む。
その静寂を破ったのは、ライコウだった。

ライコウ「俺だったら……親父(ロジャー)の話でもして酒でも飲むかもな。 さて、ルフィとサボ…だったな。 エースと2人で話をしたいんだが、少しいいか?」

サボ「あ、あぁ……ルフィ、夜の修行でもするか?」

ルフィ「サボには負けねーぞ!!」

サボとルフィはそう言って去っていった。

ライコウ「んで、親父の話をどう思った? “ゴール・D・エース”。」

エース「っ!!?」

ライコウの発言に、エースは戸惑った。
そう、ライコウはエースがロジャーの息子だと分かって話をしていたのだ。

エース「……気付いてたのか…!?」

ライコウ「目元がロジャーそっくりさ、例え知らなくとも話をしてる時の反応やお前の質問で大方の予想もつく。」

エース「……正直、アンタの話は信じられねェ。」

ライコウ「だろうな…言ってることは紛れも無い事実だが、世間の認識が認識だからな。」

そう、世間ではエースの実父は世界中から嫌われてる存在…彼と親しかった者達は随分と少なくなったので、ロジャーがどういう人間かを知らないまま嘲笑い罵っているのだ。

ライコウ「“よく分からないが悪い奴”、“海賊の王なんだから一番悪い海賊”……ロジャーの実像を知らない者達は大抵そう思い込んで生きてる。 お前もそうじゃないのか?」

エース「っ……。」

ライコウ「人生の大先輩として一言言っておく。 真っ当に生きるにしろ無法者として生きるにしろ…お前が生きている限り、常にロジャーの名がお前を付き纏う……呪いのようにな。」

エース「呪い、だと……!?」

ライコウ「生きてナンボのこの世界……この世に生を受けたからには、親父の名に潰されてでも自分らしく生きろ。」

エース「っ!!」

ライコウ「……まぁ、どういう意味かはいずれ分かるだろう。」

ライコウはそう言うと、コートから一枚のビブルカードを取り出し、切れ端をエースに渡した。

エース「紙……?」

ライコウ「その紙は俺への道標だ……もし海賊になったら、それを頼りに俺の元に来い。 答えを聞かせてくれ。」

ライコウはそう言って立ち上がり、コートを翻す。

ライコウ「じゃあな……新世界でまた会おう。」

下駄の音を鳴らして、ライコウはその場から去っていった。

エース「……自分らしく、か……。」

ライコウに「この世に生を受けたからには、親父の名に潰されてでも自分らしく生きろ」と言われたことが頭を離れず、エースはその答えを自らの力で導こうと決意するのだった。 

 

第18話:救助

エース達との邂逅を終えたライコウは、酒でも飲んで昼寝しようかとフーシャ村へ戻った。
すると……。

スコッチ「ひえェェェェェェェェ!!?」


バゴォン!!


ライコウ「……今、何か飛んだな…。」

聞き慣れた声がライコウの横を高速で通り、吹き飛んだ。
その後、自分の部下が殴られた音と共にまるで魚雷の様にすっ飛んでいくではないか。
言ってはおくが、百獣海賊団の船員はライコウが扱きまくったため、一兵卒でも海軍の佐官クラスを圧倒できる。チームワークも良く、幹部達が出張らずとも一国の軍隊を攻め滅ぼせるほどの練度を有している。
そんな部下達が一方的に殴られまくっている。殴ると言えば、彼しかいないだろう。

ガープ「何じゃい、四皇の部下はこんなモンか?」

そう、海軍の英雄・ガープだ。
全盛期は山をサンドバック代わりにして8つほど粉砕した化け物が、孫に会いたいがためだろう寄って行ったのだろう。

ライコウ「……何やってんだお前らは。」

「ライコウ様!!」

「ガ、ガープが現れたんだ!!」

ライコウ「見れば分かるって。」

ガープ「む? まさかお前がこんなところに来るとは、珍しいこともあるのぅ。」

ガープはスーツ姿なので、どうやら仕事の合間に立ち寄ったようだ。
いや…ぶっちゃけた話、あのガープのことだから仕事をサボった可能性もあるが。

ライコウ「んで? 何しに来たんだい? 事と次第じゃあ俺も出張るが…。」

ライコウは愛刀・鬼王をジャキンッと鳴らす。
彼から放たれる覇気は空間を震わし、家々を軋ませる。
しかしそんなライコウを前にしても豪快に笑うガープは、さすがと言ったところだろう。

ガープ「ぶわっはっはっは!! 安心せい、さすがにお前と()り合う気は無いわい!!! こんな良い村を地上から消し飛ばすわけにはいかんしな!!」

ライコウ「ハハハ、俺も同感だ。」

素っ気ない会話をしている2人だが、内容的にはかなり物騒である。
しかも“伝説の海兵”と“四皇の右腕”が言っているのだから余計リアルだ。この2人が本気で殺し合えばフーシャ村を…いや、ゴア王国を滅亡させかねない。
物騒な言葉は“圧倒的強者”が言えば、「何れ起こる未来」になりかねないのだ。

ガープ「ところで……何故ロシナンテがお前と共にいるんじゃ?」

コラソン「はっ!! しまった!!」

ライコウとガープの会話を聞いていたコラソンは、うっかりナギナギの実の能力を使用するのを忘れてバレてしまった。
まぁ、通常運転である。

ライコウ「ん? イリスとセンゴクから何も言われていないのか?」

ガープ「寝とったわい、長い話は嫌いだからの!!」

ライコウ「ハハハ、よくそんなんで海軍の英雄になれたな、この脳筋爺。」

ライコウは穏やかに笑いながら毒を吐く。

ライコウ「本当のところはどうなんだ? ちゃんとした用事ぐらいあるんだろ。」

ライコウが目を細めて言うと、ガープは「勘の鋭い奴じゃな」と言ってコラソンに手紙を渡した。

コラソン「ガープ中将、これは…?」

ガープ「センゴクからじゃい。 ちゃんと感謝しとくんじゃな。」

ガープはそう告げて山の方へ向かった。
恐らくルフィ達を扱きに行くのだろう……実力行使で。

ロー「コラさん、何で泣いてんだ?」

一方のコラソンは手紙を読んで号泣。
道化師のようなメイクが崩れるほどの大量の涙であり、感動的な場面であるはずなのだが若干引いてしまう。

ライコウ「まぁ、一応用は済んだから明日には出航するか……ん?」

ふとライコウは、一瞬だけ見慣れぬ船を目にした。
それは漆黒の船体で、龍頭の選手を施した船だった……。

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-翌朝-

フーシャ村から出航した百獣海賊団は、ある海岸に隠れていた。
この日は何とゴア王国に世界貴族“天竜人”のジャルマック聖が視察しにきたので隠れざるを得なかったのだ。
ライコウ自身としては「同情の余地が微塵も無いクズ集団」と罵倒しており、「別に横を堂々と通っても問題無い」と豪語するが、それだと色んな意味で取り返しのつかない事態となるため、スコッチやヒオだけでなくブラックからも止められたのだ。
なお、元天竜人であるコラソンはライコウの発言に酷く落ち込んだのは言うまでもない。

ライコウ「天竜人(クズ)の命でも四皇とドンパチするほどの度胸はねェだろ、政府は。」

コラソン「そうかもしれんが、俺の立場を理解してくれ!!」

ライコウ「いや、もうお前関係ないだろ。」

コラソン「元世界貴族が四皇の船に乗ってたってなると、俺の懸賞金(くび)の値が上がるんだよ!!! センゴクさんの胃に穴開けるつもりか!!?」

ライコウとしては「ウチはウチ、他所は他所」の思考回路だが、コラソンはそうはいかない。
コラソンは元世界貴族であり元海兵だ。百獣海賊団によって事実上の庇護下ではあるが、政府としては問題視する可能性が高い。ただでさえセンゴクは海軍でトップクラスのストレスを抱えているのだ、余計に心配をかけてしまう。

ライコウ「仕方ない、停泊するまで待つか……。」

その時だった。


ドォン…!!


ライコウ「ん…?」

ライコウの耳に、爆音が届いた。
花火ではない。明らかに砲撃の音だ。

ライコウ「まさか…!!」

すると再び爆音が響いた。
ライコウは何かを察したのか、羽織っていたコートと着用していた狩衣を脱ぎ、刀傷や火傷が目立つ上半身を露にする。

コラソン「お、おいどうした!? いきなり上半身裸になって……!!」

ライコウ「ちょっと行ってくる!!」

そう言ってライコウは海へ飛び降り、そのまま泳いでいった。

ライコウ「(まさかだとは思うが……まだ死ぬなよ!!)」

暫く泳ぐと、燃えながら海に沈み一隻の漁船が。
よく見ると、黄色い髪の毛の少年が気絶したまま漂っている。

ライコウ「サボ……。」

急いで彼を救出し、抱きかかえながら泳ぐ。
すると海が突然盛り上がり、海王類が現れた。

ライコウ「俺は今ムシャクシャしてるんだが……。」

ライコウは覇王色の覇気で威嚇する。
ライコウと目が合った海王類はまるで金縛りのように動かなくなり、震え始める。
その直後、海王類は複数の砲弾を浴び撃沈した。

ブラック「遅いから来てみたら、随分遠くまで泳いだな副船長!!」

ライコウ「ブラック!!」

そう、ブラック達が救助に来たのだ。
まぁ、別に待っていれば普通に帰ってくるのだが、待つのが面倒であったようだ。
ライコウはサボを抱えて甲板まで登る。

ライコウ「俺は無傷だが、サボを頼む!!」

ライコウは重傷のサボをコラソンに預ける。

スコッチ「こりゃあ酷いな…!!」

コラソン「おい、早く手当すんぞ!!! ロー、手伝ってくれ!!!」

サボの手当てのために船内は慌ただしくなる。
そんな中、ブラックは着替えるライコウに尋ねた。

ブラック「アンタ……あのガキ知ってんのか?」

ライコウ「まぁ…知人ではあるな。」

その時、ブラックは冷や汗を流した。
ライコウの目を見てしまったのだ……まるで全てを滅ぼそうとするほどの殺意が込められた目を。 

 

第19話:元貴族と元奴隷

偉大なる航路(グランドライン)前半・とある海域-

サボ「ん…あ…。」

少年・サボは目を覚ました。
潮の香りと波の音から、自分は船の上にいることがすぐに分かった。

サボ「あれ……ここは…?」

ヒオ「あ、起きた!」

サボ「…!?」

サボは見知らぬ者達に一斉に見つめられていた。
道化師のメイクをした男から右手が中になっている者まで、色んな人物に。

ブラック「持ち物に“サボ”と書いてあるが……これがお前の名前か?」

ブラックはそう尋ねるが、サボは「知らない」と答えた。
その後ヒオが名前を訊くと、サボは「分からない」と答えた。

コラソン「ロー、まさかだとは思うが…。」

ロー「記憶喪失だ、それも重度の。」

すると、襖を開けてライコウがコートをなびかせて現れた。

ライコウ「サボとは最初ゴア王国のある山奥で会った。」

ブラック「親がいるかもしれねェ…送り届「嫌だ、戻りたくない!!!」…!?」

ヒオ「どうして?」

サボ「分からねェ…でもそれだけは絶対に嫌だ!!」

ライコウはすぐに察した。
本能的に(・・・・)戻りたくないのだと。

コラソン「成る程……そういうことか…。」

コラソンもサボの真意を悟り、複雑な表情を浮かべる。

ブラック「どうする、副船長。」

ライコウ「そりゃあ連れてくっしょ。 戻りたくないっつってるし。」

『(軽っ……。)』

ライコウは一味においてカイドウに次ぐ実力者であり、権力者だ。
カイドウの代わりに一味を運営している彼の決定はほぼ絶対的であり、古株達も逆らうことはできない。

ライコウ「ただし、忠告はしておくぞ。」

サボ「!!」

ライコウ「俺達百獣海賊団の拠点は、選ばれし強者のみが生き残ることを許される最強の海“新世界”だ。 負ければ命までというのが海賊の世界……そして自分のケツは自分で拭くのが海賊。 それだけは忘れるな。」

サボ「っ…。」

ライコウはコートを翻してその場から去っていった。
副船長としての重い言葉に、サボは覚悟を決める。

ライコウ「(悪いなドラゴン、未来の参謀総長は俺が頂くぜ。)」

ライコウは酒を飲みながら不敵な笑みを浮かべるのだった。

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-フールシャウト島-

ライコウ達はフールシャウト島に立ち寄った。
北の海(ノースブルー)”と“東の海(イーストブルー)”を行き来した大航海は、この島を最後に終わる。
この島から出航すれば、新世界まで寄り道無しで戻るということだ。
しかし、ここで予想外の事態が発生した。

ブラック「これは一体……。」

ライコウ達の目の前に広がる光景は、死屍累々であった。
炎が燃え盛り、「何か」が焦げた臭いもする。
つい数時間前に何者かの手によって滅ぼされたようだ。

ライコウ「何があったんだ…?」

すると、1人の男性が瀕死の重傷を負って現れた。
酷い出血であり、足も失っているのでもう助からないだろう……。

「あ、あなた方は……?」

ライコウ「海賊だ、この島に立ち寄って食料と酒を分けて欲しくて来たんだが……何があった?」

「……海軍の砲撃です…!!」

ライコウ「海軍……? “バスターコール”か?」

バスターコール。
それは、海軍本部中将5人と軍艦10隻という国家戦争クラスの大戦力で無差別攻撃を行う緊急命令だ。この命令を発動できるのは海軍本部元帥と大将、或いは彼らから特例として権限を委譲された役人のみで、特定の相手や地域を殲滅するため下される。
どうやら不運にも、この島も対象となってしまったようだ。

コラソン「お…おい、待て!! この島には何もねェぞ!! センゴクさんからそう聞いてたし……。」

コラソンは海兵時代の記憶を思い出す。
この島はのどかな村や自然があり、世界政府を害する存在は全くと言っても無い。そんな島が何故こうなったか、コラソン自身も信じられない。

「……かつてのマリージョア襲撃事件で…この村の子が…!!」

ライコウ「そういうことか…要は“奴隷返せ”っつー命令を拒否したらこの様か。 どうやら天竜人の命らしいな。」

ヒオ「えっ…!?」

ブラック「何だと……!?」

ライコウ「それしか考えられねェさ……間違ってもセンゴクやコング、イリスはこんな腐ったマネ絶対にしない。」

大海賊時代の幕開けより前からセンゴク達と戦ってきたライコウは、そう断言する。

「奴隷だった子は……運良く生き延びている…彼女を助けてほしい……!!」

ライコウ「……。」

村の男はそう言い、息絶えた。

ブラック「政府もエグイことしやがる……これじゃあ、どっちが“悪”か分からねェな……。」

ライコウ「…。」

ライコウはコートをなびかせ、焼失した小さな家に向かう。
そこの地面には扉があり、気配も感じた。
ライコウは無言で扉を開け、中で隠れていた少女を見つける。
少女は目を赤くしていることから、砲撃が止むまで泣いていたことが分かる。

ライコウ「……お前、名は?」

?「…コアラ……。」

ライコウは目を細め、手を伸ばす。

ライコウ「この島は滅んだ。 お前を助ける者はもういない……そんなお前に選択肢をやる。 俺と共に来るか…ここに残るか、だ。」

それを聞いたコアラは迷うことなくライコウの手を強く握った。

ライコウ「前者を選んだか……ならば来るといい。」

ライコウはそう言って、コアラを抱えてコートを翻した。 

 

第20話:“鷹の目のミホーク”

 
前書き
ついに20話目となりました。
皆様のおかげで感想も100件に達し、お気に入り登録は247件に、総合評価は697ptとなりました。
これからもオカン副船長の応援をよろしくお願いします。 

 
世界四大剣豪。
それは、世界中の名だたる剣士達の頂点に君臨する4人の大剣豪の総称。名実共に、そして自他共に認める世界最高峰のこの4人は、やはり面子は「凄まじい」の一言に尽きる。
世界政府公認の7人の大海賊「王下七武海」の1人、“鷹の目”ジュラキュール・ミホーク。
海の皇帝「四皇」の1人、“赤髪のシャンクス”。
世界中の正義の戦力の最高峰「海軍本部」の大将で唯一の紅一点かつ悪魔の実の能力者、“黒龍”シリュー・D・イリス。
そして四皇“百獣のカイドウ”の右腕である大海賊中の大海賊、“剣帝”ライコウ。
この4人は「一度剣刃を交わせば、島1つ地図から消える」と言わしめるほどの強大な力を有している。
そして、そういうの(・・・・・)は突然訪れるのがお約束だ。





















-新世界、とある無人島-


ズゥゥ…ン!!


轟音と爆煙が砂浜を覆い尽くす。
砂煙が舞う中、十字架を模した黒い刀剣と大太刀が激突する。
使い手は、互いに世界最高峰の猛者……ミホークとライコウだ。
実はこの無人島、停泊する気など全くなかったのだ。しかし、たまたまミホークの棺船を目撃したライコウは、暇潰しとストレス発散の為にミホークと戦うことにしたのだ。
ミホークは冷静に見えて意外と好戦的で、基本的に売られた喧嘩は買うタイプなので、「暇潰しに」と快く承諾した。
そして、現在に至る。

ライコウ「ッハハ、さすがに強いなミホーク…!!」

ミホーク「貴様も例外ではなかろう。」

肉眼では捉え切れない速さで剣刃をぶつける両者。
世界最高峰同士なので、互いに一歩たりとも譲らない。

ライコウ「“零閃(ゼロせん)編隊・五機”!!」

超高速の居合“零閃(ゼロせん)”を5連続で放つライコウ。
しかしミホークは愛刀である黒刀“夜”を振るい、斬撃で相殺する。

ライコウ「クッソ、やっぱり違うな…!」

さて…剣士達の頂点に君臨する世界四大剣豪だが、よく巷で話されていることがある。
それは、「4人の中で最強は誰か」だ。
実を言うと4人は案外仲が良く、暇潰し程度でしか剣を交わせない。元々4人は剣の腕を競うという概念は無く、「とりあえず剣士として戦ったらいつの間にかそう呼ばれた」という感じだ。決闘こそ当初はやったが、いつの間にかそれすらどうでもよくなったのだから、未だにこの「最強は誰か」という議論がまだ続いているのだ。
ライコウ・シャンクス・ミホーク・イリス……この中で誰が最強かは、正直曖昧だ。
「純粋な剣技」ならばミホークが一歩リードしてるが、居合や鞘での攻撃、覇気などの「何でもアリ」なら経験値が最も高いライコウが断トツだ。
だが、覇王色を有するシャンクスも相当な腕前であり、時間を操るイリスも油断ならない大物であるのも事実だ。
最も、こんなにも化け物じみた4人が本気でぶつかったら勝負どころの問題じゃない気もするが。

ブラック「おいおい、あの人はこの島を海に沈める気か!!?」

サボ「……おっかねェ副船長だ…。」

ロー「大丈夫なのか…?」

コラソン「バスターコールが可愛く見えるぜ…。」

船から2人の“暇潰し”を鑑賞するブラック達。
轟音を上げ、衝撃波が森を薙ぎ払っていく。
斬撃の余波が海を真っ二つに割り、岩山を抉る。
災害同士がぶつかっているような光景に、ただ呆然とするばかりだ。

コアラ「……何か、吹っ切れてる気がするんだけど…。」

ブラック「日々のストレスを発散してるんだろ、どうせ。」

ライコウは、苦労人だ。
船長のカイドウを始め、曲者揃いの仲間達を統率するのは決して容易ではない。むしろ無理難題だ。
それをこなしてる上、計理とかもやっているのだ。溜まるに決まっている。

ライコウ「“奥義・船割”!!」

ライコウは愛刀の鬼王を天高く掲げ、一気に振り下ろして巨大な三日月状の斬撃をミホークに向けて放つ。
それを見たミホークは、全力で受け止める。

ミホーク「ハァッ!!!」

ミホークは力を振り絞って弾く。
弾かれた斬撃は海を割りながら岩礁に激突し、真っ二つにする。
ライコウはその隙を狙い、刀を逆手に構えた。

ライコウ「“必殺剣・激鎚(げきつい)”!!」

ミホーク「!」

ライコウは武装色の覇気を纏った刀を思いっ切り地面に突き刺す。
すると、すさまじい衝撃が周囲を襲い、不意を突かれた点もあってかミホークは吹き飛ばされてしまう。
ライコウはさらに追撃として逆手で斬撃を放つ。
しかしミホークは冷静に体勢を立て直し、ライコウの斬撃を躱し、無数の斬撃をライコウに向ける。
するとライコウは“縮地”を発動し、全ての斬撃を躱しながらミホークを一閃する。

サボ「やった!!」

ヒオ「勝ったの!?」

コアラ「決まった…!!」

ブラック「いや、ダメだ…浅い!!」

「「「!!?」」」

サボ達の期待を否定するブラック。
その証拠に、目の前のミホークは血を流しつつも平然と立っていた。

コラソン「(何て奴だ…肉眼では絶対に捉え切れない“縮地”を見切って身を引きやがった…!! イリス大将と“赤髪”も“縮地(アレ)”を見切れるってのか…!?)」

ミホークの実力に、思わず冷や汗を流すコラソン。

「じょ、冗談だろ…!?」

「今のが決まってねェなんて……!!」

「アレが“鷹の目”か……化け物かァ!?」

部下達もミホークの桁違い(チート)さに唖然とする。

ライコウ「ミホーク、提案なんだが…。」

ミホーク「何だ?」

ライコウ「この辺りでやめよっか。」

ミホーク「……そうだな。」

2人は周囲を見渡す。
鬱蒼と生い茂っていた森は根こそぎ薙ぎ払われ、聳え立っていた岩山は崩れ、台地は抉れている。
剣客としての最高峰に君臨する2人の戦いの壮絶さが直に伝わる光景だった。

ライコウ「ハハハ、これでまた島1つ消えたな。」

ライコウは顔を引き攣らせた笑みを浮かべる。

ミホーク「十分楽しんだ…俺は帰って寝るとする。」

ミホークは小型のボート“棺船”に乗り、そのまま去っていった。

ライコウ「(そういえば、ミホークって新世界でもあの棺船(ボート)なんだよな……。)」

よくよく考えてみれば、ミホークは航海能力も世界最強クラスである可能性が極めて高い。小型のボートである“棺船”だけで「世界一危険な海」である偉大なる航路(グランドライン)を平然と横断し、なおかつ特にこれと言って航海士を初めとする仲間が存在しているという話も無い。

ライコウ「ミホーク、ハンパねェ……。」

自分と肩を並べる大剣豪のあまりにも意外な航海能力の高さに、思わずそう呟くライコウであった。 

 

第21話:標的

 
前書き
ワンピースの原作最新話で、ウルージさんが大健闘!!ウルージさん最強説は揺るぎないようですね。
こちらでもウルージさんはそれなりの見せ場を作ってライコウと接触させるつもりですので、お楽しみに。 

 
-ワノ国-

ついに帰還を果たしたライコウ達は、さっそく新しい仲間をカイドウに会わせた。
しかし……。

カイドウ「コイツらか…。」

「「「「(こ…怖過ぎる……!!!)」」」」

ただでさえ極めて荒々しい外見のカイドウ。
4人はあまりの迫力と「恐ろしい」の一言しか表せないであろう第一印象に気圧され、今にも泣きそうである。

ライコウ「心配すんな、4人中2人は能力者だ。 超人(パラミシア)系だがな。」

カイドウ「……このピエロみてェな奴、何者だ?」

コラソン「はひっ!?」

カイドウの一言に、鳥肌が一斉に立つコラソン。

ライコウ「センゴクの元部下のロシナンテだ。」

カイドウ「!! あのマリモ野郎のか……。」

カイドウはコラソンの顔を興味深そうに見る。
センゴクとは長年死闘を繰り広げた間柄であるカイドウにとって、意外な人物が仲間となったと言える。
だが、コラソンにとっては脅してるように見える。

コラソン「(ロー!! ヘルプ!! 俺小便ちびりそう!!)」

ロー「(それぐらい我慢しろよコラさん!! 大人だろ!?)」

コラソン「(いくら何でも四皇(アレ)は反則だろ!! 海軍顔負けの尋問だぞコレ!!)」

コラソンは某銀髪侍並みのビビリ方で汗だくになる。
傍にいるコアラとサボもかなり震えている。

カイドウ「何の能力だ?」

ライコウ「“ナギナギの実”という音を完全に遮断する能力だ。 侵入や暗殺などのダーティな行動には抜群の相性だ。」

カイドウ「音を出さねェって訳か。」

ライコウ「ザックリ言うとな。」

カイドウ「残りのガキ共は?」

ライコウ「隈あるのが“オペオペの実”の能力者、残り2人は俺が連れてきた。」

ライコウが連れてきたことを知ると、カイドウは興味深そうな表情(と言っても、眉間にしわが寄っているが)を見せる。

カイドウ「ウオロロロロ……まぁお前が連れてきたんだ、ハズレはねェだろうよ。」

ライコウ「ハズレても一から英才教育して貴重な戦力にするさ。」

カイドウ「ウオロロロロ!! 違ェねェ。」

ライコウは「人を見る目」が違う。
見所が1つでもあれば誰でも一味に迎え、重宝する。副船長としての「要領の良さ」とオカン気質ならではの「面倒見の良さ」により、多くの強力な部下を育ててきた。
つまり、ライコウに「ハズレ」という言葉は存在しないのだ。

ライコウ「そういうことだ……この4人を迎えて文句は無いよな?」

カイドウ「ウオロロロロ……!! 愚問だ。」

カイドウは4人を百獣海賊団の一員として迎えた。

ライコウ「さて、今日から新たな人生のスタートだ。 期待してるぞ。」

「「「「は…はい……。」」」」

ライコウ「(スゴイ震えてる……大丈夫か…?)」

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その日の夜、カイドウの部屋に幹部達は揃っていた。
夜中に幹部達が集まる時は、重大な事態が発覚した時。それゆえ、情報が漏れるのを防ぐため皆が寝静まった時に集められるのだ。

ライコウ「今回の航海で、あることが分かった。」

カイドウ「何だ?」

ライコウ「“ドンキホーテファミリー”を知ってるか?」

カイドウ「!」

ジャック「……最近名を上げてきた連中なんで?」

ライコウ「あぁ…。」

ライコウは盃の酒を一気飲みにする。
ドンキホーテファミリーの噂は、どうやらカイドウ達にも届いているようだ。

ライコウ「ドンキホーテファミリーと交戦した時、偶然こんなものを手に入れた。」

ライコウが取り出したのは、一枚の手紙。
そこには、「--・-・ ・-・-・ ・---・ ・-・・ ・- -・-・ ・-・-- --・-・ ・・ -・--- -・--・ -・・- ・・-・・ --・・- ・・ ・--・ ・・・- ・・ -・・- - ・・-・・ -・・-・ ・・-・・ ・・ ・・- -・・・- ・- ・--- - ---・- --・・- ・・ ・-・-・- ---- ・・-- ・---・ ・-・・ ・- ・--- ---- -・- ---・- --・-・ ・・ -・-・・ ・・ -- ・・- ・--- --・-・ -・ ・- ・-・-・- ・---・ ・・ --・・- -・-・・ -- ・・- --・ -- ・・・- --・- ・-・・ ・・ ・・-」と書かれていた。

ジャック「何だこりゃあ…?」

何かの文章らしいが、全く読めない。
しかし、ライコウは「既に解読に成功した」という。

ライコウ「ファミリーの最高幹部・トレーボルが落とした手紙だ。 ブラック、お前なら分かるだろう。」

その文章を見たブラックは、目を見開いた。

ブラック「まさか……“モールス信号”か!!?」

モールス信号。
“モールス符号”という、電信で用いられている可変長符号化された文字コードを使った信号で、短い符号と長い符号だけで文字や数字を表すシンプルな通信手段だ。

ライコウ「この紙はモールス符号で書かれた暗号文。 解読したらとんでもない内容だったよ。」

カイドウ「……内容は?」

ライコウ「“しんせかいにてじえるまとびつぐまむともどうめいをむすび、このせかいをこわすじぎようをしたい、ぜひきようりよくねがう”。 分かり易く言えば……“新世界にてジェルマとビッグ・マムとも同盟を結び、この世界を壊す事業をしたい、ぜひ協力願う”だ。」

「「「!!?」」」

四皇である女海賊“ビッグ・マム”シャーロット・リンリンとジェルマ王国と結んでこの世界を破壊するような計画をしようという内容だった。
その衝撃的な内容に、目を見開く3人。

ライコウ「……ドフラミンゴが何をするか知らんが、恐らくドフラミンゴは“神”になろうとしてるかもしれないな。」

カイドウ「“神”…だと?」

ライコウ「元天竜人な上、オペオペの実で永遠に命を与える“不老手術”を自らに施そうとしたんだ……それぐらいのデカイことやる気だったと思う。」

ライコウの顔が険しくなっていく。

ジャック「海賊が政府と癒着……か。」

ライコウ「もっとデカイことやるつもりだろう……その前に潰す。」

しかし、ブラックはそこで異議を唱えた。

ブラック「……放っといてもいいだろ、俺達に関係ないんだしよ。」

ライコウ「……ヒオの正体、覚えてるか?」

「「「!」」」

ライコウはヒオの正体を口にした。
ヒオはロリシカ王国の元王女で、全世界の軍事バランスに影響をもたらす“ロリシカ鉱石”の在り処を知っている。
ジェルマやドフラミンゴをはじめとした大物達が見逃す筈がない。何れ結託して百獣海賊団を滅ぼすという展開(シナリオ)も0%とは言い切れない。

カイドウ「……。」

ライコウ「ウチに危害加える奴は滅ぼさないとな……俺達は“海の皇帝”だ。」

ブラック「副船長……。」

ライコウ「俺だけで背負うさ……お前らに迷惑かけたくない。」

ライコウは「自分だけの問題」として丸く収めようとするが……。

カイドウ「ライコウっ!!!」

ライコウ「!!?」

カイドウ「随分と俺を見くびってねェか? 俺がてめェ1人に全部背負わせるほど筋のねェ海賊(やろう)に成り下がったと思ってんのか?」

ライコウ「カイドウ……。」

カイドウはライコウを睨む。

カイドウ「売っても買ってもねェ喧嘩に部下が巻き込まれたら、俺も黙っちゃいねェ。」

ライコウ「……全く、お前という奴は。」

ライコウは呆れながらも微笑む。

カイドウ「俺達の最大の敵は“ジェルマ”、“ドフラミンゴ”、“四皇”だ…全員まとめて滅ぼすぞ!!」

ブラック「船長、“白ひげ”のじいさんと“赤髪”は別だろ!!」

百獣海賊団、標的を定めて活動することを決意。 

 

第22話:3人のトレーニング風景

-朝-

ロー・サボ・コアラの3人を世話することにしたライコウ。
早速行ったのは、戦闘訓練だった。

ライコウ「実戦経験はあるだろうが…俺達にとっちゃあ赤子同然。 そういう訳だから扱くことにする。」

ロー「茶を啜りながら言われても説得力に欠ける。」

茶を啜りながら言うライコウにローが的確にツッコミを入れる。
ライコウは顔を引き攣らせながら「すまん」という。

ライコウ「とりあえず……一応ここにあるだけの武器を揃えといた。 何があってるのかをまず見つけな。」

ライコウは大きな木箱の蓋を開け、大量の武器を見せる。
刀、剣、槍、薙刀、棍棒、トンファー、銃、槌、鉄パイプ……様々な武器が用意されていた。
それを見て、真っ先に武器を決めて取ったのはサボだった。武器は……鉄パイプだ。

ライコウ「(頭では失っても、身体に染みついた記憶は失わないか…!)」

記憶を失う前は、ルフィとエースと共に鉄パイプ一丁で猛獣達と互角に戦ってきたサボ。悪ガキ時代が功を奏したようだ。
あえて多節棍などにしなかったのは、身体が一番使い慣れているからであろう。

ライコウ「ローは?」

ロー「これにする。」

ローが手にしたのは、刀だった。
まぁ、オペオペの実は刀剣じゃないとできない技も多いので、「当然だな」とライコウは感じた。
そしてコアラは……。

ライコウ「トンファー、だと……!?」

まさかのトンファー。
ライコウはあまりにも意外すぎる展開にビックリする。

ライコウ「(待て待て待て待て!! 確か原作は魚人空手だったよな!!? 素手で来ると思ってたが、まさか同じ至近距離打撃でもトンファーで来たか!!)」

考えてみれば、原作にてコアラが魚人空手を会得したのは、ハックに連れられ革命軍に加入した際だ。
しかし、今のコアラは四皇の一角・百獣海賊団の者だ。ライコウが彼女を引き取ったのが原因だ。

ライコウ「(ま…まぁ、副船長だしな……責任は取ろう。 うん…。)」

最終的には、サボは鉄パイプ、ローは刀、コアラはトンファーとなった。

ライコウ「よし…やるか。」

こうして3人はライコウの指導を受け始めるのだった。

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-3日後-

この日のトレーニングはパルクール。
フリーランニングともいい、走る・跳ぶ・登るなど、主に“移動”という動作を基本に、より自然な心身の強さを獲得する方法だ。
因みにこの日の監督者は最近5億越えの賞金首になったブラックだ。

ライコウ「どうだ? 3人は。」

ブラック「副船長。」

ブラックは、サボ達の練習風景を酒を飲みながらライコウに報告する。

ブラック「3人共中々のセンスだ。 特にあの記憶喪失のガキ……記憶を無くしても、身体に染みついたものは忘れていないようだ。 どこで何をしていたか…明らかにケンカ慣れした動きをしている。 かなりの悪ガキだったのかもしれないぞ。」

ライコウ「だろうな……。」

サボの身軽な動きに舌を巻く2人。
奴隷だったコアラや元々医者を目指してたローと違い、幼少期から荒くれ者や野獣相手に常に喧嘩をしていたサボは、喧嘩の腕や身体能力は3人の中で断トツだった。

ライコウ「戦闘面ではサボが断トツだが、ローもコアラも海賊団に身を置いた時期がある。 期待できそうだ。」

すると、汗だくのコラソンが現れブラックの隣でへ垂れ込んだ。

コラソン「ハァ…ハァ…疲れた……。」

ライコウ「何だ、参謀総長の役を担う者の割には随分バテてるじゃないか。」

コラソン「バテるに決まっているだろ……最近ろくに身体を動かしてねェからな…。」

コラソンは経歴と実力から、ライコウから重大な仕事・作戦を取りまとめる「参謀部」のトップである参謀総長の役を任じられた。
コラソンは事実上の百獣海賊団最高幹部なので、ライコウは「最高幹部はもっと強くないと」と言う理由でコラソン対マンモス師団という絶望的な組手をさせられた。
おかげでボロボロである。

ライコウ「そのままだとローに追い抜かれるぞ?」

コラソン「わ…分かってるっての…!!」

コラソンは身体に鞭を打ち、マンモス師団に立ち向かう。

ブラック「アンタ、ホント容赦ねェよな……。」

ライコウ「この一味は死なれちゃ困る人間ばっかだからな。」

そう言って陽気に笑うライコウ。
ブラックもそれに釣られ、笑みを浮かべる。
その時、ジャックが新聞を片手に現れた。

ジャック「ライコウさん、この新聞を見てくれ。」

ライコウ「?」

ジャックから新聞を受け取るライコウ。
そして、ライコウは目を見開いた。

ライコウ「“リク王の凶行、ドフラミンゴが終結”だと…!?」

その記事は、ドレスローザ王国であった大事件の見出しだった。

ジャック「国王のリク・ドルド3世が狂乱したらしいようで、フラミンゴ野郎が国を救ったようですが…。」

ライコウ「リク王はドフラミンゴに操られたんだな……厄介なことになったな。」

ライコウは「参ったな…」と頭を掻く。
ドフラミンゴは各国の天竜人への貢ぎ金「天上金」の輸送船に手をつけ、世界政府を脅し、王下七武海に加盟した。
王下七武海は政府の籠を受けているようなものだ、ドフラミンゴは立場を利用して武器の密貿易でもするつもりだろう。これにジェルマやビッグ・マム海賊団が目を付けられたら最悪な展開になる。

ライコウ「(あのババアとビジネスやられたら厄介なんだよな……つっても、何の因縁もねェ国を滅ぼすのはアレだしな……クソ、考えやがったな…。)」

ライコウは苦虫を噛み潰したような顔をする。

ライコウ「コラソンは知ってんのか?」

ジャック「……。」

無言で肯定するジャック。
ライコウは「そうか」と呟き、新聞を()じる。

ライコウ「そう言えば、そろそろ納期の頃だな。」

ブラック「あぁ、確かミストリア島のな。」

ライコウ「明日だった気がすんだよな……。」

ライコウは「明日はコラソンとローでも連れて行ってみるか」と呟きながら戻っていった。
だが、その航海の中で予想外の事件に巻き込まれるのはまだ知る由も無かった。 

 

第23話:コラソンの恩返し・前編

-新世界、ミストリア島-

ライコウ「今週の酒、確かに頂いたよ。」

「ぜひ、お納めください。 廃れたこの島の活気を取り戻したあなた方には多大な恩義があるゆえ……。」

ライコウ「そんなに畏まるなっての。」

ミストリア島の住民から大量の酒を受け取るライコウ達。
百獣海賊団は、ナワバリを護る代わりに大量の酒を納めることを条件としている。
無類の酒好きであるカイドウは、ほぼ飲んだくれ状態。酒が切れたら「酒取って来い」と暴れる始末だからだ。
因みにライコウも「酒貰ってこい」とナワバリである冬島まで金棒で殴り飛ばされたこともある(その後は酒持ってボート1隻で帰ってきた)。

ライコウ「それじゃあ、またいつかだな。 コラソン、ロー。 持って帰るぞ。」

コラソン「待て待て待て待て!! この量を船に積めってのか!?」

ライコウ「? そうだが。」

コラソン「無理だろ絶対!! 10トンはあるぞ!!」

ライコウ「修行の一環だ、それぐらい持ってけっての。」

コラソンは放心状態になる。
そう…“大量の酒”とは、常人とほぼ同じサイズの酒瓶・瓢箪がたくさんあることなのだ。酒豪であるカイドウとライコウに合わせており、中身は本醸造酒や純米酒、吟醸酒などの様々な清酒が入っている。
コラソンは海兵時代もドンキホーテファミリー潜伏時代も赤ワインなどをよく口にしたが、ここまでの量の日本酒を消費する一味とは思わなかったようだ。

ライコウ「うし、積むぞ。」

「「おぅ……。」」

ズルズルと引っ張りながら酒を積んでいくコラソンとロー。
対するライコウは片手でヒョイヒョイと船に放り込んでいく。

ライコウ「俺みたいに投げれば、効率よく積めるぞ。」

「「出来るかァ!!! 肩外れるわァァ!!!」」

ライコウの一言に声を揃えてツッコミを入れる2人。
「何だかんだ息が合うんだな」と思いながらコラソンとローを見つめるライコウだった。

















-数時間後-

ライコウ「バテすぎだろ、2人共。」

「「アンタが人外なんだよ……!!!」」

ワノ国へ帰還する3人。
息を荒くする2人に呆れるライコウだが、コラソンとローから見ればただの化け物。
次元が違うため、ライコウとの間に妙な違和感が生じているのだ。

ライコウ「まぁ、一応今日のノルマは達成したからな。 休んでいいぞ。」

コラソン「言われなくともするさ……。」

コラソンはローと一緒に大の字で横になる。

ライコウ「さてと、今日の晩飯どうするかな…………ん?」

今日の夕飯を考えていると、ふと何かが目に飛び込んだ。
……海軍の演習艦だ。

ライコウ「(海軍の演習艦……乗ってるのはゼファーか?)」

ゼファー。それは、伝説の海軍大将“黒腕のゼファー”を差し、今なお語られている海軍の生ける伝説。
弱冠38歳で最高戦力である大将にまで上り詰め、現役を退いた後は教官として後輩の指導に力を入れ、今では「全ての海兵を育てた教官(おとこ)」と称されている偉大なる(つわもの)だ。

ライコウ「コラソン、ゼファーの船だぞ。」

コラソン「本当か!!?」

先程までバテていたコラソンは飛び起きる。
コラソンもまた、ゼファーに育てられた海兵の1人。多大なる恩義がある。

コラソン「っ……。」

ライコウ「センゴクから話ぐらい聞いてると思うがな…。」

落ち込むコラソンを宥めるライコウ。
1人の少年を救うのに、コラソンは海賊となった(正確に言えばライコウに助けられたから海賊になった)。
「海賊となった自分を、先生はどう思うのか」……コラソンはそれが気になって仕方がないのだ。

ライコウ「何なら聞いて確かめるか? いくらゼファーとて、四皇と喧嘩する気はねェだろうしさ。」


ボゴォォン!!


「「「!!?」」」

突如、演習艦から轟音が響いた。
爆発などの事故ではない……明らかに何者かの襲撃だ。

ライコウ「(ウソ、これまさかZイベント!!?)」

ライコウは前世の記憶を思い出した。
そう……ゼファーは演習艦襲撃事件で生徒達を大勢失い、その後その襲撃犯が七武海入りしたことで世界政府や海軍に絶望し、自分を支持する海兵達を引き連れて海軍を去ったのだ。

ライコウ「(まさかこのタイミングとはな……。)」

すると、コラソンがライコウに掴みかかった。

コラソン「おい副船長!! 先生を助けてくれ!! このままじゃ演習艦の皆が殺されちまう!!!」

ライコウ「……コラソン、俺達は海賊だ。 お前のかつての師の不運には同情するが、俺達が何故加担する必要がある? 自分の立場を知れ。」

ライコウはあえてコラソンに冷たい態度をとる。
ライコウとて、正直放っておくわけにもいかない。だが海賊が海軍を助けたら、教え子の為に命懸けで襲撃犯と戦ってるであろうゼファーの正義や誇りを汚す。

コラソン「確かにアンタの言う通りだ……だが!! ここで海軍(むこう)に恩の1つくらい返さねェと、一生悔いが残る!!!!」

コラソンはライコウにそう叫ぶ。
今まで見たことない姿に、動揺するロー。

ライコウ「……ったく、これだから元海兵は…。」

ライコウはそう言って微笑み、刀を抜いた。

ライコウ「“副船長命令”だ、演習艦に乗り込んで襲撃犯を始末するぞ。」

ライコウ、動く。 

 

第24話:コラソンの恩返し・後編

 
前書き
ゼファーの右腕を斬り落とした海賊は新七武海のエドワード・ウィーブルである可能性が一番高いそうですね。
この物語では襲撃犯はウィーブルとミス・バッキンにします。そして黒幕もいるという設定にします。
どうぞお楽しみに。 

 
襲撃される演習艦。
迎撃するは、元海軍大将ゼファー。
しかし、六式や武装色の覇気により高い身体能力を有する彼も“老い”には完全に抗うことは出来ず、徐々に押され始めていた。

ゼファー「ハァ…ハァ……!!」

ゼファーは死力を尽くし、一対一(サシ)で戦う。
かつて彼は、自分に恨みを持つ海賊に家族を殺害された。悲しみと憎しみを押し殺して“正義”を貫き、教官として海軍を支えることを決意した。
「あの悲劇を、2度も起こしたくない」……それがゼファーを動かしていた。

?「さぁ、止めだよウィーブル!! その老いぼれに一太刀浴びせるんだ!!」

ウィーブル「分かったよ、()ーたん!!」

サングラスをかけヒョウ柄のコートを羽織った老婆の声が、甲板に響く。
老婆の名はミス・バッキン。何故か知らないが「白ひげの愛人」を自称する謎の人物だ。
そしてゼファーと戦闘しているのが、彼女の子であるエドワード・ウィーブル。三日月型の口ひげを携え三つ編みを2つのおさげにした巨漢で薙刀を手にした海賊だ。

ウィーブル「ふんがー!!」


ブォン!!


ゼファー「ぐぉ!」

ウィーブルの一撃が、ゼファーを襲う。
ゼファーは紙一重で躱すが、その破壊力はすさまじくケガを負っている軍人達を吹き飛ばす。

バッキン「往生際が悪いね……仕方ない…ウィーブル!! この軍艦を吹き飛ばすんだ!!」

バッキンはそう言って退却の準備をする。
その時だった。

ライコウ「はいはい、そこまでだ。」

『!!?』

ゼファー「ラ、ライコウ……!?」

コートをなびかせてウィーブルの手を掴むライコウ。
突然現れた大海賊に、騒然となる。

ウィーブル「……お前、誰?」

ライコウ「俺が言いたいよ、この野郎。」

そう言ってライコウは、左手の人差し指と中指、薬指と小指を合わせる。
そして武装色の覇気で硬化させ、ウィーブルに掌底攻撃を見舞った。

ライコウ「“覇王拳(はおうけん)竜王之爪(りゅうおうのつめ)”!!」


ドゴォン!!


ウィーブル「あああああ!!?」

身長345cmのライコウよりも大きな体躯のウィーブルが、成す術も無く吹き飛ばされ壁に叩きつけられる。
ウィーブルは激痛に悶えている。

バッキン「ウィーブル!!? アンタ、よくもやってくれたね!!!」

ウィーブルに痛手を負わせたライコウに激怒し、コートから銃を取り出すバッキン。
しかし、彼女の背後でカチリという音が。

コラソン「動くな。」

バッキン「!!? ア、アンタ…いつの間に……!!?」

黒いコートをなびかせ、コラソンがバッキンの背後に回っていた。
コラソンは煙草の紫煙を燻らせ、バッキンの声を掛ける。

コラソン「誰の差し金だ? ドフィか?」

バッキン「それは教えないね、プライバシーだ!!」

すると、バッキンは老婆とは思えぬ身のこなしでコラソンの前から姿を消し、ウィーブルの傍に降り立った。

コラソン「(な、何つー身のこなしだ!! あの婆さん、只者じゃねェぞ!!)」

バッキン「ウィーブル!! ここは退くよ!!」

ウィーブル「は~い…。」

杖でビシバシとウィーブルを叩くバッキン。
ウィーブルは腹を撫でながら涙目で立ち上がる。

バッキン「思わぬ邪魔が入ったモンだ。 まぁ、ウィーブルの初陣にはいい成果だったよ。 四皇カイドウの右腕にも会えたしね!!」

ライコウ「……。」

バッキン「行くよ、ウィーブル!!」

バッキンはそう言い、ウィーブルを連れて小船で去っていった。

コラソン「待ちやがれ!!」

ライコウ「いや、深追いしなくていい……またいつか会って戦うだろうし。」

「それよりも……」と呟きながら、ライコウはゼファー達に目を配る。
今のゼファー達は、かなりの重傷だ。
幸い一命を取り留めてはいるらしいが、適切な処置を施さねば危険だ。

コラソン「ロー、お前なら出来るだろ?」

ロー「ある程度はな。 でも内部損傷している海兵(やつ)もいるから、優先順位は変える。」

ライコウ「刀傷や骨折、銃創とかの処置は俺も経験している。 手分けしてやるぞ。」

3人は話し合いながら負傷者の手当てを始める。
すると、ゼファーが声を掛けた。

ゼファー「ライコウ、何故助けた?」

ライコウ「俺に言うな、文句はコラソンに言ってくれ。」

ゼファーは、コラソンに目を向ける。
そして、笑いながらゼファーは再び口を開いた。

ゼファー「ロシナンテ……本当に海賊になったんだな…。」

コラソン「先生……。」

ゼファー「センゴクから全て聞いた。 “珀鉛病の少年を救うために政府を敵に回した”とな。」

それを聞き、俯くコラソン。
元々オペオペの実は、政府が受け取る手筈だった。だが当時海兵だったコラソンは政府やドフラミンゴより先に盗み出し、ローに食わせた。
これが仇となり、コラソンは海軍に入れなくなったのだ。元々辞め()るつもりだったが。

ゼファー「小せェ命の為に世界を敵に回す男……カッコいいじゃねェか。」

コラソン「……!!」

ライコウ「えいっ。」


ギリリリリ…


ゼファー「イデデデデデ!!!」

傷口を思いっ切り抓るライコウ。
さすがのゼファーもこれは効いたらしく、「離せ若造!!」と叫ぶ。

ライコウ「アンタも重傷なんだぞ、ゼファー。 生徒を思いやるのも結構だが、てめェがくたばったら元も子もねェだろうが。 つーか俺は反対したんだぜ? 海賊がここで海軍助けたら、生徒のために戦ってるアンタの誇りに泥を塗っちまうからって。 そしたらあのバカ言うこと聞かなくてよ。」

ロー「コラさんを悪く言うなよ副船長!!」

ライコウ「この場にカイドウいたら“てめェでケジメ付けるのが筋、そこで死んだらそれまでのこと”で終わるんだぞ? 副船長の慈悲に感謝してもらいたいモンだ。」

その時だった。
ふと、軍艦が一隻向かってきた。
その船首には、見慣れた姿が。

コラソン「イ、イリス大将……!!」

ライコウ「う~わ、最悪。」

「さすが海軍、空気読まない」と呟きながらも、ライコウは笑みを浮かべる。
ふと、コラソンは何かを思い出し、懐から酒瓶を出してゼファーに投げ渡した。

コラソン「好きだったでしょう?」

ゼファー「あぁ、一番カッコイイ酒だ。」

コラソン「センゴクさんにはよろしく言っといてください。 “あなたには感謝してます”と。」

ゼファー「今回だけは世話になったな……。」

コラソンは背を向けながらも、ゼファーの言葉を聞く。
プルプルと震え、涙を流しながら。

ライコウ「いくぞ、イリスに追撃されんようにな。」

ライコウはローとコラソンを連れて去っていった。

ゼファー「(相変わらずおかしな奴だ…ライコウめ。)」

ゼファーは呆れたような笑みを浮かべながら、ライコウ達を見据える。
後にイリスから「何故ライコウ達が?」という質問に対して「アイツの部下の恩返し」と答えたのは言うまでもない。 

 

第25話:ライコウ、恋愛の時?

 
前書き
やっとあのキャラを出せます!!
今回はシリアスとギャグを織り交ぜてるはずです。 

 
それは、いつもの日常のはずだった。
雪が降る中、愛刀・鬼王で素振りをするライコウは、海岸の方で騒いでいる部下の声を聞いた。

「カイドウ様ァ~~~!! ライコウ様ァ~~~!!」

「遭難者だ!! しかも女だ!!!」

「かなりの別嬪だァ~~~!!!」

「それどうでもいいだろ!!」

どうやら遭難者のようだ。
新世界の荒れ狂う海を漂い、ワノ国に流れ着いたらしく、「運が良い奴」と思いながら駆けつけると……。

ライコウ「……マジか…!?」

ライコウは思わずそう呟いてしまった。
彼の目の前にいるのは、瓶底眼鏡をかけ、緑色の長髪が特徴の女性だった。
彼女の事は、ライコウは知っている。

ライコウ「(何でモネがここにいるーーーーーっ!!?)」

そう……あのモネだったのだ。
相手の実力を察する能力に長けた、静かでクールなモネである。前世のライコウが最も好きなタイプの女性だったモネである。

ライコウ「(待て待て待て、どういうことだ!? モネはドンキホーテファミリーじゃないのか!?)」

前世の記憶を一生懸命に掘り起こすライコウ。
彼女は、ドンキホーテファミリーの幹部だった。「ONE PIECE史上最凶の妹」であるシュガーと共に、ドフラミンゴの部下になってる筈だ。
何故モネがこんなところにいるのかは知らないが……とりあえずライコウは部下に命じた。

ライコウ「凍傷と出血が酷い……早く手当しろ!!」

『は、はい!!』

医務室へ慌てて連れて行く部下達。
中からは「ローを呼べ!!」とか「お湯用意しろ!!」とか「参謀総長は手を貸さなくていいから!!」と言う声が響き、切羽詰まった様子であることが分かる。
何故かコラソンが手伝おうとしてるところを止められるような声がしたが……。

ライコウ「(おいおいおいおい、何だよこの展開!!? アレか? 俺が転生して色々暴れたからか!!?)」

心の中で激しく動揺するライコウ。
自らの心の動揺を顔に出さないのは、さすがと言ったところだろう。

ライコウ「事情を詳しく知る必要があるな……。」

ライコウはモネの回復を待ちつつ、未だ動揺している心を落ち着かせようとするのだった。

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-数時間後-

ライコウ「……気分はどうだ?」

モネ「えェ……おかげで命拾いしたわ……。」

傷がまだ生々しいモネと会話を交わすライコウ。
かなりの重傷らしく、ローは「最悪、腕と足を変えなきゃならない状態になる」と言っていた。

ライコウ「一応訊くが、名は?」

モネ「元ドンキホーテファミリーのモネよ……よろしく。」

ライコウ「()……だと?」

ライコウはモネの言葉に引っ掛かった。
モネは原作同様、ドフラミンゴに対し絶対的な服従心を持っているはず。なのに何故ファミリーから離反したのか。
相当の事情があると踏んだライコウは、深く追及することにした。

ライコウ「それはどういうことだ? ドフラミンゴは凶悪そのものだが、仲間に対しては情には厚い筈じゃないのか?」

ドフラミンゴはコラソンの様な「裏切り」こそ許さないが、仲間の失態は自分の采配ミスとして一切咎めず、人質にされればその残虐性は影を潜めてあっさり追撃も停止する一面を持ち合わせている。
モネが彼を裏切ったとは、到底思えないのだ。

モネ「……全ては、ビッグ・マムとの密約だったわ…。」

ライコウ「何!?」

ビッグ・マムが関わっていることに驚愕するライコウ。
どうやらドフラミンゴは、ビッグ・マム海賊団と取引をするつもりのようだ。

モネ「若様は……いや、ドフラミンゴは自らの勢力拡大のために、ビッグ・マムと接触したの。」

ビッグ・マムは話の分かる人物とは言い難い性格だ。
お菓子の納期が遅れたために国をも滅ぼすような凶悪性がバリバリだ。それを知っててビッグ・マムと直接交渉しに行ったとなると、「この俺を相手に対等に取引しようとは、気に入ったよ」という雰囲気に持ち込もうとしたのだろう。

ライコウ「……成功したのか?」

モネ「えェ……その代わり、惨い条件を突き付けたわ…。」

ライコウ「?」

モネ「“モネを消し、妹のシュガーを寄越せ”だったわ……。」

ライコウ「なっ…!」

ビッグ・マムがドフラミンゴと取引する気になったのは、妹・シュガーが気に入ったかららしい。
シュガーは、ホビホビの実の能力者で、触れた相手をおもちゃにすることが出来る。その能力が、ビッグ・マムの心を揺さぶったらしい。

ライコウ「(成る程、おもちゃと人間が仲良く暮らせる国づくりでもしようって訳か、あのババア……。)」

ビッグ・マムの思惑を察知するライコウ。

ライコウ「だが何故“姉を消せ”なんて命令を?」

モネ「……裏切らないための誓い、だと…。」

ライコウ「成る程……だがさすがのドフラミンゴも迷ったんじゃないか?」

モネ「いいえ……躊躇しなかったわ…。」

ライコウ「っ……!?」

ドフラミンゴの意外な判断に、戸惑うライコウ。
コラソンが依然ドフラミンゴを“破戒の申し子”や“狂気の海賊”と称している点も含め、どこか納得もしてしまうが。

モネ「厳密に言えば、トレーボルの助言で決まったわ……。」

ライコウ「(あの鼻水野郎……。)」

ライコウは「トレーボルが唆した可能性もある」と解釈した。

ライコウ「シュガーは?」

モネ「分からないわ……ドフラミンゴの元にいると思うけど…少なくとも、私のことを忘れてると思う。 ビッグ・マムのことなら尚更よ…。」

ライコウ「……何かすまんな、嫌なこと思い出させちまったな…。」

モネ「構わないわ……あなたのように優しく接する人は初めてだもの…。」

ライコウ「っ……///」

モネの笑顔に、一瞬顔が真っ赤になりそうな感じがするライコウ。

ライコウ「(ヤバイヤバイヤバイ!! アレ反則だろ!!!)」

モネの不意打ち(無意識)にやられかける。
今まで恋愛感情とは無縁だったライコウは、色んな意味でピンチを迎える。

ライコウ「……身寄りがねェんだろ? ウチで幹部として迎えるつもりだが。」

モネ「それって、遠回しのプロポーズ?」

ライコウ「んなっ!?」

顔をボンッと赤くするライコウ。
モネはクスクスと笑いながらライコウを見据える。

モネ「でも……この海賊団にいた方が確かに安全かもしれない。 これからお世話になるわ、アナタ♪」

ライコウ「や、やめろモネ!! そ、そこまでの関係じゃないだろう今は…///」

モネ「……その内イイ関係になると?」

ライコウ「(ヤバイ、本音出ちゃった……!!)」

一方、ライコウとモネのやり取りを隠れてみていたブラック達は……。

「マジかよ、信じらんねェ!!」

「航海総長、何か腹立ちます!!」

「クソォ、サボとコアラが仲良いのは知ってたが、まさかこのタイミングで副船長が裏切るなんて……!!」

ブラック「いいんじゃないのか? いい加減女と関係作った方がいい年なんだぞ副船長は。」

ジャック「だったらお前ら、あの女を横取りすりゃあいいじゃねェか。」

『(出来ないって!!!)』

ジャックの無謀とも言える発言に、心の声でツッコミを炸裂する部下達。
そもそも海賊団屈指の武闘派であるジャックですらできないマネを成功できる訳がない。船長のカイドウなら可能性は高いが、それ以外は全員皆無。命がどれほどあっても足りない。

ブラック「まぁ、いいんじゃねェの? あの2人冷静な性格だから気が合うだろ。」

こうしてモネが仲間に入ることとなった。
この後ブラック達はライコウに呼び出されるのだが……その後どうなったかは不明。 

 

第26話:本当にキレる奴は意外と無口

それは、シープスヘッドの何気ない一言で始まった。

シープスヘッド「そう言えば……ライコウ様がブチギレたところって、見たことないよな。」

『!!!』

ふと口からこぼれた、心からの本音。
いつもはオカン気質で要領も良く、何かと一味の人間全員を支えているライコウ。
彼は時々怒る時もあるが……本当にブチギレた時の(・・・・・・・・・・)ライコウを、周りは知らないのだ。

「……確かに気になる。」

「つっても、あのライコウ様がブチギレる時って相当な事態だろ。」

シープスヘッド「俺だって怒らせるわけいかねェよ。 でも気になるじゃん。」

話はヒートアップする。
カイドウみたいに実力行使なのか、それとも精神的に追い詰めるのか……オカン気質なため、「アンタ達何やってんの!!!」という怒り方かもしれない。
部下達の妄想が広がっていく中、1人の人物が介入した。

ブラック「お前ら、何を話し合ってる?」

「航海総長!!」

一味の最高幹部・ブラックがコートをなびかせて現れる。
部下達の話が気になったようだ。

シープスヘッド「ブラック様、実は……。」

シープスヘッドは、話の話題を説明する。

ブラック「……副船長がブチギレた瞬間、か…。 一度だけ見たよ。」

『!!』

ブラックの言葉に、目を見開く一同。
やはりライコウ(かれ)と付き合いの長い者達は見たことがあるようだ。

ブラック「大海賊時代開幕直後……百獣海賊団のナワバリが指で数える程度しかなかった頃の話だ。」
















-大海賊時代開幕直後、新世界-

それは、突然の凶報だった。

カイドウ「ウチの船が2隻、海軍に潰されただと…!?」

「は……はい…。」

カイドウは眉間にしわを寄せ、部下の報告を聞く。
しかしカイドウ達は、仕方のない事だと思った。力の無い海賊は、海軍(せいぎ)に潰される時が来る。それが早かった…いや、たまたま百獣海賊団の船が標的となっただけだ。
ブラックが「後で弔わなきゃな……」と呟いたが、その後カイドウは訊いた。

カイドウ「何故潰された? そこまで弱ェ奴らじゃねェだろ。」

「そ……それが…。」

ジャック「どうした?」

顔を青褪め震える部下の様子に、ジャックは尋ねる。
そして、部下から衝撃の一言が。

「部下の1人が……突然海軍に寝返って…情報を全て政府に…!!」

『!!?』

「し、しかも…生き残った者は天竜人の奴隷に……!!」

あまりにも衝撃的な内容だった。
部下の1人が、海軍に寝返り政府に命乞いをしたのだ。さらにそんな修羅場でも生き残った大切な部下達が、天竜人の奴隷となった。
カイドウは怒りが収まらず、瓢箪を粉々に握り潰した。

カイドウ「何だと…?」

『ヒィッ!!』

カイドウの怒りに、怯える部下達。
だが、カイドウ以上にブチギレていたのは……ライコウだった。

ライコウ「……!!」

その顔は、裏切った部下と世界政府への怒りと憎悪に満ちており、いつ噴火してもおかしくないような火山のようであった。
マグマの様に煮えたぎる、どす黒い感情が込み上げているライコウに、ジャックとブラックは思わず顔を青くする。
これが……「“剣帝”の怒り」。まさしく修羅そのものだった。

ライコウ「……!!」

ライコウは覇王色の覇気で周囲を威圧しながら、無言で歩いて行く。

ブラック「副船長、どこに行くんだ!!?」

カイドウ「止せ…!!」

ブラック「船長……!?」

カイドウ「今のアイツに、俺達の声は届かねェよ……収まるまで放っておけ。」

カイドウは低い声で部下達に忠告する。

ライコウ「……!!」

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『……!!』

シープスヘッド「そ、それで……その後は…?」

恐る恐る尋ねるシープスヘッド。
煙草の紫煙を燻らせるブラックは、フーッと煙を吐いた後、口を開いた。

ブラック「……いや、俺も分からん。 副船長は出てってから1週間近く留守だったからな。 だが、1つだけあの裏切り事件の結末とも言える事件(・・)が起こった。」

シープスヘッド「…そ、それは一体…?」

ブラック「……裏切りが発覚してから3日後、新世界にある世界政府の所有地(しま)ある1人の海賊(・・・・・・・)の襲撃によって火の海と化し、訪れていた天竜人を含めた住民全員が斬殺死体として駆けつけた海軍に発見されたことだ。」

『……!!』

ブラックはそれ以上は言わず、その場から立ち去っていった。
そう……剣帝を怒らせた者達は、斬り捨てられたのだ。1人残らず、島ごと。

「キレイなバラにゃ棘が付き物だが……ライコウ様は剥き出しの刀か…?」

ライコウの怒りを想像し、鳥肌が立つ部下達だった。 

 

第27話:同盟

-ワノ国-

雪が降る中、つなぎを着用した2人の男と1匹の熊が釣りをしていた。
彼らはつい最近百獣海賊団船医総監となったトラファルガー・ローの部下だ。

?「暇だな~…シャチ。」

シャチ「あぁ、マジで暇だなペンギン。」

?「メスの白熊に会いてェなァ…。」

ペンギン「いねェって…諦めろべポ。」

「PENGUIN」と書かれた帽子を被っているペンギン。
キャスケット帽子を被っているシャチ。
人間と疑わんばかりの言動とつなぎが特徴的な半獣人・べポ。
この3人は先日ブラックがローやサボを連れて航海した際に出会い、ライコウの「地獄の試験」に何とか合格した新人だ。
現在はローの部下として彼を支え続けて暮らしているのだ。

シャチ「そう言えばさ、最近総監と同じ時期に入ったあの鉄パイプぶん回してる奴いるじゃん。」

ペンギン「サボ君か?」

シャチ「そうそう。 あの子相当強いらしいぜ。」

ペンギン「総監は医者を目指してたし、コアラちゃんは元奴隷。 でもサボ君はかなりの悪ガキだったって副船長言ってたよな。」

シャチ「この前の模擬戦の時、シープスヘッドさんをフルボッコにしたらしいしな。」

ペンギン「……若いって、いいよな。」

すると、べポが海を流離う“何か”に気付いた。

べポ「おい! 何だあれ!? こっちに来るぞ!!」

「「?」」

べポが指差す場所には、黄金に輝く船が。
マストの上には、星のマークが多く付いたドクロの旗が。

シャチ「し、侵入者か!?」

ペンギン「その割には海賊らしくねェな……。」

そうこうしている内に船は岸まで辿り着いてしまった。
船から降りてきたのは、全身ピンク色のスーツ姿で黄金の装飾品をいくつも身につけた男だった。

ペンギン「て、てめェ…ここに何の用だ!?」

シャチ「何者だ!?」

?「私の名はギルド・テゾーロ。 副船長さんの友人だ。」

「「!?」」

テゾーロ「このビブルカードが何よりの証拠だ、彼に会いたいのだが。」

「副船長と会いたい」と要求するテゾーロ。
困惑するシャチとペンギンは、べポに電伝虫を通じてライコウに報告するよう伝える。

べポ「副船長!! 起きてる!? 副船長!!」

ライコウ《いや、俺寝てないんだが……どうした? 何かトラブルか?》

べポ「テゾーロって奴が上陸したんだ!! 副船長の友人って言ってるんだけど…。」

ライコウ《何っ!? テゾーロが来たのか!?》

ライコウは驚きの声を上げた。
どうやら本当らしい。

ライコウ《船長室に案内しろ、お連れさんがいるなら一緒にな。》

べポ「アイアイ!」

そう言って通話は切れた。
テゾーロはどこか安心した表情で口を開く。

テゾーロ「どうやら覚えてくれてたようだ。」

-------------------------------------------------------------------------------

カイドウ「ウオロロロロ、久しぶりじゃねェか若造。」

ライコウ「随分とキメてるな、どっかの大富豪だ。」

テゾーロ「ハハハ、そちらは相変わらずのアウトローぶりらしいな。」

ライコウはテゾーロと酒を酌み交わしながら話し合う。
テゾーロはかつて、百獣海賊団の財産を奪おうとした過去がある。その際ライコウとカイドウは「酒じゃないならいいや」と金をすんなり渡した。
まぁ、いわゆる「奇縁」というものだ。

ライコウ「ところで、その…後ろのガッチガチの2名は?」

ライコウはテゾーロの後ろで緊張している2名を見据える。
1人は、頭部が胴体に比べ極端に大きい、珍妙な体型をした二頭身の男。もう1人は鎧のような筋肉を纏った髭面の巨漢だ。

テゾーロ「! …あぁ、私の優秀な部下だ。」

カイドウ「……随分ビクついてるじゃねェか、大丈夫なのか?」

ライコウ「お前が怖いだけだ、バカ…。」

ライコウは白けた目をしながらツッコミを炸裂。
最強の生物であるカイドウにこんなマネが出来るのは、この世ではライコウ以外いないだろう…。

ライコウ「んで? 何の用だ? わざわざ来て思い出話するわけじゃあるまいし。」

テゾーロ「実は同盟を結びたくてね……君達の名を借りたい。」

ライコウ「?」

テゾーロは自らの計画を話し始めた。
ゴルゴルの実の能力者であるテゾーロは、自らが愛した女性・ステラを政府(厳密に言えば天竜人)によって奪われた。それ以来テゾーロは政府を憎み、いつか自らの人生を滅ぼした天竜人を金の力で(・・・・)屈服させようと目論んでいる。
対する百獣海賊団は、ジェルマの崩壊やドフラミンゴの殲滅などを目論んでいる。テゾーロが手を貸せば、金の臭いに惹かれたジェルマの者やドンキホーテファミリーの誰かを捕まえることなど容易い。
要は、テゾーロと手を組めばほぼノーリスクでウィンウィンの関係になれるということだ。

テゾーロ「新世界は情報戦も重要だ、その情報を提供する協力者がいた方がいいだろう?」

カイドウ「……。」

ライコウ「悪くない話ではあるが……これはビジネス寄りだろう?」

テゾーロ「ジェルマの野望は“北の海(ノースブルー)”だけの問題じゃない…新世界にも目を向けている。 金の力でも情報は手に入るんだ、手を組んで損はないだろう?」

ライコウは考える。
確かに、彼と手を組めばかなり大きな情報網を手に入れられる。今はまだ計画を実行する前の段階だが、ゴルゴルの実の影響はかなりのものだろう。

ライコウ「分かった、その博打に乗ろう。」

カイドウ「……いいのか?」

ライコウ「テゾーロが言いたいのは、“百獣海賊団(ウチ)の旗を借りる代わりに新世界の情報を提供する”ということ。 名を借りるだけなら問題無いだろ?」

カイドウ「ウオロロロ…そういうことか。」

カイドウはそれ以上は言わず、酒を飲む。

テゾーロ「これで決まりだ、感謝するよ。」

ライコウ「こっちに相当の利益があるんだ、文句は言わないさ。」

ライコウとテゾーロは握手する。
互いにあくどい笑みを浮かべながら。 
 

 
後書き
ライコウの「地獄の試験」の内容はご想像にお任せします。
結構エグイらしいですが。 

 

第28話:“女帝”と“剣帝”

偉大なる航路(グランドライン)・前半-

この日ライコウは、サボ達を連れて前半の海…いわゆる「楽園(パラダイス)」に訪れていた。
目的は、訓練だ。

ライコウ「うし、とりあえず“凪の帯(カームベルト)”に潜って海王類を1匹仕留めて来い!!」

『バカですか!!?』

ライコウの無茶ぶりに、全員が声を揃える。
無風海域“凪の帯(カームベルト)”は大型海王類の巣窟だ。襲われたら一溜りも無い。
一応船底に海楼石を敷いてはあるようだが、油断できないのも事実だ。
……というか、そもそもライコウは何故“凪の帯(カームベルト)”に潜って海王類を仕留めるという無理難題を押し付けたのだろうか。

ライコウ「海賊の中には魚人もいる。 それに対抗するため、海中での戦いに慣れる必要がある。 よって、“凪の帯(カームベルト)”で修行してもらう。 海軍は来ないし時化も無い……修行するには最適だろう?」

コアラ「そういう問題じゃないと思うんですけど!?」

コアラは声を荒げてツッコミを炸裂。
巨大生物(カイドウ)を超える図体の海王類と一対一(サシ)で戦わせようとするライコウに、ある種の恐怖を覚えてしまう。

ライコウ「しょうがねェな、見本を見せてやらァ。」

ライコウはそう言って羽織っていたコートや着用していた狩衣を脱ぎ、海へダイブ。

『ええええええ!!?』

全員が海へ目を向ける。
何の迷いも無く飛び降りたライコウに、驚愕する一同。
すると……。


ドゴォン!!


『!!?』

巨大な水柱が。
よく見ると、海軍の軍艦よりも大きい海王類が血を流している。
海王類はそのまま沈んでしまった。
その直後、ライコウが「ぷはっ」と声を出して浮かび、戻って来た。

ライコウ「ま、これが見本だな。」

サボ「いやいやいや!! 無理だって!! こんなマネ普通出来ねェって!! 第一泳ごうとする気にもならねェ!!」

ライコウ「平泳ぎすればそんなに気付かれずに済むぞ。 そんな弱音言ってちゃこれから先生きていけないし飯も食えんぞ?」

サボ「コツはありますか?」

『やるんかい!!』

どうやらサボはやる気のようだ。

ライコウ「頭を重点的に。 エラある奴ならエラ狙え。 心配すんな、俺はアレを素手で倒したから覇気さえ纏ってれば鉄パイプでも問題ない。」

「だ、ダメだ…話の次元が違い過ぎてついていけねェ…。」

部下の1人は思わずそう呟いてしまう。
これが世界最高峰の海賊の修行法の1つと考えると、納得せざるを得ない。

ライコウ「タイムアタックでもいいぞ? 1分間に海王類何体倒せるかというのも悪くない。」

『本当に人間なの!!?』

※ライコウはとんでもなく強い人間です。

ライコウ「まぁ、それはさすがにキツイからまた今度としy「副船長!! 九蛇海賊団だァ!!」……へェ~、マジで?」

ライコウはきょとんとした顔で返答。
九蛇海賊団は、世界一美しい女海賊である王下七武海の一角・“海賊女帝”ボア・ハンコックが率いる海賊団だ。船員は“女ヶ島(にょうがしま)”アマゾン・リリーの戦士達で、全員が女性で覇気を持っているという戦闘力の高い面子で構成されている。
因みにこの九蛇海賊団……七武海の海賊団でありながら、拿捕の対象外である筈の商船も平気で襲う凶悪性を持っていることで有名だ。

ライコウ「せっかくだし、挨拶すっか。」

『えぇ!!?』

「無茶ですよ、石にされますって!!」

ライコウ「問題無い、俺はモネにゾッコンだ。」

「いや、そういう問題じゃなくて……っていうか、何気にとんでもない事言っちゃったよ副船長(あのひと)!!!」

部下がそう言った時には、ライコウはすでにいなかった。

-------------------------------------------------------------------------------

ライコウ「よっと!」

コートをなびかせ、九蛇海賊団の船の甲板に降り立つライコウ。
それに気付いたのか、女戦士達が一斉に弓を構えた。

「き、貴様は……“剣帝”!!」

「何をしに来た!?」

ライコウ「ん? あぁ、そちらの女帝さんに挨拶をしにな。」

ライコウは穏便に済ませようとするが、そうはいかない。
相手は九蛇……かなり好戦的な一族だ、そう易々と会わせてくれないだろう。しかしその反面実力主義な一面もあるので戦って勝てば言うことを聞くだろうが……。

ライコウ「(そういう訳にもいかないよな…。)」

七武海に会うために世界政府を揺るがすような事態はさすがに面倒なので避けたいところである。
どうしようかと悩んでいると…。

?「何事じゃ、騒々しい。」

『蛇姫様!!!』

カツン、カツン、とヒールを打ち鳴らしながら現れるハンコック。
目の前に立つ剣士を見て、どこか興味深そうな目で見据える。

ライコウ「よ、蛇姫さん。」

ハンコック「……四皇カイドウの“右腕”がこんなところで何をしておる?」

ライコウ「ん? あぁ、ウチの船員の修行。 海王類1匹倒してこいって命令したばっかで、俺はついさっき素手で海王類を倒したばっか。」

『海王類を素手で!!?』

戦士達は思わず後ずさる。
海王類を素手で倒せる輩は、さすがにアマゾン・リリーにはいない。彼女らの恩人である伝説の大海賊“冥王”シルバーズ・レイリーなら可能だろうが。

ハンコック「じゃが……所詮は男。 わらわの美しさに平伏すのがオチじゃ。」

勝ち誇った顔でライコウに告げるハンコック。
それがイラッと来たのか、ライコウはこう返した。

ライコウ「戯言を…女は美貌じゃなくて愛嬌で勝負するモンだ。」

美貌を強調するハンコックは、それが癪に障ったのか険しい表情を浮かべる。

ハンコック「わらわに魅了されぬとは、貴様の目は節穴のようじゃな。」

ライコウ「自分の美貌を鼻にかけて身勝手に振る舞う小娘にピーチクパーチク言われたくねェよ。」


ピキッ


ハンコック「脆弱な男が…わらわを誰と心得ておる。」


ピキッ


ライコウ「何? 天下の剣帝様を相手に戦争するのか? 海王類素手で倒したばっかの相手によくそんな大口叩けるな。」

「「……。」」

押し黙る2人。
ライコウは刀の柄を握り、ハンコックは蹴りの構えを取る。

ニョン婆「やめんか蛇姫!! 戦争するつもりか!!?」

ハンコック「黙っておれ!! この男は是が非でも屈服させる!!」

ライコウ「やってみろや小娘!! お前の様なヒヨっ子とは、そもそも住む世界が違うってこと教えてやるよ!!!」

子供の喧嘩の様な雰囲気になる。
しかしお互い覇王色の使い手。暴れられたら手に負えないので、必死に止める。

ライコウ「……仕方ねェ、俺にも立場ってモンがある。 ここは俺が退くとする。」

ハンコック「そうか、それは残念じゃ…じゃが次会った時は決着をつけるぞ“剣帝”!!」

ライコウ「ったりめーだろ、美貌以外に何も考えねェ若造に教えるのが人生の先輩としての筋だ!!」

ライコウは「これだからじゃじゃ馬は…」と呟きながら海へ飛び込み、平泳ぎで船へ戻っていった。
ハンコックはそれを見据え、「わらわの美しさ、身を持って知るがいい」とか何とか言って奇妙な敵対心を抱いている模様。
そんなハンコックに溜め息を吐くニョン婆であった。 

 

第29話:手配書の更新、頭角を現す“火拳”

 
前書き
内容を多少変更しました。ご了承ください。 

 
-ワノ国-

凪の帯(カームベルト)での修行を終え、新世界に帰還したライコウ達。
再びいつも通りの日常が始まるのだが、帰って早々モネからこんな言葉を聞いた。

カイドウ「手配書がやっと更新された?」

モネ「えェ、それもかなりの額よ? 全員の首の値が上がってるわ。」

手配書の更新。
仲間が増えたこととテゾーロと同盟を結んだりしたことで勢力が数年前とは比べ物にならない程にまで拡大したため薄々感じてはいたが、ようやくその時が来たようだ。

ブラック「ってなると、お前にも懸賞金(くび)が掛かってるのか?」

モネ「えェ♪」

コラソン「そりゃめでたいな、“ハーピー師団団長”。」

そう、モネは入団してからローの手によって半人半鳥(ハーピー)となり、ユキユキの実の能力とサポート役としての優れた才能を評価され、新たに創設された“ハーピー師団”の団長となったのだ。
因みにサボとコアラはライコウの懐刀である「双将軍」として活躍している。

ライコウ「なぁモネ、今夜一杯イクか? 一応飲めるだろ?」

モネ「えェ、構わないわ。 もし抱きたいなら朝まで付き合うけど?」

ライコウ「いいや、結構。 明日は幹部会なんでな。」

アリスティア「平然と際どい会話しないでくださいよ!! 妬いちゃうじゃないですか!!」

コラソン「他の男探せよ。 俺独身だからいつでもOKだけど?」

アリスティア「ローさんの方がいいです!!」

コラソン「…フラれた……。」

落ち込むコラソンを他所に、手配書を手に取るライコウ。

ライコウ「……へェ~、中々良い感じの二つ名じゃねェか。」

手配書には、こう書いてあった。
百獣海賊団船長“百獣のカイドウ”……12億ベリー
百獣海賊団副船長“剣帝”ライコウ……10億ベリー
百獣海賊団マンモス師団団長“旱害のジャック”……8億6000万ベリー
百獣海賊団航海総長“海賊男爵”バロン・ブラック……7億ベリー
百獣海賊団参謀総長“無音の道化師”コラソン……3億ベリー
百獣海賊団船医総監“死の外科医”トラファルガー・ロー……1億3000万ベリー
百獣海賊団ハーピー師団団長“雪害のモネ”……2億4000万ベリー
百獣海賊団参謀次長“海姫”ナリウス・アリスティア……3億3000万ベリー
百獣海賊団航海次長“蟲姫”マナト・ヒオ……1億6000万ベリー
百獣海賊団双将軍サボ……1億3100万ベリー
百獣海賊団双将軍コアラ……8100万ベリー
百獣海賊団マンモス師団戦闘員シープスヘッド……2億9000万ベリー
百獣海賊団マンモス師団戦闘員ジンラミー……1億8000万ベリー
百獣海賊団傘下“アイアンボーイ”スコッチ……3億1500万ベリー

ライコウ「……どうやら実力だけじゃなく、個人の能力の危険度や立場もあって額が高くなるんだな。」

コラソン「俺が3億……!!」

モネ「初手配時で2億越え……嬉しいわ♪」

コアラ「私……8000万越えだなんて…///」

それぞれが手配書更新の感想を述べる。
その時、ブラックが何かの接近に気付いた。

ブラック「ニュース・クー…?」

金を払い、新聞を受け取る。
新聞の一面には、大型ルーキーの登場が掲載されていた。

ブラック「大物ルーキー“火拳のエース”?」

そこには、2億越えのルーキー・“火拳のエース”の台頭について記載されていた。

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-新世界-

とある島の酒場。
そこに、“火拳”の異名を持った成長したエースの姿が。
カウンターに座ってラムを飲み、店主と会話している。

店主「何? 新世界最強の海賊は誰かって?」

エース「知ってんなら教えてくれよ。」

店主「よくいるんだよな、お前みたいな何も知らねェで暴れるのが。 この海は全てが桁外れだ、お前じゃすぐフルボッコにされて終わりよ。」

店主はエースにそう告げ酒を注ぐ。

エース「じゃあ、土産話に聞かせてくれよ!」

店主「お前さんも好きだねェ……まず最強の大海賊達が4人。」

大海賊時代の頂点に君臨する怪物“白ひげ”エドワード・ニューゲート。
世界四大剣豪の1人“赤髪のシャンクス”。
「この世における最強生物」と呼ばれる実力者“百獣のカイドウ”。
あらゆる人種が暮らす「万国(トットランド)」の女王“ビッグ・マム”シャーロット・リンリン。
この4人は新世界に皇帝の如く君臨しているため「四皇」と呼ばれ、容易く国を滅ぼせるほどの武力を有していると店主は話す。

エース「その中で最強はいんのか?」

店主「四皇で最強は誰かって? お前じゃ足元にも及ばねェ化け物だらけだ。 特にカイドウと白ひげは“海賊王”ロジャーや“金獅子のシキ”、海軍の伝説達を相手に大暴れした豪傑だ。 白ひげはもう年くって暴れることはほとんどねェから、純粋な腕っぷしならカイドウが一歩リードだろうな。」

店主はさらに語る。

店主「四皇の部下で最強ってなると……百獣海賊団副船長“剣帝”ライコウかねェ。 世界四大剣豪の一角で、若ェ頃から“冥王”レイリーや白ひげの所の隊長達と張り合った化け物。 奴の強さは海軍大将以上って奴も言うほどに強いらしい。」

エース「っ!!」

エースはライコウに反応した。
そう、かつてコルボ山で会い父親(ロジャー)について語った海賊だ。

店主「四皇以外でもこの新世界にはとんでもねェ奴がウジャウジャいる。 特にギルド・テゾーロって奴と七武海の1人である“天夜叉”ドンキホーテ・ドフラミンゴは一際ヤバイらしく、お互い四皇の一角と手ェ組んでるって噂もある。」

店主は「考えただけでも鳥肌が立つ」と呟きながらエースに酒を出す。

店主「そういやあ、何でそんなこと聞いたんだ?」

エース「実はよ……。」

エースはこっそりと“ある物”を見せた。
それは、ライコウの名が刻まれたビブルカードだ。

店主「こ、こりゃあまさか……!!」

エース「俺はこれからカイドウの所へ行くんだ、会いたくて仕方がねェんだ。」

店主「じゃあ、お前さん……絶対に地雷を踏むなよ。 一度でもカイドウを怒らせたら、破滅は免れねェぞ。」

エースは「ごちそうさん」と言って口笛を吹きながら去っていった。

店主「……あのガキ、金払わなかったな!!」

店主は金を払わなかったエースに腹を立てるのだった。 

 

第30話:エースとの再会・前編

新世界に皇帝のように君臨する4人の大海賊「四皇」。
幾つもの船団や拠点、傘下を従えて四皇が動くだけで海軍は最厳戒態勢となり、その戦闘の規模は「戦争」と言われており、新世界での海賊は「四皇に従うか、抵抗・挑戦するか」のどちらかと言われている。
勿論、このスペード海賊団も例外ではない。

「エース船長!! 本気ですか!?」

「あの四皇カイドウの元に行くなんて、正気じゃねェですよ!!」

エース「どうしても会いてェ人がいんだ!! 心配すんな、付いて来い!!」

巷を騒がすスペード海賊団。
“火拳のエース”ことポートガス・D・エースを船長としたこの海賊団は、数々の大暴れの果てに四皇からも一目置かれる存在となった。
そんな彼らが目指すのは、ワノ国だった。

エース「船長さんの面も拝みてェが、何よりライコウさんに会わなきゃな……!!」

“百獣のカイドウ”。
「この世における最強生物」と称される猛者であり、ルーキー時代から海賊王ロジャーや白ひげと覇を競った大海賊。「一対一(サシ)でやるならカイドウだろう」と人々は呼び、その雷鳴は世界中に轟かせている。
そんな彼を長年支えているのが、“剣帝”ライコウだ。
四皇の部下では最強クラスであり、“鷹の目”や“赤髪”、海軍大将“黒龍”と同じ世界四大剣豪の一角を担う自他共に認める大海賊中の大海賊。
そんな彼から、エースは「また会おう」と約束されていた。エースはそれを果たしに来たのだ。

エース「お前ら、死んだ気で行くぜ!!」

『死ぬ気でしょう、言うなら!!!』

エースの謎の発言にツッコミを炸裂させる部下達。
すると……。


ザパァン!!


『!!?』

スペード海賊団の船の横に、潜水艦が浮かんできた。
ドクロに巨大な角が生えたマークがあり、百獣海賊団の船であることがすぐに分かった。
すると、ドアを開けて大太刀を抱えた青年が現れた。
“死の外科医”と呼ばれる百獣海賊団の幹部、トラファルガー・ローだ。

ロー「“火拳屋”だな? ウチらは事情を知っている、案内する。」

『!!?』

エース「マジか!?」

ロー「ライコウさんが目的なんだろ? 早く来い。」

何と百獣海賊団の幹部達はエースの件を事前に把握しているようだ。
エースは「話が早ェ」と笑い、ローの潜水艦に付いて行く。

「船長、相手は四皇ですよ!? 四皇!!」

エース「大丈夫だ、知ってる顔がいるからな!!!」

エースは陽気だが、相手が四皇であるということもあり部下達は身震いが止まらなかった。

-------------------------------------------------------------------------------

ローに案内され、百獣海賊団の根城に乗り込んだエース達だが、極めて荒々しいカイドウの巨躯に圧倒され、本題を切り出せないでいた。

ジャック「カイドウさん、アイツは“火拳のエース”です。」

カイドウ「“火拳”か………巷を騒がすガキが、俺に“挨拶”だと?」

カイドウは金棒に手を伸ばす。

エース「いやいや、殴り込み(そっち)じゃなくて……俺や弟がアンタの副船長さんに世話んなったんで、一言礼をと……。」

カイドウ「? ライコウに……?」

その時だった。

ライコウ「来たか、エース!」

エース「あ、こりゃあどうも……。」

酒瓶を抱えてライコウが現れた。

ライコウ「積もる話もあるだろう、宴でも開くとするか…………っ! そうだ、お前に紹介したい奴がいる。」

エース「?」

ライコウ「お~い、まだかサボ? 客が来てるんだぞ。」

サボ「ちょ、タンマ!!」

エース「!!?」

エースは驚愕した。
それは、死んだ筈の義兄弟の名だった。

サボ「ハァ、ハァ……久しぶりだな、エース…!!!」

エース「サボ……!!」

エースの目の前には、死んだ筈の義兄弟が成長した姿が。
背中に差した、身の丈ほどの長さの鉄パイプ…ゴーグル付のシルクハットと青い上着…何もかも変わってなかった。

エース「サボォォォォォ!!!」

死んだはずの義兄弟が生きていたことに涙し、思わずサボに抱き付くエース。
サボもまた思わず涙を流し、再会を喜ぶ。
百獣海賊団もスペード海賊団も、そんな2人に心打たれる。
だが……ここでカイドウがやらかした。

カイドウ「手配書見てねェのか?」

エース「…は?」

ライコウ「お前、それさっき絶対言っちゃあいけないって言ったろうが!!!」

ライコウが青筋を浮かべながら怒号をあげる。
そう……つい2~3日ほど前に手配書が更新され、サボがやっと賞金首になったのだ。カイドウも含め、全員がライコウから「エースのことだし、絶対知らないから言うなよ」と忠告を受けていたのだ。
なのにカイドウ、やらかした。まぁこの身勝手さも四皇らしいが。

エース「え…ウソ、お前…。」

カイドウ「ついでに言うと、サボもついさっきまで号泣してたぞ。」

サボ「カイドウさん、何でそれ言うんだよ!!?」

サボは大声でツッコミを炸裂。
事実なので余計恥ずかしくなるサボ。

ライコウ「…ったく、せっかくのイイ雰囲気台無しにしやがってこのバカ船長…!」

ライコウは「何年経ったら空気読めるようになるんだよ」と呟きながら頭を抱える。

ライコウ「あ~、まぁとりあえず飲むか。」

ブラック「自棄酒はやめろよ、副船長。」

ライコウ「分かってるっての……。」

ツッコミを入れることすら面倒になったライコウは、酒を飲んで全部チャラにすることにしたのだった。 
 

 
後書き
ライコウのイメージ図を最終修正しました。

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見れば分かるんですけど、愛刀・鬼王は長いんですよ。設定ではライコウは345㎝ですので、かなりの長寸です。服装ですが、当初は着流しを考えてましたが「四皇の船の副船長に相応しい和服は?」と考えて、貴族衣装である狩衣を採用したんです。
因みに愛刀・鬼王のモデルは「刀語」の“斬刀・鈍”ですね。モデルが宇練銀閣なだけあって、顔のデザインもほぼ銀閣です。 

 

第31話:エースとの再会・後編

 
前書き
もう30話突破か~、ルフィ達の出番はもう少し先ですな。 

 
百獣海賊団とスペード海賊団の宴が始まった。
みかじめ料として多くのナワバリから貰った酒でもてなし、ワノ国の料理でエース達を歓迎する。

ライコウ「っつー訳で、サボとルフィとエースは義兄弟なんだよな。」

カイドウ「ウオロロロロ!! ガープの孫とロジャーの息子(ガキ)が義兄弟とは傑作だな!!」

ブラック「フッ……ロジャーもガープもどうかしてるぜ。 ライバルに息子預けさせるのも、山賊に世話させるのも。」

ロジャーとの思い出話に花を咲かすライコウ達。
やはりロジャーは、百獣海賊団の中では一際印象深い海賊のようだ。

サボ「ルフィはどうなんだ? 元気にしてるか?」

エース「あぁ、相変わらず“海賊王”を目指してな。」

それを聞いたライコウは、高らかに笑った。
それだけではなく、カイドウも「大した義弟(おとうと)だ」と笑い始めた。

ライコウ「ハハハハハ、そうか!! ルフィは今も海賊王になると言ってるのか!」

エース「口癖みてェなモンさ。」

サボ「ルフィは俺のこと知ってんのかな…。」

ライコウ「それは会ってからのお楽しみだな。」

ライコウは瓢箪の中の酒を注ぎながら、エースに目を向ける。

ライコウ「さて、本題を切り出そうか。」

エース「!!」

ライコウ「晴れてお前も一端の海賊になったが……どうする? 親父の名に潰されないように生きたいんだろう?」

エースは鬼の様に恐れられている海賊王ロジャーの実子……世界中から嫌われてる存在(ロジャー)の名はとてつもなく大きく、重い。
史上初めて“偉大なる航路(グランドライン)”を制した海賊王の父親を超えられる海賊になれるのかは、エース次第だ。

エース「……俺が出した答えは、案外単純さ。」

ライコウ「!」

エース「俺の力と名を全ての海や人間に認めさせることだ!!」

ライコウ「……成る程、分かり易いじゃないか。」

エースは、自らの力と名を世界中に認めさせることでロジャー以上の海賊を目指すという。

ジャック「……じゃあどうする? お前みたいな若造が世界中に認められる海賊となるためにはよ。」

エース「まずはアンタらとかつて抗争をした“七武海”に勝利し、世界政府に認めさせる!!」

ライコウ「ゲッコー・モリアをか?」

エースの標的は、かつてこの新世界で戦ったあのゲッコー・モリアだ。
確かに、モリアの名は大きい。七武海の中でも懸賞金は高い方であるモリアを倒せば、政府から少なからず(穴埋めとして)七武海の勧誘は起こりやすくなる。

モネ「海賊王ロジャーの息子が七武海入りを果たせば、貴重な戦力として政府はアナタを認めざるを得ない…それに政府は自然(ロギア)系能力者を欲しがってると聞いてるから、条件は整ってるわ。」

ライコウ「しかし意外だったな、お前のことだから白ひげのじいさんの首でも取りに行くかと思った。」

エース「ハハ…さすがにそこまでぶっ飛んでねェさ……。」

エースは顔を引き攣らせて笑う。
いくら何でもいきなり“世界最強の大海賊”を倒そうとするほどの無茶はしないようだ。

ライコウ「まぁ、お前がこれからどうするのかも聞いたから、この辺で御開きとするかね…。」

ライコウはそう言うと、エースに「任侠」という銘柄の酒瓶を投げ渡した。

ライコウ「ルフィに会ったらよろしく言っといてくれ。 “新世界で待っている”ってよ。」

エース「おぅ! 今日は世話になった!」

エースはそう言って立ち上がり、部下を率いて去っていった。

ライコウ「やっぱ親父の面影あるな。」

ジャック「それよりもライコウさん。」

ライコウ「どうした?」

ジャック「今月飲む酒、9割無くなったんだが………。」

ライコウ「……完全に飲み過ぎたな。 来月まで1週間あるからそれまで全員禁酒な。」

-------------------------------------------------------------------------------

-時同じくして、マリンフォード-

イリス「“火拳のエース”……。」

海軍最強とも謳われるイリスはエースの手配書を自室で見ていた。
それについて、ガープはどこか不満げに口を開いた。

ガープ「全く、せっかくワシが立派な海兵に育てようとしたというのに……大馬鹿者じゃい!!」

イリス「山賊に教育させるガープさんに責任があると思いますけど?」

ガープ「何を言う!! ワシは孫のルフィにも立派な教育をしとるんじゃぞ!!?」

イリス「愛する孫を谷から突き落とし、夜のジャングルに放り出し、風船にくくりつけてどこかに飛ばすとか、そんなマネする人は世界中探してもあなたしかいませんよ。 ゼファーさんでもしませんよ?」

イリスに論破され、ガープはぐうの音も出ない様子。

イリス「(目元がロジャーそっくり……雀斑(そばかす)はルージュさん譲りかしら。)」

イリスはクスリと微笑む。
彼女はガープと共にエース出産の場に出向いているため、少なからずエースを知っているのだ。もちろん、ロジャーの息子であることも。

イリス「これからが楽しみですね。 果たしてどういう海賊になるか……。」

ガープ「フン、せめて七武海ならワシの立場も何とかなるんじゃが……。」

イリス「センゴクさんからの追及逃れられますしね。」

ガープ「ギクッ!!」

イリス「ギクッじゃないですよ、全く…。」

ガープの分かり易い反応に呆れるイリス。

イリス「(彼も私と同じ“D”……嵐を呼ぶのかしら?)」

イリスは笑みを浮かべ、茶を啜るのだった。 
 

 
後書き
ブラックのイラスト(最終修正)です。

<i6738|38038>

彼は愛煙家ですが、煙草の銘柄に対する拘りはないとか。 

 

第32話:寝起き後の号外

 
前書き
感想で「ライコウとシャンクスは、どっちが年上で年下ですか?」という質問があったので、シャンクスを基準に公表します。

ライコウ…原作開始時点は44歳。クロコダイルと同い年でシャンクスよりも年上。
ブラック…原作開始時点は36歳。シャンクスより年下ですね。
ジャック…不明ですが、原作を見た感じ40代後半と思われます。
カイドウ…間違いなく最年長。50代後半が妥当かと。

ジャックとカイドウは原作での第一印象で決めてるので、信頼しなくていいです。 

 
お昼時…百獣海賊団の拠点にある大広間には、重々しい空気が漂っていた。
船長・カイドウをはじめ、ブラックとジャック、そしてコラソンはある話をしているようだ。

カイドウ「誰か行け。」

ブラック「…嫌ですよ、俺フルボッコにされますよ。」

ジャック「いくら、船長命令でも…俺は過去に海まで投げ飛ばされたからな…。」

コラソン「俺にも無理です。」

『(何の話!!?)』

朝早くに4人は腕を組んで話し合ってた。
しかもカイドウ以外の3人は冷や汗を流している。明らかに様子がおかしく、しかも部下達もどこか落ち着きのない様子で顔を見合わせたりしていた。

ヒオ「ロー君、これってどういう状況?」

ロー「…ライコウさんが今爆睡状態だから誰が叩き起こしに行くか決めてるところだ。 残業後の寝起きが相当悪ィから、困ってんだ。」

ヒオ「残業って……この海賊団はブラック企業なの?」

ロー「そういう訳じゃねェが……一味の9割が真面目に仕事をやらねェからほとんどライコウさんが仕事やってるようなモンだからな……一度俺もやったが、あまり思い出したくはねェな…。」

ローは顔を引き攣らせて目を逸らす。
あのローでさえこの始末。どうやらそれなりの覚悟(・・・・・・・)を決めなければならないようだ……。

ブラック「よし、こういうのは“若き力”に行かせてやるのが筋。 サボ、コアラ、ヒオ。 副船長の部屋に行って、叩き起こして来てくれないか?」

コアラ「え? あ…はい、分かりました。」

サボ「そんなことでビクビクする必要ねェ気もするけどな…。」

ヒオ「とりあえず行くよ!!」

ブラック「……気をつけろよ。」

ブラックは部屋から出ていくコアラ達の背中を見てそう呟いた。

















-ライコウの部屋の前-

コアラ「ライコウさーん!! そろそろ起きて下さーい!!」

だが返事は帰って来なかった。

サボ「寝てるんじゃないか?」

コアラ「そうね…昨日の仕事に相当疲れたのかも…。 仕方ない、入って起こしましょう。」

ヒオ「行くよ。」

ヒオはゆっくりと襖を開けた。

コアラ「ライコウさーん? 入りますよー…って、うわ…凄く片付いてる。」

コアラはライコウの整頓された和室に驚いた。多くの書類が整理されて保管してあるところを見ると、やはり相当のオカン気質であることを改めて思い知る。
奥のほうには、ライコウの寝息が聞こえる布団があった。

コアラ「寝る時もあの……何だっけ?あの…「狩衣のこと?」あ、それ。 着てるんだね。」

サボ「つーか刀でけェな。 俺よりずっと大きい。」

仕事の際に使ってるであろう机を見れば、色々な書物や書類が置いてあった。
航海日誌、極秘のマークが記されたノート、料理本、新聞……世情に敏感なだけあって、膨大な数の書類だ。

ヒオ「あ…あの瓶底眼鏡、モネさんの…!!」

サボ「そっか、2人でこの部屋を共有してるのか。」

どうやらモネと一緒にいるようだ。
夜の営みをやってるかどうかは不明だが。

コアラ「これだけの書類をこなしてるなんて……見習わなきゃね。」

ライコウ「ん……。」


ゴソッ…


「「「!!!」」」

ライコウが一瞬動き、ビックリする3人。しかし起き上がる気配はなく、ただの寝返りだったようだ。

サボ「はぁ…寝返りをうっただけか…。」

コアラ「(枕の跡ついてる……。)」

ほっと安堵するサボとコアラ。
するとヒオはライコウに近づき、頭を撫でた。

ヒオ「お疲れなんですね…。」

その時、ライコウがカッと目を見開いた。
しかも眉間にしわを寄せ、青筋も浮かべて睨んでいる。どう見ても修羅の顔である。

サボ「ギャアアアアア!!!」

「「キャアアアアア!!!」」

いきなりキレかけた顔で起きるので、3人共絶叫する。

ヒオ「ご、ごめんなさいいいいいい!!!」

ライコウ「泣くな、みっともない……あ~…徹夜明けの爆睡を無理に起こされると、結構辛いんだよなァ…。」

大きく欠伸をし、コートを羽織るライコウ。
特徴的な長髪もかなり寝癖が酷く、目なんかほとんど閉じている。

ライコウ「朝飯はブラックでも作ってくれたのか……うわ、もう昼か…。」

サボ「…は、はは…。」

サボはほっとしたのか、膝を床についた。
ヒオとコアラに至ってはもう半泣きである。

ライコウ「とりあえず……飯作んなきゃな。」

-------------------------------------------------------------------------------

カイドウ「やっと起きたか。」

ライコウ「まだ眠い……今度立ちながら寝るとする…。」

ボ~ッとした表情で握り飯を頬張るライコウ。
どんな時でも自炊は欠かさない様である。
一方、ブラックは起こしに行った3人と話し合ってた。

ブラック「よく無傷で帰ってこれたな。」

サボ「それってどういう意味!?」

ブラック「この前ジャックが起こしに行った時、対岸まで投げ飛ばされて海へドボンした。 まぁジャックは海に落ちても意識を保ったまま耐え続ける凄まじい生命力と精神力があったから事なきを得たがな。」

コアラ「いや、明らかにおかしいんですけど。 能力者なのに海に落ちても意識保ってるなんて有り得ないんですけど……。」

ブラック「この一味は化け物屋敷に等しいからな。」

その時だった。

シープスヘッド「カイドウ様~~~!!! ライコウ様~~~!!! 大変だァァァァ!!!」

『!!?』

シープスヘッドが息を荒くして倒れ込む。
その手には、新聞紙が。

ジャック「どうした?」

シープスヘッド「ヤベェことになってます!! 新聞を見て下さい!!」

ライコウ「? やけに大きい見出しだな……っ!? こ、これは…!!」

ライコウはシープスヘッドが持ってる新聞を手に取ると、先程の眠気が全て吹き飛んだかのように目を見開いた。

カイドウ「どうした?」

ライコウ「白ひげ海賊団2番隊隊長“青髪のラカム”死亡………!!」

『!!?』

それは、新世界を震撼させるような内容だった。
大海賊時代の頂点に君臨する「世界最強の大海賊」である白ひげの一味は、仲間を「家族」と想う白ひげ本人の心意気により鉄の団結力を誇る。その一方で仲間殺しを唯一絶対の“鉄の掟”として禁止しており、これを犯した者が許される事は決して無い。
この見出しでは、それを犯した者……裏切者が現れたということに他ならないということだ。

ライコウ「(エースがいないだけでこうも変わるか……!!)」

ライコウは頭をフル回転させて整理する。
原作では、ティーチは仲間(サッチ)をアラバスタ編の辺りでやった。だが、今はまだルフィすら海賊として賞金首になって無い時……原作開始以前だ。
どうやらエースが白ひげの部下にならないだけで大分“ルート”が変更されたようだ。

ジャック「あの青髪バカが死ぬとはな…。」

コアラ「あの……“青髪のラカム”って誰ですか?」

ブラック「白ひげの一味の古株だ。 懸賞金は7億9000万ベリー……武装色の覇気を会得している白ひげ海賊団最強の狙撃手(スナイパー)で……俺のライバルだった。」

ブラックは複雑な表情を浮かべる。
ブラックとて、敵討ちをしようとは思わない。負けたら命までが海賊……負ける奴がいけないのだ。
ただ……かつてのライバルがいないと心が寂しく感じるのだ。

モネ「“主犯者は不明、現在白ひげ海賊団は4番隊隊長サッチを派遣し討伐をする模様”……あの白ひげの船で仲間殺しなんて、半端な輩じゃないわ。」

カイドウ「ライコウ……。」

ライコウ「あぁ……そんなマネできる奴は、あの男しかいねェ。」

ジャック「ご存じで…!?」

ライコウ「俺とカイドウの勘が正しければ……主犯者は“マーシャル・D・ティーチ”だ。」

世界は、早くも激動の“新時代”を迎え始めていた。 
 

 
後書き
オリキャラ・イリスのイメージ図です。

<i6510|38038>

……本当ならもっと美しいですが、自分のバカタレ画力のせいで台無しかも。
ごめんなさい。 

 

第33話:四皇“赤髪のシャンクス”

?「ダッハハハハハ!!! そうか、アンタもルフィに会ったのか!!」

ライコウ「そっか、お前の方が先に会ってたんだったな。」

百獣海賊団の根城があるワノ国に、ある海賊が訪れていた。
その名は、“赤髪のシャンクス”……カイドウや“白ひげ”、“ビッグ・マム”と同じ四皇の1人であり、世界四大剣豪の一角でもある大海賊だ。
この男は海賊界屈指の穏健派で、自ら動いて事件を起こしたりするような事はほとんど無い。だが逆に言えば「シャンクスが大きく動く=非常事態が起こってる」というジンクスがあるとも言われている……それほど影響力の大きい男なのだ。
尤も、彼が四皇であるのも理由の1つだが。

カイドウ「…しかし、てめェほどの海賊(やろう)が“東の海(イーストブルー)”で腕一本落とすとはな。 どんな敵にくれてやった?」

シャンクス「いや……“新しい時代”に賭けてきただけさ。」

カイドウ「……。」

ライコウ「ま、悔いが無いならそれで結構だろ。」

巨大な盃を煽り、ガブガブと酒を飲むライコウ。
因みに彼らが飲んでいる酒はシャンクスの故郷である“西の海(ウエストブルー)”の酒である。

ライコウ「アリス、ちょっと酒持ってきてくれ。 多分酒足りねェわ。」

アリスティア「ハイハーイ!!」

シャンクス「お、この一味にも随分“華”が増えたじゃないか!! 1人こっちに寄越してくれねェか?」

ライコウ「それはウチと戦争(ドンパチ)やってから決めろ。」

ライコウはどさくさに紛れてナンパしようとしたシャンクスを一喝。
シャンクスは「ハハハ、冗談だ!!」ど笑い飛ばしたが、赤髪海賊団と百獣海賊団の下っ端達は肝を冷やしていた。

ジャック「お前のそういうところがあの赤鼻に嫌われたんだろ。」

ブラック「ベックマン、お前らも大変なんだな。」

ベックマン「まぁな……。」

ジャックは呆れ、ブラックは同情する始末だ。
しかし幹部達は「いつもそうさ」と笑い飛ばす。

ライコウ「シャンクスはエースに会ったのか?」

シャンクス「あぁ、立派な男だった。 今じゃあ七武海とはな。」

シャンクスはそう言い酒を飲む。
そう、シャンクスはライコウ達の元を訪れる1週間ほど前にエースと会ってたのだ。
その時にはすでに七武海となっており、その際にロジャーの息子であることも知ったようだ。

シャンクス「まさかロジャー船長の息子とはな……これからが楽しみだ。」

その時、モネが口を開いた。

モネ「それよりも、海軍の艦隊を潰してまでここへ来た理由は? 船長さんや副船長は予想がついてるだろうけど。」

シャンクス「…。」

シャンクスは押し黙った。
そう、実はシャンクスはライコウ達とある男(・・・)について話しがあって接触しに来たのだ。
四皇同士の接触は、世界政府にとっては危険極まりないモノであるため海軍の艦隊を派遣したのだが、シャンクス達は瞬く間に撃沈させてこうしてワノ国まで来たのだ。

ライコウ「……ティーチか?」

シャンクス「あァ…アイツは危険な奴だ。」

シャンクスはそう言い、左目の傷を触る。
シャンクスの左目にある三条の傷は、後悔の最中の痛手でもなければ、ライコウや“鷹の目”との戦いで負った傷でもない。
先日「仲間殺し」をして白ひげ海賊団を抜けたティーチの仕業なのだ。

シャンクス「俺は油断などしていなかった。 アイツは機を待ち続けていたんだ。」

ブラック「“白ひげ”の名の陰で息を潜めてたってか?」

シャンクス「そうだ。 アイツは何れ頂点を目指して白ひげを討とうとする気だ。」

シャンクスの言葉に、複雑な表情をする百獣海賊団の幹部達。
思えば、ティーチは白ひげ海賊団の古株でありながら、隊長の座にもつかず名も上げない、得体の知れない男だった。

ライコウ「アイツは今までの海賊とは違う気がする。」

カイドウ「……確かに、あの野郎だけは違和感があったな。」

ライコウとカイドウは、そう確信していた。
今はもう無いが、ロジャーの死後も度々白ひげ海賊団と抗争を繰り広げてきた2人は、一見穏やかで気概のあるティーチが時折見せる獰猛な目付きをこの目で見てきたのだから。

ライコウ「……どうやら俺達は、ジェルマ以上に厄介な奴を相手にする必要があるようだな…。」

ジャック「……。」

ライコウはそう言うと、立ち上がってシャンクスに酒を渡す。

ライコウ「シャンクス、今日はアリガトさん。」

シャンクス「!」

ライコウ「お前ら、臨時幹部会の準備をするぞ。 “標的”が増えちまったからな。」

-------------------------------------------------------------------------------

-海軍本部-

ガープ「ぶわっはっはっは!! エースめ、やりおるわい!!」

センゴク「黙っとれガープ!!! 全く、七武海になったはいいが、食事の為だけにわざわざマリンフォードに出入りしてはたまらん!!」

海軍本部の元帥室では、センゴクがガープを怒鳴っていた。
先日、七武海のゲッコー・モリアを討伐しその後釜となったエースにセンゴクは大層ご立腹なのだ。
海賊王ロジャーの息子であるエースが七武海になったことに対しては、政府上層部も嬉しい誤算だった。「海賊王の血」が世界政府に屈したと世界中にアピールが出来るからだ。
そこまではよかった。問題はそこからだ。
エースは七武海に加入してから政府上層部を常に悩ませているのだ。七武海招集を蹴って遊びに行くわ、四皇に挨拶しに行くというハタ迷惑な行動をするわで海軍元帥のセンゴクはおろか世界政府の最高権力たる五老星すら悩ませている。
一時は「七武海の称号を剥奪し、拘束すべき」と唱える声があったが、エースの人間関係が発覚したせいでそうはいかなくなってしまった。
エースは百獣海賊団の幹部であるサボと義兄弟の関係だ。下手なマネをすれば四皇と戦うハメになるかもしれないという懸念が生まれ、迂闊に手が出せなくなったのだ。
不幸中の幸い、エースはそれに気付いていない。気付かれたらもう手に負えないだろう。

ガープ「飯食うぐらいええじゃろうが、器が小さいのぅ。」

センゴク「そういう問題ではない!! 部下や同僚の気持ちを少しは考えんか!!」

一応言っておこう。当たり前のように海軍本部に出入りしているが、そんなことをする七武海はエース以外誰1人としていない。
本人はただ食堂で腹いっぱい飯を食ったりしてるだけだが、周囲の海兵達からしてみればいつ暴れだすのか気が気でないのだ。

センゴク「ハァ……あの身勝手さはロジャーそっくりだな…。」

ガープ「本人はルージュ(おふくろ)に似てると言っておるがな!!」

センゴク「笑い事じゃない!!! 私は“イリスに預ければ海兵として大いに貢献する筈だ”と言った!!! だがお前は“イリスよりわしの知り合いの方が面倒見がいい”と言って、その知り合いとやらに預けた!!! それでこの始末だ!!! どう責任を取るつもりなんだ!!? ガープ!!!!」

ガープ「ぶわっはっはっはっは!!! わし1人で責任が取れたら政府も苦労しないわい!!! ぶわっはっはっは!!!」

海軍本部では、センゴクの怒鳴り声とガープの笑い声が1時間ほど響いたとか。 
 

 
後書き
イラストシリーズ第4弾はアリスティアです!!

<i6511|38038>

う~ん、バカタレ画力なのはともかく、もう少し細かくやった方が良かったかな? 

 

第34話:刀と0と4

 
前書き
一応記載しますが、ONEPIECEキャラの衣装は少し変わってます。
どう変わってるかは、以下の通りです。

ロー…超新星編(2年前)の衣装の上に黒いコートを羽織っている。
モネ…新世界編の衣装の上に白いマントを羽織っている。
コアラ…ニーソックスやフリルがついた服装の上にピンクのコートを羽織っている。

サボとコラソンは衣装は変わってません。

あ、ちょっと内容を修正しました。 

 
-新世界、とある海域-

ライコウ「まさかこんな名刀が手に入るとはな。 大業物“霧雨丸(きりさめまる)”。」

ライコウは嬉しそうに刀の手入れをする。
先日の航海の折、新世界へ名乗りを上げたヒヨッ子海賊達を瞬殺し残った船から武器を強奪したライコウ達。その際武器庫からある刀を押収し、ライコウはその手入れをしているのだ。

コラソン「そいつが大業物“霧雨丸”?」

モネ「結構大きいわね、ローの“鬼哭”と大差ない長さよ?」

ライコウ「あぁ。 だがよく斬れる上、黒刀じゃないがかなり頑丈な刀身だ。」

この“霧雨丸”は、柄を握る拳を守る部具「護拳」が取り付けてあり、サーベルやカットラスの様な感じだ。刀身はかなり長く、大太刀の部類だろう。
しかし非常に扱いやすく、実践向きだとライコウは語る。

ライコウ「一番驚いたのは、これが俺の愛刀と同じ刀工ってことさ。」

コラソン「何!? ってことは、アンタが腰に差してるその刀の兄弟分か!!?」

ライコウ「正確に言えば、先に作られたのは鬼王だ。 “刀剣図鑑”にそう書いてあった。」

ライコウはそう言って分厚い図鑑をコラソンに差し出す。
“刀剣図鑑”はこの世界に存在する数多くの刀について紹介されてあり、刀の切れ味や逸話、素材などが明確に記されている。

ライコウ「鬼王を作った刀工は“国綱(くにつな)”っつー243年前の男で、“大太刀の国綱”って呼ばれてた大太刀専門の刀工らしい。」

コラソン「へェ……。」

大太刀とは、「野太刀(のだち)」とも呼ばれる長大な刀。自在に振るうには技も必要だがそれよりも腕力や持久力が要求され、どちらかというと扱いづらい刀だ。
尤も、ライコウの様に3m以上の身長を有する人物にとっては丁度いいだろうが。

ライコウ「霧雨丸はまぁまぁ短い方だぜ? 刀の全長は170㎝ぐらいだし。」

コラソン「…常人としては十分デケェぞ。」

コラソンはご尤もなツッコミを炸裂。

ライコウ「一応保管しとくか、俺は一刀流主義者だし。」

その時だった。
部下が突然騒ぎ出し、武器を構え始めるのが見えた。
敵襲らしい。

ライコウ「敵襲か、随分命知らずな奴が来たモンだ。」

『ライコウ様!!』

ライコウの登場に、士気が上がる部下達。

ライコウ「!? アレはまさか……!!」

ライコウは敵の正体に気付き、身構えた。
目の前に現れたのは「66」と書かれた旗を掲げる、巨大な電伝虫を船首とした謎の戦艦。
それは、あまりにも予想外な敵だった。

ライコウ「“ジェルマ66(ダブルシックス)”……ここで鉢合わせとはな。」

そう、百獣海賊団の標的である海遊国家・ジェルマ王国の科学戦闘部隊“ジェルマ66(ダブルシックス)”だったのだ。
それを知り、警戒を強める一同。
ふとライコウは、こちらを様子見する影を見つけた。
影の正体は、くるりとした眉毛にオールバック、4の字が刻まれたマントを羽織っている男だった。

?「百獣海賊団だな?」

「あぁ!?」

「てめェ誰に物言ってんだ!? ここにおられる方々は、かの四皇・カイドウ様を支える豪傑達だぞ!!!」

オールバックの男の上から目線な言い方に腹を立てた部下達が怒りを露にするが、質問した側は全く動じていない。

?「私の名はヴィンスモーク・ヨンジ……四皇と揉める気は無い。 早々に立ち去れ!」

コラソン「いや、寧ろ俺らが帰ってる最中なんだけど!!?」

どうやらヨンジという男はどこか勘違いをしているようだ……。

ヨンジ「まぁ、そんなことはどうでもいい……お前達は随分俺達を嗅ぎまわしてるようだが、何を企んでいる? 我々と取引でもしようという輩ではあるまい。」

ライコウ「言っても言わなくても同じ結果だと思うが……どうしても聞きたきゃこの俺を倒すこったな。」

ヨンジ「ともかく、どくんだ。 我々は急いでるんだ。」

ライコウ「お前らがどけ。 俺達海賊が国に屈すると思うか?」

一触即発になるヨンジとライコウ。
ヨンジは額から汗を流し、ライコウは余裕の笑みを浮かべる。
その時、ライコウ達の前に女性が突如降り立った。
蛾の羽を象ったような衣装を着たセクシーな女性で、ヨンジと同じ眉毛をしている美女だ。

?「ごめんなさいね、弟は人でなしなの。」

モネ「……何者なの?」

?「私はレイジュ。 初めまして“雪害のモネ”さん。」

レイジュはそう言い笑う。
モネは敵意は無いと判断したのか、クスリと笑みを浮かべる。

コラソン「ジェルマ……最近は悪い噂ばっかだな。 ビッグ・マムやドフラミンゴと繋がってるとか世界中の戦争を煽ってるとかな。」

レイジュ「そうなのよ、不本意だわ…。」

ライコウ「戦争屋に本意も不本意もあるのか?」

レイジュは電伝虫を使って船をどかすように命令する。
さすがのヴィンスモーク家も、四皇の一味とは戦いたくないようだ。

レイジュ「元々私達は人探しをしてたの。 だから戦意は無いから安心して。」

レイジュはそう言い、ひとっ飛びで船に乗り移る。

ヨンジ「今回は見逃す。 だが次は覚悟しておけ。」

レイジュ「また会う機会があれば、その時は戦争かもしれないわね、“剣帝”。」

ライコウ「クク……“海の皇帝”に盾突いて、タダで済むとは思うなよ?」

ジェルマの軍勢は、そのまま何処へと去っていった。

ライコウ「アレがジェルマか……。」

コラソン「人探しっつーより、連れ戻すような雰囲気だったような…。」

ライコウ「間違っちゃいないだろうな。 ジェルマはそういう連中(・・・・・・)だからな。」

『…!?』

ライコウの意味深な発言に、疑問を抱く一同。
そんなことなど露知らず、ライコウは船室へ戻っていくのであった。 
 

 
後書き
ヒオのイラストです。

<i6512|38038>

次回、またオリキャラが参上します。
どんなキャラかは、お楽しみです。 

 

第35話:ヴィンスモークの裏切り者

 
前書き
今更ですが、この一味の幹部格は、以下の通りです。

◦船長
◦副船長
◦各師団団長
◦各部総長・総監・副長
◦双将軍

因みに師団長はジャック、モネ、原作未登場の2名です。
 

 
新世界に君臨する四皇に挑む輩は、少なからずいる。
多くは船長の顔をまともに拝めないまま海の藻屑となるか、傘下に下るかだ。
そんな百獣海賊団にも、挑戦者は現れた。
ライコウはサボ達を派遣し叩き潰すよう言ったのだが……。

カイドウ「今、何つった?」

コラソン「いや…3日戦っても決着(ケリ)つかないと言ったんだが……。」

ライコウ「いやいやいや!! お前いくら何でも冗談止せよ、サボの腕っぷしは幹部でも最高クラスだぞ。 そんじょそこらのチンピラに苦戦すっかよ!!」

ライコウはコラソンに酒瓶を投げつける。
顔面に直撃し悶えるコラソンは、涙目で言葉を紡ぐ。

コラソン「相手が覇気使いだったからっつーのもあるが……女だから戦いにくいかも知れねェ。」

ライコウ「へェ~……って、ちょっと待て。 女海賊なのか!?」

コラソン「あぁ。 名前はマイ……“剣鬼”っていえば分かるか?」

「「…!!」」

2人は思い出した。
ここ最近、四皇ほどではないが次々と新世界で名を馳せる海賊を蹴散らす謎の女海賊が“剣鬼”だ。懸賞金は4億ベリーで、海軍の幹部達も警戒するほどの実力者だ。
だが海賊としての経歴は僅か3ヶ月。生き急いでいるようにも感じる相手だ。

ライコウ「せっかくだ、御本人が行った方がいいかもな。」

コラソン「は!? ちょ、アンタ本気で言ってんのか!!?」

ライコウ「つまらねェ冗談は言わねェよ。」

コラソンは悟った。
これから起こるであろう恐ろしき天災(・・)を。

カイドウ「行くか。」

ライコウ「俺は手ェ出さないから。」

金棒を携え重い腰を上げるカイドウに、コラソンは顔を引き攣らせるのだった。



















-ワノ国の海岸にて-

サボ「ハァ…ハァ…。」

マイ「ハァ…ハァ…!!」

雪が降る中、未だに決着がつかない勝負。
双方の味方は、2人の勝負を見守る。

サボ「ハァッ!!」


ガキィン!!


マイ「くぅ!!」

鉄パイプと剣が火花を散らして何度もぶつかり合う。
一瞬の隙が命取りの激戦は、3日も経っても決着はつかない。
双方体力も限界が近く、倒れるのも時間の問題だった。
その時、地響きが起きた。

「な、何だ!!?」

「地震か!!?」

ビリビリと空気が震える。
だがそれは地震というより“足音”に近い音だった。

マイ「まさか……!」

カイドウ「俺の首を取りてェ小娘はどこだ? 望み通り俺が相手してやる……!!」

『“百獣のカイドウ”だァァァァァ!!!!』

マイの海賊団の船員達は、カイドウの巨躯と威圧感、迫力に腰を抜かす。
サボは部下達に抱えられ、避難させされる。

サボ「カイドウさん……!?」

カイドウ「ウオロロロロ…俺1人で十分だ。」

地鳴りのような足音を響かせてマイに接近するカイドウ。
それを許すまいと部下達が得物を構えて立ち向かうが……。

カイドウ「ぬぅん!!」


ドゴォン!


『うわあああああああ!!!』

カイドウは覇王色の覇気を放った。
その威力は暴風に等しく、立ち向かった敵は成す術も無く吹き飛ばされていった。

マイ「(これが、四皇の覇気……!!!)」

マイは敗北を悟るも、剣を構える。

カイドウ「?」

マイ「私と勝負しろ、“百獣のカイドウ”!!!」

体力的にも精神的にも限界な自らに鞭を打ち、刃を向けるマイ。
武装色の覇気を纏わせ、渾身の一撃をぶつけるつもりだ。
カイドウはそれを察し、金棒を構えた。

カイドウ「ケツの青いガキ風情が、生意気な…!!」

マイ「ハァァァァァァァ!!」

マイは跳び、カイドウの心臓を狙って平突きを繰り出した。
そしてカイドウは豪快に金棒を振るった。


-------------------------------------------------------------------------------

勝負は、あっという間だった。
マイの渾身の一撃は、四皇(カイドウ)の一撃によって粉砕され秒殺されてしまったのだ。
カイドウの目の前には、血を流してうつ伏せに倒れるマイがいる。周りにいた彼女の部下達も、ブラック1人の手によって全員倒され、捕縛されている。
彼女の一味は、事実上の壊滅状態だ。

カイドウ「!」

その時、マイの身体がピクリと動いた。
しかし得物の剣は砕かれ、まともな武器もないため無駄な足掻きだ。

マイ「(これが…世界最強の生物の実力………!!)」

カイドウ「ウオロロロロ……!! まだ立つか、小娘。」

すると、ライコウが“何か”に気付き下駄の音を鳴らしてマイの元に駆けつけた。
そして彼女の眉毛を見て驚愕した。
何故なら、その眉毛はくるりとしたあの眉毛だったからだ。

ライコウ「お前、まさか……!?」

マイ「そうだよ……私は“人殺しの一族(ヴィンスモーク)”の人間(クズ)さ…!!」

マイは苦虫を噛み潰したような顔で語り始めた。
彼女はジェルマ66(ダブルシックス)の幹部であったが、家族の中で最も仲が良かった三男が王族の名を捨ててまで家族と縁を切って以来家族に対する嫌悪感を露にし、三男同様縁を切って海賊になったという。
元々彼女は海賊に対し憧れもあったため、家族から疎ましがられていたらしいが。

ライコウ「俺達を狙ったのは、どういう経緯だ?」

マイ「……隠れ蓑に一番最適だと感じたから。」

どうやらマイは幹部に打ち勝つことで傘下になることを認めてほしかったようだ。確かに四皇の傘下となればヴィンスモーク家は迂闊に手を出せない。

ライコウ「別に話し合いでもよかったんだがな……丁度いい。 実は俺達はお前が忌み嫌う一族をフルボッコにしようと思っててな。 せっかくだから傘下にしてやるよ。 これもまた縁だ。」

マイ「!!!」

ライコウ「カイドウ、異議は?」

カイドウ「好きにすりゃあいい。 海賊だからな。」

カイドウはそう言い、瓢箪の中の酒を豪快に飲む。

ライコウ「さてと…俺の名は“剣帝”ライコウ。 改めてお前の名を訊こう。」

マイ「……ヴィンスモーク・レイ・マイ。 マイって呼んで……。」

ライコウはマイに救いの手を差し伸べ、マイはライコウの手を掴んだ。
これが後に、海賊の歴史上最大規模の戦争の引き金になるとは、まだ誰も知る由も無かった。 
 

 
後書き
前回の人探しは、マイを探してたんですよね。
今回はイラスト無しですが、マイの設定を公開しますよ。


【マイ】
本名:ヴィンスモーク・レイ・マイ
身長:200cm
年齢:第35話時点・23歳→原作開始時点・24歳→2年後・26歳
懸賞金:第35話時点・4億ベリー→原作開始時点・5億ベリー
誕生日:1月10日
容姿:金髪でスタイルはイイ方。もちろんサンジと同様の眉毛である。
武器:無銘の片手剣だったが、折られたので現在は大業物“霧雨丸”
服装:動きやすい服装で、その上にマントを羽織っている。
好きなもの:料理、宴
嫌いなもの:ヴィンスモーク家
所属:百獣海賊団/傘下
異名:“剣鬼”
イメージCV:戸松遥
性格:基本的には常に冷静で、如何なる時も動じない。ただし家族絡みの話だと感情の起伏が激しくなることも。
能力:非能力者だが武装色の覇気を扱え、剣技はライコウほどではないがかなり秀でている。身体能力も高く、百獣海賊団の幹部達に引けを取らない実力を有している。
モデル:無し 

 

第36話:幹部会と麦わら帽子

 
前書き
遅れて申し訳ありません。色々事情があったので。
やっと原作に突入です。 

 
海賊王ロジャー処刑から早22年。
多くの海賊達がひしめく中、皇帝のように君臨している大海賊「四皇」の一角たる“百獣のカイドウ”が率いる百獣海賊団は、幹部会を開いていた。
幹部会は定期的に行われる、今後の方針を決める会議だ。最近は標的である「ジェルマ王国」、「ドフラミンゴ」、「黒ひげ」を主な話題として議論している。どの勢力も頭の切れる者が多く、一筋縄では行かない猛者だ。

ライコウ「んで、アリスは“政府側の兵器を輸入している可能性もある”と踏んでんのか?」

アリスティア「はい。 こちらのカードは“ロリシカ鉱石”、“マナト・ヒオ”、“ヴィンスモーク・レイ・マイ”。 どれも新世界の大物達が欲しがるカードばかり…対抗するにはそれなりの戦力を整える筈です。」

コアラ「特にマイさんはジェルマの元幹部……ジェルマ側としても是が非でも手に入れたいでしょうし、あわよくばヒオちゃんも……。」

アリスティアとコアラを司会に、会議を進める。
訳あって百獣海賊団は多くの犯罪組織と敵対しているが、「3枚のカード」という大物達が喉から手が出るほど欲しがるモノを有している。
しかも世界中の軍事バランスを崩壊しかねないのもあるため、色々面倒ごとが増えてるのだ。尤も、武闘派揃いの百獣海賊団は敵対組織を尽く蹴散らし蹂躙したが。

ブラック「昔の海とは随分違うからな……。」

ジャック「金品の臭いに惹かれたチンピラのような海賊しか出て来ない時代だ、仕方ねェ。」

ブラックとジャックはそう言い、酒を飲む。
白ひげやロジャー、カイドウ達のように、海賊としての誇りと自己責任を重んじる義理堅い「海の男達」は随分少なくなった。
「夢よりも金」、「義よりも利益」……それが今の時代なのだ。

ライコウ「政府も黒い噂があるしな……軍資金調達のために新世界の大物相手に兵器を売りつけてるって話もある。」

モネ「それを取り仕切ってる可能性が一際高い勢力が1つあるわ。」

カイドウ「……ドフラミンゴのガキか。」

カイドウの一言を聞き、ローとコラソンは眉間にしわを寄せる。
ドンキホーテ・ドフラミンゴ率いる“ドンキホーテファミリー”は、人身売買や武器・兵器・ドラッグなどの密貿易を行っている、犯罪組織の色合いが強い海賊団。
王下七武海の一角のため、政府との結びつきもある。何かしらの密約の1つや2つはあるだろう。

カイドウ「……ビッグ・マム(あのババア)も、政府の取引に絡んでるのか?」

コアラ「……0%ではないのは確かだと思います。」

コアラはカイドウの質問に答える。

ライコウ「テゾーロからの情報も、やはり政府が色々“闇稼業”に手ェ染めてるらしい。」

カイドウ「俺らに軍艦奪われたり艦隊潰されたり、散々な思いしてるからだろ。」

ライコウ「ハハハ!!! 違ェねェや!!」

船を一から造るのが面倒なため、ライコウは通りすがりの海軍船を手当たり次第奪っては解体・再利用してきた。
政府側は懐の余裕が無いのかどうかは知らないが、まぁ色んな“闇”を抱えてる政府なら有り得る話だ。

ライコウ「……一応はいつも通り様子見だな。 だが最近“超新星”の台頭で前半の海の方が荒れている。 新世界進出の際に“闇”に首突っ込むバカもいるだろうから、注意はするべきだな。」

ライコウの一言で、幹部会は終わった。

サボ「あ~、疲れた!!」

コアラ「サボ君、そんなこと言わないの!! これから幹部会は増える可能性もあるんだよ?」

サボ「つってもよ、ライコウさん1人でもよくね?」


ギュウゥゥゥゥ…!!


サボ「イダダダダダダダ!!!」

コアラ「サァ~ボォ~くぅ~ん…? それは聞き捨てならないんだけどォ~~…!?」

コアラは青筋を浮かべながらサボの頬を力一杯抓った。
サボはあまりの痛さに涙目である。

コアラ「いい!? 私とサボ君は“双将軍”!! ライコウさんの職務を2人でサポートしなきゃならない立場なの!! その立場の人間が仕事サボってどうするの!? サボだけに!? いい加減にしてよ!!」

サボ「……コアラって、親父ギャ「何か言った!?」……スイマセン…。」

コラソン「(コアラって、ライコウさんにちょっと似てるような…。)」

コアラに叱られるサボ……この光景は最早日常茶飯事だ。
因みに百獣海賊団は、最近カップルが誕生し始めている。ライコウとモネはもう夫婦と言っても過言ではないし、サボとコアラのカップルも然り。
最近はローがアリスティアと一緒にいる時も多く、「ローもデキたか?」と噂になっている。ロー自身はどう思われても興味が無いからいいらしいが、アリスティアはローにゾッコンであるらしいので、カップル説は否定はできない。

コラソン「ジャック、俺って生涯独身なのかな…?」

ジャック「知るか、バカ野郎。」

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-時同じくして、“東の海(イーストブルー)”-

かつて海賊王ロジャーや海軍の英雄・ガープが生まれた“東の海(イーストブルー)”。
その海にあるドーン島・フーシャ村の港から、一隻の小船が出航した。

?「やー、今日は船出日和だなー!」

赤いベストにデニム生地の青色の半ズボン・草履を履いており、麦わら帽子を被った少年。彼こそが、四皇“赤髪のシャンクス”から麦わら帽子を預かり、“剣帝”ライコウにロジャーの真実を聞かせてもらったルフィだった。
成長した彼は海賊として海へ出たのだ。手漕ぎボートで。

ルフィ「ライコウとシャンクスは元気かなー、早く会いてェな!!」

すると、後ろに気配がしたので振り返ってみると、水飛沫を上げて現れたのは海王類“近海の主”だった。しかしルフィは嬉しそうに笑う。

ルフィ「10年鍛えた俺の技を見ろ! “ゴムゴムの”ォ…“(ピストル)”ゥ!!」


ドゴォン!!


ルフィは思い切り手を伸ばす。伸ばされたそれは見事に当たり、“近海の主”は海に姿を消した。
誰よりも自由に生きることを誓い、修行を重ねたルフィの技は海王類をも一撃で殴り倒したのだ。

ルフィ「よし、行くか!!」

ルフィは両手を高く掲げ、叫んだ。

ルフィ「海賊王に、俺はなる!!!」

たった1人で、しかもボートで大海に出た少年・ルフィ。
この少年が後に世界を震撼させる事件を立て続けに起こすことは、まだ誰も知る由も無かった……1人を除いては。 
 

 
後書き
最近考えてみたら、ワンピースの刀剣類って結構な業物多いですよね。刀剣乱舞とかで擬人化したら相当強そう。特に白ひげの薙刀とミホークの黒刀とローの鬼哭。
ライコウが刀剣男士とか審神者になったら……言語に絶しますね。(笑) 

 

第37話:“犯罪界の絶対王者”

 
前書き
遅れて申し訳ありません。またまた立て込んでて……今回も新キャラ登場です。
それもとんでもない奴です。 

 
いつもより寒さが和らいだワノ国。
新世界に君臨する「四皇」の1人“百獣のカイドウ”率いる百獣海賊団の根城では、珍しく来客が来ていた。

ライコウ「たった1人で、しかも刀一本で四皇のシマに殴り込みするなんざ、大した度胸だねェ。 若さゆえってか?」

?「ハハハ、まぁ無茶をするなら今の内ってところかな?」

カイドウ「ウオロロロロ、中々面白いガキだ。」

?「海の皇帝にそう言われるなんて、嬉しいな。」

ライコウとカイドウの目の前に座っているのは、刀を携えた青年だった。
とても穏やかそうだが、たった1人で四皇(カイドウ)の根城に乗り込む胆力や新世界でも最強クラスの実力者であるカイドウとライコウを相手に飄々とした態度で会話をするなど、只者ではない雰囲気を醸し出している。

「あのガキ、何者だ?」

「ライコウ様を相手にあそこまで余裕見せるとは……相当な輩だぜ。」

「相当な自信家のようだが……。」

青年について色々語り合う部下達。
そんな中、様子を見ていたコラソンが冷や汗を流しながら口を開いた。

コラソン「まさか“犯罪界の絶対王者”が来るとはな……。」

『“犯罪界の絶対王者”?』

コラソンは、カイドウとライコウを相手に笑顔で話す青年について話し始めた。
青年の名は、ギネス・スパーツィオ。裏社会ではまずその名を知らない者は誰もいない程の超有名人であり、その若さとは裏腹にあの世界政府ですらその動向を警戒し、新世界で暗躍する多くの犯罪組織から怪物のように恐れられる世界的犯罪者と言われている。

コラソン「ギネスは“世界最凶の単独犯”とも呼ばれている。 天竜人殺害や政府機関連続襲撃、世界各国で起きる反政府組織によるクーデターのパトロン……どれほどの前科があるか分からない大物さ。」

『……!!』

ギネスの正体を知り、言葉を無くす一同。
そんな中、ブラックは煙草を吸いながら口を開く。

ブラック「問題は、何故“犯罪界の絶対王者”がここに来たのかだな……。」

ギネスは非常に頭の切れる男であり、その頭脳明晰さは海軍だけでなく、あの諜報機関・CP(サイファーポール)すら欺いたほどだ。
油断できない相手であり、その腕っぷしも計り知れない。

ライコウ「それで? 一体何の用だ?」

ギネス「……“ジェルマ66(ダブルシックス)”や“ドンキホーテファミリー”を潰そうとしているようだね。」

「「!!」」

ギネス「あなた達よりは若いけど、俺は“犯罪界の絶対王者”なんだ。 抜かりはないさ。」

ギネスは口角を上げて交渉を始めた。

ギネス「俺は上っ面の正義を掲げて海賊以上に質の悪い事する政府が大っ嫌いでね。 ここでドカンと一発ブチかまそうと思ってたんだ。 あなた達は“新世界の怪物”と同盟を結んでるらしいけど、それだけじゃあ物足りないでしょ?」

カイドウ「この俺と手を組もうってか?」

ギネス「利害は一致しているでしょ? お互い損は無い筈だよ。」

ギネスは酒をグビグビと飲みながら不敵な笑みを浮かべる。

ライコウ「……お前は何を成そうというんだ?」

するとギネスは、深い悲しみの伴った激しい憎悪を一瞬だけ顔に出した。だがそれもすぐに消えると、彼は1つ大きな息をついて先を続けていた。

ギネス「……俺はかつて、政府に家族と故郷を奪われた。」

「「……。」」

ギネス「その時の“落とし前”を付けたいだけさ…俺は俺のやり方で政府を変える。 その後は……ノープランかな。」

ライコウ「革命軍に潰されたらどうする?」

ギネス「その時はその時。 ドラゴンが潰したらそれで良しさ……。」

ライコウは考える。
新世界の怪物(ギルド・テゾーロ)”だけでなく“犯罪界の絶対王者(ギネス・スパーツィオ)”が百獣海賊団(こちら)と、手を組むとなるとヴィンスモークやドフラミンゴへの牽制ともなる。
そうなれば、例え他の大物達が徒党を組もうと問題ない。損も無く莫大な利益を得られるだろう。

ライコウ「カイドウ。」

カイドウ「……面白ェ。」

カイドウはそう言うと大きな盃をギネスの前に置き、酒を注いだ。

カイドウ「飲め…お前もイケる口だろ?」

ギネス「……これはどうも。」

こうして百獣海賊団は“世界最凶の単独犯”と同盟を結び、盃を酌み交わした。
“犯罪界の絶対王者”ギネス・スパーツィオ……その実力、未知数。


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-同時刻、偉大なる航路(グランドライン)

白土の島・バルティゴ。
この島は打倒世界政府を目的に暗躍する反政府組織「革命軍」の総本部が置かれている。革命軍は不条理な社会とその未来を正そうと、世界中にその思想を広め、政府寄りの国々にクーデターや革命を引き起こしている。
その本部内では、黒いローブを纏った男が新聞を手にしていた。

?「……やはり百獣海賊団の標的は“ドンキホーテファミリー”と“ヴィンスモーク”のようだな。 だが四皇が“新世界の怪物”と同盟を結ぶのは想定外だ。」

「我々も冷や汗を流しましたがね……。」

「ギネス・スパーツィオもコンタクトを取っている可能性もありますが……。」

?「いや、もうすでに同盟を結んでると考えた方がいい。 アイツは自分の幸せを奪った政府を憎んでるからな。」

新聞を読みながら同志と話し合うのは、モンキー・D・ドラゴン。“世界最悪の犯罪者”と呼ばれる革命家兼革命軍総司令官であり、海軍の英雄であるガープの実子だ。

ドラゴン「こうなった以上、ジェルマも黙ってはいまい。 近い内に大物達と手を結び、カイドウ達の勢力拡大を力づくで止めるだろう。」

「ってことは…?」

ドラゴン「新世界で活動している“維新軍”に連絡し、バルディゴへ来るよう連絡しろ!!」

「はっ!!」

ドラゴンの指示を受けた者達は、早速動き出す。

ドラゴン「(イワ、くま……頼むぞ…!)」

ドラゴンは確固たる強い信念を秘めた瞳で、ある方向を見る。
そこがかつての故郷である“東の海(イーストブルー)”であることは、まだ誰も知らない。 
 

 
後書き
新キャラ・ギネスの設定で~っす!

【ギネス・スパーツィオ】
身長:310cm
年齢:第37話(原作開始)時点・30歳→2年後・32歳
懸賞金:第37話(原作開始)時点・13億ベリー
誕生日:5月2日
容姿:黒髪で端正な顔立ちをしており、身体には火傷や刀傷の痕がある。
武器:大業物・和泉安定
服装:シャツやズボンなど、カジュアルな服装の上にロングコートを羽織っている。
好きなもの:酒、賭博、強い信念のある者
嫌いなもの:世界政府、世界貴族
所属:なし
異名:“世界最凶の単独犯”、“犯罪界の絶対王者”
イメージCV:櫻井孝宏
性格:無邪気かつ冷静、頭脳明晰。その一方で感情任せに暴れることもある。
戦闘力:“スぺスぺの実”の能力者で、一定の範囲の空間を自在に操ったり相手を自分の創った空間に閉じ込めることが出来る。剣の腕もかなりのもので、並大抵の覇気使いも歯が立たない。覇王色の覇気も扱えるため、本気を出したらどうなるか分からない。
モデル:四ッ谷先輩(詭弁学派、四ッ谷先輩の怪談。)、松野おそ松(おそ松さん)など 

 

第38話:“スぺスぺの実”の片鱗

 
前書き
ギネスのチートぶりをご覧ください。 

 
-ワノ国-

“犯罪界の絶対王者”ギネス・スパーツィオは、目の前に立つサボ、ロー、コアラの3人と対峙していた。
何故こういう状況になったのかは、至って単純。ギネスの実力を知りたいからである。

ギネス「“双将軍”に“死の外科医”か……中々強そうじゃんか。」

ギネスはそう言い、笑みを溢す。

ライコウ「そいつらは俺が鍛えたから、半端な覚悟で掛かるとケガすんぞ。」

ギネス「それはどうも。」

今回の演習は、多くのギャラリーで賑わっている。
幹部の中でも比較的若く、なおかつ高い身体能力・腕っぷしを有する3人と“犯罪界の絶対王者”。果たしてどちらが上か、見ものである。

ライコウ「始めていいぞ。」

ライコウの合図とともに、演習が始まる。

ロー「“ROOM(ルーム)”!!」

ローは球体上の特殊な結界を展開する。
オペオペの実は展開したエリア内での移動、切断、接合、電撃など一般的に外科手術で必要なあらゆる行為を自在にできるようになる万能能力。今までの悪魔の実の中でも際立って高性能な実なのだ。

ロー「気を抜くなよ、“絶対屋”!! “切断(アンピュテート)”!!」

ローは愛刀である大太刀“鬼哭”を抜き、振るう。
切断(アンピュテート)”は直接刃が届いていなくても刀を振るった軌道の延長線上に存在する全ての物体を纏めて切断してしまう技……覇気使いでも十分な脅威となり得るのだ。
しかし、明らかに軌道の延長線上にいるのにも関わらずギネスには通用してない。どうやらロー以上の覇気使いのようだ。

ロー「“サボ屋”、気を付けろ。 俺以上の覇気使いだ。」

サボ「分かってるって!!」

するとサボは右腕に武装色の覇気を纏わせ、拳を振るった。

サボ「“覇王拳・狼王波(ろうおうは)”!!」


ドゴォン!!


サボはライコウ直伝の“覇王拳”の技の1つで、海軍の軍艦すら沈めるほどの破壊力を誇るパンチを放った。

ギネス「(狼の形をした拳圧!?)」

高速で突っ込んでくる拳圧に対し、ギネスも技を仕掛けた。

ギネス「“次元刀”!!!」


ズバァン!!


『!!?』

ギネスは居合を放った。
すると、サボが放った拳圧どころかローが展開していた“ROOM(ルーム)”ごと切断してしまった。

『何じゃありゃ~~~~!!!?』

カイドウ「こりゃあ……!!」

ライコウ「オイオイ、マジか……!?」

ローが展開した“ROOM(ルーム)”は真っ二つになり、そのまま砕け散る。
サボの攻撃も真っ二つで、海や空へ飛ばされてしまう。

コアラ「ウソでしょ……!?」

ロー「冗談じゃねェぞ、オイ……。」

一同が騒然とする中、サボが口を開く。

サボ「……アンタ、超人(パラミシア)系の能力者か!?」

サボの問いに、ギネスは「ビンゴ」と言い、自身の能力の説明を始める。

ギネス「俺は“スぺスぺの実”の能力者である空間人間。 今放った技は悪魔の実の能力による結界やバリアをも切断する剣技“次元刀”だ。」

“次元刀”はどうやら悪魔の実による攻撃・防御すらも切断してしまう攻撃らしい。“ROOM(ルーム)”を斬り裂いて無に還したほどの強力さを知り、ローは冷や汗を流す。
ローにとって、“ROOM(ルーム)”はオペオペの能力を行使する上で一番必要となる技だ。それを破られるとなると、ローはほとんど肉弾戦でしか戦えないも同然なのだ。

ロー「相性最悪だな……。」

ローは思わずそう呟く。
すると、コアラがトンファーを構えてサボに声を掛ける。

コアラ「サボ君、ここは2人で行くよ!!」

サボ「おぅ!!」

サボとコアラはそれぞれの得物に覇気を纏わせ、黒く硬化させる。
そしてそのまま突っ込んでいき、猛攻を掛ける。
金属音が鳴り響き、それと共に覇気の衝突による放電現象も起こる。

ギネス「っ……強力だ、これが“双将軍”の実力の片鱗か…!!」

ギネスは余裕の笑みを浮かべながら攻撃を捌いているが、隙を与えないサボとコアラに驚いてもいた。
覇気をフル活用した強力かつキレの良い攻撃は、少なくとも並大抵の修行で得るのは困難だ。ギネスは「ライコウの指導力が窺えるな」と思わず呟く。

ギネス「だが、こちらも侮られるわけにもいかないな。」

ギネスはそう言うと一旦退く。
コアラはその隙を突こうと間合いを詰める。
だが、それが仇となった。

ギネス「いくら海賊でも、女性を斬る訳にはいかないからね。 こっちで勘弁してね。」

ギネスの掌に穴が開く。
するとコアラはそこに吸い込まれていき、スポンッというどこか間抜けな音を残して姿を消してしまった。

サボ「お前!!」

ギネス「怒るな怒るな、別に取って喰おうとはしねェから。」

サボの猛攻を捌くギネス。
ローも参加し、混戦が続く。

ギネス「仕方ない、まとめてやるか。」

するとギネスは能力を駆使して、サボとローの眼前に黒い霧のような空間を瞬時に召喚した。
それは一瞬で現れたため、避けようがなく、そのまま突っ込んでしまう2人。


フッ!


「「!!?」」

何とローとサボの目の先にいたギネスは一瞬で姿を消した。
そして……。


ドンッ!


「「!?」」

2人は突然の衝撃に倒れ、意識を奪われた。
そこに立っていたのは、いつの間にか瞬間移動していたギネスだった。

ジャック「……何をした!?」

ブラック「瞬間移動したってのは分かったが……。」

多くの修羅場を経験してきた古株2名も、困惑する。
すると、ライコウはそれについて語った。

ライコウ「ローとサボの目の前に異空間を創り出し、そこに触れた2人の背後へワープして斬りつける技……といったところか。」

ギネス「さすが剣帝様。 何もかもお見通しって訳で。」

ライコウ「ペラペラ言ってねェでコアラを解放しろ。」

ギネスはライコウに言われ、掌の穴からコアラを吐き出した。

カイドウ「掌から生んだ“穴”も、異空間か?」

ギネス「主に拘束用に、ね。」

どうやらコアラを吸い込んで閉じ込めたあの穴は、ギネスが用意しておいた異空間のようだ。

アリスティア「コアラちゃん、どうだった?」

コアラ「……“無”でした。」

コアラは引き攣った笑みで返答する。

アリスティア「成る程、それは興味深いですね♪」

アリスティアはそう言い、銃剣を構える。それに反応したギネスは、顔色を悪くする。
そう、今ここで気付いたのだ。アリスティアの武器は、海楼石を含んでいることを。

ギネス「え~っと、君は?」

アリスティア「ナリウス・アリスティアです♪ この“海姫”の偉大なる研究にご協力を♪」

ギネス「そうか……断る!!」

ギネスは嫌な感じを察したのか、異空間を創ってそこに飛び込み逃走。
アリスティアは「卑怯です!!」と叫び、残念がる。

ライコウ「……“犯罪界の絶対王者”の弱点、見ィ~っけ。」

カイドウ「能力者は能力者か。」

コラソン「(いや、アレはどっちかっていうと海楼石の銃剣っていうよりアリスの方だと思うぞ……。)」

何れにしろ、「どんなにチートな能力でも、所詮は悪魔の実である」……それを改めて思い知らされる一同だった。 
 

 
後書き
ある程度話を進めたら「刀剣乱舞」とのコラボ小説でも書こうかなと思います。
まぁ、やるかどうか分かんないんですけどね。
マイとギネスのイメージ図っていうかイラストは近い内に載せるつもりです。 

 

第39話:“東一番の悪”

ブラックはコートをなびかせて廊下を歩く。
その手には新聞を携えており、どうやら新聞に記載されている一面について報告しに行くようだ。

ブラック「…モンキー・D・ルフィ……まさかガープの孫とはな。」

ブラックの携えた新聞には、満面の笑みを浮かべた麦わら帽子を被った少年の写真が。
彼は“東の海(イーストブルー)”の海賊で、何と3000万ベリーだそうだ。
ライコウ達は初頭手配時はいきなり億を超えてたが、賞金首の平均賞金額(アベレージ)が300万ベリー程度である“東の海(イーストブルー)”では破格の金額だ。

ブラック「確かこのガキに副船長は会ったんだったな。」

ライコウは少年・ルフィと面識がある。
「これを知ったら相当喜ぶだろうな」と思いながら、ライコウの部屋へ辿り着きスパンッと襖を開けた。

ブラック「副船長、ちょっとい……。」

ブラックは目の前の光景に放心状態になった。
そこには、モネを押し倒していたライコウの姿が……。

ブラック「すまん、取り込み中だったか!! どうぞ続けてください!!」

ライコウ「待て待て待て。 何ちゃっかり見ようとしてんだ。」

ライコウは立ち上がり、スパンッと襖を閉めた。
そしてモネの傍へ向かい、ドカッと胡坐を掻く。

ブラック「いや…そりゃあ気になるだろ。 “おしどり夫婦”の閨事(ねやごと)なんだしよ。 ってかカイドウさんとか気にしねェのか?」

ライコウ「アイツは基本的には責任さえとりゃ気にしねェタイプだからな……昔からネチネチしない性格だし。 んで、何の用?」

ブラック「!! あぁ、実は見てほしいのがあってな。」

ブラックはそう言い、ライコウに新聞を渡す。
新聞の一面には、「東一番の悪、“麦わらのルフィ”!!」と書かれていた。

ライコウ「(ルフィ……やっとか…!!)」

ライコウは思わず笑みを浮かべる。
この報告を待っていたといわんばかりの嬉しさを露にする。

ブラック「“道化のバギー”、”首領(ドン)・クリーク”、“ノコギリのアーロン”……“東の海(イーストブルー)”の大物達を短期間で撃破しているルーキーだ。」

モネ「モンキー・D……海軍の英雄(ガープ)の親族のようね。 なら納得だわ。」

モネは興味深そうにルフィの写真を見る。

ライコウ「まぁ、これくらいやってもらわないと困るわな。 新世界の大物達は言語に絶する実力者ばかり……この程度で浮かれねェことを祈るばかりだな。」

ライコウはルフィがこの先どうなるか、大方の予想は付いている。
だが、転生前とは大分原作とズレているのも事実……シャボンディまでは原作通りだろうと踏んでいる。一応。

ライコウ「(問題は崩壊後…頂上戦争もあるだろうし、それなりの対処はするか。)」

ブラック「報告は以上。 俺はここで失礼する。」

ライコウ「今度から声掛けて返事聞いてから開けろ。 次やったらシバくからな。」

ブラック「ハァ…善処する。」

ブラックは溜め息を吐いて部屋を後にした。


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偉大なる航路(グランドライン)、とある島-

新世界に君臨する四皇の一角であり、世界四大剣豪でもある“赤髪のシャンクス”率いる赤髪海賊団の元に、ある男が訪れていた。

「うわぁっ!! “鷹の目”!!?」

「貴様、何しに来た!!?」

ミホーク「騒ぐな、お前達に用はない。 幹部共はどこだ?」

来訪者は、何と王下七武海であり世界四大剣豪でもある、あの“鷹の目のミホーク”だった。
かつての宿敵に用事があるようだ。

ミホーク「こんな島でキャンプとは、呑気な男だ……。」

そう呟きながら、森の中を進む。
暫く歩くと、そこにはシャンクスと幹部達、そして報告に行ったであろう先程の部下がいた。

シャンクス「…よぅ“鷹の目”、こりゃあ珍客だ。 俺は今気分が悪ィんだが、勝負でもしに来たか?」

ミホーク「フン…左腕を失った貴様と、今更決着を付けようなどとは思わん。」

そう言いながら、ミホークは懐から一枚の紙を出す。

ミホーク「面白い海賊達を見つけたのだが…ふとお前が昔していた話を思い出した。 ある小さな村の、面白いガキの話をな。」

そう言ってミホークは巻いていた紙を見せつける。
それは、つい最近話題になっている“麦わらのルフィ”の手配書であった。
それを見た幹部達は、驚愕する。
そう、彼らは10年ほど前にその少年と出会っているからだ。

シャンクス「…来たか、ルフィ!」

シャンクスはそう笑い、ミホークを見据える。

シャンクス「そうとなりゃあ“鷹の目”。」

ミホーク「?」

シャンクス「このまま帰す訳にはいかねェ。」

シャンクスはそう言い、樽に酒を注ぐ。

シャンクス「ダッハハハハハ!! そうか、よく来てくれたな!! さァ飲め飲め、今日は宴会だ!!」

ミホーク「貴様二日酔いじゃあ…。」

シャンクス「気にすんな、祝い酒だ!!」

どうやらシャンクスは飲み過ぎて気分が悪かったようだ。

ミホーク「(昔から変わらんな、この男は……。)」

シャンクスの能天気さの健在ぶりに、呆れるを通り越して思わず笑ってしまうミホークであった。 
 

 
後書き
マイのイメージ図です。

<i6513|38038>

グルグル眉毛はうっすら…って感じですね。 

 

第40話:ある日のイリス

 
前書き
またまた新キャラ登場です。
今度は政府側の超大物ですね。後々ルフィ達に絡んでくると思います。 

 
赤土の大陸(レッドライン)

世界政府の本拠地である聖地マリージョア。
その中のある一室で、イリスはある青年と会話をしていた。

?「俺にわざわざ御用ですか?」

イリス「あなたの手を借りたいの。」

?「へェ……この俺の手を?」

そう言いながらイリスを見据え、軍刀の手入れをする軍服の青年。
彼の名はアルテュール・ジルド……世界政府公認軍事組織“世界陸軍”の元帥であり、揺るぎない正義感を胸に秘めた世界貴族“天竜人”だった(・・・)人物だ。
彼は天竜人でありながら非常に良心的かつ常識的な人柄で、同じ天竜人の堕落ぶりに失望し、天竜人の位を放棄して陸軍を創設したという異色の経歴の持ち主でもある。

ジルド「で……一体どういう訳ですかな?」

イリス「これを見て。」

ジルドはイリスからある書類を手渡される。
それは、ここ最近反乱の兆しがある文明大国“アラバスタ王国”についての書類だった。

ジルド「……成る程、そういうことか。」

ジルドはイリスの意図を察した。

ジルド「この反乱の黒幕は王下七武海が1人・クロコダイル……アラバスタ王国乗っ取りを企んでるから“世界陸軍(ウチら)”も動いて終結後の復興支援か海軍と手ェ組んで袋叩きのどちらかをしろって訳か。」

イリス「センゴクさんやコングさんはあなたを信頼している。 協力してくれると私達海軍も楽なの。」

ジルドは指導者として非常に優れた才能を持っている。
海兵の選抜に弾かれた者をはじめ、何かと問題を抱えた兵士達をしっかり統制しており、規模に桁違いの差があるとはいえ兵士達は男女問わず腕の立つ者が多い。

ジルド「……いいだろう。 “元帥命令”として我が軍の優秀な兵士達を派遣しますので、有事の際は是非。」

イリス「感謝します、ジルド元帥。」

イリスはそう言いジルドの部屋を後にする。

ジルド「…クロコダイルめ、厄介なマネを……これだから七武海はいらねェってんだよ…。」

ジルドはそう愚痴を零し、茶を啜るのだった。

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-マリージョア、センゴクの部屋-

センゴク「そうか。 やはりこういう時は陸軍に限るな。」

海軍元帥・センゴクはどこか安堵した表情でそう呟く。
ジルド率いる世界陸軍は、何らかの災害・紛争に見舞われた国々の復興支援や反政府組織の殲滅を主な任務とし、中にはバスターコールの後始末をはじめとした「海軍のサポーター」のような活躍をする軍事組織だ。
センゴクにとって、これほどありがたいことはない。

サカズキ「しかし……あんな絶対正義に染まり切っちょらん温室育ちの若造に助けられるのは心外じゃのぅ。」

海軍大将“赤犬”ことサカズキは辛辣な発言をする。
ジルドは「絶対的な正義などこの世には無い」という、海軍や政府の掲げる思想に疑念を抱いている一面がある。
サカズキのような一部の海兵からは「考えが甘い」、「絶対正義を何だと思っている」などと批判されているのが現状だ。
当の本人は意にも介してないが。

?「おいおい、そんな言い方はないだろ。 現に俺らは彼に助けられてるんだしさ。」

ジルドを擁護するのは、サカズキと同じ海軍大将である“青雉”ことクザン。
悪は全て根絶やしにすべきという「徹底的な正義」を信条とするサカズキとは反りが合わないことで有名な海軍最高戦力だ。

サカズキ「フン、絶対正義に染まらん兵士など求められちょらんわ。」

クザン「だからって、絶対正義を勝手に押し付けるのもおかしいだろ。」

舌戦を繰り広げ始めるサカズキとクザン。
イリスは「全く……」と頭を抱え、傍にいた大将“黄猿”ことボルサリーノは「落ち着きなよォ~…」と間延びした口調で諫める。
その時だった。

?「相変わらずの正義討論会? めでたいこった。」

『!!?』

その声が響いた瞬間、全員が臨戦態勢に突入した。
ボルサリーノは既に声が聞こえた窓の傍に立ち、サカズキはマグマを、クザンは冷気を漂わせ、イリスは覇王色の覇気を放つ。
センゴクは動いてないが、警戒はする。
何故なら、乗り込んだ相手が相手だからだ。

イリス「……何の用? ギネス。」

ギネス「ん? まぁ、喧嘩を売りにきた訳じゃねェわな。」

海軍大将に囲まれながらも飄々とした態度で接するのは、“犯罪界の絶対王者”ギネスだった。
ギネスは世界政府から危険視されている猛者。そう易々と首をくれる訳でもない上、本気を出せばマリージョアが火の海と化しかねない。
下手に暴れるのは、海軍としては避けたいのも事実だ。

センゴク「……何の用だ? 自首しに来たわけではあるまい。」

ギネス「そうだな、忠告と言ったところか。」

その言葉に、一同の視線が一層鋭くなる。
ギネスは頭脳明晰で、かなりの曲者だ。政府上層部すら欺けるほどの策士なため、油断ならない相手なのだ。

ギネス「“黒ひげ”に気を付けろ。」

イリス「“黒ひげ”……?」

ギネス「アイツはシャンクスも危険視しライコウも警戒するほどの悪漢らしい……もし七武海になったら裏切ること前提で関わるんだな。」

ギネスはそう言い、窓から出ようとするが……。

サカズキ「“冥狗(めいごう)”!!」

ギネス「うぉっ!?」

サカズキはマグマと化した腕による掌底を繰り出すが、ギネスをそれを躱す。

ギネス「うわ~、相変わらずの狂犬だね~。」

サカズキ「おどれは絶対に逃がさん!!」

サカズキはもう一度攻撃するが、それも躱され、覇気を纏ったギネスの蹴りをモロに食らい吹き飛ぶ。

サカズキ「ぐぉっ!!」

クザン「サカズキ!!」

ギネス「そう焦るなって。 暫くは大人しくするつもりだから。」

イリス「……どういうこと?」

ギネス「いずれ分かるさ……“Dはまた嵐を呼ぶ”からな。」

イリス「…!?」

ギネスは意味深な発言を残し、そのまま去っていった。
因みにその後、イリスはギネスを追わず、サカズキの介抱に尽力したとか。 
 

 
後書き
新キャラ・ジルドの設定です。

【アルテュール・ジルド】
身長:305cm
年齢:第40話(原作開始)時点・32歳→2年後・34歳
誕生日:2月10日
容姿:金色の長髪が特徴。
武器:軍刀(無銘)
服装:軍服姿であり、背中に白で「陸」と書かれた黒いコートを羽織っている。
好きなもの:酒、ボードゲーム、トランプ
嫌いなもの:世界貴族、民衆を苦しめる者
所属:世界陸軍/元帥
異名:なし
イメージCV:小野大輔
性格:良心的かつ常識的な性格で、揺るがぬ正義感を持つ好漢。
戦闘力:悪魔の実の能力者ではないが、ライコウに匹敵するほどの覇気の達人。前線に出ることは最近無いため実際は不明だが、少なくとも海軍大将と引けを取らないほどの戦闘力を有していると噂されている。剣技もかなりの腕前。
モデル:アルテュール・ド・リッシュモン、ジル・ド・レ 

 

第41話:“海賊の高み”

 
前書き
第40話の後日談を投稿しました。 

 
-ワノ国にて-

ライコウ「こんのクゾガキャアアアアア!!!」


ドガアァァァン!!


ギネス「どわあああ!!?」

ライコウ渾身の叫びと破壊の爆音、そしてギネスの悲鳴が素晴らしいハーモニーを奏でる。
朝から響いた轟音に、百獣海賊団の者達が一斉に顔を出した。

サボ「な、何だァ!!?」

コラソン「敵襲か!!?」

ジャック「違う、ライコウさんがキレたんだ。」

コアラ「え!!? ライコウさんが!!?」

愛刀を抜いた怒り心頭のライコウに動揺を隠せない一同。
四皇の中でも取り分け武闘派揃いの百獣海賊団でも数少ない穏健派のライコウがキレるとなると、余程のことだ。
そしてライコウを怒らせた人物がギネスであると知り、全ての原因はギネスにあることがすぐに分かった。

ライコウ「ギネスてめェ!! 何ちゃっかりマリージョアに殴りこんでんだ!!? 俺らとお前の関係バラす気か!!?」

ギネス「ご、誤解だっての!! でも俺イリスとは色々あった間柄だし、友人としてさ。 アハハハ…。」

ライコウ「笑い事じゃねェよ!! お前自分の立場分かって言ってんのか!!?」

ライコウの怒りは収まらない。それにはちゃんと理由があるのだ。
言わずもがな、ギネスは世界政府から警戒されてる危険人物であり、ギネスの所業は加盟国に広く知れ渡っている。百獣海賊団の標的たるジェルマ王国も例外ではない。
もし百獣海賊団とギネスの同盟関係がバレたら、今後の計画が大きく狂いかねない。
まぁライコウはある程度ギネスが自由に行動するのは予測してたが、まさか世界政府の本拠地に殴りこむとは思わなかったようだ。

ライコウ「ったく、四皇と同盟結んだからって調子に乗りやがって!!! こっちの立場を考えて動けってんだ!!!」

ギネス「心配御無用、俺は虚偽の情報を流すのが十八番なんだ。」

ライコウ「そういう問題じゃねェ!!!!」

まるで某海軍元帥のように怒鳴り散らすその姿に失笑する一同。
生来(?)のオカン気質である我らが副船長は、同盟を結んだ相手にもこのような接し方をするようだ。

カイドウ「変わらねェな、アイツも。」

ブラック「まぁ、これが日常なんすけどね。」

大海賊時代開幕以前からの付き合いであるカイドウとブラックはそう呟きながら酒を飲む。
すると、ライコウは今度はブラックに向かってドカドカと歩いて行く。
それがどういう意味かを察したブラックは顔を青褪め、ゆっくりと後ずさりする。

ライコウ「ブラック、お前また俺の金パクって煙草買ったろ…?」

ブラック「い…いいじゃねェか別に!! それほど怒ることじゃねェだろ!?」

ライコウ「んなわけあるか!! それぐらい自分で払え!!」

ブラックは「何でバレたんだ!?」と言いながら逃げようとするが…。


ガッ!


ブラック「船長ォォォォォォォ!!?」

カイドウ「どこへ行くんだ?」

カイドウ、まさかのライコウに加担。
いつもは関わらずに酒を飲んでいるのだが、どうやら気分が違うようだ…。

ライコウ「さ~っすが俺の船長♪ 恩に着るわァ~♪」

ライコウはゴキゴキと腕を覇気で黒く染めながら鳴らす。
顔は笑っているが、目は笑ってないし覇気はバリバリ放ってるわ、最早“修羅”と化している。

ブラック「ちょ、ま…!!」

ライコウ「ちったァ反省しろォーーーー!!!!」


ドゴォン!!


ブラック「ア゛ア゛ア゛ア゛ーーーー!!!」

今までブラックに金を盗られても拳骨程度で済ましたライコウも限界が来たのか、ブラックを“覇王拳・狼王波”で殴り飛ばした。
余りの威力で山を突き破り、そのまま海へドボンするブラック……。

『………!!』

ギネス「うわ……。」

間近で見た部下達は震えあがり、ギネスは顔面蒼白になる。
四皇“百獣のカイドウ”は怒らせればとてつもなく怖い。だが“剣帝”ライコウも怒らせたら相当ヤバい。
この日、百獣海賊団は改めて副船長の恐ろしさを知った。


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-同時刻、アラバスタ王国-

“麦わら”モンキー・D・ルフィ率いる「麦わらの一味」は、ひょんなことからアラバスタ王国王女・ビビと共に祖国で起きてる反乱の黒幕・クロコダイルを倒すべく行動していた。
その最中、ルフィの義兄であり王下七武海でもあるスペード海賊団船長“火拳のエース”と思わぬ再会を果たしていた。

ルフィ「エース、何でこの国にいるんだ?」

エース「あぁ、お前に伝えたいことがあってな。」

ルフィ「?」

どうやら某七武海のように暇潰しできたわけではないようだ。

エース「海軍だけじゃなく、ジルドが軍を派遣してここへ向かってるから、用心しとけ。」

「「「「えええええ!!?」」」」

エースの一言に、航海士のナミをはじめ、狙撃手のウソップやコックのサンジ、さらに行動を共にしているアラバスタ王国王女のビビも愕然とする。
一方、ルフィと戦闘員のゾロ、船医のチョッパーはあまり分かってない模様。

ルフィ「? 何だ、知ってんのか?」

サンジ「バカ!!! お前、ジルドを知らねェのか!!?」

ナミ「ジルドって男、とんでもない大物よ!!?」

ルフィはしっくり来てないが、仲間達の反応から腕っぷしの強い奴だと察する。

ビビ「まさか“世界陸軍”も動いてる事態だなんて……!!」

ビビはイマイチしっくり来てないルフィに分かり易く説明する。

ビビ「世界政府公認軍事組織“世界陸軍”は、何らかの災害・紛争に見舞われた国々の復興支援をする“海軍のサポーター”のような存在なの。 普段は海軍の後始末をする立場なんだけど、そうじゃないとしたら……!!」

サンジ「成る程、この国で起きてる反乱は収拾がつかねェ状態って訳か……。」

要はそういうことである。

エース「まぁ、お前の事だから問題ねェだろうが……死ぬなよ。 出来の悪い弟を持つと、兄貴は心配だからな…。」

エースはそう言い、コートをなびかせてスペード海賊団の船に飛び乗る。

エース「じゃあな、ルフィ。 次に会う時は、“海賊の高み”だ。」

ルフィ「またな~~~~!!!」

エースを乗せた海賊船は少しずつ遠ざかっていき、ルフィはそれに向かって元気よく手を振り続ける。

ナミ「そんな…ルフィのお兄さんが“七武海”……!!? しかもあんな常識人だなんて!!!」

ビビ「ちょっと皆…。」

ウソップ「俺はてっきり、ルフィにワをかけた身勝手野郎かと…。」

チョッパー「兄弟って素晴らしいんだな…!!」

ゾロ「弟思いのイイ奴だ…!!」

サンジ「分からねェモンだな…海って不思議だ。」

各々がルフィの知られざる人間関係に驚く。
しかし、そんなルフィにはもう1人の兄がおり、それがとんでもない大物であると知るのはもう少し先の話。 
 

 
後書き
この作品でのエースの衣装はこんな感じです。
◦オレンジ色のテンガロンハット
◦ハーフパンツ
◦赤い首飾り
◦黒いコート(羽織っている)
◦腰巻き
◦ナイフを所持 

 

第42話:動き出す陸軍元帥

百獣海賊団の中では比較的若く、それでいて新世界屈指の強者であるロー・サボ・コアラ・ヒオ・マイの5人は、滝のような汗を滴らせながら、身体も精神も赤疲労をゆうに超えた状態で転がっていた。
目の前には息一つ乱れぬ姿で悠然と佇む、濃紫の狩衣と黒いコートに身を包んだ我らが副船長が漆黒の双眸でにっこりと見下ろしていた。

ライコウ「どうした? 先程のお前らの威勢はどこへいった?」

ジャキッと愛刀(きおう)の切っ先を5人に向けるライコウ。

サボ「ゼェ、ゼェ、ゼェ、ゼェ……つ、強すぎる…。」

マイ「ハァ、ハァ……こ、これが……“海賊王時代”の強者の実力……。」

ロー「ゼェ…ゼェ…アンタ、本当に人間か…?」

コアラ「ちょっと……マジ死ぬ……。」

ヒオ「ハァ…ハァ…コアラさん、口調変わってますよ……。」

激しく呼吸を繰り返す5人。
この日、ライコウは5人を相手に暇潰しに(・・・・)手合わせをしていた。5対1という状況でありながら、ライコウは手を抜いたままで(・・・・・・・・)彼らを圧倒。
何度トンファーや鉄パイプで打ち込んでも流され、弓矢を放っても全て躱され、2人同時に斬りかかっても、全く刃が届かない状況下に置かれた5人はさすがに疲労が溜まる。

ライコウ「それくらいでバテちゃあ、困るんだがなァ。」

サボ「っ……上等!!」

サボは頬を伝う汗を乱暴に拭うと、ニィッと獰猛で野性的な笑みを浮かべた。
この5人の中で最もスタミナがあるのはサボだ。っていうか、元々喧嘩慣れした悪ガキだったサボしか立てる者はいないのだ。

ライコウ「さて、続きをしようか。 たんまり可愛がってやる。」

満面の笑みで口を開くライコウ。
サボも鉄パイプを構え、突撃した。
その時だった。

「ライコウ様~~~!! どこですか~~~!!?」

「クロコダイルが倒された~~~!!!」

『!!?』

部下達が新聞を片手に雪崩れ込んでくる。
その新聞には、王下七武海の1人であるサー・クロコダイルの称号剥奪と逮捕の報せが書かれていた。

「何でも海軍のスモーカーって野郎がクロコダイルを討ち取ったらしくて…。」

新聞の記事には、海軍本部の大佐であるスモーカーとその部下・曹長たしぎの2人がアラバスタ王国の反乱の黒幕・クロコダイルを討ち取った内容が。
周りは「海軍もまだ見限ったモンじゃねェな」とスモーカーを称賛するが、ライコウとサボだけは違った。

ライコウ「そんな訳ないだろう。 いくら“野犬”とはいえ、覇気もロクに扱えん輩が一対一(サシ)王下七武海(クロコダイル)を倒せたとは思えん。」

サボ「それに海軍は政府同様“情報操作”が十八番……噓の可能性もあるな。」

コアラ「じゃあ……一体誰が…!?」

ライコウ「さァな……だがこれだけは言える。」

ライコウはグビグビと酒を飲んで、こう告げた。

ライコウ「夢を諦めた者は、夢を追う者に負けたのさ。」

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-同時刻、アラバスタ王国-

「元帥閣下!! カトレアの瓦礫撤去及び物資の支援を無事終えました!!」

ジルド「ご苦労。 では手の空いている者と共に建物の修復やケガ人の手当てを現地の医者と手伝ってくれ。」

「はっ!!」

アラバスタに上陸し復興支援に尽力する世界陸軍。
その仮設テントでは、元帥ジルドの指揮の下、復興支援が行われていた。

ジルド「成る程……道理で似た雰囲気をしてるかと思ったら、ガープの孫だったか。」

?「えェ…私も驚きました。 妙に納得も行きますが。」

ジルド「ククク……だろうな。 あの自由人の孫だしな。」

ジルドは日本刀を携えた着流し姿の青年と会話する。
青年の名はランドウ。ジルドと最も古い付き合いである世界陸軍の大将だ。
彼もまた政府側の人間ではトップクラスの実力者であり、あの“剣帝”ライコウすら一目置くほどの剣客でもあるのだ。

ランドウ「……随分嬉しそうですね。」

ジルド「そうか? 俺ァ通常運転だが。」

ランドウ「顔に出てるんですよ。」

ジルド「マジで?」

そんな素っ気なくも平和な会話を交わす2人。

ジルド「さて……どう動くかね。」

ジルドはアラバスタ王国の地図を見て、“麦わらの一味”の動きを推測する。
今は陸軍と海軍が包囲網を敷き始めてるが、逃げられないとは限らない。部下の情報から反乱の黒幕である犯罪組織“バロックワークス”のエージェントの1人の行方が分からなくなっているからだ。
そのエージェントが手助けしたとすれば、海軍の予測していた場所とは異なる地から脱出する可能性が高いのだ。

ランドウ「私ならば、サンドラ河の上流に船を移動させ、海軍の警備が薄くなった時と追い風になった時を見計らいますが……。」

ジルド「ピンポーン♪ 大正解。 確率的にはそれが一番脱出しやすいから、向こうもそうするはず…だがそうはいかないな。」

ランドウ「そうですね。 黒檻部隊の計算し尽くされた陣構えから逃れられるか……見物ですね。」

セツラの言う黒檻部隊とは、“オリオリの実”の能力者である海軍本部大佐“黒檻のヒナ”が率いる部隊だ。艦隊を率いて適材適所の役目を与える優れた指揮能力を有する彼女の実力は計り知れず、海軍でも広く知られている。
彼女の追撃を逃げ切るのは用意ではないだろう。

ジルド「それもそうかもしれないが……。」

ランドウ「……と言うと?」

ジルド「一番の理由は、この俺が動くからだ。」

ジルドは獰猛な笑みを浮かべ、ルフィの手配書を軍刀で一閃。
手配書は細切れになり、風に吹かれて飛んでいった。

ジルド「お前は俺に代わってアラバスタの復興に尽力しろ。 ガープの孫に会ってくる。」

陸軍元帥(ジルド)、動く。 
 

 
後書き
新キャラ・ランドウの設定です。

【ランドウ】
身長:301cm
年齢:第42話(原作開始)時点・28歳→2年後・30歳
誕生日:10月10日
容姿:黒の長髪で顔に大きな傷がある。体型は華奢な方であるがそれなりに鍛えてある。
武器:日本刀(大業物“八咫烏”)
服装:着流し姿で下駄を履き、黒のロングコートを羽織っている。
好きなもの:将棋、緑茶
嫌いなもの:世界貴族
所属:世界陸軍/大将
異名:なし
イメージCV:斉藤壮馬
性格:基本的には冷静かつ穏やか。過去の一件で命を救ってくれたジルドに対し絶対的な忠誠心を持っている。
戦闘力:非能力者だが武装色・見聞色の覇気に長け、さらに剣技に秀でてるため陸軍大将の名に恥じぬ実力の持ち主。
モデル:なし 

 

第43話:ジルドと“麦わらの一味”

-ナノハナ郊外-

サンドラ河の付近では、“麦わらの一味”と元バロックワークスのエージェント“Mr.2ボン・クレー”ことベンサムは陸軍と運悪く遭遇してしまった。
陸軍は海賊は管轄外であるが、ベンサムは犯罪組織のメンバーであるため拘束しようと捕えにいった。
一方のルフィ達は、ベンサムに大切な船・ゴーイングメリー号を守ってくれた恩義もあってか、戦闘することとなった。

「何としても捕えろ!!」

「元帥閣下が来るまで持ちこたえろ!!」

「絶対に逃がすな!!」

陸軍は思いの外士気が高く、ベンサムの部下も押される程であった。
サンジやゾロ、ルフィは応戦するが、ビビとのある約束があるため内心焦ってもいる。
だが、ルフィ達は“東の海(イーストブルー)”からアラバスタまでの間に多くの敵を薙ぎ倒してきた。陸軍の部隊を何とか敗走させることに成功した。

ナミ「急いで!! 時間がないわ!!」

ベンサム「麦ちゃん、早く急ぐねィ!!」

ルフィ「分かった!!」

その時だった。

?《ただいま諸君。》

『!!?』

ふと、男性の声が響いた。
どうやら電伝虫による通信のようだ。

?《俺が留守の間に、随分にぎやかになってるじゃないか。 これよりこのジルド自らが指揮を執り、標的を殲滅する。 手の空いている者は負傷者の手当てを始めたまえ。》

低く、威圧感のある声が響く。
それはまるで、帝王が臣下に勅命を下したかのような…そんな緊張感があった。

サンジ「アイツか!?」

サンジが指差す先には、腰まである金髪と黒いコートをなびかせ、軍刀を抜いたままルフィ達の元へ向かう1人の青年が。
その姿を見たベンサムは、震えあがった。

ベンサム「そんな……元帥自ら来てたなんて……!!」

ナミ「えっ…!? じゃ…じゃあ、あの人が陸軍の頂点(トップ)なの!!?」

ベンサム「そうよっ!! 世界政府公認軍事組織“世界陸軍”の元帥、アルテュール・ジルドよゥ!!!」

「元帥閣下に、敬礼ィッ!!!」

兵士達は一斉に敬礼し、その間をジルドが通っていく。
元帥自らの登場に、喜びの声を上げる兵士達に対し、ルフィ達は冷や汗を流す。

ジルド「ここは俺一人で結構。 負傷者の手当てを優先し、ランドウにこの一件を報告して撤退しろ。」

『はっ!!』

兵士達は負傷者を運んでランドウのいる仮設テントへ去っていく。
それを見届けた後、ジルドはルフィ達に目を向ける。

ゾロ「アンタが……噂の元帥殿か。」

ジルド「いかにも。」

ジルドはそう言った後、穏やかに笑みを浮かべる。

ジルド「……此度のクロコダイルの件、誠に感謝する。」

ジルドが口にしたのは、礼の言葉だった。
それを聞き、てっきり捕らえに来たと思ってた一同はポカンとした表情を浮かべてしまった。

ジルド「もし君達がいなければ、アラバスタがクロコダイルの手に堕ちるのも時間の問題だった。」

サンジ「い、いや……礼されるほどじゃねェよ。」

対応に困るサンジは、とりあえず謙遜した態度で接する。

ジルド「だがこの世の中、“世間体”ってモンがあってなァ……ここで政府機関が引き下がったっていう実績作ると拙いんだよ。 俺だって上層部(ジジイども)と喧嘩すんのは面倒だしさァ……。」

頭を掻きながらそう愚痴を零すジルド。
どうやら根は“イイ人”らしく、言っていることから見逃すか捕えるかで迷っているようだ。

ジルド「まぁ、見逃すか捕えるか考えるの面倒なんで……ある程度ボコってから見逃すとしよう。」

サンジ「どっちなんだよ!!?」

ジルド「いやァ、無傷で逃すのは色々アレだから多少の血を流してから“砂嵐が運悪く発生し、その隙を突かれて逃げられました”って言った方が得じゃん。 ってな訳で…。」

次の瞬間、ジルドが消えた。
気付いた時にはルフィの眼前におり、それと共に白刃も迫っていた。

ジルド「俺の喧嘩、買ってくれよ。」


ガギィィン!!


ジルドの剣は、ゾロの刀と衝突する。
ジルドの得物は片手剣であるが、ゾロは3本の刀で受け止めるのが精一杯だった。

ジルド「ほぅ、俺の一太刀を受け止めるか。」

ゾロ「っ……!!」

ジルドはニヤリと笑みを深める。

ゾロ「(コイツ……強ェ…!!)」

ジルド「さァ、どこまで踊れるか試してみよう!!」

それが合図だったのか、2人は間合いを一気に詰めて再び剣を振るう。
互いの剣刃が金属音を響かせてぶつかり合い、火花を散らす。

ゾロ「おらあァァァァァッ!!」

ジルド「ハハハハハハハハッ! 速い剛剣だな!!」

ゾロは三刀流によるゴリ押しで壮絶な剣技を見せている。
一方のジルドも、凄まじい程の剣技を繰り出しているが、それ以上に目を引くのは彼そのものだ。
ジルドは剣を持っている右腕だけで応戦している。空いている左手で隙を突くこともできるのに、それをしていないのだ。
明らかに手を抜いている。いや…遊んでいる(・・・・・)。しかしその剣技は言語に絶する速さと力強さを兼ね備えており、自らの未熟さを思い知らされる。

ジルド「だが真の剣客は剛柔併せ持ってこそ。 お前はまだその域には達していないようだな。」

ゾロ「っ……!!」

ジルドは覇気を纏わせて一閃し、ゾロの刀を弾き飛ばした。
そしてジルドの白刃がゾロに迫った。
その時…。

ルフィ「“銃弾(ブレッド)”ォッ!!!」


ドォン!!


ジルド「!!」

ルフィが零距離でジルドを殴りつける。
しかしジルドはそれを刀身で受け止める。

ルフィ「お前、強ェな。」

ジルド「ハハハハ!! 解るか“麦わら”。」

そう言うと、ジルドはルフィに攻撃を仕掛けた。
ジルドの剣閃は無数であり、反撃の一手すら出せないほどの速さでルフィに襲い掛かる。
これほどの攻撃を仕掛けてなお汗一つ掻かないのだから、驚愕せざるを得ない。

ルフィ「クソ……早く行かなきゃなんねェのに…!!」

ジルド「ほぅ、行かねばならぬところがあるのか? それは新たな船出か?」

ルフィ「違う!! 仲間(ビビ)に会いに行くんだ!!」

ジルド「!? 何だと…!?」

ルフィの爆弾発言に、目を見開くジルド。
その後に沈黙が訪れ、そして……。

『バカヤローーーーーーー!!!!』

仲間達の怒号が響き渡る。
うっかり言ってしまったことに、ルフィは「しまったーーー!!!!」と言って大慌て。世界政府の人間の目の前で言ってしまったのだ、なおさら拙い。

ジルド「王女に用か?」

ルフィ「あぁ、返事を聞きにだ!!」

ジルド「返事……か。 それは恐らくこれからの航海についてだろうが、お前の望む答えでないぞ?」

ルフィ「そんなの関係ねェ!! 仲間は仲間だ!!! だからどけよ!!!」

ジルドは顎に手を当て、考え込むようにして小さく唸る。
その後、持っていた軍刀を鞘に納めて言った。

ジルド「ならば行け。 王女の元へ行き、約束を果たせ。」

『!!!』

ジルド「元を正せば今回の一件は世界政府に問題がある。 本来なら俺はお前達を捕える資格などない。」

ゾロ「……いいのかよ? 一応敵だろ。」

ジルド「正義というのは立場や状況で変わるものだ。 案外覆りやすいのさ。」

ジルドはそう言い、早く逃げるよう伝える。

ジルド「今回は見逃すが……次会った時は、それなりの覚悟をするんだな。」

ルフィ「しししっ!! お前には絶対負けねェからな!!」

ウソップ「おいおい、陸軍に宣戦布告かよ……。」

ジルドは不敵な笑みを浮かべると、それに釣られてルフィも満面の笑みを浮かべる。
そして船は出航し、沖へと向かうのだった。

ランドウ「……やはり見逃したんですね。」

ジルド「ゲッ…。」

いつの間にか来ていたランドウ達を見て、顔を引き攣らせるジルド。

ランドウ「まぁ……それがあなたらしい。 民衆の反応も考えれば咎められないですし。」

ジルド「ハハハ……悪ィな…。」

ランドウ「いえ……私を含め、ここにいる者は皆、あなたによって救われた身。癒えぬ傷を必死で癒そうとしたあなたの我儘に付き合う義務がありますから。」

ランドウ達は、かつて“人間屋(ヒューマンショップ)”で売られていたり他の天竜人の奴隷だった。
人間の尊厳を踏みにじり、多くの人間の運命を狂わせる天竜人(かれら)の呪縛から解放したのは、当時天竜人だったジルドだ。
ジルドは非常に不思議な天竜人(おとこ)だった。奴隷を買ったり貰ったりすれば、「マリージョアから出ていくか、俺と共に救済をするか」のどちらかを選び、召使いの失態は決して咎めず、1人1人に労いの言葉を掛けたり手当をする。
奴隷達にとって、ジルドは聖地(じごく)を照らす希望の光のような存在だった。
現に世界陸軍の7割はかつて奴隷だった者であり、ジルドの器の大きさを窺える。

ランドウ「(この方はこの世界を永久の安泰へ導く絶対な存在……かもしれない。)」

ジルド「よし…これより本部へ帰還する!! 出国の準備を!!」

『はっ!!』

陸軍の“陸一文字”が、バサッと一斉になびくのだった。 
 

 
後書き
ギネスのイラスト、やっと出来ました。

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ギネスはバカタレ画力でも相当描きやすい部類です。
いや、別に手を抜いた訳ではないですよ。 

 

第44話:シルクハット

-ワノ国-

ライコウ「……確かな情報なんだな?」

テゾーロ《あぁ。 不確かな部分もあるがね。》

ライコウは“新世界の怪物”と呼ばれるテゾーロと電話である話をしていた。
その内容は衝撃的であり、どこか納得のいく話でもあった。

ライコウ「先日のアラバスタの内乱にジェルマが絡んでたか……。」

テゾーロからの情報は、「アラバスタの内乱に“ジェルマ66(ダブルシックス)”が暗躍していた」という話だった。
実はテゾーロは世界陸軍元帥・ジルドと交友関係があり、事実上世界政府とのパイプを持っている。ジルドとは親友のような関係であるテゾーロは、彼と機密情報を共有していたりしてるのだ。

ライコウ「……つーかジルドの奴、お人好しにも程があるだろ。 いくら親友でも機密情報共有させるかよ。」

テゾーロ《ハハハハ、彼は“君は心から信頼しているし、万が一ライコウとかにバレても何とかなるさ”と言っている。》

ライコウ「ピンポイントすぎるわ。 危機管理能力ぐらい持っとけってんだ。」

ジルドと交戦したことのあるライコウは、彼が相変わらずのお人好しさと妙に鋭い勘であることに呆れる。

ライコウ「んで、何でジェルマが絡んでたのが分かった?」

テゾーロ曰く、陸軍の情報からだと「反乱軍の中に“66”と描かれた服を着ている人物がいたことに違和感を感じ事情聴取したところ、自殺未遂を図った」こと、「ナノハナの港に突っ込んできた巨大船の帆のマークが“ジェルマ66(ダブルシックス)”もしくは“ヴィンスモーク家”のマークと似ていた」ことの2つの事実が発覚したとのこと。

テゾーロ《詳しい調査をしようとしたところ、サイファーポールの最上級機関“CP-0”の通告で調査を禁じられたそうだ。》

ライコウ「“CP-0”か……。」

“CP-0”は、正式名称は「サイファーポール"イージス"ゼロ」であり、世界最強の諜報機関である。
闇の交易・興行によって絞り出される金や武器の管理、「天上金」流通経路の守護など、天竜人の繁栄を維持する為の活動を任務としている。
任務には全て超法規的措置が採られ、時には世界政府の最高権力である“五老星”ですら把握できない越権行為を行うため、陸軍や海軍大将“赤犬”ことサカズキからは「天竜人の傀儡」と揶揄されているのだ。

ライコウ「……知られちゃヤベェのがあったんだな。」

テゾーロ《……もしかしたらクロコダイルと取引があったのかもしれないな。》

クロコダイルが率いた“バロックワークス”は、犯罪組織の色合いが強い。
可能性は0%ではないだろう。

テゾーロ《そろそろ話しを終えよう…これからショーがあるのでね。 失礼するよ。》

ライコウ「すまんな。」

そう言い、受話器を下ろすライコウは頭を掻きながら唸る。
証拠はないが、王下七武海(クロコダイル)が“戦争屋(ジェルマ)”と何らかの関係があったのは明白。恐らくドフラミンゴも既に繋がっているだろう。

ライコウ「……参ったな、想像以上にヤベェ方向に向かってるぞ…。」

すると…。


バサッ…


ライコウ「! モネ…。」

モネ「考え事だった? 随分悩んでたけど……。」

ライコウの顔を覗き込むモネ。

ライコウ「ちょいと面倒ごとになっちまってな…これからどうするか考えてたところだ。 お前こそ何しに来た?」

モネ「身体を洗ってもらいたいの。 ちょっと戦闘に付き合ったら汚れちゃって…。」

どうやらモネはライコウと入浴しようとしているようだ。
まぁ、モネは能力者の上あの巨大な羽を洗える訳ないだろう。

ライコウ「……そうだな、風呂浴びてから考え直すとするか。」

ライコウはそう言って立ち上がると、コートをなびかせて愛妻(モネ)と共に浴場へと向かうのだった。


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-同時刻、聖地マリージョア-

センゴク「あぁ、いやいや…挨拶が遅れたな。 よく来たな、海のクズ共。」

聖地マリージョアの会議室にて、海軍元帥・センゴクは“黒龍”イリスや“大参謀”つると共に会議を始めていた。
クロコダイルがアラバスタ王国を乗っ取ろうとし、その際にルフィに敗れ、七武海脱退を余儀なくされた。その後任を決める会議のために、センゴクは七武海を招集したのだ。
マリージョアへやって来たのは、百獣海賊団幹部と深い因縁を持つ“天夜叉”ドンキホーテ・ドフラミンゴと、政府の言いなりに動く“暴君”バーソロミュー・くま、昼飯に釣られてやって来た“火拳”ポートガス・D・エースだ。

ドフラミンゴ「フフフフフ! お~お~、えれェ言われようだぜ…。」

くま「……だが、的を射ている。」

エース「……。」

ドフラミンゴとくまがセンゴクに言い返す。
エースは円卓に置いてあった果物を丸かじりにしている。

センゴク「始めようか、もうこれ以上待っても誰も来まい。 6人中3人も来てくれたのは私の想像以上だ。」

イリス「エースは物で釣れますからね。」

エース「大将さんよォ、一言余計だぞ。」

イリス「でも現に食い漁ってるじゃない。」

エースは「物で釣れる」と言われて腹を立てながら言うが、現に円卓に置いてあった果物の約8割を食い潰しているため、ぐぅの音も出ない。
すると、ドフラミンゴが笑いながら円卓にドカッと座った。

ドフラミンゴ「だろうな。 俺も来る気はなかった。 島の興業があまりにも上手く行き過ぎちまって退屈だから来たんだ。」

センゴク「成る程、それは迷惑な話だ。 海賊の興業が上手くいくこと程我々にとって不景気な話はない。」

ドフラミンゴ「フフフ!! 随分つっかかってくれるじゃねェか。 “仏”の名が泣くぜ? センゴク元帥さんよォ。」

センゴクとドフラミンゴが言い争いをしていると……。

?「つまらぬ言い合いが聞こえるな。 俺は来る場所を間違えたか?」

気まぐれなあの男がやって来た。

『“鷹の目”!!?』

ドフラミンゴ「これはこれは…最も意外な男が来なすった。」

背中に大きな黒刀を持った世界四大剣豪の一角“鷹の目”ジュラキュール・ミホークだ。
ミホークの登場に、さすがのセンゴクも驚きを隠せない。

ミホーク「なに…俺はただの傍観希望者だ。 今回の議題に関わる海賊団に興味があってな。 それだけだ。」

?「では私も傍観希望ということでよろしいか? いや、傍観と言うには少し違いますが。」

『!!』

声の主を探すと窓枠にシルクハットを被った不気味な男が座っていた。

「貴様、何者だ!? どこから入った!?」

海兵の一人がその見知らぬ男に声を荒げる。

?「あわよくばぜひこの集会、参加させて頂きたく参上いたしました。 この度のクロコダイル氏の称号剥奪に受けて、後継者をお探しではないかと。」

タップダンスと共に文字通り会場に「躍り出た」シルクハットの男。
七武海4名に元帥センゴク、さらには海軍大将・イリスという世界政府の誇る強大な戦力が首を揃える中、顔色一つ変えずに立つのだから、只者ではなさそうだ。
そんな中、つるが口を開いた。

つる「……お前、ラフィットだね?」

ラフィット「おや、私の名などご存知で。これは恐縮千万。」

センゴク「知っているのか、おつるちゃん。」

イリス「彼をご存じで…?」

つる曰く、ラフィットは“西の海(ウエストブルー)”で広く名の通った保安官であったが、度を超えた暴力で国を追われた男だという。
それを聞いたラフィットは「さすが大参謀殿」と感嘆しているため、事実なのだろう。

ラフィット「ホホホ、ですが私の事などどうでもよろしい。 私はある男(・・・)を“七武海”に推薦したく、ここへ来たのです。」

そう話すラフィットの顔は不気味に笑っていた。 
 

 
後書き
この作品のオリキャラは身体に傷がある人物が多いです。
よって、傷ネタを紹介することにします。

「ライコウの傷について」
◦顔…右頬にレイリーから受けた十字傷、左頬にバギーから受けた切り傷(偶然)。
◦胴体…左胸にイリスから受けた刀傷、左脇腹・右肩にロジャーから受けた銃痕。
◦腕…左腕と右腕の肘にクザンから受けた凍傷。
◦足…左足にミホークから受けた刀傷。

「ブラックの傷について」
◦顔…左頬に“花剣のビスタ”から受けた刀傷。
◦胴体…右肩にサカズキから受けた大きな火傷。
◦腕…右腕に“金獅子のシキ”から受けた十字傷。
◦足…右足にクザンから受けた凍傷。

「イリスの傷について」
◦胴体…右脇腹にライコウから受けた刀傷。
◦足…左足に白ひげから受けた刀傷。

「ギネスの傷について」
◦胴体…左肩にクザンから受けた凍傷。
◦腕…右腕に刀傷、左腕に火傷。 

 

第45話:動き出す四皇達

カイドウ「“赤髪”が重い腰を上げたのか?」

酒を飲みながらモネを見据えるカイドウ。

モネ「えェ…海軍は随分神経尖らせてるわ。」

実は先日、新世界に君臨する大海賊・四皇の1人である“赤髪のシャンクス”が、同じ四皇である世界最強の大海賊“白ひげ”エドワード・ニューゲートに接触すべく動き出したという。
とは言っても、シャンクスは四皇でも断トツの穏健派。とりあえず使者として新入り・ロックスターを派遣したようだ。

ライコウ「あ~あ、それダメなケースだわ。 あのじいさんなら“いい酒持っててめェで来い”っていうから絶対。」

カイドウ「ウオロロロロ!! だろうな。」

長年白ひげ海賊団と海の覇権を争った化け物2人はそう言いながら盃を交わす。
シャンクスも元ロジャー海賊団……船長(ロジャー)と共に伝説達と戦ってきた男だ。白ひげに手紙や使者など送っても意に介さないことぐらい承知しているのにやるのは、シャンクスらしいと言ったところだろう。

ジャック「で……これからどうするつもりで?」

ライコウ「今回は動くぞ。 船を出す準備を!!」

『!!?』

ライコウの口から出たのは、意外な言葉……「出撃」だった。
普段なら「様子見でいいだろう」とか「俺達まで動く必要ないだろう」と言って諫めるが、今回は訳が違うようだ。

カイドウ「珍しいじゃねェか。 どうした? 風邪でも引いたか?」

ライコウ「んなことあるかボケェ!! ……ちゃんと理由はあるよ。」

ライコウ曰く、シャンクスが動いたのは、少し前に2番隊隊長“青髪のラカム”を殺した“黒ひげ”マーシャル・D・ティーチという男を追ったサッチ率いる4番隊についてだという。
シャンクスはかつてティーチにより、左目に3本の傷を負わされている。そのためティーチを警戒しており、黒ひげ追跡を止めさせようとしたと推測したのだ。

ライコウ「あのじいさんのことだ、シャンクスに言われても“自分の指示で追わせた”として全く聞き入れねェだろうよ。」

コラソン「じゃあ……まさか…!?」

ライコウ「“黒ひげ(ティーチ)”とサッチをぶつけると、結果は見えてるしこちらとしても後々厄介だ。 戦争になりかけてでも止めさせる。」

ライコウがそう言うと、百獣海賊団の船員(クルー)達は歓声を上げた。
久しぶりの大規模戦闘に、嬉しさを露にしているのだ。

カイドウ「急げ野郎共、戦闘準備を整えろォ!!!」

ライコウ「白ひげの前に海軍が相手だ、気を抜くなよ!!」


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-新世界・ユキリュウ島-

シャンクス「ダッハハハハハ!!! 変わらねェな、あのオヤジも!!! ハッハッハ!!!」

冬島・ユキリュウ島で滞在していたシャンクスは受話器を手にしながら爆笑。
電話相手の新入り・ロックスターは「笑い事じゃねェぜ、お頭!!!」と慌てる。
シャンクスは白ひげの元に使者を送ったようだが門前払いされたようだ。尤も、当の本人はこうなるだろうと予測してたようだが。

ロックスター《もう少し時間をくれ、こんな屈辱初めてだ!!!》

シャンクス「おいおい、何をする気だ? やめときな。 ご苦労さん、お前は真っ直ぐ帰って来い。」

ロックスターは面目丸潰れになったせいか、酷く腹を立てているらしい。だがシャンクスは「お前じゃもうどうにもならない」と伝え、受話器を下ろした。
一連のやり取りは幹部達の前でやっていたため、幹部の1人であるラッキー・ルウは肉を頬張りながら訊いた。

ルウ「…で、どうすんだお頭?」

シャンクス「行くよ。 船を出す準備を!!」

シャンクスは白ひげの元に乗り込もうとするようだ。
それを聞いた副船長のベン・ベックマンは待ったをかけた。

ベックマン「“白ひげ”の元へ向かうんだろう? そんなことして政府が黙ってると思うか?」

ベックマンの言っていることは正論だ。
船長だけでなく幹部格の戦闘力も極めて高い四皇同士の戦いは「戦闘」ではなく「戦争」と表され、四皇が互いに接触するというだけで政府は厳戒態勢を取り小競り合いだけでも海軍でも手に余る事件と評されている。
政府が黙っている訳など無い。
しかしシャンクスはそれでも行く気だった。

シャンクス「確かに政府は黙っちゃいねェだろうが、邪魔するならこっちも黙っちゃいないさ。」

シャンクスの決定に、船員(クルー)達は歓声を上げる。

ルウ「いやっほぅ!!! 野郎共、戦闘だァーーー!!!」

シャンクス「さァ、とびっきりの酒を用意しろ!!!」

四皇、動く。 
 

 
後書き
この作品では陸軍と海軍がいます。皆さんのために両勢力の違いとかを紹介します。

「海軍」
◦原作と同様の設定。世界政府直属の海上治安維持組織。
◦シンボルは「M」の文字を図案化したカモメのマーク。
◦主な職務は海賊等の犯罪者の取締だが、政府に不都合なものを隠すため非情な行いをする時もある。
◦昇格の基準は実力第一であり、名のある海賊の捕縛など手柄のある者は比較的短期間で昇格できる。 ただし、実力が伴っている場合でも、規律違反者や命令に従わない者に対しては、大幅な降格処分や昇格速度の減速などのペナルティが発生する。

「世界陸軍(陸軍)」
◦世界政府公認軍事組織。
◦シンボルは「陸一文字」。
◦主な職務は何らかの災害・紛争に見舞われた国々の復興支援や反政府組織の殲滅。海賊は「管轄外」扱いしている。
◦元奴隷や身寄りのない者、海兵の選抜に弾かれた者やバスターコールの生存者など、何かと問題を抱えた兵士達で構成されている。腕っぷしも歴戦の海兵とほぼ互角。
◦海軍よりもはるかに規模は小さいが、その分統制がしっかりされている。
◦元帥、大将、中将、少将、将兵の5階級しかない。 

 

第46話:ギネス、“麦わら”と邂逅

 
前書き
ジルド編の次はギネス編です。 

 
“新世界”でカイドウ達が動き出した中、ギネスは“偉大なる航路(グランドライン)”の前半の海へ来ていた。
“犯罪界の絶対王者”と称される彼は、先程海軍の軍艦をものの十数秒で制圧し、ある島へ向かっている。

ギネス「……エニエス・ロビーは初めてか。」

ギネスは無邪気な笑みを浮かべる。
そう、ギネスは“司法の島”と呼ばれ、世界政府が直轄する裁判所が設置されている不夜島「エニエス・ロビー」へ向かっているのだ。
その目的は…もちろん襲撃である。
実はギネスは報復の一環として、兼ねてより襲撃の機会を窺っていた。
エニエス・ロビーは「陪審員が全員元海賊の死刑囚」、「名ばかりの裁判を受け、一切の例外なくインペルダウンか海軍本部に連行」という理不尽極まりない裁判制度だ。当然濡れ衣を着せられて処刑された者も沢山いる。
ギネスはそんな悲しい末路を辿った者達の無念を晴らすべく、エニエス・ロビー崩壊を目論んでいる訳だ。

ギネス「そろそろ着くな。」

ギネスの目の前には、「正義の門」がうっすら見える。
そして……火の手が上がるエニエス・ロビーが。

ギネス「……あら? 先客?」

ギネスは目を見開き、驚く。
エニエス・ロビーは世界政府の中枢につながる。わざわざこの島に入り、攻撃をした…それは同盟を組んでいる全ての国を敵に回すことと同じ。それにここには非協力的な市民への殺しを世界政府から許可されてある諜報機関・サイファーポールNo.9こと“CP9”が在籍している。普通絶対にここへ乗り込んだりはしない。

ギネス「……面白い、ここはいっちょ手を差し伸べるとしますかね。」

襲撃犯に興味を持ったギネスは、エニエス・ロビーへ急ぐ。
















-10分後-

「こんなにやられてたのか? 中々やるじゃんか。」

エニエス・ロビーに上陸したギネスは、周りを見渡しながらニヤニヤと笑う
彼が今いるのは三階くらいの高さの建物の屋上。見下ろすと、周りの建物は無残にもボロボロに崩れ、倒れている。
叫び声や爆音など、とにかく轟音が鳴り続けている。

ギネス「音は裁判所の方へ向かっているな……先回りすっか。」

ギネスはそう言い、白いコートをなびかせて移動する。
その時だった。

「見つけたぞ!!」

「殺せ!! 絶対に逃がすな!!」

?「うわぁ、来た!!」

ギネス「ん?」

大量の武装した役人が、麦わら帽子を被った男を追っていた。
あの顔には、見覚えがあった。

ギネス「(……あれは“麦わらのルフィ”か?)」

どうやら若い海賊が主犯のようだ。
ギネスは「さすが“D”の一族だな♪」と愉快そうに笑い、役人達の前に降り立った。

「な、何だ貴様!? どこから!?」

ギネス「うるさい、寝てろ。」


ゴゥッ!!


『!!!?』

ギネスを中心に吹き荒れる突風にも似た波動が解き放たれ、それを浴びた役人達は泡を吹いて一斉に倒れた。
その光景を見て、ルフィは呆然とする。

ギネス「君が“麦わら”か?」

ルフィ「! ……あぁ、そうだ!!」

ギネス「遠路遥々大儀なこった。 こんな所で何か用か?」

ルフィ「あぁ、仲間を迎えに来たんだ!!」

ギネス「仲間?」

ルフィの話によると、“麦わらの一味”の仲間であるニコ・ロビンがこのエニエス・ロビーに連行され、彼女を取り返しに来たという。
ギネスはロビンの名を聞き「久しぶりに聞いたな……」と呟く。
ロビンは地図上から削除された島「オハラ」の出身で、同島に発令された無差別攻撃「バスターコール」の唯一の生存者だ。“歴史の本文(ポーネグリフ)”を解読できる危険因子という理由で連行したのだろう。
そしてルフィは迷うことなく彼女を奪還しに来たのだ。

ギネス「……仲間1人のために、世界を相手に喧嘩吹っ掛けるってか?」

ルフィ「そうだ!! ロビンは俺の大切な仲間だ!!! 絶対連れ戻すって約束したんだ!!!」

ルフィがそう叫んだ瞬間、空気が揺れた。
それは、ギネスも有する“王の資質”だった。
ギネスはルフィの底知れない潜在能力を目の当たりにし、笑みを深めた。

ギネス「……俺はギネス。 この島をぶっ壊しに来たんだ。 これも何かの縁……手ェ貸してやるよ。」

ルフィ「ホントか!!?」

ギネス「まぁな。 とりあえず仲間の元へ向かうとするか。」

ギネスはそう言うと球体状の空間を展開し、指を鳴らした。
すると……。

ギネス「ほれ、着いたぞ。」

ルフィ「!?」

ルフィは辺りを見回すと、いつの間にか裁判所の屋上……ロビンがいる「司法の塔」に最も近い場所に移動していた。

ルフィ「スッゲェ~~~!! お前、能力者か!?」

ギネス「“スぺスぺの実”の空間操作人間。 まぁ、さっきやったのはワープだな。」

ルフィ「ワープ!!?」

ギネスの能力に、ルフィは目を輝かせる。
ワープという漢のロマンをその身で味わったのだ、これほど興奮するモノはないだろう。
その時、いきなり牛っぽい外見の髭面の巨漢が現れた。CP9の1人、ブルーノだ。
しかし、ギネスの姿を見て血の気が引いていく。

ブルーノ「!!? ……何故貴様がここにいる!!? ギネス・スパーツィオ!!!」

ギネス「エニエス・ロビーをボッコボコにしに来た、以後よろしくな。」

ギネスの物騒かつ軽い挨拶に、ブルーノは構える。
ギネスは“世界最凶の単独犯”でもあり、その実力・潜在能力は未知数。政府が血眼になって追跡する大物だ。
そんな輩が、海賊と手を組んでエニエス・ロビーに乗り込んで来た。
ブルーノはギネスの目的を察し、冷や汗を流す。

ギネス「ここから先は君がやるんだ。 君がロビンを助けてこそ、奪還作戦は達成する。」

ギネスはどうやら傍観するようだ。
ルフィもそれに同意する。

ギネス「俺はゴミ掃除にでも行くとしよう。 仲間達の戦力は多く残したいだろう?」

ルフィ「頼む!!」

ギネス「OK。 宴の始まりだい。」

ギネスは極悪人とは到底思えない無邪気な笑みを浮かべ、姿を消す。
この日、エニエス・ロビーの歴史始まって以来、他に例を見ない“最悪の事件”が始まろうとしていた。 
 

 
後書き
せっかくなので、ギネスの代表的な前科を紹介します。(笑)
◦天竜人殺害事件(天竜人5名を斬り殺し、時の海軍大将から軽傷で逃げ切る。)
◦海軍艦隊撃沈事件(バスターコールが唯一未遂で終わった伝説的事件。)
◦政府機関連続襲撃事件(死傷者2240名、単独犯なら史上最悪のテロ事件。)

……やってることは結構えげつないネ。 

 

第47話:“憎む男”と“護る男”

 
前書き
スパンダがやらかす回ですね。 

 
赤い液体が、刀身から滴る。
白いコートをなびかせたギネスが、司法の島を蹂躙する。

「き、貴様も侵入者か!!?」

「全員構えろ!!」

100人近くの衛兵達が銃、サーベル、バズーカ砲などを構えて臨戦態勢に入っているが、その顔には一様に恐怖の色が浮かんでいる。
“犯罪界の絶対王者”や“世界最凶の単独犯”と呼ばれ、悪名を轟かせる世界的犯罪者・ギネスの手によって衛兵はすでに500人以上斬殺されている。
しかしそれは、隙を突かれたという訳ではない。

「おのれェェェェェェ!!!」

衛兵の1人が襲い掛かったのをきっかけに、一斉に衛兵達がギネスに牙を剝く。
最早衛兵達(かれら)に「逮捕」という感覚はない。生かしたまま、眼前に立つ“怪物”を捕縛するなど不可能だと感じてしまったからだ。

ギネス「俺はお前達“世界政府”が生み出した怪物……殺せるものなら殺してみろ。」

ギネスは一切動じず、愛刀・和泉安定を振るう。
その途端、正面の衛兵3人は横一文字に斬られ、返す刀で2人が袈裟斬りに、僅かに遅れて襲い掛かった4人は連撃で血を吹き出して倒れた。
この時に掛かった時間は、何と5秒というのだから驚きだ。

「ヒ…ヒィィィィィ!!!」

たった数秒で仲間9人が命を奪われ、錯乱したかのように銃を乱射する衛兵。
しかしギネスは見聞色の覇気でこれを見切り、銃弾を両断しながら歩を進める。

「なっ!?」


斬!!


「ぐぎゃっ!?」

ギネスは斬撃を放って銃身ごと衛兵を斬り伏せる。

ギネス「……お前達には、一時の平和のためにどれほどの犠牲を払っているか分かるか? 僅かな境界線を守るために、どれほどの命が奪われたか理解しているか?」

ギネスは鋭い目付きでそう言う。
愛刀で衛兵の肉を貫き、骨を斬り裂き、臓物を破りながらも平然とするギネスは、衛兵達からは鬼か悪魔のように見えた。
その時、衛兵達の背後から下駄の鳴る音が響いた。

ギネス「陸軍大将・ランドウ……来てたのか。」

ランドウ「……ジルドさんの言う通りでしたね。」

現れたのは、世界陸軍の№2・陸軍大将のランドウだった。
衛兵達はまさかの助っ人に安堵する。

ランドウ「…随分と暴れたようで。」

ギネス「この島潰す気で来たからな。 まぁ、先客は想定外だったけど。」

ギネスは返り血を浴びた顔でケラケラと笑う。

ギネス「なぁ、ランドウ。 世界政府をどう思ってるよ?」

ランドウ「……?」

ギネス「徹底した情報統制によって自分達に不都合なことは隠蔽し、場合によっては強力な軍事力を用いて、民間人の犠牲も厭わず事実のもみ消しや捏造を行う。 体面や支配維持、王族や貴族だけの利益に執着する体制が蔓延する腐った組織をどうしてでも護るのかよ?」

ギネスは憎悪や狂気に似た、どす黒い感情を露にして口を開く。
愛する家族と故郷を奪われ、世界政府を憎み続ける男は、それを護る者達が理解できないのだ。

ランドウ「……私も政府を快く思ってないのは事実。 ですがジルドさんに…我が元帥に命を救われた身でもあります。 その恩義に対して筋を通す……それだけです。」

ランドウはそう言い、両刃の日本刀“八咫烏”を抜く。

ギネス「……ならば俺も筋を通そう。 無実の罪でこの島で散った者達の無念を晴らすために!!!」

ギネスは球体状のドームを展開し、臨戦態勢になる。

ランドウ「下がってなさい、巻き込まれるから。」

ランドウは兵士達を退かせ、下駄の音を鳴らして間合いを詰める。
ギネスもそれに応じ、愛刀を抜いて振るう。
その時だった。

スパンダム《おいっ!! おいっ!! 畜生しまった、こっちだ子電伝虫は!!! 何て事を!! ウッカリした!!》

島のスピーカーから聞こえる声……それはスパンダムのものだった。
その声を聞き、静止するギネスとランドウ。

ギネス「何だ? やけに焦ってんな…。」

何やら酷く慌てた様子のスパンダムは指令を出すでもなく、ただ一人でおたおたとうろたえている。

スパンダム《よりによって、“ゴールデン電伝虫”を押しちまったァァッ!!!!》

「「は?」」

スパンダムの爆弾発言に、ギネスとランドウは目を白くして変な声を思わず出してしまった。
“ゴールデン電伝虫”は、海軍本部中将5人と軍艦10隻という国家戦争クラスの大戦力で無差別攻撃を行う「バスターコール」の発動専用の電伝虫。
それを押したということは……。

ランドウ「……バスターコールを…。」

ギネス「かけた、って言ってたな。」

するとスパンダムの大声に続き、電伝虫からロビンの声が聞こえて来た。

ロビン《バカな事を……今すぐ取り消しなさいっ!!!》

通話状態のままでロビンとやり取りしているスパンダムは、いっそ開き直る。

スパンダム《そうさ…いいじゃねェか。 俺はCP9の長官だぞ。 貴様を無事、政府へと受け渡すため“バスターコール”をかけた!! ハハ……それでいいじゃねェか……万が一何が起きようとも、最終的には海賊共を確実に皆殺しにできるんだ!!!》

ロビン《バカな事を…言った筈よ!! それだけでは済まない!! あの攻撃に人の感情なんて無いわ!! このエニエス・ロビーにある全てのモノを焼き尽くす!!! 建物も人も!! 島そのものも……!!! 何もかも犠牲にして目的を達成する、悪夢のような集中砲火!!! それが“バスターコール”よ!!!?》

スパンダム《あァ結構…政府にとってもそれだけのヤマだって事さ……!! カティ・フラムのバカがプルトンの設計図を燃やしちまった今、お前の存在だけが古代兵器への手掛かり!! 一時代をひっくり返すほどの軍事力がかかってるんだ……!!! そのお前を奪い去ろうとするバカ共をより確実に葬り去る為ならば、例え兵士が何千人死のうとも…栄えある未来の為の仕方のねェ犠牲といえる!!! 何より俺の出世もかかってるしなァ!!!!》

スパンダムのこの言葉は、まさか横に部下である“CP9史上最強の男”ロブ・ルッチがいて発した失言とはとても思えない。
ロビンと2人きりだからこそ、口を突いて出た本音だったのだろう。
つまり……“正義の門”への道を見付けたルフィが追ってきて、ルッチが迎撃する事になったのだろう、とギネスは察した。
「人の命を何だと思ってる」と激昂するロビンに対し、スパンダムは平然と「正義の為の犠牲だ」と言ってのけたが、そこまで話していて、ふと何かに気付いた様な声をロビンが上げた。

ロビン《その子電伝虫……“通話中”に…!!》

スパンダム《え!!? うげェッ!!! しまった!!! 今の会話筒抜けだったのか!!? ……そ、そんなわけで、俺の名は麦わらのルフィだ!!!》

ギネス「……バカの世界チャンピオン目指してしまえ。」

ギネスはスパンダムのドジっぷりに呆れる。
一方、電伝虫が“通話中”であると分かったのか、ロビンは島内にいる全ての人間に向かって訴えかけた。

ロビン《全員島を離れて!!! エニエス・ロビーに“バスターコール”がかかった!!! 島にいたら誰も助からないわ!!!》

スパンダム《余計なこと言ってんじゃねェよ!!!》

スパンダムの怒鳴り声に続き、何かがぶつかる音と、ロビンの短い叫び声を最後に、通信が途絶えた。

ランドウ「あぁ……元帥が癇癪起こしそうです…。」

ギネス「……さすがに同情するわ。」

ランドウはガックリと落胆し、涙目になっている。
バスターコールを発動された以上、この後始末をするのは陸軍だ。そう思うと惨めで仕方がない。
ギネスは刀を納め、ランドウを宥める。

ランドウ「大将命令です……全責任は私が取るので、この場から避難してください…。」

ランドウは連れてきた部下達に撤退を促す。
部下達は大急ぎで引き返していく。

ギネス「今回は引き分けとするか……自滅するとは思わなかったよ。」

ランドウ「いっそのことこの島消し飛ばしてください……面目丸潰れですよ…。」

ギネス「放っときゃ吹っ飛ぶからいいさ…。」

ギネスは顔を引き攣らせながら笑って消えた。
ランドウは「これだから諜報機関は……!!」と愚痴を零しながら刀を納めて去っていった。 
 

 
後書き
陸軍大将は一応もう一人配置する予定です。
剣客であるということ以外詳しい設定は決めてないので、リクエストあればどうぞ。 

 

第48話:コビーです

-3日後、ウォーターセブン-

ギネス「ハハハハハハ!! ホントやってくれたねェ!!!」

この日、ギネスは笑いが止まらなかった。
ここまで笑った理由は、3日前のエニエス・ロビーでの死闘にある。
海賊“麦わらの一味”と世界政府の戦いは、何と“麦わらの一味”の辛勝で終わったのだ。新聞では「襲撃後、行方をくらました」と報道されたが、恐らくあのバスターコールの集中砲火から逃げ切ったのだろう。
「大した一味だよ」とギネスは満足げに言う。

ギネス「さてと……少しは礼ぐらいしないとな。」

ギネスは、ルフィ達が世界政府に宣戦布告したことに胸がすいている。
世界政府に盾突く輩など、この世界では自分を含めてもほんの一握りだ。その中に海賊が入るとは思わなかったが、目的は違えどエニエス・ロビー崩壊に一役買ってくれたようなものだ。それなりの恩を返そうと思っているのだ。

ギネス「まずは彼らをさが「起きんかァ~!!!」……えっ?」

ある男の声が響き渡った。
その声は、ギネスも知る“あの海兵”の声だ。

ギネス「ウソ……ガープ来てんの!?」

ギネスは冷や汗を流した。
“海軍の英雄”と呼ばれ、拳骨一筋で海賊王ロジャーや白ひげ相手に戦った伝説の海兵、モンキー・D・ガープ。「海賊達にとって悪魔そのものだった」と言わしめた怪物爺さんが来訪していたのだ。

ギネス「ってことは、ルフィ君もいるのか……!?」

“麦わらのルフィ”の本名は、モンキー・D・ルフィ。
もしかしたら先の死闘の傷を癒しているところに現れたのかもしれない。
それを察し、ギネスはガープの声が響いたガレーラカンパニーの仮設本社へ向かった。















-ガレーラカンパニーの仮設本社にて-

孫に会いに文字通り殴り込んだガープ。
千尋の谷へ突き落とし、夜の密林へ放り込み、風船にくくりつけてどこかの空へ飛ばしたモンスターペアレント真っ青の教育をしたガープへのトラウマか、当初こそ反抗的な態度だったルフィはボコボコにされて大人しくなった。
そんな中、「シャンクスとライコウは恩人だ」と言い張るルフィにガープは呆れたように言った。

ガープ「そもそも“赤髪”と“剣帝”がどれ程の海賊なのか解っとるのか!? お前は!!」

ルフィ「………シャンクス!? シャンクス達は元気なのか!? どこにいるんだ!?」

ガープ「元気も何も…!!」

ガープの眼差しがスッ、と鋭くなり、ルフィはまたビクリと体を震わせた。

ガープ「“赤髪”は今や星の数ほどおる海賊達の中で……かの“白ひげ”に並ぶ4人の大海賊の内の一人じゃ。“偉大なる航路(グランドライン)”の後半の海に、まるで皇帝のように君臨するそやつらを、世に“四皇”と呼ぶ!!!」

その四人を食い止める力として、正義の軍隊「海軍本部」、そして海軍本部と提携する7人の大海賊「王下七武海」が並んでいる。
この“三大勢力”が均衡を失う事で世界の平穏が崩れるというほどの巨大な力を持っているのだ。

ガープ「そして“剣帝”ライコウはこの世の名だたる剣客達の頂点“世界四大剣豪”の一角。 四皇の1人“百獣のカイドウ”の右腕である大海賊中の大海賊じゃ!!」

“剣帝”ライコウは、この場にいる誰もがその名を聞いたことがあるほどの超大物であり、世界屈指の大海賊として大海に君臨している。
この先の海をゆく者にとっては巨大すぎる障壁なのだ。

ロビン「ルフィ、あなた…あの“剣帝”ライコウと……!!?」

ルフィ「たまたま俺の故郷に寄ってったんだ!! 生きてた頃の海賊王の話をしてくれたんだぞ。」

ガープ「何ィ!? あの若造め、余計なマネを……!!」

益々機嫌が悪くなるガープ。
その一方で、「まぁ、エースの方は感謝しとるがな……」と頭を掻きながら小さい声で呟く。
その時だった。

ゾロ「お前ら無事か!!?」

ゾロの声が響いた。
「今までどこに行ってた!!?」という声も響くが、ゾロはお構いなしに暴れる。
それに気付き、ガープは面白そうに笑った。

ガープ「ほう…ルフィの仲間じゃな? 威勢がいいのう。」

そう呟くと、部屋の外で待機していた2人の部下を呼んだ。

ガープ「…どれ、お前ら…止めてみい…!!」

ガープはそう言うと、1人の海兵がククリ刀でゾロに斬りかかってきた。
しかしゾロはそれを受け止めると、ニヤリと笑って迎え撃つ。
すでに好戦ムードが高まっているゾロを慌ててルフィが止めようとした時、また別の海兵がルフィを狙った。
顎を蹴り上げようとした男だったが、ルフィは寸での所でかわすと、殴ってやろうと腕を伸ばす。
しかし男はパッとその場から姿を消し、ルフィの拳は宙を斬った。
ルフィは即座に背後に手をかざすと、後ろから襲おうとしていた海兵を捕らえてなぎ倒し、殴りかかろうとするルフィだったが…。

ガープ「ぶわっはっはっはっは、全く敵わんな!!」

自分の部下が簡単にねじ伏せられたというのに、ガープは酷く愉快そうに笑う。
それに気付いたルフィとゾロは、攻撃をやめる。
やがてルフィに組倒された海兵が小さく口を開いた。

?「やっぱり強いや…さすがだ!! 参りました…。」

参ったと言われて、ルフィとゾロは戸惑いながらも武器を下げる。
解放されると、2人を襲った海兵達はゆっくりと立ち上がり、服に着いた埃を払った。

?「……ルフィさん、ゾロさん。 お久しぶりです。 僕が分かりますか?」

聞かれ、ルフィたちが首を傾げていると、海兵は自らをこう名乗り出た。

?「僕です!!! コビーです!!! 覚えてませんか!!?」

コビー…それは、かつてルフィが旅に出て、最初にできた“友達”と同じ名。
ゾロを仲間にした際に別れて、彼は確か海軍に入った。だが彼らが知っているコビーは、泣き虫で弱虫で、へらへらとこびへつらっている様な典型的なダメ男で、今、目の前で堂々と立っている自信に満ち溢れた男とは到底似ても似つかない。
だが、どことなく面影がある。

ルフィ「コビーは友達だけど…もっとチビのコビーしか知らねェぞ、俺は。」

コビー「はい、そのコビー(・・・・・)です!!! 泣き虫でダメだったコビーです!!!」

ルフィ「ホントか~~~っ!!?」

そう、あのコビーだったのだ。しかも海軍本部の曹長という地位に君臨している。
ゾロもコビーの変貌ぶりには驚きを隠せないようだった。

コビー「まだまだ将校にはなれてないけど…!! 近くにルフィさんたちがいると聞いて!! いても立ってもいられなくて!!」

コビーにも色々な事情があったらしく、今は本部でガープに鍛えられているのだという。
懐かしい再会に、ルフィ達は嬉しそうに顔をほころばせた。が…。

?「ちょっと待て、お前らー!!! 俺に気付いてねェんだろ!!!」

コビーを持て成そうと部屋へ向かおうとするルフィ達を、先程ゾロが倒した男が引き止めたが、ルフィ達は彼が何者か全く気付かなかった。

ゾロ「誰だ?」

?「俺だーーっ!!お・れ・だーーっ!!」

ルフィ「知らねェよ。」

「ああ、きっとこのサングラスのせいで気付かないんだな…俺も変わったしな」と呟きながら海兵はサングラスをぐいっと持ち上げると、高らかに名乗り出た。

?「答えは…ヘルメッポだ!! モーガン大佐の息子・ヘルメッポだァー!!!」

……が、ルフィ達はまるで思い出せない。

ヘルメッポ「お前を磔にして、死刑寸前まで追いやった男だよ、ロロノア・ゾロ!!! ひぇっひぇっひぇっ!!!」

ゾロ「……?」

相変わらず思い出してもらえない憤りに、ヘルメッポはこう言い換えた。

ヘルメッポ「あの時の!! 七光りのバカ息子だァ~~!!」

ゾロ「あ…お前か。」

ヘルメッポ「うおーい!!!!」

不名誉極まりない覚え方をされ、ショックを受けるヘルメッポ。
そしてその様子を、ギネスは陰に隠れて窺う。

ギネス「コビー…か。 フッフフ、アイツは将来が楽しみだ♪」

まだ見ぬ次代の力に微笑むギネスであった。 
 

 
後書き
せっかくですので、イリスの部隊を紹介します。

「イリスの部隊・所属者」
◦ギオン…海軍本部中将で、通称“桃兎(ももウサギ)”。あらゆる海賊をおびき出す「桃色客あしらい」の異名で恐れられている女海兵で、大将候補にあげられるほどの実力者。
◦アイン…右太ももに大きな十字傷がある、落ち着いた雰囲気の女海兵。「モドモドの実」の能力者で、イリスの修行によって武装色の覇気を扱える。海軍本部少将。
◦ビンズ…忍者風の装いをした「モサモサの実」の能力者。武装色の覇気を扱える海軍本部准将。
◦シューゾ…手長族の海軍本部准将。アインとの仲は原作と違って割と良好。恐らくイリスのおかげ。

……うん、知ってる人は分かるよね。
アインとビンズは階級が不明だったので、とりあえず上述の通りにしました。 

 

第49話:父ちゃんは革命家

さて…部下達と一緒に自分で壊した壁を直し始めるガープ。
すると何かを思い出し、不意打ちでルフィにとっての爆弾発言を投下する。

ガープ「そういやぁルフィ。 お前、親父に会ったそうじゃな。」

ルフィ「え? 父ちゃん? 父ちゃんて何だよ…俺に父ちゃんなんかいるのか?」

ガープ「何じゃい、名乗り出やせんかったのか……。」

ガープは「ローグタウンで見送った」といった。
しかし、ルフィの父親らしき人物には会ってないため、仲間達は首を傾げる。
だが、その後ガープが言った言葉は、仲間達…いや、その場にいた全人類を驚愕させる事となる。

ガープ「お前の父の名は“モンキー・D・ドラゴン”……革命家じゃ。」

『……ええええええええええ!!!?』

その場に絶叫が轟いた。
部屋を取り囲んでいた海兵達が、引く波の如く後ずさって行く。

コビー「ルフィさんが、あのドラゴンの子!!?」

ヘルメッポ「じゃ…ドラゴンはガープ中将の子!!? 何なんだ、コイツの家系は一体!!!」

海兵達の尋常ならざる慌てぶりから、自分の父親が「ドラゴン」である事がとんでもない事実だと言うことは察するも、ルフィはドラゴンなる男の事をまったくと言ってもいいほど知らない。

ルフィ「おい、みんな一体何をそんなに…?」

サンジ「バカ!!! お前、ドラゴンの名前を知らねェのか!!?」

ナミ「アンタのお父さん!! とんっっっでもない男よ!!?」

仲間達も驚くばかりで何も掴めず、ルフィはロビンに説明を求めた。
海賊は、自分から政府や海軍を襲う事はないが、今、直接「世界政府」を倒そうとする勢力がいる。
それが“革命軍”であり、その頂点に立つ男こそ“ドラゴン”。その男の思想は今や世界中の国々に広がり、王国に反乱を招き、いくつもの国が倒れているのだ。

ロビン「政府は当然怒り…その黒幕ドラゴンを“世界最悪の犯罪者”としてずっと探し回っているんだけど…彼は素性の片鱗すら全くつかめない謎の男なの。 一説には、あの“世界最凶の単独犯”ギネス・スパーツィオがサポートしてるという噂もあるけど…。」

?「あ、俺のこと知ってんだ。」

『!!?』

その場にいた全員が目を見開いた。
何と窓から黒髪で端正な顔立ちをした青年がいつの間にか覗いていたからだ。

ルフィ「あーーーっ!! お前あの時の!!」

?「よぅ、ルフィ君。 先日はお疲れさん。」

ルフィに気さくに話しかける青年を見たガープは、青年を睨みつける。

ガープ「ほう……わしと喧嘩しに来たかギネス?」

『ええええええええええっ!!?』

再び絶叫が轟いた。
何と“世界最凶の単独犯”と呼ばれるギネス本人が登場したのだ。これにはロビンも驚く。

ルフィ「何しに来たんだ、お前?」

ギネス「礼だよ、礼。 君のおかげで胸がすいているからさ。」

ギネスは飄々とした態度でいるが、海兵達は武器を構えて警戒する。
目の前にいる相手は、“犯罪界の絶対王者”とも呼ばれ恐れられている世界的犯罪者だ。
実力は未知数で、単独でこの世界を壊そうとする“破壊主義者”と世間から言われている。下手なマネをすれば、すぐに殺される……そう感じ取ったのだ。
しかし……。

ギネス「まぁ、そう殺気立つな海軍。 別に喧嘩しに来たわけじゃないから。」

コビー「じゃ…じゃあ何をしに…!?」

ギネス「ガープの言い訳。」

『は?』

ギネスの突拍子の無い言葉に、間抜けな声を出してしまう一同。
するとギネスはガープに目を向けて言う。

ギネス「だってアレっしょ? “お前はわしの孫なので、この島で捕らえるのはやめた”とか言うつもりだろ? だったら“ギネスに妨害された”の方がまだマシな方だろ。」

ガープ「おぉ、それなら上手くいくな!! という訳で、ギネス。 お前と戦うと海軍(こちら)としても“色んな覚悟”を決めにゃいかんし、何よりも面倒だから(・・・・・)わしァ帰る!! くれぐれも海軍に気をつけるんじゃぞ、ルフィ!!」

ルフィ「海軍はじいちゃんだろ。」

ギネス「……賢明な判断だねェ、“英雄”ガープ。 ここで俺とやり合えばタダじゃあ済まない。」

ギネスはそう言い、笑みを深める。
しかし、ガープの言葉を理解した者達は戦慄する。
あの海賊王ロジャーを追い詰めた伝説の海兵が面倒くさがってはいたものの、「覚悟を決めなきゃいけない」と言ったのだ…ギネスはガープと同等の実力を有している可能性が高いのだ。

ガープ「こいつらとはまァ…ゆっくり話せ!! ぶわっはっはっは!!!」

最初から最後まで見せたガープの身勝手さは、仲間達にやはりルフィとの血の繋がりを深く感じさせた。

ギネス「……まぁ、俺も用は済んだし、これでお暇させてもらうわ。」

ギネスも帰ろうとする。
だが、ふと何かを思い出したギネスはこう告げた。

ギネス「そういやあ君の義兄(あに)が言ってたぞ。 “新世界で会おう”って。」

ルフィ「? エースの事か?」

ギネス「もう1人の方さ。」

ギネスはそう言い、手配書を残して去った。
ルフィは床に落ちた手配書を拾って、固まった。

ルフィ「え……!!!?」

そこには、死んだと思われてたもう1人の義兄の顔が……。

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-一方、マリージョアでは-


世界陸軍元帥・ジルドは、5人の老人を睨んでいる。
ジルドの相手は世界政府の最高権力である“五老星”だ。
空気は張り詰め緊張感に包まれており、不穏な雰囲気を醸し出している。

ジルド「それじゃあ、今回の一件……“バスターコール”発令権限の改正はしないと?」

「「「「「……。」」」」」

ジルド「何故腐り肥えた役人風情にあんな余計な権限(モノ)をくれてやったんだ!!? こちらにも“反政府組織殲滅”という仕事があるんだ、あんな小悪党のようなバカ1人の後始末は御免なんだよ!!!!」

ジルドは高圧的な態度で五老星に告げる。
バスターコールは敵も味方も関係なく攻撃対象とするため、使い方一つ間違えれば海軍自身にも甚大な被害が及ぶ諸刃の刃である。万が一にも間違えて使用してしまったら、そのまま召集されて国家や島を殲滅してしまう。
これを出世欲と権力欲しか頭にない能無しの役人が濫用すれば、その後始末のほとんどが陸軍がすることになっているため、ジルドは烈火の如く怒っているのだ。
しかし……。

「それは仕方のないことだ。」

「これはそういうシステムなのだ。」

「スパンダムの件は詫びるが、システムは変えん。」

ジルド「フン!! システムねェ……システムはいつでも変えられるから言い訳になりませんな。 俺達の苦労は気にも留めないアンタらのような脳筋まみれの上層部にはな!!!!」

「口を慎め、ジルドっ!!!」

怒り心頭のジルドを(たしな)める五老星。

ジルド「……まぁいい。 元天竜人の俺がいくら吠えようが聞き流すだろうし……今回の件はとりあえず後始末は引き受ける。」

ジルドは黒いコートをなびかせ、足早に去っていった。
そんなご立腹のジルドに、五老星は溜め息を吐くのだった。 
 

 
後書き
ジルドのイメージ図です、お待たせしました。

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うん、まぁまぁいい出来かなぁ。バカタレ画力の割には。 

 

第50話:アリスの覚醒

 
前書き
ついに50話!!おかげさまで感謝しております。
これからもお楽しみください。 

 
新世界。
常識外れな新世界(このうみ)でも比較的穏やかなこの海域で、百獣海賊団と海軍の艦隊が苛烈な戦闘が展開されていた。
海軍の艦隊は、軍艦20隻に中将をはじめとした腕の立つ将校が迎え撃つ。


ガギィン!!


サボ「…海軍本部准将・キビンだな?」

キビン「貴様らはここで食い止める!!」

サボの鉄パイプとキビンの十手が、火花を散らす。
サボはその後右足で蹴ろうとするが、キビンはそれを一瞬で回避し距離を取った。
人体を武器に匹敵させる超人的体術「六式」の“(ソル)”だ。

サボ「へェ…。」

サボは感心したような顔をするが、キビンは内心震えていた。
サボが蹴りで狙ったのは肋骨…肋骨が折れると肺に突き刺さり、死に至る可能性がある。
もし1秒でも遅れてたら、殉職()は避けられないだろう…。

サボ「いよっと!!」

サボは一気に間合いを詰める。

キビン「“鉄塊(テッカイ)”!!!」

キビンは自分の肉体を、鉄のように固くする。
この技なら、例え砲弾が直撃しようとビクともしない。

サボ「“覇王拳・竜王之爪”!!」


ズンッ!!


サボの掌底が、鳩尾に減り込んだ。
キビンは、我が身に起こったことが信じられなかった。
鉄の防御が、成す術もなく崩されたのだ。その理由は、サボの黒く染まった右腕が語っていた。
“武装色の覇気”だ。それも、かなり強力な。

サボ「……金塊にでもなれれば、俺の掌底も通じねェかもな。」

その一言の後、キビンは白目を向いて屈した。
まぁ、相手が悪過ぎただろう。サボは“剣帝”ライコウの懐刀である“双将軍”だ、新世界でも広く名を轟かす武闘家には六式程度では(・・・・・・)通じない。

サボ「まぁ、この軍艦(ふね)は潰したか。」

ふと見れば、巨人族の海軍中将・ラクロワがジャックと交戦していた。
新世界で名を挙げる大物達、海軍では中将以上の実力者は基本何らかの覇気使いだ。ラクロワも当然覇気使いだ。
しかし……地力が違う。


ズズゥゥン……!!


サボ「あ~あ……。」

サボは顔を引き攣らせて笑う。
古株であり自分の大先輩にあたる“旱害のジャック”は、5日間不眠不休で暴れられるほどのすさまじい体力の持ち主。潜り抜けた修羅場の数は明らかに違う。
ジャックが勝って当然だ。
すると、黒いコートをなびかせてローが颯爽と現れた。

ロー「サボ屋、片付いたか?」

サボ「あぁ、そっちも早く終わったんだな。 俺これで3隻目だけど、そっちは?」

ロー「4隻目だ。」

サボ「さすが船医総監様だな。」

すると、2人の前に海軍制服を纏った巨人族の海兵が現れた。

サボ「新手だな?」

ロー「俺がやるか? サボ屋。」

ローは“ROOM”を展開し、サボは鉄パイプに武装色の覇気を纏わせる。
その時だった。


バァン!!


「「!!」」

「ぐっ…!?」

突如響いた銃声。
巨人海兵の屈強な身体を、銃弾が貫いたのだ。

「だ…誰、がァ……!?」

胸から血を流し、吐血する巨人は膝を屈しながら口を開く。
この場には、サボとロー以外誰もいない。
それはつまり、隠れたところ…あるいはもっと遠い場所から狙撃されたということだ。
巨人は吐血しながらも立ち上がるが、今度は信じられない光景が目に映った。
海が……海水が槍状になって巨人に襲い掛かったのだ。


ドスッ!!


「ぐわっ!!」

海水の槍は巨人の肉体を貫通し、巨人は死に絶えた。

アリスティア「あ、大丈夫ですか?」

「「アリス!!?」」

アリスティアだった。
どうやら彼女の「ウミウミの実」の能力のようだ。

アリスティア「いや~…久しぶりに“覚醒”使ったんですけど、上手くいったようですね!」

悪魔の実の能力は、稀に「覚醒」することがある。
覚醒した動物(ゾオン)系能力者は気絶するほどの大技を喰らってもすぐ立ち上がる、異常なタフさと回復力を得ることができる。
超人(パラミシア)系能力者なら、外界に大きな影響を与える能力を発動できる。
アリスティアの「ウミウミの実」の能力は、基本的には海と同じ性質となり、悪魔の実の能力を無効化させたり海の生物と意思疎通をはかることがメインだが、覚醒すると海水を武器に戦えるようだ。
これはローとサボも知らなかったようで、驚きを隠せない。

サボ「そんな芸当が出来たのか…。」

アリスティア「悪魔の実は使い方が肝心です!!」

テヘッ♪と舌を出して笑うアリスティア。
彼女の上司であるブラックはこれ以上の実力だというのだから、余計驚きだ。

サボ「そういやあ、ライコウさんは?」

ロー「残り潰してる。」

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刀を抜いた剣帝(ライコウ)は、海兵達を尽く蹴散らしていた。
ライコウの実力は、次元が違う。
薙ぎ払えば、剣圧で吹き飛ばされ、斬撃でさらに傷を負う。構えて突けば、武器も防具も一撃で粉砕する。世界最高峰の剣客に相応しい剣戟は、どこか神々しく感じる。

ライコウ「!」

ふと見上げると、巨人の海兵が巨大な斧をライコウ目掛けて振り下ろした。
普通なら即死は免れない。だが、ライコウは違う。
逃げず、避けない。受け止めるのだ。


ガギィン!!


刀と斧がぶつかる。
踏ん張ったライコウの両足が、甲板に減り込む。
だが…。

ライコウ「甘いっ!!」


ドゥン!


ライコウは、巨人の斧を弾き返した。
身長差は軽く3倍を超える敵を押し戻す。巨人は思わずよろけてしまう。
その隙にライコウは左手に武装色の覇気を纏わせ、拳を振るった。

ライコウ「“覇王拳・狼王波”!!」

ライコウが力一杯左腕を振るうと、狼の形をした拳圧が巨人を襲った。
零距離に近かったため避けようがなく、モロに直撃して巨人は吹き飛んだ。

「准将殿!!?」

「お、おのれ!!!」

海兵達は束になって襲い掛かる。
だがライコウは一切動じず、左手の人差し指と中指、薬指と小指を合わせて掌底を軍艦に叩き込んだ。その瞬間、甲板は裂け、衝撃は波となって船中を伝わる。

ライコウ「“覇王拳・竜王之爪”!!」

ライコウがそう口にした瞬間、すさまじい衝撃波が放たれ海兵達は吹き飛んだ。
軍艦には大きな亀裂が走り、大破した。

ライコウ「よし……これで片付いたか。」

ライコウは辺りを見回す。
黒煙が上がり、次々に軍艦が海へ沈んでいく。

ライコウ「そんじゃあ、行きますかね。 モビー・ディックへ。」

ライコウはそう呟き、船へ戻っていった。 
 

 
後書き
次回辺り、白ひげと邂逅します。
誰が乗り込むか?もちろんライコウです。 

 

第51話:“剣帝”と“白ひげ”

 
前書き
ただいま、「最強生物の副船長と刀剣男士」を連載中です。
よろしければ、そちらもご覧ください。 

 
-海軍本部-

「センゴク元帥ーーーーー!!!」

センゴク「ん?」

会議中の元帥室に、伝令将校が慌てて入った。

?「バカ者!! 会議中だぞ!!」

慌てて入った伝令将校を、身体中に十字型の傷がある海軍中将・ドーベルマンが叱る。
それと共に、オニグモやステンレスといった海軍でも歴戦の中将達が睨む。

「も、申し訳ありません!! で、ですが緊急事態なので…!!」

センゴク「緊急事態?」

センゴクは眉をひそめる。
この後の伝令将校の言葉を聞いて、センゴク…いや、会議室にいる全員が絶句することになる。

「せ…先日向けられた艦隊を全て撃沈させ!! 四皇“百獣のカイドウ”が、同じく“白ひげ”エドワード・ニューゲートと、とうとう直接接触を……!!!」

センゴク「な…何、だと……!!?」

会議室が凍り付く。
実は数日前に白ひげはシャンクスと接触したばかりなのだ。シャンクスは穏健派の四皇であり、元々ロジャー海賊団見習いの時期があったため、少なからず白ひげとは仲が良い方だ。戦争にはならなかった。
だが、カイドウは別だ。
四皇きっての武闘派揃いの百獣海賊団は、白ひげ海賊団をはじめとした新世界の大物達と幾度となく戦闘してきた。
他の四皇の首を取ろうと機会を窺っていると唱えている者も多く、一度行動を起こせばシャンクスや白ひげ以上に脅威的なのだ。

センゴク「最厳戒態勢をとれ!!! 何が起こるか分からんぞ!!!」

「は、はっ!!!」

センゴクは大声で伝令将校に命じた。
カイドウとライコウは、一度何か企んだら何をしでかすか分からない。
特にライコウは百獣海賊団でも絶対的な穏健派だが、一度でも暴れさせたら海軍大将でも手に余る奴だ。
センゴクは思わず頭を抱え、中将達は心配そうな目でセンゴクを見つめるのだった。

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-新世界-

世界最強の大海賊“白ひげ”率いる白ひげ海賊団の母船「モビー・ディック号」では、ただならぬ緊張感が漂っていた。
船長の白ひげは相変わらず酒を飲んでるが、船員達はビクビクしている。

「“赤髪”の次は“カイドウ”か……!」

「何でこのタイミングで……まさかティーチの件でか…!?」

「何れにしろ、腹括んねェとな……。」

比較的若い船員達は、冷や汗を流す。
四皇“百獣のカイドウ”は、シャンクスと違って話し合いの通じない海賊として知られている。交渉は全て右腕であるライコウが担っており、ライコウ自身は話し合いは通じるが、一度スイッチが入ったら非常に危ない。

白ひげ「グララララ…あの鬼野郎、俺の首でも取りに来たか…?」

白ひげはカイドウが来たことに存外気にも留めてないようだが、いつも以上に覇気を放っており、幹部である隊長達も警戒している。
そして……。


カラン、コロン、カラン、コロン……


?「!! 来るぞ、“剣帝”が。」

白ひげ海賊団三番隊隊長・ジョズが口を開く。
それと共に、身構える船員達。


カラン、コロン、カラン、コロン……


黒い提督風コートをなびかせ、ライコウは巨大な瓢箪を携えて現れた。
一歩進むたびに船が震え、甲板がギシギシと軋む。
その覇気はすさまじく、先日訪ねたシャンクスの覇気を耐えた者達でさえ意識を奪われそうになる。

?「(相変わらず、とんでもねェ覇気だよい……!!)」

白ひげ海賊団一番隊隊長のマルコは、冷や汗を流す。
大海賊時代以前からの顔見知りであるライコウの桁外れな実力を知っているため、思わず身構えてしまう。

ライコウ「久しぶりだな、じいさん。」

白ひげ「グララララ…赤髪の次は百獣海賊団(てめェら)だとは驚いた。」

ライコウ「まぁ、せっかく良薬(・・)を持ってきたんだ。 これで勘弁してくれ。」

白ひげ「俺を死にかけの病人扱いしやがって、生意気な……グラララララ!!!」

ライコウは胡坐を掻き、大きな盃に酒を注ぐ。
そしてその後、片手で白ひげに瓢箪を投げ渡した。

ライコウ「ウチの領海(シマ)から納めてもらった酒だ。 飲んでくれ。」

白ひげは目を細めた後、ガブガブと飲む。

白ひげ「あぁ、上等な酒じゃねェか…!」

ライコウ「だろ? 口に合ったなら良かった。」

そう言った後、ライコウも盃に注いだ酒をグビグビと飲む。

白ひげ「で? 一体何しに来やがった?」

ライコウ「単刀直入に言う。 サッチを呼び戻してティーチから手を引け“白ひげ海賊団”!」

ライコウは覇王色の覇気を放って言う。
先程以上の覇気を放ったライコウに、船員達はバタバタと倒れ伏していった。

ライコウ「今アンタらが下手こくと、百獣海賊団(こちら)としても困るんだよ。」

白ひげ「“赤髪”のガキにも言ったがよォ…ティーチは海賊船で最もやっちゃならねェ“仲間殺し”をしたんだ。 仁義を欠いちゃあこの人の世は渡っちゃならねェんだと、ティーチのバカに教えてやるのが、俺の責任だろうがよ!!!!」

ライコウ「これはお前達だけの(・・・・・・)問題じゃない!!! ここで引かなきゃ、この世界が滅茶苦茶になりかねないんだぞ!!! 他人様の警告(・・)ぐらいちったァ聞け!!!!」

覇王色同士の、壮絶な舌戦。
2人の剣幕にマルコ達は思わず後ずさる。

ライコウ「……俺はシャンクスほど甘くねェぞ。」

白ひげ「……戦争する気か? ハナッタレ。」

ライコウと白ひげは、互いに睨み合う。
が……。

ライコウ「あ~~…何で思い通りにならないかなァ!!」

残った酒を飲み干し、頭を抱えるライコウ。
それを見た白ひげは、思わず笑う。

白ひげ「グラララ!! 思い通りにならねェから人生なんだろうが。 てめェは神様じゃあるめェし。」

ライコウ「ちっ…しゃあねェや、だったら別の手使って対処するわ。」

ライコウはそう言って立ち上がるが…。

白ひげ「ライコウ…折角来たんだ、久しぶりに本気の一撃ぐらい見せていけ。」

白ひげが傍らの薙刀に手を伸ばした。
さすがにマズイと察したのか、隊長達は慌てて退避を命じている。

ライコウ「“剣帝”をナメるなよ!!」

白ひげ「恐れるに足らん!! 俺ァ“白ひげ”だ!!」

互いに異名を言い、覇気を纏わせた刀と薙刀が激突した。


ドォン!!


互いの覇気の激突は大気を割り、天を割った。
それは、百獣海賊団の船からも確認できた。

カイドウ「!! やりやがったな、戦争か?」

ジャック「白ひげのジジイ、副船長に何を…!?」

ブラック「待て待て、そこまでボケちゃいねェよあの人は。」

コラソン「だが、ライコウさんの交渉はこれで決裂したようだな……。」

百獣海賊団と白ひげ海賊団の接触は、何とか戦争だけは免れたのだった。
しかし、ライコウの懸念が現実となってしまうのはまだもう少し先の話。 

 

第52話:拝啓、亡き同胞達

-ワノ国-

穏やかな雪がちらつく中、船長カイドウは歩いていた。
まるで地響きのような足音をたて、酒の入った瓢箪を片手にある場所へと向かっているのだ。

カイドウ「……。」

カイドウが目指す先にあるは、副船長である右腕・ライコウが必ず向かう場所。そして、多くの魂が宿る場所だ。

カイドウ「ここにいやがったな、ライコウ……。」

ライコウ「……お前も来てたのか。」

カイドウの目に映るのは、胡坐を掻くライコウの姿。
その先には、小さな慰霊碑がある。その奥には、この海で散っていった者達の形見である武器が、地面に墓標のように刺さっている。

ライコウ「飲むか?」

カイドウ「……あぁ。」

カイドウはライコウの横で胡坐を掻き、互いに酒を酌み交わす。

カイドウ「ウィ~~~……黄昏(たそがれ)るなんざ、らしくねェぞライコウ。」

ライコウ「バカ野郎、天下の剣帝様だって人の子なんだ。 黄昏ちゃあ悪いか?」

カイドウ「ウオロロロ……それに口を挟む筋合いはねェな。」

相変わらず酒臭い船長に、ライコウは思わず微笑む。
この百獣海賊団の結成初期のメンバーは、数える程度しかいない。大海賊時代開幕以前の船員達は、その殆どは在りし日の“海賊王”ロジャーや全盛期の“白ひげ”、“金獅子のシキ”との戦い、それかガープ・センゴク・イリスを筆頭とした海軍との戦闘で命を落とした。中には海軍と政府に命乞いをして裏切った者もいる。
ライコウは、夢半ばに自分達よりも先に命を散らした部下達の魂を救うべく、こうして形見を墓標代わりに特製の慰霊碑周辺に立てるのだ。

カイドウ「……昔を、思い出してるのか?」

ライコウ「……こうしてふと時間が出来るとな…。」

戦いに勝利した喜びと、大切な部下を護り切れなかった悲しみ。
その両方を背負いながら、ライコウはいつもカイドウ達を怒鳴り散らしたりしつつも全面的にサポートしてるのだ。
周りは気付いてないが、時々見せる虚ろな瞳をカイドウは知っている。

ライコウ「カイドウ……強すぎるのも、意外と辛く感じるな。 誰か失う度に、“この力は何のためにあるんだ”と問い質しちまう。」

カイドウ「……。」

どこかしんみりとした空気が流れる。
どんなに強くても、護るべきモノを護れなければ意味がない…そんな現実に打ちのめされそうになったことをライコウは身をもって体験したこともある。
「最強の海賊団を創る」というカイドウ達の夢は、目の前で眠る部下達の夢。冷たい海の底に沈み、夢と未来を失った死者の意志を、ライコウは必死で背負い受け継ごうと生きているのだ。

カイドウ「……ライコウ。」

ライコウ「……何だ。」

カイドウ「てめェ人で背負いすぎるな。 たまには俺らにも背負わせろ。」

カイドウは飲んだくれの暴れん坊だが、何だかんだ言ってライコウの最大の理解者。ゆえに、ライコウの心境を誰よりも知っている。
重荷を背負って筋を通すライコウは、カイドウの理想のパートナー。長年の付き合いもあり、放っておけないのだ。

ライコウ「……けっ、お前らに背負う資格はあっても、背負う気があるとは到底思えねェけどな。」

カイドウ「ウオロロロロ!! 言ってくれるじゃねェか。」

雪が降る中、2人は気が済むまで酒を飲んでいくのだった。

-------------------------------------------------------------------------------

-海軍本部-


海は見ている 世界の始まりも
海は知っている 世界の終わりも

だから誘う 進むべき道へと
だから導く 正しい世界へ

痛み苦しみ 包み込んでくれる
大きく優しく 包んでくれる

海は見ている 世界の始まりも
海は知っている 世界の終わりも

もしも自分が消えたとしても
全て知っている 海の導き

恐れてはいけない 貴方がいるから
怯えてはいけない 仲間も持つから
進まねばならない 青きその先へ


マリンフォードの一角に設けられた墓地で、イリスは口ずさんでいた。
海導(うみしるべ)”……それは、戦闘などで亡くなった海兵を弔う鎮魂歌。彼女は暇さえ見つければ墓地へ行き、こうして海兵達を弔っている。
その美しい歌声は、傷を負った海兵をも癒さんとするほどの包容力が込められている。

ゼファー「昔から変わらねェな、イリスよ。」

イリス「ゼット……。」

コートをなびかせてイリスの元へ来たのは、伝説の元海軍大将で“黒腕のゼファー”…彼は現在教官を務めており、教え子には名だたる将兵達がおり、「全ての海兵を育てた男」と呼ばれる名教官だ。
前線には立つことはないが、その実力は折り紙つきで、老いた今でも現役の海軍大将と互角に渡り合える猛者だ。

ゼファー「“ゼット”か……その名でまだ呼んでくれるのか。」

イリス「あなたのようなカッコイイ男、そうそういないもの。」

イリスは海軍内で、ゼファーの事を唯一“ゼット”と呼ぶ。
“ゼット”は、要するに愛称のことだ。大海賊時代以前からの付き合いであるイリスだからこそ言えるだろう。

イリス「哀しいの……私はトキトキの実の能力で不老の身。 でもあなた達は老いていく。 海賊王世代で1人だけ浮かれる上、老い衰える同胞を見るのは辛いの……私も老いることが出来たら…。」

ゼファー「フハハハハ!! らしくねェな、イリス。」

ゼファーは豪快に笑い飛ばす。

イリス「……あなたも、墓地(ここ)に用でも?」

ゼファー「それぐらい察してるだろう。」

元々この墓地は、ゼファーが管理している。
教え子に戦闘の術や海兵としての正義感を叩き込んだのは、紛れも無いゼファーだ。

イリス「“俺は正義の味方(ヒーロー)を育てたいぜ”……いつもそう言ってたわね、ゼット。」

ゼファー「あぁ……俺の唯一の使命だ。」

イリス「なら、私は“ヒロイン”かしら?」

ゼファー「おいおい、ヒロインは護られる方だろ。」

そう軽口を叩き合う。
すると、モヒカン頭と口ひげが特徴の男が何処か疲弊した顔で現れた。

イリス「モモンガ…?」

ゼファー「どうした、モモンガ。」

モモンガ「!! こ、これはゼファー先生にイリス大将!!」

モモンガは咄嗟に敬礼する。

イリス「どうしたの?」

モモンガ「えェ……実は大事な会議があるので、ガープ中将も呼ぶようセンゴク元帥に言われたのですが…。」

「「……。」」

イリスとゼファーは察した。
「ガープの奴、逃げたな」と。

ゼファー「……大変だな。」

モモンガ「えェ…一時は追い詰めたのですが、本部要塞の城壁を素手で登って逃げたので手に負えず……。」

イリス「あの城壁を登ったの!!?」

イリスは驚いて叫んでしまう。
本部要塞はワノ国の建築様式を採用しており、特に城壁は「武者返し」という傾斜がキツく登ることが極めて困難な防御力の非常に高い石垣になっている。
それをよじ登ったのだ。“月歩”で追跡しようとした中将もいたが、覇気を纏ったガープの拳骨に叩き落とされてしまったという。

モモンガ「そこで、イリス大将ならば捕まえられるのではと踏んでここへ来たのです…。」

イリス「ゼット、一緒に来てくれない?」

ゼファー「ハァ……世話の焼ける奴だな、ガープは。」

ゼファーとイリスは呆れたように笑いながら、墓地から去っていった。 
 

 
後書き
因みに、この後行われたイリス&ゼファーVSガープの逃亡戦は、ガープの惨敗で終わってます。

 

 

第53話:「せがれ出来た」

それは、突然だった。

ライコウ「あ、俺ついにせがれ出来たからよろしく。」


『ブフゥゥゥゥッッ!!!!』


いつもの酒盛り。
その最中にボソリと呟いた副船長の爆弾発言に、その場にいた全員が酒を吹き出す。
さすがのカイドウもこれには固まっており、ジャックやブラック、コラソンはゴホゴホと激しく咳き込む。

モネ「あら? 言ってなかったの?」

ライコウ「最近色々あったから、中々言い出せなくてな。」

ブラック「い、いいいいつ子供が出来たんだ副船長っ!!?」

ライコウ「3ヶ月前だ。」

さらに爆弾発言が投下。
何と3ヶ月も前からライコウの嫁であるハーピー師団団長・モネは妊娠していたのだ。

ライコウ「モネは今妊婦だから、全員関わる時は丁重にな。」

カイドウ「腹は膨らんでねェだろ? 戦えんじゃねェのか?」

ライコウ「おいおい、何言ってんだ。 腹は膨らんではいないが、妊婦は妊婦だぞ。 戦場に出て万が一が起こったらどうするんだ。」

ムスッとした顔でカイドウを諫めるライコウ。
いつの間にか慣れてしまったカイドウに、ジャックは「さすがカイドウさん、揺るぎねェ」と呟く。ジャックも大概だが。

ロー「薄々勘付いてはいたが、やっぱり出来てたんだな……。」

コラソン「お、おいロー!! それってどういう意味だ!?」

ロー「俺は船医総監(・・・・)だぞコラさん……百獣海賊団(このいちみ)の健康事情はほぼ把握している。」

そしてローは酒を飲みながら語り始める。
2週間ほど前から、モネの様子が少しおかしかったことを。

ロー「2週間程前だったな……モネがよく“微熱が出たようなだるさが続く”だとか“頭痛がする”とかで俺の元をよく訪ねてたんだ。 最初は鎮痛剤を施したが、改善はしておらず、むしろ“胸やお腹が張っているような気がする”だとか“トイレが近くなって困る”と相談を受けた。 それを聞いてもしやと思って妊娠検査薬を渡したんだが……思った通りだったな。」

コラソン「何でそれを早く言わない!!?」

ロー「早く言おうにも、ここ最近忙しかったんだ。 結果を報告する機会を逃してただけだ。」

汗だくで詰め寄るコラソンに、冷静に切り返すロー。
確かに、考えてみればここ最近は白ひげ海賊団と接触したり海軍と揉めたりで中々全員が集まる機会がなかったが……。

ロー「因みにギネスの奴は、知ってるらしい。」

コラソン「ハァ!!? 何で知ってんだアイツ!!?」

ロー「死んだ母親が医者だったらしい。 それで医学の知識も得てるから、察したんだろうな。」

ジャック「初耳だな……。」

どうやらギネスだけは気付いていたようだ。
それを聞いたライコウは「妙に勘は鋭いよな、アイツ」と呟く。

ロー「まぁ……俺としてもどういうガキが生まれるか楽しみだ…。」

ローはそう言い、不敵な笑みを浮かべる。
“剣帝”と称される覇気の達人・ライコウの血を引く子供が生まれることを待ち望んでいるようだ。

ロー「尤も……俺としては男であって欲しいけどな。」

ペンギン「そうか? 女の子の方が嬉しいと思うぜ?」

シャチ「そうだぜ総監。 ウチは“華”が少ないだろ?」

シャチとペンギンをはじめ、多くの船員達が「女の子が欲しいだろ」と声をあげる。
しかし、ローの一言で引っ繰り返ってしまう。

ロー「“親父は娘に弱い”って、よく言うだろ?」

『……。』

一斉に押し黙る。
ローの言葉の意味を察したからだ。

ロー「まぁ、余程の事がねェ限りこの件は問題無いさ……それよりライコウさん。 ドフラミンゴの“商売敵”である海賊について知ってるか?」

ライコウ「?」

ロー「“マイキー・マット”……知らねェ訳じゃないだろ?」

ライコウ「!!」

マイキー・マット……平和の象徴ともされている。“東の海(イーストブルー)”出身であり、新世界でも結構名の知れた若い海賊だ。
新世界に進出したのは5年ほど前で、その時はまだ2億ベリーのルーキーだった。

ジャック「あァ…とんでもねェ海賊とは聞くな。」

実はマイキー・マットは、多くの偉業を成し遂げている海賊として知られている。
中でも伝説として語られてるのは、あの世界最強の大海賊“白ひげ”と決闘したことだ。
最終的には惨敗で終わってしまったが、「白ひげに片膝をつかせた」、「白ひげを本気に(・・・)させた」という常軌を逸した奮戦ぶりが世界中に伝わり、人々を震撼させた。
これ以来マイキーは他の四皇からも一目置かれるほどの有名人となったのだ。

ライコウ「それがドフラミンゴと、どういう関係だ?」

ロー「アイツが今ナワバリにしている島だ…アイツは知ってるかは分からねェが、ある特殊な鉱物(・・・・・)の鉱山がある。」

『!!!』

ロー「それが“ロリシカ鉱石”の可能性があるんなら……ドフラミンゴは必ず食らいつく。」

ライコウ「成る程、会う価値はあるな…。」

ライコウは残った酒を飲み干す。
ロリシカ鉱石は、電流を流すと“念波嵐”という島の磁気をも狂わせて色んな機械を一時的に再起不能にさせる波動エネルギーを発する鉱物。全世界の軍事バランスが崩壊しかねないほど“ヤバイ代物”であり、裏社会の大物達が喉から手が出るほど欲しがっている。

コラソン「今はマイキーが護ってるが、崩れるのも時間の問題だということか?」

ロー「そうだ。 その前に掌握し、あわよくば傘下にする。」

ローはそう提言する。
だが、全員は乗る気じゃない。
「あのマイキーが応じてくれるのか」と、皆不安なのだ……。
すると…。

カイドウ「……その島はどこだ?」

『カイドウ様!!?』

カイドウ「ナワバリは早い者勝ちだろうが。」

ライコウ「同感だな…鉱物の正体は何であれ、マイキーを傘下にすれば大きな戦力となる。 ジェルマとビッグ・マム(あのババア)が相手だから尚更だ。」

カイドウとライコウは、ニヤリと獰猛な笑みを浮かべる。

ライコウ「度肝を抜かせてやろうじゃねェの。 ジェルマもドフラミンゴもビックリするだろうな。」

こうして、早速ライコウは動き出した。
白ひげに片膝をつかせた伝説の男…マイキー・マットを傘下にするべく。 

 

第54話:マイキー・マット

-新世界-

ククル島。
ここには、マイキー・マット率いるマイキー海賊団がナワバリとしている島だ。
この島に、ライコウ達百獣海賊団は訪れていた。

「ライコウ様!! 到着いたしました!!」

ライコウ「あぁ。」

錨を下ろして船を停泊させ、部下を引き連れて島の奥へ向かおうとするライコウ。
すると……。

?「遠路遥々、こんな若造の為に会いに来てくれるとは、海賊冥利に尽きますなァ。」

ライコウ「!」

コートを羽織った、黒髪天然パーマの青年が現れた。
その顔には大きな傷があり、白ひげとの激戦を物語っている。

ライコウ「お前がマイキー・マットか。」

マイキー「あぁ、そうだ。」

この男が、マイキー・マット。
懸賞金5億60000万ベリーの海賊だ。

マイキー「そんで、アンタは?」

すると、部下達がライコウの前に現れて半ギレの状態で詰め寄った。

「おいおい、坊主!! てめェ誰に名を聞いてんだ!?」

「ここにおられるお方は!!! 海賊界の皇帝と呼ばれる四皇の1人“百獣のカイドウ”様の右腕であり!!! 新世界が誇る大海賊“剣帝”ライコウ様だ!!!!」

「世界四大剣豪の一角であるライコウ様にかけられた懸賞金は、15億ベリーだ!!! “白ひげ”に片膝つかせた程度の銀メダリスト(・・・・・・)が図に乗るな!!!」


ゴゴゴゴン!!


「「「ふぎゃっ!!!」」」

ライコウの鉄拳が炸裂。
部下達は一斉に地面に減り込んだ。

ライコウ「恥ずかしいからやめろ。」

部下達のオーバーな紹介に、さすがのライコウも恥ずかしく感じたようだ。
しかも事実でもあるから余計に恥ずかしい。

マイキー「まぁ、とんでもねェ化け物であるのは十分理解したよ…。」

マイキーは煙草を取り出し、咥えて火をつける。

マイキー「…んで、何の用だ?」

ライコウ「重大な話をしに来た。 お前達マイキー海賊団の存亡……いや、この新世界のパワーバランスを崩壊しかねない程の問題だ。」

マイキー「な、何だと……!?」

マイキーは思わず、咥えて煙草を落としてしまう。
自分の一味の存亡どころか新世界のパワーバランスを崩壊しかねないほどの重大な“何か”を、自分達は知らずに手にしており、ライコウはそれを知っているということだ。

ライコウ「詳しい話は奥でしよう、これは他言されちゃマズイ。」

マイキー「わ、分かった……。」


-------------------------------------------------------------------------------

ライコウ「…ということだ。」

マイキー「……冗談、じゃねェよな…?」

ライコウ「冗談ならここへ来て言わないさ。」

マイキーは、冷や汗を流していた。
全世界の軍事バランスが崩壊しかねないほどの力を有する“ロリシカ鉱石”がこの島に大量に埋まっている可能性が高く、新世界中の大物に狙われていることに。

ライコウ「海賊なんだ、好きにやるのが一番だ。 だが…この件に関してだけはレベルが違う。 “ドフラミンゴ”や“ジェルマ”からも狙われたら、破滅は免れないぞ。」

マイキー「っ…………!!!」

「船長、顔色が……。」

マイキーの顔色に、彼の部下達は心配する。
“白ひげ”との戦いとは話のデカさ(・・・・・)が違うレベルなのだ、顔色を悪くするに決まっている。

ライコウ「そこで提案だ。 新世界での海賊の生き残る道は“四皇に従うか、抵抗し続けるか”のどちらかだ。 船長たるお前が、百獣海賊団(おれたち)の傘下に入ればこの島ごとお前らの安全は保障される。」

マイキー「断ると言ったら、どうすんだ?」

ライコウ「百獣海賊団(おれたち)としては何もしないが……新世界中の大物達全員を(・・・)相手取れるほどの戦力はないだろう?」

マイキーは押し黙る。
新世界中の大物達がどれほどの戦力を有しているかは、想像を絶する。一海賊団では成す術もなく潰される。
だが、四皇…それも四皇の中でも最強とも言われるカイドウ率いる百獣海賊団の傘下になれば、自分達の身の安全も保障され、航海も続けられる。
マイキーの答えは……。

マイキー「分かった、アンタの傘下になる。」

ライコウ「そうか。」

マイキー「ただし!! せめて…この島だけは俺に護らせてくれ!! 俺達マイキー海賊団の初めてのナワバリだったんだ、易々と手放せねェ……!!!」

マイキーはそう懇願する。
ナワバリを多数持っている四皇と違って、たった1つしかないマイキー海賊団のナワバリを手放すのは惜しいようだ。
ライコウはその願いを……。

ライコウ「あぁ、分かってる。 お前に任せよう。」

マイキー「すまねェ……!!」

引き受けた。

「いいんですか? ライコウ様。」

ライコウ「四皇傘下の海賊は、“ナワバリの守護”が最大の任務だ。 マイとスコッチにも、新世界に数多くあるナワバリの守護を任している。」

ライコウはそう部下を諭す。

ライコウ「これから頼むぞ、マイキー・マット。」

マイキー海賊団、百獣海賊団の傘下に。 
 

 
後書き
マイキーの設定です。
多少修正しました。

【マイキー・マット】
身長:310cm
年齢:原作開始時点・34歳→2年後・36歳
懸賞金:第54話(原作開始)時点・5億60000万ベリー
誕生日:5月2日
容姿:黒髪天然パーマで整った顔立ち、顔に刻まれた大きな傷が特徴。
武器:基本は素手(怪力)、時に拳銃
服装:カジュアルな格好に腰布、黒いコートを羽織っている。
好きなもの:ギャンブル、喧嘩、新聞
嫌いなもの:アボカド(アレルギーのトラウマがある)
所属:マイキー海賊団/船長
異名:“暴獣”
イメージCV:関智一
性格:海賊の割には比較的寛大だが、実際は一度スイッチが入ったら相手が格上でも問答無用で潰しにかかる、ジャックと引けを取らないほど獰猛な性格。その一方で船長らしく慎重な振る舞いも出来る。
戦闘力:武装色の覇気で硬化させた腕による素手の喧嘩を得意とし、家一軒を丸ごと持ち上げ投げつけることが出来るほどの凄まじい怪力を誇る。拳銃による射撃も得意であるが、あくまでも素手の喧嘩を好む。
モデル:平和島静雄(デュラララ!!) 

 

第55話:のんびり休日

百獣海賊団で…いや、新世界で名を馳せる大海賊達の中で最もストレスが溜まっている(・・・・・・・・・・・)であろう男・ライコウ。
そんな彼は、同じ百獣海賊団でハーピー師団の師団長を務める女海賊“雪害のモネ”と夫婦関係であり、ちゃっかり子も授かって、海賊人生ではあるが順風満帆である。
そんなリアじゅ…ライコウもたまにデートに行くこともある。
部下達は下心丸出しで追跡計画を船長カイドウに提案したが、カイドウは「男の休日を邪魔すんじゃねェ」と怒り任せに金棒を振るい、全員島の外まで吹き飛ばしたので中止にしたという。
さて、そんな余談はともかく…新世界にある温泉島・セカン島のある飲食店では、ライコウ夫妻が休憩していた。

ライコウ「次はどこにするか?」

モネ「そうね…この辺りにハンドアイランドがあるから、そこはどうかしら?」

酒を飲みながら尋ねるライコウに、モネは瓶底眼鏡をクイッと上げて答える。
ハンドアイランドは新世界でも有数の職人がいる島で、島全体が巨大な手の形をしているのが特徴だ。白ひげのナワバリであるため小競り合いは起きる心配はない上、海軍も近寄らないため、比較的安全とも言えよう。

ライコウ「よし、行くか。」

モネ「そうね♡ でも……。」

ライコウ「? どうした?」

モネ「アレを(・・・)片づけなきゃいけないようね。」

ライコウが振り返ると、そこには無数の海賊達が。
どうやらライコウ夫妻の首を取りに来たようだ。

ライコウ「俺15億だけど…モネっていくつ?」

モネ「7億よ。」

ライコウ「2人合わせて22億……スゲェ額だな…。」

22億ベリー…どれぐらいの大金だろうか?
見当つかず、ライコウは唸ってしまう。

「ヘッヘッヘ…!!」

「こりゃあとんでもねェ大物だ!!! 15億に7億!!! 討ち取ったら海賊王も夢じゃねェぜ!!!」

「女の方は上玉じゃねェの……美味しそうだぜ!!!」

海賊達は下心丸出しだったり妄言を口にしたりする。

ライコウ「お前妊婦だろ? 無茶しねェ方がいいぞ。」

モネ「フフ……能力で何とかできるわ。」

ライコウ「……じゃあ、教えてやるか。」

モネ「えェ……“海賊ごっこ”をする小悪党にね♪」













-2分後-

目の前には、雪景色と共に惨劇が広がっていた。
氷柱で身体を貫かれた者、刀で斬り伏せられた者、身体が凍り付いて生死をさまよう者……まさに死屍累々そのものだ。
これが、“剣帝”と“雪害”の圧倒的力だ。

ライコウ「モネ、大丈夫か…?」

モネ「えェ、能力のみで戦ったから。」

モネの笑顔に安堵するライコウ。

モネ「肉弾戦は、出来るけどしないのよ。」

ライコウ「その方が安心する。」

モネは、肉弾戦も得意とする。
主に鳥の足を使った鋭い蹴りで、武装色の覇気を纏わせたその威力は岩をも砕く。翼に覇気を纏わせて防御したり、逆に能力と覇気を使って斬りつけることも出来る。
元々ライコウが彼女を鍛えたりしてるので、百獣海賊団では戦闘力はかなり高く、ジャックがパワー型、ライコウがオールラウンド型、アリスティアがテクニック型と例えれば、モネはテクニック寄りのオールラウンダーと言えるほど有能なのだ。

ライコウ「まぁ、準備運動も終えたし、デート再開だな。」

モネ「そうね、行きましょう♡」

モネは愛嬌のある笑みを浮かべる。
それを見たライコウは……。

ライコウ「(ヤベェ、今の笑顔はキタ……///)」

と、ちょっとだけ顔を赤くするのだった。


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-ハンドアイランド-

新世界でも有数の職人がいる島、ハンドアイランド。
ここは新世界に君臨する四皇の一角であり、海賊王ロジャーのライバルだった世界最強の大海賊“白ひげ”がナワバリとしている島だ。
老いたとはいえ、白ひげの名はやはり強大で、海賊は一匹たりとも侵略に来ない。よって、島は常に平穏な上に海賊慣れしており、最適の島だ。

ライコウ「か~っ!! やっぱり酒は清酒に限る!!」

ライコウは酒をグビグビと飲んで一言。
モネは妊婦なので暫く禁酒中であり、甘酒を飲んでいる。

ライコウ「ふと思ったんだが、お前って結構強いよな。」

モネ「そうかしら? アナタや船長さんに比べればそうでもないわ。」

そう言ってまたクイッと酒を飲むモネ。
実を言うと、見かけによらずモネは意外と酒に強いらしい。
ライコウやカイドウみたいにガブ飲み系ではないが、あのコラソンを酔いつぶれてしまう猛者だそうだ。

ライコウ「こうしてのんびりするのも悪くねェな…2人っきりで過ごすなんて、そうそう無ェからな。」

モネ「そうね…海賊だもの。」

ライコウは不敵に、モネは妖艶に笑む。

モネ「そう言えば…ローを見なかったけど、どこへ行ったの? 見返りの徴収日じゃないでしょう?」

ライコウ「あぁ、それか。」

ライコウはある資料をモネに見せた。
モネは瓶底眼鏡を掛けてそれを見る。

モネ「“10人の超新星”…?」

ライコウ「シャボンディに集結するとの情報をテゾーロから耳にした。 ローも興味を示してたから向かわせたんだ。」

ライコウがローをシャボンディ諸島に送ったのは、超新星達の力量を図るためだ。
磁気を操る、凶暴で好戦的なユースタス・“キャプテン”キッド。
全身を藁人形のように変身させる“魔術師”バジル・ホーキンス
動物(ゾオン)系古代種の能力者である元海軍本部少将の“赤旗”X(ディエス)・ドレーク。
一人オーケストラ状態の“海鳴り”スクラッチメン・アプー。
キッド海賊団所属の“殺戮武人”キラー。
超新星達の中では紅一点の“大喰らい”ジュエリー・ボニー。
“シロシロの実”の能力者であるカポネ・“ギャング”ベッジ。
空島出身の“怪僧”ウルージ。
三刀流の剣豪である“海賊狩り”ロロノア・ゾロ。
そして……ライコウが再会を待ち望む“麦わら”モンキー・D・ルフィ。
この者達が、シャボンディ諸島に一斉に集まるのだ。

ライコウ「ルフィはどれほど強くなってるのか…超新星は果たして“海賊ごっこ”なのか……ローの報告が楽しみだ。」

ライコウは笑みを深め、酒を口にする。

モネ「今日は帰る? それとも……泊まる?」

ライコウ「せっかくのデートだ、泊まるに決まってるさ。」

“剣帝”のデートは、まだまだ続く。 
 

 
後書き
次回、ロー編がスタートです。
舞台はシャボンディ諸島。どうぞお楽しみに。 

 

第56話:トラ男のシャボンディ視察・その1

偉大なる航路(グランドライン)”前半と、新世界を隔てる“赤い土の大陸(レッドライン)”の付近にあるシャボンディ諸島。
79本のヤルキマン・マングローブの集まりで構成されたこの諸島に、航海者達は新世界に行くために一旦はここに集結する。
そして丁度この時、“10人の超新星”と呼ばれる億越えの新人海賊10人が全員集結していた。

「“怪僧”が暴れてる!!」

「急いで離れるんだ!!」

逃げ惑う人々。
その先には、不敵な笑みを浮かべて棍棒を振るう“怪僧”ウルージと、舞うような体術を駆使して戦う“殺戮武人”キラーが戦闘を繰り広げていた。
ウルージの豪腕から繰り広げられる攻撃を、キラーは華麗に躱しながら反撃の瞬間を窺う。

ウルージ「フンッ!」

キラー「ハッ!」

2人は本気の一撃を見舞おうとする。
すると、顎に十字傷がある人物がサーベルとメイスを携えて2人の間に入った。
“赤旗”の異名を持つ元海軍本部少将の海賊・ドレークだ。

ドレーク「暴れたきゃあ“新世界”へ!!!」

キラー「!」

ウルージ「成る程……堕ちた海軍将校・ドレークか…。 フフ…命を拾いなさったな、マスクの人。」

ウルージは不敵な笑みでふてぶてしく言い、得物をしまう。
キラーもこれ以上の戦闘は無益と判断したのか、ウルージと同様に得物をしまう。
一方のドレークも騒ぎも収まり立ち去ろうとする。
が……。

ロー「今、いいとこだったのにな…ドレーク屋……!! お前…何人殺した?」

ドレーク「!?」

「ひゃ、百獣海賊団!!?」

「四皇カイドウの一味か!!?」

「しかもアイツらは“死の外科医”トラファルガー・ローと“無音の道化師”コラソンじゃねェか!! 四皇の幹部が、何でここに……!!?」

ローとコラソンの登場に騒然となる一同。
新世界に君臨する四皇の一角“百獣のカイドウ”の一味の幹部である男を前にし、緊張するドレーク。

ロー「いや…俺は視察に来ただけだ。 “殺せ”とは命令されてねェが……。」

不敵に笑うローに、ドレークは固唾を飲む。
確かにローは“殺せ”とは命令されていない。だが“殺すな”や“生かせ”とも命令されてない。
「いつでも殺せるぞ」と、目で語っている。

ドレーク「……今ここで殺り合う気は無い。」

ロー「へェ…。」

ドレーク「行くぞ。」

今度こそ立ち去るドレーク海賊団。

コラソン「お前なァ…今のはどう見ても売り言葉だぞ?」

ロー「売ったところで買う様な相手じゃねェさ…。」

すると、電伝虫が鳴りだした。
ローはそれに気付き、受話器を取る。

ロー「…俺だ。」

ブラック《ローか! 少し面倒ごとになったぞ。》

声の主はブラックだった。
彼もまた、ライコウの命でロー達と共に視察に来ていたのだ。

ロー「面倒ごとって、どういうことだ?」

ブラック《“天竜人”のロズワード一家だ。 海軍も護衛で来ているから、厄介になりそうだ。》

コラソン「(ロズワード一家か…。)」

ロズワード一家は、人道もへったくれもない行為をしでかしているのは変わりないが“天竜人”でも由緒正しき(?)家系だ。
コラソンも幼少期に面識があるため、顔を引き攣らせて思い出す。

ブラック《それだけじゃない。 海軍の科学部隊も動いている。 “パシフィスタ”を動かす気だ。》

“パシフィスタ”とは、海軍の天才科学者であるDr.ベガパンクが最近開発した海軍の新型兵器であるサイボーグだ。
1体造る費用は軍艦1隻分に相当すると言われ、圧倒的な実力を誇るという。

コラソン「どこでそんな情報を…極秘情報じゃないのか…!?」

ブラック《“新世界の怪物”と“犯罪界の絶対王者”と手を組んでんだ、政府の情報ぐらい取引で得られる。》

コネとは恐ろしいモノである。

ロー「アンタは今どこにいる?」

ブラック《人間屋(ヒューマンショップ)だ。 超新星の1人“キャプテン・キッド”のガキの様子を見に来たところだ。 “麦わらの一味”の何人かもいる…来るか?》

ロー「へェ……そりゃあ見物だ、すぐ行く。」


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-人間屋にて-

受話器を置き、電伝虫での通信を終えるブラック。

ブラック「しかし、相変わらず気色悪いところだな……。」

ブラックは嫌悪感を露にする。
人間が人間を“買う”……俗に言う人身売買。人身売買は世界的に禁止であり、政府や海軍はこの存在を認知しているが、「職業安定所」と称して事実上黙認している。

ブラック「イリスが嫌がる奴と思うがな…。」

海軍最強かつ“海兵の鑑”のような人格者であるイリスならば、この現状に苛立ちを覚えて政府に物申すだろう。
だが、それすら通用しないほどの権力(ちから)なのだろう。権力はやはり質が悪いモノである。

キッド「“天竜人”…“奴隷”に“人間屋”…欲をかいた権力者の純心(・・)に比べたら、世の悪党の方がいくらか人道的だ。 クズが世界を支配するからクズが生まれる、こんな事も分からねェのか? 俺達は悪気がある分かわいいモンだな、キラー。」

キッドがシニカルに語ると、キラーは「違いない」と返事する。
さて、オークションの方では次の出品……16人目の人間が舞台上に上げられる。体格の良い男で、かつては一船の船長を務めていたという。

《“人馬”にするもよし、“力仕事”に“サンドバッグ”!! 用途は様々!!》

会場を盛り上げる為、ブラックジョークを込めた司会にどっと笑いが起こる。
かつては一海賊団の船長として多くの部下を率いていたであろう男が奴隷など、あまりにも惨たらしい仕打ちにブラックは目を細める。
その時、男が突然、口から血を流し、倒れた。
会場中にどよめきが走る。
舌を噛んだのだ。

ブラック「舌を噛んだか…だがあの男には息がある。 中々の芝居だな…。」

すると、ローとコラソン達が到着した。

ロー「どうだ? 男爵屋。」

ブラック「変化なし……だが外から少し大人数の気配を感じる。 海軍の駐屯地が近いから、誰かさんを捕らえに来たかもな。」

どうやら海軍がやってきて、包囲網を敷こうとしているようだ。

コラソン「まぁ、俺の能力でこっそり逃げ出せるが……。」

ブラック「俺達には手を出さんだろう。 四皇に喧嘩吹っ掛けるほどの余裕があるとは思えないからな。」

酒を片手にそう語るブラック。
この後、誰も想像がつかない非常事態が起こるのだが……それが数分後に起こるとはブラック達は知る由もない。 

 

第57話:トラ男のシャボンディ視察・その2

居心地が悪い異様な空気漂うオークション会場。
ローの部下であるべポを始め、シャチやペンギンも不快感を露にする。コラソンは元天竜人であるせいか、頭を抱えて「面目ねェ…」と呟く。
その時、会場が動いた。

《これからご紹介させて頂きます商品は、先程のトラブルを一瞬で吹き飛ばしてしまう程の~~ォ、超~~ォ目玉商品っ!!!》

舞台裏を隠すためのカーテンに浮かび上がるシルエットに、会場中から歓声が上がる。
大きな金魚鉢の中に入れられたのは、人間の上半身に魚の下半身を持った……。

《魚人島からやって来た!!! “人魚”のォ、ケイミー~~~!!!》

一斉に盛り上がる会場。
キッド海賊団と百獣海賊団は相変わらずの冷たい態度だが、それすら気にも留めないほど人々は歓喜する。
主催者側から最初に提示される金額はいくらだ、と一同が構えた時、その大声は競売席から上がった。

?「5億で買うえ~~!!! 5億ベリィ~~~!!!」

会場中が静まり返った。
購入すると名乗りを上げたのは、天竜人・チャルロス聖だった。

《……か……会場、言葉を失っておりますが、えー、一応!! 5億以上!! ありますでしょうか!?》

5億より上の数字はどこからも飛ばない。
いや、厳密に言えばロー達百獣海賊団ならばその上を行く。買う気じゃないだけだ。

コラソン「(勝負すら、させねェのか……。)」

コラソンは、ケイミーの虚ろな瞳を見据える。
ふと、少し離れた席で喋るトナカイが金髪の男に泣きながら訴えているのが見えた。
“麦わらの一味”に所属している“黒足のサンジ”と“わたあめ大好きチョッパー”ことトニートニー・チョッパーだ。

ブラック「“麦わらの一味(アイツら)”も狙ってたか……気の毒だな…。」

その時、正面玄関を破壊して何かが突っ込んできた。

ルフィ「何だお前、もっと上手く着陸しろよ!!」

ゾロ「だから、とにかく乗れって…言うがお前ら、サニー号に戻るのに何をそんなに急いでんだよ…ここどこだ?」

ロー「アレが…“麦わら屋”か。」

コラソン「“海賊狩り”…! 成る程、全員集合ってことか。」

現れたのは“10人の超新星”の内の2名、“麦わらのルフィ”と“海賊狩りのゾロ”だった。
突然の乱暴な訪問者に会場がざわめく中、舞台上のケイミーを見たルフィが猪のように駆けだそうとするが、男に止められる。
男はルフィの事を知っているらしく、どこか親しみを込めたように“麦わら”と呼んでいる。
すると…。

「きゃああ~~!!! 魚人よ~~!!! 気持ち悪い~~!!!」

会場中の視線が一斉に向けられる。
男…否、タコの魚人は「あ…」と小さく呟いた。
その直後、引く波がごとく参加者達が距離を置き、ゴミを投げつけたりする。

ロー「コラさん…これは一体…?」

コラソン「……200年前に世界政府が魚人島との交流を発表するまでは、魚人族は“魚類”と分類され、世界中の人間から化け物として迫害されていた。 現在でも一部地域では差別意識が残っているとは耳にしたが…。」

ブラック「成る程……その一部地域の1つがシャボンディだったって訳か。」


ドンドォン…!!


コラソン「っ!!!」

ロー「……。」

ブラック「……!!」

目の前で、魚人が撃たれた。
硝煙が立ち上る銃を握りしめ、天竜人・チャルロス聖が嬉しそうに笑う。
それはあたかも、狩猟の趣味を楽しんでいるかのように。
それを目の当たりにしたコラソンは、腕を黒く染めてチャルロス聖を睨むが……。

ロー「…コラさん、耐えろよ。 もうすぐ面白ェモンが見れるんだからよ。」

コラソン「……それってまさか…。」

鬼の形相で天竜人を睨みつけるルフィに良からぬものを感じ取ったコラソンは、顔を引き攣らせる。それは会場中の誰から見ても察しがつき、「正気か!?」とざわめきが起きる。
しかしブラックとローは笑みを深めながらルフィを見つめ、キッド達は思いの外平然としている。
そして…。

チャルロス聖「ヴォゲァア!!!!」

ルフィは、チャルロス聖を思いっきり殴り飛ばした。

ロー「っふ……くくくっ…!!」

ブラック「船長と副船長並みにぶっ飛んでるな……クク…!!」

笑うローとブラックに、ポカーンとするコラソン達。

?「おのれ!!! 下々の身分でよくも息子に手をかけたな!!!」

ルフィがぶっ飛ばしたチャルロス聖の父・ロズワード聖は激昂し、海軍大将と軍艦を要請した。
が……その直後ロズワード聖の上に“麦わらの一味”の狙撃手・ウソップが落下。

ロー「…っ……っく…!!!」

ブラック「あれは傑作だわ…フフ…!!」

最早今にも声を上げ大笑いしそうなローとブラック。

ルフィ「ケイミーの首についた爆弾外したらすぐ逃げるぞ!!」

ナミ「急がないと軍艦と大将が来ちゃう!!」

ロー「海軍ならもう来てるぞ、麦わら屋。」

ここでローがルフィに声をかけた。
ルフィ達はロー達百獣海賊団の方へ振り向く。

ブラック「海軍ならオークションが始まる前からずっと、この会場を取り囲んでるさ。 この諸島に本部の駐屯所があるからな。」

コラソン「誰を捕まえたかったのかは知らねェが、まさか天竜人がぶっ飛ばされる事態になるとは思わなかったろうな。」

口を開いた3人の顔を見たロビンは顔を青ざめた。

ロビン「あなた達、まさか……“百獣海賊団”!?」

ルフィ「…“百獣海賊団”?」

ロビン「四皇・カイドウが率いる一味よ……しかもその幹部達がここにいるなんて…!!」

四皇の幹部達が目の前にいることに、驚愕するルフィ達。
“海賊男爵”バロン・ブラック。
“無音の道化師”コラソン。
“死の外科医”トラファルガー・ロー。
誰もが一度は耳にする大物海賊だ。

ロー「面白ェのを見せて貰ったよ、麦わら屋一味……ライコウさんが認めただけある。」

ふとその時、舞台上が騒がしいと思えば、天竜人の娘・シャルリア宮が身動きの取れないケイミーに銃口を向けている。
ルフィ達の思惑をくじこうというのである。
だがその直後、全身の産毛がピリリと総毛立つような寒気を感じた。

ロー「これは……!」

コラソン「カイドウさんやライコウさんと同じ…“覇王色”…!!」

ブラック「……まさかな…。」

舞台裏を隠すカーテンが内側から破られ、フード付きの白いマントを羽織った白髪の老人と巨人が出て来た。
老人も巨人も、どうやらこれからオークションに出品される予定だったらしいが、爆発する首輪は外されており、「どうやって檻から抜け出したんだ!?」と衛兵達は動揺する。
そんな中、老人は会場の様子と魚人の怪我、捕らわれたケイミーを見やり、全てを理解した様子で神妙な表情を浮かべた。

?「つまり…成る程…。…全く、酷い目に遭ったな、ハチ……。」

それからゆっくりと顔を上げると…。


ゴウッ!!


凄まじい殺気がオークションハウスの中を走り抜け、衛兵達が地に倒れ伏した。
百獣海賊団は確信した。

ブラック「(まさかここでまた(・・)会うとはな……元ロジャー海賊団副船長“冥王”シルバーズ・レイリー…!!)」

白髪の老人の正体は、“海賊王の右腕”と呼ばれた伝説の大海賊だった。 
 

 
後書き
ランドウのイメージ図です。

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バカタレ画力だけど…まぁまぁのイケメンかな、うん。
顔が同じに見える様に感じるのは勘弁してください。 

 

第58話:トラ男のシャボンディ視察・その3

生ける伝説・レイリーの登場に困惑する一同。
そんなことなど露知らず、レイリーはケイミーの首にかけられた爆弾つきの首輪を一瞬かつ素手で破壊し解放する。

レイリー「それにしても…久しぶりじゃないかブラック。 最後にあったのはもう随分前じゃないか?」

レイリーはどこか懐かしそうにブラックを見据える。
ブラックはそれに対し「ロジャー処刑以来だな」と返答する。

レイリー「ライコウとカイドウは元気か?」

ブラック「ピンピンしてる。 アンタも大概だろ76歳。」

ブラックは不敵な笑みでレイリーを見据える。

ルフィ「んで、おっさん。 俺に会いたかったって何だ?」

レイリー「んん…話は後にしよう! まずはここを抜けねばな…。」

言った矢先、オークションハウスの外から海軍と思しき警告が聞こえて来た。
まだ大将は到着していないらしいが、もう時間はない。
ローの言った通りこの会場は既に包囲されており、降伏しろと外で喚いている。

ロー「俺達は巻き込まれるどころか…完全に共犯者扱いだな。」

口ではそう言いながらも、何故かローは楽しそうだった。キッドも便乗し、まるで祭りか何かを楽しむように笑う。

レイリー「あー、私はさっきの様な“力”はもう使わんので、頼むぞ。 海軍に正体がバレては住みづらい。」

ブラック「……お手並み拝見だな。 ロー、コラソン。 表の掃除は後輩に譲ろうじゃないか。」

ロー「…そうだな、ライコウさんの期待を裏切るなよ? お前ら。」

キッド「んだと…?」

ブラックとローの言い分にカチンと来るキッド。
キラーは「止せ! 相手は“四皇”の一味だぞ!?」と諌める。
すると、ローはある男の下へ向かい、オペオペの能力で首輪を外した。

ロー「俺と来るか? “キャプテン・ジャンバール”。」

ローが解放した男は、ローと同じ北の海(ノースブルー)出身の海賊・ジャンバールだった。
どうやらローはジャンバールを知っていたようだ。

ジャンバール「……そう呼ばれるのは久しぶりだ。 天竜人から解放されるなら、喜んでお前の部下になろう!!!」

ロー「フフ…半分は“麦わら屋”に感謝しな……!!」


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-同時刻-

新世界のある島。
そこでは、ギネスがある新聞を読んでいた。

ギネス「聞かねェ名だな…。」

新聞の内容は、新七武海についてだった。
新たに加盟する者は、マーシャル・D・ティーチ…“黒ひげ”と呼ばれる海賊だ。彼は白ひげ海賊団で「仲間殺し」を犯し逃亡した男で、元々の懸賞金は0ベリーの異例の海賊だ。

ギネス「それにしても……こうなっちまった以上、“白ひげ”が黙ってねェな…。」

何故ティーチが七武海に加盟したか…それは、白ひげ海賊団4番隊を壊滅させたからである。
2番隊隊長であったラカムを殺したティーチとのケジメを付けるべく、ティーチの親友でもあった白ひげ海賊団の古株・サッチ率いる4番隊が追跡し、バナロ島という島で壮絶な戦闘を繰り広げた。
しかし4番隊は惨敗し、サッチはインペルダウンに送られ、後日マリンフォードで公開処刑されるという。

ギネス「(しかし…妙だな。 いくら何でも危なすぎないか?)」

ギネスは眉をひそめる。
言わずもがな、“白ひげ”エドワード・ニューゲートは大海賊時代の頂点に君臨する怪物だ。「一対一(サシ)でやるならカイドウだろう」と言われているが、老いた今も世界最強の大海賊ではある。
白ひげの能力は“グラグラの実”の地震人間だ。一度進撃を開始した白ひげを止める手立ては皆無に近い。そんな奴とマリンフォードで戦争(ドンパチ)するのだから、政府としても海軍としてもあまりにも危険な橋であるはず。
20年前に、白ひげやロジャーとしのぎを削った大海賊“金獅子のシキ”が単独(・・)で殴り込んだ際はマリンフォードが半壊した。白ひげならマリンフォードが海に沈んでもおかしくない。

ギネス「(誰が何を企んでる? いくら何でも軽率すぎるぞ…。)」

少なくとも「海軍も逆らえないほどの権力者が、サッチ処刑を命じた」と解釈するのが妥当だろう。
その権力者は誰なのかは、未知である。
だが、五老星や天竜人クラスの権力を有する何者かであるのは確かだろう。

ギネス「戦争が起こるな……どっちが滅んでも、世界は荒れるぞ…。」

暴走する時代。
動き出す豪傑達。
ギネスはすぐそこまで迫っている「激動の時代」を憂うのであった……。 
 

 
後書き
一応「最強生物の副船長と刀剣男士」も進めてはいますが、もし出して欲しいキャラがいたら遠慮せず感想などでリクエストしてください。

あ、そろそろ頂上戦争編かもしれません。 

 

第59話:引き金

ブラック「は!? マリンフォードに殴り込む!!?」

電伝虫越しでの会話。
その衝撃的内容に、ブラックは目を限界まで見開かせてしまう。

ライコウ《マズイことになった、お前らはシャボンディから海軍本部に向かえ。 俺はジャック達と共に新世界から向かう。》

ブラック「待て待て待て待て!! おかしいだろ、何でマリンフォードに殴り込む必要があるんだ!!?」

いくら何でも、ぶっ飛んでいる。
しかし、カイドウならともかくライコウが同意しているとなると余程の事となる。

ライコウ《ギネスから連絡が入った。 マリンフォードで白ひげと海軍が戦争する。》

ブラック「は!? あのじいさんと海軍が!!?」

ロー「戦争…!?」

コラソン「おいおい、何かの冗談だろう!!?」

ローとコラソンも動揺する。
世界最強の大海賊“白ひげ”と、海軍全戦力の戦争。
それは海軍としては避けるべき事態でもある筈だ。

ライコウ《新たに七武海となった“黒ひげ”ティーチが4番隊を壊滅させた挙句サッチを引き渡したんだ。 政府はその後、サッチを公開処刑するつもりだ。》

コラソン「!!?」

ブラック「な……!?」

サッチの公開処刑。
それはあまりにも衝撃的で、信じられないことだった。

ブラック「んなバカな!! そんなマネ、いくら何でも海軍からの反発出るだろ!!?」

サッチを処刑する意味があるのかどうかどころか、そもそも処刑する必要はあるのかという疑念すら抱く、違和感に満ちた海軍の意向に驚くブラック達。

ライコウ《センゴクがそんな危ねェ橋を渡るとは思えねェから、政府上層部の圧力だろうな……誰が裏で糸引いてるかは俺も分からん。 テゾーロに掛け合ってもダメだった。》

“新世界の怪物”と呼ばれ、海賊は勿論、海軍や世界政府まで金で動かす力を持つテゾーロですら公開処刑の中止が無理だった。
それはつまり、揺ぎ無い心を持つ強大な権力者が海軍に命令したということに他ならない。

ライコウ《いや…まさかとは思うが……。》

ブラック「…心当たりがあるのか、副船長?」

ライコウ「あぁ…百獣海賊団(ウチ)の初期メンバーなら知ってる奴だ。 あの野郎(バカ)なら、可能性はある。」

ブラック「……まさか、アイツか…!?」

ブラックは怒りを孕んだ低い声で呟く。
ブラックの様子が変わったことに、ロー達は首を傾げる。

ライコウ《奴がもし裏で動いてるってんなら……話は別だよな。》

ブラック「…分かった。 状況が落ち着き次第、こっちも動く。」

そう言って、通話を終えるブラック。

ロー「男爵屋……アンタら、一体何が…!?」

ブラックは「その件は、後で話す」と告げた。
まるで、忌まわしき過去を語りたくないような……そんな雰囲気を醸し出していた。


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-一方、マリージョアでは-

ジルド「断る。」

世界陸軍と海軍本部の合同会議。
その内容は、陸軍・七武海・海軍で白ひげを迎え撃つ作戦だった。
しかしジルドはこれに関して頑なに拒んだ。

クザン「一応、理由はあんの? 兄ちゃん。」

“青雉”ことクザンは、ジルドに尋ねる。

ジルド「何で海賊は専門部署じゃねェところにその話持ちかけるのかが意味不明。 白ひげとはいえ、七武海が揃えば何とかなるだろ。」

ジルドは不機嫌そうに言う。
実を言うと、ジルド達陸軍は海軍と白ひげの戦争に構ってはいられないのだ。新世界にある反政府組織の拠点を見つけ出し、すぐにでも叩こうと窺っていたのだ。
その矢先に「白ひげとの戦争に協力しろ」と言われて応じては、せっかくの努力が無駄になるのだ。

ランドウ「元帥の言う通り、我々陸軍は白ひげ海賊団を構っている暇はありません。 元々海賊は海軍(そちら)が担当でしょう? 反政府組織を担当する我々に何故このような話を? よもや“白ひげ海賊団も反政府組織だから”とは言いませんよね?」

ランドウはニコリと笑みを浮かべるが、その目は全く笑っておらず、むしろ激怒している。ジルド自身も冷静に対処しているが、顔に青筋が浮かび上がってるので相当機嫌が悪いようだ。

センゴク「だが…これは政府からの命令だ。」

ジルド「悪いがこの件に関しちゃあ陸軍(おれたち)は出張らねェ。 お前ら海軍と違って、スネをかじって生きてるわけじゃねェし、都合のいい耳でもねェ。」

そう言って席を立つジルド。
もちろん、周囲からは「逃げるのか」だの「腰でも抜けたか」だの色々言ってくるが、徹底的にシカトする。

ジルド「ランドウ、俺トイレ行ってくるから先に戻ってろ。」

ジルドはそう言い、コートをなびかせてトイレへと向かった。
しかしランドウは立ち止まり、振り返ってセンゴクを睨んだ。

ランドウ「センゴク殿…“黒ひげ”に踊らされないよう頑張ってくださいね。」

ランドウはそう言い、陸軍の本部へ戻っていった。

サカズキ「フン、何が踊らされないよう頑張れじゃ。 腑抜けが…。」

サカズキはそう言うが、センゴクだけは違った。
何を隠そう、この会議の前にも海軍上層部のみでの会議があったのだが、その際イリスは「ティーチはシャンクスとライコウも警戒するほどの男だから、一番油断できない」と呟いていたからだ。
海軍最強と呼ばれるイリスですら警戒するほどの海賊“黒ひげ”。その力は、色んな意味で計り知れない。

センゴク「“黒ひげ”か…。」

もしかしたら、勝っても負けても取り返しがつかないかもしれない……そう思ってしまったセンゴクは頭を抱えるのだった。 
 

 
後書き
新キャラ、暗躍の時が来ました。
一体誰なのかは、後のお楽しみで。 

 

第60話:迫る戦争

白ひげ海賊団4番隊隊長・サッチの公開処刑を執り行うことになった海軍本部はただならぬ緊張感に支配されていた。
“白ひげ”は仲間の死を許さない。間違いなく戦争が起こる。それを警戒しての緊張感だった。

「センゴク元帥ーーー!!!」

センゴク「どうした?」

伝令将校が急いで元帥室に入り、敬礼する。

「ご報告します!! イリス大将が“海賊女帝”ボア・ハンコックの説得に成功し、今マリンフォードへ向かっているとのことです!!」

センゴク「! そうか、さすがだな……その報告を待っていたぞ。」

センゴクは安堵しながら茶を啜る。
世界一と謳われる絶世の美女である“海賊女帝”ボア・ハンコックは、傲慢で超が付く我が儘。かなり手強い女だ。
そんな女帝を動かせるのは、海軍最強であるイリス以外いない。
イリスとハンコックは、実は親密な関係がある。詳しい経緯は謎だが、ゼファーやガープなどの同期からは「マリージョア襲撃事件に関係がある」らしい。
尤も、強面の海軍中将の要請になど絶対に応じないであろうと踏んだからこそ、センゴクはイリスを派遣したのだが。

センゴク「これで七武海は6人…。」

世界四大剣豪の一角“鷹の目”ジュラキュール・ミホーク。
七武海で最も危険な男“天夜叉”ドンキホーテ・ドフラミンゴ。
七武海の中では唯一世界政府に従順な“暴君”バーソロミュー・くま。
海賊王ロジャーの血を引く“火拳”ポートガス・D・エース。
新七武海である未知の実力者“黒ひげ”マーシャル・D・ティーチ。
そして、ごく一部を除いて(・・・・・・・・)老若男女問わず数多の人間を魅了する“海賊女帝”ボア・ハンコック。

センゴク「あと1人…監獄に行ったアイツはどうだ? そろそろ頭が冷えたか?」

センゴクの言うアイツとは、“海侠のジンベエ”のことだ。
「魚人空手」と「魚人柔術」の使い手であるジンベエは、魚人族の中でも並外れた実力を持つ強豪だ。七武海の一角として活躍していた彼は、海賊を嫌っていたこともあり政府からも「海賊嫌い」という認識を受けていた。
普段はよっぽどのことがない限り比較的政府に忠実なのだが、今回の白ひげとの戦争には激しく反発し、今にも暴れだしそうだったので拘束・インペルダウンに収監中なのだ。

「いえ…未だ戦いに断固反対の様で、“七武海”の称号剥奪も覚悟の上だと…。」

センゴク「最も協力的に参加してくれるものと踏んでいたが、ここへきて大暴れとは…ジンベエめ…!!」

そこへまた新たな知らせが。
シャボンディ諸島の件であるが、センゴクは「“白ひげ”の問題以外の話は持ってくるな」と一喝。
すると今度は刀を背負った将校が現れ、口を開いた。

「センゴク元帥!! 一大事であります、白ひげに動きが!!」

『!!!』

元帥室に緊張が走る。

センゴク「監視船の報告だな? 電伝虫(ここ)へ繋げ、直接聞こう。」

「いえ、それが……“白ひげ”の本船モビー・ディック号の動きを監視していた海軍船全23隻が、つい先程一斉に通信が途絶えました……!!!」

センゴク「!!?」

報告の内容に、言葉を失うセンゴク。
これでは白ひげ海賊団がどれ程の規模でいつやって来るか、全く情報がつかめない。

センゴク「やられた……もう動き出していたのか…!!! どこで狙って来るかも分からんな……サッチを収容している内は、インペルダウンでの決戦も有りうると皆に伝えておけ!!!」


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-一方、マリージョア-

警護として居合わせた海兵達が固唾を呑む中、マリージョアのある一室では七武海が揃っていた。
ドフラミンゴ、くま、ティーチ、ミホーク、エース……5人共、海賊界屈指の実力者達だ。

ドフラミンゴ「お前は何故応じたんだ? 火拳。」

エース「ん……クソオヤジ(・・・・・)と張り合った男を拝みてェだけだ。」

ドフラミンゴ「ん? 飯奢ってくれるからじゃねェのか?」

エース「乞食(こじき)みてェに言うなよ、フラミンゴ野郎。」

ドフラミンゴ「フフフフ!!」

ドフラミンゴは愉快そうに笑う。
くまは相変わらずの無表情、ミホークは呆れたような顔で2人を見ながらワインを飲む。
すると、豪快に笑いながらティーチが口を開いた。

黒ひげ「ゼハハハハ!! なぁエース、俺の仲間にならねェか!? それか手を組もう!! 俺と一緒にいりゃあ世界を取れるぞ、この戦争で“白ひげ”をブチ殺そう!!」

チェリーパイを片手にエースを見据えるティーチだが…。

エース「俺は誰の下にもつかねェし、手も組まねェ。 義弟(おとうと)狙った奴となんざ尚更だ。」

黒ひげ「…あぁ、その件に関しちゃあ悪かった…だが済んだ話だ!! 気にすんな!! ゼハハハハ!!!」

笑い飛ばすように言うティーチ。
しかしその目は鋭く、まだ諦めてはいないようだ。

ドフラミンゴ「それにしても…まさかあの蛇姫が応じるとは思わなかったな、何かあったか? フッフッフ!!」

エース「さァな。」

こうしている間にも、マリンフォードの港には各地で名を挙げる屈強な海兵達が続々と着港…“正義”の名を持つ全ての戦力が海軍本部に集結している。
七武海も、収監中のジンベエを除いた者達が集結し始め、海賊女帝とマリンフォードで合流する。しかし海賊は海賊…戦闘陣営が伝えられても手に余る曲者揃いなので思う通りには動かないだろう。
ただ一つだけ理解できることは、彼らが一丸となって戦う事はまず考えられない。 
 

 
後書き
そろそろ戦争です。
一応赤髪海賊団と百獣海賊団をどこかで見参させます。 

 

第61話:LEVEL6のトーク

-インペルダウン-

ここはインペルダウンLEVEL6。
凶悪性の高さから存在を揉み消された伝説級・超大物犯罪者が収監されているこのフロアで、今回の事件の中心人物・サッチと王下七武海“海侠のジンベエ”が話をしていた。

ジンベエ「…わしァ、政府には“海賊嫌いの海賊”と通っとるが…アンタらは全く別じゃ…!!」

サッチ「……まぁ、結構出入りしてたからな…。」

ジンベエ「わしはただ、あの人の役に立ちたかった…!! 今…魚人島に平和があるのは…全て“白ひげ”のオヤジさんのお陰じゃからのう…!!」
 
ジンベエは、白ひげへの過去の恩義の語り始めた。
ジンベエの故郷・魚人島は、海底1万mに存在する世界政府加盟国「リュウグウ王国」が統治している魚人族と人魚族の住む島だ。
魚人島はマリージョアを通れない海賊達にとって、新世界へ進む唯一の航路である。そのため、大海賊時代到来以後、多くの海賊やそれを取り締まる海軍が島に押し寄せ、人魚の誘拐などが行われ島は廃れてしまったのだ。

ジンベエ「多くの魚人と人魚達が攫われて…売られて…もうみなが絶望に目を閉じた所へ“白ひげ”は現れた…!!」

リュウグウ王国国王ネプチューンに恩のあった四皇“白ひげ”のナワバリ宣言により状態は一変…あっという間に王国は平穏を取り戻した。
ジンベエは魚人島のために、強大な権力と実力で海賊達を黙らせるために王下七武海に入った。
しかし実際に強大な力で海賊達を大人しくさせていたのは、白ひげだった。表向きはジンベエの支配地だが、その裏では「ここは白ひげのナワバリだから、暴れるとヤバい」という暗黙の了解が広まっているのが現状だ。
ジンベエが戦争に反対したのは、魚人島と、魚人島を守るために大きな恩義を受けた白ひげのためなのだ。

ジンベエ「あの人が万が一……死んだら…海がどうなるか…!! 政府は予測できん訳でもあるまいに!!!」

白ひげが死ぬことは、これまでの秩序が失われ、新しいパワーバランスを生むための混沌・激動の時代が始まらざるを得ない。
ジンベエはそれを憂いているのだ。
すると、そこへ違う声が聞こえてくる。

?「クハハハハ…シャバは随分面白ェ事になってる様だな…!! クククク…!!」

その声の主は、顔面を横断する傷跡と左手の義手のフックが特徴の男だ。
そう…アラバスタ王国乗っ取りを阻まれインペルダウン行きとなった元王下七武海のサー・クロコダイルだ。

クロコダイル「“白ひげ”を討ち取るにゃあ、またとねェ好機(チャンス)ってわけか…!! こりゃあさすがに血が騒ぐ…!!」

ジンベエはクロコダイルを睨み殺さんとばかりに見つめる。

サッチ「お前が親父の首を取るだと…? よく言うぜ、ボッコボコにされたくせによ…!」

クロコダイル「俺だけじゃねェさ…!!」

すると周りの牢屋の囚人達が騒ぎ始めた。

「“白ひげ”を殺せェ!!」

「あの野郎が死ぬって!? ヒャッホ~~!!」

「そりゃいい!! 最高だ!!」

「俺を海へ出せ!! “白ひげ(アイツ)”の首を取るのは俺だァ!!」 

「俺も戦わせろォ~~~!!」

「ギャハハハハ!! “白ひげ”の時代を終わらせてやる!!」

ジンベエ「黙れ、貴様らァ!!」

ジンベエは一喝するも、囚人達は聞く耳を持たない。

クロコダイル「クハハハ…ジンベエ、サッチ…!! よォく覚えておけ…!! “白ひげ”や“ロジャー”、“カイドウ”に勝てなかっただけで、涙をのんだ銀メダリスト(・・・・・・・)達は、この海にゃァごまんといるんだぜ!! クハハハハ!!!」

すると…。

?「おいワニ野郎……そりゃあ俺をバカにしてるのか…!?」

クロコダイル「クハハハ…他人の事が言えるのか? モリア。」

クロコダイルに声を掛けたのは、カイドウとエースに敗れたゲッコー・モリアだった。
彼はクロコダイルと違い、「“七武海”を名乗るには力不足だった」という名目で政府に切り捨てられた哀れな人物である。

ジンベエ「モリア…お前さんはあのカイドウと渡り合ったと聞いとったが…何故“火拳”に敗れたんじゃ? しかも惨敗と聞いたぞ…。」

モリアは海賊界でもかなりの実力者だ。そう簡単に負けるとは思えない。

クロコダイル「クハハハ…!! そりゃあ簡単だジンベエ…モリア(コイツ)が“火拳”より弱かっただけだ。」

モリア「何だと…!!?」

クロコダイルとモリアは一触即発になるが、ここは牢獄。
海楼石の枷で能力を封じられてる上、獄房が一緒でないため喧嘩のケの字も出来ない。言い合うしかなく、結局飽きてしまった。

クロコダイル「だが…これからが面白くなりそうだ…クハハハ!! シャバに出るのが楽しみだ…!!」

牢獄の最下層で囚人達が騒ぐ中、インペルダウンの正面入り口では……。

ギネス「さてと……そろそろ動くか。」

絶対王者が人知れず侵入し始めていた。 

 

第62話:“ニューカマーランド”

 
前書き
今まで謎だったモリアの百獣海賊団敗北後をお話しします。

モリアはカイドウ達に敗北した後、原作通り天才外科医ドクトル・ホグバックを部下に迎え入れ、“魔の三角地帯(フロリアン・トライアングル)”を拠点に死者の軍団を形成し、百獣海賊団へのリベンジマッチを目論みます。
その過程で、ブルックやローリング海賊団から影を奪ったのですが、新世界にてライコウからモリアの情報を得たエースらスペード海賊団がモリアと戦い、モリア一味は敗北。
その一部始終を“ある事情”でモリアの元へ訪れたくまが目撃し、くまが政府上層部に報告。海軍と政府にモリア敗北の情報が行きます。
政府上層部はエースを戦力に出来るまたとない機会なため、モリアをあっさり切り捨てて投獄し、エースがモリアの後釜になります。
原作開始時点になり、ルフィ達が“魔の三角地帯”に迷い込みますが、その際に影を取り戻したブルックと遭遇。さらにスリラーバークから脱出したローラ達に脱出方法を教えてもらい、共に脱出。
ブルックはそのままルフィの仲間に、ローラ達は航海を続ける…という流れです。 

 
-新世界、とある冬島-

マイキー「傘下は全員待機、か…。」

シェリー酒を片手に、マイキーはマイが守護している冬島で待機していた。
カイドウ達百獣海賊団の「本隊」は急遽マリンフォードに乗り込むこととなり、傘下の海賊達はライコウから待機命令が下ったという訳だ。
大海賊時代の頂点に君臨し続けている生ける伝説“白ひげ”と、世界中の正義の戦力の最高峰“海軍本部”の一大戦争。
どっちが勝っても、時代は変わるだろう。

マイ「そう言えば、ギネスさんは野暮用があるって戦争には介入しないつもりらしいけど…。」

ココアを飲みながら呟くマイ。
ギネスは何でも“別の用事”があって百獣海賊団と共にマリンフォードに殴り込まず、別行動をするようだ。
しかしその内容は船長(カイドウ)副船長(ライコウ)しか知っておらず、幹部達すら知らないという。

マイキー「まぁ…可能性があるとすれば、エンポリオ・イワンコフとの接触か。」

『!!!?』

マイ「それってまさか……ギネスさんはインペルダウンに…!!?」

マイキー「だとしたら……とんでもない事になるぞ。 ライコウさん達からは随分な自由人とも聞く。 気分が良くなってLEVEL6の怪物共を放たなきゃあいいが…。」

史上最悪の女囚と呼ばれる“若月(みかづき)狩り”カタリーナ・デボン
世界一巨大な生物である“巨大戦艦”サンファン・ウルフ。
酒と刺激を求めて大罪を犯し続けた“大酒のバスコ・ショット”。
“悪政王”と呼ばれ人々を震撼させたアバロ・ピサロ。
聞く者が聞けば震えが止まらないほどの凶悪犯罪者が、シャバへ戻るのを今か今かと待ち続けているのがインペルダウンLEVEL6だ。

マイキー「……それに今回注意を払うべきなのは“黒ひげ”って男だ。」

マイ「あの新七武海の?」

マイキー「俺達は白ひげと戦ったから分かったが…白ひげ海賊団の中でアイツだけは妙に不気味だった。 得体の知れねェ“何か”を持っているだろう…。」

マイ「……。」

マイキー「海賊時代がここで根っこからひっくり返るぞ。 へへ……そうなる前に白ひげと喧嘩しといて正解だった。」

マイキーは笑いながら言うが、マイは嫌な予感がしてたまらなかった。

マイ「(世界はこれからどうなるの……?)」


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-同時刻、インペルダウン-

雪と氷に覆われた極寒フロア・LEVEL5と最下層・LEVEL6の中間に存在する、囚人達の秘密の楽園“LEVEL5.5番地”…またの名を“ニューカマーランド”。
ここでは、ある侵入者がこのフロアを取り仕切る者と邂逅していた。

?「それにしても…よくこのフロアに辿り着けたわね、ギネスボーイ。」

ギネス「ハハハ、トリックを用いたのでね。」

ギネスと会話しているのは、カマバッカ王国女王である“オカマ王”エンポリオ・イワンコフ。革命軍幹部の一面もあり、かのドラゴンの同志である。

イワンコフ「ヴァターシもヴァナタのことは聞いてるわ。 天竜人殺害事件、海軍艦隊撃沈事件、政府機関連続襲撃事件…とてもヴァナタ1人でやってるとは思えないわ。」

ギネス「そ~れが俺1人でやっとるんですわ。 その方がお気楽だし。」

ギネスは酒を飲みながらケラケラと笑う。

イワノフ「それで? わざわざ危険を冒してまでインペルダウン(ここ)へ来た理由は?」

イワンコフの問いを耳にし、ギネスは目を細めた。
先程の飄々とした態度は一変し、覇気を纏っている。

ギネス「…新世界で活動している“維新軍”が動き出した。」

イワンコフ「!? まさか、ガブルが…!?」

イワンコフは驚愕する。
維新軍は、“革命の子”と称されるガブル隊長が率いる反政府勢力。ガブル本人もドラゴンとは旧知の仲で、ギネスとも交流がある猛者だ。

ギネス「俺もそろそろ動く。 カイドウの旦那達も“ジェルマ”を潰すべく戦力を整えてるしな。」

イワンコフ「ヴァナタ、四皇と手を結んでるの!!?」

ギネス「まぁ、諸事情で。 アンタもいい加減動いたらどうだ?」

ギネスの爆弾発言に、もはや絶句するイワンコフ。
彼の部下達も口をあんぐりと開けている。

イワンコフ「(四皇がジェルマ相手に暴れているその隙に世界中に散らばっている幹部達を招集して活動すれば、確かにヴァターシ達にも都合がいい話……もしかしてこの男、四皇と革命軍を同時に動かして世界政府を滅ぼす気!!?)」

ギネスの狙いを察し、思わず震えあがる。
表情に出してないが…それほど、ギネスは世界政府を憎んでもいるのだ。

ギネス「白ひげと海軍の戦争も間近…時が満ちたらデカイ花火をここで打ち上げるとするさ。」

ギネスは立ち上がり、用を足すために便所へ向かう。
イワンコフは、ギネスの政府に対する計り知れない憎しみを垣間見た気がしたのだった…。 
 

 
後書き
ガブルは生存設定です。
彼はドラゴンの同志で、維新軍を率いて新世界の国々の革命を促しています。
因みに、懸賞金は12億4500万ベリーです。 

 

第63話:最終確認

-深夜のマリンフォード-

白ひげ海賊団4番隊隊長・サッチの公開処刑を翌日に控えた海軍本部は、かつてない緊張感に包まれていた。
いつ白ひげが攻めてもおかしくない中、中将以上の海軍上層部による作戦の最終確認は行われていた。

オニグモ「白ひげもただでは現れん。それでは簡単に攻めいられる!!! 前衛で必ず食い止められる保証などない!!!」

オニグモの言葉に、皆は頷く。
会議は白熱していて、上座に座るセンゴクやその近くの大将達が静かに見つめる。
「目標の前を七武海と大将で固めるのは変えないだとか」、「湾内へ攻めいられたら、戦闘が激化する前に広場への道をすぐに断つ」だとか、「処刑の時間を早め、白ひげ海賊団の冷静さを欠かせる」だとか……とりあえず戦闘の際はいつでも優位に立てるよう様々な意見が飛び交う。
書記がカチカチと中将達(かれら)の会話をタイプしていく。
それを見てセンゴクが口を開く。

センゴク「うむ、配置はこれでいいだろう…だが…。」

センゴクはどこか不満そうだ。
白ひげも、歴戦の経験から知略戦にも長けている。センゴクはそれを熟知している。
作戦では「パシフィスタによる挟撃策」、「離間の計」、「包囲壁による殲滅作戦」が採用されたが、相手は世界最強の大海賊。万が一にも備えなければならない。

センゴク「イリスよ…お前はどう思う?」

イリス「ブフォッ!?」

盛大にお茶を吹き出すイリス。
どうやら完全にボ~っとしてたらしく、話を振られるとは思ってなかったようだ。

ガープ「……ププッ…!」

それを見ていたガープは吹き出しそうになるも、堪える。

センゴク「お前なァ…。」

センゴクは呆れながら茶を啜る。

イリス「ご、ごめんなさい!! ちょっと疲れて…その…年だし。」

センゴク「ブーッ!!」

ガープ「ブッフォゥ!?」

イリスの爆弾発言に、同世代が茶の噴水を創り出す。
つるも思わず頭を抱え、サカズキは色んな意味で何も言えなくなる。
中将達も、緊張感ゼロのイリスに溜め息を吐く。

イリス「え~っと…センゴクさん…もし戦争が激化した場合には七武海と大将の陣営も崩れますよ? その場合の陣営も、考えるべきでは?」

『!!!!』

イリスの発言に、目を見開く一同。
センゴクは「成る程…見落としていた」と満足そうに顎に手をやり、中将達も納得する。

イリス「それに、空からの攻撃に対する警戒が緩すぎです。 マルコ以外にも空中戦を得意とする者が現れたことを想定し、地上ばかりを固めるのもどうかと。 何より…。」

まだあるのかと皆が目を見開く。

イリス「最悪のケース……“黒ひげ”の裏切りと、他の四皇…特に百獣海賊団の介入も考えた方がよろしいかと。」

イリスの言葉に、動揺する一同。
“黒ひげ”は一応七武海だ。今、行方不明になってるが…あとで参戦するだろうとスルーしている。
百獣海賊団の件は、注意は払っている。近頃怪しい動きをしているが、今は白ひげの方で精いっぱいなのだ。

イリス「……ニューゲートは甘くないですよ。 その辺のゴロツキと同程度の男と認識するなら、誰だって苦労しません。」

イリスの一言で、会議室が静かになる。
イリスは、今の海軍の中で最も白ひげ海賊団や百獣海賊団と交戦してきた、海軍最強の女海兵だ。
彼女の言葉は、非常に信頼できるのだ。

センゴク「イリスの言う通りだな、それも検討し直そう。」

つる「済まないね、イリス。」

イリス「いえ…見た目は20代・中身は70代の老兵の知恵は参考程度でいいですよ。」

ガープ「ババアと言い切ればええのに。」

つる「ガープ、それはセクハラだよ。」

ガープは「そう言うな、おつるちゃん!!!」と、涙を流しながら大爆笑する。
こんな発言を許されるのは、ガープぐらいかもしれない……。

イリス「すいません、私はこれで…。」

センゴク「うむ…ご苦労だったな、蛇姫も然り…。」

イリス「……構いませんよ、私は海兵です。」

イリスは会議室を出て、廊下を歩く。

イリス「(今回の戦争は、レベルが違う。 覚悟を決めなきゃ……。)」

勝っても負けても、その先にあるのはあまりにも巨大すぎる犠牲。
大切な部下達の、屍の山。
イリスにとって、部下を失うことは自らの死よりも恐ろしく、哀しく、そして痛いモノだ。家族を殺されたゼファーの時のように、負の感情を押し殺して任務に没頭できる自信がないのが本心だ。

イリス「(だからこそ、この命尽きるまで護り切るんだ…愛すべき部下達を。)」

イリスの決意は、揺るがない。 

 

第64話:“聖戦”の始まり

 
前書き
マリンフォード頂上戦争編、本格的にスタートです。
終盤辺りがライコウとシャンクスの独壇場となると思います。 

 
-翌日-

マリンフォード。
世界各地より召集された名のある海兵達、総勢約10万人の精鋭がにじり寄る決戦の刻を待っている。
そんな中、海軍中将ラクロワは叫ぶ。

ラクロワ「緊張を解くな!!! 何が起きてもあと3時間!! そこで全てが終わる!!!」

『ウオオオオ!!!』

三日月形の湾頭及び島全体を50隻の軍艦が取り囲み、湾岸には無数の重砲が立ち並ぶ。
港から見える軍隊のその最前列に構えるのは、世界政府公認の海賊“王下七武海”。
“鷹の目”ジュラキュール・ミホーク。
“天夜叉”ドンキホーテ・ドフラミンゴ。
“暴君”バーソロミュー・くま。
“火拳”ポートガス・D・エース。
“海賊女帝”ボア・ハンコック。
2名を除く曲者達が、白ひげを迎え討とうとその場に立っている。
そして、広場の最後尾に高くそびえる処刑台を固く守るのは、海軍本部“最高戦力”4人の「海軍大将」。
全身を灼熱のマグマに変化させ、あらゆるモノを焼き尽くす“赤犬”サカズキ。
全身から凄まじい冷気を放ち、自らの体を氷に変化させる事ができる“青雉”クザン。
自分の体を自在に光と化す事ができる“黄猿”ボルサリーノ。
そして…時間を操り、唯一「覇王色の覇気」を有する海軍最強の女海兵“黒龍”シリュー・D・イリス。
4人の並々ならぬ迫力に、見た者は息をするのさえ躊躇われる。

イリス「……。」

サカズキ「浮かん顔じゃのぅ。」

イリス「……えェ。」

サカズキとイリスは、静かに会話をする。
そんなイリスを、クザンはどこか心配そうに見つめる。

クザン「無茶しないでくださいよ。」

イリス「…分かってる。」

その時だった。
処刑台の階段を登り、今回の事件の中心人物・白ひげ海賊団4番隊隊長サッチがその姿をあらわにする。


ゴトッ…シャキン…!


処刑台に胡坐を掻く彼は、絶望の色には染まってない。どちらかと言うと白ひげ(オヤジ)と仲間達への“申し訳なさ”でいっぱいだった。
膝をつかないその態度は、歴戦の海賊らしさも感じる。
そして執行人2人の処刑刀が彼の前途を阻むようにクロスされた。

センゴク《……諸君らに話しておく。 この戦争がどういう意味かを。》

センゴクが、電伝虫を通じて言葉を紡ぐ。

センゴク《この戦いは、謂わば“聖戦”だ。 絶対正義を掲げる海軍(われら)と、悪党共がのさばるこの時代の頂点・白ひげとの最初にして最後の戦争。 この戦いは、いかなる結果になろうと歴史に刻まれるであろう……。》

センゴクはその後、サッチに目を向ける。
その後、センゴクは叫んだ。

センゴク《世界の行く末は、我々にかかっている!!! この戦いで、白ひげと決着をつける!!!!》

『ウオオオオオオ!!!!!』

高まる志気。
その時、サイレンが響き渡った。
そう……ついに来たのだ。
霧の向こうから、海賊船の大艦隊が迫っていた。
白ひげの本船モビー・ディック号は見当たらないが、“遊騎士ドーマ”や“雷卿マクガイ”、“大渦蜘蛛スクアード”、“ディカルバン兄弟”をはじめとした新世界に名を轟かせる白ひげ傘下の実力者達が揃っている。

「攻撃しますか!?」

ラクロワ「まだ待て!! 白ひげは必ず近くにいる!! 何かを狙ってるはずだ!! 海上に目を配れ!!!」

指示を仰ぐ兵達にラクロワが指示を待つよう促した。
どこから現れるのか、皆が固唾を呑んで海上を睨みつけると…。


ゴボボ…


サカズキ「!」

クザン「…こりゃあ、とんでもねェトコから出て来やしねェか?」

イリス「完全に布陣間違えたね…。」

視線の先は、三日月形の広場が取り囲む湾内。
すると、湾内海底に影が。
センゴクは、白ひげ海賊団は船をコーティングし、海底を進んでたことにやっと気付いた。


ザッパァァァン!!!!


『うわァァアア!!!』

モビー・ディック号が来た。
それに次いで3隻の白ひげ海賊団の船が現れる。
完全に湾内に侵入された。
すると、カツン…カツン…と、重たい足音が響いてくる。

白ひげ「グララララ…!! 何十年ぶりだ? センゴク、イリス!」

センゴク「白ひげ……!!」

白ひげ「俺の愛する息子は無事なんだろうな…!!!」

ついに現れた、世界最強の大海賊。
纏うオーラが、放つ声が、全てが彼を“海の王者”と呼ぶにふさわしい器だと、納得させる。

白ひげ「グラララララ…ちょっと待ってな、サッチ…!」

サッチ「…オヤジっ…!!」

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-同時刻-

ライコウ「ブラック、もう出航してるよな?」

ブラック《あぁ、ちょいと仲間を増やして潜水艇で向かってる。》

ライコウ「なら良かった、白ひげの地震の影響が少なく済む。」

ライコウ達百獣海賊団は、戦争を止める(というより海軍が滅ぶと後々自分達が困るハメになる)ため、マリンフォードへ向かっていた。
“旱害のジャック”、“海姫”、“蟲姫”…名だたる大物海賊達が船長カイドウと副船長ライコウと共に戦闘準備をしていた。

ライコウ「そっちは別働隊で動け。 シャンクスも戦争を止めようと動いている、“赤髪”と“カイドウ”による終戦作戦を決行する。」

ブラック《了解。》

ライコウはブラックとの通信を切る。
その時、ライコウの傍にモネが現れた。

モネ「……緊張してる?」

ライコウ「おいおい、俺を誰だと思ってる? 久しぶりに面ァ出すとはいえ、選挙前の演説する訳じゃあるめェし。」

ライコウは笑いながらグビグビと酒を飲む。

ライコウ「お前は出るなモネ……胎の子に障るかもしれん。」

モネ「あら…随分優しいのね♪」

モネのお腹に手を当てながら言うライコウに、微笑むモネ。
そんな中、コアラとサボが2人の前に現れた。

コアラ「戦闘準備、整いました!」

サボ「いつでも動けるぜ。」

ライコウ「そうか…ご苦労。」

ライコウは2人に酒を投げ渡す。

ライコウ「お前らも随分と成り上がったよな…今では“拳豪(けんごう)”と“橙色御前(とうしょくごぜん)”だもんな。」

コアラ「え!? そう呼ばれてるんですか!? 聞いてませんよ!?」

ライコウ「つい最近更新されたばかりだからな、見せようと思った矢先に戦争(これ)だ。」

ライコウは欠伸をしながら言う。

コアラ「…ライコウさん、“白ひげ”は負けるんですか?」

ライコウ「……目的を果たしても、じいさんは死ぬつもりだろうな。」

「「え…!?」」

ライコウの言葉に、目を見開くサボとコアラ。
その言葉の意味を理解するのは、マリンフォードに乗り込んでから気付くことになる。 
 

 
後書き
最新版の手配書です。

百獣海賊団船長“百獣のカイドウ”……20億ベリー
百獣海賊団副船長“剣帝”ライコウ……15億ベリー
百獣海賊団マンモス師団団長“旱害のジャック”……10億ベリー
百獣海賊団航海総長“海賊男爵”バロン・ブラック……8億3000万ベリー
百獣海賊団参謀総長“無音の道化師”コラソン……6億ベリー
百獣海賊団船医総監“死の外科医”トラファルガー・ロー……5億ベリー
百獣海賊団ハーピー師団団長“雪害のモネ”……7億ベリー
百獣海賊団参謀次長“海姫”ナリウス・アリスティア……4億ベリー
百獣海賊団航海次長“蟲姫”マナト・ヒオ……4億4000万ベリー
百獣海賊団双将軍“拳豪”サボ……5億3000万ベリー
百獣海賊団双将軍“橙色御前”コアラ……3億5000万ベリー
百獣海賊団マンモス師団戦闘員シープスヘッド……3億9000万ベリー
百獣海賊団マンモス師団戦闘員ジンラミー……2億ベリー
百獣海賊団傘下“アイアンボーイ”スコッチ……4億3500万ベリー
百獣海賊団傘下“剣鬼”マイ……5億ベリー
百獣海賊団傘下“暴獣”マイキー・マット……5億6000万ベリー
“犯罪界の絶対王者”ギネス・スパーツィオ……14億8000万ベリー 

 

第65話:戦争勃発

ついに戦争が始まった。
氷塊となったマリンフォード湾内は、戦場と化していた。
数十年に渡り大海に君臨し続けた四皇“白ひげ”率いる新世界47隻の海賊艦隊が攻め入り、世界政府の二大勢力“海軍本部”と“王下七武海”が、これを迎え撃つ。

ドフラミンゴ「フフフフフ、こりゃあスゲェ!! まさに大乱戦だな!!」

不敵な笑みを浮かべながら、ドフラミンゴは言う。
すると、モビー・ディック号にいた白ひげ海賊団の隊長達が動き出した。
“不死鳥マルコ”、“ダイヤモンド・ジョズ”、“花剣のビスタ”……何れも海軍の幹部と互角に渡り合う猛者だ。

ビスタ「俺達の力を見せてやれ!!!」

白ひげ海賊団の隊長達も参戦し、ヤクザみたいな面構えの海軍本部中将達が出張って迎撃する。
湾内は、凄まじい激戦だった。
銃弾と砲弾が飛び交い、剣と剣、拳と拳が衝突し、戦争が始まって10分もしない内に一挙に激しくなる。
そんな中、彼は動き出した。

エース「先陣は切らせてもらうぜ。」

ハンコック「!」

「ポ、ポートガス・D・エース!!」

「王下七武海が、ついに…!!」

七武海(エース)動き出したことに、一同は驚いた。

ボルサリーノ「珍しいことも、あるんだねェ~…!」

サカズキ「海賊王(ロジャー)の血が、“白ひげ(しゅくてき)”に呼応した様じゃのぅ…。」

海軍大将達は、珍しそうに彼を見る。
七武海の中でもトップクラスの自由人が、七武海としての先陣を切る。
それは、センゴクやガープすらも予想してなかった。

ドフラミンゴ「フッ…何だ、やんのかお前?」

エース「……知りてェだけさ。 俺のクソオヤジ(・・・・・)と海の覇権を競った男の力ってモンをな。」

轟々と音を立てて燃えさかる炎を、右腕に集約するエース。
それは巨大な炎の拳と化す。
エースは白ひげ目掛けて、それを放った。

エース「“火拳”!!」


ドゴォン!!


巨大な炎と化した拳が、轟音を立てて放たれる。
その熱と衝撃波で、周囲の海賊達が吹き飛ぶ。

白ひげ「グララララ…熱そうだな、オイ。」

巨大な炎を前にしても、笑みを深めたままの白ひげ。
もう少しで白ひげに届くというところで、“蒼い炎”が突如現れそれを受け止めた。白ひげの前に現れたのは、白ひげ海賊団のNo.2と見なされてる男・一番隊隊長“不死鳥マルコ”だった。

マルコ「いきなりキングは取れねェだろうよい。」

エース「ヘヘ……そう上手くは行かねェか。」

マルコとエースのやり取りを見たボルサリーノは、海賊達に猛攻しつつ海兵達(みかた)に空中からの攻撃への注意を促す。

ジョズ「お前ら下がってろォ!!!」

『!!!』

海賊達に呼びかけたのは、3番隊隊長のジョズ。
凍らせた海から巨大な氷塊を剥ぎ取り、それを海軍本部へ投げつける。
海兵達が退避する中、サカズキが動き出した。

サカズキ「“大噴火”!!!!」

拳の形をした巨大なマグマが、氷塊を跡形もなく蒸発させる。そして無数の火山弾が白ひげ艦隊へ降り注ぐぎ、白ひげの船を一隻破壊する。

白ひげ「誕生ケーキにでも灯してやがれマグマ小僧。」

サカズキ「フフフ…派手な葬式はキライか? 白ひげ…!」

すると、突然地響きが。
音の方向へ向くと、巨人族の倍以上はある巨体の何者かが現れた。
国引き伝説を作った伝説の魔人オーズの子孫・リトルオーズjr.(ジュニア)である。

オーズ「だずげにぎだど! ザッヂぐん!!」

サッチ「オーズ!!」

つる「“国引きオーズ”の子孫だね…。」

ド―ベルマン「これはでかい!! 巨人族の常識を越えてる……!!!」

※カイドウも似たようなモノです。

オーズ「ウオォォォォォォ!!」

ラクロワ「ぐわっ!!」

「ラクロワ中将!!!」

オーズは巨人中将・ラクロワを倒し、巨大な処刑台に特攻する。
そこから湾内へと攻め入る海賊達。

白ひげ「オーズめ、仕様のねェ奴だ…死にたがりと勇者は違うぞ。」

オーズ「おやっざん!!! 止めねェで欲じい!!! オイダ助げてェんだ!!! 一刻も早ぐザッヂぐん助げてェんだよォ!!!」

白ひげ「分かってらァ……!! てめェら!! 尻を拭ってやれ!!! オーズを援護しろォ!!!」

砲弾が全て当たりながらも、オーズは進撃し、その隙に海賊達が一気に攻める。

オーズ「あどもうずごじ…!!」

サッチ「オーズ…!!」

その時だった。


斬!!


『!!!?』

オーズの右足が、斬り落とされた。
悶絶するオーズ。

『“鷹の目”!!!!』

白ひげ「……!!」

世界四大剣豪の一角(ミホーク)が、オーズの進撃を一瞬で止めた。
その直後、くまが“熊の衝撃(ウルススショック)”を放ち、衝撃波で大ダメージを与え、ドフラミンゴが糸を振りかざし、突き刺した。
これが致命傷となり、オーズはゆっくりと倒れ伏した。
しかし白ひげは冷静に、海賊達に指示を出す。
その時!


ボゴォン!!


『!!?』

海軍の軍艦が、味方を突如攻撃した。

「おい!! あの軍艦は何をしている!!?」

「白ひげを狙え!!」

海兵達はそう騒ぐ。
しかし、味方を攻撃した軍艦をよく見ると、そこには海兵は乗っていなかった。
その代わり、とんでもない面子が揃っていた。

「…あれはまさか、クロコダイル!!?」

「それだけじゃないぞ!! 何だあの面子は!!?」

軍艦に乗っていたのは、元七武海のクロコダイル。
収監中の筈だった“海侠のジンベエ”、革命軍のイワンコフ、“道化のバギー”、そして過去に名を馳せた海賊達。
全員、インペルダウンの囚人だ。

イリス「センゴクさん、アレ…!」

センゴク「どうなっとるんだ!!? 奴らは収監中の筈…!! どうやって脱獄した!!?」

どうやって脱獄したのか。
そう考えた時、イリスは顔を青褪めた。

イリス「(まさか……!?)」

イリスの脳裏に浮かぶは、2人の男。
1人は、得体の知れない新七武海。そしてもう1人は、世界政府によって滅ぼされた島で誕生した、あの犯罪者(かいぶつ)

イリス「(いや…今はどうでもいい。 この戦争を早く終わらせて、一人でも命を救うのが先決!!)」

イリスは迷うのをやめ、抜刀した。
それを見た一同が、目を見開く。

センゴク「ついに動くか…。」

イリス「はい。 戦う理由が出来たので。」

イリスはそう言って、コートをなびかせて広場へ降り立った。

白ひげ「イリス……!」

イリス「決着を付けましょう、ニューゲート。」

海軍最強が、ついに動き出した。 

 

第66話:動き出す2人の“最強”

「イリス大将が動き出したぞ!!」

「大将に続けェェェ!!!」

大海賊時代開幕以前より、同期のセンゴクやガープらと共に伝説級の大物海賊を相手にし、海軍を牽引してきた“黒龍”シリュー・D・イリス。
海軍最強と呼ばれ海賊達からひどく恐れられた彼女が動き出したことに、海兵達は士気を上げ、海賊達は身構える。

白ひげ「動き出しやがったな…。」

イリス「全ては正義のためですから。」

イリスは愛刀である神薙と葉隠を抜く。
覇気を込め、白ひげへ向かって突撃する。
超絶な二刀流が、海賊達を遅い、鮮血に染めさせ骸と化す。敵を確実に斬り伏せるその姿は、まるで意思を持った刀のごとく。

「退け!! 退けェェ!!!」

海賊達は逃げる。
その時だった。


ギィン!!


砂の刃が、イリスを襲った。
イリスは驚きつつも、その技を放った男を見据える。

イリス「クロコダイル…あなた、ニューゲート側なの?」

クロコダイル「寝言言ってんじゃねェよ、黒龍。」

イリスを妨害したのは、元王下七武海のクロコダイルだった。

クロコダイル「あのジジイの首を取るのは俺だ……お前ら海軍に渡す気はねェんだよ。」

クロコダイルはかつて、白ひげに挑み惨敗した過去を持っている男。
白ひげとの「リベンジマッチ」をこのマリンフォードで行い、それを邪魔するなら誰であろうと容赦しない……ということだろう。

イリス「ニューゲートとの再戦を邪魔するな、と?」

クロコダイル「まぁな…。」

2人は睨み合い…。

イリス「ハァッ!」

クロコダイル「ぬぅっ!」


ドォォン!!


『うわああああ!!!』

イリスの刀と、クロコダイルの義手(フック)が激突する。
その衝撃で、海賊達と海兵達が吹き飛ぶ。

マルコ「ヘッ、コイツァ運が良いよい…これで海軍最強(こくリュウ)を抑えられる。 ビスタ、“鷹の目”を頼むよい!!」

ビスタ「おぅ!!」

白ひげ海賊団5番隊隊長“花剣のビスタ”が、世界四大剣豪が1人“鷹の目のミホーク”と剣戟を繰り広げ、ミホークを抑える。

ジョズ「ジンベエ!! あの赤鼻と共に道を開いてくれ!!」

ジンベエ「成る程、そういう事じゃな…!!」

ジンベエはジョズの言葉から、白ひげ海賊団の作戦を察する。
白ひげ海賊団の隊長達を海軍大将や七武海に向け、傘下の海賊が中将達を抑えることで、ジンベエとバギー率いるインペルダウン組に道を開かせるという手段に出たのだ。

ジンベエ「赤鼻のォ! わしと共に来てくれ!!」

バギー「誰が赤鼻だ!!!」

ジンベエにキレつつも、バギーは仕方なく協力する。
それに乗じ、イワンコフらも加勢する。
それを見たセンゴクは、全世界へ配信していた映像の停止を命じた。

センゴク「我々に対し世界が不信感を持っては困る。 生ぬるい世間には少々刺激が強すぎるだろう…これから起きる惨劇を 何も世界へ知らしめる必要などない。 数時間後……世界に伝わる情報は、我々の“勝利”。 その2文字だけでいいんだ。」

湾頭から回り込み、戦場に現れたのは、海軍本部科学部隊隊長の戦桃丸と数十体はいるであろうパシフィスタ軍団。

戦桃丸「待ちくたびれたぜ、やっと出番だ!!!」

20体以上のパシフィスタが、戦桃丸の命令で光線を次々に放つ。
いくら攻撃したって彼らの強固な体にはびくともせず、数倍の破壊力で返され白ひげ傘下は倒れていく。
戦況がヒートアップする中、モビー・ディック号の船首に立つ白ひげは、パシフィスタの集中砲火に遭っても冷静にサッチ奪還の次の手を打ち始める。
すると…。


カツッ…コツ…


白ひげ「! スクアード! 無事だったか。 さっきてめェに連絡を…。」

スクアード 「あァ…すまねェ、オヤッさん。」

下の甲板から、白ひげ海賊団傘下の海賊団船長・スクアードが現れた。
しかし、彼は濁った瞳をしている。
仲間がやられていくさまが辛いのだろうか…。

白ひげ「後方傘下の海賊団はエライやられ様だ…持てる戦力は全てぶつけてくる。 後ろから追われるんなら望むところだ、俺も出る!! こっちも一気に攻め込むほかにねェ!!」

スクアード 「そうですね。 俺達も全員アンタにゃ大恩がある。 白ひげ海賊団のためなら命もいらねェ!」


カラン…!!


彼は鞘を投げ捨てその刃を露わにする。


ドン!!!


『!!!!』

一瞬、時が止まったようだった。
誰もが目を疑った。
白ひげ傘下の海賊が、白ひげに牙を剝いたその光景を。

白ひげ「!ぐ…かはッ…!!」

『オヤジィィィィィィ!!!』

バギー「“白ひげ”が…刺されたァ~~!!?」

マルコはすぐさま白ひげの元へ向かい、スクアードを押さえ付ける。
しかしスクアードも怒っており、白ひげを睨む。

スクアード「こんな茶番劇やめちまえよ!! “白ひげ”!!! もう海軍と話はついてんだろ!? お前ら“白ひげ海賊団”とサッチの命は必ず助かると確約されてんだろ!!?」

「何言ってんだ!?」

「どういう事だ!!?」

傘下の海賊達は、スクアードの言い分に動揺する。
実はスクアードはサカズキと交戦した際、「傘下の者達のみが攻撃され、海軍は白ひげ海賊団には一切手を出さない」と告げられたのだ。
言われてみれば、確かにパシフィスタは傘下の海賊達のみを(・・・・・・・・・)執拗に攻撃している。

マルコ「バカ野郎、担がれやがって……!!」

マルコはスクアードと、彼を誑かした海軍に怒りを覚える。
その時、クロコダイルが吠えた。

クロコダイル「みっともねェじゃねェか!! 白ひげェ!! 俺はそんな“弱ェ男”に敗けたつもりはねェぞ!!!?」

ジンベエ「クロコダイル…!!!」

刺された白ひげに檄を飛ばすクロコダイルに、皆が注目する。

白ひげ「スクアード…お前、仮にも親に刃物突き立てるとは……とんでもねェバカ息子だ!!」

スクアード「ウァァ!!!」

スクアードは、悲痛な叫び声をあげるが…。

白ひげ「…バカな息子を、それでも愛そう…!」

『!!?』

白ひげはスクアードを殺すどころか彼を優しく抱きしめた。

白ひげ「(“弱ェ男”か…勝手な事言いやがって…勘弁しろよワニ小僧…!!)」

“生ける伝説”や“怪物”と言われ恐れられてきた白ひげとて、心臓一つの人間一人…いつまでも“最強”じゃいられない。
最強といわれ続けた白ひげ(おとこ)の最後の望みは、愛する息子(サッチ)の救出。それ以外は望まず、ここで死んでも結構なのだ。

白ひげ「衰えてねェなァ、センゴク……!! 見事にひっかき回してくれやがって…俺が息子らの首を売っただと!?」

凍った津波を破壊して傘下の海賊達に退路を与え、「己が信ずる道を突き進め」と檄を飛ばす。
しかし、言われずとも傘下の海賊達…いや、サッチを救出しに来た全ての者達は決めていた。
「この命に代えても、サッチは救う」と。

白ひげ「俺と共に来る者は、命を捨ててついて来い!!!!」

『ウオオオオオオ!!!』

白ひげ「行くぞォ~~!!!!」

世界最強の男が暴れ出す。 
 

 
後書き
マイキー・マットのイラストでござんす。

<i6517|38038>

最近バカタレ画力も雑になってきたかな?
まぁ、勘弁してください。 

 

第67話:赤鼻と蝋人間

 
前書き
大分進んできたな~…。
年内には戦争を終えようと思います。 

 
一方、百獣海賊団は新世界から偉大なる航路(グランドライン)前半へとたどり着いていた。

ライコウ「(波が荒れてる……戦争は始まってるようだな、そろそろ白ひげのじいさんも動いてる頃だな。)」

急激に荒れ始めた波。
地鳴りのような轟音が大きくなり、世界最強の大海賊が大暴れしていることが容易に理解できた。

「うおェ…気持ち悪っ…!!」

「船酔いだァ~~……うっぷ!!」

ヒオ「う…ちょっと気分悪いです……。」

コアラ「な、何か口から出そう…!!」

恐らく白ひげが起こしたであろう“海震”による大波に、気分が悪くなる一同。
新世界の過酷な環境とは別の状況なためか、あまり慣れていないようだ…。

カイドウ「だらしねェ部下だ。」

ライコウ「酒癖の悪い奴が言うセリフかよ。」

カイドウの呟きに、呆れた顔でツッコミを入れるライコウ。
世界の運命が大きく変わる時でも、安定の2人のようだ。
その時…。


ヒュルルルルル……


「「?」」

何かが降ってくる音が。
それと共に、空が赤くなる。

ライコウ「おいおい、アイツの射程範囲広すぎだろ。」

ライコウが顔を引き攣らせながら見上げる。
目の前には、2つの火山弾が。
どうやらマグマグの実の能力者である海軍大将“赤犬”ことサカズキが放ったのだろう。

『火山弾だァァ~~~~!!!!』

部下達は一斉に退却するが、船長(カイドウ)副船長(ライコウ)はそのまま立ったままだ。

「カイドウ様とライコウ様が危ねェ!!」

「逃げて下さい!!!」

部下達は慌てふためくが…。

カイドウ「ふんっ!!」

ライコウ「ハッ!!」


ガッ!!


ガギィン!!


『……へ?』

何とカイドウは素手で、ライコウは鬼王(かたな)で火山弾を受け止めた。
そして2人は吐息で火山弾の燃え盛る炎を一瞬で吹き消した。

カイドウ「…暑苦しいマグマ小僧の仕業か。」

ライコウ「ったく、これだから海軍は。」

2人はそう言って火山弾を海へ投げ捨てる。

アリスティア「し、信じられない……!!」

サボ「火山弾の炎を、一息で消し飛ばした!!?」

これには幹部達も唖然となる。
火山弾は、噴出されたマグマが空中で固結したものだ。マグマの温度は800~1200℃…多少冷えたとしても、数百度を超える熱が残っている。
しかもサカズキが熱々の状態で放つため、1000℃はあると見積もってもおかしくない。覇気を纏っていたとはいえ素手や刀で止めるのは不可能だ。
その辺を考えると、四皇の一角であるカイドウと“剣帝”と称されるライコウの基礎戦闘能力は異次元の領域だろう。

ライコウ「あ…今度降って来たら取っといて溶岩プレートにするか?」

カイドウ「それで焼いた肉と酒で宴か?」

ライコウ「炭火が飽きたからな。」

ヒオ「話してる内容は下らないね…。」

ジャック「それを言うな……。」

いつ何が起こるか分からない状況下でも、カイドウとライコウはやはり通常運転のようだ…。


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-マリンフォード-

白ひげ海賊団に、ピンチが訪れていた。
マリンフォードの包囲壁によって囲まれた海賊達が、サカズキの放った“流星火山”と砲台からの集中砲火によって、壊滅の危機に瀕していたのだ。
何十年も白ひげ海賊団を支え続けたモビー・ディック号も沈没。
こうなってしまっては、サッチを救出できたとしても脱出するのは不可能に近くなる。

白ひげ「(…………すまねェ…。)」

沈んでゆくモビー・ディック号を見つめる白ひげ。
その胸に去来するのはどんな思いなのかは誰も分からない。

マルコ「クソ、これじゃあ袋のネズミだ…!」

マルコは動揺する。
考えてみれば、サッチは枷をはめられている。枷を外す鍵すら持っていない状況でサッチを救うなど、不可能に近い。
どうするかと迷っていたその時だった。

バギー「クッソ、これじゃあ逃げられねェ!!」

?「絶体絶命だガネ!!!」

マルコの目に、成り行きでマリンフォードに乗り込んだバギーとギャルディーノが狼狽える姿が映った。
よく見てると、赤鼻(バギー)じゃない方…ギャルディーノは手から蝋を出して砲弾から身を守ってるではないか。
あの蝋で、もし合鍵を作れたら……?

マルコ「一か八か……!!」

マルコは2人の元へ向かう。

マルコ「赤鼻!! 蝋人間!!」

バギー「なっ!?」

ギャルディーノ「だ、誰だガネ!?」

マルコ「俺の言うことをよく聞けよい!! お前らの力が必要だ!!」

「「!!!?」」

その様子を見ていた白ひげ。
マルコが何を考えたのかを察し、笑みを浮かべる。

白ひげ「グララララ……そうか、その手があったか…!!」

白ひげはオーズに向かって叫んだ。

白ひげ「オーズ!! そこにいろ!! お前の力が必要だ!!!」

オーズ「オヤッざん…!」

白ひげ「ジョズ、“切り札”だ!!!」

ジョズ「おう!!!」

白ひげ「全員準備を!!! 広場へ突入するぞ!!!!」

白ひげ海賊団、決死の特攻へ。 

 

第68話:最後の希望

センゴク「“切り札”、か…ならそれ以前に決着をつけてやる!!」

白ひげの声を耳にしたセンゴクは、その“切り札”を発動される前にサッチを処刑しようと執行人に命じた。

センゴク「やれ!」

執行人2人がサッチの頭上に刃を振り下ろそうとする。
すると次の瞬間!


ドシュッ!!


処刑台の下方からの何かの攻撃で、サッチを処刑しようとした執行人が処刑台の一部ごと斬られた。斬られています。
ゴロゴロと処刑台の階段を転げ落ちる執行人。

センゴク「“白ひげ”に旧縁あるお前は我らに都合よしと思っていたが…!! クロコダイル!!!」

処刑を阻止したのは、クロコダイルだった。
海兵達だけでなく、ジンベエや隊長達も驚きを隠せない。

クロコダイル「あんな瀕死のジジイ、後で消すさ。 その前に、お前らの喜ぶ顔が見たくねェんだよ…!!!」

その台詞を言い終わった瞬間、クロコダイルの首が切られて飛んだ。

ドフラミンゴ「オイオイ、ワニ野郎…!! てめェ、俺をフッて“白ひげ”と組むのかァ!!?」

クロコダイルに攻撃したのは、ドフラミンゴだった。
ドフラミンゴは戦闘中でもクロコダイルと接触して、同盟を持ちかけていたのだ。

ドフラミンゴ「嫉妬しちまうじゃねェかよ…フッフッフッ!!」

そんなドフラミンゴに、クロコダイルは頭部は「誰とも組みはしない」と一蹴し、交戦し始めた。

エース「へェ…先輩方は中々手強ェな。」

新旧七武海の攻防を楽しそうに見るエース。
その時、海底からコーティング船が出現した。

『!!?』

白ひげ「ウチの船が出揃った(・・・・)と言った覚えはねェぞ…!」

しかも外輪船で、そのまま突撃する。
その推進力に加えて、オーズが船を引き上げ、広場に船ごと突入する。

ガープ「やられたな…僅かなネズミの穴一つ!! 抜け目なく狙ってきおった!! 包囲壁はわしらの障害になり兼ねんぞ!!」

サッチ「オヤジ!!」

白ひげ「まだ息はあるか!? サッチ!」

白ひげは広場に降り、震動のオーラを纏った薙刀を豪快に一閃。
一撃で多数の海兵達を粉砕し、その衝撃波は、歴戦の中将達でさえ息を飲むほど。

白ひげ「野郎共ォ! サッチを救い出し海軍を滅ぼせェェェ!!」

白ひげは海賊達を鼓舞し、進撃を始める。
クザンはジョズと、イリスはビスタと、ボルサリーノは傘下の海賊達と交戦。
満身創痍の白ひげもサカズキと交戦する。
オリス広場では、至る所で戦火が上がっている。
そんな中、マルコが不死鳥の能力を使い処刑台のサッチの元へ飛んでいく。
しかし、ここであの男が動いた。

ガープ「ぬうェい!!」

マルコ「!!?」

ガープの拳骨が炸裂し、マルコは地面に叩きつけられる。
炎もレーザーも効かないマルコの頬には、殴られた痕が。

「とうとう出てきた……!!」

「伝説の海兵が…!!!」

海賊王ロジャーと渡り合った“海軍の伝説”の登場に、どよめく海賊達。

白ひげ「ガープ……!!」

ガープ「ここを通りたきゃあ…わしを殺していけい!!! ガキ共!!」

大将の席へ腰を下ろし、海賊たちへ向けて白ひげに劣らぬ威圧感を放つガープ。
海賊達は怯むが、白ひげに一喝され再び戦い始める。今度は力を合わせてパシフィスタを撃破していく。
その時、突如白ひげが心臓を抑え、大量の血を吐く。

白ひげ「ウウッ…!! クソッタレ…!!」

戦場に膝を突く、世界最強の大海賊。

サカズキ「寄る年波は越えられんか…“白ひげ”!!」

サカズキが、その目の前に立ちはだかる。
その有様に、一瞬マルコは気を取られた。

マルコ「(一番恐れてた事が…!)」

その隙を、ボルサリーノは見逃さなかった。
右手から煌めいた光線が、マルコの胸を背後から貫いた。
そのありさまに思わず意識を移したジョズも、クザンの冷気を食らって凍りついた。

ビスタ「オヤジがやられた、マルコもジョズも危ないぞ!!」

白ひげ海賊団の総崩れ。
マルコとジョズは戦闘不能に陥ったため一気に劣勢に立たされる。
その隙を突き、センゴクは白ひげへの集中攻撃を命じたが……。

白ひげ「俺ァ“白ひげ”だァァ!!!」


ドゴォォン!!


集中攻撃を浴びてもなお、白ひげは薙刀で海兵達を薙ぎ倒す。
まさに怪物。生ける伝説は伊達じゃない。

白ひげ「俺が死ぬ事…それが何を意味するか、俺ァ知ってる……!! だったら…息子達の明るい未来を届けねェと、俺ァ死ぬ訳にはいかねェじゃねェか…!!!」

センゴク「未来が見たけりゃ、今すぐに見せてやるぞ“白ひげ”!! やれ!!」

センゴクの指令。
それは、サッチへの処刑の合図だ。
しかし……。


ビュッ!!


センゴク「!!?」

その刃は、センゴクに向けられた。
センゴクはかろうじで躱すが、頬を掠ったため血が滴る。

「ヘッヘッヘ、引っ掛かったな元帥さんよォ!!」

執行人の正体は、海兵ではなくインペルダウンの脱獄囚だった。

センゴク「まさか…!!」

センゴクはここで気付いた。
クロコダイルの攻撃の後、転がり落ちた執行人の身包みを剥いで化けていたことを。

「これもキャプテン・バギーの名を世界に知らしめるため!! ギャルディーノ兄さん、お願いしやす!!」

ギャルディーノ「あぁ、何という悲運だガネ……。」

センゴク「ならば、私自らが処刑するまで!!」

センゴクの身体が光り輝き、巨人並みの大きさの大仏に変身した。
海賊達も海兵達も、それに釘付けになる。元帥に就任して以来一度も前線に出てないため初めて見る者が多いのだ。

白ひげ「(頼むぜ、オイ……!)」

サカズキ「おどれ、絶対に許さん!!」

サカズキは火山弾を放とうとするが、白ひげに阻止される。
他の大将達も動き出し、イリスは時を止めようとするが……。


ドォン!


カッ!


イリス「イゾウ…!」

イゾウ「俺と一緒に舞ってもらうぞ“黒龍”!!」

ジンベエ「わしも手伝おう!!」

イゾウの元にジンベエも加勢し、イリスは足止めを食らう。

ボルサリーノ「そうはさせないよォ~!」

ボルサリーノは光速で移動しようとするが、マルコに阻止される。
しかしマルコはかなりの深手で、ボルサリーノの攻撃を抑えるだけで精一杯だ。

センゴク「食らえ!!」

センゴクは豪腕を振るい、攻撃する。
しかしギャルディーノは、三重にも重ねた蝋の壁でかろうじで防ぐ。

ギャルディーノ「もし貴様を解放したら、我々の命を保障しろ!!」

サッチ「あぁ、約束だ!!」

そして…!


ガチャンッ…!


『やったァァァァァ!!!』

サッチ、解放。 

 

第69話:エドワード・ニューゲート、死す

マリンフォードでは“白ひげ”の生涯最期の戦いが始まろうとしていた。
白ひげはサッチ救出を果たした今、これ以上海に君臨するつもりはない。
ただでさえ病で老衰していく身体に加え、救出までに至る数々の致命傷。最早その命は永くない。

イリス「ニューゲート…。」

イリスは悲しそうな目で白ひげを見据える。

ガープ「…イリス。」

イリス「ガープさん…。」

ガープ「“白ひげ”は、わしらに任せろ。 お前じゃ荷が重かろう。」

イリス「はい……。」

その時だった。

「おい、アレ!! 何だありゃァ!!?」

「本部要塞の陰に何かいるぞォ!!!」

本部要塞の後ろに見えたのは、巨大な人間の姿。
かの四皇カイドウをも遥かに超える巨体だ。
それに処刑台には10人の人影が。

ドフラミンゴ「フッフッフッフッフッフッフッ!!! 最高だ、こりゃすげェのが出て来やがった!!!」

黒ひげ「ゼハハハハハハ!!! 久しいな!!! 死に目に会えそうでよかったぜ、オヤジィ!!!」

マリンフォードに現れたのは、新たに仲間を加えて強力になった黒ひげ海賊団だった。
ティーチと共にいる新メンバーは、インペルダウンLEVEL6に幽閉されていた危険人物達。
“巨大戦艦”サンファン・ウルフ、“悪政王”アバロ・ピサロ、“大酒のバスコ・ショット”、“若月(みかづき)狩り”カタリーナ・デボン、インペルダウン看守長“雨のシリュウ”、“元王下七武海”ゲッコー・モリア…シリュウとモリア以外の4名は、過去の事件が残虐の度を越えていた為に世間からその存在を(・・・・・)もみ消されたほどの世界最悪の犯罪者達だ。

センゴク「シリュウ、貴様…!! マゼランはどうした!? インペルダウンはどうなった!? 貴様らどうやってここへ来た!!!」

センゴクはそう言って睨み付けるが、シリュウは葉巻に火をつけて紫煙を燻らせながら「俺がこの場にいることが答えだろう」と返事した。
いずれにしろ、シリュウはティーチの仲間となったのだ。

クザン「本当にとんでもねェの引っ張って来やがったな……。」

クザンは冷や汗を流す。
言っておくが、インペルダウンLEVEL6に幽閉されていた危険人物達の多くは、海軍の幹部達と一対一(サシ)で張り合える者が多い。
海軍大将とて、油断できない相手なのだ。下手をすれば白ひげ海賊団の隊長達以上の猛者もいる。
その時、イリスが叫んだ。

イリス「動力室の海兵に催眠をかけて“正義の門”を開いたのね!!」

イリスの言葉に目を見開く一同。
すると、黒ひげ海賊団の航海士・ラフィットが拍手しながら笑みを浮かべる。

ラフィット「ホホホホホホ!! 御名答…恐れ入ります、黒龍殿。 尤も、それは他の方々(・・・・)にも使われましたが…。」

黒ひげ「海賊として政府に敵視されてちゃあ、“正義の門”も開かず、インペルダウン潜入も不可能…“七武海”に名乗りを上げたのはただそれだけの為だ!! 称号はもういらねェ!!!」

ティーチはかつての2番隊隊長(じょうし)“青髪のラカム”を殺し、ケジメを付けに来たサッチ率いる4番隊を壊滅させ、サッチの首を世界政府の手土産にした。
それは全て、海賊としての名を上げ七武海に入り政府に近づき、インペルダウンに侵入するためだった。
その時!

白ひげ「ティーチ~~~!!!」


ボゴォォン!!


『うわァァァァァァ!!!!』

白ひげがグラグラの実の能力で、黒ひげ海賊団が立っていた処刑台を粉砕する。
胸を焼かれ、光に貫かれ、剣林弾雨を浴びてなお暴れる白ひげに海兵達は恐怖する。

白ひげ「てめェだけは息子とは呼べねェな、ティーチ!! 俺の船のたった一つの鉄のルールを破り…お前は仲間を殺した…!!」

白ひげと共にティーチを討とうと動くマルコ達だが…。

白ひげ「手ェ出すんじゃんねェぞ!! 2番隊隊長ラカムの無念は、この俺がティーチのバカの命を取ってケジメをつける!!」

黒ひげ「ゼハハハ、望むところだ…!!! “闇穴道(ブラックホール)”!!」

黒ひげはヤミヤミの実の能力を出し、周りを取り囲み始める。
瓦礫が引き摺り込まれていく光景を目にし、白ひげは構える。

黒ひげ「なァ、オヤジ…俺はアンタを心より尊敬し…憧れてた…!! だがアンタは老いた!! 処刑されゆく部下一人救うのが精一杯な程にな!!」

ティーチは「失望した」と語る。
そんなことなどお構いなく攻撃する白ひげだが、白ひげの起こした振動が黒い渦に巻き込まれて消えた。
ティーチのヤミヤミの実は、全てを無に還す引力を操る。それは何と悪魔の実の能力も該当しており、事実上無効化されるのだ。

黒ひげ「ゼハハハ!! どうだ、もう地震は起こせねェ…!!」

すると白ひげは持っていた薙刀でティーチの左肩を斬った。それはザックリとティーチの肩を抉る。

黒ひげ「ゴワァアア!!! ハァアアアッ!! 痛ェ…!! 痛ェ畜生ォ!!!」

白ひげ「過信…軽率…お前の弱点だ…。」

左手に再び地震のエネルギーを溜めて黒ひげを地面に押さえつける白ひげ。

黒ひげ「や、やべろォ!!! オヤディ!!! 俺あ息子だど!! 本気で殺スン…!!」


バカッ!!


白ひげは震動を叩き付け、ティーチにダメージを与える。

黒ひげ「こ、この“怪物”がァ!!! 死に損ないのクセに!!! 黙って死にやがらねェ…やっちまえェ!!! お前らァ!!!」


ドォン!!ドォン!!ドン!!ドゴォン!!ズドン!!ドォン!!


何十発もの弾丸と刃が、白ひげを襲う。
あまりの光景に、海賊も海兵もただそれを見ていることしかできない。

白ひげ「お前じゃねェんだ…ティーチ…。」

モリア「!!? まだ生きていやがるのか…!!?」

白ひげはまだ死んでいなかった。
あれほどの集中砲火を食らってなお立っている白ひげに、ティーチは顔を青くする。

白ひげ「ロジャーが待ってる男は…少なくともティーチ、お前じゃねェ…!!」

白ひげは語り続けた。
ロジャーの遺志を継ぎ、いつの日か、数百年分の歴史を全て背負ってこの世界に戦いを挑む者が現れることを。
それを世界政府は恐れているが、中にはそれを望む者もいることを。

白ひげ「ハァ…ハァ…興味はねェが…あの宝(・・・)を誰かが見つけた時……世界はひっくり返るのさ…!!! 誰かが見つけ出す、その日は必ず来る…グラララ…“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”は!!! 実在する!!!!」

白ひげの遺言。
それは、ロジャーが死に際の一言で時代を変えたように、新時代の始まりの鐘だった。

白ひげ「(感謝している…さらばだ、息子達…。)」

白ひげは、死んだ。
死してなおその体屈することなく、満身創痍で敵を薙ぎ倒すその姿は、まさに“怪物”。
この戦闘によって受けた刀傷…実に二百六十と七太刀。
受けた銃弾…百と五十二発。
受けた砲弾…四十と六発。
その誇り高き後ろ姿には…あるいは、その海賊人生に一切の逃げ傷なし。 
 

 
後書き
次回、あの犯罪者が殴り込んで“黒ひげ”ティーチと壮絶な死闘を繰り広げます。
 

 

第70話:ティーチとギネス

 
前書き
ついに70話突破!!
皆様のおかげでお気に入り登録596件、総合評価1948pt、感想208件となりました。
これからもよろしくお願いします。
あと、感想待ってます。 

 
かつてこの海で“海賊王”と渡り合った男…四皇が1人、白ひげ海賊団船長“白ひげ”エドワード・ニューゲートは、マリンフォード湾岸にて勃発した頂上決戦にてその生涯を閉じた。
しかし、その後に前代未聞の大事件は起こった。
何と“黒ひげ”ティーチが白ひげのグラグラの実を吸収し、その脅威的能力を行使して海軍本部を崩壊させたのだ。
何百年も世界の海を守り続けた正義の要塞は瞬く間に崩れ落ち、海軍を滅ぼすわけにはいかないセンゴクとガープは黒ひげ海賊団と死闘を繰り広げ始めた。

センゴク「ぬぅん!」


ズゥン!!


黒ひげ「うぐォわァァァァァ!!!」

大仏の姿になったセンゴクが、掌から出た衝撃波でティーチを攻撃する。

黒ひげ「ハァ…ハァ…ハァ…ゼハハハ…! さすがは海軍の頂点、“仏のセンゴク”…!! 大した力だ…だがこれくらいじゃあ、俺からこの島は護れねェ!!」

ティーチは大気を掴み、動かす。
すると地面だけでなく空も海も揺れ、地割れや津波が発生する。

『うわァァァ~~~~~!!!』

黒ひげ「ゼハハハハハハ、何て痛快な能力だ!!!」

ティーチは満足そうに笑う。

黒ひげ「だがまだまだコントロールがうまく行かねェな…!!」

バージェス「おい船長!! 無茶やると、俺達の足場もなくなるぞ!!」

あらゆる攻撃が正しく規格外の威力を誇るグラグラの実は、絶大無比な破壊力と圧倒的な影響範囲のため、使いどころを間違えると味方にまで甚大な被害が及んでしまうのが最大にして唯一の弱点だ。
それを無視して使うのは、ティーチが仲間を信頼してるからだろうか…。

黒ひげ「どうだ、“仏のセンゴク”!! “英雄ガープ”!! 俺を止められるのか!? “白ひげ”と共に、お前らの時代も終わったんだよォ!! ゼハハハハハ!!!」

ティーチがグラグラの実を行使して暴れる中、スモーカーとたしぎはこの戦いに疑問を持ちつつあった。

たしぎ「(士気が下がらない…!! 海軍の方が、明らかに激しく…!!)」

スモーカー「(何が違う!! “正義”も“悪”も…勝ってなお、渇くばかりだ!!!)」

サカズキは「海賊という“悪”を許すな」と叫び、ティーチは、「全てを壊し、のみ込んでやる」と暴走する。
白ひげは死んだ。大将を討ち取られた白ひげ海賊団(ぐんたい)は烏合の衆も同然……数人逃しても問題ないというのにも関わらず、海軍は1人残さず討とうと追撃する。
唯一負傷者を手当てしているのはイリスのみ。それ以外の海兵は全員戦っている。

スモーカー「(これが、海軍(おれら)の正義なのか…?)」

その時だった。


ズバッ!


黒ひげ「うぐォあァァァァァ!!!」

ティーチが突如肩から血を吹き出し、悶絶し始めた。

黒ひげ「誰だ…!? 痛ェ、畜生…!!」

ティーチの前に現れたのは、意外すぎる人物だった。

ギネス「初めまして、ってところか。」

現れたのは、“犯罪界の絶対王者”ギネス・スパーツィオ。
突然の乱入に、海兵達も海賊達も言葉を失う。

黒ひげ「てめェは…!!」

血が滴る刀を握ったギネスに驚愕するティーチ。
一体何故ここにいるのか。どうやって来たのか。何より…何しに来たのか。
色んな疑問が残るが、少なくとも黒ひげ海賊団に対し敵意を持っているのは理解できた。

黒ひげ「ゼハハハ……海軍に加担するのか? Mr.ギネス。」

ギネス「バァカ、んな訳あるか。 俺の目的は足止め……“仲介人”が来るまでお前らを抑えるのが仕事さ。」

黒ひげ「ゼハハハ…じゃあ、止めてみやがれ!! “闇水(くろうず)”!!!」

ティーチは掌に闇を展開し、強力な引力でギネスを引き寄せ地面に叩き付ける。

ギネス「ぐぅっ!!?」

黒ひげ「おっとっと、まだだぜ…!!」

ティーチは震動のエネルギーを溜め、ギネスに打ち込んだ。
衝撃はすさまじく、地面に亀裂が生じ衝撃の余波で海兵達が吹き飛ぶ。

黒ひげ「ゼハハハ、もう死んじまったか?」

笑みを浮かべるティーチだが…。


ドシュッ!!


黒ひげ「ぐォわァァァ!!?」

ティーチの腹を、刀が薙ぐ。
何とギネスは震動のエネルギーをぶつけられながらも意識があったのだ。

ギネス「クソッ……頭がクラクラする…!」

血を流しながら立ち上がるギネスに、驚くティーチ。
震動のエネルギーは、直撃すればどんな武装も意味を成さずに破砕され、巨人族の海軍本部中将すらも一撃で沈んでしまう。
だが、それでもギネスは生きている。
“世界最凶の単独犯”は、想像以上の猛者のようだ。

ギネス「今度はこっちだな…!!」

ギネスがそう言った次の瞬間、ティーチが地面に叩きつけられた。
地面に亀裂が生じ始め、ついには周囲の地表が陥没しティーチは巻き込まれた。
黒ひげ海賊団も海軍もマルコ達も、この現象に呆然とする。


ドォン!!


ギネス「っ!!」

陥没した地面から衝撃波が放たれ、ギネスに襲い掛かった。
ギネスは覇気を纏った刀で防ぎ、衝撃を弾く。

ギネス「っ……厄介な奴だ…!」

黒ひげ「ゼハハ……“重力”とは驚いた、スぺスぺの実は想像以上にヤベェ能力だな……!!」

そうギネスが攻撃に用いたのは“重力”だった。
スぺスぺの実が覚醒しているギネスは、空間に働く力をも操ることが出来る。
その圧倒的な能力は、2つの悪魔の実を得ているティーチですら手に余るだろう。

黒ひげ「こりゃあスゲェ能力だ…ゼハハハ!! ブチ殺すにはあまりにも惜しい“逸材”だ、俺の仲間に是非なってもらいたいぜ…!!」

ギネス「お断り。 海賊王に興味はねェ。」

黒ひげ「いけ好かねェ野郎だ…!!」

ギネスの刀に覇気が纏う。
ティーチの拳に、震動のエネルギーが溜まる。

ギネス「これ以上暴れるなら手加減しねェぞ。」

黒ひげ「ゼハハハ…じゃあ、やってみろよ…!!」

ギネスとティーチが、同時に動く。
その時だった。

?「そこまでだァァ~~~~!!!!」

戦場に、1つの声が響いた。 

 

第71話:勇気ある数秒

戦場に響く、叫び声。
その声の主は、英雄ガープの部下である海兵・コビーであった。
彼の前には、拳をマグマに変えたサカズキの姿が。
それを見た一同が、動きを止めコビーに目を配る。

サカズキ「あァ…? 誰じゃい、貴様…。」

サカズキは睨むが、コビーは構わず叫ぶ。

コビー「もうやめましょうよ!! もうこれ以上戦うの!! やめましょうよ!! 命がもったいだいっ!!!」

コビーの傍では、次々と海兵が倒れていく。
兵士一人一人に帰りを待つ家族がいるのに、味方であるはずの海軍がそれを奪っている。それが我慢ならなかったのだ。

コビー「白ひげ海賊団は総崩れなのに……!! 戦意のない海賊をも追いかけ、止められる戦いに欲をかいて……!! 今手当てをすれば助かる兵士を見捨てて……!! その上にまだ犠牲者を増やすなんて、今から倒れていく兵士達は…!! まるで!! バカじゃないですか!!?」

ギネス「!!」

ギネスは泣きじゃくるコビーを見て目を見開く。
かつての自分にそっくりだった。故郷を滅ぼされ、家族を殺され、世界に絶望し、憎しみと狂気で暴走し始めた少年時代の自分を。

ギネス「……。」

ギネスはゆっくりとした動作で納刀する。
あれほどまで戦意バリバリのギネスが引いたことに、ティーチは不思議そうな表情を思わずしてしまう。

ギネス「(お前の言う通りだ、少年。 だが世界は…そんなに情に厚くない。)」

コビーの言葉は、人道的には(・・・・・)正しい。
しかし海軍が間違ってるとも言いづらい。庶民にとって海賊は、愛する者を失わせ“恐怖”の対象…彼らを逃がしてしまうのはそれはそれで問題がある。
ここで一時代を築いた白ひげ海賊団を潰せるなら、それはとても大きな意義があり、実力者揃いの隊長達をここで見逃せば、数年後、さらなる脅威に成長して海軍が報復を受けてしまう可能性もある。
ここで僅かな犠牲を惜しめば、数年後に数倍…いや、数十倍の犠牲を生むかもしれない。それが絶対的正義を掲げる海軍の論理であり、同時に“絶対的な摂理”でもあるのだ。
そして戦争とは、敵味方を問わず犠牲を伴うものだ。コビーがこの場で言うのは、あまりに青臭かった。

サカズキ「おどれ…誰に向かって吠えよるんじゃあ…貴様のせいで数秒無駄にした!! 臆病者の上に正しくもない兵は海軍にゃあいらん!!」

イリス「っ!? やめなさい、サカズキ!!! 部下を殺す大将が何処にいると思ってるの!!?」

サカズキを諫めるイリスだが、お構いなしにサカズキはマグマの拳を構える。
正気に戻ったコビーは、自らの状況に絶望しながらも心に呟く。

コビー「(ダメだ、死ぬ!!! …だけど僕は!!! 言ったんだ!!!言いたい事を!!!悔いはない!!!)」

サカズキの拳がコビーに届く寸前だった。


ドンッ!!


『!!!?』

コビーとサカズキの間に、狩衣姿でコートを羽織った男が現れた。
男は刀でサカズキの煮えたぎるマグマの拳を受け止める。

サカズキ「……!!!?」

その姿に、サカズキは呆然とする。
男は、誰もが知るあの大海賊だったからだ。

イリス「ライコウ……!?」

現れたのは、何と“剣帝”ライコウだった。

ライコウ「気に入ったぜ坊主、よく吠えた。 終わるきっかけを見失い暴走した正義(かいぐん)を1人で止めようたァ、並みの男じゃマネ出来ねェぜ?」

ライコウの登場に、騒然となる一同。
唯一ギネスは「やっと来た」と笑みを浮かべている。

センゴク「まさか…!?」

ギネスの言っていた“仲介人”…その正体は、ライコウだったのだ。

黒ひげ「ゼハハハ…お前の言っていた“仲介人”は、ライコウだったのか。」

ギネス「何を勘違いしてんだ?」

黒ひげ「?」

ギネス「“仲介人はライコウだけ(・・・・・・)”と言った覚えはないぞ。」

すると…。

?「そしてその“勇気ある数秒”は…良くか悪くか、たった今、世界の運命を大きく変えた!!!」

『!!?』

サカズキの攻撃を難無く受け止めたライコウの背後に、もう1人の男が現れた。
左目の3本傷。黒いマント。腰に差した剣。そして何より…赤い髪。

「あ、あの男は…!!」

「何でここに、新世界の“四皇達”がいるんだよ!!?」

赤髪海賊団と百獣海賊団の介入に、驚愕する一同。
ライコウは静かに刀を鞘に納め、シャンクスはこう告げた。

シャンクス「この戦争を、終わらせに来た!!」 
 

 
後書き
やっと終戦ですね。
いや~、長かった。やっと楽しみの2年後を投稿できると思うと、泣きそうです(笑)。 

 

第72話:終戦と葬式

シャンクス率いる赤髪海賊団と、カイドウ率いる百獣海賊団の介入に、大騒ぎの海軍。

ティーチ「ゼハハハ、まさかお前も来るとはな“剣帝”。」

ライコウ「何だ、何か問題でもあんのか。」

すると、電伝虫の鳴る音が響き渡った。

ライコウ「俺だ。」

カイドウ《ライコウ…白ひげのジジイは?》

『!!?』

声の主は、四皇の1人“百獣のカイドウ”。
その低く威圧的な声に、周囲の者達は怯む。

ライコウ「死んだよ…見事な最期だったようだ。」

白ひげの死をカイドウに告げるライコウ。
カイドウも来ていることに、さすがのティーチも動揺する。

ボルサリーノ「邪魔はしないでほしいねェ~…。」

指先を光らせるボルサリーノ。
まだやる気のようだ。


カチリ…


ボルサリーノ「!」

ふと、銃口がボルサリーノに向けられる。
そこにいたのは、百獣海賊団の古株である海賊男爵(ブラック)だ。
シャボンディから大急ぎで向かい、どうやら間に合ったようだ。

ブラック「下手なマネは止した方がいい。」

ボルサリーノ「おっとっとォ、バロン・ブラック~…!」

さすがのボルサリーノも、両手を上げる。

マルコ「赤髪…!!」

シャンクス「マルコ…これ以上応戦するな。 大人しく手を引け。」

マルコ達に応戦中止を告げるシャンクス。
引き際を悟ったミホークは「他の四皇との戦闘は協定の範囲外」と告げ、そのまま背を向ける。
死と破壊に満ちた戦場を渡る風のように、ライコウの声が朗々と響く。

ライコウ「これ以上を欲しても両軍被害は無益に拡大する一方。 まだ暴れ足りねェ奴がいるのなら、俺達が相手をしてやる!!!」

ライコウは鞘に納めた鬼王(えもの)を抜き、刀身に覇気を纏わせる。
シャンクスも剣を抜き、鋭い眼光で目を配る。
赤髪海賊団と百獣海賊団の幹部達が、顔を揃えて臨戦態勢になり、どよめく海賊達と海兵達。
もう守るものは自分達の命しかない白ひげ海賊団とその傘下は勿論、中将以下ボロボロな海軍も、今から四皇を2人(1人は待機)も相手したくはないようだ。

シャンクス「どうだ、ティーチ…? いや…“黒ひげ”…!」

ティーチ「…ゼハハハ、男前が上がったな“赤髪”。 似合ってるぜ、その傷…!!」

ティーチはシャンクスを挑発すると、赤髪海賊団幹部のヤソップとティーチの部下のヴァン・オーガーが銃口を向けた。
ライコウら百獣海賊団も、黒ひげ海賊団を睨む。
新戦力を加え白ひげに止めを刺した黒ひげ海賊団と、赤髪海賊団と百獣海賊団が一触即発になるが、ティーチは高笑いしながら「やめとこう」と告げた。

黒ひげ「欲しい物は手に入れたんだ、お前らと戦うにゃあ…まだ時期が早ェ…!!」

グラグラの実の能力を得たティーチでも、今ここで四皇を相手取るのは危険すぎると判断したようだ。
センゴクら海軍とシャンクスら四皇に背中を向け、陽気に去っていく黒ひげ海賊団。
センゴクは無言で見送る。

シャンクス「全員…この場は、俺達の顔を立てて貰おう。」

逝ってしまった一時代を築いた大海賊“白ひげ”。
止まらぬ涙をぬぐい、言葉にならない悲しみを表すマルコら白ひげ海賊団の面々と傘下の海賊達。
モモンガやつるをはじめとした中将達やスモーカーとたしぎ、ヒナなどの海軍次世代は、ただ立ち尽くす。
この先に起こるであろう激動の時代の到来を感じ、喜びの笑みを浮かべるドフラミンゴ。
失神したままのコビー。
サッチ救出の架け橋となり、息を引き取ったオーズ。
複雑な表情を浮かべるエース。
無表情のくまやクロコダイル。
そして……虚ろな瞳で俯き、静かに涙を流すイリス。サカズキら他の大将達やガープは、慰めの言葉も投げかけず、彼女をただ見るしかなかった。
流れゆく涙が、渇いた地を潤していく。

ライコウ「“白ひげ”と戦死した海賊達の弔いは、俺達四皇に任せて貰おう。 戦いの映像は世に発信されていた以上、そいつらの死を晒す様なマネはさせねェ。」

ド―ベルマン「何を勝手な!!! 奴らの首を晒してこそ、海軍の勝鬨(かちどき)は上がるのだ!!!」

ド―ベルマンをはじめ、多くの海兵がいきり立つが…。

センゴク「構わん!!」

『!!? 元帥殿…!!?』

センゴクは了承した。

センゴク「お前らなら…いい。 責任は私が取る。」

ライコウ「…すまねェ。」

センゴク「負傷者の手当てを急げ…!! 戦争は…!! 終わりだァ!!!」

かくして“大海賊時代”開幕以来最大の戦い“マリンフォード頂上戦争”はここに幕を閉じ、歴史に深く刻まれる。

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-1週間後-

“新世界”の、とある島。そこには白ひげの墓があった。
白ひげの墓には、愛用していた薙刀が突き立てられ、それには白ひげ海賊団の旗と白いコートが。
墓の周りでは花が咲き乱れ、散って行った海賊達の形見が薙刀同様突き刺さっている。その前に立つのはマルコとシャンクス、そしてライコウだ。

マルコ「赤髪、剣帝…何と礼を言ったらいいか…。」

ライコウ「つまらねェ事を言うな…敵でも白ひげのじいさんは敬意を払うべき海賊(おとこ)だ…。」

シャンクス「イリスは勿論、センゴクですらそうだったからな。 じゃあ、俺達はもう行く。」

シャンクスは白ひげ海賊団と傘下の海賊団が整列して道を作る中を一人去っていく。
すると、シャンクスとすれ違うかのようにカイドウが瓢箪を片手に現れた。

カイドウ「派手な葬式は嫌いだったんだようだが…随分とデケェ式にされたな。 ザマァみやがれ…ジジイ。」

カイドウは瓢箪の中の酒を白ひげの墓、そしてその周りに掛ける。

ライコウ「……あっという間さ。 この戦争を機に、白ひげ海賊団の領海(シマ)は血の海になる。 じいさんが“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”の実在を遺言にした以上、この新世界(うみ)も慌ただしくなる。」

カイドウ「だろうな。」

海軍の勝利によってもたらされたのは、何も平和だけではない。
伝説的・怪物的な雷名は世界中に轟き多くの海賊や人々から恐れらてきた“白ひげ”という名の抑止力。それを失った海は、白ひげを恐れ続けた海賊達によって大きく荒れ始めている。
白ひげ亡き今、世間では「百獣海賊団が“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”に最も近い」と言われ始めている。いずれ百獣海賊団に戦いを挑む者も現れるだろう。

ライコウ「2年後は世界会議(レヴェリー)…ジェルマやティーチは本腰を入れてくる。」

カイドウ「…こっからが正念場だぞ。」

ライコウ「……分かってるさ。」

白ひげの墓に背を向け、2人の大海賊は「新時代」到来の息吹を感じるのであった。

















-聖地マリージョア-


ドゴォン!!


世界陸軍の本部の元帥室で、轟音が響いた。
周囲はそれに驚き、近くにいたマリージョアの衛兵や陸軍の兵士達が大騒ぎになっている。

ジルド「ふざけやがって…!!! 世界の安寧より、政府の信用に重きを置くのかあのジジイ共は!!!!」

机を一撃で粉々に殴り壊した陸軍元帥ジルドは、凄まじい怒りを露にする。
先日、インペルダウンLEVEL6の脱獄した者の数が報告され、何と黒ひげ海賊団に加わった4名だけではないことが発覚したのだ。
人々への危害を未然に防ぐために、囚人達の手配書を世界に公表するよう申し出たジルドだったのだが、「これ以上の失態は政府の信用に関わる」ということで取り消すどころかその事実すら上層部は揉み消したというのだ。
LEVEL6の囚人が国々に及ぼす甚大な被害より、失墜する政府の信用で失われる被害が重いと見たのだ。

ランドウ「元帥……。」

荒れに荒れる元帥(じょうし)に、ランドウも共感し悔しさを露にする。

ランドウ「今回の戦争は、間違いだったのでしょうか…?」

ジルド「知るかよ…俺にだって分からねェよ。」

何が正義で、何が悪か。何が正しく、何が間違いか。
それは天竜人であったジルドすら分からない。
世界政府は、「現体制の維持」のために不都合な事実は徹底的に隠蔽・排除しようとする。“歴史の本文(ポーネグリフ)”を解読したオハラを滅ぼしたのも、天竜人に手を上げた者を誰であろうと抹殺しようとするのも、ひとえに今の体制を維持し、世界政府転覆の芽を叩き潰すためだろう。
世界政府のルールに従わないこと自体が“悪”……ジルドはそれに疑念と嫌悪感を抱いている。だからこそ、世界政府を内側から変えようと尽力しているのだ。

ジルド「俺のやってることは正しいのか…?」

正義とは。自由とは。
ジルドは心の中で自問するのだった。 

 

第73話:“新時代秩序”

 
前書き
明けましておめでとうございます。新年初投稿です。
今月中に2年後編を始めようと思ってますので、お楽しみに。 

 
マリンフォードで勃発した頂上戦争から2週間後。
聖地マリージョアは随分と騒がしくなっていた。
マリンフォード頂上戦争後の勢力関係の崩壊、そして世界の乱れは五老星をも悩ませるほどのものだった。
白ひげの死は、それほどデカイ事なのだ。
そんな中、世界陸軍元帥のジルドはある人物と謁見していた。

?「センゴクが職を下りて、元帥候補が青雉と赤犬となっているらしいじゃないか。」

ジルド「……それを陸軍の俺に訊きますか、エイセイさん。」

?「さん付けは止してほしいなァ…。 君は元天竜人、僕は元奴隷だ。」

男の名は、エイセイ。
西の海(ウエストブルー)”にある花ノ国出身であるであり、莫大な富と圧倒的な権力を有している。彼は世界会議の議長をも務め、今では“世界皇帝”と称されている。

エイセイ「僕もそろそろ動こうと思っててね。 2年後は世界会議(レヴェリー)の年でもあるし。」

ジルド「……“新時代秩序”のため、か?」

エイセイ「無論。」

エイセイは世界の秩序維持を名目に民間人の犠牲も厭わず隠蔽工作や捏造を行う世界政府の腐敗ぶりと、体面や支配維持、王族や貴族だけの利益に執着する加盟国の暴挙に怒り絶望している。よってエイセイは政府の全ての闇を取り消す“新時代秩序”という計画を実行に移そうとしているのだ。

エイセイ「君と僕は馬が合う。 思想も何もかも、ね。 この計画が成功すれば、世界は偉大な夜明けを迎える。 明けない夜はこの世に無いからね。」

ジルド「……そう上手くいくかねェ、相手は五老星と天竜人と各国王族・貴族。 勝算なんかあるの?」

エイセイ「あるさ…君の友人がいる。」

ジルド「!」

ジルドの友人…それは、“新世界の怪物”と呼ばれ世界政府中枢と深いパイプがある大富豪ギルド・テゾーロだ。
世界政府すら金の力で容易く動かし、天竜人をも懐柔する絶大な権力を持つテゾーロは、海軍すら迂闊に手を出せない。その上、テゾーロは過去の一件から天竜人を恨み、いずれ彼らをも屈服させると考えている。
エイセイは「天竜人を嫌う彼なら、きっと計画に乗るはず」と踏んだのだ。

ジルド「……“世界皇帝”と“黄金帝”が手ェ組んで政府転覆でもする気?」

エイセイ「貪欲な権力者より、筋を通す海賊の方が人道的(マトモ)だろう?」

ジルド「確かにな。」

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-新世界、ある燃える島-

この島では、白ひげに止めを刺し自らの時代の到来を宣言した“黒ひげ”ティーチ率いる黒ひげ海賊団が停泊していた。
海賊らしく、宴を催している。

ウルフ「あっつー…足ギリギリだ、体に力も入らねー…痛っ、魚に噛まれつった…!」

黒ひげ「ぐちぐち言ってんじゃねェよ、ウルフ!!! お前のせいで丸太船がイカレそうなんだよ!! お前の為の交渉だぞ!!!」

シリュウ「そもそもあんな丸太船で新世界を渡ろうというのが無茶な話なんだ。」

ティーチが今困っているのは、船だった。
白ひげの死後、彼の陣地を制覇しようとしている最中とはいえここは新世界。こんなイカダみたいな船でメチャクチャな天候や海流、地理が目白押しの新世界を公開できる訳がない(それでも生きて入れるのだから、とんでもない連中であると言えるが)。
そこでティーチは、海軍と交渉して先程フルボッコにした超新星ジュエリー・ボニーを軍艦と交換しようと考えたのだ。

黒ひげ「それにしても…お前みてェな小娘によく“億”って賞金がついたモンだ! 新世界”は選ばれた“強者”の海だ…!!!“南の海(サウスブルー)”から長旅ご苦労だったなァ、お前はここで脱落だ…ゼハハハハ!!」

『ギャ~~~ッ、ハッハッハッハ!!!』

惨めなボニー達を嘲笑う黒ひげ海賊団。
ティーチはボニーの顎を人差し指で持ち上げると、ボニーを勧誘した。

黒ひげ「仲間にするにゃあ弱くて要らねェが、どうだ、おれの女になるなら連れてってやってもいいぜ? この先の海へ…んん??」

ボニー「っザケんじゃねェよ!!! ヒゲブタがァ!!!」

そう言って自由のきく足で強烈な蹴りを繰り出す。
それは勿論ティーチにヒットする。

『ギャ~~~ッ、ハッハッハッハ!!!』

フラれた船長に爆笑するバージェスらクルー達。

黒ひげ「くァ~~~…下品でいけねェ!! 女は品が大事だろ!? 下品なのは仲間たちだけで充分だぜ!!!」

ピサロ「言ってくれるじゃねェか!!!」

バージェス「ウィ~ッハッハッハッハッハァ!!!」

クルー達はまだ大笑い。

黒ひげ「予定通り、軍艦一隻と交換だ!!」

その時、狙撃手のヴァン・オーガーが叫んだ。

オーガー「船長!! 見えました、海軍が!!」

黒ひげ「約束の軍艦は持って来ただろうな!!」

オーガー「軍艦はあるが、渡す気は無いらしい!!」

軍艦はあるが、渡す気は無い……何故その答えが分かるのかが理解できないティーチはオーガーに訊くと…。

オーガー「“赤犬”が乗っている!!」

それを聞いたティーチ達は一斉に逃げだした。

黒ひげ「畜生!! そういうの(・・・・・)はまだ望んでねェんだよ!!! ズラかるぞ、野郎共ォ!!!」

バージェス「ウィッハハハハハァ!!! 大失敗!!!」

数分後、軍艦が岸に着岸した。
その直後サカズキの部隊が上陸する。

サカズキ「“黒ひげ”は…?」

「もういません…!!」

部下の報告にサカズキは「逃げおったか」と呟きながらボニーの前に立つ。

サカズキ「お前が政府から逃げたと聞いた時ァ、ひやりとしたがのう…。 だが…もう全て終わった。」

ボニー「お前達…!! 絶対に許さねェからな!!」








-同時刻-

ここは冬島。
百獣海賊団の傘下である“アイアンボーイ”スコッチは、超新星の1人“赤旗”ドレークと対立していた。

スコッチ「ここはかの“四皇”カイドウ様のお気に入りの島でね…俺はその守備を任されてる。」

ドレーク「…で、どうしろと?」

スコッチ「どうしろという訳はねェが……警告したのさ。 あの人を怒らせねェ方がいいぜ、ルーキー。 ま…傘下に入りてェってんなら、ライコウ様に掛け合うことは出来るが。」

ライコウ「その必要は無ェよ、スコッチ。」

『!!?』

スコッチの背後から、コートをなびかせてライコウが現れた。
ドレークは勿論、スコッチすらも予想だにしなかったのか目を見開いている。

ライコウ「元海軍本部少将ドレーク…政府や海軍の内情・機密を知ってるんなら、潰すには惜しい。」

ライコウはドレークを勧誘する。
海賊になったとはいえ、海軍本部少将だった男だ。その上、動物(ゾオン)系古代種の能力者。最強の海賊団を目指すに相応しいだろう。

ライコウ「とは言っても、俺はお前の実力を知らん。 そこでだ、俺の優秀なアシスタントと戦い、その実力を見せてもらう。」

そう言うと、ライコウの背後から鉄パイプを携えたサボが現れた。
“拳豪”と呼ばれる男の登場に、ドレークの部下は後ずさる。

ドレーク「つまりこの男と渡り合えるのなら迎えると?」

ライコウ「そういうこった。」

ドレーク「だったら話が早い。」

ドレークは恐竜に変身する。
それと同時にサボは鉄パイプに覇気を纏わせる。

サボ「俺は差別が嫌いでな。 本気で行くぞ!!」

ドレーク「(それはこちらもだ!!)」

冬島に、恐竜の咆哮が響いた。 
 

 
後書き
新キャラのエイセイの設定です。

【エイセイ】
身長:320cm
年齢:原作開始時点・36歳→2年後・38歳
誕生日:1月1日
容姿:端正な顔立ちをしており、顔に刀傷がある。
武器:剣
服装:中華風の衣装の上にロングコートを羽織っている。
好きなもの:酒、武術、学術
嫌いなもの:天竜人、腐敗した権力者
所属:世界政府/世界会議議長
異名:“世界皇帝”
出身: 花ノ国
イメージCV:大川透
性格:穏やかで理知的。度量の深い人物でもあり、誰に対しても分け隔てなく平等・寛容に接する。
戦闘力: ヒトヒトの実・モデル呪術師(シャーマン)の能力者。自らの念を武器にあらゆる存在を操る(能力を行使する際は剣を必ず抜いて天に掲げる)。彼自身も非常に高い天武の才を持っており、3つの覇気を全て会得している。その桁外れの実力はライコウですら「化け物」と称するほど。
モデル:始皇帝
 

 

第74話:鶴の一声

ドレーク「ハァ…ハァ…ハァ…!」

サボ「へへ…段々熱くなってきた…!!」

ライコウの提案により始まったサボとドレークの戦い。
勝負は当然、サボが優勢だった。
2人共幼少期から腕の立つ部類だったが、育てた輩と経験の差がここで出たようだ。
まぁ、致し方ないが。

ドレーク「(こちらは得物2つ……対する拳豪は鉄パイプのみ…やはり“双将軍”はレベルが違うか…!!)」

サボは百獣海賊団の幹部格の中でも戦闘のセンスがトップクラスだ。災害と称される大幹部と張り合えるほどの実力であり、七武海や海軍の英傑とも十分渡り合えるだろう。
そしてそれほどの実力者に育て上げたライコウも、想像を遥かに超える実力者だろう。

ドレーク「やはり一筋縄では行かんか…。」

サボ「キャリアが違うんだよ、海賊としてのな。」

ドレーク「確かにな…。」

そして再び、2人は戦う。
ドレークは恐竜の姿では不利と悟り、得物であるサーベルとメイスによる二刀流で応戦する。
対するサボも、鉄パイプを武装色の覇気で硬化させて攻撃する。
金属音が何度も鳴り、元貴族と元海兵がぶつかり合う。サボもドレークも、一歩も譲らない。

サボ「(よし、ここだ!!)」

サボは鉄パイプを地面に叩き付ける。
すると地面の雪がドレークに突風のように襲いかかり、視界を奪った。

ドレーク「やはりか…。」

しかし、この程度で動じるドレークではない。
むしろこうなるだろうとは読んでいた。
ドレークの目に映るは、うっすらとした影。

ドレーク「そこだ!!」

ドレークは剣で突きを繰り出す。
が、ガキィンという金属音が。

ドレーク「何っ!!?」

そう、影の正体は鉄パイプ。
サボは鉄パイプを囮にしたのだ。
ドレークがそれに気付くも、時すでに遅し。
懐にサボが潜り込んでいた。

サボ「“竜王之爪”。」


ドゴォン!!


ドレーク「ぐァっ!!」


ボゴォォン!!


サボの掌底を食らい、吹き飛ばされるドレーク。
咄嗟に覇気を纏った両腕でガードしたが、衝撃はすさまじく、身体が満足に動かない。

サボ「……ライコウさん、どうなんだ?」

ライコウ「採用。 ここまで出来りゃあ十分さ。」

ドレークの強さ。
彼の戦闘力はサボには劣るが、海軍少将をやっていただけのことはある。超新星(ルーキー)の割にはよく出来てるだろう。

ライコウ「立てるのかそいつ?」

サボ「少しやり過ぎちゃったか…。」

ドレークは未だに立たない。
どうやら気絶してしまったようだ…。

ライコウ「今日は大事な幹部会だ、早く済ませろ。」

ライコウはそう言い、部下に出航の準備を命じたのだった。

-------------------------------------------------------------------------------

-ワノ国-

百獣海賊団の根城では、幹部会が行われていた。

ライコウ「……以上が、テゾーロの情報だ。」

ヒオ「電磁投射砲(レールガン)って…!!」

コラソン「冗談じゃねェよ…確かに海軍では開発の噂はあったけどよ…!!」

コラソンは頭を抱えてゴロゴロと転がる。
ローやヒオ達もライコウの報告に驚きを隠せない。
何故こうなったのか…それは、政府の有力者と海賊による大掛かりな武器の密貿易が行われるという情報をテゾーロから入手したのだ。それも、電磁投射砲だ。
電磁投射砲とは、電位差のある2本の電気伝導体製のレールの間に、電流を通す電気伝導体を弾体として挟み、この弾体上の電流とレールの電流に発生する磁場の相互作用によって、弾体を加速して発射する「電磁兵器」だ。海軍の科学者Dr.ベガパンクの手により試験体は完成しており、極秘裏に実験をしているそうだ。
裏社会と密接な関係にある政府の有力者が、この電磁投射砲をドフラミンゴや新世界の大物達、さらにはあのジェルマと密貿易をして巨万の富を得ようとしているらしい。非常に厄介である。

コアラ「ブローカーがドフラミンゴであることは想定していたけど、まさか黒ひげ海賊団まで首を突っ込むなんて…。」

そう、何とこの取引に黒ひげ海賊団が介入しようとしているという情報も入ったのだ。
ジェルマ、ドフラミンゴ、“黒ひげ”…段々敵が増えていくことに顔が引き攣る幹部一同。

カイドウ「どの道潰すんだ、怖気づいてんじゃねェ。」

ライコウ「だな…こっちにはギネスとテゾーロがいるんだ、大丈夫だろ。」

ブラック「さすが。 頭のネジ飛んでるだけある。」


ゴッ!


ブラック「ひでぶっ!?」

カイドウの鉄拳を食らい、壁に減り込むブラック。
ライコウは「バッカでェ、長い付き合いだからって図に乗ったな」と呟き失笑。

ライコウ「いいかてめェら、こっからが俺達百獣海賊団の“正念場”だ!!」

『っ!!!』

ライコウ「軍事国家、七武海、四皇……新世界のパワーバランスを滅茶苦茶にしかねねェドデケェ山を俺達は迎えるんだ、全員リアルガチで行くぞ!!」

何処かで聞いたことのあるフレーズと共に全員に言葉を投げかけるライコウ。
ローは目を細めながら「どっかで聞いたことあるな……」と呟く。

ライコウ「つー訳で、カイドウ。 鶴の一声を。」

ライコウはカイドウの目を見て言う。
するとカイドウは立ち上がり、両手を広げて叫んだ。

カイドウ「急げ野郎共、最大の戦闘準備を整えろォォォ!!!」

『ウオオオオオオオ!!!!』

雄叫びを上げる海賊達。
そんな中ライコウは窓から覗く月を仰ぎ、笑みを浮かべた。

ライコウ「(俺達はいつでも待ってるぞ、ルフィ…!)」

大海賊達の物語は、新時代を迎える。 
 

 
後書き
はい、やっと第1部終了です。
次回から原作における新世界編…第2部です。 

 

第75話:動き出す両者

-新世界-

ワノ国のある海岸では、2人の海賊が睨み合ってた。
1人は、2本の大きな角に腰まで伸びる長いナマズ髭を蓄えた四皇“百獣のカイドウ”。筋骨隆々の肉体、左腕の髑髏と鱗のような刺青、右腹部の大きな十字傷、金棒を携えたその姿はまさしく鬼の頭領であり、恐ろしいほどの威圧感を放っている。
もう1人は、長髪で顔に刀傷が刻まれた“剣帝”ライコウ。行灯袴と狩衣、下駄を履いた和装の上に黒いコートを羽織った彼は、帝王の如く圧倒的な風格を漂わせている。
2人は百獣海賊団の船長と副船長の関係。長年のコンビであり、共に大海に君臨し続けている。しかしどういう訳か対立している。

ライコウ「うらァっ!!」

先制攻撃を仕掛けたのは、ライコウ。一瞬でカイドウの懐に潜り込み、十八番である神速の居合“零閃(ゼロせん)”を繰り出し、胸部に斬りかかった。
しかし、相手は海の皇帝として君臨している猛者。カイドウは胸に覇気を集中させ防ぐ。

カイドウ「ぬぅん!!」


ドゴォン!!


カイドウは金棒をフルスイングしてライコウを殴った。
しかしライコウも数多の修羅場を潜り抜けた男…咄嗟に刀と鞘を十字に構え、衝撃を和らげる。
とはいえ、筋骨隆々の巨体から繰り出される一撃は重い。ライコウは空中へ吹き飛ばされてしまう。

ライコウ「“覇王拳・狼王波”!!」

ライコウは何と空中で体勢を立て直し、狼の形をした拳圧を放った。
カイドウも覇気を纏った左腕でその拳圧を殴り相殺した。

ライコウ「まだだ、“次元斬”!!」

居合と共に無数の斬撃が放たれ、カイドウを襲う。
カイドウは金棒を再びスイングし、風圧で斬撃の軌道を逸らした。

ライコウ「(覇気を纏わせた風圧……さすが“四皇”、やるじゃねェか。)」

パートナーであり一応上司のカイドウに感心するライコウ。

ライコウ「“覇王拳・馬王脚”!!」

ライコウはカイドウに回し蹴りを繰り出すが…。


ガシッ!!


カイドウ「そうはさせねェよ…!」

ライコウ「何っ!?」

ガッシリと足を掴まれ、驚くライコウ。
カイドウはすかさずライコウを地面に思いっきり叩き付ける。


ドゴォォン!!


ライコウ「ぐぅっ…!!」

しかしライコウも、それなりに生命力も耐久力も高い部類…致命傷には至らない。
だが一瞬で思いっきり叩きつけられたため受け身が取れず、身体が痙攣する。

カイドウ「ぬぅん!!」


ボゴォォン!!


ライコウ「ぐっ!!」

金棒を縦に振るい、ライコウを潰そうとするカイドウ。
ライコウはかろうじで身体を動かして避ける。

ライコウ「……ハハハハ、楽しいねェ!!」

カイドウ「まだ終わりとか言わねェよな?」

互いに獰猛な笑みを浮かべ、得物を構える。
その時だった。ラフな服装に腰布を巻き、ロングコートを羽織って煙草を吸っている男が仲裁に入った。
男はバロン・ブラックといい、百獣海賊団の航海総長である古参クルーの1人だ。

ブラック「何やってんすか。」

ライコウ「あ? アレだよ。 模擬戦闘。」

カイドウ「そんなことも分からねェのか。」

ブラック「ほぼほぼガチじゃねェか。」

ライコウとカイドウの言い分にツッコミを入れるブラック。

ブラック「そう言う場合じゃない。 これを見てほしいんだ。」

「「?」」

ブラックが見せつけたのは、新聞だった。
その新聞には、「麦わらの一味、完全復活!!」と記載されていた。

ライコウ「そうか、ついに…!」

カイドウ「コイツが…ガープの孫か。」

そう、あの“麦わらのルフィ”が再び現れたのだ。
シャボンディ諸島での一件以来、一味全員が行方不明となったので一時は死亡説が流れたのだが、どうやら無事に海賊稼業を再開できたようだ。

ライコウ「……ブラック、出航の準備だ。」

ブラック「!!」

ライコウ「ローとコラソンを呼べ、デカイ花火を打ち上げる!!」

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偉大なる航路(グランドライン)、とある海底-

“麦わらの一味”は、魚人島を出航し新世界へ向かっていた。
その道中とてつもなくデカイ深海魚を捕獲したり、まるで生きた竜のように突然海底に現れるという 巨大な白い渦巻“白い竜(ホワイト・ストローム)”に遭遇し巻き込まれかけたりしたが、超巨大なクジラ「アイランドクジラ」の群れに遭遇して海上まで乗せてもらうことが出来た。
尤も、下手に動けばクジラ達の生んだ上昇海流で粉々にされるかもしれないが。

ゾロ「なァルフィ。」

ルフィ「ん? 何だ?」

ゾロ「“剣帝”ってどれぐらい強ェんだ?」

ゾロはルフィにそう訊く。
世界四大剣豪の一角にしてかの百獣海賊団副船長を担う“剣帝”ライコウは、ゾロにとって超えるべき壁の1つだ。
「純粋な剣技では“鷹の目”、何でもアリなら“剣帝”」と人々は言い、その圧倒的な戦闘力は海軍大将以上とも噂されている。
ルフィはかつて邂逅したこともあり、ゾロは「ルフィなら知ってる筈」と考えたのだ。
だが……。

ルフィ「分かんねェな~…俺と同じ覇王色は使えた気がするけどな~…。」

腕を組んで首を傾げるルフィ。
ルフィとて、実際にライコウとは戦ってない。12年も前の話だ。

ルフィ「……ま、スッゲェ強ェのは確かだ!!」

ウソップ「雑だわ!!」

ナミ「見て!! 会場に出るわ!!」

『!!!』


ドドォン!!


ルフィ達はクジラの頭部に乗せて貰い、サニー号はクジラ達と共に海上に飛び出した。

ウソップ「天候最悪~~!!!」

ブルック「ヨホホ!! 空は雷雨!!」

ロビン「風は強風!」

フランキー「海は大荒れ!!」

ナミ「指針、的外れ!!」

チョッパー「赤い海が見える!!」

サンジ「逆巻く火の海!!」

ゾロ「まるで地獄の入り口。」

ルフィ「望むところだァ~~!!!」

麦わらの一味、新世界に挑む。 
 

 
後書き
やっと始められた。
こっから面白くなりますよ。

ライコウ「そーいや、モネと俺の子供って誕生してるの?」

うん、誕生してる。名前は近日公開。 

 

第76話:パンクハザード

-聖地マリージョア-

世界陸軍の本部の元帥室では、陸軍大将ランドウが元帥アルテュール・ジルドから密命を受けていた。

ランドウ「私をパンクハザードに、ですか?」

ジルド「あの辺りの海域で子供達の誘拐事件が多発している。 それの調査をしてほしい。」

新世界に存在する、世界政府直轄の島「パンクハザード」。かつては世界政府の研究所が置かれ島の動植物を使って実験が繰り返されていたが、4年前の爆発事故で毒ガスが漏れ廃れてしまった。現在はその毒ガスも消え、一応人が住めるようになったが。
そして何より、海軍の元帥の座をかけた当時の青雉(クザン)赤犬(サカズキ)の決闘の場で有名になり、灼熱の地と極寒の地で分かれてしまっている。

ランドウ「その件ですが…海軍の“G-5支部”に任せるべきでは?」

G-5支部は、荒くれ者の海兵達が集う海軍の窓際部署。最高責任者は海軍本部中将“鬼竹(きちく)のヴェルゴ”であり、つい最近海軍の中でも問題児として知られるあの“白猟のスモーカー”が部下のたしぎを連れて配属されたばかりだ。
勤務する兵士達は基本的にチンピラばかりだが、義侠に富んでもいるので決して悪い連中ではない。

ジルド「俺の読みが正しければ、G-5内部の誰かが子供の誘拐事件を揉み消し、新聞には嘘が載った筈だ。」

ランドウ「なっ!!?」

ジルドの推測に、驚愕するランドウ。

ジルド「これが証拠だ。」

ジルドが机から出しランドウに渡したのは、「極秘」と記された封筒。
ランドウは封筒から中身を取り出す。

ランドウ「これは…。」

ジルド「テゾーロの情報網とコネを元に作成したデータだ。 おかしくねェか?」

ランドウは資料に目を通す。
内容は、G-5支部の子供誘拐の通報件数とそれが公表された際どうなっているかをまとめてあった。

ランドウ「どういうことですか…!? 全て海難事故や海賊事件、失踪事件に変わっているなんて…通報が早とちりだとしてもこれは異常だ…!!」

ジルド「だから俺は世間に出回った記事が虚偽の報で、G-5内部の誰かが真実を揉み消したって読んだんだ。 犯人も大方予想は付いている。」

何とジルドは、主犯格も目星は付いているらしい。

ジルド「1人はシーザー・クラウン。 子供達を実験台にして何かやってるだろう。 もう1人は海軍中将ヴェルゴ。」

ランドウ「!!?」

ジルドの口から、衝撃の事実を知らされる。
G-5支部の最高責任者である海軍中将“鬼竹のヴェルゴ”が誘拐事件に加担しているというのだ。

ジルド「事実を揉み消すってんなら、トップがやるのが一番都合がいい。 表の面じゃあ随分な紳士らしいが…ああいう奴に限って裏の顔はエグイのさ。」

ジルドはイスから立ち上がると、もう1つの書類をランドウに渡した。

ランドウ「医学書……?」

ジルド「持って行け。 何かの役に立つ。」

ジルドは不敵な笑みを浮かべる。
何故医学書を渡したのかは不明だが、ランドウはジルドの推測が外れたところを今まで1度も見たことがない。ランドウは「どこかで役に立つ」と信じ、懐にしまう。

ランドウ「では、行って参ります。」

ジルド「気ィ抜くなよ、黒幕はもっとデカイぜこりゃあ。」

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-新世界、ライジン島近海-

スモーカーとたしぎが率いるG-5部隊は、島一面に落雷しまくってるライジン島で待機中に緊急信号を傍受していた。
麦わらの一味を一網打尽にするためである。しかし…。

スモーカー「くそ…一体どういうルートを通りやがったんだ…!? 確率は3分の1…普通はその筈だが…。」

魚人島から指針が示す3つの島は、リスキーレッド島とライジン島とミストリア島だ。
ライジン島はその中でも最も危険な島であり、冒険好きなルフィの性格を知るスモーカーはそのライジン島近海で待ち構えていたのだ。
しかし「指針無視」は想定の範囲外であったため、内心驚いているのだ。

たしぎ「しかしスモーカーさん、パンクハザードは四年前の事故以来、完全に封鎖された無人島です!! 人がいるなんて変です!!」

スモーカー「……そうだな。 現在、生物が住める様な環境じゃあねェ筈だが…手掛かりはそれしかねェんだ…移動するぞ!! お前ら!!」

「え~~!? スモーカー中将!! あそこ立入禁止だぜ!? 知らねェの!?」

スモーカー「てめェらが法律を口にするんじゃねェ!!船を出せクズ共!!」

『ヘ~~~イ!!!』









-一方、パンクハザード近海では-

スモーカー達がパンクハザードに入ろうとしていた同時刻、麦わらの一味もパンクハザードに向かおうとしていた。

サンジ「ホラ! 深海魚弁当だ!!」

ルフィ「うほ~~~楽しみ~~~!!!」

サンジから深海魚弁当を渡されるルフィ達。

ナミ「“ミルキーロード”!!」

「「おォ~~~~~~!!!」」

ナミは自身の武器である“魔法の天候棒(ソーサリー・クリマ・タクト)”で雲の道路“ミルキーロード”を出した。
燃え上がる炎さえも越えるそれに、ルフィとフランキーは驚き混じりの歓声をあげる。
ナミは2年前、王下七武海のバーソロミュー・くまの能力によって天候を科学する小さな空島「ウェザリア」に飛ばされた。
新世界の天候に対応するため、気象学者のハレダスらに気象科学を学んだのだ。

ルフィ「スゲェー!! 雲の道が出来た!! 空島で見たやつできる様になったのか!!」

ナミ「えへへ♡ 雲だから安定してるうちに早く通って!」

ナミの造ったミルキーロードでルフィ・ゾロ・ロビン・ウソップの偵察隊はミニメリーに乗り、パンクハザードへ向かった。

ルフィ「よし! 偵察隊行くぞー!! 頼むぞミニメリー!!」

サンジ「頑張れ、お前らァー!!」

ナミ「気をつけてー!」

盛大な見送りに見守られながらミニメリー号は雲の道をゆったりと進んで行く。
未だ泣き喚くウソップの声だけを残して。

ウソップ「誰か代わってくれー!!」

狙撃手の慟哭が、木霊した。 

 

第77話:ケンタウロス

-パンクハザード近海-

吹雪が吹き荒れる海岸。
その沖合にたなびく、大きな2本の角が生えたドクロに4本の骨が交差した海賊旗。
新世界のワノ国を拠点として君臨する四皇カイドウが率いる百獣海賊団の船が、パンクハザードに近づき停泊の準備を進めていた。
そんな中、百獣海賊団の船医総監を務めるトラファルガー・ローは、船長(カイドウ)副船長(ライコウ)を相手に電伝虫越しに会話していた。

カイドウ《着いたのか?》

ロー「あァ、今上陸するところだ。」

ライコウ《そこに“SMIRE(スマイル)”の工場がある筈だ…そこをぶち壊した瞬間から全てが始まる。》

ロー「確かに…ここなら政府関係者すら近寄らねェ。 密造にはうってつけだ。」

“SMILE”とは、大量殺戮兵器製造の第一人者であるシーザー・クラウンがDr.ベガパンクの発見した「血統因子」を応用して製造した薬品“SAD”を原料とした動物(ゾオン)系人造悪魔の実だ。
人造悪魔の実を食べた者は、身体の一部が動物に変化する能力を身につける。これを新時代の次世代兵器として新世界の大物達が取引しているのだ。
百獣海賊団がパンクハザードへ訪れた理由こそが、“SAD”の製造装置の破壊ということなのだ。

ライコウ《一応俺は別行動としてそっちに行く。 息子の世話で忙しいんだ。》

ロー「それはコアラとサボに任せていいだろう…。」

ライコウ《バーロー、あの2人には“ドンキホーテファミリー崩壊作戦”で重要な役目を担わらせるんだぞ? そのためにマイキーも送ってやったんだからな。》

ライコウはパンクハザードでの任務に傘下の海賊であるマイキー・マットを派遣した。
新世界でも名の知れているマイキーは、腕っぷしならかなりのモノ。心強い味方であるのは事実だ。

カイドウ《ウオロロロロ…アリスもコラソンもいるんだ、それぐらいの面子なら問題ねェだろ。》

ロー「コラさんは少し心配だがな…船内を歩くだけで16回も転ぶし、煙草吸えばいつの間にかコートに火が燃え移るし…。」

ライコウ《仕方ねェだろ、そういう性格(キャラ)だ。 まぁ、あのセンゴクの元部下なんだ…死にやしねェだろ。》

ロー「(ぶっちゃけたな……。)」

適当に流した上に思いっ切りぶっちゃけるライコウ。
だがコラソンは幹部としての実力はあるし、IQも百獣海賊団の中でもトップクラス。海軍か陸軍の大将クラスの猛者が来ない限り敗北はしないだろう。

ロー「とにかく上陸する、海軍とシーザーに盗聴される前に切るぞ。」

ライコウ《武運を祈る。》

カイドウ《シクるなよ?》

ロー「あァ。」


ガチャリ…


通話を終え、愛刀である鬼哭を携えるロー。
すると銃剣を用意したアリスティアがローに声を掛けた。

アリスティア「上陸の準備が出来たよ、ロー。」

ロー「分かった……“例の物”は?」

アリスティア「大丈夫…百獣海賊団最高峰の科学者の僕が3度も点検したんだから♪」

ロー「よし…計画始動だ!」

百獣海賊団、パンクハザードに上陸。

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時同じくして、ここはパンクハザードの第一第二研究所跡。
かの世界陸軍の最高戦力・大将ランドウは元帥(じょうし)のジルドから手渡せた数多の書類に目を通していた。

ランドウ「やっぱり…シーザーは戻って来てる。 道理で島の毒ガスが無い訳だ。」

2年前まで、パンクハザードは毒ガスが立ちこめてるため立ち入り禁止区域となっていた。しかし今では空気を吸っても身体に害はない。
恐らくシーザーが毒を中和したのだろう。彼は“ガスガスの実”の気体人間…僅かにでも吸い込めば即座に相手の自由を奪う毒ガスや、点火すると瞬く間に辺りを火の海に変えるような可燃性ガスを操ることも出来る彼なら、中和ガスを作ることぐらい造作もないだろう。

ランドウ「これは本気で戦った方がいいかな…。」

すると…。

「おい、何だ貴様!!」

「一体どこから入った!!?」

ランドウ「!」

声をした方に振り向くと、コートを着用し銃火器や刀剣類を携えた半人半獣(ケンタウロス)の軍勢が。

ランドウ「(これは一体…!? トラファルガー・ローの能力…じゃない…!?)」

ローの能力である“オペオペの実”ならば、能力を駆使して動物の下半身と合体させて足を動けるようにすることは出来る。
だがローは百獣海賊団…シーザーに加担している訳がない。となると、目の前のケンタウロス達は何者かの外科手術によって足を与えられたのだ。
その証拠に、足にツギハギの痕がある。

ランドウ「(まさかあの医者が…?)」

ランドウには心当たりがあった。
これほど高度な医療技術を有する者は、世界ではごく少数。そして外科手術を得意とする者は、さらに限られる。
ランドウの脳裏に、数々の奇跡を起こした名医として世に知れ渡った“あの医者”の姿が過る。

「“M(マスター)”の邪魔者は排除するぞ!!」

そう言い、銃を構えるケンタウロスだが…。


キンッ…


「…え?」

ランドウ「たかが敵1人と見くびらない方がいい……と言っても、もう手遅れか。」

次の瞬間、ケンタウロスは口から血を吹き出して倒れた。
胸には赤い筋が通っており、自分達が気付かない速さで斬り伏せられたということを容易に理解できた。

「な…速ェ!! 何だこりゃあ!?」

「え…おい、まさかお前…陸軍大将のランドウか!!?」

ランドウ「何か問題でも?」

相手が陸軍大将であることを知ったケンタウロス達は絶叫した。
世界陸軍の大将は、海軍大将とも引けを取らない腕っぷしを有する者ばかり。その上、ランドウはあの“鷹の目のミホーク”からも高く評価されているほどの剣豪である。並大抵の輩では勝ち目などない実力者だ。
しかし、シーザーを慕う彼らは臆することなく武器を構える。

「ひ、怯むな!!」

「陸軍大将とはいえ、能力者じゃねェ!! 生身だ、その気になれば討ち取れる!!」

ランドウ「全く…無駄な労力はここで使いたくないのですが…。」

ランドウは刀を抜き、ケンタウロスの軍勢に突っ込んだ。 

 

第78話:「何か問題でも?」

パンクハザードの研究所。
この研究所を支配して研究と実験を続けるシーザー・クラウンは、部下からの報告に驚きを隠せないでいた。

シーザー「何!? 陸軍大将も来てるのか!?」

「討伐に行った部隊からの連絡は5分前…一斉に通信が途絶えました…!!」

シーザーは先程、海軍中将“‎白猟のスモーカー”が率いるGー5部隊が上陸したことを耳にし対応に追われていた。
その矢先に、元天竜人(ジルド)が率いる世界陸軍の大将・ランドウが1人上陸しており、その姿を見つけた部隊が彼の手によって全滅した。
誰もパンクハザードに居てはいけないことになっている以上、シーザーがここでまた実験をしてることが露見すれば不都合だ。

「対応はどうしますか?」

シーザー「誰も居ちゃいけねェんだここには…お前ら見つかるな! 俺も出られねェ!」

シーザーは急いで命令する。
すると…。

?「フォスフォスフォス……随分とお忙しいようですなァ、Mr.シーザー。」

特徴的な笑い声をする男が、シーザーに声を掛ける。
男の名はドクトル・ホグバック。四皇“黒ひげ”率いる黒ひげ海賊団の幹部であるゲッコー・モリアの優秀な部下だ。

シーザー「ホグバック……お前はどう思う?」

ホグバック「…と言うと?」

シーザー「何故そこまでしてパンクハザード(このしま)に入ってくると思う? ただの勘で来れる訳がねェ!」

ホグバック「フォスフォスフォス…それは事実。 しかし誰が漏らしたのか…謎ですなァ。」

シーザー「……まァいい、こっちにはお前達黒ひげ海賊団の傘下がバックにいるんだからな。 シュロロロロ…!!」

シーザーはそう言い、笑みを深めた。










-時同じくして-

ここは研究所正面入口。
パンクハザードに上陸したロー達百獣海賊団は研究所内に侵入しようとしていた。

コラソン「“サイレント”解除。」

コラソンは指をパチンッと鳴らし、ドーム状の透明な結界を解く。
“ナギナギの実”の無音人間であるコラソンが解いたのは“防音壁”だ。ドームの中に居る者は外側の音声が一切聞こえず、ドームの内側から発生した音声は外側には一切聞こえないこの能力を駆使し誰にも気付かれないよう移動したのだ。
尤も、姿は一応見えてしまうため油断は出来ないが。

アリスティア「……それにしても、大きい研究所だこと。」

マイキー「この先に、“SMILE”があるのか…。」

ロー「あァ…厳密に言えばその元となるSAD(やくひん)だがな。 “ROOM”。」

ローはそう言いながら、球体上の結界を展開し、“シャンブルズ”で中へ侵入しようとする。
だがその時、コラソンは何かに気付き叫んだ。

コラソン「待て、後ろに誰かいる!!」

『!!?』

一斉に得物を構える。
その視線の先には、巨大な十手を構えた海兵とその部下達が。
そう…海軍の窓際部署・Gー5支部の者達だった。

マイキー「何だ、海軍か…。」

コラソン「何だ、じゃねェよ!! 一応敵だぞ!?」

マイキー「いや、得体の知れない敵よりよっぽどマシでしょうに。」

コラソン「うっ…そりゃそうだが…。」

マイキーとコラソンが言い合っていると、スモーカーが口を開いた。

スモーカー「百獣海賊団……どういうことだ、何でお前らがここにいる…!!?」

アリスティア「…それはこちらのセリフ。 政府関係者は立ち入り禁止の筈のこの島に一体何の用ですか? 尤も、海賊である僕達が言うのも何ですが。」

アリスティアは銃剣を構え、微笑みながら言う。
この島は海兵はおろか七武海すらも立ち入りを厳禁扱いされている。何らかの理由はあって来てるだろうが…何れにしろ面倒ごとではある。

マイキー「やるんなら俺1人で十分だぜ、船医総監殿。 海軍中将1人程度なら全滅くらい問題ねェ。」

腕に武装色の覇気を纏わせ、獰猛な笑みを浮かべるマイキー。

ロー「いや、待て…今ここでやると俺らにも不都合だ。」

マイキー「最悪、コイツら囮にすればいいでしょう? “‎白猟”の目的が何であれ、助ける義理なんか無いですし。」

ローは押し黙る。
マイキーの言い分は一理ある。海賊と海軍は相対するのが必然…こっちが何をしようが勝手だ。

コラソン「(囮…? 待てよ、もしそうしたら…。)」

コラソンは考えた。
己の信念に基づき行動し組織の論理に従わないスモーカーは、政府上層部からは厄介者扱いされている。それは海軍だけでなく無法者達も同様…新世界の海賊も「面倒な奴」と呼ぶ者はいる。
シーザーも彼を厄介者扱いしてるだろう。ならば…彼らを囮として生かして自分達は人知れずSADの製造装置を破壊した方が都合がいい。

コラソン「…ロー、コイツらは生かした方がいい。」

ロー「奇遇だ……俺も同じことを思ってた。」

その時、研究所の扉が突然開いた。
それと共に一斉に出てくるのは、巨大な子供達と見覚えのある海賊だった。

アリスティア「あなた達は…“麦わらの一味”!?」

研究所から出てきたのは、ルフィ率いる“麦わらの一味”のナミ・チョッパー・サンジ・フランキーの4名だった。

『大ダヌキ!! 冬ビキニ!! 巨大なガキ共にロボット!! 夢かこれは!!?』

カオスな面々に混乱するGー5。

フランキー「!? お前らは、百獣海賊団!!」

チョッパー「ギャアアアアア!! 四皇だァ~~~!!!」

ナミ「まさか子供達を閉じ込めたのアンタら!!? この外道!! この子達返さないわよ!!」

ロー「酷い言い掛かりだな、つい先程来たばかりの奴に…。」

ローは呆れながら、ナミ達の言い掛かりに対処する。
冷静に対応するその姿は、さすが四皇の幹部と言えるだろう。
そんな中、サンジは海軍を睨みながら口を開いた。

サンジ「どこの極悪人かと思えば、てめェはスモーカー!!! そして、いつものカワイコさーん!!」

海軍本部大佐のたしぎは「何故、ここに子供達が…!?」と困惑する。
それもそうだろう、こんな地獄のような環境に子供がいる時点でおかしい。

ロー「……丁度いい、お前ら。 第一第二研究所跡で待ってろ。」

ナミ「え…?」

コラソン「俺達はカイドウさんとライコウさんから、ある重要な任務を任されている。 お前らに関する、な…。」

その言葉に、一同は騒然となった。
四皇カイドウとそのパートナーであるライコウが、麦わらの一味に対し接触しようというのだから。

マイキー「ホラホラ、とっとと行けって。」

フランキー「すまねェ!! 皆、戻れ!!」

「わああああ!! あれ? 海軍っていい人達じゃないの!?」

サンジ「一般人には…な! いい人に見えるなら行け!!」

「やだ!! あの人達ヤ〇ザみたい!!」

『………。』

サンジにどやされたりしながらも、子供達は言われるがままに来た道を戻る。

たしぎ「皆!! “麦わらの一味”を捕らえます!!!」

「あっ…くそォ!! 圧倒された!! よし行くぞ!! 大佐ちゃんに続け!!!」

ロー「そうはさせねェ。 “ROOM”! “タクト”!」

漸く我に帰ったたしぎが独断で海兵達に麦わらの一味捕獲命令を出すが、ローが人差し指を上に上げた瞬間、海軍の軍艦が宙に浮きながら180度回転した。
まるで超常現象のような光景に、混乱する海兵達。

スモーカー「何故お前らが奴らに加担する!? 百獣海賊団!!」

ロー「何か問題でも?」

百獣海賊団、Gー5と交戦開始。 

 

第79話:百獣海賊団VS海軍Gー5部隊

百獣海賊団と海軍Gー5部隊の戦闘が繰り広げられようとしていた。
しかし、スモーカーは確信していた。この戦闘は確実に負けると。

スモーカー「(百獣海賊団の幹部共に加え、傘下で一際凶暴って噂の“暴獣”マイキー・マット…どうすりゃあいい…!)」

スモーカーの前にいるのは、百獣海賊団の実力者とその傘下のマイキー。
総合懸賞金額(トータルバウンティ)は少なくとも15億ベリーは超えるだろう。それに加え、百獣海賊団は下っ端でさえ海軍の尉官クラスを一捻りで倒せるほどの腕。一海兵部隊では勝ち目は無い。
かと言って、逃げるのも困難を極める。ローが能力で宙に浮かせた軍艦は真っ二つにされ、ローの遊び心かどうかは知らないが半分が島の岩盤とくっついてオブジェにされてしまった。
逃げ道もない以上、戦う以外手段は無いだろう。

スモーカー「お前ら邪魔だ!! 覇気もロクに扱えねェんじゃあ相手になんねェ!! 相手は“四皇”の一味だぞ!!!」

その鬼気迫る表情のスモーカーに怯む海兵達。
四皇最強とも謳われているカイドウの部下だ、どれほどの脅威かは戦わずとも分かるだろう。

たしぎ「なら、私が戦います!! あなた達がその気なら!!」

スモーカー「やめろ、たしぎ!! お前じゃ勝てねェ!!」

愛刀“時雨”を構えてローに斬りかかるたしぎだが…。


ガギィン!


『!!?』

時雨の刃は、黒い腕に遮られた。
たしぎの前に立つのは、武装色の覇気を腕に纏わせたマイキーだった。

たしぎ「“暴獣”マイキー・マット…!!」

マイキー「お初にお目にかかるぜ、たしぎ大佐。」

スモーカーは「ったく、あのバカは…」と言いながらも、内心安堵した。
もしマイキーがたしぎと交戦しようとしなかったら、今頃たしぎはローの能力で斬られ、斬られても生かされるという屈辱を味わっていただろう。

スモーカー「これで心置きなくやれるな。」

スモーカーは身の丈をも超える十手を構え、ロー達を睨む。

アリスティア「……。」

ロー「コラさん、アリス。 ここは俺がやる。」

ローはそう言い、スモーカーと対峙した。
一方、マイキーとたしぎは…。

マイキー「お、向こうは面白くなりそうじゃん♪」

マイキーはたしぎとの戦いよりもローの戦いの方に注目していた。
滅多に見られないローの戦いが楽しみのようだ…。

たしぎ「余所見は禁物ですよ!」


ギィン!


マイキー「んなこたァ分かってるよっと!」


ドンッ!


たしぎ「キャァッ!!」

マイキーはたしぎを弾き飛ばした。
たしぎは何とか受け身を取るが、マイキーはたしぎの懐に潜り込み、殴り掛かった。しかしそこは海軍の大佐…何とか躱した。
が、その後の光景にたしぎは戦慄した。


ボゴォォン!!


『!!!?』

マイキーの拳打は、何とオブジェの一部である島の岩盤を半壊させた。
アレを食らっていたらタダでは済まないだろう。

マイキー「……躱したか。 佐官クラスとなるとすぐには倒してもらえねェって訳かい。」

たしぎ「な…何て腕力…。」

「何だアイツ、化け物か!?」

「大佐ちゃんがヤベェ、援護しろォ!!」

たしぎを守ろうと海兵達がマイキーに砲撃を開始する。
しかし、海兵達が放った銃弾はアリスティアの放った銃弾に撃ち抜かれた。

アリスティア「……そういう行為は野暮ですよ。」

「銃弾を銃弾で撃ち抜いた!!?」

「あの女がか!!? そんなバカな!!!」

マイキー「…助かりますわ~、アリスさん。」

アリスティア「このまま続行してください、ザコは僕とコラさんで牽制するので。」

コラソン「ま…俺も幹部だから仕事はしなくちゃな…。」

「クソ、こうなったら通報だ…!!」

「大将だ! 大将を呼ぶんだ!!」

海兵達は電伝虫を手にし連絡を取ろうとした。援軍を寄越すためだ。

コラソン「(成る程…考えたな。 だが…残念だったな。)」

するとコラソンは小さな箱を取り出し、スイッチを押した。


ヴン!!


ブツッ!


「!? おい、ウソだろ!? 回線が繋がらねェ!!?」

「俺のもだ!!」

「おい!! 何しやがったピエロ!!」

コラソン「ピエロ……。」

コラソンは白い目で海兵達を見ながらも、丁寧に解説した。

コラソン「コイツはロリシカ鉱石っつー電流を流すと30秒ほどだが直径20㎞圏内に“念波嵐”という強力な波動エネルギーを発する鉱物を搭載した“念波発生装置破壊兵器”だ。」

コラソンはそのまま語り続ける。
念波発生装置破壊兵器は、一度スイッチを入れれば発生した念波嵐で電伝虫や機械を一時的に再起不能にさせる強力な武器である。長年の改良によりスイッチを入れてる限りはずっと念波を発し続けるようになったという。

コラソン「勿論……この箱のスイッチがONである限り、お前らは通報も連絡も出来なくなるって訳だ。」

「そんなのアリかよ!?」

「ズリィぞ!!」

コラソン「甘ェこと言ってんじゃねェ、聖者でも相手にしてるつもりか? 俺達は海賊だぞ。」

『うっ…。』

痛いところを突かれ、押し黙る海兵達。

コラソン「(それにしても…何なんだこの感じは…!? まるで誰かに監視されてる気分だ…!!)」

コラソンは数分前から、何かに気付いていた。
それは、視線。誰かにずっと様子を見られているような感覚だ。
しかし辺りを見渡せど、周囲に不審な人物はいない。なのに、何者かの視線を感じるのだ。

コラソン「(嫌な予感がする…。)」

そんなコラソンの様子を雪山から見下ろす男。
その姿はどういう訳か透明であり、素顔が分からない。

?「ガルルルル……さすがは百獣海賊団参謀総長…おいらの気配を察したか。 長居は危険だな。」

男はそう言い、姿を消す。 
 

 
後書き
最後に出てきた人物は、皆さんなら分かる筈です。ヒントは「モリア一味」と「透明」です。
あと、突然ですがアンケートを実施します。詳細はアンケート一覧でご確認ください。 

 

第80話:死の外科医VS白猟

一方、トラファルガー・ローとスモーカーは激しい攻防戦を繰り広げていた。

スモーカー「“ホワイト・ブロー”!!」

煙に変化させた腕を勢いよく噴出し、鉄拳を叩き込むスモーカー。
しかしローは「遅ェ」と言い、能力を使わずに難無く避ける。

ロー「覇気を使えるようになったんだな、白猟屋。」

スモーカー「…随分余裕だな。」

ロー「俺だってそれなりの修羅場は潜り抜けてんだ…知ってるか白猟屋? 戦場でモノを言うのは“速さ”だってな。」

するとローは納刀し、居合の構えを取る。
その構えは、百獣海賊団の者…いや、“剣帝”ライコウと出会った者ならば誰もが見覚えのある構えだった。

マイキー「え…!?」

コラソン「あの構え…!!」

ロー「“零閃”!!」


斬!!


スモーカー「っ!?」

鬼哭から放たれた斬撃。
スモーカーは本能的に“恐怖”を感じ、咄嗟に躱した。
斬撃は凄まじい速さでオブジェに直撃し大きく抉った。

「ギャアアアアア!! 何じゃありゃあ!!?」

「斬撃だ!! 斬撃を飛ばしてぶった斬ろうとしやがった!!」

「にしても何つー速さだ!!」

あまりの速さと威力に戦慄する海兵達。
それを見ていたたしぎとマイキーも呆然としてしまう。

アリスティア「アレは…ライコウさんの“零閃”…!?」

コラソン「ローの奴、まさかライコウさんから伝授されたのか…!?」

まさかローが副船長(ライコウ)の剣技を会得しているとは知らなかったのか、コラソン達は酷く驚いている。

ロー「……良い判断だ、躱してなきゃ痛ェじゃすまなかったな。」

スモーカー「一瞬でも躊躇ったらやられてたな…。」

ローの放った零閃は、ライコウの零閃よりは遅い。
しかしそれでも自然(ロギア)系の能力者であるスモーカーが恐怖を覚えるのだ、ライコウだったらもっと速かっただろう。
ある意味スモーカーは、その点で恵まれてた。

スモーカー「だが、俺もそんなに甘くねェぞ。」

ロー「へェ…じゃあやってみな。」

スモーカーは覇気を十手に纏わせ、全身を煙に変えてローに急接近した。
それを見たローは、再び零閃を放った。

スモーカー「(斬撃は銃弾と同じ真っ直ぐにしか飛ばねェ…アイツの斬撃が当たる箇所は…首!!)」

スモーカーは紙一重で屈んで零閃を躱す。
勢いを殺さず、十手でローの喉を突こうとする。

ロー「“タクト”。」


クィ…


ズボォ!!!


ローが人差し指を動かした瞬間、突然スモーカーの前に長い氷柱が現れ、その氷柱はスモーカーの腹を貫いた。
だがモクモクの実の効果でスモーカーにダメージはなく、そのままの体制でスモーカーはローに向かって十手の突きを放つ。

スモーカー「もらった!!」

しかし…それこそが罠だった。
スモーカーの視線の先にローがいなかったのだ。

ロー「場所を変えなきゃ…見えねェ景色もあるんだスモーカー。」

スモーカー「何っ!!?」

ローはスモーカーの背後に瞬間移動していた。
完全にガラ空きの背後を狙われたことに気付いたスモーカーだったが、時すでに遅し。

ロー「“メス”!!」

ローはスモーカーの胸部に掌底を叩き込んだ。
するとスモーカーの心臓が、まるでサイコロの様に四角形の透明な物体に包まれスモーカーの身体から転げ落ちて行った。

スモーカー「(しまった…!!)」

たしぎ「スモーカーさんっ!!!」

『スモや~~~~~ん!!!!』

心臓が抜けたスモーカーは力なくその場に倒れる。

ロー「これで海軍中将とは拍子抜けだな、少しくらいは出来ると思ってたが…。」

鬼哭を納刀し、冷めた表情でそう告げるロー。

たしぎ「よくも!!」

マイキー「あ。」

たしぎは敬慕するスモーカーをやられたことに激昂し斬りかかるが、ローは“ROOM”を発動し抜刀。見事にローの剣筋に填まったたしぎは、上半身と下半身を境に身体が真っ二つになった。
上半身はバランスを失い、たしぎの上半身はローに向かっていった助走の余韻で地面を刷りながら着地する。

『大佐ちゃ~~~~~ん!!!!』

絶叫する海兵達。

たしぎ「何て屈辱…斬られて息をしているなんて…!! 斬るならば殺せ!!! トラファルガー!!!」

ロー「心ばかりは一端の剣豪か? よく覚えとけ女海兵…弱ェ奴は死に方も選べねェ。」

たしぎ「っ……!!!」

ローの言葉に返す言葉がなく、歯軋りを鳴らすたしぎ。

たしぎ「おのれっ!!!」

コラソン「そんな刀じゃ、ローには届かねェよ…悔しいならもっと強くなるこったな。」

コラソンはローに再び斬りかかったたしぎ(上半身のみ)に手刀を浴びせる。
的確に打ち込まれ、たしぎは気絶して倒れた。

マイキー「俺がやりたかったんだがなァ~…。」

コラソン「一番近くにいたのが俺だ、譲歩くらいしろ。」

アリスティア「それよりも彼らどうします?」

アリスティアが残った海兵達を指差す。

コラソン「放っておけ、どうせすぐには死なねェだろ。」

ロー「尤も、死んだらそれまでに連中だがな。」

その時だった。

?「ホラ! これ軍艦じゃねェか!!」

『?』

ロー達がスモーカーらG-5部隊を背に立ち去ろうとした時、180度逆の方角から賑やかな声が聞こえてきた。
それはワニのケンタウロスである元海賊“茶ひげ”に乗ったルフィ・ゾロ・ロビン・ウソップだった。

マイキー「アレは“茶ひげ”……生きてたのか。」

コラソン「知ってるのか?」

マイキー「ザコです。」

茶ひげ「何だと貴様!!?」

ザコの言葉が耳に入ったのか、激怒する茶ひげ。

ルフィ「おい! あそこに誰かいるぞ!!」

ルフィはロー達の姿を確認すると、懐かしそうな表情を浮かべて手を振った。

ルフィ「あ~~~!!! お前~~~~っ!!!!」

ロー「久しぶりだな…麦わら屋。」

ルフィ、百獣海賊団と再会。 
 

 
後書き
ローが想像以上にパワーアップしています。
ただしライコウと違って“次元斬”や“零閃編隊”は会得できてませんよ。 

 

第81話:オールドメイド

 
前書き
オールドメイドの能力であったネツネツの実が原作でついに出ちゃったので、“アツアツの実”に変更します。
 

 
百獣海賊団と再会したルフィは、とても喜んでいた。
何を隠そう、ルフィが尊敬している大海賊(ライコウ)の仲間なのだ、彼は今どうしてるのか気になってしょうがないのだ。

ルフィ「こんなトコで会えるとは思わなかった!! ライコウは元気か!? 早く会いてェんだ!! アレ? 喋る熊は?」

ロー「ライコウさんはピンピンしてるさ。 べポは今、根城であるワノ国で待っている。」

ルフィ「ん? 誰だお前?」

ルフィはマイキーの姿を見てそう言う。
ルフィ達は2年前のシャボンディではマイキーと出会ってないため顔を知らないのだ。

マイキー「百獣海賊団傘下の“暴獣”マイキー・マットだ。 よろしくな。」

ルフィ「俺はモンキー・D・ルフィ!!! 海賊王になる男だ!!!」

マイキー「ハハハ!! 未来の海賊王の顔を拝めるとは光栄だ。」

マイキーは笑顔でそう対応し握手する。

マイキー「しっかし面白い一味だ。 ガイコツまで仲間とは…。」

アリスティア「百獣海賊団(ぼくたち)は戦闘狂や暴れん坊しか揃っていませんからね。 しかも親玉が呑んだくれですし。」

さりげなく船長のカイドウへの毒を吐くアリスティア。
その時、不意に荒れた広場を見渡していたウソップの声が上がる。

ウソップ「おい、あそこに海軍が倒れてるぞ! …って、あれ? もしかして…。」

ブルック「この荒れ方…それに倒れている海軍。 まさか、これをやったのは全部…。」

コラソン「手を抜いた俺らだな。 スモーカーの部隊だが…縁があるってライコウさんから聞いたぞ。」

ルフィ「やっぱりケムリン達か!! 懐かしいな!!」

2年振りに再会した悪友・スモーカーに喜びの声を上げるルフィ。
しかし声を受けた側の状況は、あまり宜しくないようだった。

ルフィ「…ん?」

ロー「気絶させといたからな…返事は来ねェよ。 それよりもお前ら、研究所の裏へ行くぞ。」

ルフィ「裏?」

ルフィが尋ねる間もなくローは答える。

ロー「そこで大事な話をする。 お前らの仲間も一緒だ。」

するとローはスモーカーの心臓を海兵達に投げつけた。

ロー「俺達はお前らに構ってる場合じゃねェんでな。 くたばらねェように気を付けな。」

ロー達は研究所の裏…合流地点へ移動する。
だが、まさかその先で陸軍大将と遭遇するとはまだ知る由もない。

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-ワノ国-

ライコウ「スイート四将星・スナック、“怪僧”に敗れる…へェ、大金星じゃんか。」

カイドウ「例の世代か?」

ライコウ「ケツが青い割には大した奴だ、相当の腕っぷしだな。」

ライコウは新聞を読みながら、カイドウらと酒盛りをしていた。
スイート四将星とは、かのビッグ・マム海賊団の4人の幹部のことであり、その実力は百獣海賊団の主戦力たる「災害」と呼ばれる師団長と引けを取らない猛者で構成されている。
かつてライコウと一騎打ちを挑み惨敗した“千手のクラッカー”も8億6000万ベリーの大物であり、その戦闘力は四皇大幹部の名に恥じない。
そんなスイート四将星の一角が、最悪の世代に敗れたことは新世界中を震撼させた。ウルージが討ち取ったスナックは、百獣海賊団の古株であるブラックと同格の実力者であるので、他の四皇の注目を集めている。

ヒオ「彼はどうなったんですか?」

ライコウ「リンリンが寄越した軍団…クラッカーだったか? 奴らがウルージを海に追い詰めてフルボッコ。 海に沈めたらしいが遺体は見つかってないそうだ…少なくとも生きている。 そうだろ? オールドメイド。」

ライコウは視線を隻眼の男に移す。
白のラインが入った黒いスーツを着用し、黒い羽毛のコートを羽織り、角の付いたヘルメットを被った男…オールドメイドは頷く。

オールドメイド「あァ…恐らく。 しかしよく勝てたモノだ、キャプテン・キッドやアプーのようなガキ共が手も足も出なかったってのによ。」

ライコウ「能力の相性かもな、ウルージの能力は肉弾戦で最も効果を発揮すると聞く。」

ライコウはそう言って立ち上がる。
すると、ライコウのコートを子供が引っ張った。
ライコウとモネの実子・セツラだ。

セツラ「パパ…。」

ライコウ「……俺は暫く留守になるが、心配するな。 必ず帰ってくる。」

セツラの頭を優しく撫でるライコウ。
帝王のような風格を放つ一方で、父親としての優しさに満ちた笑みを浮かべている。

ライコウ「モネ、お前はどうする?」

モネ「ドレスローザで待ち合わせはどう?」

ライコウ「…分かった。 ヒオ、今はセツラの世話を頼む。」

ヒオ「はい!!」

ライコウはヒオにそう頼み、出発の準備をするのだった。 
 

 
後書き
オールドメイドの設定です。

【オールドメイド】
身長:338cm
年齢:原作開始時点・41歳→2年後・43歳
懸賞金:9億4530万ベリー
誕生日:8月8日
容姿:黒髪で頬と右目に傷が刻まれており、隻眼であるガタイの良い大男。
武器:なし
服装:白のラインが入った黒いスーツを着用し、黒い羽毛のコートを羽織っている。角の付いたヘルメットも被っている。
好きなもの:酒、戦い
嫌いなもの:戦いを汚す者
所属:百獣海賊団/幹部
異名:“焔王”
イメージCV:津田健次郎
性格:一言で言えば戦闘狂であり、戦うことに愉悦を感じる根っからの喧嘩屋。「半端な情けは敵を侮辱する」や「正々堂々戦いに挑む者には弱者であろうと敬意を払うべき」という戦う者に対する理解が深い人物でもある。
戦闘力:“アツアツの実”の能力者で、身体から最高1万度の熱を放つことが出来る。能力の相性上、マグマグの実・メラメラの実・ネツネツの実によるダメージは受けにくい。また、強力な武装色の覇気の使い手であり戦闘力はかなり高い。
モデル:ドン・アッチーノ(ONE PIECE) 

 

第82話:海賊同盟

-研究所裏口の山-

コラソン「お前らは偶然ここへ来たんだろうが…この島には“新世界”を引っかき回せるくらいのある“重要な鍵”が眠ってる。」

仲間達と再会したルフィらは、ロー達百獣海賊団の話を聞いていた。

ロー「麦わら屋……お前、誰かの下につきてェってタマじゃねェよな?」

ルフィ「ああ! 俺は船長がいい!!」

ロー「だったらウチと同盟を結べ! 上手くいけば、四皇を一人…引きずり降ろせる。」

『!!?』

ローの発言に、驚愕する一同。
ロー達百獣海賊団は、海賊界の皇帝と呼ばれる四皇の一角だ。「四皇と手を組み、四皇を潰す」…それはあまりにも規格外な内容だ。
勿論、いきなり四皇を倒せると言った訳ではない。順を追って作戦を進めれば…そのチャンスを見出だせるという話だ。

ルフィ「その四皇って誰の事だ? トラ男。」

ナミ「ちょっとルフィ、何興味出してんのよ!? 相手は四皇よ!? こんな奴信用できない!!」

ロー「(トラ男…。)」

フランキー「いや、話は最後まで聞いてからの方がいいんじゃねェか? それにいつか戦うんだ、俺達にとっちゃあスーパー悪くねェ話だ。」

コラソン「そう言ってくれると助かるよ。」

コラソンは現在の四皇の名を順を追って口にしていく。
四皇同士のタイマンなら最強とされ、「この世における最強生物」と称される“百獣のカイドウ”。
ライコウ・ミホーク・イリスと肩を並べる世界四大剣豪の1人“赤髪のシャンクス”。
四皇の中でも唯一の女性で、大好きなお菓子のためなら国をも滅ぼす女傑“ビッグ・マム”シャーロット・リンリン。
海賊王の宿敵“白ひげ”エドワード・ニューゲートを討ち取った、2つの悪魔の実の能力を持つ唯一無二の存在“黒ひげ”マーシャル・D・ティーチ。
この4人が、現在の新世界の海を支配しているのだ。

ゾロ「で…誰が相手なんだ?」

ロー「黒ひげかビッグ・マムだ…状況次第で変わるが、一応はビッグ・マムを標的としている。」

サンジ「ま…ウチとしてもビッグ・マムの方がありがたい。 魚人島で喧嘩吹っ掛けちまったことだしな。」

実はルフィ達は新世界に入る前、魚人島でビッグ・マムといざこざを起こし喧嘩を売ったばかりなのだ。
きっかけはやはりお菓子。納期が間に合わなかったところをルフィが庇い、最終的には魚人島の件を見逃す代わりにルフィ達が標的となったのだ。

ロー「もし手を組んで協力したら、ライコウさんが褒美をやるらしい。」

ナミ「え? 何!? お宝!!?」

『おい!!!』

先程まで「信用するな」と言っていたナミは、目を輝かせてローに抱き付いて褒美の内容を聞き出そうとする。
あまりにも早い変わり身に、コラソンやマイキーも目を白くする。

ロー「確か…“歴史の本文(ポーネグリフ)”だった筈だ。」

ロビン「四皇が、ポーネグリフを!?」

さすがのロビンも驚いた。
四皇がポーネグリフを所持していたのは初耳のようだ。

ナミ「ねェトラ男君…四皇は“海の皇帝”なんでしょ? 財宝はい~っっぱいあるわよね♪」

『やめんかーーー!!!』

ローを誘惑しようとするナミに全員がツッコミを炸裂。
しかしローはいつも通りの冷静さで口を開く。

ロー「…一応、前例はある。 カイドウさんは大好物の酒を奪おうとしたりする奴は許さねェが、財宝には興味は無い。 ライコウさんとも掛け合って交渉しようか?」

ナミ「よろしくお願いします!!」

ウソップ「ナミが買収されたぞ…。」

一味の中でも良識のある航海士(ナミ)が買収される。

ロー「どうだ、麦わら屋。」

ルフィ「よし! やろう!!」

ルフィは堂々と宣言するが、ウソップらが反対した。

ウソップ「お、俺は嫌だぞ!! こんなデンジャラス軍団と一緒なんだろ!!?」

チョッパー「ルフィ!! まだ“四皇”を視界に入れるなんて早すぎるよ!!」

ロビン「私はあなたの決定に従うけど…海賊の同盟には“裏切り”がつきものよ?」

すると、ルフィはこう言った。

ルフィ「心配すんな!! ライコウとは俺知り合いだし、トラ男達もいい奴らだと思ってる!! もし違ったとしても心配すんな!! 俺には2年間修行したお前らがいるからよっ!!」

アリスティア「それに君達の評判はカイドウさんも知っている。 腕も立つんだろう? 僕らとしても君達は信用に値するよ。」

すると…。

ナミ「や…やだも~/// 照れる~///」

ウソップ「そ、そりゃな! 俺達は頼りになるけど…///」

チョッパー「よ、四皇にも認められたって、嬉しくねェぞコノヤロが~~///」

フランキー「よ…よし!! 俺達にどんと任しとけ!!! ゾロ達もビビってやがったら俺達が説得を!!!」

コラソン「チョロいなおい…デレデレじゃねェか。」

茶ひげ「おい待てェ!! 俺は無視か!?」

その時、鎖で拘束された茶ひげが叫んだ。
今まで無視されたのが我慢ならなかったらしい。

コラソン「言いてェことでもあるのか? だったら言えばいい。」

茶ひげ「え? じゃあお言葉に甘えて……お前らはもうすぐ“M(マスター)”に殺される!! 俺はお前らの世代の海賊達が大嫌いだ!!」

茶ひげは口を開いた。
自分の身に起きたことと、この島の主を。 
 

 
後書き
「現時点の手配書が気になる」という意見が多かったので、載せました。


【百獣海賊団】
百獣海賊団船長“百獣のカイドウ”……24億ベリー
百獣海賊団副船長“剣帝”ライコウ……17億ベリー
百獣海賊団マンモス師団団長“旱害のジャック”……10億ベリー
百獣海賊団航海総長“海賊男爵”バロン・ブラック……8億3000万ベリー
百獣海賊団参謀総長“無音の道化師”コラソン……6億4000万ベリー
百獣海賊団船医総監“死の外科医”トラファルガー・ロー……5億ベリー
百獣海賊団ハーピー師団団長“雪害のモネ”……7億5900万ベリー
百獣海賊団参謀次長“海姫”ナリウス・アリスティア……4億8000万ベリー
百獣海賊団航海次長“蟲姫”マナト・ヒオ……4億7900万ベリー
百獣海賊団双将軍“拳豪”サボ……6億8300万ベリー
百獣海賊団双将軍“橙色御前”コアラ……4億ベリー
百獣海賊団幹部“焔王”オールドメイド……9億4530万ベリー
百獣海賊団マンモス師団戦闘員シープスヘッド……3億9000万ベリー
百獣海賊団マンモス師団戦闘員ジンラミー……2億2000万ベリー
百獣海賊団傘下“アイアンボーイ”スコッチ……4億3500万ベリー
百獣海賊団傘下“剣鬼”マイ……5億4000万ベリー
百獣海賊団傘下“暴獣”マイキー・マット……5億6000万ベリー
百獣海賊団傘下“赤旗”X(ディエス)・ドレーク……4億4000万ベリー

【百獣海賊団の関係者】
“犯罪界の絶対王者”ギネス・スパーツィオ……17億ベリー

 

 

第83話:エイセイの依頼

「最悪の世代」。
それは、2年前のシャボンディ諸島にて一堂に会した“10人の億超えルーキー”達と、かの「世界最強の大海賊」白ひげの後釜に座った海賊“黒ひげ”ティーチを加えた、一時代の終わりと始まりの狭間に生まれた戦乱の運命を背負う問題児達。
白ひげ亡き後、新世界へ飛び込んで海を荒らしに荒らし、大事件が起きたと思えば火中にいるのはいつもこの世代の海賊達だ。
その世代の中でも一際凶暴凶悪なティーチとキッドが暴れ回っており、世界政府に宣戦布告し天竜人を殴り飛ばしたルフィと共に問題視されているのだ。
なお、茶ひげの「茶ひげ海賊団」を壊滅させたのは“魔術師”バジル・ホーキンスであり、命からがら逃げ出して辿り着いたのがこのパンクハザードだという。

ルフィ「ふ~ん…。」

サンジ「アイツらが、か…。」

ロー「新世界の勢力図を掻きまわしてるが、未だに四皇の顔を拝めてない奴らばかり…“海賊ごっこ”をしてる相手だ、構う必要はねェぞ麦わら屋。」

キッドらを“海賊ごっこ”と嘲笑うロー。
世代的にはルフィやキッドと変わりないが、その気迫は四皇幹部に恥じず、ナミ達は思わず気圧されそうになる。

茶ひげ「ここは元々、政府の科学者べガパンクの実験施設で兵器や薬物の開発と実験が繰り返されていた場所だ。 島にゃあ監獄代わりに一部の囚人達が連れて来られてモルモットの様に“人体実験”されていたらしい……!! ところが4年前べガパンクが化学兵器の実験に失敗し、3つあった研究所の2つが吹き飛んだ…!! ここがその研究所後だ!!」

ルフィ「!? 道理でメチャクチャな訳だ…!!」

茶ひげ「爆発は高熱と有毒物質をまき散らし、島の命という命を奪い去った。 だがその状況で政府の奴らは実験体の囚人達を置き去りにし、一人残らず逃げ出して島を完全封鎖した!! 残された囚人達は唯一形をとどめた研究所に立て籠り、島中に立ち籠める毒ガスから身を守っていたそうだ。 死ななかった者達も強力な神経ガスのせいで主に下半身の自由を奪われ、とても未来に希望は無かった…だが、そうして1年が過ぎた頃…この島へ降り立ったのが、慈悲深き我らが“M(マスター)”だ…!! 彼は特殊な能力で島中の毒ガスを浄化し、歩く事もできなくなっていた 囚人達に化学力の足を与え…部下として受け入れてくれた!!」

涙なくして語れぬその話に、フランキーとチョッパーは「マスタ~~!!!」と叫ぶ。

茶ひげ「ここに上陸したのは、今から2年前の事。 まだ有毒物質がかすかに残り息をすれば吐き気がした…。 生きる力など残っちゃいねェ…人生ここまでかと諦めた所へ現れたのが、俺と同じ足を失った元囚人達…そして“M(マスター)”だ!!」

茶ひげはこう言った。
「同士達の足を奪ったベガパンクが悪魔なら、“M(マスター)”は心優しき救いの神だ」と。

茶ひげ「更に数ヶ月前の事だ…2人目の救いの神…ドクトル・ホグバックが島にやって来た!! 自由に歩けねェ俺達に対して彼はその医術で足をくれたんだ!! 動物の足を!! もう二度と歩けねェと思ってた俺達は喜びに涙がこぼれた!!」

チョッパー「ドクトル・ホグバック!!?」

ドクトル・ホグバックの名を聞き、驚愕するチョッパー。
その驚きぶりに、ロビンは不思議そうに尋ねる。

ロビン「知ってるの?」

チョッパー「医者の世界じゃ、外科手術なら世界一といっても過言じゃないくらいの天才外科医さ。 奇跡のような手術で多くの人々の命を救ったことで有名なんだ。 俺だって尊敬するくらいさ。」

ロビン「じゃあ、あなたも尊敬してるのかしら? トラ男君。」

ロビンはローに話しかけるが、返事が来ない。
むしろ、顔を青褪めえている。それもローだけでなく、百獣海賊団の者達全員が。

ロー「……コラさん。」

コラソン「あァ…さすがにヤベェな…。 あの野郎、まさかここまで手を伸ばしてたとはな……!!」

アリスティア「これはマズイ方向に行きそうですね…。」

マイキー「しょっぱなからこの展開はキツイ……。」

ウソップ「お……お前ら、大丈夫か?」

百獣海賊団のただならぬ雰囲気に、冷や汗を掻くウソップ。

茶ひげ「…とにかく、この島で誰が偉いか分かったな? 今や誰も寄りつかねェこのp「何をしている?」…な、誰だ!!?」

突如響いた男性の声。
茶ひげは聞き慣れぬ声に反応し、侵入者と認識して叫んだ。

?「……潜入捜査先の隠れ家にしていた場所に、こんな大物達が揃うとはね。」

下駄の音を鳴らして、コートを羽織った着流し姿の剣客が現れた。
その姿に茶ひげは震え、ロー達百獣海賊団は一斉に構え、ロビンは冷や汗を流した。

茶ひげ「バ…バカな…何故貴様がここにいる!!?」

ルフィ「? 何だ、知ってんのか?」

ロビン「まさか…!! あなたは陸軍大将・ランドウ!?」

『陸軍大将ォォォ~~~~!!!?』

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時同じくして、ここは聖地マリージョア。
4年に1度行われる世界会議(レヴェリー)が迫る中、議長である“世界皇帝”エイセイはある人物と会話していた。

エイセイ「……君が世界徴兵で抜擢されたイッショウか。 噂は聞いているよ。」

イッショウ「恐悦至極に存じやす、皇帝の旦那。」

エイセイ「ハハハ…敬語は止してくれ、僕は君よりも若造なんだから。」

エイセイの前に立つ、盲目の男性。
彼は海軍の最高戦力である4人の海軍大将の1人……“藤虎(ふじトラ)”イッショウだ。
重力を自在に操る剣士である彼の実力は、海軍最強であるイリスすら高く評価する程であり、陸軍元帥のジルドすら「とんでもねェ奴」と称されているのだ。

エイセイ「んで…ここへわざわざ何の用だい? 君が1人で来るってことは……僕じゃないとマズイ相談でもあるのかな? 生粋の海兵でない君のこと…仕掛けるなら今だよ?」

エイセイの瞳が、イッショウを捉える。
するとイッショウが、「敵いやせんね」と笑いながら口を開いた。

イッショウ「旦那は世界会議の議長って面を持ってると聞きやす……そんでもって、あっしからアンタに頼みてェことがある。」

エイセイ「……何だい?」

イッショウ「それは…王下七武海制度の完全撤廃の援助でごぜェやす!!」

エイセイはイッショウの頼みに、眉をひそめる。

イッショウ「正直な話…あっしァ世界政府は神じゃあねェと思ってやす。 たァ言っても、あっし1人じゃ出来るこたァ限られやす。 だがアンタは違う。 世界皇帝と恐れられるアンタなら、事を上手く運べやせんかね?」

すると…。

エイセイ「フハッ!! アハハハハハハ!!」

エイセイは腹を抱えて盛大に笑い出した。
「おかしな奴だ」と言わんばかりに笑い飛ばす。

エイセイ「ハハハハハ!! まさかまた(・・)海軍大将の口からその言葉を聞くとはね!!」

イッショウ「……また(・・)、ですかい?」

エイセイは語り始める。
実は2年前のクロコダイルの逮捕後、イリスは人知れずエイセイの元を訪れていたという。
そして彼女も、先程イッショウが言った言葉を口にしたという。

エイセイ「…僕も、七武海は消えるべきだと思う。 海軍や政府上層部が秩序維持を名目に王下七武海を容認しているのは間違ってる。」

エイセイは世界政府を内側から変えようという思想の持ち主だ。
その考えは元天竜人だったあの陸軍元帥・ジルドも共感しており、事実上政府内で派閥争いが起こっていると言える。

エイセイ「……君の頼みは承諾するよ。 その代わり、僕から君に頼みがある。」

イッショウ「何ですかい?」

エイセイ「…これは生粋の海兵でない君じゃないと出来ないマネだ。 多少立場が危ぶまれるけど…その際は僕が保障する。」

エイセイはこう言った。
「君なら、公衆の面前で土下座くらい出来る…よね?」と。 
 

 
後書き
はい、藤虎の土下座フラグ立ちました。(笑)
この作品ではすでにここから始まってるんですよ、後々起こるドレスローザの大事件は。 

 

第84話:ランドウの妥協

陸軍大将(ランドウ)の襲来に、緊張感が漂う。
さすがの百獣海賊団もこれは想定外の事態であり、対処に戸惑う。

ランドウ「無益な戦いは好みませんが…ここで一体何を?」

コラソン「アンタこそ何してんだ、ここは政府関係者立ち入り禁止だろ…。」

ランドウ「私は元帥命令でここへ潜入捜査しています。」

ロー「潜入捜査…?」

ランドウは自らの目的を語り始めた。
近年、このパンクハザード周辺の海で子供達の誘拐事件が多発しているらしい。本来なら海軍が処理する筈なのだが、人手不足等の理由で陸軍にも回ることがあり、陸軍通信部にも子供誘拐の通報が時々入る。
しかし、それが新聞の記事になる頃には海難事故・海賊事件・失踪事件に変わっていて、真相は未だに不明だとのこと。

ランドウ「後ろの子供達の数と通報内容を考えると…誘拐犯がこの島にいると解釈します。」

ジルドは「世間に出回った記事が虚偽の報で、G-5内部の誰かが真実を揉み消した」と読んでいる。
つまり…ジルドの読みは当たっており、真犯人とその黒幕はパンクハザードにいるということだ。

ランドウ「ルフィさん…あなた方がここへ来たことの理由は追及しませんが…後ろの子供たちのことはどう説明するおつもりで? 返答次第じゃ、私は“麦わらの一味”を全員拘束し海軍に引き渡します。」

ランドウは刀をチャキッと鳴らし、柄に手を添え構える。

コラソン「(クソ、陸軍大将は想定外だ…むやみやたらに動く訳にもいかない、どうすれば…!!?)」

ランドウは“鷹の目”からも高く評価される程の剣豪。
非能力者とはいえ、海軍大将と同格扱いされてることを考えると下手に争うのは思わぬしっぺ返しを食らいかねない。
今後の計画に支障をきたせないように対処する必要がある。

コラソン「……アンタは、どう出るつもりだ?」

ランドウ「そうですね…。 私としては、偶然ここに来た…或いはこの島の主をボコりにきたのなら“白”。 この島の主に加担してるのなら…“黒”と判断します。」

ロー「(やはりこの島のことを粗方知らべてるらしいな。)」

そんな中、チョッパーがランドウの前に立った。

チョッパー「ランドウって言ったか!? 俺の話を聞いてくれ!! 後ろにいる子供達について教えたい!!」

ランドウ「……。」

チョッパーは百獣海賊団の面々と再会する前…研究所内での出来事を語った。
全身スーツ軍団に捕らえられた後脱出したのだが、その時「ビスケットルーム」という保育園のような雰囲気の部屋に迷い込んだ。そこで出会ったのが、あの子供達だという。

ランドウ「成る程。 しかし…あの巨躯については理解しがたいですね。」

チョッパー「それは同感だ、俺だって初めてなんだ…巨人化する病気なんて…。」

アリスティア「それに関してですけど…。」

ふと、アリスティアが手を挙げる。

アリスティア「世界政府は何百年も前から“人の巨大化”の研究を推進してますので、実験台の可能性が高いかと。」

チョッパー「何だって!!? 子供達が…!!? 何のために!!?」

すると、ローが続いて口を開く。
彼曰く、政府は好きなだけ巨大な兵士を生み出して強力な軍隊を作るのが目的だという。

ロー「だがそれだと妙だな。 巨大化の実験は“世界皇帝”の命令で中止になった筈だ…奴の強大な権力は“M(マスター)”とやらも盾突くことは出来ないだろう。 もしそうじゃねェとしたら…。」

コラソン「“M(マスター)”とやらにゃあ、世界皇帝も迂闊に手ェ出せねェ程ヤバイ“後ろ盾”がいるってことになるな。」

ランドウは目を細め、子供達を見やる。
子供達はランドウに懇願してるかのような視線を向けており、さすがのランドウも困り果てた。

ランドウ「エイセイさんですら迂闊に手を出せないとなると…厄介ですね。 だったら“別ルート”を使ってみましょう。」

チョッパー「え…?」

ランドウ「任務に私情をはさむのは恥ずかしいですが、子供達のことを考えると一時的に手を組んだ方がいいかも知れませんね。」

チョッパー「!! じゃあ…!!」

ランドウ「ただし、任務が終わり次第君達を敵とみなします。 元帥と違ってそこまで甘くありません。 腐っても軍人です、これでも妥協した方……ありがたく思ってくださいよ?」

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-新世界、とある島-

ライコウ「あーあー…ったく、食事中に絡みやがって。 そば零しちまったからまた買わなきゃなんなかったじゃねェかよ…とっととパンクハザード行ってルフィの顔拝みたかったんだぞこっちは。」

大きく欠伸をするライコウは、ズルズルとそばを啜る。
ぼやくライコウの後ろには、驚愕の光景が広がっていた。
何と、血塗れになった海兵達が、ほぼ壊滅状態で無惨に密集していたのだ。沖の方では軍艦も数隻真っ二つに切断されており、黒煙を上げて少しずつ海に沈んでいる。その上パシフィスタ30体ぐらいが戦闘不能状態に陥っており、死屍累々の惨状となっている。
何より驚きなのは、ライコウ本人は一切ケガを負っていないことだろう。

ライコウ「ったく、ホントにどうしようもねェ海兵だな…俺の首を取って昇格を狙ってただろうが、俺を本気で捕えたきゃあ、海軍大将全員引っ張ってくるこったな。」

ライコウは黙々とそばを啜る。
その背後に、ピンク色の長髪とはみ出した口紅が特徴の子供が。

?「(バレんなよ…。)」

彼女が手を伸ばすのは、天丼。
いつの間にか割り箸を片手に、食おうと企む。だが…。

ライコウ「他人様の飯無断で食おうたァ、ちょっとどうかと思うぞジュエリー・ボニー。」

ボニー「!!」

ライコウ「赤犬にとっ捕まったと聞いたが、脱走したようだな。」

ライコウの飯を盗み食いしようとしたのは、「最悪の世代」の1人である“大喰らい”ジュエリー・ボニー。
黒ひげに返り討ちにされた後、当時大将だったサカズキに捕らえられたはずだったが……どうやら海軍から脱走して逃亡生活を送っているようだ。

ライコウ「天丼はやるよ、腹減ってんだろ。」

ボニー「気が利くねェ。」

ボニーは割り箸を割り、天丼を食らう。

ライコウ「隠れ蓑でも探してんのか。」

ボニー「まぁね。」

惨状を背景に食事する2人。
どこかシュールである。

ライコウ「ウチに入るか? 美味い飯と美味い酒ぐらい用意できらァ。」

ボニー「ナンパかよ?」

ライコウ「勧誘っつーんだよ。 俺は既婚者だ、取って喰うのは嫁だけだ。」

ボニー「家庭持ってんのか。」

ライコウ「一児のパパだ、文句あるか?」

ボニー「全然。」

ライコウ「ウチは裏切りにゃ容赦しねェぞ。」

ボニー「何でアタシが入ること前提なんだよ。」

ライコウ「オイオイ…せっかく親切に海軍から身を守らせようとしてんだ、親切心ぐれェ察しろよ。」

ボニー「飯くれたのはありがたいさ。 でもアンタの下につくかどうかはアタシが決める。」

ライコウ「……ま、当然の筋か。」

ライコウはお茶を飲み干し、「ごちそうさまでした」と言ったのだった。 

 

第85話:キャンディ

 
前書き
先日、84話の感想で「陸軍大将だからってあの場のメンツ全員敵に回しても100%勝てると思えない」という感想が届きました。
実はあの話には裏話があります。
ランドウ自身、あの面子を全員相手取るのは無謀であることは承知しています。本気を出しても勝てる見込みはまず無いです。
ああいう態度をとるのは、「決して陸軍は海賊の味方でない」という意思を表しているんです。まぁ、加担してる時点でどうかと思いますが。
 

 
(不本意だが)陸軍大将・ランドウも加担することになり、ルフィ達は早速動くことになった。
ゾロ・サンジ・ブルック・アリスティアが島の探索に、マイキーは暇潰しとして残党狩りに、残り全員が子供達の保護及び留守番となった。

チョッパー「トラ男! すまねェ、手を貸してくれて…。」

ロー「俺は暇でやっただけだ、礼を言われる筋合いはない。」

コラソン「素直じゃねェな~。」

ロー「黙ってろコラさん。」

皆が対策を練っている間、チョッパーはローと共に子供達の病気を解明するため、検査をしていた。
チョッパーの手元には、ジルドがランドウに渡した医学書が。
ジルドが渡した医学書は、ジルド自身が長い月日を費やして完成させた世界中の医療が載っている。
外科手術や精神医学、漢方薬など、医療に関する様々な知識がてんこ盛り。中には麻薬や違法薬物の副作用と対処法も載っていた。

チョッパー「ランドウ、お前の上司ってスゴイ人だな!! ドクトリーヌの医学書程じゃないけど、かなり正確だ。」

ランドウ「……それは、誉め言葉と受け取りましょう。」

チョッパー「なぁ、本当に子供達のことが解決したら俺達と戦うのか?」

ランドウ「ケースバイケースで決まるので。」

革命軍などの反政府勢力を対象としている世界陸軍は本来、海賊関係の事件は管轄外である。しかし、それは時と場合によって海賊も対象となることもある。
ランドウ曰く、ルフィ達を捕縛対象と見なしているのは、立ち入り禁止エリアであるパンクハザードに潜り込んだ「不法侵入罪」と、海軍部隊殲滅による「現行犯」だという。

チョッパー「何か複雑だな…。」

ランドウ「海軍と違って不自由な面もあるだけです。 海賊に同情される筋合いはありませんよ。」

すると、子供達の病気の結果が漸く出た。

チョッパー「出たぞ…!! でもこれって…!!!」

コラソン「? 何だ? 何か出たのか?」

ロー「そうだな…悪い方が当たった。」

「ねー、私達病気だった? タヌキちゃん!!」

その時だった。

?「…!!! う…!」

?「シンド!! どうしたの!? また寒い!!!?」

チョッパーが病気の結果を出すと同時に、シンドという少年が突然苦しみ始めた。
彼の傍にいた少女・モチャは慌てる。

シンド「苦しい…オエッ!」

モチャ「大丈夫!? シンド!!」

ルフィ「おいチョッパー! アイツ苦しいって!! 治してくれ!!」

フランキー「オイオイ! 何だ何だ!?」

シンドを始めに子供達が悲痛の叫びを上げながら倒れていく。
ルフィやロビン達も困惑を隠せない。

ナミ「チョッパー、今検査したんでしょ!? 本当に病気だったの!!?」

チョッパー「…違う!」

ナミ「?」

するとチョッパーはシンド達に、「“今”欲しい物」と「この時間どうしているのか」という質問した。

シンド「…いつも…? ハァ、ハァ…検査の時間があって…そのあと…キャンディを貰うんだ…ハァ…ハァ…。」

シンド達曰く、そのキャンディーはシュワシュワと煙が出てきて美味しいらしい。

シンド「そうだ…アレを食べたら…!! オエ…ハァ…ハァ…アレ食べたらいつも幸せな気分になるから…楽になるかも…!!」

その言葉にコラソンは目を見開き、茶ひげに言葉を投げかけた。

コラソン「茶ひげ!! お前は何を知ってる!!? この子供達は病気なんかじゃねェぞ!!!」

茶ひげ「何を言ってる? 俺は外回りで研究所内の事はそう詳しかねェが…そのガキ共は難病をかかえてる…慈悲深い“M(マスター)”はわざわざ他の島からそいつらを預かって彼の制約技術で治療を施している!! 愛の科学者だ!!! 見ろ!! その証拠に研究所から離れたガキ共が今う「ふざけてんのかァ!!?」フグォ!!?」

コラソンは激昂し、覇気を纏った右足で茶ひげの鳩尾を蹴った。
本気で蹴ったので、茶ひげは目を白くして吐血する。

コラソン「てめェの上司(マスター)はどういう頭してんだ!!? “NHC10(エヌエイチシーテン)”を投与するなんて正気じゃねェぞ!!!」

ランドウ「“NHC10(エヌエイチシーテン)”!!?」

ランドウも目を丸くさせ、衝撃を受ける。

ナミ「え…何、その“NHC10(エヌエイチシーテン)”って…?」

ロー「世界でも決められた国の決められた医師しか扱っちゃいけない“覚醒剤”だ…病気の治療でもこの薬を中毒に達する極限の量まで使う事はねェ。 恐らく、研究所から逃がさないように少しずつ取り込ませ続けたんだろう…。」

コラソン「おい、その“M(マスター)”はどこにいる!!? ブッ殺してやっから早く教えろ!!!」

茶ひげ「てめェ、イカレてんのか!!? “M(マスター)”に何をする!!?」

コラソンと茶ひげが激しく言い合う。

ランドウ「(覚醒剤による慢性中毒…マズイ!)君達! これ以上そのキャンディとやらはもう摂取しちゃいけない!! 命を縮めて親に会えなくなるぞ!!」

ランドウはそう叫ぶ。
すると、シンドの様子が急変した。

シンド「何で…?」

「シンドどうしたの!!? 顔が凄く恐いよ!!」

ランドウ「(くっ、ここまで来たら仕方ないか…!)」

シンド「キャンディ取ってきてよォ!!!」


ドゴォン!!!


覚醒剤入りのキャンディ欲しさに変貌したシンドがキャンディが食べれない苛立ちから、ランドウを思いっきり殴った。
しかしそこは世界陸軍の大将…片手で受け止め制止する。

ロビン「何なの、あの腕力!!?」

ウソップ「(いや、それを片手で受け止めるあの男も何つー腕力だよ!!?)」

「わーーー!!」

「シンドやめてーー!!」

「こんな乱暴なシンド見た事ないよ!!」

突如凶暴化したシンドに、泣き喚く子供達。
そんな中、ランドウは子供達に声を掛けた。

ランドウ「訊くが、彼は巨人族か!?」

「ううん、シンドは巨人族じゃないよ!!」

その言葉に驚愕する一同。
何でも、この島に来たときは全員普通の大きさだったらしく、しかもパンクハザード(このしま)にいる時間が長い程、身体が大きいという。
チョッパーとローの医学知識の中で、普通の人間が巨人族の様になる病気など聞いたことが無い。

ロー「脳下垂体のホルモンが異常高進さてるのは元々じゃねェってことなら“人体実験”されてるってなるぞ。」

チョッパー「でも、一体何をしたんだ!? “M《マスター》”の奴、こんな幼い子達をドラックで押さえつけて…!!」

医者として許せない惨状を目の当たりにし、歯を鳴らす程怒りを抑えるチョッパー。

ルフィ「おい! やっていいか!!!?」

ウソップ「ダメだルフィ!! どけ!!!」

ウソップは催眠効果がある“爆睡星”を放ち、子供達を沈めた。
子供達は安らかな顔で爆睡している。

ナミ「やっぱり誘拐された子供だったのね…。」

すると、チョッパーがルフィに懇願した。

チョッパー「ルフィ…こいつらかわいそうだ…!! 家に帰りたがってた…親に会いたがってた!! ……助けてやろうよ!!!!」

ロビン「ルフィ…どうするの? 決定権は貴方にあるのよ。」

ルフィ「んー…じゃあ全員親の所へ送り届けてやるか…!!」

ロー「待て、麦わら屋! 問題は山積みだぞ、簡単に言うな!!」

ロビン「…そうね、それにまだ全てが予想でしかない…元凶に尋ねなきゃ!! 何も確定しないわ!!」

ロー「お、おい!! ニコ屋!!」

ルフィ「…うし!! 俺達はさっきの研究所へ行こう!! “M(マスター)”に会いに!!」

ロー「……。」

まともに意見も言えずに方針が決まり、呆然とするロー。
そんなローに、コラソンは肩に手を乗せこう言った。
「俺達の思う“同盟”と少しズレてるかもしれない」と。 

 

第86話:錦えもん

さて、一方のマイキーはある侍を救出していた。

マイキー「敵は全滅…何とか無傷で終わったな。」

?「かたじけないっ!! この御恩、生涯忘れぬ!!!!」

マイキー「いやいや、礼を言われるほどのことじゃねェって。」

マイキーと共にいる1人の侍。
彼はつい先程、全身スーツ軍団と交戦しており数に圧されピンチに立たされていた。
そこに丁度残党狩りをしていたマイキーが現れ、急遽タッグを組んで全滅させたという訳だ。

マイキー「俺はマイキー・マット…マイキーって呼んでくれ。」

?「うむ!! 拙者は名を錦えもんと申す!!! 生国と発しますはワノ国・九里(クリ)にござんす!!!」

侍・錦えもんはマイキーにそう挨拶する。

マイキー「クリ…? もしかして、光月家の?」

錦えもん「!!? な、何と…それをどこで!!?」

マイキー「俺は百獣海賊団の傘下…ウチの一味はワノ国の将軍と古い付き合いらしくてさ、カイドウさんとライコウさんから粗方聞いてんだ。」

錦えもん「お、お主!! カイドウ殿とライコウ殿の部下でござったか!!!」

20年近く前に起きた海賊襲撃事件をあっという間に解決させた百獣海賊団の件は、錦えもんも知っている。
百獣海賊団はワノ国の恩人なのだ。

マイキー「んで、何でここへ?」

錦えもん「うむ…実は…。」

錦えもんは主君である光月おでんの従者として、兄弟分であるミンク族の住むモコモ公国へ向かう際にある海賊(・・・・)の襲撃に遭い、散り散りになってしまったという。

錦えもん「おでん様が後取り、モモの助様と同志であるカン十郎と共に何とか追ってから振り切ったものの、肝心のおでん様は捕まり……。」

マイキー「そんなことがあったのか…その海賊の正体は?」

錦えもん「拙者よりも大きい、まるで魔女のような妖しい輩であった…槍使いなのだが、かなりの手練れだ。」

マイキー「女海賊か……。」

ワノ国の侍は、凄まじい戦闘力を誇っている。
世界政府の軍隊である海軍ですら容易に手出し出来ない程であり、新世界の強者達の中にもワノ国出身の者もいる。
そんな彼らでも敗北に追い込める敵…恐らく、四皇幹部クラスかレイリーのような「生ける伝説」ぐらいだ。

錦えもん「それよりも拙者は、一刻も早くモモの助様を救出したい!! だが敵は未知数、お主の力を借りたい!!」

マイキー「……OK、俺も興味あるんだ。 ワノ国の武人の戦い方に。」

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-時同じくして、ワノ国-

ジャック「マイは大丈夫なのか?」

ブラック「ここでくたばる(タマ)とは思えんが、本当に大丈夫か?」

マイ《えぇ…何とか一命を取り留めました。》

ブラックは「そうか…」と安堵したように呟く。
実はマイは先程、ナワバリを荒らしに来た「最悪の世代」の“海鳴り”スクラッチメン・アプーと交戦したのだ。
アプーの奇想天外な能力に対し、マイは剣一本。激しい戦闘の末アプーは惨敗を喫したがマイも深手を負い療養中とのこと。

マイ《すみません…思いの外、手古摺ってしまって…。》

ブラック「謝るな、今回の件は仕方ねェ。 ナワバリを護り切ったことを考えりゃあ安い犠牲だ。」

そう言うブラックだが、正直困っていた。
最悪の世代は新世界を掻きまわしている。“白ひげ”という抑止力が無い今、一々面倒事を起こす彼らを煙たがっている。
何より時期が時期。今ここで最悪の世代達も戦うと作戦が遅れて支障をきたす。

ブラック「もしやるなら、同盟を組んだところを一発ドカンとだな…。」

カイドウ「だったら、イカズチを呼んで来い。」

ブラック「!! ま、まさか“三妖星”をか!?」

三妖星。
それは、百獣海賊団の切り札ともいえる3人の幹部のこと。
この百獣海賊団の主戦力は、ジャックやモネが率いる4つの師団。しかしそれらに匹敵する戦力が百獣海賊団に存在している。それが“三妖星”なのだ。
3人共動物(ゾオン)系幻獣種の能力者であり、その戦闘力は海軍大将と互角だという。

カイドウ「そのガキ…敵にちょっかいを掛けるのが大好きでわざわざ怒らせてから逃げるのが趣味らしいじゃねェか? だったら、お望み通り“四皇(このおれ)を怒らせた”として血祭りにあげてやる。 オールドメイドも向かわせろ。 暇ならお前も付き合え。」

ジャック「なら皆殺しですね、情けは厄介な復讐を生む。」

オールドメイド「情けを掛けても標的を変えると思うけどな。」

「「「!!」」」

いつの間にか現れたオールドメイドに目を丸くする3人。

カイドウ「そりゃあどういうこった?」

オールドメイド「ライコウさんの情報をもとに推測してみたが…恐らくそのアプーって奴の標的は四皇“赤髪のシャンクス”。」

ジャック「何故そう言い切れる?」

オールドメイド「理由は簡単…第一印象で潰しやすい四皇だから。 だが連中は全く理解していないから赤髪(やつ)の心配をする必要は無い。」

シャンクス率いる赤髪海賊団は、傘下がおらず戦力も少ない。それにシャンクスは隻腕…かなりのハンデである。
だが、それは大きな誤りだ。シャンクスは片腕で白ひげやカイドウと張り合い、少ない戦力で他の四皇と同格に扱われている。
それに本気になったシャンクスを相手取ったのは、世界でも数える程度。シャンクスの真の実力を拝んだ者はごくわずかであり甘く見られがちなのだ。
つまり、シャンクスは「四皇の中で一番戦力が少ない」のであって、純粋な腕っぷしなら海賊界最強クラスであるのは変わらないのだ。

オールドメイド「赤髪はライコウさんと“鷹の目”、海軍最強の“黒龍”と並ぶ世界四大剣豪の一角。 徒党を組んで勝てるような相手だと思ったら大間違いだ。 徒党を組もうが騙し討ちしようが、そのアプーとやらは赤髪に勝てない。」

カイドウ「ウオロロロ…所詮クズはクズって訳か。」

オールドメイド「ザックリと言えば。」

するとカイドウは瓢箪の中の酒を飲み干すと、こう命じた。

カイドウ「ウオロロロロ…じゃあ、落とし前を付けさせろ。 “海鳴り”のガキに本物の海賊(・・・・・)ってのを教えてやれ!!!」 
 

 
後書き
はい。ということで新キャラ“三妖星”が登場予定です。
どんな能力者なのか、乞うご期待。 

 

第87話:“雪山の殺し屋”

一方、ゾロ・サンジ・ブルック・アリスティアの4人は島の探索にあたっていた。
猛烈な吹雪の中、4人は雑談しながら進んでいく。

ブルック「しかし、大丈夫なんですか? アリスティアさん。 そんなカジュアルな服装と白衣だけでは寒いでしょう?」

サンジ「コートぐらい貸そうか? レディーが風邪ひいちゃあ面目が立たん。」

アリスティア「大丈夫ですよ♪ 僕達の活動拠点であるワノ国はいつも雪降ってるんで慣れてます。」

ブルック「何と、ワノ国を拠点に!!?」

アリスティア「20年以上前、僕が未成年の頃からワノ国の将軍や大名達とご縁があるんです。」

ゾロ「つまり政府がワノ国に手ェ出せないのはお前らもいるからか。」

アリスティア「ご名答♪ 勘が鋭いですね。」

アリスティアは満面の笑みを浮かべる。
それを見たサンジとブルックはKOにされてしまう。

アリスティア「あと、僕のことは“アリス”でいいよ。 カイドウ様やライコウ様もそう呼んでるから。」

そう言いながらアリスティアは弾を込める。

ブルック「へェ~、アリスさんは銃剣使いですか。」

アリスティア「命中率の高い代物なので……っ!」


バァン!!


ブルック「ヒョォォォ!!?」

アリスティア、突然の発砲。
目にも止まらぬ早撃ちに、目が釘付けになる3人。
すると…。

「か、は…!!」

「「「!!?」」」

何と視線の先に銃を持ったスーツ姿の男が。
どうやら敵だったようだ。

「な、何故バレた…!?」

アリスティア「リロードの音と硝煙の匂いがこちらに届きました。 何者かとの戦闘の後で弾切れになったでしょう?」

アリスティアは、リロードの音と硝煙の匂いを感知して敵の位置を理解したという。
その離れ業に、サンジ達は口をポカンと開ける。

アリスティア「残念でしたね、僕はこれでも百獣海賊団の幹部……背を向けても油断はしません。」

「な、舐めるな!!」

アリスティアに向けて、敵は懐から拳銃を出して引き金を引こうとする。
しかしアリスティアの方が反応が早く、アリスティアは躊躇せず銃剣の刃で敵の喉を貫いた。

アリスティア「……すみません、こんなクズ相手に無様な姿を晒しましたね。」

サンジ「いや…こっちは大丈夫だ。」

アリスティア「そうですか♪ じゃあ行きましょう、マイキーと再会できれば怖いものなしです♪」

ブルック「いや、あなたの方が十分怖かったですよさっき。」

その時だった。


ズゥン……!


「「「「!!」」」」

研究所跡地から響いた砲撃。
何者かが襲撃しているようだ。

ブルック「もしや…新手の!!」

サンジ「クソ、敵の目論見にハマったってか!?」

アリスティア「……でも百獣海賊団(ぼくたち)のことは知ってない筈…それにローさんとコラさんもいる。 心配ご無用ですよ。」

ゾロ「だな。 ここで突っ立ってるより先に進んだ方がいいな。」

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-第一第二研究所跡-

ここではウソップの“睡眠星”で深い眠りにつく子供達と子供達を護るために残ったチョッパー・ナミ・コラソンの3人が何者かに攻撃を受けていた。

ナミ「もうやだ!! 何なのォ!?」

コラソン「地震じゃねェ…やはり攻撃されてる!! 今、ここ崩れたら子供達が…!!」

ナミ「ルフィ達は!?」

チョッパー「フランキーもロビンもウソップも!! もう皆とっくに研究所に向かっちゃったよ!! トラ男はランドウと行動したからって出てっちゃったし…ここにいるのは俺達3人だけだ!!」

ナミ「見える!? 敵は何人!? どんな奴!?」

チョッパー「それが…ハァ…ハァ…どこにも…誰もいない!!」

ナミ「そんなバカな!!」

そのやり取りに、コラソンは考える。
この吹雪の中、どこにも敵がいないということは、相手はゲリラ戦か暗殺技術に優れた輩。砲撃の音を考えると、軍艦の大砲並みにデカイ銃火器を携えていることになる。

コラソン「殺し屋か……!」

その時、いつのまにか寝ていた茶ひげが起きた。

茶ひげ「…おぉ、寝てた……ん!! 外が騒がしい…誰か俺を助けに来てくれたのか!? …そういえばここは雪山…奴らだな…!!!」

ナミ「ちょっと茶イロ!! アンタ何か知ってんでしょ!? 誰が何しに来たの!?」

茶ひげ「いや、探してもムダだ…奴らは決して姿を現さねェ……!! 俺達でさえ顔も知らねェんだ…!!」

茶ひげは“雪山の殺し屋”とも呼ばれている“イエティ COOL BROTHERS(クールブラザーズ)”の事を話始めた。
足跡はでかく、声は低い全身を毛で覆われた巨大な獣人で、ロックとスコッチといい齢25歳とのこと。

茶ひげ「ウォッホッホ!! 奴らは強大で強ェぞ!! 俺を助けに来てくれた!! お前らはもう“殺しのリスト”き入っちまったん…!!!?」


ジャキンッ!!


茶ひげに突如向けられる巨大な銃口。
目の前には、巨大な獣人(スコッチの方)が構えていた。

スコッチ「“茶ひげ”だな? お前も殺しのリストに入っている。」

その巨躯にナミとチョッパーは絶叫し、コラソンは放心状態になる。
すると、もう1人の獣人(ロック)が口を開いた。

ロック「俺達は“M(マスター)”の依頼でお前も殺しに来たんだ…“茶ひげ”。」

茶ひげ「!!?」

するとスコッチは何かのスイッチを押し、音声を流し始めた。
その内容は、「“茶ひげ”は足手まといだ、殺せ」というあまりにも非情な言葉だった。
茶ひげは心底信頼していた“M(マスター)”に裏切られ、大粒の涙を溢す。

茶ひげ「ウソだ…!! マ゛スタァ~~!!!!」

茶ひげの泣き叫ぶ声と同時にスコッチは銃の引き金を引き、茶ひげを撃ち抜いた……筈だった。


ドゴォン!


「「!!?」」

スコッチは引き金を引いたが、その直後に放たれた砲弾は誰かに蹴り飛ばされ外の雪山に着弾した。
砲弾を蹴ったのは、コラソンだった。

「「えェ~~~~!!? 砲弾を蹴り飛ばしたァ~~!!?」」

砲弾を蹴り飛ばしたコラソンに驚愕するナミとチョッパー。

スコッチ「……同情か?」

コラソン「目の前で捨てられちまったら、情くらい移る!!」

するとロックが構えてコラソンに銃口を向けた。

ロック「百獣海賊団参謀総長“無音の道化師”コラソン…懸賞金は6億4000万ベリー。 殊の外、激情家のようだな。」

コラソン「……。」

睨み合う双方。
しかし、先に折れたのはロックとスコッチだった。

ロック「まぁいい。 そこの粗大ゴミ(・・・・)を消さなくとも、何れは消される。 本来なら今ここでブチ抜いてやりてェが、あんまり撃つとここが崩れてガキ共が死んじまう。 ここは俺らが引くとしよう。」

するとスコッチとロックの2人は吹雪とともに姿を消した。
まさしく、神出鬼没の殺し屋の如く。

コラソン「……用が済んだら消す…“M(マスター)”ってのは随分と分かりやすい性格だな。」

コラソンは懐から煙草を取り出し、火をつけて咥える。

茶ひげ「……。」

チョッパー「茶ひげ…。」

コラソン「そっとしとけ。 心の傷は肉体の傷よりも深く治りにくい。 ましてや、仲間から殺されかけりゃあ尚更だ。」

放心状態で涙を流す茶ひげに、チョッパーは声を掛けることが出来ない。
あえて何も言わない方が良いだろう……。

ナミ「コラソン…だっけ? アンタスゴイわね……。」

コラソン「参謀総長だからな…これぐらい出来ねェと怒鳴られちまう。」








-時同じくして-

パンクハザードの“炎の土地”では、シーザーの部下達が半狂乱でシーザーに連絡を取ろうとしていた。

「もしもし“M(マスター)”!! もしもし!?」

「応答願います!! ハァ…ハァ…!!」

「こちら“炎の土地”!! 指示通り扉を開きました!! ハァ…ハァ…!!」

「ダメだ!! “M(マスター)”出てくれねェっ!! ハァ…ハァ…!!」

「ハァ…来るぞ!! 何なんだよ扉の中から出てきたアレはァ!!!」

「仲間がやられた!!」

「とにかく走れ!!!」

ケンタウロス達は殺気が籠るこの戦場から走り出す。
すると、後ろからスライムの様な物体が大量に押し寄せてきた…!

「うわっ!! 何なんだ!! あの山よりデケェ塊…!!!!」

「来た!! 助けてくれー!!!! “M(マスター)”~~~!!」

『うぎゃああああああああああ!!!!』

海賊達はそのスライムの塊に飲み込まれてしまう…。
その正体…それはパンクハザードの「スマイリー」という生物だった…。 
 

 
後書き
“世界皇帝”エイセイのイメージ図です。

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彼はドレスローザ編で活躍させます。
ドフラミンゴと対立させてみようかな…。
 

 

第88話:コロモ

-研究所内-

ローはオペオペの実を駆使して研究所に侵入していた。
彼の背後には黒焦げになった多数の全身スーツの敵が転がっている。

ロー「(シーザーと茶ひげ、雪男2人に雑魚共……意外と少ない戦力だな、先入観を持たせる罠か?)」

ローはシーザーの警備体制に疑問を持つ。
いくら何でも少なすぎる。電磁投射砲(レールガン)などの新型兵器を装備していても、これほど少ない戦力では海軍の一部隊に制圧されるのも時間の問題となりうる。

ロー「(隠し玉を持ってやがるな…。)」

次の瞬間!


バゴォン!!


ロー「ぐっ!!?」

ローは何者かに蹴り飛ばされ、壁に激突する。
不意打ちであったため、思わず吐血し倒れる。

?「何年振りだろうな…大きくなったな、ロー。」

ロー「何でお前がここにいる…!? ヴェルゴ!!!」

ローの前に立つ男は、あのドフラミンゴが率いるドンキホーテファミリーの最高幹部“鬼竹のヴェルゴ”だった。
ヴェルゴは倒れるローの前に仁王立ちし、喋り始めた。

ヴェルゴ「それは俺が聞きたいモンだ…ここはガキの来るところじゃない。 俺が何でここにいる、か…理由は簡単だ。 シーザー1人ではSADを護れないだろうと潜り込ませてくれただけだ。 しかし、コラソンと共に四皇カイドウが率いる百獣海賊団の幹部とは、偉くなったモンだな…。」

ロー「お前…いつから…!!?」

ヴェルゴ「ついさっきさ…丁度ドレスローザにいてな…SADのタンカーが出るというので乗ってきた。 正解だったよ。」

ロー「じゃあ…消えて貰うしかねェな!!!」

ローは鬼哭を構えて斬りかかった。
ヴェルゴは「能力を使わず肉弾戦とはな…」と意外そうに呟き、得物の竹竿に覇気を纏わせ構える。
だが…。


ドゴォン!!


ロー「ぐはっ!!?」

ローはヴェルゴに攻撃されてないのに、爆発と共に天井へ吹き飛んだ。
凄まじい衝撃を叩きつけられ、ローは床に落ちた後血を流しながらも立ち上がる。

ロー「な、にを、した…!!?」

ヴェルゴ「……フフ、どうやら“透明な助っ人”が来てくれたようだ。」

ヴェルゴは不敵な笑みを浮かべる。
しかしローは、ヴェルゴの言う“透明な助っ人”の正体を勘づき、戦慄する。

ロー「ヴェルゴ、お前らまさか…!!?」

ヴェルゴ「勘が鋭いな、如何にもお前の予想通りだ……あぁ、それと一つ言い忘れてた。 訂正しろ……ヴェルゴさん(・・・・・・)とな。」


ゴッ!!!


ヴェルゴはローを思いっきり竹竿で殴りつけた。
するとその直後、ヴェルゴの隣にツギハギだらけでライオンの様な顎を持つ奇妙な男が現れた。

ヴェルゴ「しかし、助かったよアブサロム。 ここで君が来なければ俺もタダでは済まなかったかもしれん。」

アブサロム「ガルルル…“SMILE”はモリア様やティーチ提督が大事にしてる。 大事なものを粗末にはしないさ。」

ロー「(迂闊だった…“黒ひげ”の手下か!!)」

ヴェルゴの隣に立つ男の名はアブサロム…四皇“黒ひげ”の一味の幹部であるゲッコー・モリアの部下だ。

ヴェルゴ「まだ意識があるか。 まぁいい、お前はここで死なれると困るからな。」

?「ヴェルゴ殿、アブサロム殿!! ご無事でしたか。」

廊下の奥から全身スーツ姿の兵士達を率いて、シーザーの部下であるコロモが駆けつけた。

ヴェルゴ「! ……あぁ、シーザーの部下のコロモ君か。 丁度いい、このガキを海楼石の鎖で拘束してくれ。」

ロー「っ……。」

コロモはローを鎖でグルグル巻きにする。
しかし、ここでローは気付いた。

ロー「(海楼石の鎖じゃねェ…!?)」

そう、力が抜ける感覚がしないのだ。
コロモは「ただの鎖」を巻き付けているのだ。
その直後、コロモはローに耳打ちをする。

ロー「っ!!!? アンタ、まさか…!!?」

コロモ「見苦しいぞ、大人しくしてろ。」

ローは海楼石の鎖を巻かれたふりをして、大人しくすることに徹したのだった。

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-研究所前-

シーザー「シュロロロ…全く、一時はどうなるかと思ったぜ…。」

笑みを浮かべるも冷や汗を流すシーザー。
彼の足元には、スモーカー・たしぎ・フランキー・ロビン・ルフィの5人が力無く地面に横たわっていた。
実は先程、シーザーは倉庫から解放されたペットのスマイリー(“サラサラの実・モデルアホロートル”を食べたスライムで、実は成分が硫化水素)の様子を見るべく外出したのだ。
その時偶然居合わせた麦わらの一味と海軍G-5部隊と交戦したのだ。
常識外れのルフィのスペックにシーザーはボコボコにされかけるも、空気中の酸素を抜いて窒息させ気絶させることに成功したのだ。
無論、他の4人も同様だ。

シーザー「シュロロロロロ……!! では我が屈強な兵士達よ、この主要5人を縛り上げろ!!! 海兵共を残し、お前達も研究所の中へ入れ!! ここは危険だ…!!! 何か妙なものが降り始めたが心配するな、お前達の居場所は俺が守る!!!」

『はい!!! “M(マスター)”!!!』

その様子を、影で見ている者が1人。
ランドウだ。

ランドウ「こうもあっさりやられてしまうと、厄介ですね…。」

ランドウも想定外の展開だったのか、頭を掻いて困ったような顔をする。
すると…。


ジャキキンッ


ランドウ「!」

ランドウに向けられる、2つの巨大な銃口。
背後に、ロックとスコッチがいたのだ。

ランドウ「何者です?」

ロック「それはこちらのセリフだ。」

スコッチ「貴様、どうやってパンクハザード(ここ)へ来た。」

するとランドウは溜め息を吐いて告げた。

ランドウ「喧嘩する相手は選んだ方が良いですよ。 2人共私の得物の射程範囲に入ってますよ?」

ロック「ぬかせ!!」

ロックは引き金を引こうとするが、ランドウはすぐさま抜刀して銃を粉砕。
その勢いでロックを斬り伏せた。

ロック「ぐわァ!!」

スコッチ「ロック!! 貴様、よくも!!」

ランドウ「甘い。」


斬!!


ランドウはスコッチも斬り伏せた。

ランドウ「(さてと…これからどうしましょうかね…。)」

雪原を鮮血に染め、ランドウは自分に気付かぬシーザー達を見下ろし、その場を後にした。 
 

 
後書き
ローを助けるような行動をしたコロモ。
実はとんでもない人物です。あと、コロモは偽名ですよ。 

 

第89話:JOKER

-研究所内-

ヴェルゴ「何? “イエティ COOL BROTHERS(クールブラザーズ)”がやられた?」

コロモ「はっ…何者かに斬り伏せられた模様で、恐らく相当な手練れかと…。」

ヴェルゴ「成る程、まだ敵はいるという事か。」

スモーカー「おい! ヴェルゴ!! 外にいるのは全員G-5の海兵!! お前の部下だぞ!!」

金網の檻に鎖で縛られたスモーカーはヴェルゴに叫ぶ。

ヴェルゴ「しかし…一つの檻に入るにはあまりに豪華な顔ぶれだな…いい眺めだ…。」

檻に閉じ込められているのは、野犬の如く吠えるスモーカー。
動揺を隠せぬたしぎ。
爆睡中のフランキー。
意外に冷静なロビン。
ピンチであっても動じる様子も見せないロー。
寧ろこの状況を楽しんでいるルフィ。

ロビン「何だか懐かしいわね、あなた達が同じ檻にいると…。」

ルフィ「そうそう! 俺とケムリン、アラバスタでお前らに捕まった事あったよな!!」

スモーカー「黙れ、貴様ら!!!!」

たしぎ「スモーカーさん、私…!!! この気持ちどうすればいいのか…ウゥ…!!」

たしぎの悔しそうな表情を見たスモーカーは、舌打ちをする。
シーザーが子供達を連れ去った“誘拐事件”は、ヴェルゴの手で“海難事故”にすり替えられていたという訳だ。
俗に言う「最悪のパターン」である。

スモーカー「よりによって基地のトップが不正の張本人とは、G-5らしいと言やァそうだが…軍の面子丸潰れだ…!!」

するとローがようやく口を開いた。

ロー「お前らが気付かねェのも無理はない…ヴェルゴは海軍を裏切った訳じゃねェ、元々奴は海賊なんだ。 名を上げる前に“JOKER(ジョーカー)”の指示で海軍に入隊し、約15年の時間をかけて一から階級を上げていった。 “JOKER(ジョーカー)”にとってこれ以上便利で信頼出来る海兵はいない。 ヴェルゴは初めからずっと“JOKER(ジョーカー)”の一味なのさ。」

JOKER(ジョーカー)”…それは、裏社会の仲買人(ブローカー)の名。
新世界で最大規模の犯罪シンジケートを展開しており、新世界の大物達や戦争している国家等と取り引きをしているという。

スモーカー「クソッ、自分が情けねェ…こんな近くのドブネズミの悪臭に気付かねェとは…!!!」

ヴェルゴ「そう悲観せず…優秀な“白猟”の目をも掻い潜ったドブネズミを誉めてほしいモンだ、スモーカー君。 お前が本部から転属してきた日から最大限に警戒網を張ったよ。 そのストレスから今日解放されると思うと嬉しいね。 スモーカー中将、たしぎ大佐…君らはここで死に、その口を封じてもらうぞ…表にいる部下達もシーザーにくれてやる。 いつもの様にちゃんと“事故”と処理してな。」

そんな中、ルフィは“JOKER(ジョーカー)”の正体が気になりローに尋ねる。

ルフィ「おい、トラ男。 その“JOKER(ジョーカー)”って誰だ?」

ロー「……俺も昔、そいつの部下だった…だからヴェルゴを知っている。“JOKER(ジョーカー)”の正体はかの王下七武海の1人…“ドンキーホーテ・ドフラミンゴ”だ!!!!」

『!!!?』

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-第一第二研究所跡-

ここでは、シーザーとコラソン達の熾烈な戦いが繰り広げられていた。

ウソップ「おい待て!! お前ら行くな!!! また研究所に戻りてェのか!!?」

ナミ「お家に帰りたいんでしょ!!? アイツのところに行っちゃダメ!!!」

狂暴化した子供達を必死で止めるウソップとナミ。
真実を知った茶ひげも、悔しさとシーザーの非情さに怒り、ナミとウソップと共に子供達を制止する。

茶ひげ「何てパワーだ、鎖を引きちぎりそうだ…!!」

一方のコラソンはシーザーと戦うも、窮地に立たされていた。
シーザーがガスガスの能力の1つ“無空世界(カラクニ)”で大気中から酸素を抜き取り、コラソンを窒息させようとしたからだ。しかし…。

シーザー「クソ…いい加減くたばれ!! お前のせいで“無空世界(カラクニ)”以外何も出来ねェんだよ!!」

コラソン「……!!」

コラソンの尋常ではないタフさが、想定外だったのだ。
かれこれ酸素を抜いて3分経とうとしてるが、まだ意識がある。
シーザーの技は毒ガスと可燃性ガスを用いる。無酸素状態では可燃性ガスは無意味なためまずダメ。毒ガスの手段があるが、それは命に関わる程の猛毒性であり、万が一子供達が吸ったら子供達が死んで今までの研究が水の泡になる。
よって、無酸素状態の我慢比べが起こっているのだ。

シーザー「ちっ、埒が明かねェ…!!」

するとシーザーは何を思ったか、窒息攻撃をやめてカスタネットを出した。

シーザー「“ガスタネット”!!」


ボガァン!!


チョッパー「!? 茶ひげ!!」

シーザーはガスタネットで茶ひげに攻撃。
ガス爆発をモロに食らった茶ひげは、一撃で倒れる。

シーザー「おい! 子供達!! ここは危険だ!! 外にある“空飛ぶガス風船”に乗り込め!!! さァ、ここから逃げ出そう!!!」

シーザーの鶴の一声で、子供達は“空飛ぶガス風船”に駆け足で乗り込む。

コラソン「待て、シーザー!!」

シーザー「シュロロロロロ!! 急用があるのでね、失礼する…!!」

シーザーはガス風船に子供達を乗せ、研究所へと引き換えしていった。
そして、移動をしながら無線でコロモと連絡を取った。

シーザー《こちらシーザーだ…子供達は無事奪還した…コロモ!! スマイリーのエサの準備は!!?》

コロモ《こちらコロモ…言いつけられた準備は全て整っています。》

シーザー「では、スマイリーの到着を待つばかりだな…各受信機関へつなげ。」

コロモ《はい。》

シーザー「あーー、各地非合法なる“仲買人《ブローカー》”諸君、急な実験ですまないが…これを目にする君らは運がいい…これより見せる毒ガス兵器は、4年前のそれにさらに新たな効果を加え、とても政府のカス共では作り出せねェ代物になっている……!! 今日、我が島に招かれざる珍客達が迷い込んできたため、この機会に実験を執り行う次第だ。 “国盗り”、“戦争”、“支配”…用途は様々。 気に入ってもらえたら、取り引きしようじゃないか…!」

シーザーの無線はパンクハザード全土は勿論、新世界各地にいる大物達にも伝達されていた。
四皇の一角であるビッグ・マム海賊団やルフィと同じ「最悪の世代」のキッド海賊団も、中継を見ていた。
そして中には、こんな大物が…。

「親分、いかがなさいます?」

「買いましょうか? 金ならいくらでも用意できます…。」

?「ジハハハハハ……まぁ、知っといて損はねェだろ?」

葉巻の紫煙を燻らせ、男は笑みを浮かべる。 
 

 
後書き
最後に出た男、ワンピースファンなら絶対知ってる「あの男」です。 

 

第90話:新世界より

 
前書き
ついに90話か~…これからも応援よろしくお願いします。 

 
シーザーの中継を見ていた男…シキは笑みを浮かべる。
このシキという男は、あのロジャーや白ひげと同じ時代を生き彼らと海の覇権を競った伝説の大海賊“金獅子のシキ”なのだ。頭に舵輪が刺さった和服姿というずば抜けた出で立ちだが、伝説と呼ばれるに相応しい実力者である。
インペルダウン脱獄後は空島・メルヴィルにいたが、白ひげの死を機に再び新世界へ移って海の覇権争いを制そうとしていたのだ。

シキ「ジハハハハハ、アレがガープの孫か?」

「えぇ、“麦わらのルフィ”ことモンキー・D・ルフィ…懸賞金は4億ベリーです。」

シキ「……成る程、ケツが青そうな割りにゃあいい面構えだ…あの拳骨人間そっくりじゃねェか。」

すると、ピエロのような姿の男が間の抜けた足音と共に現れた。
男の名は、Dr.インディゴ。25年前以上前から金獅子海賊団に所属する科学者で、シキの側近だ。

インディゴ「“死の外科医”トラファルガー・ロー、海賊“麦わらのルフィ”とその仲間“悪魔の子”ニコ・ロビン、海軍の野犬“白猟のスモーカー”…これほどの面子が何でシーザー如きに捕まってんでしょうねェ~。」

シキ「何か企んでるのは確かだな…ジハハハハ!」

シキはそう言いながら豪快に笑う。

シキ「トラファルガー・ロー…確か百獣海賊団の幹部だったな。 ってこたァ、ライコウの差し金か。」

インディゴ「ま、あのカイドウがそういうマネできる程器用とは思えませんからなァ~~。 あ、ミカンある。」

インディゴはこたつに入り、ミカンを食べるのだった。









-一方、キッド海賊団は-

懸賞金4億7000万ベリーになったキッドは、笑みを浮かべながら部下であるキラー(懸賞金2億ベリー)と話し合っていた。

キッド「“麦わら”…まさか四皇の幹部と共にいるとは驚きだ…だがアイツは誰かに従う奴じゃねェ筈だ!!」

キラー「と言っても、人を欺く奴とも思えん。 何かしらの縁でもあるんだろう。」

キッド「まぁ、そんなこたァどうでもいい。 準備を急ぐぞ! もうアイツら来てるのか?」

キラー「ああ、中に通してあるそうだ…よく来てくれたよ…頼むぞキッド! 穏便にな。」

キッド「分かってる、黙ってろ!」

部屋に入るとそこには見慣れた2人とボコボコにされたキッドの仲間が。

?「アッパッパッパッパ~!! よォ“キャプテン・キッド”!! 懐かしい顔だァ!! 相変わらず胸クソ悪ィ面してやがる!」

1人は、懸賞金3億5000万ベリーの“海鳴り”スクラッチメン・アプー。
もう1人は、懸賞金3億2000万ベリーの“魔術師”バジル・ホーキンス。
2人共キッドやルフィと同じ、「最悪の世代」である。

キッド「…! スクラッチメン!! 何のマネだ、他人の隠れ家をメチャクチャにしやがって!!」

「悪ィ、キャプテン! 止めきれなくて…!!」

アプー「いやいや、狙撃手でも仕込んでんじゃねェかと思ってなァ!! 用心よ!! アッパッパッ! 敵に呼びつけられりゃ誰だって戦うつもりで来るだろう!?」

キッド「見ろ、キラー! だから俺はコイツにだけは声をかけるなと言ったんだ! コイツは“剣鬼”に喧嘩吹っ掛けて返り討ちに遭ってトンズラした大馬鹿だ、一番信用出来ねェ!!」

そう、アプーは百獣海賊団傘下の“剣鬼”マイと交戦し惨敗したのである。現在はいたって元気そうだが、よく見ると服の下に多くの刀傷があり、相当な激戦であったのを物語っている。

アプー「あんだと!? ありゃあ戦略的撤退だ!! 想定外なんだよ、女が片手剣(ぼうきれ)一本でこの俺を追い詰めたのはよ!!」

アプーはそう弁明する。

ホーキンス「くだらん…帰らせてもらうぞ。」

ホーキンスは呆れて席を立つ。

キラー「待てホーキンス!! 気が早すぎるだろう!! お前らいい加減にしろ!! 我々3つの海族団で“同盟”を組もうって話だ!!! 話し合いも出来ねェのかお前ら!!?」

キッド「…!!」

アプー「!??」

ホーキンス「…!?」  

-------------------------------------------------------------------------------

その頃、シーザーがヴェルゴらのいるオフィスに戻ると、2人は捕らえたスモーカー・たしぎ・フランキー・ロビン・ロー・ルフィを横目にお茶をしていた。

シーザー「シュロロロロロ…待たせたなヴェルゴ。」

ヴェルゴ「問題ない。 コーヒーとクッキーを頂いていた……変だな、クッキーがないぞ。」

「クッキーは出していませんよ。 今出しますので、少々お待ちを。」

「そうだ、クッキーはいただいてなかった。 すまんな……ところで、実験は何時始まるんだ? シーザー。」

シーザー「直だ…しかし、スモーカーがここへ来た時ゃ冷や汗をかいた。」

ヴェルゴ「ああ…何せ“野犬”だからな、手に負えない。 だが、それも今日までの話だ………。」

シーザー「…ところでコロモ。 陸軍大将の件はどうした? 部下の報告から何の情報も来ていない。」

「「!!?」」

その言葉に、スモーカーとたしぎは目を丸くする。
陸軍大将は、海軍のサポーターたる存在である「世界陸軍」の最高戦力。その実力は海軍大将と引けを取らない程だ。
そんな彼が、パンクハザード(このしま)にいる。シーザーの言い方だと裏切りではないようだが、驚愕に値する。

コロモ「現在、行方を追っています。 しかし勘が鋭いのか、中々姿が見当たりません……我々も血眼で捜索しております、“M(マスター)”の身に何か起きては大変ですから。」

シーザー「シュロロロロ、そうか…分かった、もし上手く拘束で来たら引き渡せ。 ヴェルゴに始末させてもらう。 それぐらい、いいよな?」

ヴェルゴ「問題ない。 軍でも信頼されてる方だからな。」

そんな中、ルフィはローに尋ねた。

ルフィ「トラ男、そういやあアイツ誰なんだ? 強そうだぞ。」

ロー「…正直俺もよく分からねェ…パンクハザードの戦力についてはライコウさんから情報を貰ってたが、あのコロモって奴のことだけは想定外だ。 正体不明ってところだ。」

シーザー「シュロロロロロ!! さすがのお前でもコロモのことには気付かなかったか。」

シーザーはコロモについて語り始めた。
コロモは新世界出身の海賊であり、パンクハザードで死にかけたところをシーザーが助け、以後茶ひげの上司兼秘書として働いているという。
コロモはヴェルゴと同等以上の覇気使いであり、「自分の部下の中では最強だ」とシーザーは豪語する。

シーザー「ロー、お前ら百獣海賊団がどれほどであろうと、コロモの前では全て無力!! 成す術もなく殺されちまうだろうよ。」

ロー「……。」

シーザー「さぁ、ショータイムまであと少しだ。 シュロロロロロ!!!」












-一方、マイキーと錦えもんは…-

ブルック「わー、お侍さん大きいんですねー…私と違わない。」

錦えもん「お主の姿を見ると、世界の広さが伝わるでござるが…。」

ゾロチームと合流を果たしていた。

マイキー「アリスさん、そっちはどうでした?」

アリスティア「それがさ…。」

アリスティアは、自分達の身に起こった出来事を話した。
何と毒ガスを放つ巨大なスライムのような怪物が現れ、襲われたという。
幸い、アリスティアは科学者でもあるため瞬時に怪物の放つ毒ガスが硫化水素であることを察し、特製の噴霧弾を全弾使って事なきを得たのだ。

アリスティア「硫化水素は水溶性。霧にガスを吸収させて逃げ切ったって訳さ。」

マイキー「発想の勝利ですか。」

アリスティア「でも硫化水素は可燃性…燃やすって手段が無いのは辛いな…。」

錦えもん「心配ご無用!! 拙者の“狐火流”は炎で焼き斬り、また炎を斬り裂く事を奥義としている!! 活路を開くのは十分でござる!!」

アリスティア「それはありがたいや!」

マイキー「侍は炎も斬れるのか…。」

サンジ「じゃ、とっととルフィ達と合流するか。」

マイキー「研究所にいる可能性が高い…戦力はこっちもかなりあるし、慎重に行こう。 途中で参謀総長と合流しなければ…。」

ブルック「あの…それよりも、後ろのアレどうします?」

『?』

全員が後ろを振り向くと、そこには巨大な飴玉があった。
そしてその背後に、山のような影がゆっくりと近づいていく。
そう、先程アリスティアが遭遇した怪物…スマイリーだ。

ゾロ「デケェな…。」

錦えもん「何と…!」

アリスティア「……。」

ブルック「どうします?」

サンジ「……逃げるか。」

マイキー「グッドアイデア。」

嫌な予感がしたので、満場一致で逃走に可決。
これが後に正解であったことを思い知らされるのは、その直後である。 

 

第91話:“スマイリー”→“シノクニ”

 
前書き
評価の方、待ってます。 

 
マイキー「逃げて正解!! アレ絶対ヤベェ奴だ!!」

サンジ「しかもまだデカくなってるぞ!!!」

錦えもん「大体、アレは何なのでござるか!!?」

アリスティア「ハァ、ハァ…僕の勘が正しければ、アレは多分動物(ゾオン)系悪魔の実を食べた“硫化水素”!!! “サラサラの実”って感じだけど、何か化学反応起こしそうで関わりたくない!!!」

ブルック「ていうか、アリスさん結構スタミナあるんですね~。」

アリスティア「百獣海賊団の幹部ですので…とにかく逃げましょう!!」

ゾロ「!? おい、あの飴玉んところに誰かいるぞ!!」

「「「「「は!?」」」」」

ゾロが背後を指差すと、その先には数人の全身スーツ達が。
スマイリーを確認するため、小型の竜が引くソリの上で待機していたらしい。

アリスティア「ズルッ!! アレ防護服じゃん!!」

アリスティアはショックを受けたような顔でツッコミを炸裂。
一方、全身スーツはスマイリーを確認すると子電伝虫でシーザーに報告を入れた。

「“M(マスター)”、巨大なゲル状の生物確認しました! スマイリーと思われます!! 予定通り、映像を霧に映します。」

シーザー《あぁ、その作業が済んだらお前らもそこを離れなければ危険『あァーーー!!!』……どうした?》

「トラブルです!!! 竜ゾリのソリが…溶けて使い物にならなくなってます!! 何故こんな…何か薬品でもついてしまったのでしょうか!!」

シーザー《んな…何だって~~!? っ…お前達! とにかく走れ!!!! 防護服など役に立たないぞ!!! すぐに脱ぎ捨てて研究所に向かってとにかく走れ!!!!》

「わ…分かりましたァ!!!!」

シーザーを信用し、言われるがまま防護服を脱ぎ、逃げる部下達。
一方、それを見ていたアリスティアは…。

アリスティア「防護服脱いだ!!? バカなの!!? どう見たって防護服着た方が良いじゃん!!! マイキー、取って来て!!!」

マイキー「無茶言わんといてください、それに人数分足りてねェし!!」


バクン!!


スマイリーは巨大な飴玉を見つけると、大きく口を開けて一口で呑み込んだ。

ブルック「何と、あの飴玉はあの生物の!!?」

マイキー「人間用じゃねェだろ、普通!!」

ブルック「いや、ルフィさんなら…。」

マイキー「ありえねェって!! 人間で食うとすりゃあ、ビッグ・マムのババアぐらいだ!!!」

次の瞬間だった。


ボワンッ!!


ゾロ「何だ!?」

突如スマイリーが爆発して紫色の煙になり、その大量に発生した煙に逃げ遅れた1人が煙に包まれると、その部下は急速冷凍の様に白い固体に包まれ、固まってしまった。
それを見た他の部下達は信じがたい現状に恐怖を覚え、絶叫しながら逃げる。
そしてそれを逃げながら見ていたアリスティアはガスの特性を瞬時に理解した。

アリスティア「触れた生物の皮膚を即座に硬化させるガス!? ってことは、さっきの飴玉は薬品だったんだ!! 灰の様に身体に纏わりつくあのガスは、皮膚から侵入し全身を一気にマヒさせるんだ!!!」

ブルック「えェ!!? それってヤバくないですか!!?」

ゾロ「風よりも早く走れ!! 追いつかれてああなるぞ!!」

アリスティア「嫌だ、僕まだピッチピチの34歳なのにあんな死に方は嫌だ!!」

サンジ「34歳!!?」













-研究所の牢中-

スモーカー「何だこりゃあ…!!」

ルフィ「人間が…固まってく…。」

途轍もない惨劇映像に唖然とするスモーカーとルフィ。
一方のシーザーは「やったぞ、成功だァ!!!」と大喜びだ。

シーザー「…それにしても、あの銃剣を背負った金髪の女……何者だ?」

シーザーの目に映るのは、アリスティアだった。

シーザー「(“シノクニ”の特性をモルモット(・・・・・)1匹だけという数少ない情報で把握するとは……その頭脳と観察力、殺すにはあまりにも惜しい…!)」

ヴェルゴ「……ロー、お前の仲間だろう。」

ロー「……まぁな。」

すると、傍にいたコロモが口を開いた。

コロモ「ナリウス・アリスティア…“海姫”の異名を持つ百獣海賊団参謀次長です。 “ウミウミの実”の能力者で、その身体は海と同じ性質を持つという能力者にとって天敵のような存在です。 百獣海賊団で使う武器や道具の開発は彼女に一任されているとのこと。」

シーザー「ほぅ、それは厄介だな……だが素晴らしい。 あわよくば俺の秘書にでもなってもらいたいものだ…!!」

シーザーはイヤらしい笑みを浮かべる。

ルフィ「あ、ゾロ達がいる!!」

フランキー「1人変なのが混じってるが…。」

シーザー「シュロロロ…さすがにお前の仲間はしぶといな、麦わら…!! だが、やがてガスにやられる! 何も生きられない“死の国”!!! この研究所の外にいる連中はもう誰一人生き残れやしない!!! 勿論、お前らもなァ…!!」

その時、コロモがシーザーに声を掛けた。

コロモ「“M(マスター)”、あの牢に入って実験を観察してもよろしいでしょうか?」

シーザー「何?」

コロモは、シーザーに自分も牢の中に入れてもらうよう頼んだ。

コロモ「万が一、鎖がほどけてしまったりした場合に備えるべきでは? 実験も作戦も計画も、あらゆるケースを想定した上で行うべきかと。」

シーザー「そうか…分かった。 だがお前を“シノクニ”で殺す訳にはいかねェから防護服は着とけ。 もしもの場合は解毒剤を打ってやる。」

ロー「随分信頼してるな。」

シーザー「そりゃあ、俺の優秀な部下だからな!! さて…。」


ガコン!!


ルフィ「わっ!!」

突如ルフィ達が閉じ込められている牢が浮き、外へと運ばれていく。
ルフィ達は身動きが取れぬままシーザーの言葉に耳を傾ける。

シーザー「この殺戮兵器“シノクニ”の前には…4億の賞金首も…海軍中将も!!! 百獣海賊団の幹部でさえ何もできないと世界に証明してくれ!!! コロモ、ちゃんと見張っててくれよ?」

コロモ「了解。」

海楼石の鎖で反撃も出来ないルフィ達。
しかし、この時シーザーは気付かなかった。
ローが勝ち誇ったかのような笑みを浮かべたことと、コロモが「バカな人ね…」と呟いたことに。 
 

 
後書き
オールドメイドのイメージ図です。

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結構スリムな感じです。 

 

第92話:コロモの正体

ルフィ達の牢はクレーンで極寒の外に出され、着々と地面に移動していく。

「あ? アレはたしぎちゃんにスモやん!!?」

「無事だったのか!! でもどうすりゃいい!!?」

「助けに行けねェ上ガスも迫ってる……詰んだぞコレ!!」

G-5の海兵達が数時間振りにたしぎとスモーカーを確認出来たが、紫のガスの恐怖は拭えず混乱中。
その様を牢から苦い顔で見るしかないたしぎ…それと反比例に至って普通に会話を始めるフランキーとロビン。

フランキー「しかし、よく出来た研究所だ。」

ロビン「大きな機材も運べそうね。」

たしぎ「こ…こんな時に!! あなた達!!」

ルフィ「よーし! とにかく困ったな!!」

すると、突然コロモが掌から炎を生み出し軍艦を燃やした。
突然の行動に唖然とする一同。
因みにこの時、シーザーはヴェルゴと話をしてて気付いていない。

フランキー「ゲホ! ゲホ! ちょ、いきなり何しやがる!!? 煙がこっち来たじゃねェか!!」

コロモ「助けに来た恩人に対して、それは失礼ではないか?」


ボンッ!!


『!!?』

突如白い煙に包まれるコロモ。
白い煙がだんだん晴れると、そこには着物姿でフード付きマントを羽織った黒髪ロングで漆黒の瞳をした長身の女性が。
一見穏やかで温和そうだが、ただの女性とは思えぬ覇気と風格があり、思わず警戒してしまう。

ルフィ「? 誰だ、お前?」

フランキー「さっきの全身スーツは?」

ロー「その全身スーツの正体だよ。」


ガチャン!!


…ジャラ…!!


何と能力者であるはずのローが、海楼石の鎖を自力で取ったではないか。
本来なら力が出ず何も出来ない筈なのに。

ルフィ「えーー!!? お前、どうやって“海楼石”の鎖取ったんだ!!?」

ロー「初めから俺のはただの鎖だ、能力で簡単に解ける。」

ルフィ「えェ!!?」

ロー「厳密に言えば、ハゴロモさんがただの鎖とすり替えてくれたんだがな。」

ローは、鎖を解ける理由を話ながら、ルフィ・ロビン・フランキーの鎖を解いた。

ルフィ「うおーー!! 自由だ~~~~!!!」

ロー「叫ぶなバカ。」

すると着物の女性…ハゴロモは微笑んで挨拶した。

ハゴロモ「申し遅れたな。 私は9億の賞金首である百獣海賊団三妖星の1人“狐王”ハゴロモだ。」

スモーカー「ハゴロモだと!!?」

スモーカーは驚く。
隣のたしぎも思わず呆然としている。

フランキー「きゅ、9億って…規格外のレベルだぞ…!!」

ハゴロモ「そうか? 四皇の一味だと4億とか普通にいるぞ?」

新世界の懸賞金事情に驚愕するフランキー。
そんな中、ルフィはハゴロモの前に立って尋ねた。

ルフィ「百獣海賊団? じゃあ、お前もライコウを知ってんのか?」

ハゴロモ「勿論。」

ロー「そういやあ、アンタなんでここにいるんだ?」

ハゴロモ「私は副船長からの密命を受けて来たのだ……麦わら、お前らの手助けをするようにな。」

『!!?』

何と、ライコウがロー達にすら何も伝えずハゴロモにそう命じたという。
その話は、三日前に遡る。










-3日前-

ハゴロモはシーザーの目を盗んで、ライコウと会話していた。

ハゴロモ「こちらハゴロモ。」

ライコウ《久しぶりだな、2年間羊野郎のところに通う日も、今日で終わりだ。》

ハゴロモ「良かった……もうこれで自由ですね。」

安堵の表情を浮かべるハゴロモ。
2年間もイカれた科学者の元で過ごすのは、さすがに息が詰まったようだ。

ライコウ《…と言いたいが、実はお前に最後の任務を達成してもらいたい。》

ハゴロモ「というと?」

ライコウが言う任務は、島の研究所にあるSADの破壊をロー達と行うことと、シーザーを誘拐することだった。
ロー達は約3日後にパンクハザードに到着するという。

ライコウ《少しドフラミンゴを揺さぶってみる。 SMILEを作れないことを知られたら、新世界中の大物達が黙っていない…要はドンキホーテファミリーをシーザーごと消そうって話だ。》

ハゴロモ「そんなに上手くいく保障があるとは思えないな…相手は七武海だぞ?」

ライコウ《心配すんな、相手が“七武海”ならこっちは“四皇”だ。 住む世界が違ェから上手くいくさ…ま、上手くいかせる(・・・・・・・)んだがな。》










ハゴロモ「という訳だ。」

ルフィ「難しい話だなー。」

ハゴロモ「フフッ、そうだな…ところでロー、こやつらをどうする? 口封じなら今だぞ。」

ハゴロモは温和そうな顔から一瞬で冷徹な表情へと変え、スモーカーとたしぎを見下し両手の掌から燃え盛る炎を出す。
ハゴロモはライコウからは「殺せ」とは言われてないが、「殺すな」とも言われてない。つまり、ローの判断次第で2人は()されるのだ。
すると、たしぎは…。

たしぎ「は…早く鎖を解いてください! 何でも言う通りにしますから…!!」

命を乞うた。

スモーカー「ふざけんなたしぎィ!!! 海賊に媚びてまで命が惜しいか!!?」

たしぎ「今は土下座をしてでも命を乞うべきです!! 私達がここで死んだら部下も全員見殺しにし!! ヴェルゴ中じょ…ヴェルゴもこのまま軍にのさばらせる事になり…子供達だって…!!」

ハゴロモやローは殺してもどうでもいいだろうと考えているだろうが、2人がここで死ぬのはどうしても避けたい。海賊であるヴェルゴがこれ以上軍にのさばれば、取り返しのつかない事態になりかねない。
そう考えて、たしぎは命を乞うたのだ。
まぁ、この2人を殺そうとしたらルフィが本気で止めるだろうが。

ハゴロモ「ほぅ…賢明な判断ではないか。 では“白猟のスモーカー”…私はお前を助ける義理はないが、戦力は多めにある方が作戦の都合上、我々としてもありがたい。 ただし、此度の一件は全て忘れろ…お前らの命と引き換えの条件だ。 もし従わなければ…どうなるかは想像にお任せしよう。」

「「っ…!!」」

笑みを深めるハゴロモに、悪寒が走る2人。

ハゴロモ「……まぁ、そうならぬように互いに善処しようではないか♪」

するとハゴロモは腕を武装色の覇気で硬化させ、手刀で鎖を砕いた。

ハゴロモ「さぁ、反撃と行こうか。」

反撃の狼煙が上がった。 
 

 
後書き
新キャラ、三妖星のハゴロモの設定です。

【ハゴロモ】
身長: 240cm
年齢:37歳
懸賞金:9億ベリー
誕生日:5月6日
容姿:黒髪ロングで漆黒の瞳を有し、整った顔立ちをしている。
武器:なし
服装:着物姿にフード付きマントを羽織っている。
好きなもの:きつねうどん、和菓子
嫌いなもの:甘すぎる食べ物
所属:百獣海賊団/三妖星
異名:“狐王”
イメージCV:沢城みゆき
性格:ジャックと引けを取らぬ自信家。敵対する者は容赦なく排除するが、一味に属する者達には寛容的。
戦闘力: イヌイヌの実幻獣種・モデル九尾の能力者で、モリアすら見上げるほど巨大な「九尾の狐」に変身できる。九本の巨大な尻尾での攻撃と「狐火」による火炎攻撃、見破るのが困難な「変化の術」など多彩。百獣海賊団の女性幹部唯一の「覇王色」の持ち主でもあり、恐らく女性としてなら百獣海賊団最強と思われる。
モデル:羽衣狐(ぬらりひょんの孫) 

 

第93話:反撃開始

ハゴロモが現れ、反撃を開始しようとした丁度その頃、ゾロ達はシノクニの煙から逃げ切るためによくアニメやギャグ漫画でよく使われるあの走り方で必死に走っていた。

錦えもん「この不思議な走り方でも追いつかれそうでござる!!」

アリスティア「むしろ体力消耗する気がする!!」

※よく分からない方は、六十八巻の第677話をご覧ください。

マイキー「どこのバカだあんなの発動したのは!!」

ブルック「とにかく逃げましょう!! 固められて一巻の終わりです!!」

サンジ「! おい、アレ見ろ!!」

サンジが突然前方を指差す。
その先には、竜のようなトカゲ…というか竜がいた。

マイキー「!! アレは、ベガパンクが造ったって言われてる竜じゃねェか!! ……そうだ、アリスさん!! アンタ動物と話せたよな!!? 乗せてもらうように説得してくれ!!」

アリスティア「ダメだって、僕の能力だと意思疎通は海洋生物だけ!! 陸上生物は無理なんだ!!」

ゾロ「でも、何とか言うこと聞かせて飛んで逃げられそうだ!!」

ブルック「捕まえて躾けましょう!!」

錦えもん「しかしどうする!!? 我々より早く行くあの獣を捕まえるのは至難の業ぞ!!」

何せ相手は人工的とはいえ伝説の幻獣だ。
翼を持ってる以上、速いに決まっている。
するとアリスティアは、ある考えを思い付いた。

アリスティア「そうだ! サンジさん、頑張って!」


チュッ♡


サンジ「///// うぉおおお~!!!」


ドドドドドドド!!!


「捕まえたぞーー!!!」


ガシィッ!!!


竜「グギャーー!!」

アリスティア「うっし!!」

「「何を面白ェ(パワー)出してんだ!! お前は!!!」」

アリスティアはサンジの頬にキス。
目がハート状態になったサンジは体力のメーターが急速に回復し、その勢いで数十メートル先にいた竜を奇跡的に捕まえる事に成功した。
それを見たマイキーとゾロは声を揃えてツッコミを炸裂。

錦えもん「……何と…。」

ブルック「……恐るべし“gentleman power(ジェントルマンパワー)”…。」

唖然となる錦えもんと、思わず呆れるブルックであった。













その頃、ナミ・ウソップ・コラソンの3人は茶ひげの巨大な尻尾に乗り、ゾロ達とは違うルートで同じ方角のガス付近を走っていた。

ナミ「煙がもうすぐそこまで!!」

ウソップ「あの気味の悪い色!! きっと…ものスゲェ猛毒に違いねェ!!」

ナミ「ごめんね茶ひげっち!! 私達乗せて貰って…!!」

茶ひげ「ハァ…ハァ…構わねェ!! 小人を乗せるようなもんだ…とにかく俺は…ハァ、ハァ…部下達を救わねば…!!」

コラソン「俺達ゃ子供達だ、まだキャンディ舐めてなきゃいいが…。」

茶ひげ「ん?」

ナミ「あれ何かしら!? 誰かがガスに追われてる!!」

ナミ達が複数の人影と一匹の竜…。
それは丁度、竜を捕まえたゾロ達だった。

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-研究所前-

こちらでは突如、研究所のシャッターが開き、G-5の部下達は一斉に研究所の中へと入ってくる。
研究所のシャッターを開けた人物…それは、先程まで捕らわれていたロー・ルフィ・ロビン・スモーカー・たしぎの5人と、彼らを救出したハゴロモだった。

ロビン「ウフフ♪」

たしぎ「よかった! これで全員中に!!」

ロー「さて…どうするか…。」

ルフィ「ししし!! 楽しくなってきた!!!」

スモーカー「何が悲しくててめェらと…!!!」

ハゴロモ「そう言うなスモーカー…立場は違えど同じ崖の淵に立っておるのだ。」

ふとその時、外から声が聞こえてきた。
振り向くと、合流したゾロチームとナミチームが閉まり始めた研究所のシャッター目掛け、疾走している。
しかもよく見ると、ゾロと錦えもんが抜刀している。

ロー「あの2人、シャッター斬る気か。 ハゴロモさん、止めることは出来るか?」

ハゴロモ「案ずるな、それを今から行うのだ。」


ブワッ!!


『!!!?』

ハゴロモが手を合わせると、突然彼女の身体から9つの大きな狐の尻尾が現れた。
しなやかでフサフサな尻尾は、閉まり始めた研究所のシャッター目掛けて凄まじい速さで伸び、器用に止めた。
突然出て来た尻尾に、驚きを隠せない一同。
その間にも、ゾロチームとナミチームは何とか全員シャッターの中に入ることに成功し、ハゴロモは尻尾を使って急いでシャッターを閉めた。

ハゴロモ「うむ…これでよし。」

ルフィ「スッゲーーー!! 何の能力だ?」

ハゴロモ「私は“イヌイヌの実幻獣種・モデル九尾”の能力者。 分かり易く言うと、9(ここの)つの尻尾を有する化け狐の能力だ。」

ロビン「動物(ゾオン)系の幻獣種は、悪魔の実の中でも最強種とされる自然(ロギア)系よりも希少……こんなところで拝めるのは貴重だわ。」

ハゴロモ「三妖星は3人共幻獣種だ、いつかワノ国でお披露目しよう♪」

ロビン「お茶目な方。」

ルフィ「よぅし、全員揃ったな!! 暴れるぞーー!!!」
















-同時刻-

パンクハザードの研究所内。
そこでは、ある緊急事態が起こっていた。

「“M(マスター)”!! 聞こえますか!? 緊急事態です!!」

シーザー《どうした?》

「先日用意していた、ドエレーナ王国に密輸する筈の電磁投射砲(レールガン)をはじめとした最新兵器と!! SMILEを積んだ貨物が何者かの手によって破壊されています!!」

シーザー《!!? 何だとォ!!? どういうことだ!!?》

「現在調査ちゅ」


ズバッ!!


ザシュ!!


「「ギャアアア!!」」

「…な、何だ!? ……な!? 何故貴様がここにい」


斬!!


「ウギャアアア!!!!」

シーザー《おい、どうした!!? 何がお》


ガチャッ!


ランドウ「密告しないでくれ…任務の邪魔だ。」 

 

第94話:世界的犯罪者同士

ブルックは魂だけになり、シャッターをすり抜けて周囲の光景を確認する。
シノクニに満ちた島。ネズミ一匹動かぬ光景は、まさに地獄そのものだ。

ブルック「まだもうもうと立ち込めてる…一歩でも外に出たら…生きてられませんねェ。 これは…まるで死の世界…もし穴を塞いでなかったらと思うと……ゾッとします。」

「お前にな!!」

「噂以上にフザけた海賊団だ…!! 観念しろ!! “麦わらの一味”!!! そして海賊“茶ひげ”!!!」

Gー5の部下達は一斉に錦えもんと麦わらの一味と茶ひげに銃口を構える。
あえて百獣海賊団に向けないのは、四皇という存在の恐ろしさを理解してるからだろう。

ナミ「え~~~!! 何この逆に追いつめられた感じ!?」

ウソップ「逃げ場が無ェ…!!」

錦えもん「女子(おなご)に銃口を向けるとは…男の風上にも置けぬ!!」

ブルック「女性への礼儀を教えて差し上げねばなりませんね!」

一触即発になるが、その時ハゴロモが突如尻尾を出した。
尻尾が覇気で黒く染まると、それをシャッターに向け、黒い笑みで告げた。

ハゴロモ「おいお前ら、この場で仲良くしなければ今すぐシャッターを木っ端微塵にするぞ?」

『スンマセンでした~~~~~!!!!』

ハゴロモ「うむ。」

ハゴロモの黒い笑みに、全員が一斉に土下座。
やはり命は惜しいようだ。

ハゴロモ「ここにいる全員に話しておく!! 八方毒ガスに囲まれているが、この研究所から外気に触れず、直接海へ脱出できる通路が1本だけある!! “R棟66”と書かれた巨大な扉がそうだ!! 私は殺戮に趣味は無いが、猶予は恐らく2時間…シーザーが換気口を操作してガスを流し込む可能性を含めるとさらに時間は短縮されるだろう!! 一刻を争う上、私とてこの場にいる全員の命は保障できない!!」

『ええ!!?』

ルフィ「研究所どうにかなるのか?」

ロー「どうなるか分からねェ事をするだけだ。」

ルフィ「ふーん、そうか!! じゃあまー…とにかく行くぞ! シーザー!! もう息なんか止められねェ!!! ブッ飛ばして誘拐してやる!!!」

シーザー誘拐(とうばつ)に意気込むルフィ。
ローは「ブッ飛ばすな」と内心思ったのは言うまでもない。

スモーカー「“G-5”!!! お前らは誘拐されたガキ共を回収しつつ、“R棟66”の扉を目指せ!! 港のタンカーを奪い、パンクハザードから脱出する!!!」

『ウオォォォ!!』

錦えもん「待っていろ、モモの助!!! 必ず助け出す!!!

ナミ「手分けして子供達を見つけて片っ端からその通路へ誘導しましょう!!」

こうして彼等は各自の反撃方法で動き出した。
ロー・コラソンはSAD破壊へ。
スモーカーはヴェルゴと「落とし前」を付けに。
ナミやゾロ達は子供達を保護しに。
錦えもんはマイキーと共にモモの助を救出しに。
たしぎ及びG-5部隊は子供達を回収しつつ通路を通り、港のタンカーを奪いパンクハザードから脱出する手筈を。
茶ひげは部下の救出を。
アリスティアは武器庫を探して破壊するために単独行動を。
フランキーは…恐らくサニー号に向かったのだろう。
そしてルフィ・ハゴロモはシーザー誘拐に動く。

ハゴロモ「作戦開始だ、急ごうか。」

ルフィ「おぅ!! 待ってろ、シーザー!!」

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偉大なる航路(グランドライン)

ここは打倒世界政府を目的に暗躍する反政府組織「革命軍」の総本部が置かれる島・バルティゴ。
その革命軍の総司令官たる“世界最悪の犯罪者”モンキー・D・ドラゴンは、ある人物と邂逅していた。

ドラゴン「……まさかお前がここへ来るとは思わなかったぞ、ギネス。」

ギネス「そうですか? 薄々勘づいてると思ってましたが。」

そう、悪名高き“犯罪界の絶対王者”ギネス・スパーツィオだった。

ギネス「今利害が一致している百獣海賊団と一緒にドフラミンゴの犯罪シンジケートを調べてるんですが…これが俺が今まで集めた情報です。」

ギネスは封筒をドラゴンに手渡す。
ドラゴンはその中身を取り出す。

ドラゴン「これは…!

封筒の中身は、大量の資料。
ドンキホーテファミリーの密貿易に関わるもので、取引先から商品リスト、さらには取り扱ってる武器の設計図すらも記されていたのだ。それも両面だ。

ドラゴン「よくぞここまで調べ上げたものだ、お前1人でか?」

ギネス「いや、テゾーロとジルドのデータもまとめたんだ。 勿論、俺が調べたデータもあるけどね。」

ドラゴン「何? ジルドがか?」

ドラゴンは驚いた表情を見せる。
ジルドと言えば、世界陸軍の元帥…さらにその上司たる存在は、かの“世界皇帝”エイセイだ。
政府を嫌うギネスが、間接的にとはいえ政府の有力者と関わっていることにドラゴンは疑問を持ったのだ。

ギネス「ジルドとテゾーロは古い付き合い…テゾーロと百獣海賊団も古い付き合い。 それでコネがある。 それにジルドと世界皇帝は世界政府を中身から変えようと色んな国に話を持ち掛けてる。 2人は俺やアンタら革命軍と似たような思想だから、ちと協力的なんだわ。」

ドラゴン「それは朗報だ。 我々も近い内に世界中に散らばっている革命軍全軍のリーダー達を招集する…それを嗅ぎつける奴らを牽制できるかもしれんな。」

ギネス「今年は世界会議(レヴェリー)がある…政府も警戒してるでしょうから、俺も直々に動いて注意を逸らしますんで。」

ドラゴン「うむ…。」

世界的犯罪者同士が、ついに動き出す。 

 

第95話:ヴェルゴ、動く

一方、ここはシーザーのいる部屋。
シーザーは今、混乱状態に陥っていた。

シーザー「どういうことだ、何故正面入口にG-5共がいない!! 何故奴らの固まった姿が映らない!!? これはシノクニの公開実験だぞ!!! それに檻の中もよく確認できねェ…麦わら達は!? ローは!? スモーカーはちゃんと死んだのか!?」

ホグバック「どう思う? Mr.ヴェルゴ…。」

ヴェルゴ「G-5が見当たらねェのは檻の奴らが逃げた証拠だ…ウチの海兵は暴力バカの集まり。 自力じゃ逃げきれねェ。」

「“M(マスター)”!!!!」

研究所の秘書室でモニターから外の様子を伺っていたシーザー・ホグバック・ヴェルゴの3人だったが、突然、茶ひげの部下もとい全身スーツが慌てて駆けつけ研究所内の現状を知らせに来た。

「ハァ…ハァ…海賊“麦わらのルフィ”を筆頭に敵全員が研究所内A棟ロビーに侵入!! さらに奥へと動き始めました!!!!」

シーザー「んなアアにィイ~~!!? 中へェ!!? あの堅固なシャッターをどうやって開けたァ!!! どうやって檻を出たァ!!? コロモはどうした、やられたのか!!?」

「不明ですが兎に角、皆内部通路から脱出を目論んでいる様子!!!!」

動揺するシーザーとあわてふためくスーツを頭部の部分だけ外した茶ひげの部下。
するとシーザーはルフィ達がR棟66番へ向かうことを察し、A棟B棟間連絡通路を塞いで隔離し、A棟の外壁を破壊し「シノクニ」を流し込むよう指示した。
しかも“監視電伝虫”の配備も忘れないようにわざわざ強く言っている。

シーザー「改めて“仲買人(ブローカー)”達への公開実験をしきり直すんだ!! これしきじゃあまだ俺の科学力を伝えきれてねェ!!!」

ヴェルゴ「そんな罠にかかるのはせいぜいザコだけだ…スモーカー達を取り逃がして居場所を失うのはお前だけじゃねェんだ! シーザー!! 任せちゃおけねェ…!!!」

シーザー「ん? 何かする気かヴェルゴ。」

ヴェルゴ「全てを斬り裂いてやる!! …ん? 変だな、剣が見当たらない…。」

ホグバック「Mr.ヴェルゴ、あなたは剣士ではないだろう。」

ヴェルゴ「そうだ、俺は剣士じゃなかった。」

どうやら長年のスパイ生活で周囲を欺いて嘘の自分を演じ続けているせいか、度々自分に無いはずの設定を口走ってしまうようだ…。

ヴェルゴ「どれ…若僧共を叩き潰しにいくとしようか。」

竹竿を携え、ヴェルゴはその場を後にする。
そしてその後、全身スーツもシーザーの部屋から出て、隣の部屋に向かう。


チャキッ…


ランドウ「医務室は分かったのか?」

「は…はひ…こちらに地図が…。」

刀の切っ先を向け全身スーツを脅すランドウ。
実を言うと、全身スーツはシーザーの元へ向かう前にランドウと鉢合わせし「医務室を調べて来い」と交渉(きょうはく)されたのだ。

「こ、こちらが地図となります…。」

「ご苦労、後は休め。」


ゴッ!


武装色の覇気を纏った手刀により、全身スーツは気絶した。

ランドウ「さて…急がねば…。」











-研究所内A棟-

この区域ではルフィとハゴロモがB棟間の連絡通路に向かい、敵を薙ぎ倒しながら、爆走していた。

「ここは通さんぞ!! ぐはホはホはホはホは!! B棟門番元海賊“マチューテのルン”とは俺の事!!! 愛の科学者“M(マスター)”シーザーの名において」

ハゴロモ「黙れ。」


ゴッ!!


ハゴロモの尻尾により壁に叩きつけられるルン。
出オチとはこのことである。

ルフィ「俺はアレをケンタウロスだと認めねェ!!」

ハゴロモ「ケンタウロスは足が哺乳類だからな。」

B棟門番を手早く片付け、ルフィとハゴロモはA棟ーB棟間連絡通路に到達する。
その直ぐ後に通路にブザー音が鳴り響いた。

スモーカー「おい!! これは何のブザーだ!?」

ロー「この棟のゲートが閉まる警告音らしいな。」

スモーカー「何だと…!?」

コラソン「俺達を閉め出す気か…さっきと部下共を奥へ移動させろ!!」

一方、A棟の入り口付近ではナミ達とG-5が乱闘せずに急いで移動していた。

「さっきの姉ちゃんの言うことがあんまり理解できねェが、とにかく急げ!! 今は争ってる場合じゃねェ!!」

「シーザーがいつ毒ガスをぶち込むか分からねェ!! 早く逃げろ!!」

「負傷者を運べェ!!! 一直線に扉を目指せェーーッ!!!」

マイキー「さすが海軍、こういう土壇場だとまとまりがいい。」

マイキーはG-5部隊の手際の良さに感心する。
まぁ、厳密に言えば先程ハゴロモを怒らせかけたのが原因だろうが…。

マイキー「それにしてもアンタって軽いな。 骨だから楽だわ。」

ブルック「申し訳ありません、アリスさんだけでなく私まで…。」

マイキー「2人背負ってガスから逃げ切る余裕はあるから心配すんな。」

マイキーはアリスティアをお姫様抱っこで、ブルックを背負って移動中。
全力疾走でありながら息切れしていないその常人を遥かに超えたスタミナには、さすが四皇の傘下と言えよう。
すると次の瞬間…!


ド コ ォ!! ド コ ォ!!


閉めたはずのシャッターが研究所外に設置されたカノン砲により破壊され、毒ガスが研究所内に侵入し、毒ガスに包まれた者は次々と固まってしまう。

マイキー「ちっ…ハゴロモの姐さん!! 埒が明かねェや、尻尾頼みまさァ!!」

ハゴロモ「分かってる!」

するとハゴロモは尻尾を5つ伸ばし、ナミ達や茶ひげ、たしぎらG-5部隊を包んで回収。
何とか危機を脱したが、敵味方区別なく大勢の者が毒ガスの餌食となってしまった。

ハゴロモ「(何という威力だ…これをシーザーは売り飛ばそうとしてるのか。)」

茶ひげ「ハァ、ハァ…すまん!! 助かった…!!」

ウソップ「危ねェ~…間一髪だったぜ…!」

マイキー「でもR棟まで大分先だな、休んでる暇が無さそうだ…。」

そんな中、一向にその場を動かないたしぎをG-5の部下達が必死に説得していた。

「行こうぜ! 大佐ちゃん先へ!! 閉鎖された筈のパンクハザードでこんな兵器が作られてたんだ、放っときゃ被害は世界に及ぶ!!!」

「島を出て海軍本部に知らせるんだよ!!! 俺達が軍に帰らなきゃ誰も報われねェんだぜ! 大佐ちゃん!!!」

たしぎ「ごめんなさい…よくわかってます…行きましょう!!」

たしぎは零れ落ちる涙を拭い、決意を固める。
そして丁度その頃、あの男がたしぎ達に迫っていた…。 

 

第96話:平泳ぎ

一方、G-5部隊は絶賛大パニックだった。
島を護衛する為、Dr.ベガパンクが人工的に生み出した竜が襲い掛かったのだ。
気性が荒い竜は炎を吐き、連絡通路付近を火の海と化す。
G-5は銃で応戦するが、竜は銃弾を容易く交わし、その強靭な顎で鋼鉄を噛み砕いていく。

「いやいやいやいや!! 鋼鉄だぞォ~~~~!!! あんな顎で噛みつかれたら俺達…!!!」

「逃げろ!! B棟へ~~~~!!! 飛ぶわ!! 速ェわ!! 火ィ吹くわ! 鉄を噛み砕くわ! 何だ!? あの怪物~~!!!」

G-5は竜に対抗すべく、戦闘体制に入る…しかし、竜は何かに怯えるかのように逃げるようにGー5のもとから飛び去ってしまった。

「………!? 何だ…素通り…!!!? 逃げた? 何か焦ってねェか?」

「通路の出口が騒がしいぞ…!?」

通路の出口から、1人の男が現れる。
その姿を見た海兵達は、歓喜する。

「やったァーー!!! よかった、これで助かった!!! 大佐ちゃん! 見てくれ!!! ヴェルゴ中将が助けに来てくれたァ!!!」

「電伝虫を奪われる前に誰かの通信が通じてたんだ!!」

「じゃ もう本部にも伝わってんのか!? 中将!!! 援軍はどのくらい来るんだ!!?」

通路出口から現れたのは、右頬に小さいスプーンをつけたヴェルゴだった…!

「スモやん中将! ヴェルゴ中将!! “G-5”の2トップが揃った!! もう無敵だぜ!!!」

たしぎ「違う……!! 逃げて!! 皆…!!」

たしぎの言葉も虚しく、G-5の部下達はヴェルゴ中将の指銃(シガン)や蹴りで倒されていく。
たしぎの脳内には出会った当初の紳士たる振る舞いのヴェルゴが現れる。
部下に信頼され、面倒見がよく、正に理想の上官だったヴェルゴ……しかし、それは裏の顔を隠す仮の姿であることにたしぎは今回の事件で気付いてしまう。

たしぎ「皆、離れて!!! そいつはもう…!! あなた達の知る男じゃないっ!!! コイツは…昔からずっと…ウッ…あァっ!!!」

たしぎは持てる力を全てその一撃に込め、ヴェルゴに斬りかかるが、ヴェルゴはたしぎのその一撃を腕を鋼鉄の様に硬くする能力で防ぎ、たしぎの前髪を凄い力で掴み、その鋼鉄化した腕で顔を殴った。
たしぎは殴られた威力で血ヘドと鼻血を出しながら地面に叩き付けられる。
それを見たまだ倒れていないG-5の部下達は一斉にヴェルゴに襲いかかる。

「コイツ偽物だァ!!! ヴェルゴさんがこんな事するわけねェ!!!」

「変装か!? 能力者か!!? マネしてんじゃねェ!!!」

「ヴェルゴ中将はなァ…!! こんなはみ出し海兵の俺達をいつも庇ってくれる…仁義の男だ!!! マネすんじゃねェ!! ニセ者ォ!!!」

ヴェルゴの本性を知らぬ彼らは、怒りに身を任せ奮闘する。
しかし必死の抵抗も虚しく、次々と無惨にも倒されてしまう…。
その惨劇を声が出ないたしぎは泣きながら心の中で叫んだ…「助けて…!! スモーカーさん!!!」と。
その時、まるで猿が木を伝い飛ぶかのように空を移動する黒い人影が。

サンジ「レディが俺を呼んでいる!!」


ドゴォン!


ヴェルゴ「っ!!?」

ヴェルゴの顔面を蹴り飛ばしたサンジの登場に困惑するG-5の面々。
ヴェルゴを蹴り飛ばし、着地したサンジはG-5の「海賊が何故!?」という言葉に凄味を効かせた顔でこう答えた。
「女の…涙の音がした…」と…!

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フランキー「よぅし、これでOKだ!!」

ここはパンクハザード(寒い方)の港。
サニー号の移動を終えたフランキーは、休憩を取っていた。

フランキー「しかし、改めて考えると海軍大将はスーパーヤベェ連中だな。 たった2人で島の天候を真っ二つにしちまうとは。」

フランキーはあの2年間、新聞で多くの情報を取り入れたため青雉と赤犬の決闘を知っている。
そして最後に仲裁に入ったイリスも知っている。

フランキー「海軍最強のイリス…アイツは確か海賊王ロジャーが生きてた頃から暴れてる女傑だと聞くな。」

「スーパー会いたい奴だ」と呑気に呟くと…。

「おい、アンタ“麦わら”の仲間か!?」

フランキー「何だ?」

フランキーに声を掛ける男達。
角のあるヘルメットやカブトを被った男達は、どうやら救援を頼んでいるようだ。

フランキー「どうした?」

「船の一部が破損しちまった!! アンタ船大工だろ!? 金なら払うし資材もあるから直してくれ!!」

フランキー「ん? どこかで見覚えのある連中だな…。」

よく見ると、海賊旗が掲げられている。
大きな2本の角が生えたドクロに4本の骨が交差したマークは、誰もが知る大海賊の一味だった。

「百獣海賊団か!」

ハゴロモやローが所属する、四皇カイドウが率いる百獣海賊団の船だったのだ。
道理で大きな船だと、内心納得する。

フランキー「四皇の船か…興味深い!! 俺にスーパー任せろ!!」

その時だった。


ドバァン!!


『!!?』

沖の方で水柱が上がる。
高さは数十メートルあり、水中爆発でも起きたかのような大きさだ。

フランキー「な、何だ!?」

「爆発だ!! 事故か!?」

フランキーだけでなく、百獣海賊団も釘付けになる。
その10秒後、海面に海王類の死体が浮きあがる。

フランキー「海王類…!? 喧嘩でもしたのか?」

その直後、刀を携えた何者かが海面から顔を出し、陸に上がった。

?「いや~、まさか軍艦5隻と会うとはな。 おかげで泳ぐハメになった。」

その姿を見て、全員が驚愕した。

フランキー「?! てめェは…“剣帝”!?」

『ラ、ライコウ様~~~~~!!?』

何と、上半身裸のライコウだったのだ。
無数の傷が刻まれたその鍛え上げられた肉体を魅せ、ライコウは挨拶する。

ライコウ「どっこいせ…いやぁ、イカダでここまで来ようと思ってたら海軍が現れてな。 軍艦奪おうと思ったらついつい全部沈めちまったんだ。 しかもイカダ沈められたから泳いできた。」

「ハァ!? 新世界の荒波をですか!!?」

「さ、さすが我らの副船長…!!」

ライコウ「平泳ぎが大事だ。」

海水で濡れたコートを絞りながら、酒を飲む。
するとライコウはフランキーに目を配る。

ライコウ「カティ・フラム…もとい、“鉄人(サイボーグ)フランキー”だな?」

フランキー「!!」

ライコウ「ルフィは元気か?」

剣帝、パンクハザードに降臨。 
 

 
後書き
そういえば、今更だけどワンピースって貧乳キャラ居ない気がするな…。
オリキャラで出してみようかな。(笑) 

 

第97話:剣帝と鉄人

ライコウがパンクハザードに着いてまずやったのは、船の修理だった。
船のサイズがサイズなので、フランキーに手伝ってもらうことにした。


トン、トン、トン、トン…


フランキー「さすがは四皇の副船長だ…要領が違ェ、船の修理の仕方がスーパーバッチリだ。」

ライコウ「モブストンのじいさんに船の修理の仕方教えてもらったからな。」

副船長たるライコウは、様々な分野に手を付け修得している。
造船技術もその1つだ。一応幹部達はライコウの扱き…ではなく指導の下、全員船の修理の技術は心得ている。
勿論、人手不足等の諸問題に備え各分野のマニュアル本をわざわざ作って幹部以下の海賊全員に目を通しておくよう言っているのだが…要領が悪いのか読む気が無いのか、中々下っ端で船の修理が上手く出来ない。
ナワバリであるドック島にある造船会社「シマナミカンパニー」のモブストンらに船の修理を一任しているのも原因かもしれないが、いくら何でも酷い話だ。

ライコウ「つーかお前ら俺が徹夜で作ったマニュアル読んどけよ、346ページに船の修理の仕方書いてあったろ?」

『ズ、ズンマセ˝ン…でじだ…。』

正座しながら涙目で謝る海賊達。
ライコウの覇気を纏った鉄拳を1人ずつ食らっており、かなりシュールな光景だ。

フランキー「それにしてもお前、スゲェ傷だな。」

ライコウ「男の勲章だ。」

服が濡れてるため乾かしている上半身裸のライコウ。そんな彼の身体に刻まれている傷は、夥しい数だ。
刀傷、銃痕、火傷…上半身を中心に刻まれたかつての古傷。ルーキー時代からカイドウらと共に伝説と謳われた男達と張り合っただけある。

ライコウ「竜骨の損傷は無ェし、これでOKか。」

フランキー「お前、見かけによらず随分と博識らしいな。 どこで習った?」

ライコウ「全部独学さ…武術なら我流だが剣術、抜刀術、柔術。 学なら造船技術、兵学、家事全般とー…あとは……。」

フランキー「そんなにか!!?」

ライコウ「ウチって一から船作るの面倒だから軍艦とか他の海賊船奪って改良・改造するんだわ。 奪う船によっちゃあ学の本がある。 四皇って立場になると、挑んでくる輩が少ないことで困ってんだ…だから暇潰しに学でもやるって訳。」

フランキー「だが、その暇潰しがてめェらをより強くしちまってるって状態だがな。」

ライコウ「ルフィぐらいの向上心や成長ぶりのある連中がいっぱいいりゃあ、こっちも暇な時間減るんだがなァ…。」

そう愚痴りながら、ライコウはフランキーにコーラを投げ渡す。
フランキーは「気が利くじゃねェか、ありがとよ」と言い、一気飲みにする。

ライコウ「そうそう…ルフィ達が戻ってきたら早くこの島から出るようにした方が良い。 ヤベェのが来るぞ。」

フランキー「ヤベェの…!?」

ライコウ「誰なのかは言わんが、ある意味でこの島の関係者だ。」

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一方、逸速く猛ダッシュをかけたルフィ・ハゴロモ・スモーカーはB棟を抜け、最短距離でシーザーの研究室前に到着し、乗り込もうと構えていた。

ルフィ「ハァ…ハァ…ゼーゼー、ゲホッ…ハァ…ハァ…!」

スモーカー「いいか?」

ルフィ「よくねェよ!! ちょっと待て!! お前ェ~~ハァハァ…!! 俺ば…地面がコゲる程ダッシュし続けたんだぞ!! ハァ、ハァ…お前なんかズリーだろ、空飛んでよ…ハァハァ…!」

スモーカー「よし! いいか?」

ルフィ「ちょっと待てって言ったろ! ハァ…ハー…俺が“よし”って言うから…ハァ…落ちついてきた…ハァ…ハァ…。」

ハゴロモ「ポチっとな。」


ピンポーン!!


ルフィ「オイ!! まだ言ってねェだろ!! ゼェ…ゼェ!」

スモーカー「いいか…ヴェルゴは俺の敵だ…!!」

ルフィ「ハァ…ハァ…分かってる! 俺はシーザーだからな…! 手ェ出すな!! ハァ…ハァ…。」

研究所の扉が完全に開き、2人はシーザーを確認した。

ルフィ「あ…。」

ハゴロモ「フフッ…どうやら我々のようだな。」

スモーカー「チッ!」

シーザー「は?」

ルフィ「もう逃がさねェぞオオオ~~~!!! シ~~~ザァアア~~~!!!」


ドゴォ!!


シーザー「シュゴォーーーー!!!」

ルフィはシーザーを確認すると、直ぐ様鳩尾に強烈な一撃を放つ。
油断していたシーザーはその一撃をもろに食らってしまい、血ヘドを吐きながら体制を立て直す。
因みにスモーカーはヴェルゴを探すべく研究室を出ている。

ルフィ「捕まえ…たァア~~~!!!」


スカッ!!


シーザー「捕まるかァ~~っ!!! “燃焼系ミオークGAS(ガス)”!!!」


ボオッ!!


シーザーは両手でマッチの様に火のついた棒を操り、ガスと複合させ、大量の炎を出す。

シーザー「“麦わら”ァ…!! てめェ、何の理由があって俺を狙う!!? 何故“三妖星”がてめェと共にいる!!?」

ルフィ「何か分からねェけど、お前を誘拐すれば面白ェ事が始まるらしい!!」

シーザー「クソ、コロモはどうし……はっ!! まさか…!!」

ハゴロモ「御名答…私がお前の言うコロモの正体だ。」

ハゴロモは勝ち誇った笑みを浮かべる。
ハゴロモの“変化の術”は、見た目だけでなく声や瞳の色、髪の質や長さまで変えられる脅威の能力…というかそもそも赤の他人の上ウソが上手い彼女に騙されてただけだが。

シーザー「クソ、この俺ともあろう者が化け狐のウソすら見破れねェとは…そうか、俺を狙うのはローの差し金か!? アイツは信用できねェぞ!! 下手をすりゃお前を裏切って潰しにいくかもしれねェぞ!! やめとけ!!」

ルフィ「そんなのは俺が決める事だ!」

殴り掛かるルフィ。

シーザー「まだ痛い目見てェかゴム野郎!!! “無空世界(カラクニ)”!!!」

シーザーは大気中から酸素を抜き取り、ルフィを窒息させようとする。
もがくルフィだが、その時ハゴロモの尻尾に包まれ距離を置かれる。すると口の中に酸素が入り、息ができるようになった。

ハゴロモ「ルフィよ、シーザーから一定以上の距離を保たないと窒息してしまうぞ?」

ルフィ「ハァ、ハァ…すまねェ…!」

シーザー「ちっ、余計な口を…だが! この距離保てるか!?」

シーザーは余裕の表情を浮かべるが、ルフィはすかさず“JET銃(ジェットピストル)”を放つ。
それは見事にシーザーの顔面に命中するが、ガス状になっているシーザーの足下からガス状になったシーザーが現れ、人型に姿を戻すと、ルフィの首を左手で掴んだ。

シーザー「“青炎剣(ブルーソード)”!!」

シーザーは大量の酸素を手中にまとめて点火、完全燃焼させた青い炎の剣として振り回す。

シーザー「毒ガスの効かねェお前にも攻撃する術はいくらでもあるんだ!!! ほら!! 燃え斬れろ!!! シュロロロロロ…!!」

しかしルフィは素早くシーザーの後ろに素早く技をかける。

ルフィ「“武装硬化”! “ゴムゴムの”…!!!」


バキィ!!


ルフィ「ほぶっ!?」

突然ルフィが吹っ飛んだ。
壁に激突し、痛そうに頬を擦る。

ルフィ「痛ェ…何だ今の!?」

するとルフィの前にハゴロモが立ち塞がる。
次の瞬間、衝撃が周囲を襲った。

ハゴロモ「何者かの気配を感じてはいたが、正体がお前だとは思わなかったぞ? “墓場のアブサロム”。」

ハゴロモの前に、突如奇妙な男が現れた。
足は黒く染まっており、覇気使いであるのが容易に窺がえた。
それを見たシーザーは「よくぞ来た」と歓喜する。

ルフィ「何だお前!? 能力者か!!?」

アブサロム「いかにも…俺は“スケスケの実”の透明人間よ。 Mr.シーザー、ここはおいらにお任せを!」

シーザー「そうか…分かった。 じゃあな麦わら…好きなだけ暴れろ!! お前達を確実に実験体にする術はもう考えてある!! シュロロロロロ!! 楽しみにしていろ!!」

シーザーは研究室から出ていく。

ルフィ「待てー!!」

アブサロム「させんぞ“麦わら”!」

ルフィは直ぐ様追いかけようとするが、アブサロムはそれを阻止しようとする。
だが、2人の前にハゴロモが入りアブサロムの蹴りを尻尾で受け止めた。

アブサロム「……ハゴロモ…!」

ハゴロモ「ルフィよ、お前はシーザーを追え。 この変質者は私が片づけておく。」

アブサロム「誰が変質者だ!!」

ハゴロモ「お前のような男がいるか。」

ハゴロモの言葉に、ルフィは何も言わずそのままシーザーを追った。

ハゴロモ「さぁ、我々は我々で楽しもうではないか。」

ハゴロモは獰猛な笑みを浮かべ、掌から炎を出した。
百獣海賊団三妖星が、ついに暴れ始めるのだった。 

 

第98話:緊急連絡

-A棟B棟連絡通路-

ここでは正にヴェルゴとたしぎの涙に駆けつけたサンジの戦闘が始まろうとしていた。
連絡通路間では閉鎖のブザー音が鳴り響き、G-5部隊は負傷者を担いで避難を始める。

サンジ「“腹肉(フランジェ)ストライク”!!!!」

サンジの渾身の一撃がヴェルゴにヒットし、ヴェルゴは連絡通路の壁に減り込んだ。

サンジ「お前ら何してる!!! さっさと逃げろ!!! また閉じ込めてガスをたれ流す気だぞ!!! ホラ見ろ!!!」

サンジが指差す先を見る海兵達は、顔を青くした。
何と閉まっていた筈の扉が少しずつ開き、シノクニが流れ込んできたのだ。

「ヤベェ!! 反対の扉が開くぞ!!」

「殺人ガスが入ってきた!! 逃げろォ!!!」

そんな中、サンジに通路の壁に叩き付けられピクリとも動かなかったヴェルゴがゆっくり起き上がった。
壁を軽く突き破る衝撃を受けていながら、ヴェルゴの体は無傷の状態で何事も無かったように立ち上がったことにサンジは驚く。

サンジ「!! 成る程…つまり、鉄の塊か何かかコイツは。」

ヴェルゴ「…邪魔をするな、身内の問題(・・・・・)だ…!」

首をゴキゴキと鳴らし、サンジを見据えるヴェルゴ。

サンジ「…ウチの船長が……一番嫌いなタイプだな…!」

毒ガスが流れ込む連絡通路の中で、サンジとヴェルゴの蹴りを中心とした決闘が始まる。
連絡通路には金属がぶつかり合うような轟音が鳴り響く。

「おい!! “黒足”の兄ちゃん!!!」

「毒ガスがすぐ後ろまで!! 早くこっちへェ!!!」

サンジ「俺はいいから、早く行け!!」

ヴェルゴと必死に戦うサンジ。
彼の足止めを無駄にしないためにも、G-5部隊は避難した。

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一方、火の海と化した研究室ではハゴロモが暴れていた。

ハゴロモ「……少しはタフになったか?」

アブサロム「クソ…化け物め……!!」

ハゴロモは獣型に姿を変え、アブサロムとその援軍を蹂躙していた。
彼女はまだ全力を出していないが、ホグバックの手でケンタウロスとなった面々は全滅し、アブサロムも深手を負っている。
因みに彼女の獣型は、九尾の狐であることは言うまでもない。

ハゴロモ「お前も火葬してやろう。」

ハゴロモは口から火を吐き、アブサロムを狙う。
アブサロムはそれを躱す。しかしその直後尻尾が伸びアブサロムを叩きつけた。

アブサロム「かはっ…!!」

ハゴロモ「もう終いか? 興が醒めないように手加減したのだというのに…。」

アブサロム「バカな…おいらはライオンの顎・ゾウの皮膚・クマとゴリラの筋力を合計300kgも移植してるんだぞ!! なのに何故…!!?」

ハゴロモ「生憎、私は覚醒しているのでな。」

覚醒した能力者と、改造人間では雲泥の差。
まぁ、元々海賊としてのキャリアや格の差もあるので彼女に敵いやしないが。

ハゴロモ「まだイカズチの遊び相手になった方がマシだな、お前如きでは暇潰しにもならん…。」

限界が近づいているアブサロムに、ハゴロモは溜め息を吐く。
その時、複数の兵士が銃器を持ってやって来た。

ハゴロモ「(アレは…電磁投射砲(レールガン)か。)」

そう、最新兵器である電磁投射砲で仕留めようというのだ。
「賢い選択だな」と何だかんだ感心するハゴロモ。

「こうなったら、コイツで仕留めてやる!!」

兵士は引き金を引く。
しかし、その前にハゴロモの覇気を纏った尻尾による薙ぎ払い攻撃で撃沈してしまう。

ハゴロモ「わざわざ撃たせる程、私はお人好しではないのでな…。」

ハゴロモはそう告げて人型の戻る。

ハゴロモ「そこで伸びているがいい…シノクニで楽になれるぞ? 多少苦しいが。」

ハゴロモはそう言い、研究室を後にした。
その時、パンクハザード全域に緊急の放送が流れた。

《こちらD棟より第三研究所全棟へ緊急連絡!! ただいま、トラファルガー・ローが…“SAD製造室”へ侵入しました!!!》

アブサロム「!!!?」

ハゴロモ「! フフフ、さすが副船長がスカウトしただけある…あとは実行あるのみだ♪」

アブサロム「き、貴様…まさか最初から…!!!」

アブサロムは百獣海賊団の目的を知り、戦慄した。
それは、下手すれば取り返しのつかない事態となり海の勢力バランスを根こそぎ崩壊させかねない程の影響力を持つからだ…!!
そして同時刻、放送を聞いたシーザーは逃げながらダラダラと汗を流していた。

シーザー「!!!? …何だと!!? 正気かあの野郎!!? そいつに首を突っ込んだら…どうなるか分かってんのか!!!?」

勿論、サンジと壮絶な蹴り合いをしていたヴェルゴも、その放送を聞いて慌てた。

ヴェルゴ「!!? ロー…いや、百獣海賊団…!!! 最初(ハナ)からそれが狙いか…!!!」

ヴェルゴはサンジとの戦闘をやめ、“月歩”でSAD製造室へ急いで向かった。

ヴェルゴ「クソが…アイツら、頭の中に最悪のシナリオを描いてやがる…!!! “新世界”を滅茶苦茶にする気か!!!?」 

 

第99話:ドラゴンじゃない方

-ドレスローザ-

ここは王下七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴが国王を務める異色の国・ドレスローザの王宮。
休日を楽しむドフラミンゴは、ヴェルゴと電話していた。

ドフラミンゴ「“SAD”をローが…!!?」

ヴェルゴ《…あぁ、これで百獣海賊団(やつら)の目的が見えた…!!》

ドフラミンゴ「薄々感じてはいたが、本当にやる気とはな…。 ルーキー時代からぶっ飛んでた連中だとは知っちゃあいたが、ここまで来るとバカを通り越して狂人だな…フッフッフ!!」

今、新世界の犯罪界は人造悪魔の実「SMILE」を軸に動いている。SMILEの影響力は絶大で、新世界の大物犯罪者だけでなく世界政府加盟国も関わっている程だ。
百獣海賊団はそれを壊そうというのだ……そうなると新世界が滅茶苦茶になり、海の秩序や軍事バランスが崩壊しかねないのだ。

ドフラミンゴ「ローがSAD製造室に向かったのは、SADを使えなくするためだろう? 俺なら部屋ごとブチ壊すがな…!!」

ドフラミンゴが電伝虫で話していると、突如武器を大量に装備したメイド服の女性が現れ、涙を流しながら銃口を向け、発砲する。
ドフラミンゴ自身は無傷だが建物は半壊し、ドフラミンゴはその衝撃でひっくり返った状態になるも電伝虫でヴェルゴと話し続ける。
メイド服の女性は更に攻撃を仕掛けるが、ドフラミンゴはその攻撃を容易く避けながらヴェルゴと話を続ける。

ドフラミンゴ「更にシーザーを誘拐か……いやあ、俺ならブチ殺す…!! 何故ならシーザーは…世界でただ一人“SAD”の製造法を知る男だからだ。」

ドフラミンゴはメイド服の女性の攻撃を避けながら話しを続ける。

ドフラミンゴ「こうなった以上、俺達ファミリーも百獣海賊団とぶつかることとなるだろう。 ヴェルゴ…奴らの戦力を少しでも削ぐために、ローを始末しろ!! この世に生まれてきたことを後悔するほどに…無惨に殺してくれ。」

ヴェルゴ《承知した。 だがドフィ、そんなマネをして大丈夫か? 相手は四皇…それにあのカイドウとライコウをブチギらせることになる。》

ドフラミンゴ「フフフフフ…あぁ、心配すんな…奴らの次の目標は目に見えてる。 そこで勝負を仕掛けてやる。 俺のホームグラウンドでな…!!!」

ドフラミンゴは、どうやら勝算があるらしく余裕そうだ。

ヴェルゴ《じゃあ、死体の写真でも撮ってお前に見せようドフィ。 ドレスローサで買ったばかりのカメラでな。》

ドフラミンゴ「お前カメラなんて買ってやしねェだろう?」

ヴェルゴ《そうだ、俺はカメラなんて買ってやしなかった。 じゃあ、耳でも削いでいく。》

ドフラミンゴ「フッフッフッフ!! 楽しみにしてるよ。」

ドフラミンゴはヴェルゴとの通話を終えると、今度は「CC」と記された電伝虫を手にした。
そう、シーザーに電話を掛けたのだ。

ドフラミンゴ「シーザー、聞こえるか?」

シーザー《おお、ジョーカー!!》

ドフラミンゴ「ローは勿論だが“麦わら”にも充分気をつけろ…!! あの小僧は覇王色の覚醒者だ、ローより器は上かもしれねェ。 ここに丁度、血の気の余った女が一人いる…ベビー5とバッファローをそっちへ迎えに行かせる…事が済んだら全員一度ドレスローサへ来い!!」

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-パンクハザード-

ランドウ「薬はゲットしたとはいえ、子供達が何処にいるのか分からないな…ビブルカード渡しとけばよかった…。」

ガラガラとリヤカーを動かし、ランドウは移動しつつ子供達を捜索する。
敵の情報から、研究所の外は毒ガスまみれになっていることを聞いたランドウは、子供達は必ず研究所内にいると読み捜索中だ。
とはいえ、広い研究所内を1人で移動しさらに子供達を探し出すのは中々難しい。

ランドウ「それに…援軍もどっかで頼まなきゃな…。」

その時だった。

?「きゃっ!!」

ランドウ「うをっ!?」

ランドウの目の前に、巨大な飴玉を抱えた少女が。
突然の鉢合わせに、互いにびっくりする。

ランドウ「…アレ? 君は確か…モチャちゃん?」

そう、ランドウが麦わらの一味と共にいた際避難していた子供達のうちの1人・モチャだったのだ。

モチャ「お兄ちゃん、助けて!! シンド君達が…!!」

ランドウ「!! 成る程、事情は分かった。」

モチャの頼みを瞬時に理解したランドウ。
どうやらシンド達が禁断症状の影響で錯乱し、モチャを襲おうとしていたのだ。

ランドウ「参ったな、1人で手に負えるのか…。」

すると、今度は奇妙な動物が現れた。

ランドウ「……は?」

ランドウは驚愕する。
その奇妙な動物は、どこからどう見ても龍(ドラゴンじゃない方)だったのだ。

?「お、お主! 何者でござるか!? ん? その着物…もしやワノ国の者か!?」

モチャ「え!?」

ランドウ「……喋った…?!」











-一方、ライコウ達は-

フランキー「敵地で蕎麦食うたァ、呑気な性格なんだな…。」

ライコウ「ほうは(そうか)?」

ズルズルと蕎麦を啜って食うライコウに、フランキーは苦笑い。
“剣帝”の異名を持つライコウの素性がまさかここまで自由な輩だとは思ってなかったらしい。

フランキー「助けにはいかねェのか?」

ライコウ「俺が出張ったらアイツらが戦ってる意味が無いだろ? それにある程度の面子は揃えてんだ、問題ねェさ。」

すると、研究所の出入り口から、2人の男が出て来た。

マイキー「…え゛!!? ライコウさん!!? どうしてここに!!?」

錦えもん「おぉ、そなたは!!」

そう、モモの助探索にあたっていたマイキーと錦えもんだったのだ。

ライコウ「おぉ、お前ら。 生きてたか。」

マイキー「何を呑気に蕎麦食ってんだアンタ!!?」

ライコウ「腹減っただけだ、何か問題あるか。」

マイキー「……いや、別に…。」

蕎麦を食い終えたライコウは、下駄の音を鳴らして2人の元へ行く。

マイキー「何で上半身裸なんすか。」

ライコウ「途中でイカダ沈んでな。 泳いできたんだ。」

マイキー「泳いで!!? っていうか、何でイカダで来ようと思ったんですか!!?」

ライコウ「……子供心?」

マイキー「ダメだこりゃ…。」

ライコウの化け物じみた身体能力とバカとしか言いようのない動機に頭を抱えてしまうマイキー。

ライコウ「今、どうなっている?」

マイキー「そうだった! 実は…。」

マイキーはこの島で起きた出来事を説明する。
シーザーの実験、ヴェルゴの登場、黒ひげ海賊団幹部・モリアの部下…それら全てを事細かに語った。

ライコウ「成る程…大詰めだな。 おいお前ら!! 網を用意しとけ。」

「は? 網、ですか…?」

ライコウ「出入り口付近に張っておけ。 ルフィのことだ、シーザーをぶん殴って誘拐するだろうよ。」

ライコウはいつになく楽しそうに部下に命じたのだった。 
 

 
後書き
そろそろ100話か…頑張ります。 

 

第100話:“海賊ヴェルゴ”

 
前書き
ついに100話突破。
これからもよろしくお願いします。 

 
ランドウとモチャの前に現れた龍は、モモの助という名前とのこと。
そう、錦えもんがマイキーと探していたあのモモの助である。
モモの助曰く、諸事情でとある船に密航してこの島に着き、そこでうずまき模様の果実を食べてしまい、何だかんだでこの姿になってしまったらしい。
要は元人間…動物(ゾオン)系能力者なのである。

ランドウ「そうか、悪魔の実か…。」

モモの助「…戻れるのか? 元の姿にどうやって?」

ランドウ「私は能力者ではないからな…。」

モモの助「そ、それよりも拙者…(わっぱ)達に伝えたいことがあるのでござる!!」

モモの助はシーザーがホグバックと話していた恐ろしい内容を耳にしたという。
何と、子供達がいるのは病気ではなく巨大化する薬の実験体であり、約5年後にはこの施設に連れてこられた子供は全員この世にいないという惨い内容だったのだ。さらにシーザーはまるで罪悪感のない満面の不気味な笑みで「実験に失敗はつきもの…仕方のない事だ……!!」と発言していたらしい。

ランドウ「死んでも治るバカではないということがよく分かったよ。」

その時だった。

「待て~~~~~モチャ~~~~!! キャンディよこせ~~~!!」

「独り占めすんなァ~~~!!!」

「!!」

モチャ「皆!」

モモの助「あ、あの童達は!!」

禁断症状で錯乱状態の子供達が突撃してきた。
先程よりかなり凶暴化しており、ランドウ1人では手に負えなさそうだ。

ランドウ「思ったより早く来たな…子供を傷つけるのはいささか好まん、逃げるしかないな。」

すると、次の瞬間!

ロビン「“千紫万紅(ミル・フルール)”!!! “|巨大樹《ヒガンデスコ・マーノ)”!!!」

ロビンが両手をクロスさせながら言うと、子供達の前に巨大な人の手が現れ、子供達の行く手を阻んだ。
そう、麦わらの一味が加勢に来たのだ。
しかし子供達は容赦なくロビンの出した巨大な手を鉄パイプで殴ったり、噛みついたりしロビンは痛そうだ。

チョッパー「モチャ! 大丈夫か!?」

モチャ「たぬきちゃん!!」

チョッパーも同行しており、全員シノクニの餌食に放っていないようだ。

ランドウ「何をしている、解毒剤を早く打たねば危ないぞ。」

チョッパー「あぁ、分かっている! その荷車にあるのはワクチンと鎮痛剤か!?」

ランドウ「そうだ…ともあれ、あの状態の子供達を抑えるのはかなりの労力が必要だ、何とかせねば…。」

すると今度はアリスティアが合流した。

アリスティア「うわ、何このカオスな展開!?」

チョッパー「子供達が凶暴化してるんだ、早くワクチンを打たなきゃならない!! お前、白衣羽織ってるけど…一緒に治療できるか!!?」

アリスティア「いや、僕科学者だけど…出来ることがあるなら手伝うよ。」

こうして、恐るべき子供達計画ならぬ「恐るべき子供達治療救出計画」が始まった。

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-SAD製造室にて-

一方のローは、SAD製造室へ駆けつけたヴェルゴと激しい戦闘を繰り広げていた。

ロー「ハァ…ハァ…!!」

ヴェルゴ「ゼェ…ゼェ…クソ、こんな若造如きに苦戦するとはな…!! 俺も甘く見られたモンだ…!!」

ヴェルゴとローは互いに得物を構え、ぶつかり合う。
覇気を纏った竹竿と妖刀・鬼哭は火花を散らして激突する。
ヴェルゴは舌打ちしながらローを蹴飛ばし、竹竿を振りかぶった。

ヴェルゴ「“(オニ)(タケ)”!!!」

ロー「くっ!」


ドゴォン!!


ローは紙一重でそれを躱すが、ヴェルゴの一撃により放たれた衝撃波で吹き飛び壁に叩きつけられてしまう。それを見逃さないヴェルゴは、六式を併用してローの眼前に瞬時に移動し、渾身の蹴りを見舞った。
だがローは百獣海賊団の幹部を務める男…咄嗟に武装色の覇気で硬化した腕でガードする。

ロー「“カウンターショック”!!!」

ローが“カウンターショック”と言うと、ヴェルゴに強力な電流が走った。
バチバチという音を立て、ヴェルゴの周りには異臭を放つ煙が充満する。
電撃の攻撃は外傷は少なかれど、ダメージはあるのかヴェルゴはその場に仁王立ちしながらピクピクと痙攣する。
その隙にローは鬼哭の鞘を回収し、納刀して構えた。

ロー「“零閃(ゼロせん)”!!!」

ライコウから伝授された零閃を放つロー。
その斬撃が届く瞬間、ヴェルゴは何とか身体を動かして回避する。
斬撃はそのまま壁に減り込み、痕を残す。

ロー「ちっ!!」

ヴェルゴは再び竹竿に覇気を纏わせ、ローの鳩尾を突いた。
吐血し意識が飛びそうになったローだが、そこを何とか耐えて鬼哭の鞘でヴェルゴのこめかみを殴った。
さすがのヴェルゴも人の子か、脳を揺らされ膝をつく。

ロー「ガッ…ゴホ、ゴホ…!!」

ヴェルゴ「うっ…ぐぅ…!!」

ローとヴェルゴは殺気を放ちあい、再び得物を構える。
その時、扉から人の気配がした。

ロー「ハァ、ハァ……お前…。」

ヴェルゴ「ゼェ、ゼェ……今、取り込み中だが…今じゃなきゃイカンのかね、スモーカー中将…!!! どの道…君の口封じも、する…つもりだが…!!」

スモーカー「そりゃあ早い方がいいね…視界に入るゴミクズを眺めてんのもやなもんだ…“海賊ヴェルゴ”!!!!」

そう、スモーカーが自身の武器の丈の長い十手を手にして2人の前に現れたのだ。

「ヴェルゴ…お前の真実は部下達には知られたくねェな…アイツらはお前を親のように慕ってやがる…こんな裏切りはねェ。」

ヴェルゴ「それはもう手遅れだろう…ついさっきあいつらには会って来た。」

スモーカー「!? ………何をした!!!?」

ヴェルゴ「さァな…。」

スモーカー「ヴェルゴォ!!!!」

スモーカーは部下を始末したような口振りで話すヴェルゴに十手を振り下ろし、ヴェルゴは黒い棒を出し、スモーカーの十手の攻撃を防ぐ。

ヴェルゴ「熱くなるじゃないか、スモーカー君……!!! まさかあの海軍のはみ出し者達を心配しちゃあいまい…基地長たる俺が何をしようと勝手だろう…俺の正体を知ったお前達はどの道消えるのだしな…!!!」

ヴェルゴは覇気を纏った竹竿に口を付け、空気を入れる。
すると竹竿は急激に膨らみ、黒い棒に吹き入れられた空気は砲弾の様に飛び出し大爆発を起こした。
スモーカーはその攻撃を身体を煙化させる事で間一髪交わし、ヴェルゴの背後に周り、十手を振り下ろすが、ヴェルゴもまたスモーカーの攻撃を間一髪で交わし、蹴りや拳の肉弾戦になり、最後の拳と拳の一騎打ちでスモーカーはヴェルゴに力負けに後ろに跳ね飛ばされた。

スモーカー「お前がどれだけアイツらと長く付き合っていようと…百歩譲って“基地長”だろうと!!! 基地を離れりゃ部隊の命は隊長が預かってんだ…!! 俺の部下に…!! 手ェ出してんじゃねェよ!!!!」

ヴェルゴ「下らん…。」

ヴェルゴ、スモーカーと交戦。 

 

第101話:迷子は極めるとヤバイ

-R棟2階「秘密の部屋」-

ここでは、シーザーが全身スーツ達とたしぎを含むG-5の面々が逃げ惑う様をモニターから見ていた。

シーザー「クソ、思ったよりも生き残ったなクズ共め…!!! “三妖星”ハゴロモめ、よくも…!!! こんな所で死んで貰っちゃあ、俺の“実験ショー”は完成なんざしねェ!!!! オイ!! C棟とD棟の(ゲート)を閉めろ!! だがR棟だけは開けておけ、呼び込むからな。」

シーザーは、“R棟66番扉”を目指していることを見抜いている。
C棟とD棟の扉を閉ざすと、この研究所内の連絡通路は全てR棟1階へと繋がる。敵味方関係なく全ての生存者がこの下の部屋へしか行き着けなくなるのだ。R棟1階には外気を取り込む換気口があり、外気=シノクニを送り込める。全ての扉を閉じたそこは巨大なガス室とかし、全員が犠牲となる。
そしてその部屋の映像は全て新世界の闇の仲買人(ブローカー)達へと送られ、シーザーの科学力が闇の世界へ示されるという寸法だ。

シーザー「麦わら達を許すわけにはいかん…少々調子にのりすぎたな…!!!! 俺にはジョーカー達がついてんだ…ここまで来たら“理想的”に全員殺してやる!!!」

「お言葉ですが“M(マスター)”…あの恐ろしい毒ガスはあなたがお造りになったんで…!?」

「まるで、4年前の事故のベガパンクの毒ガスみたいで、俺達正直気味が悪くてよ…!!!」

すると、シーザーが突然涙を流し始めた。
それを見た部下達は、動揺する。

シーザー「……これは科学の弔い戦だ…部下達よ…!!」

シーザーは、ベガパンクがどれほどの極悪人か、自分が何故殺戮(こんな)兵器を造っているのかを語る。
しかし、シーザーが部下に話して来たことは真っ赤な嘘である。ベガパンクの口から科学班追放が言い渡され、頭に血が上って危険な兵器を使い、研究所ごと爆破したのはシーザー自身なのだから。
シーザーはG-5基地長ヴェルゴと手を組み、子供達を浚い、ヴェルゴに誘拐事件を海難事故に仕立て子供達と何も知らない部下達《かれら》を利用し続けているのだ。

シーザー「(シュロロロロ、単純なバカ共だ…!!)」

その時だった。
扉を破壊して、ルフィが現れた。

ルフィ「追いついた……。」

ルフィは怒っていた。
彼は海賊人生で今まで非道な奴らは山ほど見てきた。しかし、今回の敵シーザー・クラウンは今まで以上に質が悪い。自分の私欲の為に事故まで起こし、茶ひげと部下達を利用し、今また罪もない幼い子供達を自身の実験のために騙し殺そうとしている。
ルフィの内は怒りで煮えたぎっている。

ルフィ「…何なんだ、この島?」

その覇気に、部下だけでなくシーザーすらも怯む。
しかしシーザーは満面の笑みを浮かべて告げた。

シーザー「この島か? いいだろう、教えてやる!! ここは闇の科学の拠点だ!!! 許されねェ実験も必要な実験体の調達も好き放題!!! 全ては強力な後ろの盾によってその存在自体が揉み消される!!!」

尚もシーザーは話を続け、SADについて話し始めた。
SADは、あの“王下七武海”ドンキホーテ・ドフラミンゴの持つ工場で「SMILE」という果実に変わる。それは動物(ゾオン)系の“人造悪魔の実”で、力を求める誰もが欲しがる果実だという。
ドフラミンゴはこのSMILEを使い“新世界”で大物達と取り引きをしている。四皇も例外ではなく、その内の1人は能力者軍団を組織中だという。

シーザー「話のデカさが理解できたか!? ドフラミンゴのビジネスを邪魔する事でお前らがどれだけの大物達をブチキレさせるか!! 大物達が動き出せば…世界はうねり始める!! シュロロロロロ…捕まえてみろ…俺は守られてる…!! “ドフラミンゴ”!! “四皇”!! お前 こいつらにケンカ売る度胸あんのかよ!!?」

するとルフィは、何の躊躇もせずシーザーを殴った。
「そんなモン、いくらでも売ってきた」と。

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一方、ナミ達は子供達と戦っていた。

ナミ「“ミルキーボール”!!!! モチャ、先へ!!」

モチャ「うん!」

ナミの出したミルキーボールに初めは怯んだものの、直ぐに順応し、突進してくる子供達。
ロビンは1人ずつ子供を取り押さえ、そこにチョッパーがランドウが持ってきた鎮静剤を注射する。鎮静剤を注射された子供は人が変わったかのように大人しくなるが、こんな地道な作業では間に合わないだろう。

モチャ「この辺…もう私…どっちに行けばいいのか分かんない…きゃ~~~~~!!!」

ランドウ「(くっ、周り込んでいたか!!)」

アリスティア「マズイ!! キャンディを奪われたらまた振り出しじゃん!!!」

先回りをしていた数人の子供達は力づくでモチャからキャンディを奪おうとする。
その時だった。

?「我、稲荷の化身なり。 憑かれし狂う童達に、狐の加護で憑き直し癒しを与えん……“狐憑き・狐狗狸(こっくり)”。」

女性の声とパンッという手を叩いた音が響いた瞬間、子供達が全員崩れるように倒れた。皆寝入っており、鼻提灯を膨らませて寝ている子供もいる。

モチャ「え!? 何!? 皆どうしたの!?」

すると廊下の奥から、ハゴロモが現れた。
どうやら彼女が子供達を鎮めたようだ。

ナミ「さっきまで暴れてた子供達が…何をしたの?!」

ハゴロモ「催眠さね。 念を込めた私の言葉を用いただけの話…覇王色では気絶させてしまうからな。 さぁ、早く薬を打って治すんだ。」

チョッパー「あ…うん! ありがとう!!」

その直後、G-5とサンジが到着し、守備良く子供達を取り押さえた。

たしぎ「医療班、前へ!!」

『イエッサー!!!』

たしぎ「彼らを使ってください、注射なら打てます!!」

チョッパー「え!? あ、うん!!」

そこには、海賊と海兵という立場の壁は無かった。
今は一致団結しこの島から全員生きて脱出することを考えていた。

ナミ「そういえばゾロは…?」

ふと、ゾロがいないことに気が付いた。
そして、最悪の事態が脳裏に浮かんだ。

サンジ「アイツまさか、この期に及んで迷ったか…?」

『(……バカ野郎…。)』





















その頃、ゾロは…。

ゾロ「アンタが剣帝か? ここはどこだ、ルフィ達がいねェぞ。」

ライコウ「てめェが勝手に迷ったんだろうが!!!!」

どういう訳か一足早く脱出していた……。 

 

第102話:「もう誰も引き返せねェ」

-秘密の部屋にて-

ルフィに殴られたシーザーはそのまま壁に激突し、見事に鼻がへし折られ、涙と血反吐を吐きながらも話し始める。

シーザー「てめ゛ェ!!!!話を聞いてだの゛が!!? 俺のバックにいるのは…あのイカレた海賊ドフラミンゴだド!!!! アイヅこそがっ!! 新世界の闇を仕切る男…!!!!」

シーザー曰く、ドフラミンゴは武器・兵器・ドラッグをはじめとした“ヤバイ物”に全て絡んでおり、あらゆる闇の大物達と通じている「悪の火種」とのこと。

シーザー「ハァ…ハァ…い…今ならまだ許ひてやるぞ…!!! 今謝れば!!! おでに手をかける事が…どれほどの怪物達を怒らせる事かをよく考えろ゛!!!! “ガスティーユ”!!!!」


ドンッ!!!


シーザーの口から光線が放たれ、その光線は凄まじい破壊力で辺りの物質を跡形もなく破壊した。

シーザー「シュロロロロロ!! ザマーミロ!! 消し飛ん…ギァアアア~~~!!!」

跡形もなく消し飛んだと思われたルフィは何事も無かったかのように先程と同じ位置に立っていた。
シーザーは自分だけではルフィを倒せないと理解し、その場凌ぎの苦し紛れに弁解を始めた…!

シーザー「はァ…そうだろうな!! 実感が湧かねェよな、話がデカすぎる!!だが、研究所内にも“怪物”がいるぞ…!! ヴェルゴだ!! シュロロロロロ!! 奴の武装色には誰も敵わねェ!!お前も一味も全員死ナラゴフッ!!!!」

シーザーは苦し紛れの弁解に必死でルフィのパンチをカウンターで受け、無様に地面に伏す。

ルフィ「シィ~~~ザァ~~~~~!!!」

シーザー「む、麦わらァ!!」

















-SAD製造室-

ここでは、スモーカーVSヴェルゴが繰り広げられていた。
だが地力がヴェルゴの方が上らしく、スモーカーは満身創痍で倒れていた。

スモーカー「ハァ…ハァ…。」

ヴェルゴ「何故執拗に能力を使う…!? 君らしくない戦術だなスモーカー君…。」

悪魔の実の種類では自然(ロギア)系は最強とされてるが、実は意外な弱点がある。
身体を自然の物質そのものに変化させることが出来る上、物理攻撃を無効化できるなどメリットが多い自然(ロギア)系だが、その実によっては戦いで不利になることがある。
それが「体積」だ。格上の覇気使い相手に能力で体積を増やせば“的”を広げるだけとなり、ライコウのような「覇気の達人」が相手となると自殺行為に等しいのだ。
サカズキの“マグマグの実”のように体積が増えても触るだけでダメージを負う能力や、エースの“メラメラの実”のような体積が皆無に等しい能力ならば話は別だが、能力は使いどころを間違えれば命取りとなる。

ヴェルゴ「“鬼・竹”!!」


ボキィィ!! ベコォン!!


スモーカーは僅かな隙を突かれ、ヴェルゴの攻撃をモロに食らってしまう。
吐血しもがき苦しむスモーカーに、ヴェルゴは「勇敢なだけでは部下も浮かばれない」と嘲笑するが…。

スモーカー「ハァ…ハァ…ガフ!! これで借りはナシだ、さっさと決着(ケリ)をつけろ!!」

ロー「フッ、そんなに海賊に借りを作るのが嫌か?」

スモーカー「……海兵の恥だ…!! 部下に合わせる顔がねェ…!!」

ヴェルゴ「!!? そういうことか……!!!」

ヴェルゴは冷や汗を流しながら怒りに震えた。
そう、スモーカーはヴェルゴに勝つことではなくローの体力回復を狙っていたのだ。スモーカーは部下想いの性格であることから、一対一(サシ)で落とし前を付けに来たと思っていたヴェルゴは、まんまとハメられたのだ。

ロー「それよりも…いつまでも黙る必要があるか? 聞こえてんだろ“ジョーカー”…いや、“天夜叉”ドフラミンゴ!!」

ローはヴェルゴの腰ポケットに入っているジョーカーことをドンキホーテ・ドフラミンゴ直通の子電伝虫にそう叫ぶ。

ロー「ヴェルゴはもう終わりだ…お前は最も重要な部下を失う。 シーザーは麦わら屋が仕留めるだろう。 SADも全て失い、カイドウさんとライコウさんが動きだす!!! 今まで築いてきた全てをお前は瞬く間に失う!!! いつもの様に高笑いしながら次の手でも考えてな。」

ドフラミンゴ《フフッ…フッフッフッフッフッフ!! イキがってくれるじゃねェか小僧! フフフフ!! だがお前、大丈夫か? 目の前のヴェルゴを本気にさせてやしねェか?》

ローの目の前には、全身を黒く硬化させ、筋肉モリモリマッチョマンと化したヴェルゴが。
ヴェルゴの本気を初めて見たスモーカーは、絶句する。

ドフラミンゴ《お前の能力でも、コイツの覇気は全て防ぐ!! いくらお前があの化け物に扱かれていようと、お前はヴェルゴに敵わねェ!!!》

ヴェルゴは竹竿を構え、猛スピードでローに襲い掛かった。


斬!!


ほんの一瞬だった。
ほんの一瞬でローは自身のトラウマたるヴェルゴを上半身と下半身を島ごと真っ二つにしてしまった。

ロー「……頂上戦争から2年…誰が、何を動かした…? お前は平静を守っただけ…白ひげは時代にケジメをつけた…海軍本部は新戦力を整えた。 大物達も仕掛けなかった。 まるで準備するかの様に…あの戦争は“序章”にすぎない。 お前はいつも言ってたな……“手に負えねェうねりと共に、豪傑共の新時代がやって来る”と。 歯車を壊したぞ…もう誰も引き返せねェ!!!!」 
 

 
後書き
ドフラミンゴの言う「あの化け物」はライコウのことです。
 

 

第103話:ドフラミンゴの刺客

ヴェルゴ「…畜生…明日の朝食をどうやって食えばいい…俺としたことが…!!」

崩れ行くSADの装置の傍ら、ヴェルゴはローのオペオペの実の能力で身体をバラバラにされ、手摺に身体のパーツを横に一列に並べくっつけられた状態でしゃべり出すヴェルゴ…。

ヴェルゴ「ロー、よく憶えておけ…お前はドフィの“過去”を知らない…それが必ず命取りになる!!!」

ロー「……それはこっちが言いてェな。 お前らはライコウさんの“根の深さ”を知らねェだろ。」

ヴェルゴ「生意気な……威勢だけの小僧にこの根深い世の何が分かる?」

ロー「ドフラミンゴが“天から堕ちた男”だってことぐらいは知ってるさ。」

ヴェルゴ「!!? 貴様……どこで…!!?」

ロー「この部屋はやがて吹き飛ぶ…じゃあな…ヴェルゴさん(・・・・・・)。」

ローはヴェルゴを嘲笑いながら部屋を後にした。
その時、電伝虫の音が鳴った。

ロー「! ライコウさん…?」

それは、ライコウ直通の電伝虫。
ローは走りながら受話器を取る。

ロー「ハァ、ハァ……こちらロー。」

ライコウ《ロー、見てたぞ~。 SADの破壊は成功したようだな。》

ロー「……見てた!?」

ライコウ《今さ、島の外で見てたんだよ。 オペオペの実はスゲェなホント。》

ロー「アンタ来てたのか!!?」

ライコウ《ついさっきさね。 途中でイカダ沈められてさ、泳いできた。》

ロー「そもそもイカダで来ようとするなよ……。」

何故かイカダで来ようとしたライコウに、マイキーと似たかよったかの反応をするロー。

ライコウ《今こっちにゃハゴロモが送ってくれた研究所の地図がある。 俺の言う通りに動け。》

ロー「ハァ、ハァ…分かった、どこへ行けばいい?」

ライコウ《SAD運搬通路口へ向かえ。 R棟D棟間通路に確か運搬用トロッコが置いてあったはず…それで脱出しろ。 因みに今、こっちに“海賊狩りのゾロ”とマイキーと錦えもんがいるから問題ない。 ルフィに伝えて早く脱出しろ。》

ロー「(ゾロ屋、いつの間に……。)了解…!!」

ライコウ《外で待ってる。》
















-R棟1階にて-

シーザーとルフィの激闘は「秘密の部屋」からR棟1階へ移動。
ルフィが終始圧倒していたが、シーザーは最後の手段…シノクニを取り込みパワーアップする方法に出た。
部下を脅しシノクニを換気口から流し込むと、シーザーは自身の身体をガスに変え、シノクニと一体になった。
その姿は正に悪魔そのものだ。

シーザー「シュロロロロロロロ!!! これが俺の…科学の力!!! 公開実験によって、すでに2つの国がこのシノクニに飛びついてきた……!! ごく平和な国だ…!! 人間は皆、本気でてめェの身を守ろうと考えた時、敵を殺す手段を欲する!! ジルドや世界皇帝、黒龍のような甘っちょろい奴を切り捨て、俺を必要とするだろう!!! 世界を兵器まみれにして!!! 俺は!!! “死の国の王”となるのさ!!! シュロロロロ!!!」

上機嫌に話すシーザーの周りには次々とシーザーの部下達がシノクニの餌食となり、白く固まっていく。
次々と固まっていく同志を目の当たりにし、秘密の部屋に待機している兵は酷い現実に狂気乱舞するが、シーザーはシノクニの出来に「我ながら素晴らしい出来だ」や「もはや芸術」と狂喜する。

シーザー「? おい、どこへ行く“麦わらのルフィ”!!!」

ルフィは一目散に通路へと走っていくではないか。
それを見たシーザーは「みっともねェ男だ」と嘲笑う。
だが、その笑みは一瞬で消えた。何とルフィが戻って来たのだ…しかも腕を巨大化させて覇気を纏いながら。

ルフィ「お前の顔なんか!! 2度とみたくねェ!!!! “ゴムゴムの”ォ…!!!」

シーザーは敗北を悟り、必死に命乞いをする。
だが、そんなものなど通じる訳も無く……。

ルフィ「“灰熊銃(グリズリー・マグナム)”!!!!!」


ドム!! ガン!!


シーザー「イゴガベ!!!!」

ルフィの渾身の一撃がシーザーの懐に直撃し、シーザーはR棟1階の壁を突き抜け、遙か彼方へと飛んでいった…!!

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ライコウ「イカズチ、俺だ。」

イカズチ《あ~、ライコウ様じゃないっすか!! どうもっす、イカズチっす!!》

ライコウ「(軽いわ~、相変わらず。)」

ライコウは百獣海賊団三妖星・イカズチと電話していた。
イカズチは三妖星一の機動力を誇り、百獣海賊団屈指のヤンチャものだ。普段はノリが軽く人懐っこいが、いざ戦闘となると殺気バリバリで敵を蹂躙する暴れん坊でもある。

イカズチ《何か用っすか?》

ライコウ「お前、マイの一見知ってるよな。 アプー達の殲滅許可を出すから、わんさか連れてアイツらぶっ潰してきてくれ。 俺は今SADの件で忙しい。」

イカズチ《了解っす! ボッコボコにすればいいんすよね?》

ライコウ「向こうが後悔するぐらいにお仕置きしてくれ。」

イカズチ《アイアイサー!!》

ライコウは「ホント軽い奴」と呟きながらイカズチとの電話を終える。

「ライコウ様、服が全部乾きました!!」

ライコウ「お。」

ライコウは即席の物干し台へ向かい、狩衣を着始める。

ライコウ「やっぱり、俺は狩衣が落ち着く。」


ドゴォン!!


『!!!?』


通路口の方から爆音が響き渡った。
それと共に、仕掛けてあった網に何かが入った。

「な、何だ!?」

「こ、これは……シーザー!!」

そこには、ボッコボコにされたシーザーの姿が。
どうやらライコウの予想通り、ルフィはぶん殴ったようだ。

シーザー「ガガ…ぺ…。」

ライコウ「丁度いい……シーザーを拘束しろ。 船の中に海楼石の鎖があったはずだ。」

『はっ!』

























-時同じくして-

?「任務の切れ目は縁の切れ目!! 帰ってきたら息の根を止めてやるわ!! ジョーカーのクズ野郎っ!! アイツは…私の大切な婚約者を町諸共消し飛ばしたのよ!!!
生かしちゃおかない!!!」

涙ながらにジョーカー=ドフラミンゴを罵倒するのは、ドンキホーテ海賊団使用人兼殺し屋のベビー5。彼女はブキブキの実という悪魔の実を食べ、全身武器人間となったドフラミンゴの部下である。
そして、そんな彼女を乗せて空を飛ぶのは、同じくドンキホーテ海賊団の幹部であるバッファロー。彼も同じく悪魔の実の能力者…グルグルの実の回転人間で、彼は髪の毛等を回転させる事で空を飛ぶことが出来る。

ベビー5「それも今回で8回目!!! 将来を誓い合った私の愛しい人達を8人!!!!
町を8つ!!! 何故私の幸せをアイツはブチ壊すの!?」

バッファロー「んに~~~~ん!!! それ、若の愛だすやん!! 若はお前を実の妹の様に思うからこそ町の一つも消し飛ばすというものだすやん!!! おめー、もっと断るという事を知らぬばならぬぞ!!?」

ベビー5「何がいけないの!? 彼は私を必要としてくれたもの!!」

そう言いながらベビー5は結婚を約束した彼の一人を思い出すが、その彼は御世辞にも素敵と言えない鼻毛を茫々生やし、1年は確実に洗濯していないであろう服を来たホームレスな男であった…。
彼女以外の女は告白された途端、絶対に断るだろう。

バッファロー「その頼まれたら断れねェ性格~~~!! 何とかしねェとなァ!! 新聞50社取るのもおかしいし、人に金貸しすぎだし、色んな物買わされすぎだし、今借金いくらだ?」

ベビー5「うるさいわね!! 私の人生に9800万ベリーよ!! ほっといて!!」

バッファロー「あ! そうだ、200万貸して。」

ベビー5『え!? (私…必要とされてる///////)』

彼女の異常な人の良さは死んでも治らないだろう…。

ベビー5「いつまで必要?」

バッファロー「帰ったらカジノで遊ぶんだ♪」

ベビー5「じゃあ! 任務終えたらすぐ…借りて用意するわね! 頼まれた任務はやるけど、ジョーカーの奴! 必ず殺してやるわ!!」

しかし、この2人はあまりにも運が悪かった。
まさか後にパンクハザードで、剣帝(ライコウ)に完膚無きなまでに叩きのめされるとは思いもしなかっただろう……。 

 

第104話:“秘奥義・瞬天殺”

一方、ライコウはマイキーやゾロ達と共にドンキホーテファミリーの相関図を見てこれからの行動を考えていた。

ライコウ「ドンキホーテファミリーは、船長のドフラミンゴを頂点とし、次位に独自の軍を保持する最高幹部がいる。」

フランキー「その最高幹部が、ディアマンテ・トレーボル・ピーカっていうアクの強そうな3人か。」

ライコウ「その通り…3人共、悪魔の実の能力者だ。」

ディアマンテは剣術に長けており、自分や触れたもの全てをはためかせることが出来る“ヒラヒラの実”の旗人間である。ライコウの“縮地”を一時的に使えなくさせた数少ない実力者だ。(詳しくは「第13話:逃走開始」でご確認ください。)
トレーボルは全身から非常に粘性の強い液体を分泌できる“ベタベタの実”の粘液人間であり、可燃性で粘着力のある液体を分泌することが出来る。
ピーカは“イシイシの実”の岩石同化人間で、岩や石と同化することで自在に操ることが出来る。身の丈をも上回る程の大太刀を武器として扱い、さらに武装色の覇気を会得している。
3人共、かなり腕の立つ曲者だ。

錦えもん「幹部共も油断ならぬな…珍妙な輩達だが、手強そうでござる。」

ゾロ「能力者じゃねェ奴も、格闘に長けてそうだな。」

マイキー「一番厄介なのは合法ロリ・シュガーだ…見た目はガキだが中身は22歳と聞く。 身体能力も高いだろうな…。」

触れた相手をオモチャにさせることが出来る“ホビホビの実”の能力者…見た目は子供、中身は身体能力が高い大人・シュガー。
彼女の能力は恐ろしく、オモチャにされた者は世界中の人間の記憶からその存在が消され、シュガーの契約(命令)には絶対逆らえなくなってしまう。

ライコウ「(本人の意識を失うと自動的に元に戻るらしいからな…追々策は練るとしよう。)」

だが問題はもう1つある。四皇だ。
ドフラミンゴはSMILEで黒ひげとビッグ・マムの2人と取引している。2人も何らかの動きを見せるだろう。そうなったことを踏まえ、ドレスローザでは幹部達を大目に集う必要があるのかもしれない。

ライコウ「とりあえずサボとコアラは向かわせてある…ジャックも動かすか。 ってなると、ウチの一味でドレスローザへ向かうのは俺・サボ・コアラ・ロー・コラソン…それと……ん?」

ふと、何者かの気配を察知したライコウは、空を仰いだ。
目を凝らしてよく見ると、メイド服の女と髪をグルグルと回して接近する男が。

ライコウ「アレは…!」

すると、ライコウの元に部下達が慌てて駆けつけた。

「ライコウ様、敵襲です!!」

「敵は、ドンキホーテファミリーのベビー5とバッファローかと!!」

ライコウは「分かっている」と言い、刀を携えて立ち上がる。

ライコウ「……お前達はいいのか? 俺に任せなくともよかろうに。」

ゾロ「アンタの戦いぶりを見たいんでな。」

ライコウ「成る程ね。」

するとライコウは右腕に覇気を纏わせ、“覇王拳・狼王波”の対空版“覇王拳・狼王昇波”を放った。
狼の形を模した拳圧はうねりながら飛び、ベビー5とバッファローに向かうが、バッファローのとっさの判断で躱されてしまう。

バッファロー「ア、アレは“剣帝”!!? 何故ここに!!?」

ベビー5「拳圧で叩き落とそうなんて、デタラメ過ぎだわ!!! でも…やる気ならやったげるわよっ!!!!」

ベビー5は、自身に装備された武器を連射し、ライコウを攻撃する。
しかしライコウは瞬時に刀を抜き、刀を高速旋回させて盾にした。
放たれた銃弾は全て斬り落とされていく。

「スゲェ!!」

「さすがライコウ様だぜ!!!」

ライコウの剣技に、盛り上がる百獣海賊団。

ベビー5「っ……あなたは銃火器(オモチャ)程度じゃ満足できないみたいね…いいわ!! “武器変貎(ブキモルフォーゼ)剣女(エスパーダ・ガール)!!!」

ベビー5がそう叫ぶと、彼女の上半身は巨大な曲刀と化した。
そして、彼女の足をバッファローが持ち、バッファローは即席の剣士となる。

バッファロー「行くか、ベビー5!!」

ベビー5「勿論!! シーザーさえ奪還できれば十分だわ、剣帝が相手なんて冗談じゃないわ!!!

すると、ベビー5は今度は刀からミサイルへと変貌した。

バッファロー「“グルグル投射砲・ミサイル(ガール)”!!!!」

自らをミサイルに変身させて相手に特攻するベビー5。
それに対し、ライコウは納刀し居合の構えを取った。

ライコウ「久しぶりにやってみるか……あの居合(わざ)を。」

ライコウは鬼王(あいとう)に武装色の覇気を纏わせる。
そしてミサイルと化したベビー5が自らに直撃する寸前で、抜いた。

ライコウ「“秘奥義・瞬天殺”。」

一瞬だった。
ライコウは縮地のスピードと覇気で桁外れにパワーアップした一撃をベビー5に食らわせた。
ミサイル状態の彼女は吐血し、制御不能のまま別の場所で着弾・爆発する。
超神速の移動術“縮地”と抜刀術を織り交ぜた、“零閃(ゼロせん)”とは一味違った神速の抜刀術はドンキホーテファミリーの殺し屋を容易く仕留めた。

ライコウ「小娘…お前の度胸に免じて急所を外し加減しておいた。 まァ、死にやしないから安心しろ。」

ゾロ「(手ェ抜いてたのか!!?)」

ライコウは急所を外しただけでなく、何と手を抜いていた。
その事実に、ゾロは思わず放心状態となり、「世界四大剣豪」という壁の大きさを改めて知った。

バッファロー「ベビー5!!!!」

秒殺されたベビー5に、動揺を隠せないバッファロー。

バッファロー「おのれ剣帝!! 許さな「俺はここだ。」…!?」

バッファローの目の前に、いつの間にかライコウが。
縮地の驚異的脚力で、跳んだのだ。

ライコウ「歯ァ食いしばれよ、舌噛みたくねェだろ!」

バッファロー「!!?」


バキッ!! ボゴォォン!!


ライコウは踵落としでバッファローを地面へ叩き落とした。
バッファローは一発K.O.……そのまま意識を失った。

ライコウ「うし、終わりっ!」

コートをなびかせながら着地するライコウ。

錦えもん「何と……あの珍妙な曲者を無傷で…。」

フランキー「これが新世界のレベルってか……。」

ライコウの圧倒的戦闘力に、舌を巻くフランキーと錦えもん。

ライコウ「2人を捕えろ! 一々暴れてもらっちゃあ困るからな。」

その時だった。

『出ェたァ~~~~っ!!!!』

ライコウ「!」

トロッコに乗って、通路から海兵や子供達、そしてロー達が出て来た。

ゾロ「やっと来たかアイツら。」

フランキー「いや、迷子でここへ来た奴に言われたくねェだろ。」

マイキー「!? 陸軍大将もか!!」

各々が違った反応をする中、ルフィは目を見開いた。

ルフィ「あ…!!」

ルフィの瞳に映るのは、12年前から変わらぬ、あの男だった。
ルフィは全て覚えている。その男を。

ルフィ「ライコウ……!!」

ライコウ「! ルフィか…久しぶりだな。」

パンクハザードで、運命の再会をルフィは果たした。 
 

 
後書き
ライコウの新技はどんどん増えていきます。
今回出た“秘奥義・瞬天殺”は、るろ剣の瀬田宗次郎の“瞬天殺”をライコウなりにアレンジしたものです。 

 

第105話:世界陸軍大目付

ルフィ「ライコウ! 懐かしいなァ~、何年ぶりだ!?」

ライコウ「12年ぶりだな。 お前が7歳ぐれェ」

下駄を鳴らしてルフィに近づくライコウ。
対するルフィも、トロッコから降りてライコウに近づく。

ライコウ「随分強くなってるようだなルフィ、ガキの頃よりも覇気がある。」

ルフィ「俺はお前の思ってる以上に強いぞ!!!」

ニシシシと笑うルフィに、ライコウも微笑む。
それを眺めていたナミ達は、ライコウを見て唖然とする。

サンジ「アレが“剣帝”ライコウか…。」

ナミ「本物は初めてだわ……!!」

ウソップ「めっちゃ強そうじゃねェかよ~…!! 敵じゃなくてよかった…!!」

ライコウは四皇“百獣のカイドウ”が率いる百獣海賊団の副船長…剣一本で海賊界及び剣客界の最高峰に君臨する大海賊であり、多くの悪党達に畏怖され続けている怪物。覇気の達人でもあり、その戦闘力は天災レベルだ。
敵に回したら、命がいくらあっても足りない。
それほどの豪傑がルフィの知人であることに心から安堵する麦わらの一味。

ハゴロモ「副船長、御久しゅうございます。」

ライコウ「お、ハゴロモ! ご苦労さん、これで任務は終わりだ。 ロー、アリスティア…お前らもよくやった。」

部下に労いの言葉を掛けるライコウ。
それに対しローは不敵な笑みを浮かべ、アリスティアは照れながら「いやいや、それほどでも」と謙遜する。

ライコウ「…? おい、コラソンはどこへ行った? アイツも一緒にいたろ?」

ロー「それなんだが…。」

その時だった。

コラソン「おわァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

山から火だるまになったコラソンが転がり落ちて来て、雪の中に激突。
雪を盛大に被ったため鎮火し、上半身を減り込ませてやっと止まった。

『……。』

そのギャグマンガのようなドジっぷりに、全員が白い目でコラソン(上半身が埋もれてるので下半身だけ)を見る。
ライコウとローに至っては頭を抱えて溜め息を吐いている。

マイキー「……何やってんだか。」

呆れながら、マイキーはコラソンを救出。

ライコウ「お前どこ行ってた? 何で山から降ってきた。」

コラソン「あ、あぁ…少し調べたいモンがあってな…。」

ライコウ「?」

コラソンはコートの中から封筒を取り出し、それをライコウに渡す。
ライコウが中身を確認する。

ライコウ「コイツァ…!」

コラソン「この島で、シーザーは“酒鉄鉱”を使った兵器の製造もしていた。 だから焼却処分したばかりだ。」

ライコウ「それで火だるまになったのか。」

コラソン「そ、それは不可抗力だからな!!!」

ライコウ「今更驚きやしねェさ……だがこの件はブラック達に預けよう。 ハゴロモ!! お前はアリスティアとマイキー達を連れて真っ直ぐワノ国に戻り、ブラック達と共に“酒鉄鉱”の調査をしてくれ。 ギネスも動いているからドレスローザの方は任せろ。」

ハゴロモ「了解…。」

するとライコウのコートから電伝虫のなる音が響いた。
電話の主は、ギネスだった。

ライコウ「(ギネス…?)……俺だ。」

ギネス《旦那! 丁度良かった、早くパンクハザードから脱出してくれ!! 黒電伝虫で盗聴してたが、陸軍の救援部隊がそっちに向かってる!!!》

ライコウ「そこまで慌てる必要ないだろう。」

ギネス《“クザン”が乗ってるそうだ!!!》

ライコウ「!?」

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海は見ている 世界の始まりも
海は知っている 世界の終わりも

もしも自分が消えたとしても
全て知っている 海の導き

恐れてはいけない 貴方がいるから
怯えてはいけない 仲間も持つから
進まねばならない 青きその先へ


放浪者のような服装の上に陸軍の黒いコートを羽織った男…クザンは、恩師である伝説の元海軍大将“黒腕のゼファー”が好んで口ずさんでいる鎮魂歌“海導”を歌いながら、水平線を見据えている。
現海軍元帥・サカズキと2年前にパンクハザードで死闘を繰り広げ、最終的には敗北したクザンは、現在陸軍に籍を置いている。
これは尊敬しているイリスの勧めでもあり、政府としても海軍大将になった男を失いたくないということも含め、こうして陸軍の幹部として第2の人生を送っている。
組織体制が海軍と違う上、ジルドが信頼しているせいもあってか、クザンは海軍時代より伸び伸びとしていることは秘密だ。

「クザンさん。」

クザン「ん?」

「ジルド元帥からお電話が。」

クザン「出るの面倒だから切っていいよ。」

「は?」

クザン「いや~、どうせ長い話だ《とぼけるなクザンッ!!!》……あらら、筒抜けだった?」

ジルド《丸聞こえだわ!! 任務ぐらいしろよ、我が優秀な兵士達の手本となる男なんだぞお前はァ!!!》

ジルドのツッコミにクザンは「はいはい、そうですか」とダラケながら返事をする。

ジルド《パンクハザードでランドウ及び海軍G-5部隊を救助しろ。 お前の友達が危険かもしれない。》

クザン「……!?」

クザンはG-5部隊に心当たりがあった。
G-5には、2年前に元部下のスモーカーが異動したところだ。

ジルド《ランドウからの情報だと、パンクハザードにいるらしい。 そのまま向かってくれ、パンクハザードはドフラミンゴと繋がっている。》

クザン「……もしもだがよ…ドフラミンゴがいたら?」

ジルド《責任は全て俺が取るから好きに対処しろ。》

クザン「あいよ。」

元海軍大将・現世界陸軍大目付クザン、パンクハザードへ。 
 

 
後書き
ついに出た~、「改訂版・最強生物の副船長」バージョンの青雉。
 

 

第106話:麦わら・百獣海賊同盟

ルフィ達はシーザー戦の勝利を祝いして宴を催そうとしたが、ライコウが「陸軍の援軍が来る」と言い却下せざるを得なくなり、早々に陸軍大将(ランドウ)と海軍G-5部隊、ハゴロモ達と別れを告げてドレスローザへ向かうことにした。
その数時間後、シーザー誘拐とSAD破壊の報を聞いたドフラミンゴがパンクハザードへ向かっていた。ドフラミンゴはドレスローザからパンクハザードへの長距離を、イトイトの実の能力を駆使して移動中だ。

ドフラミンゴ「…悪運を持ち合わせていたようだな…小僧共…!! …まさか“空の道”が…途切れるとは…!!! !………。」

ふとドフラミンゴは、広大な海腹を流れるヨットを見つけ降り立った。
するとそこには生首状態のバッファローとベビー5、そしてローと同じ帽子と口元に百獣海賊団のマークが書かれた電伝虫が置いてあった。

バッファロー「若!!!」

ベビー5「ちくしょう!! アイツら…!!」

首はローが能力を使って斬ったので2人はまだ生きており、懸命に心の内を訴える。

バッファロー「すまぬだすやん!! 死んで詫びたい……!!」

ベビー5「私は必要とされたのに…応えられなかった!!」

ドフラミンゴ「これは…ウチのタンカーの救命(ライフ)ヨットじゃねェか…。」

バッファローとベビー5は任務の失敗を涙ながらに詫びるが、ドフラミンゴは「何も言うな……俺に従っただけだ」と、自分の采配ミスとして咎めなかった。
すると…。

ロー《こりゃ驚いた……ボスが直々にお出座(でま)しとは…そりゃそうか、それだけの事態だ。》

ドフラミンゴ「ローか…久しぶりだってのに……中々会えねェもんだな……ロシナンテとシーザーもいるのか?」

先程とは打って変わって殺意を剥き出しにし、電伝虫から流れるローの言葉に応じるドフラミンゴ。

ロー《お探しのシーザーなら…俺らと一緒にいる…。》

シーザー《…ジョ…ジョーカー~~~!!!! 助けてぐれェ!!!!》

コラソン《お前、黙れ!! “(カーム)”!! …久しぶりだな、ドフィ…。》

ドフラミンゴ「ベビー5とバッファローの体はどこにある?」

電伝虫から聞こえるシーザーの悲痛な声。
しかし、ドフラミンゴはシーザーを心配するわけでもなく、先ずは部下の体の安否を優先する。
しかし、ローは全く違う話題を口にした。

ロー《取引をしよう…。》

ローが持ち掛けたのは、ドフラミンゴとの取引だった。

ドフラミンゴ「フッ……フッフッフッフッフッフッ!!!! おい、ロー!! 頭を冷やせ! ガキが大人のマネ事をするんじゃない!! 今何処にいるんだ!? …俺を怒らせるな………!!」

しかし、その直後ローが電伝虫越しで笑い始めた。
ドフラミンゴはそれが不愉快だったのか、青筋を浮かべて「何が可笑しい」と呟く。

ロー《怒らせる(・・・・)? お前の方じゃないのか? お前の取引相手で最も強大な存在である四皇“ビッグ・マム”、同じく四皇“黒ひげ”…お前の方こそ、怒らせる訳にはいかねェ奴が多い筈だ…!!》

ドフラミンゴ「……………!!!」

先程とは打って変わり、顔面蒼白になるドフラミンゴ。
顔色の悪さに、バッファローとベビー5も心配そうに見つめる。

コラソン《お前が“SMILE”をもう作れないと知られたらどうなる…? 黒ひげは分からねェが、ビッグ・マムは話し合いに通じる女とは言えるか!? ……報復として、お前は消される…!!》

ロー《“犯罪界の絶対王者”もお前を敵視しているからな……ハハッ! 同情しちまうよ。》

ドフラミンゴ「オイ!! 冗談がすぎるぞ!! どうすりゃあシーザーを返す…!? さっさと条件を言え!!」

予想もし得なかった事態に異常なまでに取り乱すドフラミンゴ。
それほどまでに、四皇と新世界の強豪達は怒らせるとマズイのだ。
そんなドフラミンゴにローが突き付けた条件…それは、「王下七武海の脱退」だった…!!
予想し得ない事態に恐れていた最悪の条件に、ドフラミンゴは言葉を失う。
今まで築いてきた地位を捨てればいいというのだが、これが意味するのは海軍大将がドフラミンゴを狩りに来るということだ。
さらに言うと、ドフラミンゴは闇の仲買人(ブローカー)“ジョーカー”の一面もある。実は裏社会は世界陸軍も担当の対象…そうなると陸軍大将もドフラミンゴを狩りに動けるのだ。

コラソン《リミットは明日の朝刊。 ドフィ、お前の“七武海脱退”が新聞に報じられていれば……こっちからまた連絡する。》

ロー《何もなければ交渉は決裂だ……じゃあな…!!!》

ドフラミンゴ「おい、待て!! ロー!!! ロシナンテ!!!」

ローとコラソンは要件のみを話し、一方的に子電伝虫の通信を切った。
そしてドフラミンゴは……ブチギレた。

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一方のルフィ達は、サニー号にてライコウ・ロー・コラソンから作戦の内容を聞いていた。

ライコウ「という訳で、今日から“麦わら・百獣海賊同盟”によるドンキホーテファミリー殲滅作戦の開始だ。 ローの話からスタートだ、耳の穴かっぽじってよく聞け。」

ローは口を開き、語り始める。

ロー「……新世界にいる大海賊達は、大概海のどこかに“ナワバリ”を持ち無数の部下達を率いて、巨大な犯罪シンジケートの様に君臨している。 一海賊団で挑んでも船長の顔すら拝めやしない。 だが、あくまで裏社会…海軍に目を付けられねェ様に必要な取り引きは闇の中で行われる。 その中で最も信頼と力を持っている男がドフラミンゴだ。」

そのドフラミンゴにとって最も巨大な取り引き相手が「四皇」であるビッグ・マムと黒ひげとのこと。

サンジ「俺達が狙うのは四皇の首か?」

ライコウ「表向きはな…。」

ライコウの言葉に首を傾げる麦わらの一味。
真の標的は四皇ではないそうだ。

ライコウ「俺達の本当の標的は、“ジェルマ王国”とそのバックにいるある男(・・・)だ。」

ルフィ「ジェルマ王国?」

ライコウ「世界政府加盟国である北の海(ノースブルー)の海遊国家だ。 科学戦闘部隊“ジェルマ66(ダブルシックス)”って言えば分かるか。」

ロビン「“ジェルマ66(ダブルシックス)”!?」

世情にも詳しいロビンは、ライコウ達の標的に驚愕する。

チョッパー「ロビン、知ってるのか!?」

ロビン「えェ……世界経済新聞に掲載された絵物語“海の戦士ソラ”に敵役として登場していて、世間一般では“空想上の悪の軍隊”だと認識されているわ。 実在の軍隊だなんて…。」

コラソン「そいつらは2年前、アラバスタの内乱に関わってたって話がある。 ドフラミンゴとも関わり始めたかどうかは知らんが、ここ最近急激に兵力が強化されてるって話だ。」

アラバスタという言葉に、ルフィ達は目を見開いた。
麦わらの一味には、共に冒険こそしていないが、麦わらの一味の1人である者がいる。アラバスタ王国王女のネフェルタリ・ビビだ。
彼女の故郷であるアラバスタ王国は2年前、あのクロコダイルの謀略により崩壊の危機に陥った。その際、反乱軍の武器はジェルマが仕入れたのではという噂が広まっているのである。

ライコウ「知り合いに世界政府とパイプがある大富豪がいる……そいつから聞いた情報だ、信憑性は高い。」

ナミ「サンジ君、どうしたの…? 顔色が悪いけど……。」

サンジ「い、いや……何でもない…。」

やけに顔色を悪くするサンジ。
ライコウをそれを一瞥しながらも話しを進める。

ライコウ「今、この世界にゃあ人造の動物(ゾオン)系悪魔の実“SMILE”が流通している。 パンクハザードでのシーザー誘拐とSAD製造装置の破壊…これで作戦第一段階を終えている。」

ロー「人造なだけにリスクはある様だが、現に今黒ひげ海賊団には3桁を超える能力者がいるそうだ。」

ローの言葉に瞳を輝かせるルフィ。
それを見たウソップとチョッパー、ナミは震え上がり怖気付く。

コラソン「だが、もう能力者が増える事はない。 シーザーがそれの製造者だからな。」

チョッパー「お前が悪魔の実の元を作ってたのか!! スゲェな~、“SAD”!!」

シーザー「シュ…シュロロロ…♪」

褒められ、照れるシーザー。

ウソップ「元凶だぞ、ホメんな!!」

コラソン「お前も照れんな!! 気持ち悪ィ!!」

ツッコむウソップとサラッと酷いコラソン。

ライコウ「ベガパンクの発見した“血統因子”の応用だ。 シーザーはただおいしい汁を吸ってただけに過ぎん。」

チョッパー「ああ、じゃあベガパンクがスゲェのか。」

シーザー「黙れ!! じゃあ貴様ら作れんのかよ、アホのクセに!!」

ライコウ「…お前、自分の立場分かって言ってんだろうなァ?」

ライコウが黒い笑みでシーザーを睨み、覇気を放つ。
肌がピリピリし始め、水面が少しずつ波打っていく。
さすがのシーザーも顔を青褪め、黙ってしまう。

ライコウ「あぁ、スマン…話がズレたか。 次の一手を話すぞ。」

ライコウは作戦第二段階を話し始めた。
内容は、ドレスローザのどこかにSMILEの製造工場があり、それを見つけ次第潰すということ。すでに百獣海賊団の幹部達が何名か派遣されており、機会を窺っているらしい。

ライコウ「敵は取り引きのプロ…油断はしない。」

錦えもん「ライコウ殿、拙者らもドレスローザで用がある! 連れていってくれぬか?」

ライコウ「別にいいが……何かあんのか?」

錦えもん「同心が1人、捕まってござる!」

麦わら・百獣海賊同盟が動き出す。 
 

 
後書き
この作品のオリキャラ達のイメージ国を紹介しようと思います。せっかくなので。
ライコウ:イメージ国/日本
ブラック:イメージ国/イギリス
イリス:イメージ国/日本
アリスティア:イメージ国/イタリア
ヒオ:イメージ国/シンガポール
マイ:イメージ国/フランス
ギネス:イメージ国/イタリア
ジルド:イメージ国/ドイツ
ランドウ:イメージ国/日本
マイキー:イメージ国/アメリカ
エイセイ:イメージ国/中国
オールドメイド:イメージ国/イギリス


次回辺りはギャグ回かな? 

 

第107話:ドデケェ山

-パンクハザード-

ランドウ「ハァ…ハァ…ゴホッ、ゴホッ!」

ドフラミンゴ「ちっ…面倒な奴だ、これだから陸軍は嫌ェなんだよ…!!」

ここでは、ランドウとドフラミンゴが激戦を繰り広げていた。
ルフィ達がパンクハザードを出航し、さらにたしぎが子供達を治療するためにタンカーで軍の療養施設へ向かったその直後にドフラミンゴが急襲したのだ。
ドフラミンゴはイトイトの実でスモーカーらG-5部隊に襲い掛かったが、そこへランドウが間に入りドフラミンゴとランドウの戦闘が勃発したのだ。
ドフラミンゴはイトイトの実の多様な技を駆使してランドウを追い詰めるが、陸軍大将たるランドウもタダではやられずドフラミンゴに深傷を負わせている。
実力はほぼ互角といったところだが、ドフラミンゴの方が攻撃手段が多く能力も「覚醒」しているため、ランドウを押しているのだ。

ドフラミンゴ「まぁいい…お前は放っといても問題ねェ。 それほどの傷じゃあ満足に動けねェ。 だからお前ら海軍から死ぬことを(・・・・・)許そう!!!!」

スモーカー「っ!!」

『うわァァァァァァ!!!』

ランドウ「待て、貴様!!」

ドフラミンゴが今まさにスモーカー達に襲い掛かろうとした時、突然氷の線が出て来た。
それと共に現れたのは、何とあの元海軍大将で現世界陸軍大目付“青雉”ことクザンだった。

『あ…青雉…!!』

スモーカー「…!!」

ドフラミンゴ「……フッフッフ! 何でてめェがここに居やがるのかは訊かねェが…お取込み中だ!!!」

青雉の制止を効かずスモーカー達に襲い掛かるドフラミンゴ。
すると、次の瞬間!


バキィィン!!!!


『ひィ!!!』

クザンの能力が発動し、ドフラミンゴは青雉に凍りづけにされた。

バッファロー「若ァーーーッ!!!」

ベビー5「若様!!」


バリィイン!!


青雉により、ドフラミンゴはまるで氷像の様に固められたが、ドフラミンゴは数秒でその氷を破る。
どうやら咄嗟に覇気を全身に纏って凍結防止したようだ。
そのまま一触即発になるが、ドフラミンゴは「お前と戦う気はない」と言い、いつもの笑い方でバッファローとベビー5の鎖を解き、パンクハザードを後にした。

ランドウ「来てくれましたか。」

クザン「まぁな。」

ランドウはG-5の医療班による手当てを受けながら、安堵の笑みを浮かべる。

スモーカー「…何しにここへ…?」

クザン「……元帥命令、だな。」

クザンはジルドからの命令を口にした。
その内容は、パンクハザードでランドウと海軍G-5部隊を救助するようにという命令だった。
しかしクザンは「そんなことよりもドフラミンゴから目を離すな」と告げた。

クザン「奴は七武海にしてドレスローザの現“国王”…九蛇の蛇姫とはまた違った極めて異例づくしの海賊だ…サカズキに伝えて“大将”達を動かせ!! 最悪の場合、歯車はみるみる食い違い……海軍本部…いや、世界政府の歴史上最大規模のドデケェ山(・・・・・)を迎える!!!」

『!!!?』

ランドウ「…。」

クザン「すでにジルドは陸軍大将をドレスローザに派遣することを決め、世界皇帝もドレスローザでデカイ花火(・・・・・)を打ち上げる気だ。 下手すりゃあドレスローザで“戦争”が起こるぞ。」

-------------------------------------------------------------------------------

-同時刻、サニー号にて-

コラソン「だァァァァァ!!! チキショーーーーー!!!」

ロー「弱過ぎだろ…。」

ライコウ「角とりゃいいってモンじゃねェんだよ、オセロは。」

頭を抱え、悔しさでのたうち回るコラソン。
先程ライコウとオセロゲームをしてたのだが、コラソンは角4つを全部取った。
だがそれはライコウの奇策であり、わざと角を取らせて内側に潜り込み、石の数を増やしたのだ。
おかげでコラソンが白4個に対し、ライコウは黒60個というとんでもない状況で勝負は終わったのだ。

ライコウ「まだまだだな、コラソン。 そんなんじゃあ俺は越えられんぞ? それよりも……。」

錦えもん「おのれ尋常にィ~~!! 勝負でござる~~~!!!!」

ゾロ「だからレイリーに貰ったんだっつってるだろ!! やめろ!!」

ナミ「ちょっと危ないでしょ!! 船の上で!!」

ライコウ「あの2人は何やっとんだか。」

ライコウの視線の先には、抜刀してゾロに襲い掛かる錦えもんの姿が。
どうやらゾロが腰に差している大業物“秋水”で揉めているようだ。

錦えもん「見損なったぞ!! あの国中が涙した大事件!! ワノ国英雄の“墓荒らし騒動”!!! 犯人はお主であったか!!!」

ゾロ「違うっつってんだろ!!」

錦えもん「違わぬ!! その腰の物は剣豪リョーマの名刀“秋水”に相違ない!!! それにレイリー殿が墓を荒らし刀を盗むような下衆なマネなどせん!!!」

錦えもんは怒りに任せて斬りかかり、ゾロは錦えもんの剣筋をギリギリ躱す。

ライコウ「(そういえば、モリアとの一戦の後にそのような騒動があって将軍すら涙したという事件があった気がしたな……。)」

話の内容だと、どうやらライコウとカイドウらがモリアを退けた後、人知れずシャボンディ諸島へ流されレイリーの手に渡ったようだ。
「ま、レイリーのことだから賭け事の景品だろう」とライコウは無理矢理納得させた。

錦えもん「む? ところで、モモの助はもう寝ておるかな?」

ナミ「今、ロビンとお風呂よ。」

「「「はァ!!?」」」

サンジ・ブルック・錦えもんの3人は目の色を変え船内へ。
暫くすると、風呂上がりのロビン、ナミと彼女の豊満な胸に抱きつき下心ありありの笑みを浮かべるモモの助、そしてボコボコにされたあの3人が甲板へ出て来た。

ライコウ「……バッカで~。」

ライコウは愛刀の手入れをしながらそう呟く。

サンジ「何がバッカで~、だ!!!」

ブルック「“秘密の花園”女部屋へ向かうこのエロガキを何とも思わないのですか!!!?」

ライコウ「何とも思わんな。 その程度でカリカリするな、みっともない。」

コラソン「混浴してる(・・・・・)アンタが言うなよ!!!」

「「「何ですと!!!?」」」

コラソンの爆弾発言でライコウの私生活の一部が漏洩。
悔し涙を流した男達の怒りの矛先は、何故かライコウに向けられた。
3人は一斉にライコウに詰め寄る。

ブルック「ズルイですよ大海賊!!!」

錦えもん「ライコウ殿、お主は何ということを…!!!」

サンジ「いい身分だな“剣帝”!!!」

3人の非難の声を真っ向から浴びるライコウだが、意にも介さず混浴している理由を堂々と語り始めた。

ライコウ「俺の嫁モネっつーんだが、諸事情で手と脚が鳥…いわゆる半人半鳥(ハーピー)なんだ。 しかも自然(ロギア)系・ユキユキの実の能力者だから風呂場じゃあ自分の身体洗いにくいったらありゃしない。 だから基本的には俺と混浴してモネが自分で洗えないところ洗ってんだ。」

見下したような目で笑みを浮かべるライコウ。
明らかなドヤ顔に、再び悔し涙を流す3人。

ライコウ「何だ? じゃあ“風呂場でもハッスルしてます♪”って言うべきだったか? それとも「やめんか!!!」…はいよ。」

さすがにそこから先は話すとモモの助(こども)にとって毒なので、ナミはライコウに怒鳴って言わせないようにした……。 
 

 
後書き
最終章についてご説明します。
ドレスローザ編が終了後、最終回に向けて伏線を回収しつつ「最終章:新世界動乱編」を執筆します。
ライコウら百獣海賊団、ルフィ達、四皇、王下七武海、最悪の世代、海軍、革命軍、世界陸軍…様々な勢力が入り乱れる事実上のオールスター状態となるでしょう。
面白く感じるよう努力いたしますので、お楽しみに。 

 

第108話:動く四皇

-ワノ国-

ライコウ達がドレスローザへ向かっている丁度その頃、百獣海賊団では先の戦いでマイに重傷を負わせたアプーに対し報復として三妖星のイカズチを筆頭とした討伐隊が編成され、今まさに出発しようとしていた。

ブラック「“キャプテン・キッド”、“海鳴り”、“魔術師”……例の世代か。」

オールドメイド「徒党を組めば四皇をも凌ぐとか思い上がってる若造共…まぁ、ミーハー共への見せしめには丁度いいだろう。」

新世界入りを果たした最悪の世代は、四皇の一味にも挑み新世界の勢力図を掻きまわしている。
特にキッドはその中でも抜きんでており、あのビッグ・マム海賊団の大幹部「四将星」の一角を倒した“怪僧”ウルージと共にその武勇は語り草となっている。

イカズチ「マイさんを追い詰めた敵か…俺の遊び相手を討とうとしたのはゼ~ッタイ許せないけど、どういう奴かは楽しみだな♪」

百獣海賊団きっての武闘派であるイカズチは、獰猛な笑みを浮かべて金棒をブンブン素振りする。

オールドメイド「お前のリストに載るほどの輩じゃない、別に付いて行く必要も無かろう。」

イカズチ「それじゃあ暇なんだ、俺はもっと遊びたいんだ!」

“この世で最も危険な生物”とも称されるイカズチは、「遊び相手リスト」なる奇妙な手帳を常に持っている。
ザックリ言えば、気に入った人物をリストに載せ、載った人物はイカズチと会えば問答無用で即バトルというハタ迷惑なリストだ。
一種のデ〇ノー〇といえば分かりやすいだろう。

イカズチ「最近の連中は骨が無いからなァ~……ちょっと心配かな…。」

頬をプクッと膨らませるイカズチ。
三妖星最年少の彼は、10歳の頃からこの百獣海賊団に所属し色んな豪傑と戦った。
その中には、当時海軍大将だったサカズキやモモンガをはじめとした海軍中将達、白ひげ海賊団1番隊隊長だった“不死鳥マルコ”、ビッグ・マム海賊団のシャーロット・スムージーなどの超大物とも戦っている。
特にイカズチの印象に残っているのは、7年前のサカズキとの3日間のタイマン。

イカズチ「(マグマおじさんと決着ついてなかったなァ…。)」











-7年前-

ボコボコと煮え滾るマグマ。(ほとばし)る稲妻。
片腕を灼熱に輝かせるサカズキと、得物の金棒に強烈な電気を帯びさせるイカズチが互いに覇気を纏いながら激突する。
飛び散るマグマは周囲を焼き尽くし、金棒から放たれた稲光は木々に直撃して黒焦げにする。
百獣海賊団は、海軍大将“赤犬”サカズキと同じく“青雉”クザンの両者と戦っていた。

イカズチ「アハハハハハハハハ!!! スゴイや、火山と戦えるなんて!! 俺はなんて幸せ者なんだ!!!」

サカズキ「おんどれ、若造がァ!!」

イカズチは“オニオニの実”の能力者で、鬼に変身ことが出来る。
今のイカズチは、鬼の角を生やし身体中からバチバチと電気を放っている。まるで電気ウナギのような状態で、自然(ロギア)系能力者でも迂闊に近づけば覇気で捕えられ感電するだろう。
しかし、イカズチの相手は海軍の最高戦力。その程度で倒れるような相手ではない。

イカズチ「“雷棍棒(らいこんぼう)豪風(たけかぜ)”!!!」

イカズチは覇気を纏った金棒を豪快に振るい、稲妻が迸る暴風でサカズキを攻撃した。
サカズキは巨大化したマグマの腕で防ぎ、それと共に火山弾を放つ。
しかしイカズチは金棒をバットのように振るい、火山弾を打っていく。火山弾は周囲に飛来し着弾・爆発する。

サカズキ「(おどれ、明らかに遊んでおる…!!)」

苛立ちを隠せないサカズキ。
今まで多くの海賊を討ち取って来た彼にとって、イカズチは腹立たしい男に見えるのだろう…。
するとその時、海賊男爵(ブラック)の声が響いた。

ブラック「てめェら!! 副船長から緊急招集の報が来た、撤退するぞ!!」

イカズチ「えェ~~~~!!? そんなァ…。」

イカズチは残念そうに返事しながらも、サカズキに対し笑みを浮かべて口を開いた。

イカズチ「じゃあね、マグマのおじさん! 今ここで決着を付けられないのは残念だけど、また会ったら喧嘩しよっ!!!」

サカズキ「待たんか!!」

イカズチはマントをなびかせ一味の帆船へと去っていく。
サカズキは火山弾を放とうとしたが、クザンに止められた。

クザン「これ以上やったら、俺達の足場も無くなるでしょうが。」

サカズキ「っ……。」

クザンの説得に、サカズキは反論しない。
島は荒れ果て、軍艦も何隻か沈んでいるからだ。

クザン「……急ぐこたァねェだろ、サカズキ。 俺達が海軍にいる限り、どこかで会うだろ…そん時に殺しゃあいい。」

















ブラック「ま、それはもう叶わねェ話だな、奴はもう元帥だ。」

イカズチ「……唯一の心残りだよ。」

オールドメイド「んなことより、とっとと出発してボコるぞ。 これから忙しくなるんだぞ。」

百獣海賊団、海賊同盟殲滅に動く。

-------------------------------------------------------------------------------

-同時刻-

愛と情熱、そして人間と共存するおもちゃの国、ドレスローザ。
港がある「森の町」カルタの空き家に、百獣海賊団の幹部達は揃っていた。

コアラ「ドレスローザは今から10年前、国王がリク王からドフラミンゴに変わっていたわ。 ある日突然暴君と化したリク王から国を救ったのがドフラミンゴ…でもドレスローザの友好国家であるプロデンス国などがそれ以来ずっと戦争状態。 明らかにドフラミンゴの国盗りの仕業よ。」

サボ「リク王の時代には武器の密輸は行われておらず、ライコウさんはドフラミンゴが暗躍していると踏んでいた。 そして取引相手などのドフラミンゴのバックにいる大物を“新世界の怪物”を通して情報収集していた結果がこれか。」

サボは書類を手にし、睨めっこする。
そこには、“新世界の怪物”ギルド・テゾーロが集めた全ての情報がまとめられている。

サボ「ドフラミンゴの部下達の大多数が能力者…特にシュガーが厄介だな。」

シュガーはホビホビの実の能力者で、触れた生物をオモチャにし隷属できる凶悪な能力だ。
その上、オモチャになったら人々から忘れられるという最悪の特典がついている。しかしシュガーを気絶させれば“呪い”は解け、解放されるという。
ライコウはそれに目を付け、シュガーから潰すよう命令したのだ。

コアラ「……辛い戦いになるかもしれないよ、モネさん…いくら記憶から完全に忘れられかけていても…。」

モネ「えェ…でも、私も海賊よ? 覚悟は出来てるわ。」

モネの妹こそが、シュガー。
辛い戦いだろうが、海賊である以上情けは無用。生き残りの戦いを懸けている上、半端な情けは相手の侮辱や厄介な復讐を生む。

モネ「問題は、この新聞よ。」

モネは新聞のある一面を出した。
そこには、「エイセイ氏、ドレスローザ訪問へ」と載っていた。
エイセイは世界会議(レヴェリー)の現議長であり、元奴隷という過酷な経歴の持ち主とは思えぬ圧倒的な権力と財力から“世界皇帝”と呼ばれ裏社会の大物も畏怖する者がいる程の有力者だ。
彼自身、「覚醒」した悪魔の実の能力者であり、覇気の達人でもある。海軍や陸軍の幹部との模擬戦を報じられることもたまにあり、その戦闘力も未知数だ。
立場上はドフラミンゴ政権の味方だが、彼の思想はギネスや革命軍寄りであるので何をしでかすか分からない。
エイセイの動向にも注意して作戦を実行せねばならないのだ。

サボ「全ては明日決まる。 ドフラミンゴの動きに合わせて、ドンキホーテファミリーを一網打尽にする。」

そして翌日、全世界を震撼させる一大事件が幕を開ける。 
 

 
後書き
イカズチの設定です。

【イカズチ】
身長:200cm
年齢:24歳
懸賞金:9億8000万ベリー
誕生日:7月29日
容姿:ギザ歯と猫目、右目の稲妻型の傷と天然パーマが特徴。
武器:金棒
服装:着流し姿で羽毛のマントを羽織り、下駄を愛用。
好きなもの:遊び、自分と遊んでくれる人
嫌いなもの:遊びの邪魔をする人
所属:百獣海賊団/三妖星
異名:“雷撃のイカズチ”、“この世で最も危険な生物”
イメージCV:日野聡
性格:無邪気で、ノリが軽く人懐っこい性格。しかし怒るとカイドウかライコウじゃないと手に負えない程暴れるので、三妖星どころか百獣海賊団一のヤンチャものでもある。
戦闘力:オニオニの実の能力者(覚醒済み)。身体的な変化は角が生えるだけであるが、驚異的なタフさを誇り電撃を操ることが出来る。電気による攻撃は無効化どころか逆に吸収してしまうという特異な性質も特徴。さらに強力な武装色の覇気も有していることから、戦闘力は七武海を凌ぐと思われる。
モデル:鬼ちゃん(三太郎シリーズ)、神威(銀魂) 

 

第109話:朝刊と梅

-翌日-

ブルック「ァ~~サ~~でーすヨホホホホ~~~♪ アーイエ~~~♪ しーんぶんが~~♪ きてますよ~~~♪ ヘイッカマン♪」

ルフィ「ん……? もう朝か…。」

ブルックの目覚ましミュージックで皆、続々と起床する
しかし、1人だけ起きてないのがいた。
ライコウだ。

ライコウ「スー…スー…zzz」

壁に(もた)れ掛かりながら目を閉じるその姿は瞑想しているかのようで、子供のように穏やかそうな寝息をたてている。

ロビン「意外な一面ね。」

ブルック「余程お疲れなんでしょうかね…。」

コラソン「そりゃそうさ、パンクハザードへ来るのにワノ国からイカダで来ようとして途中で泳いできたんだからな。」

『泳いできた!!!?』

麦わらの一味は全員驚く。
さすが世界最高峰の大海賊であるが、ナミやウソップは内心「バカだろコイツ」と思っていたのは言うまでもない。

チョッパー「相当疲れてるんだな…スゴイなァ、お前…。」

チョッパーがライコウの頬にプニッと触れたその時、突如ライコウがカッと目を見開いた。
しかも眉間にしわを寄せ、青筋も浮かべて血走った目で睨んでいる。

「「「「ギャアアアアア~~~~~!!!!」」」」

ナミ・チョッパー・ブルック・ウソップは絶叫。

ライコウ「うっせェな…そこまで驚くなよ……。」

ライコウは大きく欠伸しながら、ローに「朝刊はどうなってる」と問う。

ロー「載ってればよし、載ってなければ…。」

ローが手にした朝刊の大見出し記事は、「ドンキホーテ・ドフラミンゴ、七武海脱退!!! ドレスローザの王位放棄」と、書かれていた。

ウソップ「本当にやめやがったァ~~~!!!」

ブルック「お…王位!!? 王様だったんですか!!?」

ルフィ「王様~~~!? 鳥の国か~~~!?」

ライコウ「何で王様=鳥の国だ。」

フランキー「こんなにアッサリ事が進むと逆に不気味だな…。」

コラソン「これでいい…ドフィにはこうするしか方法はない…!!!」

シーザー「ジョーカー…俺の為にそこまで……!!」

各々が様々な反応をする中、ライコウは思考を張り巡らせていた。

ライコウ「(これで原作通りの展開だな。 あとはドフラミンゴ次第か…。)」

自らの出自から天竜人とも深いコネクションを持ち合わせているドフラミンゴは、聖地マリージョアの内部にある重大な国宝の存在を知っているため、七武海脱退とドレスローザ国王退位を誤報として無かったことにする程の権力を行使できる。
しかし、ドレスローザには“世界皇帝”エイセイが訪問している。世界を欺けば彼と真っ向から対立することに繋がり、王下七武海という立場にも支障をきたす可能性も出てくる。

ライコウ「(恐らくCP-0は動いているだろうが…そうなると…。)」

ルフィ「で、何で俺の顔まで載ってんだ!?」

『は?』

ドフラミンゴの見出しの下には、ルフィの手配所写真が載せられていた。
そして記事には「“麦わら”モンキー・D・ルフィ、四皇カイドウと内通か」と記載されていた。
そして次のページには「キッド海賊団・オンエア海賊団・ホーキンス海賊団、時同じくして海賊同盟結成」と、記載されていた。
この3つのニュースは世界各所に動揺の波を生むだろう。

ライコウ「スモーカーか陸軍の仕業だな。 まぁ気にすることはない。」

ルフィ「そっか。」

ロー「これがいかに重い取引きか分かっただろう?」

コラソン「俺達はただシーザーを誘拐しただけ…それに対しドフィは10年間保持していた国王という地位と“七武海”という特権をも一夜にして投げうってみせた。 この羊男を取り返すためにここまでやった事が“答え”だ!!」

ロー「シーザーを返せば取り引き成立だが…それは表向きの話。 俺達の真の目的は“ドンキホーテファミリー殲滅”!!! 最初(ハナ)から奴に対するメリットは1つも与えねェ。」

ウソップ「そ、それってドフラミンゴを潰すってことか!!?」

ナミ「ウソでしょ、戦うの!!?」

チョッパー「相手は未知数だってのに!!?」

シーザー「お…おい!! まさかジョーカーを潰す気か!!? 正気かお前ら!!?」

ライコウ「何か問題でも?」

戦うとは思ってなかった5人はライコウに詰め寄るが、当の本人は「それがどうした」と言わんばかりの返答。
その返答に、5人は落ち込んだ。
するとその時、電伝虫が鳴った。どうやらドフラミンゴから朝刊の一件を言う気のようだ。

ライコウ「ロー、分かってるな?」

ロー「あぁ。」

受話器を取るロー。

ドフラミンゴ《俺だ…“七武海”をやめたぞ。》

ルフィ「もしもし!! 俺はモンキー・D・ルフィ!! 海賊王になる男だ!!」

ウソップ「お前黙ってろっつったろ!!!!」

ルフィはウソップに止められながら、ドフラミンゴと通じる電伝虫をローから奪い、怒鳴りながら話す。

ルフィ「おい、ミンゴ!!! “茶ひげ”や子供らをひでェ目に遭わせたアホシーザーのボスはお前か!!? シーザーは約束だから返すけどな、今度また同じ様な事しやがったら今度はお前もぶっ飛ばすからな!!!」

ドフラミンゴ《“麦わらのルフィ”…!! シャボンディ諸島での一味壊滅から2年…バッタリと姿を消し、どこで何をしていた…?》

ルフィ「!!…それは、絶対言えねェ事になってんだ!!」

そう、ルフィは2年間レイリーと修行していた。その際にエースやハンコックとも関わっており、2年前とは比べ物にならないほど強くなっているのだ。
世間では一味の完全復活は知られているが、その2年間は今でも謎。2年間の真相を知る人間は指で数える程度だ。
ルフィはレイリーから2年間のことは他言してはならないと強く言われているので、口を割らなかった。

ドフィ《フッフッフッ…俺はお前に会いたかったんだ…お前は“海賊王になる”と言ったな? 実は俺には海賊王を目指す全ての者達が欲しがる情報を俺は今…持っている。》

ルフィ「海賊王になるための情報ってまさか…おいしい肉の!?」

コラソン「いや違ェだろ!!! 何故そうなるんだ!!? 麦わら、ドフィのペースに乗るな!!!」

ルフィ「お肉が1匹!! お肉が2匹!! おn」


ゴッ!


ライコウ「ルフィ、まずは落ち着かんか。」

ライコウの覇気を纏った鉄拳が炸裂。
ルフィを一発で鎮めライコウは受話器を取り、口を開く。

ライコウ「余計な話をするな若造……一応引き渡す予定だが、そっちが妙なマネしたらその瞬間取引は無効。 俺が直々にシーザーごとお前らファミリーを消しに行く。」

ドフラミンゴ《っ……。》

ライコウの一言に、今まで余裕そうだったドフラミンゴは一瞬で押し黙った。
電話越しでありながらドフラミンゴを牽制させたライコウに、全員が驚愕する。
その数秒後、ドフラミンゴは笑いながら再び口を開く。

ドフラミンゴ《フフフ…フッフッフ!! 分かってるさ…さすがの俺もアンタを敵に回す訳にはいかねェ。 さァ…まずはウチの大事なビジネスパートナーの無事を確認させてくれ。》

するとシーザーは涙声でドフラミンゴに感謝の言葉を述べた。
しかし喧しく感じたのか、コラソンの能力によって安否確認は2秒で終了した。

ロー「今から8時間後、ドレスローザの北の孤島・グリーンビットの“南東のビーチ”だ。 午後3時にシーザーをそこへ明け渡す。」

ドフラミンゴ《フッフッフッ!! 寂しいねェ、成長したお前と一杯くらい…。》

ルフィ「切れー!! こんなもん!!」


ガチャ!!


ルフィ「ふー危なかった!! また奴のペースにやられるトコだったな!!」

強引に電伝虫を切ったルフィだが、両目が肉になっている。
そんなルフィにウソップは「やられてんじゃねェか!!!」とツッコミを炸裂。
その時、サンジが慌てて叫んだ。

サンジ「おい待て!!! 相手の人数指定をしてねェぞ!! 相手が一味全員引き連れて来たらどうする!!?」

ロー「問題ない、ライコウさんが結成させた少数精鋭部隊が待機している。 それに作戦においてシーザーの引き渡しは(おとり)…SMILE工場を潰す方が先だ。」

ライコウ「工場の場所も大方予想は付いている。」

百獣海賊団の用意周到さに、フランキーは「スゲェな」と感嘆する。
そんな中、ルフィはライコウ達に訊いた。

ルフィ「ライコウ、お前らってドレス老婆に行ったことあんのか?」

ライコウ「ドレスローザな…ぶっちゃけた話、無い。 だがコネで情報は得ている。」

ルフィ「ほんじゃ全部着いてから考えよう!! しししし!! 冒険冒険っ!!! 楽しみだな~ドレスローザ、!! それにワノ国にも早く行きてェなー!!! カイドウって奴にも会いてェし!!!」

ロー「バカいえ!! いくら戦力があろうと、何の計画もなく乗り込むような…!!」

ルフィ「サンジ! 腹減った!! 朝飯何だ!?」

サンジ「サンドウィッチだ。」

ライコウ「すまん、百獣海賊団(ウチ)は全員が“お米派”だから握り飯で頼む。 俺は何でもいい。 ロー! コラソン! 2人共、梅でいいよな?」

ロー「おい!! 俺は梅は嫌いだって言ってるだろ、ライコウさん!! …はっ!!」

コラソン「ププッ……!! お前、まだ梅を克服できてねェのか。」

吹き出すのを耐えるコラソンに、久しぶりにローは怒りを露にするのであった。 

 

第110話:揺れる世界

町を壊す大きな「高波」も始まりは人知れず打ち立つ「さざ波」にすぎない。
ドンキホーテファミリーとの武器の取り引きが事実上停止状態になり、世界中の闇商人達は荒れていた。
そんな中、新世界の赤い土の大陸(レッドライン)付近にある海軍本部では、今朝のニュースについての臨時議会が行われていた。
進行役は勿論、おなじみのブランニューだ。

ブランニュー「“王下七武海”とは…!! 世界でたった7人!!! 世界政府によって選ばれた略奪を許可された海賊達!!! 引き換えに必要とされるものは“圧倒的な強さ”と“知名度”。 彼らが政府側に(くみ)する事が、世の海賊団への脅威とならなければならない!!」

剣帝(ライコウ)赤髪(シャンクス)黒龍(イリス)と肩を並べる世界一の大剣豪、“鷹の目”ジュラキュール・ミホーク。
ドレスローザ国王にして「悪のカリスマ」、“天夜叉”ドンキホーテ•ドフラミンゴ。
今や海軍の人間兵器である“暴君”バーソロミュー・くま。
アマゾン・リリー現皇帝の“海賊女帝”ボア・ハンコック。
世界で唯一海賊王の血を受け継ぐ“火拳”ポートガス・D・エース。
海賊派遣組織総帥を務める「伝説を生きる男」、“千両道化”バギー。
そして、白ひげ海賊団の残党達を次々と壊滅させている自称“白ひげJr.”エドワード・ウィーブル。
この7人が、今の王下七武海だ。

ブランニュー「しかし、これは今朝…夜明けまでの話!! ドフラミンゴの突然の脱退!! 強大な影響力を有するこの男がやめたとなると、政府にとって大きな損失です!!! “海軍本部”と“四皇”に並ぶ三大勢力が、こうも不安定では……!!」

押し黙る一同。
そんな中、現海軍元帥サカズキは葉巻の紫煙を燻らせ口を開いた。

サカズキ「あァ…分かっちょるわ、ブランニュー。 今、“麦わら”達に勝手なマネはさせん…!! 昨日“G-5”のスモーカーからうるそう連絡があってのう…1日様子をみちょれ……“藤虎”を行かせてある。」















-一方、ドレスローザ近海では-

エイセイ「クソ、どうして出ない!!?」

ドフラミンゴとの会談を予定していた“世界皇帝”エイセイは苛立ちを隠せないでいた。
今朝の朝刊を見て、「何故七武海を突然やめたのか」や「これからのドレスローザをどうするつもりだ」など、色んなことが頭の中を駆け巡り、世界の秩序のためにドフラミンゴと政府の最高権力・五老星に問おうとしたのだ。
しかしドフラミンゴと五老星は電話に応じない。それに腹を立てているのだ。
彼の怒りを目の当たりにした衛兵達はビクビクしている。

エイセイ「こういう一大事件に限って世界皇帝たる僕をシカトするのは何か裏がある筈だ……ついさっきの船もそうだ…!!」

「シ、“CP-0”…ですか?」

「た、確かに…何故ドレスローザへ…?」

CP-0とは、正式名称「サイファーポール“イージス”ゼロ」であり、世界政府の諜報機関・サイファーポールの最上級機関で“世界最強の諜報機関”とも呼ばれてる組織だ。
任務内容は天竜人の繁栄を維持する為の活動で、五老星や海軍ですら把握できない越権行為を行う厄介な連中だ。
実はエイセイはつい先程、CP-0の船を視認したのだ。
彼らが動く時はほとんど厄介なことばかりなので、面倒なのだ。

エイセイ「ドフラミンゴめ、まさか誤報とか言わないだろうな…?!」

?「やっぱりアンタも引っ掛かってる訳かい。」

その時、船内に男の声が響く。
衛兵達は武器を構えるが、エイセイはそんな彼らを諫めた。

エイセイ「君から接触してくるとは……驚いたよ、ギネス。」

ギネス「今回ばかりは、俺も動かざるを得ないモンなんでな。」

そう、男の正体は世界的犯罪者・ギネスだった。

ギネス「CP-0の船を見たが…アンタは世界皇帝だろ、情報のじょの字ぐらい知ってんだろ?」

エイセイ「知ってたら取り乱さないさ…。」

ギネス「成る程、相変わらずの越権行為って訳か……面倒なマネをするモンだ。」

対峙するエイセイとギネス。
2人の気迫に、衛兵達は気圧される。

ギネス「俺はドレスローザの“暗部”を表に出す。 そっから先は好きにしな…“藤虎”が一緒なんだろ?」

エイセイ「……。」

ギネス「お前の正義感が、この世界の未来に貢献できるモノであるのを期待する。」

そう言い、ギネスは姿を消した。

エイセイ「僕の正義感、か…。」

「へ、陛下……。」

エイセイ「ドレスローザへ急ぐぞ、真偽を確認する!!!」

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-ドレスローザ-

ドフラミンゴは王宮にある「スートの間」で、ファミリーの最高幹部であるディアマンテと話し合っていた。

ドフラミンゴ「コロシアムはいつも大盛況お前のお陰だよ、ディアマンテ。」

ディアマンテ「何を…ドフィ、お前の王としてのカリスマ性の賜物だ。」

ドフラミンゴ「違う、お前の腕さ。」

ディアマンテ「よせ、人をコロシアムの英雄みたいに…。」

ドフラミンゴ「お前こそコロシアムの英雄だ。」

ディアマンテ「やめろよ…そんな…。」

ドフラミンゴ「じゃあ、やめに…「そこまで言うなら認めよう!!! そう! 俺こそがコロシアムの英雄だとな!!!」…フフフ、そうだ…!」

※これは安いコントではありません。ちゃんとした日常会話です、ご了承ください。

?「んねーんねーんねー!! 持ってきたぞドフィ!! 例の!!」

ドフラミンゴの元に、同じく最高幹部のトレーボルが寄り過ぎてくる。
ドフラミンゴは「寄り過ぎだ」と言いながらトレーボルに自分から向かって一番右端の椅子に座るよう告げ、トレーボルが持ってきたモノを受け取る。

ドフラミンゴ「コイツの存在を知れば、“麦わらのルフィ”は必ず手に入れようとするだろうよ…フッフッフ!!」

ドフラミンゴが手にしたのは、一枚の紙だった。

ドフラミンゴ「フッフッフッフッ!!! 飛びつく筈だ…かつてゴールド・ロジャーが唯一手に入れたとされる伝説の宝剣“トリトン”の情報が記されたポーネグリフの写し(・・・・・・・・・)!!! ニコ・ロビンはポーネグリフを読める…保有する者に海を支配する全能を授ける武器の情報は、是が非でも欲しいだろうよ!!!」

その同時刻、ルフィ達はドレスローザ王国の裏側の沿岸に到着していた。
決戦はもうすぐである。 
 

 
後書き
ふぅ…ついにここまで来ましたな。
次回からドレスローザ編です。 

 

第111話:アカシア

-ドレスローザ海岸-

ドレスローザの海岸に着いた麦わら・百獣海賊同盟。

ライコウ「やはり海軍大将が来てるか……薄々感じてはいたが…。」

モネ《今回の一件は海軍だけでは手に負えないから、陸軍大将も部隊を引き連れて到着していると聞くわ。》

ライコウ「海軍大将は“藤虎”か“緑牛”だな…世界徴兵の新参者である2人の内のどちらかに任せたに違いない。」

モネ《それに今回、闘技場もとんでもない景品が出てるわ。 テゾーロからの情報だけど、歴史の本文(ポーネグリフ)の写しで“トリトン”の情報について記されてるそうよ。》

ライコウ「何だと…!!? それは本当か…!!?」

ライコウは目を見開き、汗を流す。
トリトンとは、海賊王ロジャーが唯一手に入れたとされる伝説の宝剣の名。保有する者に海を支配する全能を授けると言われ、その強大な力は海王類を従える人魚・古代兵器“ポセイドン”に匹敵するとされている。

ライコウ「(面倒なマネをしやがって……そもそも写しだから本物かどうかすら怪しいってのによ…。 それとも、俺達百獣海賊団ごと狂わせようと考えてるのか…? 確かにビッグ・マムやティーチは狙ってると聞くが…。)」

トリトン。ルフィは性格上、絶対に欲しがらないモノである。
ライコウ自身それを熟知している……だが、万が一黒ひげやビッグ・マムの刺客に取られたら今後の戦いで最悪の展開になる。あの原作での「メラメラの実争奪戦」における面子を考えると、この一件はそれ以上の面子になるであろう。

モネ《私としては信憑性に欠けると思うわ。 歴史の本文(ポーネグリフ)を表立って賞品にしたら、幾ら弱みを握られてる天竜人でも裏で消すべく画策してくる筈よ。》

ライコウ「だよなァ……俺もそう思う。 それに俺だったら悪魔の実を賞品にして、包み紙か入れられてる箱に隠し入れる。」

モネ《狡猾な彼なら間違いなくそうするでしょうね。 尤も、コロシアムで出すのは実は偽物で、本物の写しはドフラミンゴが持っているかもしれないけど。》

ライコウ「(恐らくドフラミンゴはルフィがロジャーと似たような性格であるのを知らない筈…写しは奪うというより“処分”した方が賢明か。)…思った以上に嫌な展開になりそうだな…かなりの乱戦になるだろう、用心しろよモネ。」

モネ《えェ…。》

ライコウはモネとの通話を終える。

ライコウ「(こりゃあとんでもねェ面子が揃いそうだ…。)」

原作以上の大乱戦を予感するライコウは、眉間に皺を寄せる。

ロー「どうだ、ライコウさん。」

ライコウ「今回のコリーダコロシアムの景品に惹かれて、世界中から野心的な猛者共が集まってる。 その分海軍や陸軍も戦力を整え乗り込んでいるだろう……作戦が多少変わる。 その辺りは臨機応変に頼む。 それよりも……あのバカ2人は何をじゃれてる。」

ライコウが指差す先には、取っ組み合いの喧嘩をするモモの助とルフィの姿が。

ルフィ「何が武士だ!!! 俺はいつか“海賊王”になる男だ!! バァ~カ!!』

モモの助「ふんっ!! では、拙者はいつかワノ国の“将軍”になる男でござる!!あほーーう!!」

ルフィ「何を!? うなぎィ!!」

それに見かねたライコウは、下駄の音を鳴らして2人に近づき、首根っこを掴んで持ち上げた。

ライコウ「俺の足を引っ張るんなら今すぐ海に沈めるぞ、ガキ共。」

「「スンマセンでした。」」

黒い笑みで覇気を放つライコウに、2人は素直に謝る。
チョッパーは「あのルフィを止めた…!!」と驚愕する。

ライコウ「チームごとに別れて行う作戦だ、よく聞け。」

ライコウは作戦及びチームについて語る。
シーザー引き渡しチームは、ドレスローザを通って北に伸びる長い橋を渡ってグリーンビットへ向かう。メンバーはロー・シーザー・ロビン・ウソップの4名。
船の安全確保を維持するサニー号安全確保チームのメンバーはチョッパー・ブルック・ナミ・モモの助の4名。
ドレスローザ潜入チームは、「森の町」カルタの空き家にいる百獣海賊団の幹部達と合流する。メンバーはルフィ・ゾロ・サンジ・フランキー・錦えもん・コラソン。
そしてライコウはドレスローザ内で単独行動だ。

ライコウ「ほんじゃまァ、各々行動してドフラミンゴぶっ潰しましょう……と言いてェが、ルフィはどうした? アイツらが作戦のメインだぞ?」

ロー「いつの間にかいねェ…。」

チョッパー「俺達は誰が守ってくれるんだー!!」

-------------------------------------------------------------------------------

ドレスローザ…この国を訪れた者達はいくつかの事に心奪われるだろう。
一つは、かぐわしき花々とこの国自慢の料理の香り。
また一つは…疲れを知らぬ女達の情熱的な踊り。
そして、もう一つは…。

「「「「「……。」」」」」

ルフィ・ゾロ・サンジ・フランキー・錦えもん・コラソンの6人は目を見張る。
彼らの視線の先には、左腕を犬に食いちぎられ、その左腕を咥え逃げる犬を追う人型のぬいぐるみが…。

ルフィ「おもちゃ…?」

すると今度はドラムを下げた兵隊のような格好をした人形がルフィ達に話しかけてきた

「こんにちは! 兵隊です!! アレアレ? キミ達どこかで~…お会いしましたかねー? んー…見た顔だ…あ! そういえば今朝の新聞に…。」


ガシャンッ!!


「痛い!! しまった!! 糸がからまった!! 助けてー!!」

もう一つ旅人を驚かせるものは…町に溶け込むごく自然に人間と共存する命を持ったオモチャ達の姿である。


















-港町・アカシア-

とあるレストランで、6人は運ばれてきたメニューを食べながら会話をする。

コラソン「この国の王が王位を放棄したにも関わらずこの雰囲気……嫌な予感がする…。」

サンジ「確かに、気味が悪ィ……!!」

フランキー「知らないってことは無ェな。 世界中にバラまいてるんだからな。」

コラソン達は困惑していた。
今朝方国王たるドフラミンゴが失墜した国の筈なのに、パニックどころか平穏な状態に不気味さを感じていたのだ。

コラソン「(まさかとは思うが……。)」

そんな中、店に世界政府の衛兵達が乗り込んできた。
政府の役人の登場に、人々は動揺する。
すると、さらに衛兵達が現れ話し合い始めた。

「おい、いたか!!?」

「いえ…どこにも…!」

「いくら何でも自由すぎるぞ、あのお方は!!! 万が一何かあったらどうするおつもりだ!!?」

「とにかく探せ、“陛下”が何かの事件に巻き込まれたらコトだぞ!!!」

衛兵達は大急ぎで店から出ていく。

ゾロ「何だアイツら…?」

サンジ「政府の人間だな、誰を探してんだ…?」

フランキー「陛下って言ってたからにゃあ、政府の重役をお探しか。」

ふと、店の奥…ルーレットのあるカジノで何やら喧騒が。
白に賭ける盲目の男に、黒だと言うチンピラだ。
連続でハズレてツイてないようだが…本当は白で、当たりが連続で出てるのに嘘つかれてお金騙し取られてるのだ。
周りの客も「ひでェな…あいつら…!」や「ドンキホーテの面汚しだ…」と苦々しい面持ちで見やる。
すると盲目の男は、最後に「有り金全部賭けてやる」と言う。チンピラは「お前の逆に全額突っ込む」と言い、ルーレットを回す。

?「…どっちですかィ?」

その結果は、白。
盲目の男は白に、チンピラは黒と賭けていたので、チンピラの負けだ。
だがそれでもウソをついた。

「残念だったなオッサン!! 勝負はく「白だ!!!!」…あァ!!? 誰だてめェ!!?」

チンピラのウソを打ち消すように、イカスミパスタを頬張りながらルフィが言う。
それを見たサンジは「また首を突っこむ…」と、コラソンは「いつの間に…」と呆れながら呟く。

?「ホ…ホントに勝ってやすか!? どなたか存じませんがご親切にどうも…!!」

ルフィ「まぁいいよ、見たまま言っただけだ! しかし、おっさん相当強そうだな…。」

「そういうのヤボってんだよ小僧!!! 俺達が黒と言やァ黒なんだ、そいつはどうせ見えねェんだからそれでいいんだよォ!!! 邪魔な奴は消えろォ~~!!!」

チンピラ達は儲けを潰されて怒り、感情のままルフィに斬りかかるが、盲目の男が動いた。

?「こらァいけねェ!! お兄さんちょいとどいてておくんな…!! その人ら、地獄へ落ちて貰いやすんで……!!!」

盲目の男がそう言い、杖に仕込んでいた刀…仕込み杖を抜く。
すると、轟音と共に何やら重力が掛かり…!!


べゴォン!!


床に突如大穴が空き、チンピラ達は地の底へと落ち、叩きつけられた。

サンジ「え~~!? 何だアイツは!!?」

フランキー「何をしたァ!!?」

ルフィ「スゲェー…穴があいた…!!」

?「…見えねェ事もまた一興…。 この人の世にゃあ、見たくもねェウス汚ェモンも…たくさんありましょう……。」 

 

第112話:根

盲目の男が仕込み杖を抜くと、ルーレットがあったテーブル付近の床に大穴があき、店内の客は言葉を失っていた。

サンジ「“能力者”………。」

ゾロ「何の能力者だ、こりゃあ…。」

コラソン「(アレはまさか…!!)」

サンジ達にそう話をしている間に盲目の男は店の主人に紙を渡し、「店の損害請求はここへ…」と言い、店を去ろうとした。

ルフィ「おっさん強ェなァ!! 何者なんだ!?」

?「…へへ、そいつァどうやら…言わねェ方がァ、互いの為(・・・・)かと存じやす。」

盲目の男はそう言い残し、店を後にした。

コラソン「(アイツ…俺達の正体を知りながら見逃したのか?)」

ゾロ「どんな立場であれ…只者じゃあねェな……。」

その時だった。
盲目の男が店を後にした突如、客達が焦りながら何かを探し始めた。
どうやら紛失事件が多発したようだ。
怪しいのは先程の盲目の男だが、彼は何もしていない。
すると…。

ゾロ「ん!? 1本足りねェ!!」

錦えもん「どうしたのでござる?」

ゾロ「刀がねェんだよ!!! ここにあった“秋水”が!!!」

錦えもん「何を!!? ワノ国の宝が!!!?」

その時、コラソンが呟いた。

コラソン「……“妖精”か。」

ゾロ「!? 妖精!!? 何だよそりゃ!!?」

コラソン「風の噂で耳にしたことがある。 遥か昔から、この地には目に見えない守り神“妖精”がいると聞く。 盗難届を出しても門前払いだろうな。 追いたいなら好きにしろ。 そこにいる。」

コラソンが指差す先には、窓に突っかかる秋水が。
どうやら妖精が欲張りすぎて大きすぎるモノも盗もうとしたようだ。

ゾロ「逃がさねェ!! 俺の刀返しやがれ!!」

ルフィ「おい、ゾロ! どこ行くんだ!?」

ゾロは一目散に秋水の元へ走っていった。サンジはゾロの極限なまでの方向音痴を思い出し、追いかけていく。

コラソン「…早速想定外の事態だが…お前らの素性は幹部達全員が共有しているし、今は情報収集が先だ。 さっきのチンピラ共の頭を尋問するぞ、あまり期待は出来ねェが何かしら情報は持ってる筈だ。」

-------------------------------------------------------------------------------

この後、ルフィ・フランキー・コラソンはルーレットで盲目の男から金を巻き上げていた連中(チンピラ)の頭を人気のない路地裏に連れて行き、必要な情報を聞き出していた。
案の定ドフラミンゴの手下だったが、「SMILE」やその生産工場のことは知っておらず、機密情報はおろかドンキーホーテファミリーの情報すら知らない下っ端だった。

コラソン「お前らが三下のクソッタレ共なのは分かった…これ以上の尋問は無駄だな、他をあたろう。」

「あァ、そうしてくれ!! 俺もコロシアムに呼び出されてんだ…!!」

「「「コロシアム?」」」

「上官達に会いたきゃ“コリーダコロシアム”だ!! 今日は特大イベントでファミリーの幹部達が集まってるハズだ…!! どういうわけか若様がものすげェ賞品を用意しちまってよ!!」

コラソン「気が変わった、それについて訊こう……景品は何だ? 悪魔の実か?」

「……察しがいいな、その通りだ!! それもとびっきりヤベェ代物だ!!!」

「「「……?」」」














-一方、コリーダコロシアム付近にて-

エイセイ「……ったく、ふざけやがって…何が急用だ。」

ムスッとした顔でグビグビと酒を飲むエイセイ。
彼はドフラミンゴとの面談を控えていたが急遽ドフラミンゴが急用で不在になったので、彼が戻ってくるまで王宮で待っていた。
しかしずっと待っているのが我慢ならず、せっかくなので王宮を抜け出したという訳だ。衛兵達が血眼で探しているにもかかわらず、呑気な輩である。

エイセイ「しかし…アンタらが来てるとは思わなかったよ“錐のチンジャオ”……いや、今は首領(ドン)・チンジャオと呼ぶべきかな?」

チンジャオ「ひやホホホ…よもやお主も来てるとは思わなかったぞ。」

エイセイ「お孫さんは元気?」

チンジャオ「サイとブーか…あァ元気だとも。」

エイセイと話しているチンジャオという老人。
チンジャオは過去数百年の歴史を持つ「八宝水軍」の第12代棟梁で、今は隠居人だが全盛期には5億超えの懸賞金を懸けられた伝説の海賊。エイセイと同じ花ノ国出身であり、チンジャオ自身も彼と面識があるのだ。

エイセイ「一体何の用で?」

チンジャオ「ひやはや…お主も分かっておろうに。 今の花ノ国を。」

チンジャオの一言に黙り込むエイセイ。
エイセイは知っているのだ。故郷の花ノ国で、ある国と戦争状態が続いており、今もなお祖国の民が国を護るために戦っていることを。

エイセイ「武器の密輸を叩き潰す…のか?」

チンジャオ「いかにも。」

エイセイ「……今日、ドフラミンゴと会談がある。 その事を言っても白を切るだろうが……俺も俺で動く。」

チンジャオ「……目星は付いておるのか?」

エイセイ「いや…この島の地下に交易港があるって情報を掴んだが、肝心の()が分からねェ。」

エイセイは酒を飲み干すと、酒瓶をゴミ箱へ向けて思いっ切り投げた。
酒瓶は弧を描くように宙を舞い、ゴミ箱にホールインワン。

エイセイ「……まぁ、祖国の方針は分かった。 俺も俺なりに動くとしよう。」

チンジャオ「ひやホホホ、それはありがたい……。」

エイセイは立ち上がり、愛用の剣を腰に差して王宮がある方へ向かう。
その時、エイセイは何かを思い出したかのように立ち止まり、チンジャオに告げた。

エイセイ「そうそう…言い忘れていた。 コロシアムにはドエライ面子が来てるっぽいぞ。 思わぬ邂逅もあるかもしれんから、楽しみにするこった。」

エイセイは再び歩き出し、王宮へ向かう。

チンジャオ「ひやホホホ……ますます逞しくなっておるぞ、王よ。」

チンジャオは穏やかに笑い、エイセイの背中を見据える。 
 

 
後書き
エイセイは花ノ国の王とチンジャオと知人関係です。
プライベートでも連絡を取り合う間柄とのことです。 

 

第113話:“ショクショクの実”

 
前書き
お待たせしました、こちらの事情で遅れて申し訳ありません。 

 
「「「“ショクショクの実”?」」」

チンピラの頭を尋問していたルフィ・フランキー・コラソンの3人は、コロシアムの景品である悪魔の実・ショクショクの実について耳にしていた。

「あァ、そうさ……その名の通り“衝撃《ショック》”を操るんだよ。 詳しい用途は知らんが、衝撃波や電気ショックを相手に叩きこむことが出来るらしい……相当強力で大国の軍隊すら数分で滅ぼせるらしい!!! それくらい強力なのさ。そんな悪魔の実を興業の景品にしちまうとは…若様も水くせェ…!! あんなスゲェ能力手に入れたら俺も人生変わるだろうな。」

コラソン「どっかの超人(パラミシア)系悪魔の実と似たかよったかの能力だな…。」

「この実を巡って世界中から強者共が集ってる!!! 噂によれば、四皇の部下も狙ってると聞く……!!! 今回のコロシアムは想像以上の修羅場になるぜ。」

フランキー「四皇…!」

ルフィ「お前らじゃねェのか?」

コラソン「……俺達じゃねェ、今回の作戦ではコロシアムは無視する。」

その時、コラソンのコートから電伝虫の音が鳴り響いた。
仲間からの連絡らしく、コラソンは受話器を手にする。

コラソン「こちら参謀総長コラソン。」

ライコウ《コラソンか、ルフィ達は一緒か!?》

コラソン「……あァ、まァな。」

ライコウ《急遽作戦を変更する!! ルフィをコリーダコロシアムに出場させろ!!》

「「「!!?」」」

ライコウの口から出た作戦変更。
その内容は、ルフィのコロシアム出場だった。

コラソン「…一応言うが……ドフィの性格からして、麦わらを自分の手の届く範囲に誘い込む罠だと思うが。」

ライコウ《そうだ、それを利用する(・・・・・・・)!!!》

コラソン「!!」

ライコウ曰く、あえてドフラミンゴの策に乗り、ルフィを一時的な“囮”とし残りのメンバーで工場の破壊などを行うという作戦に変更しドフラミンゴを混乱させるつもりとのこと。
なお、ルフィは途中でライコウの部下とすり替えるらしい。

ライコウ《すり替える時は決勝戦前…身体的な差が一番少ない俺のアシスタントとルフィをチェンジする。 それまではドフラミンゴを泳がせるぞ、奴の隙を突く。》

コラソン「…なら、それまで好きに動いていいか?」

ライコウ《構わないが用心しろ、海軍と陸軍の“大将”が潜入している。》

コラソン「すでに海軍大将には遭遇したが……陸軍大将もか…。」

ライコウ《世界皇帝も独自の動きをするだろう、下手な詮索は止しておけ。 足元掬われるぞ。》

コラソン「了解。」

ガチャリと受話器を下ろすコラソン。
一連の話を聞いていたルフィはワクワクし、フランキーは顎に手を当てている。

フランキー「剣帝はスーパー大胆だな、まさかルフィを囮にするとは……。」

ルフィを囮にするという考えが無かったフランキーは、驚愕し感嘆する。

コラソン「悪魔の実は、すでに実を口にした者が2つ目を口にすると身体が爆発するって事例がある…俺も能力者だしお前も能力者。 サイボーグ、お前は?」

フランキー「カナヅチになるのはゴメンだ……だが、どの道コロシアムには用がある、とっとと行かねェと締め切りになっちまうぞ。」

フランキー・ルフィ・コラソンの3人はチンピラの頭を放置し、走り出す。
その背中を見つめながら、チンピラの頭は嘲笑った。

「(………!! バカ共…欲しいからって手に入りゃ…誰も命を落とさねェ…!! コロシアムのレベルを見くびるな…!!)」

?「ほぅ、そのような催し物がありましたか。」

「なっ!!?」

突如現れた謎の男。
誰にも気付かれず現れた彼に、チンピラの頭は驚く。

?「フフ…彼ら(・・)には内緒で来ましたが、どうやら来ておいて正解だったようだ。 あなた方ファミリーを潰す前の準備運動として楽しませてもらいますよ。」

「て、てめェは何者「あぁ、喋らなくて結構です。」…は?」

次の瞬間、黒い刃がチンピラの首を刎ねた。
血が噴水のように吹き出し、辺りを真っ赤に染める。

?「……おや、いけない…壁を汚しましたか。」

妖しい笑みを浮かべ、男は刀を鞘に納めて姿を消す。

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一方、ゾロを追っていたサンジは踊り子・ヴァイオレットという美女に見取れ、ゾロをドレスローザに置いてけぼりにする算段と、ナミとロビンが自分の恋人にならないかと妄想を走らせていた。(笑)

「どこへ消えたあの女!?」

「裏口からこの“恋人通り”へ出たハズだ!」

「そう遠くへは行ってない!! この町から出すな!」

警備兵達がサンジとヴァイオレットを捜索するが、見失ったらしくその場から離れる。

ヴァイオレット「ハァ…ハァ…ありがとう…もう行ったみたい…あ…あの、もう大丈夫…きゃっ!!」

サンジ「いえ どういたバしまして♡ ハァ…ハァ…/////」

警備兵が過ぎ去ってもサンジは一向にヴァイオレットを放そうとせず、それどころか抱き締める力を強める。
目はハートになり、鼻からは鼻血が滝のように流れ、変装用の髭は真っ赤に染まっている。

ヴァイオレット「ごめんなさいっ…頭でもぶつけたかしら…。」

サンジ「あー…いや、ぶつかってきたのは出会いという名の衝撃だけだ…♡♡」

※ウソです。女に飢えた紳士(アホ)のスケベ心です。(笑)

ヴァイオレット「でもこんなに血……。」

サンジ「いや…大した事は…。」

ヴァイオレット「かわいそう…///」

ヴァイオレットの甘い言葉と仕草に、サンジは瞬殺された。

サンジ「おわあああああ~~♡ …ダメだ…もう恋が止められないっ!!』

ヴァイオレット「え!? ダメよ!! そんな目で私を見ちゃ!! 私はもう恋を捨てた女っ…!! 過去に私に関わった男達は皆…!!」

サンジ「そう、みんな幸せだ♡ 追われてたな!! アイツら一体誰なんだ!? 俺で力になれる事があれば言ってくれ!!」

ヴァイオレット「追ってきたのは警官よ…私……男の人を…刺しだの!! 恋がこじれて…。」

サンジ「えェ!!? この国の女は男を刺す程、情熱的って本当なのか!? でもOK!!」

ヴァイオレット「OKなの!? ウウ…!! ダメよ! こんな魔性の女を許さないで…あなたを好きになっちゃう…♡」

ヴァイオレットの甘い言葉と仕草、再び。
サンジは完全にゾロのことなど忘れているだろう…というか、そもそもライコウ達の計画すら忘れてる可能性も有り得る状態だ。

ヴァイオレット「……私の名はヴァイオレット…よろしければ隣町まで私の護衛して下さらない? そしてそこで…殺してほしい男がいる…!!」

サンジ「!!!?」 

 

第114話:エントリー

-コリーダコロシアム-

ルフィ・フランキー・コラソンの3人はコロシアムの前に到着していた。

ルフィ「でけェな~、コロシアム~!!」

フランキー「何だ、俺も出場したくなってきたな!!」

コラソン「お前ら、目的忘れんな!!」

「待てーーーーーっ!!」

「「「ん?」」」

3人がコロシアム前で談話していると、2人の警官が銃を発砲しながら人ではない何かを追っているのが見えた。
追われているのは片足のオモチャの兵隊で、素早い身のこなしで逃げている。

兵隊「ノロマ共め、見ろ!! 片足をコロシアムに突っ込んだぞ!!! “法律”は知ってるな? お前達!!」

兵隊は勝ち誇ったかのように語る。
どうやらコロシアムには警察機関及び海軍は立入禁止で、コロシアム内に犯罪者を見てもその権限は発動しないらしい。
兵隊には“ドンキーホーテファミリーの法”が発動中で、コロシアム出場者及び関係者、立ち入った者に危害を与えたら犯罪者は警官となるのだ。
その事実を語られ、兵士警官は渋々その場を去る。

コラソン「成る程、見世物が試合開始以前にパーなら怒るって訳か。」

コラソンは煙草に火をつけ、兵隊を見据えるが…。

コラソン「……あっつ!!!」

フランキー「お前、コート燃えてるぞ!!!」

ドジッ子なコラソンはうっかりコートを燃やし、悶絶。
フランキーが慌てて火を消そうとしたその時だった。


シャラ…バチバチッ!


ボフゥッ!


「「「!!!?」」」

火花の散る音が響いたかと思えば、突如コラソンのコートに燃え移っていた火が宙を舞い、1人の青年の元へと向かった。
その火は青年の掌に燃え移ったが、男は火傷しておらず、それどころか触ったり左手で持った剣の刀身にも燃え移らせ遊んでいた。

?「よしよし…いい子だ。」

青年は剣を携え花ノ国の衣装の上にロングコートを羽織っており、一見は長身なだけの好青年だが、只者ではない雰囲気を醸し出している。

?「さァ、自然に還れ。」

そう言って息を吹きかけて火を消し、剣を鞘に納める。

?「大丈夫か? 一応火は消しておいた。」

コラソン「あ、あぁ…。」

男はコートをなびかせて微笑む。

ルフィ「スッゲ~、さっきの火はお前がやったのか!! 何者だ!?」

?「僕か? 僕はエイセイというんだ。 この国の王様に用があって来たんだ。」

コラソン「!!?」

エイセイの名を聞き、コラソンは戦慄した。
そう…ルフィとフランキーは気付いていないが、あの“世界皇帝”である。非常に優れた武闘家でもあり、副船長のライコウですら化け物と称する武人だ。
立場・実力共にコラソンよりも遥かに格上の実力者が目の前にいるのだ。

コラソン「(バレなきゃいいが…!!)」

思わず冷や汗を流すコラソン。

エイセイ「そういえばご老体、コロシアムに参加する気ですかな?」

ルフィ「あァ、そうだ!」

エイセイ「今回のコロシアムには多くの猛者がエントリーしてる…決勝まで仮に行っても、ファミリーの幹部達が待ち構えている。 勝ち残るのは難しいですよ?」

ルフィ「そんなの関係ねェ! 全部ブッ飛ばす!!」

すると、ルフィの答えを聞いたエイセイが爆笑した。

エイセイ「アハハハハ!! 大した方だ、気に入ったよ!! 応援してますよ? “麦わらのルフィ”君♪」

「「「!!?」」」

エイセイはニカッと笑みを浮かべ、その場を後にした。

ルフィ「えェ!? バレてた…!!?」

フランキー「アイツは何者だ…!?」

コラソン「(…あの野郎、見逃したのか…!?)」

ふとその時、先程の片足のおもちゃの兵隊が器用に片足で道路へと着地する。

兵隊「やや! これはご老体! 旅行ですか? お荷物をお持ちいたしましょうか!!」

ルフィ「おぅ! そうだ♪」

コラソン「今度何だ?」

フランキー「さっきの兵隊か…やけに礼儀正しいな。」

ルフィ「おかしな兵隊だなぁ~!!」

兵隊「ややや!? 面白いですかな!? いかがかな? いかがかな??」

オモチャ兵隊は転けてみたり、ブリッジしてみせたりする。
ルフィはおもちゃの兵隊を指差し、腹を押さえ、笑う。

フランキー「おっさん、そこどいてくれ。」

兵隊「はっ!! あ…お邪魔か…これは失礼!!」

フランキー「めちゃめちゃ赤面してんじゃねェか…お前、紳士な上マジメだろ…本当は。」

兵隊「そ…そんな事はない!! マジメなオモチャなどありますか!!」

ルフィ「あはははは!! 面白ェ~♪」

すると、コロシアムの受付で受付嬢が締め切りの合図を掛けた。

受付嬢「一般からの出場受付打ち切りますよー!! どうせいないんでしょ!? ヒヨって!! アハハハハ!!」

コラソン「おい、麦わら! お前は入り口別みてェだぞ。」

ルフィ「ん? そうか…!! おお! 出る出る! 俺が出るぞ!!」

ルフィは意気揚々と受付へ向かう。
周囲の人々はルフィの変装を見破ってないのか、半信半疑で見ている。

フランキー「……おいルフィ!! 恐らくバトルショーだとは思うが…いいか、これだけは守れ…!! 存分にやっていいが自分の正体だけは(・・・・・・・・)隠せ…!!」

ルフィ「分かった!!」

受付嬢「じゃ…お名前は?」

ルフィ「ルフ」


ゴン!!!


コラソン「“ルーシー”だ。」

受付嬢「かしこまりました。」

こうして、ルフィは「選手番号0556番 LUCY(ルーシー)」としてコロシアムに出場する事となった。

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一方、ドレスローザ北西に位置する町・プリムラには陸軍の部隊が配備されていた。

?「百獣海賊団……とんでもない連中が来たわね。」

黒髪ロングで青い瞳が特徴の女性が、食事をしながらそう呟く。
彼女はランファといい、かのアルテュール・ジルド率いる「世界陸軍」の大将だ。実力は折り紙付きであり、政府側の戦力ではデカイ方である。

ランファ「……コロシアムの出場者は?」

「はっ…海軍中将のメイナード氏が調査中とのことです。 コロシアム付近にも数分後にバスティーユ部隊が到着、コロシアムに出て来たところを一網打尽にするとのことです。」

ランファ「バスティーユだけで手に負えるとは思えないわ…陸軍(わたしたち)の援軍も向かわせなさい。」

「はっ…ところで大将。」

ランファ「何?」

「……食べ過ぎでは?」

そう、ランファは実はルフィクラスの大食いなのだ。
色気より食い気な彼女の食費は相当なものであり、腹がパンパンになることもある。最近では陸軍の名物と化している。

ランファ「ゲプッ……しかし、おかしな国だ。 本当に一国の王が失墜した国なのか…まるで“誤報だから気にするな”とでも言われたぐらいの平穏さよ。」

「確かに…。」

ランファはすでに気付いている。
この国、どこかおかしい。普通なら大混乱に陥っているのに、この平穏さは異常だ。

ランファ「とりあえずは悪党共の捕縛を優先。 海軍と連携してまとめて潰すわよ。」

そんなやり取りを、影で見ている者が1人。

コアラ「(アレは陸軍大将“紅傘(あかがさ)のランファ”!! かなりの強敵ね、ライコウさんに知らせなきゃ……!!)」

ピンクのコートをなびかせ、コアラは足早に去っていくのだった。 
 

 
後書き
ランファの設定は後日公開します。 

 

第115話:覆面の男

-コリーダコロシアム・控室-

名のある猛者や、大会連続優勝者等、徒者ならぬ顔ぶれが並ぶ選手控え室。
「ルーシー」としてコロシアムに参加することとなったルフィは、コロシアムの剣闘士・スパルタンに絡まれてボコっちゃったり花ノ国のギャングと出会ったり色々騒動に巻き込まれたが、何とか穏便に済んで「戦闘準備室」で待機していた。

ルフィ「よさそうだ…イカす…!!」

剣闘士ルーシー、完全装備完了。
すると、その少し離れた場所で女の監視員達がある美男を前に次々倒れていく。
現れたのは“海賊貴公子”と呼ばれる海賊“白馬のキャベンディッシュ”。懸賞金は2億8千万ベリーであり、「デュランダル」という世界屈指の名刀を携えた天才剣士兼美男である。

キャベンディッシュ「あー、そこの君!」

ルフィ「!」

キャベンディッシュ「それじゃダメだ! 防具には重量制限があるんだぞ? まァ…何をしようと無駄だがね…“ショクショクの実”は僕がいただく。 そう…僕にこそ相応しい…実に美しい能力(ちから)。 今まで“悪魔の実”も口にせず、何の努力もせずにここまで来た…才能だけでね………。」

「重量オーバーだ。」

ルフィ「えー…。」

キャベンディッシュ「今教えたろ!!」

ふと、今度は羽毛の付いた黒マントを羽織った和装の男性がルフィに近づいた。
編み笠を被っておりその素顔は確認しずらいが、腰に刀を差してることから彼もまた剣士であるようで、正直キャベンディッシュよりも目立っている。

?「ご老体、コロシアムは初めてですかな?」

ルフィ「おぅ! お前誰だ?」

?「ムラマサという者です、以後よしなに。 ご老体、その恰好では重量制限に引っ掛かってしまう上に戦いにくいでしょう? せめて鎧だけでも外されては? 」

ルフィ「! だから皆裸みてェなのか。」

すると、ムラマサに負けじとキャベンディッシュが首を突っ込む。

キャベンディッシュ「いいか、これはショーだ!! 観客の求めているのは“血”だよ…闘技場は実は正直に人間の本性を暴き出す…誰が剣と鎧で長引く試合が見たい? 剣闘士は“見せ物”だ…やられる者の血で人々は興奮する…!! ところで…君は何者だ? さっき見てたぞ大男をひねる所を。」

ルフィ「俺はルフィ!! 海賊王になる男だ!!」

『えっ!!!?』

選手一同の視線がルフィの「No.0556 LUCY(ルーシー)」のゼッケンに注がれる。

「……ルーシー(・・・・)じゃねェか!!!」

ルフィ「あ…ルーシーだった。」

周囲から「紛らわしい発音するな」や「“麦わらのルフィ”がいるのかと思った」と、ヤジが飛び交う。
そんな中、キャベンディッシュは笑みを浮かべながら呟く。

キャベンディッシュ「……フフ…本当に君が“麦わらのルフィ”だったら…今、ここで殺していたよ。」

ムラマサ「…ほぅ、何か深い因縁でも?」

キャベンディッシュ「あァ、そうさ…全てはあの時(・・・)から始まった…!」

キャベンディッシュは海賊“麦わら”との因縁を語り始めた。
彼が新世界に入ったのは3年前…2億を超える“美しきルーキー”の登場に世界はざわめいたという。
しかし、その1年後にルフィはキッドらと共に「最悪の世代」として海賊界に名乗りを上げ、獅子奮迅の大立ち回りで世間の注目を集めた。

キャベンディッシュ「記者達はもう僕に見向きもしない!! だから殺すんだ!!! 目障りな後輩達を全員な!!!」

ムラマサ「それを“逆恨み”や“負け犬の遠吠え”と言うんですよ貴公子君。」

キャベンディッシュ「負け犬って言うなァ!!! フン…ま、この大会でショクショクの実を手に入れれば後輩ルーキーの命などいくらでも…。」

ルフィ「おっさん!! これならどうだ!?」

「その装備ならOKだ。」

ムラマサ「ほら、言ったでしょう?」

キャベンディッシュ「貴様らもそういう態度をとれなくなるぞ!!」

ルフィは逆恨みのキャベンディッシュを放っといて、装備重量確認を済ませムラマサと共に別の選手…女剣闘士のレベッカと対話する事にした。
3人は今、コリーダコロシアムの歴史上最強の剣闘士“キュロス”の像の前にいる。

レベッカ「キュロスは三千戦全勝無敗の男…その内 敵の攻撃を受けたのはたったの一太刀だけ。」

ルフィ「えー…そんなに強ェのか!」

レベッカ「20年前までここで活躍してたらしいわ…だけどこの国中の誰も…彼の事も…彼の事を知らない!!」

ルフィ「?」

ルフィはレベッカの不可解な言葉に首を傾げる。
レベッカ曰く、ドレスローザ(このくに)のお年寄りも剣闘士達も誰一人彼に会った事が無いらしく、「剣闘士キュロス」は実在した人物なのか誰かの空想なのかすら不明だという。

ムラマサ「誰も知らない人だが、誰も(これ)を撤去しようとはしない…不思議な話だ。 人々は本当にキュロスを知らないのか…それとも何者かによって忘れさせられた(・・・・・・・)のか。」

レベッカ「え…?」

ムラマサ「いえ、独り言ですからお気になさらず。 ところでお嬢さん、ブロックは?」

レベッカ「私はDブロックよ。 2人は?」

ムラマサ「私はEブロック…ご老体はCブロック。 運よく別々のようですよ。」

レベッカ「よかった! じゃあ、1回戦終わったらまた話しましょ!」

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-同時刻-

ライコウ「…マジでか?」

パエリアを食べていたライコウは、コアラの報告を聞き目を見開いた。

コアラ「先程確認しました! 巨大な番傘を携えていて、間違いなく…!」

モネ「“紅傘のランファ”……世界陸軍大将を務め、愛用の番傘が敵の血で真っ赤に染まるまで戦場を蹂躙する女傑。 どうやら“藤虎”と共に派遣されたようね。」

コアラの報告とモネの呟きを聞いたライコウは思わず頭を抱えた。

ライコウ「参ったな…ただでさえ藤虎は厄介な能力者。 その上陸軍大将…しかも能力者の方を寄越すとはな…ジルドめ、中々やる…。」

ランファはアロアロの実の矢印人間…その名の通り矢印を操る能力だ。
一見弱そうな名前だが、実は超人(パラミシア)系悪魔の実の中では最高レベルの強力さを誇る。一定方向へ吹き飛ばしたり刃のように鋭くなる矢印は、応用次第では最強種の自然(ロギア)系を上回るとされている。

ライコウ「藤虎と紅傘……大将は来るだろうとは察してたが、予想以上の面子だな。」

その時だった。
部下の1人が汗だくで慌てて駆けつけた。

「ライコウ様~~~!!! 大変です、コリーダコロシアムにとんでもない男が出場しています!!!」

ライコウ「……?」











-再びコリーダコロシアム-

ルーシーとして作戦の囮役となったルフィは、戦闘準備室で出会ったムラマサと行動を共にしていた。

ムラマサ「こうして出会ったのも何かの縁。 お互い生き残ったらご飯でも奢りましょうか? 一応金はあるので。」

ルフィ「ホントか!? 約束だぞ!!」

その時、観覧席が何やら騒がしくなっているのを目にする。
何でもつい先程始めたばかりのAブロックが終了したらしく、その瞬殺ぶりに戸惑いを隠せないようだ。

ムラマサ「ご老体、どうやらAブロックの勝者が決まったようですよ。」

ルフィ「誰だろうな~。」

観覧席から闘技場の上の男を見つめる2人。
コロシアムの実況担当・ギャッツは興奮しながら勝者“Mr.ストア”の名を叫ぶ。
その時、Mr.ストアが紙袋の仮面を脱ぎ去った。
しかし、観客と出場者達は紙袋の覆面を取ったMr.ストアの顔に驚愕し戦慄した。何故なら、その男はあの四皇(・・・・)の部下だったからだ……!!

ギャッツ《何てことだァァ!!! 我々はこの覆面の男(・・・・・・)を知っているゥ~~~~!! 波乱の幕開け!!! 意外な出場者!!! Aブロック勝者は!! 泣く子も黙る“四皇”黒ひげ海賊団・一番船船長!!! シーザス・バージェス~~!!!!》

バージェス「ウィ~ッハッハッハッハッハァ!!!」

「バ……バージェスだァ~~~!!?」

「何でそんなのが出場してんだァ~~~!!!」

ムラマサ「……!」

ルフィ「あァ!! “チャンピオン”の奴っ!!!」

コリーダコロシアムに、まさかの出場者が登場。 
 

 
後書き
ムラマサの正体は、後々。 

 

第116話:“CP-0”

フランキー「“黒ひげ海賊団”か……何ちゅう強さだ!! ルフィなら問題ねェかと踏んでたが、案外苦戦もあるか…正体がバレなきゃいいが…!!」

かの“白ひげ”エドワード・ニューゲートを倒した“黒ひげ”マーシャル・D・ティーチ率いる「四皇」黒ひげ海賊団の幹部の登場。
さすがのフランキーもこれには驚き、ルフィを心配する。

「さて! 観戦はここまでだ、俺は仕事(・・)に入るとするか…!」

兵隊「やや!!? ちょっと待ちたまえ! 私も行く!!」

フランキー「だから邪魔だっつってんだろ、兵隊!! 工場の場所を知らねェ奴には用はねェ!!! 」

フランキーは先程出会った兵隊と揉める。
どういう訳かついて来たらしい。
すると、そんな2人にゴーグル付のシルクハットを被った青年が近づいてきた。

?「カティ・フラムだな?」

フランキー「!!?」

青年の一言に動揺するフランキー。
何を隠そう、フランキーの本名こそ「カティ・フラム」。本名を知る者など、かつて戦った“CP9”ぐらいだ。

フランキー「お前、何者だ…!!!?」

その問いに、青年はシルクハットをクイッとあげて笑みを浮かべた。

?「俺の名はサボ。 百獣海賊団双将軍と言えば分かるよな?」

フランキー「!」

サボ「場所を変えて少し話そうか。」

















その頃、シーザー引き渡し組(ロー・ロビン・ウソップ・シーザー)は、変装した状態で北東のカフェにてシーザーを引き取るドフラミンゴの使いを待っていた。

「グリーンビットねェ…あまり進められねェなァ…研究員か探検家かい? アンタ達…命かけて行く程の用がねェんならやめた方がいい…。」

カフェのマスターは、4人にそう告げる。

ロビン「あの鉄橋はずいぶん頑丈そうだけど?」

「あァ、確かに“鉄橋”だよ。 だが今じゃあ入り口は見ての通り誰も使ってねェ…グリーンビットの周りには“闘魚”の群れが棲みついててねェ…そいつらが現れるまでは人の往来もあった様だが、200年も昔の話らしい…。」

シーザー「シュロロ…主人(マスター)、トウギョとは?…υ」

「角のある凶暴な魚だ! 船なんかで近づいたら、まァまず転覆だな!!! そのために橋も鉄に強化されたが…無駄だよ。」

ウソップ「無駄って…おい!! 鉄の橋でもその魚に倒されるってのか!!?」

「さァ…橋がどうなってるかは…行った奴しか知らねェし、帰ってきた奴も知らねェし…。」

カフェのマスターは不吉な言葉を言い残し、カウンターへ戻っていく。
闘魚の話を聞いて震えあがったウソップとシーザーは、ローに涙目で訴え始めた。

ウソップ「…おいトラ男!! 今すぐ引き渡し場所を変えろ!!」

シーザー「そうだぞ!! 引き渡される身にもなれ!!」

ロー「変わらねェ。 ここまで来てガタガタ騒ぐな…そんな事より俺が心配してんのは国の状態だ。 王が突然辞めたのにも関わらずこの平穏ぶり……明らかにマズイ。」

ウソップ「大丈夫かよ!!?」

ふと、突然ロビンは通りを堂々と歩いてる仮面を付けた白いスーツ姿の3人組を見て、まるで隠れるかの様に帽子を深くかぶり直す。
その姿を見たシーザーも驚愕し、ローは舌打ちする。

ロー「“CP-0”…!!」

ウソップ「え…!? “CP”…!? も…もしかして…“CP9”と関係が…!?」

ロビン「その“最上級”の機関よ…彼らが動く時に良い事なんて起こらない…!!」

ロー「……。」

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-ワノ国-

カイドウ「ウオロロロロ…!! 随分と面白ェ姿になったな。」

マイ「あの……これ、面白いって言いますかね…。」

ヒオ「ただのケガ人ですね。」

カイドウはマイとヒオを相手に酒を飲んでいた。
先日のアプーとの戦闘で重傷を負いながらも何とか復帰したマイは、暫くの間戦闘を控えるよう言われた身。ゆえに、リハビリで動けるようになってからは1人飲み状態のカイドウの酒盛りに付き合ってる訳だ。

「さすが幹部ともなると格が違うな……。」

「いや、傘下であるマイさんも大したお方だぞ…!」

「つーか、カイドウ様が笑い上戸なだけじゃねェか…?」

3人のやり取りを見ていた部下達はヒソヒソと話し合う。

カイドウ「それにしても…ムラマサの野郎、抜け駆けしやがって…。」

ヒオ「それぐらい大目に見ましょう、向こう(・・・)にとっては戦力は多い方が良いでしょうし…。」

その時だった。

「カイドウ様ァ~~!!! カイドウ様ァ~~~~!!!」

部下の1人がカイドウらの元へ駆けつける。

「確認できました!! ドレスローザに、黒ひげ海賊団のバージェスが潜入してた模様で……!! これで実質、四皇同士の(・・・・・)戦争は回避不能に……!!」

ヒオ「え!?」

マイ「んな……!!」

「バ、バージェスだと!?」

「ウソだろ、あの“黒ひげ”の!!?」

「マジかよ、おい!!」

動揺を隠せないヒオ達に対し、当のカイドウは相も変わらず酒三昧。
赤い瓢箪を片手に中身の酒をグビグビと飲んでいく。

カイドウ「狼狽えんじゃねェ…!!」

『!!』

カイドウ「あんなヒゲブタ野郎の部下なんぞ…この俺どころか相棒(ライコウ)の敵ですらねェ…!! ウオロロロロ…!! 戦っても3分も持たねェだろうよ……!!」

ヒオ「(ヒゲブタ野郎って……。)」

笑い上戸のカイドウに、部下はバージェスとティーチの顔写真をカイドウに見せる。

「し…しかしカイドウ様、バージェスはあの“白ひげ”を討った男の部下です!!」

「お言葉ですが…いくらあのライコウ様が圧倒的な強さを誇っていても、バージェスを甘く見てるのは…!!」

その時、カイドウの様子が変わった。
カイドウは笑うのをやめ、瓢箪を置いて立ち上がる。

カイドウ「甘く見てるのが……。」

カイドウは金棒を取り出し…。

カイドウ「何だってんだよーーーー!!!!」


ドゴォォン!!


『ギャアアア~~~~~~!!!!』

カイドウは怒り、金棒で部下2名を島の外まで吹き飛ばした!!
その衝撃は凄まじく、山が震え暴風が起こった。

マイ「な……。」

ヒオ「ふぇ……。」

『あ……あァ……!!』

あまりの光景に、放心状態になる一同。
ヒオに至っては涙目である。
そんな中、カイドウは再び酒を飲み…。

カイドウ「ライコウ(アイツ)が誰だか分かってんのかァ!!?」

『ひえェェ~~~~~!!!』

怒り上戸に変わった。
ご立腹なカイドウは青筋を浮かべ、激しく歯ぎしりをし、覇王色の覇気を放ち始める。

「カ、カイドウ様……どうかお気を鎮めて…!!」

「も、勿論…ライコウ様が負けるだなどとは微塵も思っておりませんので…!!」

慌ててカイドウを落ち着かせようとする部下達。
カイドウは再び酒を飲み、落ち着きを取り戻しつつ口を開いた。

カイドウ「“黒ひげ海賊団”……!! 瀕死の白ひげ(ジジイ)を殺した程度で粋がってる小僧共…この俺やライコウを敵に回すことがどういう意味(・・・・・・)を持つかぐれェ分かってる筈だ…!!!」

カイドウはそう言って、再び笑い上戸になる。

カイドウ「ウオロロロロ……!! 上等だ、この海の“真の皇帝”を決めようじゃねェかァ…!!」

カイドウは酒を飲み干し、瓢箪を握り潰すのだった。 

 

第117話:ギネスVSイッショウ?

-サニー号-

こちらではサニー号安全確保チームが、モモの助を一人放っておくと思いつめた様に塞ぎ込む為、チョッパーとナミが将軍ゴッコをしてあげていた。
チョッパー曰く、「モモの助は一人でいるとすごく思いつめた様に塞ぎ込む」、「話してくれてないだけで、心に深い傷を持ってる可能性がある」とのこと。

チョッパー「そういえばモモ、確かお前はワノ国出身だったよな? ブルックから独立を保持しているって聞いてるけど…侵略被害とかは受けないのか?」

チョッパーの質問に対し、モモの助はどこか誇らしげに口を開いた。

モモの助「うむ! 心配ご無用、カイドウとライコウがやっつけてくれるでござる!!」

ナミ「カイドウとライコウ!!?」

ブルック「百獣海賊団のツートップがですか…!?」

モモの助「カイドウとライコウは、ワノ国の“将軍”と古い付き合いでござる。 酒を見返りにワノ国を拠点に多くの島々を統治してると聞く。」

ブルック「何と……そんな繋がりが…!!」

ワノ国のお偉いさん・将軍と海賊であるカイドウとライコウの意外な繋がりに驚愕するブルック。
その時だった。


ガシャン!!


『…え?』

?「やだよー…。」


バサバサ…トントン!!


4人しか居ないはずのサニー号から、居ないはずの5人目の声と物音が響き渡る。

ナミ「え!? 何!? この船…私達の他には誰もいない筈…。」

ブルック「ですよね!! えー!? 怖い~~!! キモイ~~~!! 男子部屋からですね…!!」

?「やだよー…全く…やだやだ…。」

チョッパー「誰の声だ…!?」

ブルック「誰かいる~~っ!!!」










-同時刻、コリーダコロシアム-

コロシアム会場では実況のギャッツが会場のテイションを盛り上げている中、裏では血まみれで倒れていた複数の重傷者が発見され、コロシアムの裏側は医療班が早急に重傷者をタンカで運んでいく。

ムラマサ「圧倒的…まァ、相手が悪かったですね。」

ルフィ「えらくやられたなー…チャンピオンの奴に…!」

タンカで運ばれる意識が戻った者は仕切りに「怪物に殺される」と繰り返している。
四皇の幹部は、やはり新世界有数の強者であるのは間違いないようだ。
すると…。

?「おい、俺の目は節穴じゃねェぞ…。」

ムラマサ「!」

ルフィ「ん?」

?「いくら変身しようと…俺の経歴に傷をつけた野郎の顔は忘れねェ…!!!」

そう口にしながら、ルフィとムラマサに近づく金髪の男。
その姿を見たルフィは、目を見開いた。

ルフィ「あ! お前は!! ひし形のおっさんをひでェ目に遭わせた…マロ…「ベラミーだ。」…そう! ベラミーだ!!」

ムラマサ「知り合いなら名前くらいちゃんと覚えましょうよ、ご老体。」

ルフィのいい加減な覚え方に、呆れながら微笑むムラマサ。
べラミーはドンキホーテファミリー傘下の海賊であり、“ハイエナのべラミー”の異名を持つ1億9500万ベリーの賞金首。“ドレスローザの凶弾”とも呼ばれており、コロシアムの観客からも絶大な人気を得ているのだ。
なお、べラミーはルフィとはジャヤという島の無法地帯・モックタウンで激突したという浅からぬ因縁がある。

ルフィ「何でお前ここに!?」

べラミー「別に…ジャヤの住人じゃねェんだ…どこにいようが勝手だろ? ドフラミンゴはガキの頃から俺の憧れの海賊だった…今回の景品である“ショクショクの実”に興味は無ェが、俺も優勝しなきゃならねェ理由がある…!! だが“麦わら”、昔の俺とは違う…!!」

ルフィ「!」

べラミー「俺は空島へ行ったんだ…仲間は失ったが…俺の中の世界はひっくり返ったぞ。」

ルフィ「“スカイピア”か!? お前!! 空の奴らに何もしてねェだろうな!?」

べラミー「さァな…ともあれ、俺はもうお前を恨んじゃいない…やがて来るデカイ波を超えるため、俺はドンキホーテの船に乗る!! もう、お前を笑わない。」

ベラミーはそう言いながらコロシアム会場に続く階段を上っていく。

ムラマサ「少しいいですか?」

べラミー「!」

ムラマサがべラミーを止めた。
べラミーは振り返り、「何か言いてェらしいな」と言う。

ムラマサ「ドンキホーテ・ドフラミンゴ……彼は今、立場を危ぶまれている。 ファミリー殲滅を謀る大海賊“百獣のカイドウ”率いる百獣海賊団が動き出しているそうですよ。 それでもなお、あなたはドンキホーテの船を乗る気ですか? 地上最強の生物を…四皇を相手にしてでも、ドフラミンゴに付いて行くのですか?」

べラミー「ハハッ…!! 当然だ……そんな俺をお前は止めるのか?」

ムラマサ「いえ…男が、海賊が筋を通すことに口は挟みませんよ。」

べラミー「そうか…じゃあなお前ら、決勝で会おうぜ。」

「「…。」」

例え四皇が相手だろうと、あくまでもドフラミンゴに忠義を尽くすというべラミー。
ルフィとムラマサは、そんな彼の後ろ姿を真剣な眼差しで見るのだった。

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-プリムラにて-

ギネス「しっかしどういうこった、スゲェ嫌な予感しかしねェ。」

“世界最凶の単独犯”と呼ばれるギネスは、コートをなびかせ街を歩く。
海軍と陸軍が多く来ているので、伊達メガネや帽子でちょこっと変装している。
そんな中、ギネスはある男を目にし、男の元へ向かった。

ギネス「そこのおじさん、ちょいといいか?」

?「ん?」

ギネスが声を掛けたのは、額から両目にかけて大きな十字傷がある着流し姿の男。白いコートには「正義」の2文字が刻まれており、海兵であるのがすぐに分かる。
彼の傍には部下であろう者がいて、ギネスを懐疑的な目で見つめている。

?「…これァ、どうも。 お兄さん、何か用ですかい?」

ギネス「いやぁー、ちと気になってコンタクトしようと思ったんだ。 新海軍大将の腕っぷしってのを…なっ!!!」


ガキィィィンッ!!!


ギネスは目のも止まらぬ速さで抜刀し、覇気を纏った横一文字の薙ぎを放ち、その一太刀を男は仕込み杖で受け止めた。
男も覇気を纏って受け止めたため、覇気と覇気が衝突し周囲の建物の窓ガラスがガタガタと音を立てて揺れる。

「イッショウさん!!!」

イッショウ「ご安心なすって……しかし、サカさんから聞いちゃあいやしたが噂以上の力のようで。」

ギネス「そっちも大したモンだと思うぜ? 俺、殺る気満々で刀抜いたからな。 目が見えねェのハンデじゃなくなってんぞ。 という訳で……初めまして、世界徴兵で海軍大将に特任された“藤虎”イッショウ。」

イッショウ「…お初にお目にかかりやす。 “犯罪界の絶対王者”ギネス・スパーツィオ。」

ギネスが出会ったのは、新海軍大将“藤虎”イッショウだ。

「イッショウさん…!!」

イッショウ「下がってておくんなさいよ、相手は政府の身勝手(・・・・・・)が生んだ“怪物”でござんす。」

「っ…!!!」

ギネスはイッショウに「政府の身勝手が生んだ怪物」と呼ばれ、きょとんとした顔を見せた後笑い始めた。

ギネス「アハハハハ!!! アンタはエイセイと似てる気がするぞ!! “権力よりも市民守りやす派”だろ? 絶対!! 大将選抜の人選ミスは無かったようだな、安心したよ!! アハハハハ!!」

子供のように無邪気に笑うギネス。
それに釣られてイッショウも微笑む。

イッショウ「そらァどうも…しかし、あっしも新参者ながら“海軍大将”。 アンタが賞金首…ましてや世界的犯罪者である以上、今ここで取り逃がすこたァできやせんので。」

イッショウの声色が変わる。

ギネス「…へェ~…お前、一対一(サシ)で俺を捕まえられるとでも思ってんの?」

ギネスは目を細め、先程の子供のような無邪気な笑みではなく捕食者のような獰猛な笑みを浮かべ、スぺスぺの実の能力を発動する。
ギネスが作り上げた空間が、周囲を呑み込んでいく。
一方のイッショウも仕込み杖を構え、ゆっくりと抜き始める。
両者から放たれる凄まじい威圧にピシッと地面が微かに動く。

イッショウ「…と、言いたい所でしたが。」

ギネス「へ?」

抜き始めた仕込み杖を突然納めるイッショウ。
ギネスは戦うと思っていたので、イッショウの予想外の言葉に目を丸くし間抜けな声を出す。

イッショウ「アンタを捕まえるとなりゃァ、あっしら海軍も“色んな覚悟”がいるし市民の皆さんにも甚大な被害が出る…それに今は急いでる身でございやすので、そこを退いてくれやせんか?」

ギネス「…あ、はぁ…。 何か悪かったな、無理に引き留めてよ…。」

今まで接したことの無いタイプの海兵(にんげん)に、ギネスはそう言うとイッショウの目の前から退いた。

イッショウ「いえ…あっしも会って見たかったんですよ、ギネスという男に。 政府からは革命家ドラゴンと同じように忌み嫌われて恐れられてやすが、エイセイの旦那やジルド陸軍元帥は好感を抱いてる……アンタの極端な評判の真実を知りたかったんでさァ。 まァ、無益な殺生は好まねェ方のようで安心しやしたが…次会ったら時ァ、“敵同士”って事でお願いしやす。」

再び仕込み杖を響かせながら歩き始めるイッショウ。

ギネス「…海軍も捨てたモンじゃねェな。 アンタのような海兵が元帥なら、海軍に革命でも起きてただろうに。」

ギネスは名残惜しそうに笑って呟くのだった。 
 

 
後書き
ちょっとした裏話ですが…第116話にてカイドウに金棒で島の外まで吹き飛ばされた部下2名は、その後ヒオに回収されました。
現在意識不明の重体だとのことです。 

 

第118話:爆弾発言

 
前書き
お久しぶりです。 

 
-コリーダコロシアム-

コリーダコロシアムでは、ショクショクの実争奪戦Bブロックが始まろうとしていた。

ムラマサ「Bブロックの注目選手は、“人食いのバルトロメオ”ですね。」

ルフィ「バルトロメオ? 誰だそいつ?」

ムラマサはルフィの質問に対し、リング上にいる逆立たせた緑髪に鼻ピアスや尖った歯といった異様な顔立ちが特徴の男を指差す。

ムラマサ「彼がバルトロメオ。 1年前に新世界に入った億越え海賊で、世間の認識では非常に粗暴で残虐な海賊であるとされていますが…ああいうの(・・・・・)に限って意外とこの海賊界で生き残れるんですよ。」

ルフィ「そうなのか?」

ムラマサ「尤も、私の長年の勘ですが。」

そんな中、実況のギャッツの声が響く。

ギャッツ《Bブロック、総勢138名のバトルロイヤル!! リングから落ちれば失格、リング上で死ねば失格!!! 生き残るのは、たった1人!!!! 今、開始のゴングが鳴ったァーー!!!》


カァァァン…!!


『わあああああああ!!』

盛り上がる観客達。

べラミー「さァ、どいつから行こうか…!!」

Bブロックのバトルロイヤルの開始のゴングが鳴りはベラミーは相手を選抜するかの様に周りを見渡すと、1ヶ所に複数の選手が集まり、まるでチーム戦の様に戦う選手達に気が付く。
それは少し前に控え室で口喧嘩をしていたプロデンス王国の軍師・ダガマ率いる選手達だった。
ダガマの元にはドレスローザ自衛軍隊長のタンク・レパントをはじめとした歴戦の戦士もいる。

レパント「ベラミーから行くか!? ダガマ!!」

ダガマ「そうだな!! こっちの人数が減る前に厄介そうなのから潰していこう!!」

べラミー「何だコイツら!!? まるで軍隊………!!」

バルトロメオ「そういうのバトルロイワルとはいわねェべ。」

ダガマ「死後に好きなだけ我々を卑怯と罵るがいい!! ガマハハハ!! 生き残った1人が“勝者”!! 必要なのは結果だけだ!!」

観客からも「汚い」だとか「何でチームを組んでる」とヤジが飛ぶが、ダガマはその全てをスルーする。
いきなり共闘作戦が始まったのだが、これも駆け引きであり反則ではない。

ダガマ「(ガマハハハ!!“ショクショクの実”は必ず我がプロデンス王国がいただいて帰る…!!)」

ダガマには、このBブロックでの勝算があった。
彼の主君であるエリザベローⅡ世は生まれながらの「破壊兵器」と称されており、強固な肉体から放たれる伝家の宝刀「キング・パンチ」は一撃で敵国要賽に風穴を開け当たりさえすれば四皇すら打ち沈めると言われているのだ。
だが、その威力の代償にパンチ一発放つ為に一時間の集中とウォーミングアップを要するので、こうして共闘しキング・パンチで全員K.O.を狙っている訳だ。

ダガマ「国王様!! 準備は?」

エリザベローⅡ世「いつでも撃てる!! シッ! シッ! …時を知らせよ! ダガマ!!」

ダガマ「御意!! 王を死守し、リング上の頭数を減らせ!!!」

ダガマが協定を組んだ選手達に指示をしている時、ベラミーはレパントと対峙していた。

べラミー「いいのかレパント! “ドレスローザ”の軍隊長が他国の軍師に手を貸して!!」

レパント「フフ…! 金が敵の世の中よ! ベラミー!! デカイ夢より俺は足下の金を拾うのさ!!」

べラミー「ハハッ、耳が痛ェ!!」

コリーダコロシアムは次第に苛烈化し、脱落者が相次ぐ。
リングの中も外も地獄で、無傷の生還などあり得ないだろうが、これがコリーダコロシアムなのだ。
そんなBブロックを選手観覧席から観戦していたムラマサは、決勝進出者を予想する。

ムラマサ「(魚人空手師範のハック、脚功道(ジャオクンドー)格闘家のブルーギリー、バルトロメオ、エリザベロー…最終的にはこの4人が残るでしょうが、やはりバルトロメオが可能性が高いか…。)」

ルフィ「スゲェな~、こんなのと戦えるのか!!」

ムラマサ「ご老体、随分子供っぽいですね。 やはり楽しみですか?」

ルフィ「おぅ!」

その時、コートをなびかせてあのキャベンディッシュがイラついた顔で再登場。

キャベンディッシュ「人を食った行動ばかり取るから…“人食いのバトルロメオ”…彼も生意気な後輩の1人…。」

ムラマサ「また君ですか。」

ルフィ「色んな奴が出てて楽しくなってくんなー…ししし!! なー、お前名前なんだっけ?」

キャベンディッシュ「キャベンディッシュだ。」

ルフィ「何してんだ? キャベツ?」

キャベンディッシュ「“最悪の世代”の手配書のチェックさ…! 新しいのを手に入れないと! ナイフの傷でろくに見られない。」

ムラマサ「キャベツ呼ばわりはスルーですか。」

キャベンディッシュはルフィにナイフで穴だらけになった手配書を見せながら言う。

ルフィ「もういいんじゃねェか? 許してやれば。」

ムラマサ「彼ら以上の活躍をすればいいだけでしょう? ストーカー紛いの執着は控えた方が良いですよ。」

ルフィとムラマサの言葉にキャベンディッシュは耳を貸さず、最悪の世代への逆恨みを晴らす姿勢を崩さない。

キャベンディッシュ「これだけの商品のある大会だ…1人くらい出場して来ないかと思ったが…この大会はさっきのバージェスの様に顔を隠す事も可能だ。 いるとすれば勝ち残るのを待つが早いが…。」

その時だった。
八宝水軍のチンジャオが現れ、とんでもない爆弾発言を口にした。

チンジャオ「ひやはや、ここが閲覧席ですか…試合がよく見える。 …ところで、ガープさんは元気かな? “麦わらのルフィ”君…!!」

ルフィ「え…!? おっさん! じいちゃんと知り合いなのか?」

ムラマサ「あ。」

キャベンディッシュ「え!!?」

ルフィ「あ!!!!」

チンジャオ「私は昔、ガープさんに殺されかけてね………孫子の代まで恨むと決めていた。」

ルフィ「はっ!!!?」 
 

 
後書き
ムラマサの正体はまだ明かしません。
もう暫くお待ちください。 

 

第119話:四千枚瓦正拳、敗れる

 
前書き
久しぶりにコアラが戦います。 

 
ルフィに背後から話しかけてきたチンジャオ。
彼は何と、あのルフィの祖父であり海賊王ロジャーの宿敵の1人である“海軍の英雄”ガープと戦ったことがあるらしく、チンジャオは頭を撫でながら口を開く。

チンジャオ「かつてのガープは海賊達にとって“悪魔”そのものだった…!! 何十年経とうとも、私の傷が癒えることはない…!! 当時億越えルーキーであった剣帝ライコウも然り……あやつと戦って生き残れた若者達は奇跡としか言いようがない…!!」

キャベンディッシュ「君! 本当なのか…!!?」

ルフィ「いやいや…間違えたんだ…俺はルーシーだった…。」

チンジャオ「この恨みは孫の己に償って貰おう…!!」

ルフィ「そんなのじいちゃん恨めよ!!」

キャベンディッシュ「みろ! ガープの孫なんだな!?」

ルフィ「あ!! 違うんだよ!! 俺はルーシーだった…!!」

ルフィ、墓穴を掘りかける。

キャベンディッシュ「ルーシー…もし君が本物の“麦わらのルフィ”ならば……この場で斬り捨てるっ!!!」

キャベンディッシュは愛刀であるデュランダルを抜刀し、刃先をルフィに向ける。
チンジャオも暴れ始め、周囲は大混乱に陥る。

キャベンディッシュ「おのれ、首領(ドン)・チンジャオ!!!! 邪魔をするな!!! “麦わらのルフィ”は僕の獲物だ!!!」

チンジャオは高く跳び、全体重を掛けた頭突きを仕掛ける。
それを見たキャベンディッシュは突きの構えを取る。

チンジャオ「ドイサ!!!! “武頭(ブトウ)”!!!」

キャベンディッシュ「“美剣・青い鳥(ブルーバード)”!!!」

チンジャオの頭突きとキャベンディッシュの突きが激突する瞬間…!!


ガギィィン!!!


ドォン!!


キャベンディッシュ「っ!!?」

チンジャオ「むぅっ…!?」

ムラマサ「やれやれ…老若問わず血の気が多いと、止めるのは大変ですね。」

何と2人の間にムラマサが入り、キャベンディッシュの突きを左腕に携えた黒刀で防ぎ、チンジャオの頭突きを無造作に突き上げた右腕で弾き返した。

「うォ!! 伝説の海賊の頭突きを弾いたァ!!?」

「キャベンディッシュの剣も容易く防いでやがる!!!」

「アイツ本当に人間か!!?」

選手達は目の前の光景に混乱する。

ルフィ「スゲェ…アイツ何者なんだ…!?」

さすがのルフィも、ムラマサの実力の片鱗に驚愕する。

チンジャオ「ひやホホ…良い筋だな若造。」

チンジャオはその巨体と老体とは無縁の高い身体能力で着地し、拳を構える。
そんなチンジャオに、ムラマサは右手を挙げて制した。

ムラマサ「乱闘は控えましょう、“錐のチンジャオ”殿…そんなに殺し合いをしたければ、リングですればいいでしょう?」

チンジャオ「!! 己、何故その名を知る?」

ムラマサ「それを言う義理はありませんよ…ここで暴れれば失格、引いたらいかがです? 可愛いお孫さんも止めようとしているのだから。」

チンジャオ「!」

ムラマサ「ではご老体、ここを離れましょう。 ここでは落ち着いて試合観戦が出来なさそうだ。」

ムラマサは納刀し、伝説の海賊(チンジャオ)を制してルフィと共にこの場から去ろうとする。
しかしそれを許さない者が1人…キャベンディッシュだ。

キャベンディッシュ「待て!! “麦わら”を置いて行け!! 邪魔するなら君も斬る!!」

キャベンディッシュは“美剣・青い鳥(ブルーバード)”を放ち、ムラマサに攻撃したが……。


スカッ……!


『!!?』

キャベンディッシュ「(何!?)」

デュランダルの刃は、ムラマサの心臓を貫いた。
しかし手応えが無く、それどころかムラマサは血を一滴も流さず生きている。

キャベンディッシュ「(どういうことだ!!? どうなっているんだ、この男の身体は!!?)」

これにはさすがのキャベンディッシュも放心状態になる。
周囲の選手達も「不死身か!!?」だとか「死んでねェ!!?」と叫んで大混乱。

ムラマサ「天才剣士と聞きますが、その程度では君はまだ赤子同然ですね。」

キャベンディッシュ「なっ…!!?」

心臓を貫かれたまま話しかけるムラマサ。

ムラマサ「天才だからと驕ってはなりませんよ…君の剣は、私には届かない。」

選手観覧席は大混乱に陥る。
キャベンディッシュはルフィ抹殺を忘れ呆然と立ち尽くし、現場に居合わせた選手達も動揺を隠せない中、チンジャオは何かを確信する。

チンジャオ「(あの能力(ちから)…間違いない…あんな芸当が出来るのは、この世では“あやつ”しかおらん…!!)」

チンジャオは、その場を去っていく2人をただ見続ける。



















その頃、ルフィはムラマサに連れられ別の観戦席の窓から観戦していた。

ルフィ「お前、何の能力者だ!? 見たことねェ能力だったぞ!!」

ムラマサ「私はヒトヒトの実の幻獣種である“ぬらりひょん”の能力者。 敵の自らに対する認識をズラし、ぬらりくらりと戦場を駆ける。 先程私は、一定空間ごと(・・・・・・)認識をズラしました…だからあなたに対する認識すらもズレてしまい、攻撃が当たらなかったのです。」

ルフィ「ってことは、キャベツは全っ然違う方向に攻撃したのか!」

ムラマサ「その通り。」

ムラマサの能力の真髄は“認識操作”である。
能力を発動すると、対象の自らに対する認識を強制的にズラしたり認識させなくすることが出来る。それは自分以外ではなく指定した一定空間にいる全ての存在の認識をも操れる。
勿論この能力は無敵という訳ではない。何だかんだ言って悪魔の実の能力であるので、覇気が有効なのだ。見聞色の覇気を発動すれば「認識のズレ」を最小限に抑えることが出来、実体(ほんもの)を捉えられる。
尤も、ムラマサを上回る見聞色の使い手であることが前提だが。

ルフィ「しっかし参ったなー…正体はバラさねェってフランキーと約束したのに…。」

ムラマサ「これも何かの縁…私が出来る限りの手を尽くしますよ。 あなたと是非戦ってみたいですし。」

ルフィとムラマサがそんなやり取りをしていると、観客席から歓声が上がり、司会の熱の入ったギャッツの実況が入った。

ギャッツ《タンクが倒れたァ~~~っ!!!! ドレスローザの自衛軍隊長!!! タンク・レパント脱落!!! 凶悪アブドーラ&ジェットの餌食となる~~~!!!!》

リングには、血塗れで白目をむき、地に伏すタンク・レパントの姿がある。
しかしリング上の選手達は瀕死のレパントを見向きもせず、接戦は続いてゆく。

ギャッツ《おぉっとォ!! ここでアブドーラ&ジェットが脱落だァ~~~~~!!! 残虐!! 凶悪!! そんなものはこの男の為にある言葉~~!!》

『ベラミー~~~!!!』

観客の声援がべラミーに集中する。
さすがドンキホーテの傘下である。

ギャッツ《驀進(ばくしん)を続ける男がここにも一人!! 魚人戦士ハック!!! 一方…唖然~~~~~!! 一体どこまで人をバカにするのかバルトロメオ!! 何と大観衆の面前で!! “アレ”を露に用を出し始めた!!! コロシアム始まって以来の大痴態!!!》

何とリング上でバルトロメオは立ちション中。
観客からは「やめさせろ!!」や「何故誰も奴をブッ飛ばさねェ!!?」と非難の声が。

バルトロメオ「は~~~~♪ 快感だべ♡ これは…。」

生死を懸けた戦いの中で大観衆を前に立ちションをするバルトロメオ。
そんな彼に、ハックの魚人空手が迫る…!!

ハック「真面目に会に臨む者もいるのだ小僧…背後から狙うが、許せよ。」

バルトロメオ「え!?」

ハック「“四千枚瓦”…!!」

立ちションするバルトロメオの背後から大技を構える魚人ハック。
心なしか顔が本気で怒っている気がするが、それは十中八九、立ちションの件だろう…。

バルトロメオ「おい…!! 待て!! こんな無防備な男を…。」

痴態を晒すバルトロメオを庇う者など誰もいない。
観客は勿論、選手観覧席で見ている者達すらハックを応援するが……ムラマサだけは違った。

ルフィ「あ、アイツやられそうだな!!」

ムラマサ「……世間に広まる既存の常識(・・・・・)は必ずしも正しいとは限らない。」

ルフィ「え?」

ハック「“正拳”!!!」


ボキィ!!!


バルトロメオ「なんて♪」

この時、その場面を目の当たりにした者達は皆、自分の目を疑った…!!
四千枚瓦正拳を繰り出したハックの腕はバルトロメオに届く前に激しい骨の折れる音と共に血を吹き出し、ハックは状態を理解する以前に激痛で舞台に倒れ、悶え苦しんだのだ!!

ギャッツ《何をした!!? 倒れたのはハック!!! 何をしたんだ!!!?》

有り得ない現象を目の当たりにし、全ての観客が非難を忘れ、絶句した。

-------------------------------------------------------------------------------

一方、皆と逸れてしまった錦えもんはドンキホーテファミリーの刺客達に囲まれていた。

錦えもん「何奴でござるっ、おぬしら!! 拙者は単なる通りすがりのジジイにござる!!」

「ウソをつけ…!! その帽子“チョンマゲ”だろう!!! お前は“侍”…“狐火の錦えもん”に間違いあるまい!! 貴様の姿はパンクハザードの映像にて確認されていた… ならばここへ戻ってくるのが当然だろう? 大人しくしろ…目当ての“カン十郎”の命が惜しけりゃなァ!!!」

錦えもん「!?」

「捕えろォ!!」

『ウオォォォォ!!!』

錦えもんに襲い掛かるファミリーの刺客達。
さすがに錦えもんも戦闘になると察し、刀の柄を握る。
その時だった。


バキバキィ!


ドガッ!


「うぇぐっ!!?」

錦えもん「ぬっ!?」

錦えもんの前に、ピンクのコートを羽織りトンファーを握った女性が現れ、大男を殴り倒した。

「な、何者だてめェ!?」

?「あなた達に言う義理は無いわ。」

「ちっ、構わねェ!! やっちまえ!!」

突然の乱入者に困惑しつつも、始末しようと襲い掛かる刺客達。
それを見た女性は、トンファーに覇気を纏わせ武装硬化させる。

?「ハァッ!」

それから先は、女性の一方的な蹂躙だった。
殴り飛ばし蹴り飛ばし、覇気を纏ったトンファーの威力と彼女自身の高い身体能力に翻弄され、次々に刺客が倒れてゆく。

錦えもん「……何という…強き女子…。」

自らを囲っていた刺客達は20名近くいたが、彼女が戦って数十秒でたった1人を残して壊滅状態になっており、その女性とは思えぬ強さに驚きを隠せない錦えもん。
一方、女性はトンファーに付着した血を振って落とし、最後の1人に詰め寄る。

?「あなた、工場の在り処知ってる? 地下までは分かってるの。 知ってたら教えて頂戴。」

「し、知るかよんなモン…!!! そ、それよりも…て、てめェ…こんなことしてタダで済むと思うなよ……おお、俺達のバックにいるのが誰だか分かってんのか!!? 王下七武海が1人、ドンキホーテ・ドフラミンゴ様だぞ!!!?」

?「なら、“百獣海賊団双将軍”の私のバックに誰と誰がいると思う?」

その言葉を聞いた刺客は、一瞬で顔面蒼白になった。
彼女のバックにいる怪物級の大海賊2名が、瞬時に浮かび上がったからだ。
1人は、「この世における最強生物」と称され畏怖される海の皇帝。もう1人は、覇気の達人であり数多の豪傑達と剣一本で渡り合った世界最高峰の剣豪。
そう…四皇“百獣のカイドウ”と“剣帝”ライコウである。

「ま、まさか……お前は“橙色御前”コアラ…!!」

コアラ「そう♪ やっと気付いたのね、変装してなかったのに。」

「な、何でお前らがここに…。」

恐怖で震えあがる刺客。
百獣海賊団は、元四皇にして海賊王(ロジャー)の宿敵だった大海賊“白ひげ”の死後、現在の海賊界において「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)に最も近い海賊団」とされている。
その強大な力は想像を絶し、万が一にも怒らせた場合は彼らの追及の前に破滅は免れないのだ。

コアラ「…どうやら本当に知らないのね。」

コアラはそう呟くと、錦えもんの方へ向いて笑顔で挨拶する。」

コアラ「初めまして錦えもんさん、百獣海賊団双将軍のコアラです! ライコウさんの命で助太刀に来ました!」

錦えもん「おォ…お主、ライコウ殿の…!」

2人がそんなやり取りをする中、刺客は2人にバレないよう電伝虫に手を伸ばした。

「(早くドフラミンゴ様に伝えなければ!!!)」


ゴッ!!


「ガッ…!?」

コアラがすかさず投げたトンファーが後頭部に直撃。
報告しようとした刺客は気絶し、倒れた。

コアラ「錦えもんさん、私は今“黒足”を捜索しています。 カン十郎さんの救出も同時並行しますので、ご協力よろしいですか?」

錦えもん「…あい、分かった!! よろしく頼む!!」

コアラ、錦えもんと合流。 

 

第120話:“キング・パンチ”

リング上で起きた理解不能な現象で腕を負傷し、起き上がれないハック。
バルトロメオは非情にも連打の蹴りを入れ、痛めつける。

ギャッツ《魚人空手師範“百段ハック”敗れたァ~~~~!!!! 応援してたのにあのニワトリ野郎ォ!!!》
      
「ギャッツさん…実況は公平に!!」

ギャッツ《勝者は未だ予測不能!!! Bブロック、残り24人!!!》

バルトロメオ「ボチボチ決着か…!!」

べラミー「生意気そうなのがいるな…。」

ダガマ「ガマハハハ…もはや皆手負い!! …頃合いだ! おい、ブルーギリー!!!!」

今まで主君・エリザベローⅡ世の守備に徹していたダガマが本格的な攻めの指示を出そうとする。
その間にも足長族のブルーギリーは、次々とその超人的脚で選手達を蹴り倒し、コロシアムの参加者を剣一本で次々に倒す謎の剣闘士・リッキーもブルーギリーの超人的脚技には勝てず、地に伏した。

リッキー「……この歓声が憎い…!!! ドフラミンゴ!!! お前が憎い…!!!」

リッキーは消え去りそうな声で呟く。
その声は誰にも届かないだろうが…ムラマサは微かに耳にした。

ムラマサ「(あなたはやはり…。)」

その時だった。

ブルーギリー「ヒャオ!!!!」


ドガガガガガガガァン!!!!


ダガマ「チョエァ~~~~!!!!」


ズババババン…!!


あらかた主な敵を倒したと確信したダガマとブルーギリーは、今度は協定を結んだ選手達への攻撃を始める。
そう、ダガマとブルーギリーはこれを狙っていたのだ。

ダガマ「ご苦労だったな…お人好しの犬共!! 報酬なら後でくれてやる!!」

ブルーギリー「俺は“犬狩り”を仰せつかってるんで…!!」

謀ったダガマに怒る選手達。
そんな選手達などお構いなしに2人は次々に倒していく。

ダガマ「(そして 私に背を向けた貴様も終わりだ…!!! ブルーギリー!!!!)」

協定の選手達を片付けているブルーギリーにダザマは背後から剣を突き立てる。
ダガマはやはりブルーギリーも始末しようと目論んでいたようだ。しかし……。


バキィ!!


ダガマ「ぐわァっ!!?」

ギャッツ《軍師ダガマもここで脱落~~~!!!》

ブルーギリー「お前みてェなキナ臭ェ男! 最初(ハナ)から信じる奴の気が知れねェ!!!」

ダガマが裏切ることを予測していたのか、ブルーギリーはダガマが剣を突き出す前に首元に強烈なキックを当て、場外に飛ばした。
ブルーギリーがダガマを倒したことで観客席からは黄色い歓声が上がる一方で、順調に勝ち星を上げていたベラミーがバルトロメオの前に屈していた。

ギャッツ《何と!! 我らがベラミーが虫の息~~~!!! その相手は…またアイツだーーーーっ!!!》

べラミー「コイツ…!! 一体何の能力者だ…!!!」

バルトロメオ「ヘハハハ…!!」

その光景を目にしていた選手観覧席のルフィは、べラミーを心配する。

ルフィ「べラミーの奴、大丈夫かな……何したんだトサカの奴…!?」

※トサカの奴=バルトロメオです。

ムラマサ「彼は“バリバリの実”のバリア人間……非常に高い防御力を持つバリアを展開できるのです。 自分側からの攻撃をも防いでしまう上に1度に展開できるバリアは一つまでですが、海楼石と並ぶかそれ以上の強度による防御力は圧倒的。 並大抵の覇気使い・能力者では敵いませんね。」

ルフィ「………………おい、ベラミー!!! 頑張れー!!!!」

ベラミーがバトルロメオに痛めつけられている頃、ダガマを片付けたブルーギリーは無防備になったエリザベローⅡ世に的を絞り、攻撃体制に入っていた。
ブルーギリーは「剥き出しのキング程頼りねェモノはねェ」と嘲笑うが、エリザベローは「“剥き出しの刃”程、危険なモノはない」と笑みを深めて構えた。
その時、不気味な地鳴りが起き、コロシアムが震え始めた。

「逃げろーーーー!!!」

「巻き込まれるぞーーーー!!!」

身の危険を察した観客は、一斉に非難する。

エリザベローⅡ世「キ~~~~ング!!!」

ブルーギリー達はパンチを打たせまいと、一斉に襲い掛かるが…もう手遅れだった。

エリザベローⅡ世「パァ~~~~~……ンチィィッ!!!!」


ボン!!


『!!!』


ドゴォォォォン!!!


伝家の宝刀(キング・パンチ)が炸裂。
ただのパンチとは思えない衝撃波が放たれ、スタジアムの地面は抉れ、戦士達は一人残らず吹き飛び、会場が閃光に包まれる。
煙が晴れると、そこにはエリザベローが残っており優勝候補は尽く脱落していた。

ルフィ「……スゲェ強いパンチだったなァ…。」

ムラマサ「これが“キング・パンチ”ですか……これぐらいの威力なら、直撃さえすれば他の四皇は(・・・・・)タダでは済みませんね。」

Bブロック138人のバトルロイヤルの勝者は、プロデンス王国からやってきたエリザベローⅡ世……ではなかった。

バルトロメオ「ヘハハハハハ…!! “バ~~~~~リア”ッ!! 指を結べば人はバリアを張れる!! ガキでも知ってる常識だべ?」

何と、バルトロメオがバリアを張ってリングに残っていた。
正面の客席が吹き飛ばなかったのはバルトロメオがバリアを張ったからであり、それを知ったエリザベローⅡ世は呆然と立ち尽くすしかなかった。

バルトロメオ「“バリアクラッシュ”!!!」


ガン!!!


バルトロメオは展開したバリアをそのまま飛ばしてエリザベローⅡ世に叩き付けた。
まさにクリーンヒット…“戦う王”エリザベローⅡ世は戦闘不能に陥った。

ギャッツ《く~~~~っ…!! Bブロック勝者は…畜生っ!!! 海賊“人食いのバルトロメオ”~~~!!!!》

バルトロメオ「ヘハハハハハ!! てめェら全員地獄へ堕ちろォ~~~~~!!!!」

最悪の選手が勝者と化し、歓声はブーイングの嵐。
しかし結果が結果なのだから、仕方ない。

ルフィ「……………!! …あの変なの勝っちゃった…!!」

















-同時刻-

コロシアム内にある観客席への通路にて、フランキーはサボから百獣海賊団のドレスローザにおける作戦内容の一部を聞いていた。

サボ「……という訳で、俺がルフィとバトンタッチする手筈になってる。」

フランキー「成る程…しかしたまげた、お前もルフィの兄貴とはな…!! てっきり“火拳のエース”だけかと思ってたが……兄貴が“四皇の幹部”と“七武海”か、ルフィはとんでもねェ人脈を持ってるんだな。」

サボは「自慢の義弟(おとうと)だ♪」と照れながら言う。

サボ「ところでコラソンさんは? 一緒だったんだろ?」

フランキー「ライコウの元へ向かってるらしいぞ……ところで兵隊、お前も工場の崩壊を企んでんのか?」

兵隊「いかにも…!! 仲間と共に着々と準備を進めている…!! しかし驚いた! まさか四皇がドフラミンゴを討伐しようとしてたとは…!!」

兵隊も何らかの作戦の準備をしてたらしいが、よもや目的が麦わら・百獣海賊同盟と同じとは夢にも思わなかったようだ。

兵隊「我々はその工場で働く者達を救いたい。 我らの作戦はこの国の崩壊へもつながる一大事業!!! 君達がドフラミンゴに立ち向かうのなら心強い!! 君達にこの悲劇の国・ドレスローザの………“全て”を教えてやる!!!!」 
 

 
後書き
この作品でコラボしてほしい作品があったらメッセージまたは感想の方へお書きしてください。
リボーンとか銀魂(宇宙海賊春雨)とかはイケるかも。 

 

第121話:グリーンビット

-シーザー引き渡し時刻、45分前-

グリーンビットへ向かうために鉄橋を走って渡るロー・ウソップ・ロビン・シーザーの4人は、巨人族程の大きさを有する闘魚に襲われていた。

ウソップ「ああ~~!! 来たァーー!! 鉄の橋の癖に頼りねェ~~!!」

シーザー「死ぬ~~っ!!」

焦りまくるウソップとシーザー。
ウソップはローに「四皇の幹部なんだから戦えよ!!」と声を荒げて言うが、「俺は戦わねェ」とキッパリ断られる。
その間にも、1匹の闘魚がロー達の元へ迫り、ウソップが応戦するが更にもう1匹来る
が、それはロビンが相手をし何とか2匹同時に倒す事に成功する。

ロー「上出来じゃねェか。」

ウソップ「バカ言え、どんだけいると思ってんだ!!!! 群れだぞ、群・れ!!!! とっとと走り抜けようぜ!! 戦いってもキリがねェ!!!!」

ロー「“鼻屋”!!! シーザーの海楼石の錠を解け!! コイツにも戦わせる!!」

シーザー「何ィ!!?」

ローはシーザーを解放し戦わせようとする。
因みに“鼻屋”とは、察しているだろうがウソップのことである。

ウソップ「そしたらコイツ! 空飛んで逃げるぞ!!!」

ロー「下手なマネはできねェさ…逃げるなんてマネをしたら…“心臓(コレ)”を握り潰す…!!」

ローは懐から心臓を取り出し、力を入れて握り潰そうとする。

シーザー「ギャアア!!! 俺の心臓!! てめェろくな死に方しねェぞ!! この天才科学者をコキ使うとは…!!」

シーザーはぐちぐち言いながらも、口から“ガスティーユ”を放って闘魚を1匹倒す。
ウソップは「さすが3億の犯罪者」と感心する。

ロー「今だ、駆け抜けろ!!!」

ウソップ「だからお前は何で戦わねェんだ!!!!」

ロー「俺の能力は使う程に体力を消耗する…!! “帰り道”こそ本領を出さなきゃならねェ…分かるか!? 少しでも力を温存しておくんだ!!! 相手はドフラミンゴだぞ…!!」

シーザー「(ローの奴、本気でジョーカーと戦う覚悟か!?)」

するとここで緊急事態が発生。
何と橋が壊れており、霧で向こう側が見えない上に正面から闘魚が襲ってきたのだ。これ以上橋を壊されてはたまったものではないので、再び戦闘態勢に入る。
次の瞬間!!


ビィイン!!


ドドドッ!!


「「「「!!?」」」」

突如、鉄橋で暴れていた闘魚の1匹に極太の銛が撃ち込まれ、網をかけられ捕らえられた。

「よーし引け~~~!!」

「とれたとれた! 今日は“決戦”!! 闘魚シチューで力をつけるぞーーーー!!」

「おー!! 引け~~~!!」

そんな謎の声と共に向こうの鉄橋に引き上げられていった…。

ロビン「誰の声…?」

ロー「“小人族”だな…。」

ウソップ「!? トラ男、知ってんのか!?」

ロー「グリーンビットの地下に小人族“トンタッタ族”の国・トンタッタ王国があるという話を耳にしたことがある。 それが事実なら、声の主はトンタッタの者だ。」

無人島であったグリーンビットに小人の国があることを知り、驚く3人。

ロー「それよりも早く対岸に行く必要がある…言った通り俺は能力を使う訳にはいかねェ。 代案はあるか?」

ロビン「それなら…。」

ロビンはチラリとシーザーに目を向けた。
その意味を知ったローは、悪人面な笑みを浮かべシーザーに詰め寄った。

ロー「やらねェなら……どうなるか分かるよな?」

シーザー「(ヒ…ヒィィィィィィィィィィ!!!!)」














-グリーンビット-

シーザー「ハァ、ハァ……ロー…!!! てめェ本当に後で覚えてろ…!!! 人を3人浮かすのに…ハァ…どれほどのガスエネルギーを要すると…思ってやがる…!!? ゲホッ、ゲホッ…つーか俺は大切な人質だろ!!?」

闘魚との戦いで鉄橋ド真ん中に取り残されてしまったシーザー引き渡しチームは、人質のシーザーのガスガスの実の能力を使い、気球代わりにして飛んでグリーンビットへ到着。
バテバテになったシーザーは、ウソップによって再び海楼石の枷を嵌められる。

ロー「あそこが約束の“南東のビーチ”……15時にお前を放り出す。」

ウソップ「あ……!! 逆の海岸見てみろ!! あれ海軍の軍艦だろ!!?」

ウソップは森に突っ込んだ状態の海軍の軍艦を指差す。
岸に乗り上げたってレベルではなく、文字通り森に突き刺さっている軍艦に動揺するウソップ。
しかも植物の傷がまた新しく、船体も目立った損傷が無いので、海軍はつい先程到着したばかりだということが容易に分かる。

ウソップ「あの闘魚の群れの中を進んで…!?」

ロビン「海兵達がここへ辿り着くのも時間の問題ね…。」

シーザー「え~~~~!!? まさか取り引きがバレてるのか!? それは聞いてねェぞ!!!!」

ウソップ「バカ、お前声でけェよ!!!」

シーザー「おい、俺は賞金首だ!! ボスであるジョーカーが“七武海”をやめた今、俺を守る法律は何もない!! 海兵のいる島に海楼石の錠つきで放り出されたら俺は……いや待て、ジョーカーだって今や“ただの海賊”じゃねェか!!!」

シーザーは「グリーンビットでの取り引きは不当だから中止するべき」と唱えるが、ローは「海軍が敵なのはこっちも同じだ」と言い却下する。

ロー「あと15分…お前らは“狙撃”と“諜報”で俺の援護を頼む…!! 誰が潜んでいるか分からねェ、海軍大将も来てる可能性すら有り得る。 森に異常があったらすぐに連絡をしろ!!」

ロビン「えェ、分かったわ。」

ウソップ「海軍も来てんのかよ…。」

シーザー「てめェ!! まさかハメやがったんじゃねェだろうなァ!!!」

ロー「作戦当初はパンクハザードで始末する予定だったんだぞシーザー。 命ある分ありがたく思え、ぐちぐち文句言うんじゃねェ。」

こうしてシーザーとローが島の手前に残り、ロビンとウソップは島の森を調査する事となった。

-------------------------------------------------------------------------------

ロー「そろそろだな…。」

シーザー「……!」

時間を確認するローと、緊張するシーザー。
引き渡し時刻2分前にローが持つ子電伝虫が鳴った。


プルルルル…ガチャ!!


コラソン《おい!! ロー!! こちらコラソン!!》

ロー「コラさんか…“工場”は見つかったか?」

コラソン《それ所じゃねェ!! よく聞け!! すぐにそこを離れるんだ…!!!!》

ロー「……………? 何を言ってやがる…これからシーザー引き渡しだぞ。」

コラソン《ドフィは“七武海”をやめてなんかいねェっ!!! シーザーを返しても何の取引もしねェ!! 俺達ァ完全にハメられた!!! ドフィはシーザーを連れてこさせるために“七武海をやめた”と言ったんだ…!! 早くその島から早く逃げろ!!!》

ロー「バカ…手遅れだよ…!!」

コラソンが電伝虫で真相を伝え、ローに逃げるよう伝えるが、時すでに遅し。
海岸にはドフラミンゴと海軍大将(ふじトラ)率いる海軍の一団が迫っていた。















-一方、ライコウ達は-

ライコウ「ハァ!? ムラマサ来てんのか!!?」

カイドウ《こっちにゃいねェのは事実だ。》

ライコウ「(あっちゃ~~……こればっかは想定外だわ…。)」

頭を抱えるライコウ。
ムラマサは百獣海賊団三妖星の一角にして三妖星最強の男。カイドウとライコウに次ぐ実力者であり、戦闘力も規格外の大海賊である。

ライコウ「(アイツああ見えて自由人だからな……ある意味何しでかすか分からんな…。)」

ムラマサは単独で行動することが多い。それは“ぼっち”という訳ではないのだが…そういう生活(・・・・・・)が長かったからである。
元々ムラマサは「殺し屋」であり、海賊から政府要人まで多くの人間を斬殺してきた。今は三妖星として百獣海賊団に属しているが、今もライコウから殺し屋としての(・・・・・・・)命を受けていることが多い。
だが海賊生活をし始めたせいで自由人化が急激に進み、今では幹部会以外の時は大抵ぶらり旅している始末…彼の尻拭いをハゴロモがやっている羽目になっているのだ。

ライコウ「(……だが戦力としては申し分ない。 藤虎と紅傘に加え、バージェスとかとの戦闘もあるかもしれん、連絡がつき次第そいつらと戦ってもらうか。)」

カイドウ《おい、どうした?》

ライコウ「いや、考え事だ。 分かった、アイツの件は俺に一任させてくれ、上手く話しておく。 ところで、イカズチ達の方は? もう出発してるだろ?」

カイドウ《ウオロロロロ…!! あァ、あのガキ共は終わった…今頃血祭りにあげられてるだろうよ…!!》

笑い上戸のカイドウに、ライコウは「後悔先に立たずだな」と呟く。

ライコウ「まァ、こっちの一件が終わったら大分楽になるからな。 俺に任せろ。」

カイドウ《くたばるんじゃねェぞ。》

ライコウ「俺を誰だと思ってる?」

そう軽口をたたき合いながら、カイドウとの通話を終えるライコウ。
その時だった。

モネ「あなた…大変よ…!」

ライコウ「どうした?」

モネ「さっき号外が配られたの……ドフラミンゴの七武海脱退は、誤報だと…!!」

ライコウ「……!!(やっぱりか…原作通りの展開だな…。)」

突然のニュースは、世界を震撼させた。 
 

 
後書き
【ムラマサ】
身長:345cm
年齢:41歳
懸賞金:10億8000万ベリー
誕生日:6月4日
容姿:赤い瞳と長い茶髪、顔の刀傷が特徴。
武器:黒刀“月読”(最上大業物)
服装:和装の上に羽毛の付いた黒マントを羽織っており、草履を愛用。
好きなもの:戦闘、酒
嫌いなもの:特になし
所属:百獣海賊団/三妖星
異名:“死の彗星”
イメージCV:緑川光
性格:物静かで丁寧な紳士のような口調だが、敵に対しては基本的には子供以外は無慈悲。頭の回転も早く、一味屈指の切れ者でもある。意外と自由人だったりする。
戦闘力:カイドウとライコウに次ぐ実力者で、三妖星最強の男。ヒトヒトの実・モデルぬらりひょんの能力者であり、相手の認識をずらしたり残像で敵を翻弄する能力を使うことが出来る。また、覇王色の覇気も有し剣の腕も達人級など基礎戦闘能力も極めて高い。
モデル:虚(銀魂)、死神(暗殺教室)



因みに小ネタですが、三妖星の妖は「妖怪」の妖です。
日本妖怪の超有名妖怪をモデルとしており、能力は他のマンガ・アニメのを参考にしてます。 

 

第122話:隕石

コラソンが口にした衝撃の情報。
何とドフラミンゴの国王辞退及び七武海脱退は虚偽の報道だったのだ。

コラソン《黒足と合流して“ある女性”から知ったんだ…!! “七武海”が振り回せる権威の域を越えてるんだよ!!》

ロー「…。」

コラソン《それより…お前手遅れってどういう意味だ!!? まさかドフィを相手取る気か!!?》

ロー「……まァな、ぶっちゃけライコウさんからそう言われてるしな。」

コラソン《は!!?》

ロー「今は2人(・・)に集中してェ、切るぞ。」


ガチャッ!


ロー「(こっからが正念場だな…。)」

すると、ここで地面からロビンの上半身が出現。
シーザーは「女が半分出て来た!!!」と混乱するが、ローは至って冷静に接する。

ロビン「今の連絡聞いたわ! サンジからね!?」

ロー「あァ…おいニコ屋、お前の本体と鼻屋はどこにいる? 今のが事実なら交渉は不成立!! ドフラミンゴは無理矢理にでもシーザーを奪いにくる…!!」

シーザー「不成立とはどういう事だ!! じゃあ俺の引き渡しはどうなる!!?」

1人逆上するシーザーをよそにハナハナの実の能力で出来たロビンとローの会話は進んでいく。

ロー「ニコ屋、お前は鼻屋と共にこの島から直ぐに脱出しろ!! 相手は海軍大将と七武海、お前らじゃあ命の保障は無ェぞ!!」

ロビン「それが………私達は今、地下にいるの!!」

ロー「地下!? ……ってことは、小人族か!?」

ロビン「えェ…でも無事よ!」

ロー「分かった、じゃあお前らは地下で待機出来てんだな? これから戦闘になる…収まるまで外に出るな!」

ロビンが「武運を!」と言い、グリーンビットから姿を消すと同時に失墜した国王と新たな海軍大将・藤虎率いる海軍部隊がグリーンビットに現れる。

シーザー「ジョ~~カァ~~~!! と…か、海軍!!? …いや…いいのか!?」

ドフラミンゴ「フフフフフフ!!! お前にしちゃあ上出来じゃねェか!! まさか海軍大将がお出ましとはなァ………!! おい、ロー!! “七武海”をやめた俺は恐くて仕方ねェよ!!」

ローは舌打ちしながら問い詰めるが、ドフラミンゴは「大きなマジックショー程、意外に簡単な所にタネがある」と嘲笑う。

ロー「たとえ“七武海”であろうと…“元天竜人”であろうと!! こんなふざけた暴挙(マネ)は出来っこねェだろ!!! アンタって奴は本当に厄介だよ…!!」

この時、ローは昨日のある会話を思い出していた。











ライコウ〈いいか? お前にはとても大きな役をやってもらう。〉

ロー〈役?〉

ライコウ〈正直に言おう。 ドフラミンゴは七武海をやめない。〉

ロー〈!!?〉

ライコウ〈アイツの過去が過去だからな…政府にとってバレちゃマズイことも知ってんのさ。 CP-0はそれで動かせたんだろう……そこでお前には“ハメられた振り”をしてもらう。 天夜叉(アイツ)を本気で欺きてェなら命懸けは必須。 お前には藤虎とドフラミンゴを相手取らせてもらう。 この件は明日の3時までコラソンにも言うなよ。〉

ロー〈要は明日の3時までアンタ以外の奴を全員騙して死にかけてこいと?〉

ライコウ〈勘がいいな、その通りだ。 それぐらいやらんと作戦の完遂は至難の業…ドフラミンゴの3歩先を行くんだ。 責任は全部俺が取る、アイツの足元掬うぞ!〉










ロー「(藤虎とドフラミンゴ…勝率は無いも同然だが、これがライコウさんの思惑なら仕方ねェ…死なねェように踊るしかねェな…!)」

シーザー「ジョーカー!! さっさとこんな奴たたん…ウゲッ!!!」

シーザーは助かりたい一心でドフラミンゴにローをやっつける様促すが、その最中にローに首に巻いているマフラーを引っ張られ、喉が締まる。

ロー「コイツを返すわけにはいかねェ…何も約束は守られてねェんだからな!!!」

シーザー「ギャー!! 何言ってんだてめェ!!」

ドフラミンゴ「フッフッフッフ!!! それは受け入れねェ願いだなァ……置いてけ、ロー!!! シーザーは俺のかわいい部下だ!!」

シーザー「ジョ…ジョーカー~~~~♡♡」

ローは「取引は白紙だ」とドフラミンゴに言うが、ドフラミンゴは「シーザーはかわいい部下だから置いてけ」と言う。
そんな中、ドフラミンゴは藤虎に目を向ける。

ドフラミンゴ「フッフッフ!! お前か…世界徴兵で海軍大将に特任された“藤虎”。 噂はよく聞いてる…“緑牛”と共に実力は折り紙付きの化け物だとな!」

イッショウ「こらどうも、恐れ入りやす…。」

ドフラミンゴ「フン!! とぼけた野郎だぜ…!!」

すると今度は、藤虎がドフラミンゴに問い始めた。

イッショウ「まだ軍の新参者のあたくしにはしかし…アンタの行動は理解しかねますね。 はっきりと裏は取れちゃいねェが、“七武海”としてちょいとルール違反をなさってるって情報も入ってやす…シーザー(そちらさん)がおっしゃる“ジョーカー”って名は…あだ名か何かで?」

ドフラミンゴ「フッフッフ…!! 俺を調べたきゃあ、それなりの覚悟で周到に裏を取って物を言うんだな!!」

ドフラミンゴは不敵な笑みを浮かべる。

ドフラミンゴ「それで? 海軍は今回の一件をどう決めた?」

イッショウ「七武海だったのならまだしも、記事通り同盟でござんすので“黒”!! …と言いてェが…ローさん、この件はアンタ次第だ。」

藤虎の言い分は、要するに「四皇との戦闘は出来る限り避けたい」と言っているようなモノ。
相手は四皇、それも地上最強の生物が率いる海賊団…海軍が下手に相手取れば2年前のマリンフォードの二の舞を演じかねない。それにカイドウは話し合いの通じるような雰囲気はなく、とても凶暴なイメージがある。それは海軍内でも同様なのだ。
シーザーも「そりゃあローの言い訳次第じゃ俺もヤベェじゃねェか!!」と動揺し叫ぶ。

ロー「(これで俺が標的だな…ライコウさんと本気でやり合うのだけは避けてェって魂胆……なら俺が今やれることは、時間稼ぎだ!)“麦わらの一味”と百獣海賊団(おれたち)に上下関係はない!!!! 記事通り“同盟”だ!!!」

ローの言葉に、海兵達は動揺を隠せない。
それもそうだろう…最悪の世代の1人が、四皇と手を組んでるのだから。

ドフラミンゴ「フッフッフッ!!! 不器用な男だ、お前は…!!」

イッショウ「なら、逮捕させていただきやすよ…!」

藤虎がそう言い、仕込み杖を抜くと紫色の光線のようなモノを天へ向かって放つ。
すると、轟音と共に空から炎に包まれた隕石がグリーンビット目掛けて落下してきた!!

ロー「……ウソだろ…!」

ドフラミンゴ「隕石!? 冗談じゃねェぞ、オイ!!!」

突然の隕石襲来に、シーザーと海兵達は一斉に避難する。
ローは鬼哭を抜いて真っ二つに両断し、ドフラミンゴはイトイトの能力でバラバラにし、藤虎は重力のバリアで弾く。
その直後、強烈な大爆発が起こり、煙が晴れると巨大なクレーターが姿を現す。そしてその中に、まるで細い柱が立つようにして、藤虎・ロー・ドフラミンゴの足場だけが無傷で残っていた。

ドフラミンゴ「元帥の教育はどうなってんだ!! 野良犬がァ!!」

ロー「……目が見えるかどうかの次元じゃねェな……。」

イッショウ「へェ、どうも…ほんの……腕試しで……。」

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-一方-

コラソン「ロー……。」

サンジ「クソ、まんまとハメられたな……世界中を欺くなんてアリかよ…!!」

ローを心配するコラソンと、頭を抱えるサンジ。
ドフラミンゴの予想だにしない対応に動揺を隠せないのだ。

コラソン「(だがさっきの会話…気掛かりだ…まるでこうなることを知ってたかのような感じがしたぞ…。)」

コラソンの脳裏に浮かぶ、ローの言葉。
「手遅れ」と「ライコウ」……この2つの言葉が引っ掛かるのだ。

コラソン「(まさか…ライコウさんはローも囮に!?)」

コラソンはライコウの思惑を察した。
ライコウは、確かにルフィを囮にするとは言ったが「ルフィだけが囮だ」とは一言も言っていない。つまり、ルフィとローの2人を囮にすることでドフラミンゴの行動を制限しようというのだ。
ルフィがコロシアムにいる事で、ドフラミンゴは途中ですり替わることを知らずに高笑いし、さらにローと戦わせることで作戦完遂のための時間稼ぎをする。
計画性が高いなんてレベルではない。

コラソン「我ながら、とんでもねェ人の部下になったな……。」

思わず冷や汗を流すコラソン。
すると、ドンキホーテファミリーの殺し屋だった筈の踊り子・ヴァイオレットがサンジに詰め寄った。

ヴァイオレット「“黒足”!! 私はここで…部下達がこっちに来る! …あなた達、秘密の工場へ行きたいのよね…?」

ヴァイオレットはサンジに地図を手渡した。

ヴァイオレット「これが地図!! 表向きは“オモチャの家”という所! それが工場よ!」

サンジ「おい! ダメだ!! これ以上俺に協力したら…。」

ヴァイオレット「変な人ね…同じよ…裏切りはおそらくもう幹部達にバレてるわ…。」

サンジ「ヴァイオレットちゃんっ……!!」

するとサンは、「“西の港”で落ち合おう」と提案し、ヴァイオレットを見捨てず一緒に逃げようと告げる。

ヴァイオレット「!………ホントにダメな男///// …フフッ…!」

サンジ「え…///////」

すると、そこへ錦えもんとコアラが駆けつけてきた。

錦えもん「おォ、サンジ殿! ご無事であったか!」

コアラ「コラさん、生きてたんですね!」

コラソン「ちょっと待て、今聞き捨てならない言葉聞いたぞ!! 生きてたって何!? 俺いつの間に死んだ扱いィッ!!?」

コアラの毒にツッコミを炸裂させるコラソン。

コアラ「あなたがヴィオラさん? 刺客は片づけておいたから、暫く一緒に行動しましょ! その方が安心ですよ。」

ヴァイオレット「!!? え…!!?」

ヴァイオレット、本名が発覚する。 

 

第123話:「ざます」

-ドレスローザ近海-

こちらでは、サニー号待機組がドンキーホーテファミリーの襲撃を受けていた。
主犯格は、触れるとアート化する煙を出す“アトアトの実”の能力者・ジョーラ。花柄の服に三角形の眼鏡をかけた大柄の中高年で、第117話にて突如現れた謎の声の主だ。

チョッパー「サニー号から離れろ!!」

ジョーラ「オッホッホッホッ、おだまるざます!!!! 誰が橙色御前ざます!!!」

「「言ってねェよ!!!!」」

ジョーラ「とにかく!! さっさと“モモの助”をよこすのざます!! さっきはウナギしか居なかったのに何故そこに居るのざます!! 若様の命令は“モモの助の誘拐”、そして“船の奪取”!!!」

ジョーラはサニー号の甲板からウェイバー等に乗り、海へ脱出したサニー号待機組に叫ぶ。

ナミ「参ったわね…!! あの能力で暴れられたら…!!」

チョッパー「サニー号が船として機能しなくなっちゃうぞ!!!?」

ナミ「何とか攻撃をこっちに向いてくれればいいんだけど…船の外へ!!」

ジョーラ「お前達!!さっさとあいつらから“モモの助”を奪っておいで!! 全くやだよやだよ~~~。」

「あ…ヘイ!! ジョーラ様っ!!」

ジョーラ「やだよ~~…あ~~~魂が揺れてるざます!! オホホホホ~~~!! 込み上げるイメージ!! 吹き出すあたくしの心!!」

チョッパー「マズイぞ!! またアレ(・・)をやる気だ!!!」

ブルック「あの人が潜り込んだ“男部屋”はすでにロッカーもベッドもヒドイ状態に!! フランキーさんが怒る事はさて置き、元に戻せるんでしょうか!!!?」

ジョーラ「ああ!! 爆発する“解放”と“美”のイメージ!!!!」

チョッパー「おい! やめろ!!! 船上でそれをやるな!!! 俺達はこっちだ!! 狙うならこっちへ~~~!!!」

ジョーラ「世界は自由でなきゃざますっ!! んざましょーーーーっ!!!」


ボッカァ~~~ン!!


モモの助「うわぁ~~~!!!」

ナミ「きゃあ!!」

ブルック「やりやがってくれましたよ!!大変な事に!!!」

チョッパー「くっそ~~~!!!!」

ジョーラが歌いながら雲の様な物体をサニー号内でまき散らすと、サニー号のデザインはまるで某ゲル〇カ作者の様なデザインに変わってしまった…!!
実はサニー号待機組もジョーラのこの技を受け、実体の面影がまるで某ゲル〇カ作者のオブジェ状態なのだ。
さすがのブルック・チョッパー・ナミの3人もあのジョーラの厄介な技に手も足も出せずにいる。

ジョーラ「ん~~~これこそが“美”!!!! そう! これで“麦わらの一味”はドレスローザから脱出する術を失ったのざます!! オッホッホッホ!!! そんな誘導に乗るざます!!!」

ドレスローザ近海にジョーラの高笑いが響き渡る。
因みにジョーラの芸術のセンスについては、星の〇ービィのメインヒロインの名言から例えると「酷さも極めると芸術」である。

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一方、フランキーと兵隊はサンジから百獣海賊団のおかげで工場の位置がおおよそ判明したことを電伝虫越しで聞いていた。

フランキー「成る程、即破壊でトンズラって訳にゃあいかなそうだな…想像以上の大仕事になるな。」

サンジ《時間がねェんだ、ドフラミンゴが…!》

フランキー「あァ…号外は今読んだ! まんまやられた感じだな…シーザーを取られちゃウチの作戦は全部水の泡だ…こうなったら工場をブッ壊してドフラミンゴの鼻を明かしてやろう!! とにかくお前も“お花畑”へ来い!」

サンジ《何だそのメルヘンな目的地!? はっ…そういやナミさんに連絡が繋がんねェんだ!!》

フランキー「サニー号待機組か。ナミ(アイツ)がまだか弱いと思ってんのか!? あっちにはブルックもチョッパーも居るんだ! ……ん? ちょっと待て。」

通りの方から喧騒が聞こえ、フランキーが目を配ると、そこには白スーツの男に掴みかかる世界皇帝(エイセイ)の姿が。

エイセイ「どういうつもりだ、“CP-0”!!! ドフラミンゴの七武海脱退は誤報だと!!? 何故ドフラミンゴ如きに世界が振り回されなきゃいけねェんだ!!?」

「……落ち着かれよ、エイセイ殿。」

「我々はただ、任務を全うしたのみである。」

エイセイ「お前らが何故海賊に従う!!? 五老星や俺を軽視した行動は本来許されることじゃねェぞ!!!」

サンジ《おい、何か聞こえるんだが?》

フランキー「世界皇帝が白いスーツ組と揉めてやがる。 “CP”って単語が出たからにゃあ…どうやら世界皇帝すら知らされてなかったようだ。」

サンジ《おい待て、世界皇帝に会ったのか!!?》

フランキー「あァ…ルフィの正体を見破ったが見逃したばかりだ。」

すると、騒ぎを聞きつけてか黒スーツの集団が集ってきた。

「エイセイ様、ここにおられましたか!!」

「王宮へ行かないと、会談の準備が…!!」

エイセイ「それどころの問題か!? 国際問題だぞ、こんな越権行為は!! いくら“天竜人の傀儡”でも今回だけは我慢ならねェ!!」

“天竜人の傀儡”と罵倒しながら怒りを露にするエイセイ。
彼を宥める役人達の必死さが、目に見えるのは言うまでもない。

兵隊「エイセイ殿もドフラミンゴに不信感を抱いているようだ…。」

フランキー「だろうな…ともかく! サンジ、聞いてるよな? 俺達はお花畑で待ってる。 気を付けろよ。」

サンジ《……まァ、分かった。 善処する。》











-コリーダコロシアム-

ルフィが出場するCブロックは、クライマックスを迎えていた。
すでに脱落者が続出する中強豪達においても文字通り頭一つ飛び出た巨大な戦士が1人いる。
かの巨人国「エルバフ」出身の“海賊傭兵”ハイルディンである。巨人族特有の怪力で周囲の敵を蹴散らすその勇猛な姿に、観客は盛り上がる。

ハイルディン「ショクショクの実で…!! 俺がなるのさ!!! 俺が全巨人族の王になる!!!」

その一方で、数々の猛者達を恐れもせずに暴走する闘牛もいる。
コロシアムにて死刑囚の決闘ののち、21人を返り討ちにした殺人牛である。ドレスローザの人々はその「コロシアムの死神」とも言える牛を“非情なる牛(ブルータルブル)”と呼んでいるのだが…。

ギャッツ《そんな死神を乗りこなすのがこの男~~~っ!! 流星の如く現れ軽快な強さでまたたく間に人気者!! ルーシー~~~ィ!!!!》

ルフィ「うおお~~!!」

観客席からは歓喜の声が上がる。
何故ブルークルブルを乗りこなせてるのかは、無論「覇王色」で威圧して名付けたからである。
これに気付いた輩は、ムラマサ以外いないのは言うまでもない。

キャベンディッシュ「名を隠しても人気を取るか…“麦わら”…!!」

バルトロメオ「ヘハハハ…!!」

レベッカ「うふふ、面白い人…♪」

ムラマサ「(ご老体…いえ、副船長が認めし若き力・ルフィ君。 英雄ガープと革命家ドラゴンの血を引くだけはあるようですね。 三妖星最強の私が、君の素質を認めましょう。)」

コロシアムのリング上で警戒に敵を蹴散らすルフィを、そう評価するムラマサ。

ルフィ「なっはっは!! 行け~~~ウーシー!!!! 皆やっつけろー!! ししし!!」


ドスン!!


ルフィ「あり?」

これまで順調に対戦相手を蹴散らしていたブルータルブルのウーシーだが、その突進攻撃は巨人族のハイルディンには効かなかった。むしろ怒らせてしまった。

ハイルディン「俺に挑むか!!」

ルフィ「危ねェ!! 逃げろウーシー!!」

ほんの一瞬の出来事だった。
ウーシーは、ハイルディンの強烈なパンチを受けてしまい、乗っていたルフィと共にノックダウンした。
かに見えたが…。

ギャッツ《何とあっけない…力の差は歴然…!! エルバフのルーキーの前に……!!
“コロシアムの死神”と…“謎の剣闘士ルーシー”は力なく…ん!?」

しかし、ルフィは直ぐに起き上がり、力無く横たわるブルータルブルを一撫ですると、ハイルディンの顔の部分まで飛び上がり、強靭なパンチで巨人を闘技場に横たわらせた。
選手観覧席の者達も観客達も、口をポカンと開けて呆然とする。

ムラマサ「そうこなくては…。」

ギャッツ《巨人が、倒れたァ~~~~!!!?》

ルフィ、進撃開始。 
 

 
後書き
ハゴロモのイメージ図です。

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こういう彼女欲しいな……すいません、今の無しで。(笑) 

 

第124話:優勝候補達

ギャッツ《…ピ…ピクリとも動かないっ!!!! 紛れもない優勝候補・ハイルディンが、ここで敗退っ!!! まさかの大番狂わせ!!!! 底知れぬ期待とわくわくが止まらない~~~っ!!! Cブロックに突如降り立った台風の目・ルーシーがまたやったァ~~~~!!!! この男、まだまだ計り知れないっ!!》

一撃で巨人のハイルディンを倒したルフィに観客から歓喜の声が上がる。
その歓喜な声援を受けながら、ルフィは先程ハイルディンに殴られた“ウーシー”と自分で名付けたブルータルブルを安全なところまで運ぶ。
それと同時に別のCブロック選手・XXX《トリプルエックス》ボクサーの“破壊砲”イデオがピクリとも動かないハイルディンに近づく。

イデオ「オイオイ、巨人族…ここはリングだ…寝るなら場外に出ろ!!!!」

イデオがそう言ってハイルディンを殴ると、ハイルディンは爆発で観客席に吹っ飛んだ。
何十名かの観客はハイルディンの下敷きとなり、観客席は一時騒然となったが、それは直ぐにイデオの歓声へと変わった。

ギャッツ《ハイルディンを欠いてもなお猛者だらけのCブロック!!!! 異形な肩から繰り出されるのは爆発に似たパンチ!!! 巨人の巨体を吹き飛ばしたのは、新世界セントラル格闘会のV2覇者!!! “破壊砲”イデオ~~~!!!!》

イデオ「もっと強くなりてェ…“ショクショクの実”を食って、もっと力を!!!!」

イデオは先程同様ハイルディンを場外に飛ばした時の様に強烈な爆発音と共に選手達を次々と倒していく。

ギャッツ《さらに、かの“世界皇帝”エイセイ氏の祖国である花ノ国よりやってきた3人のギャング達は、これまた一味違う!!! あの名高い拳法使い達をよもやこのコロシアムで観られる日が来ようとは!!!》


バキャアッ!!


「ぐわァッ!!」

サイ「無駄やい!」

ギャッツの視線の先には、薙刀を携えて敵の防具を蹴り技で砕く八宝水軍第13代棟梁・サイの姿が。

ギャッツ《出たァ!!! 防御不能!! 衝撃を操る“八衝拳(はっしょうけん)”!!! 彼らには盾も鎧も通じないっ!!! これが数百年の歴史を誇る八宝水軍の実力!! まさに無敵!!!》

その一方で、多くの選手達が先代棟梁(チンジャオ)に立ち向かう。

「お前の首とりゃあ大会優勝に匹敵する価値があるぜ!! チンジャオ!!」

「ねじ伏せろーー!!」

『ウオオオオオオオ!!!!』

一斉にチンジャオに襲い掛かる選手達だが…。

チンジャオ「ひやはや…出直して来い、未熟者共っ!!!!」

チンジャオは覇王色の覇気を放ち、数十人の拳法家達を一瞬で気絶させた。
元5億越えの伝説の海賊は、伊達じゃないようだ。

ギャッツ《まだまだいるぞ、優勝候補!! 誰が勝つのか分からない!! 》

新世界中のあらゆる大物海賊達から恨みを買う賞金稼ぎ“追剥のジャン”。
裏の世界では知らぬ者なしという殺しのコンビで、億越えの海賊達の首をとる程の実力者とも称されるモガロ王国出身の“ファンク兄弟”ことケリー・ファンクとボビー・ファンク。
八宝水軍副棟梁であり現棟梁・サイの弟であるブー。いずれも強豪だ。
その時、観客席から悲鳴が上がった。その理由は、先程まで圧倒的な強さを見せていたブーがファンク兄弟にタコ殴りにされているからであるのだが…。

ギャッツ《え!!? 一体何が起きてるのか!!? 花ノ国のブーが滅多打ちに!!! すでに意識がない!!! 殴っているのは軟弱な弟ボビー!? いや、弱い兄ケリー!? おそらく兄!! だが巨大化して別人のようだ!!!》

ケリー「誰がチビだ!!? 今度言ってみろ!!! その喉噛みちぎってやんぞ!!!!」

身体は弟・ボビー、顔と腕は兄・ケリーという奇妙な姿のファンク兄弟に、観客は戸惑う。
その一方で、ルフィにも動きが。

ギャッツ《あっとこっちでは!!? “追剥のジャン”にルーシーがカブトを奪われたァ~っ!!!》

ルフィ「おい! 返せ!!!!」

ジャン「妙な噂を聞いたんだ、ルーシー……“麦わらのルフィ”って4億の海賊がこの大会に紛れ込んでるってなァ…!! デデデデ!!」

ルフィ「……………!!」

追剥ジャンの鎌掛けにあからさまに動揺するルフィ。
そんなルフィに向かって、チンジャオが敵を次々に薙ぎ倒しながら接近する。

チンジャオ「ガープ、見ていろ…!!! 今お前の孫を…!!!」

ギャッツ《Cブロック、生き残りは約40人!!!! 絞られてきた強豪達っ!!! 勝者は誰だァ!!!》
















-ドンキーホーテファミリー待機室-

こちらでは、コリーダコロシアムの管理者であるファミリー最高幹部・ディアマンテがべラミーにある紙を渡していた。

べラミー「ジョーカーが“麦わら殺し”を俺にやれと…?!!」

ディアマンテ「ドフィも甘いな…大会優勝を逃した男にこんな重役を任すとは…。 よかったなベラミー…暗殺なら易い仕事だ…大会が終わる前に片付けろ…この仕事を成功させりゃ晴れてお前もファミリーの“幹部”だ…!!」

べラミー「…………。」

ディアマンテ「だが用心はしておけ…“麦わら”の傍にいた黒マントの侍…アイツは三妖星のムラマサだ…!!」

べラミー「!!?」

百獣海賊団に属する動物(ゾオン)系幻獣種の能力を有する3人の強豪海賊・三妖星。
その中でも最強と称され、百獣海賊団全体でも最強クラスの実力を誇るのが、“死の彗星”と恐れられているムラマサだ。
新世界の海賊ならば知らない者はいない程の大物が、ルフィの傍に付いている。その事実を知り、べラミーは動揺する。

ディアマンテ「心配はするな…!! 少なくともコロシアム内ならば俺達の権限が発動されている……遠慮せず殺れ。」

べラミー「っ……。」

べラミー、葛藤する。 
 

 
後書き
こうやって順調に進めてますが、ドレスローザ編後半(戦闘描写かなりおおいです)で実現してほしい戦いがあったらメッセージか感想でリクエストしてください。 

 

第125話:覇王色の衝突

選手観覧席では、ムラマサ達がCブロック後半戦を観戦していた。

ムラマサ「(激戦も佳境…彼はチンジャオを越えられるのか、見物ですね。)」

一方、隣にいたレベッカはファンク兄弟の奇妙な能力を目撃して困惑していた。

レベッカ「何アレ…服みたいに着て…。」

ムラマサ「ケリー・ファンクですか? 彼は“ジャケジャケの実”の能力者…ジャケット状になった自分を着た者を操ることができるんですよ。」

生物に自身を着せることで、人格を乗っ取り肉体を操ることができる“ジャケジャケの実”は、強靭な肉体を有するボビーを乗っ取ることで、自身の格闘センスと狂暴性を最大限に発揮できる。
このジャケジャケの能力は、動物でも怪物でも着た者の全てを支配する。もしかしたら能力者に着させればその能力も支配できるのかもしれないのだ。あくまでも推測だが。

ムラマサ「(八宝水軍副棟梁・ブーの“武装色の覇気”を纏った攻撃…アレは彼の覇気が未熟だっただけ。 兄に通じるとは思えませんね。)」

レベッカ「あなた、随分博識なのね。」

ムラマサ「敵を知ることこそ、勝利への唯一の近道。 どれだけの脅威であろうと、知ってさえいれば対処できる。 まァ、あの程度の腕っぷしなら私は3秒あれば倒せますがね。」

自信満々にそう告げるムラマサ。
そんな中、リング上ではサイとケリーが対峙していた。

ケリー「オイ、思い知ったか!! 俺達は兄弟で力合わせて殺し屋稼業やってんのよ!! お前は情けねェな!! 花ノ国の兄!! 弟一人守れねェ!!! 花ノ国の拳法は強ェんじゃねェのかァ!!!?」

ケリーは弟の強靭な拳で先程ブーを倒したパンチの連打“ラララ乱暴”を繰り出す。

サイ「弟は修業が足りなかった。 八衝拳の門下に入った瞬間から兄弟の情なんざ捨てちまったよ…だが、八宝水軍棟梁として!! 部下の敵は(・・・・・)討たせて貰う!!!」

ケリー「!!?」


ドンッ!!!


ケリー「ぐげェ!!?」

ケリーの猛烈な速度で繰り出されるパンチを階段のように登り、サイは八衝拳を用いた踵落としを放った。

ギャッツ《強い~~~~っ!!!! “八衝拳”!!! 棟梁の格を見せつけたサイ!!! 誰も手に負えない怪物ケリーを一蹴~~~っ!!!!》

一方、必死に顔を隠すルフィはチンジャオにぐちぐち責められながら攻撃を躱していた。

チンジャオ「償えいっ!!!! “麦わらのルフィ”…!!!! 貴様のジジイが私から“巨万の富”を奪った罪っ!!!! 力も…!! 青春の思い出を奪った罪!!!」

ルフィ「だから…何か知らねェけどじいちゃんに言えよ!!!」

チンジャオ「ガープには死などというぬるい罰では事足りぬ!! 生きて……!! 失う悲しみを思い知らせてやる!!!」

ジャン「デデデデ…じいちゃんがガープ!! いよいよ本物だな。」

ルフィ「とにかくお前!! カブトを返せ!!」

進撃の巨人ならぬ進撃のチンジャオの猛攻から逃げつつ、ルフィはジャンにカブトを返すよう言う。
無論、ジャンがそれに応じる訳が無い。それどころか拾い集めた武器を高速で投げつける技“妓配王(ぎはいおう)”を放って攻撃に出た。
しかし見聞色の覇気と素早さでルフィは軽々と追剥のジャンの刃物を避け続ける。

ジャン「クソ……何故当たらねェっ!!!! ……え…!!?」

ルフィ「ん?」

ルフィばかり攻撃していたジャンは漸く気付いた。
ルフィに避けられていた自分の投げた刀は全てチンジャオの身体に刺さっていることを…。

ジャン「えーっと……。」

ルフィ「ほら、返せよカブト!!」

ジャン「あっ!!」

チンジャオに刺さった自分が投げた刀を見て固まるジャン。その隙にルフィはジャンからカブトを取り返した。
そしてその直後、チンジャオの頭突きがジャンを襲った。

チンジャオ「痛いわ貴様!! さっきからァ!!!!」


ゴッ!!!


ジャン「ゲブッ!!!!」

ジャンはチンジャオに頭突きされ、場外で一発K.O.。
チンジャオに刃物はほぼ効かず、伝説の海賊との格の差が周囲に見せつけられる。

ギャッツ《そしてこちらは!!!息をもつかせぬ互角の攻防!! 実力伯仲!!! 首領・チンジャオより「八宝水軍」を受け継いだ第13代棟梁・サイVS由緒あるセントラル格闘会を制し今や敵なしの格闘家“イデオ”!! まるで今大会の最強を決するかの様な両雄の死闘!!!! やはりここが本命か!!?》

ギャッツがサイとイデオの激闘に釘付けの頃、その2人を挟んでチンジャオとルフィの激闘が開始されようとしていた。

チンジャオ「そこか“麦わら”!! 観念せい!!!

ルフィ「……うし、やるか。」

ルフィは

ルフィ「恨みがあろうがなかろうがどうせ戦らなきゃ優勝は出来ねェんだ!!!!」

チンジャオ「今ここで決着をつけてやるわいっ!!!」

両サイドからルフィとチンジャオがお互いに突進し、邪魔だったサイをルフィが蹴りで、イデオをチンジャオがパンチで一蹴。
サイとイデオは場外へ吹き飛ばされる。

「「オオオオオオオオ!!!」」


ドォォン!!


『!!!?』

リング中央でチンジャオとルフィの拳が爆音の様な音を立てぶつかり合い、電撃の様な音がコロシアムに響き渡る。
“覇王色”の衝突によって起こる現象である。

ムラマサ「(覇王色の衝突…久しぶりに見ましたね。 まァ、この程度(・・・・)では彼もまだまだってところですかね。)」

コリーダコロシアム「Cブロック」、残り2名!!

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一方、コロシアムに潜入していたサボはライコウと連絡を取っていた。

ライコウ《つまり…お前の言い分だとコロシアムの出場者は優勝者以外は何者かによって姿を消されたと?》

サボ「あくまで俺の仮説ですが……どう思います?」

ライコウ《否定出来ねェどころかほぼ正解に近いな。 地下に工場があるという情報が正しけりゃあ、“何らかの形で選手達を集め、おもちゃに変身させて扱き使う”ということになる。》

地下に工場があるという情報は、百獣海賊団はすでに把握している。
それが事実であれば、このコロシアムから地下までの通路が存在し、そこへ選手達を誘導してシュガーがどこかでおもちゃに変えているという結論に至る。サボの言い分と照らし合わせると、辻褄が合う。

ライコウ《分かった…一応ルフィが出場してたな。 アイツが負けるってのはそうそうないから心配はいらんだろうが…会ったらすり替えてお前が後をやれ。 ルフィのためにコロシアムからの脱出通路を確保しろ。》

サボ「了解!」

サボはライコウとの通話を終え、動き出す。

サボ「まずは脱出通路の確保だな……っ!」

サボは何者かの気配を察し、物陰に隠れた。
すると、サボが先程いたところに1人の若者が現れた。
その見た目は、帽子とホットパンツを着用し、ハイヒールを履いている女性のような若者だ。

サボ「(アレは…デリンジャーか…!)」

デリンジャーは、ドンキホーテファミリー幹部でありディアマンテ軍に属する戦闘員だ。ファミリーの幹部では最年少だが、コリーダコロシアムでおなじみのあの凶暴な闘魚の半魚人であるので油断禁物な輩だ。

デリンジャー「べラミーの奴、どこ行っちゃったのかしら?」

サボ「(そういえば、コイツはオネェ口調だったな…。)」

呆気にとられつつも、耳を澄まして彼の言葉を聞く。

デリンジャー「ったく、せっかく若様から抹殺指令出されてるのに…。」

サボ「!」

何と、ドフラミンゴは傘下の海賊であるべラミーを殺す気のようだ。
部下を平気で切り捨てるドフラミンゴに、サボは静かに怒りを露にする。

デリンジャー「しかも三妖星のムラマサも来てるって話…べラミーの奴、面倒なことしてくれて困るわ。 あの男に邪魔されたらたまったモンじゃないわ。」

サボ「何、だと…!?」

サボは驚愕する。
ムラマサは、百獣海賊団幹部の中でも最強クラスの猛者。どういう訳か潜り込んでいるらしい。

サボ「(ライコウさんの密命か…?)」

※ムラマサが独断で来ただけです。

デリンジャー「ま、とにかくべラミー殺ろ! ムラマサがいたらその時ね。」

デリンジャーは頭を掻きながらその場を去っていった。

サボ「三妖星がまさか来てたとはな……。」

ルフィとすり替わった時、うっかり攻撃しないよう出場前に接触しようと感じたサボであった。 
 

 
後書き
デリンジャーの初登場の時は、ある意味感動しました。
「ついに貧乳キャラが…!!」と思ってたら実は男。上げて落とすとはこのことですかね。
え?ウチのオリキャラのスリーサイズ?それはさすがに教えられません……。 

 

第126話:コクトーからの伝言

ギャッツ《名のある強豪達が……!! 衝突する2人の気迫に押され戦闘不能になったかの様に見えましたが…!! 今、私達は一体何を見たのか!!?》

覇王色の持ち主同士の激突を始めてみたギャッツらは、興奮と共に動揺している。
まるで超常現象を目にした第一発見者のように驚愕しているのだ。

チンジャオ「ひやホホ、“覇王色”を操るとは…どこぞの王を夢見る?」

ルフィ「“海賊王”だ!!!!」

チンジャオ「ほざけ!! “王の資質”を持つ者などこの先の海にはザラにいると思え…その中で決するのだ…!! 塞き合う“覇王”達の中の更なる頂点!! それが海賊王だ!!!」

数百万人に1人しかその素質を持たない“覇王色”は、新世界(このうみ)には想像以上に多い。
カイドウ率いる百獣海賊団には、カイドウ含め4人の覇王色の持ち主がいるし、シャンクスやビッグ・マムも覇王色の持ち主。ドフラミンゴやギネスも覇王色を有している。

チンジャオ「誰に習った? その“覇気”。」

ルフィ「レイリー!!」

チンジャオ「!……まだ生きとったか…。」

チンジャオもかつてはロジャーや白ひげ、金獅子と同じ海を生きた海賊。
彼らとも戦ったこともあるから面識もあるのだ。

チンジャオ「いけ好かん!!! 昔の事など想い出したくもないっ!!! 答えろ“麦わら”!! 忘れたくとも!! 目の前にあり!! だが手は届かない!!! 私の財宝!!! ………オウ…こんな地獄が他にあるか!!?」

突如チンジャオは身体を震わし、どこぞの酔っぱらった四皇みたいに泣きじゃくった。
伝説の海賊が泣きじゃくっている光景に、観客は動揺を隠せない。

ブー「………ハァ…ハァ……じいちゃん…!! アニキを決勝へ行かせる手筈じゃ…!?」

サイ「…俺もまた未熟やい…ああなったら誰にもじいちゃんを止められねェ…!!」

リングの脇の池でチンジャオの孫達が当初の予定とは違う結果になった件を話す。

チンジャオ「“錐のチンジャオ”…昔はそう呼ばれ、今はもう呼ばれぬ!! つい先程、ムラマサの小僧に呼ばれた時は嬉しかったが…答えろ!! ガープが私に何をしたか!!!」

ルフィ「知らねェよ!! 泣くか怒るかどっちかにしろよ!!」

ルフィとチンジャオは互いに覇気を纏い、殴り合いを始める。
そんな様子を、サンジ・錦えもん・コラソンの3人はドレスローザの大通りのモニターで物陰に隠れながら見ていた。

錦えもん「サンジ殿、拙者早く“オモチャの家”にカン十郎を助けに行きとうござる…!!」

サンジ「そうしてやりてェがちょっと待て…ここがまず緊急事態だ!! 見ろよ、コロシアムを囲む海兵の数!! どうやらこの大会、海賊や犯罪者達が平然と出場してるらしい。 出て来た端から捕らえようってんだろ…!」

コラソン「それだけじゃねェ…世界皇帝の来訪も加えて陸軍の連中も来てる。 両方相手取ってたら骨が折れるぞ。」

錦えもん「そりゃ犯罪者は捕まって当然でござる。」

コラソン「お前も海賊の船に乗ってる事実忘れんな!!」

全くである。

コラソン「とにかく、作戦に支障をきたさないよう慎重に動くしかねェな…。」

その時、角のついた仮面を被った“鮫切りバスティーユ”こと海軍中将・バスティーユが叫んだ。

バスティーユ「AブロックとBブロックの敗者達が何百人もいるハズだらァが!!!」

コロシアム出入り口の指揮を取るバスティーユは、試合が終わっても出て来ない選手達に疑問を抱き始めている。
今回の大会の景品であるショクショクの実を狙い、世界中の強者達が集っている。その強者達を一網打尽にするべくこうして「網」を張っているのだが、誰1人出てきていないことにはさすがに違和感を感じる。
なお、選手として“追撃”の異名を持つ中将・メイナードが潜入しているが、ずっと連絡がついていない。

バスティーユ「勝手なマネを…若僧が…。」

コラソン「アレは…バスティーユ中将か…!」

錦えもん「顔見知りでござるか?」

コラソン「俺は元海兵だ、少なからず面識はある…と言っても、随分前だが。」

バスティーユ「コロシアムの中で何か起きてんじゃねェだらァか…。」

バスティーユの呟きに、海兵達は眉間に皺を寄せるのだった。

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-新世界、とある海域-

ワノ国へ帰還するべく、海を行くハゴロモ達。
パンクハザードの一件で疲労が溜まった者達の安眠を邪魔せず、アリスティアと酒を飲む。

ハゴロモ「フフ…こうしてお前を可愛がったものだ。」

アリスティア「姐さんには随分お世話になりましたから……ヒオちゃんやマイちゃんの面倒を見たのあなたじゃないですか♪ 遊び相手はイカズチ君でしたけど。」

ハゴロモ「アイツは三妖星(さんにん)の中では幼稚な部類だからな……まァ、その辺も加味して信頼できるものよ。」

明らかに女子会のムードが漂う甲板。

アリスティア「マイキー(かれ)は起こさなくてよかったのですか?」

ハゴロモ「女2人の飲み会に付き合うよりも熟睡を選ぶさ…。」

ハゴロモは尻尾を器用に動かし、酒瓶を掴んで徳利に酒を注ぐ。
ふとその時、辺りが霧に包まれた。

アリスティア「濃霧…!?」

ハゴロモ「そうか…この辺りは霧が濃かったんだな。 だが永久指針(エターナルポース)がある…気にせず進…っ!?」

ハゴロモは突然立ち上がり、掌から狐火を出した。
それを見たアリスティアは、突然のことに首を傾げる。

アリスティア「姐さん…?」

その時だった。

?「さすがに気付かれたか…勘がいい女だ。」

霧の中から巨大な船が現れ、さらに甲板には謎の男が立っていた。
その姿を目にしたハゴロモは身構える。

ハゴロモ「貴様は……!!」

?「久しぶりだなハゴロモ……随分と魅力的になったものだ。 あと…尻尾(それ)を下ろしてくれないか? 尤も、その程度で殺られる俺ではないが…。」

男の首には、鎌首をもたげたハゴロモの覇気を纏った尻尾が。
黒く硬化された尻尾(それ)は、まるで刃物のように鋭くなっている。
今まで見たことないハゴロモの殺気に、アリスティアすら気圧され腰を抜かしてしまう。

ハゴロモ「何をしに来た…事と次第によっては、貴様を殺す。」

?「ククク……別に戦ってもいいが、そういう訳にもいかん…。 数はこちらの方が有利だが、お前を相手取るのは骨が折れるからな…ただライコウに伝言を伝えてほしいだけだ。」

ハゴロモ「伝言…だと…?」

?「“コクトーからの伝言だ、お前との長き因縁に終止符を打つ”……よろしく伝えてくれないか。」

「「!!!?」」

コクトーを名乗る男は、獰猛な笑みを浮かべるのだった…。 
 

 
後書き
コクトーは新キャラです。
何者かまではお教えしませんが…ライコウの関係者であることだけは明かします。 

 

第127話:ウソランドとロビランド

ドレスローザにある、百獣海賊団の仮アジト。
ライコウは刀の手入れをしながら待っていた。

ライコウ「(ロー、今は耐えてくれ。 ドフラミンゴはああ見えて警戒心が強いからな…。)」

ライコウが心配しているのは、ローのことだった。
ローは現在、グリーンビットでドフラミンゴと藤虎を相手取っている。七武海と海軍大将を敵にしては、さすがのローも敗北は免れない。
しかしそれがライコウの狙い。本来ならルフィと共に作戦の中心となるであろうローを囮にすることで時間稼ぎをし、ドフラミンゴに罠と気付かれずに欺くのだ。

ライコウ「そういやァ、あの段ボール何なんだ…?」

ライコウが気になっていたのは、部屋の隅に置かれた段ボール箱。
モネからは「ギネスの所持品」と言っていたのらしいが、中身は無いのかやけに軽いのだ。

ライコウ「(何の意味があってこんなモン…。)」

ライコウがそう思って段ボール箱に触れようとした、その時!


コパッ


ギネス「旦那、ちょいといいか?」

ライコウ「うをォッ!!?」

何と段ボール箱からギネスの顔がニュッと出て来た。
とんでもない不意打ち(・・・・)に、ライコウはびっくりしてズッコケてしまう。

ライコウ「どっから出て来てんだお前はァ!!?」

ギネス「俺の能力です。 “密閉連結”で登録済みなので。」

ライコウ「何じゃそら…。」

ギネスの“密閉連結”は、箱のような「密閉空間」と自らが作り出した「異空間」の2つの空間をスぺスぺの能力(チカラ)で干渉させることで、2つの空間の間を自由に行き来する技だ。密閉空間でないと使えないなどの欠点はあるが、移動手段としては便利なのだ。
なお、ギネスが海軍や陸軍に捕まらないのはこの能力のおかげでもある。

ライコウ「理解しにくい能力だな…。」

ギネス「そう言わないでくださいよ…。」

ライコウ「んなことより、用事あんだろ。 何なんだ。」

ギネス「そうそう、実は王宮に潜伏してたんだが…。」










-同時刻-

フランキーは茶を啜りながら、兵隊のある話に耳を傾けていた。
このドレスローザは、「国の消灯は“午前0時”で、それ以降外を出歩かない」と「オモチャは“人間の家”に決して入ってはならない」という2つの法律があり、深夜は何故出歩いてはならないのか、オモチャは何故人間の家に入ってはならないのかがドフラミンゴ政権になってから未だに不明なのだ。

フランキー「そりゃあ…作られた“人工物”と“生物”との悲しき境界線というなら仕方ねェだろうが………そもそもお前らオモチャは何なんだ? 意志もありゃあ口も利く。 お前らを作り出したベガパンク級の技術者は誰なんだ!?」

すると兵隊は、フランキーの問いに黙秘をする様に何も話さなくなった…。
その直後、ドレスローザの街に女性の悲鳴が響き、皆が悲鳴の発信源に視線を向ける。
そこには悲鳴を上げた女性のスカートの裾を掴み、仲の良かったオモチャが突然「自分はお前の恋人だ」と言い、警備隊に連行されていく光景が。
そして、その警備隊に捕まったオモチャは「SCRAP(スクラップ)」と書かれた小屋に連れて行かれ、暗い穴の中へと放り込まれた…。

フランキー「もしかして、アレがこのドレスローザの国民が言ってた“人間病”か? …成る程、オモチャが突然人間の様な素振りをしだす病気か…。」

兵隊「そうとも言うが違うとも言える。」

フランキー「?」

兵隊「これは私から説明するより一個団体で話を進めた方が分かりやすいだろう…ここで待っていてくれ。」

そう言い、オモチャの兵隊はオモチャの犬を連れた母子を連れて、会話を始めた。

兵隊「ワンポコ…君は誰だ?」

ワンポコ「……俺はあの子の父親で…あの女の夫だ…。 名前は“ミロ”…ワンポコじゃない。」

兵隊「坊や…父さんはいるか?」

「え? いないよ、そんなの。」

兵隊「奥さん…あなた夫は?」

「いないわ。 結婚もしてないし…よくある事でしょ?」

フランキーは兵隊と母子とオモチャの犬の会話が理解出来ず、頭を悩ませる。

フランキー「…おい兵隊!! お前は一体何を見せたいんだ!?」

兵隊「この国には、“忘れた者達”と“忘れられた者達”が存在する…!! つまり“人間病”とは、忘れた者達が忘れられた者達の感情を病気として扱っている名称だ。」

フランキー「!? じゃあまさか…お前らは元は人間なのか!!?」

兵隊「その通り! 我々オモチャは元々皆、人間だったのだ!! 10年前にドフラミンゴが連れてきた1人の能力者の手によって我々はオモチャの姿に帰られてしまった!! さァ、“お花畑”が見えた! そこで全てを話そう!!!」

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-一方、グリーンビット地下では-

グリーンビットの地下にある小人の国「トンタッタ王国」。
ロビンとウソップは小人によって誘拐され尋問されかけたが、ウソップの咄嗟の機転で誤解を解くことに成功し、現在はウソップが付いた「あるウソ」が原因で“ウソランド”と“ロビランド”として動いていた。

?「しかし驚いたれすよ! ウソランドがモンブランの子孫なだけでなく、かの“世界皇帝”エイセイ様の旧友だったとは!!」

ウソップ「ま、まァな…。」

ウソランドことウソップは、トンタッタ族の戦士にして一族の兵長であるレオから尊敬の眼差しを直に浴びていた。
他のトンタッタ達が準備をする中、ロビランドことロビンはウソップに問いかけた。

ロビン「ウソップ…モンブラン・ノーランドのことは理解できたわ。 でも世界皇帝との関係は初耳よ?」

ウソップ「あァ…それなんだがな…。」

ウソップはトンタッタとエイセイの関係について語り出した。
それは、まだロビンがトンタッタに連れ去られ、トンタッタ王国で目覚める30分前のこと…ウソップが自らのことを「モンブラン・ノーランドの子孫」と言って助かった後である。

ウソップ「世界皇帝は加盟国へ訪問することがあるんだが、ドレスローザの時はどさくさに紛れてトンタッタへ訪問するっつっててな…その際“俺の知り合いがお前らを救うだろう”と言ってたらしい。」

ロビン「まさか……それが私達だと思い込んでる?」

ウソップ「……俺がうっかり言っちまったんだ…。」

どうやらエイセイの知り合いは別の人物で、ウソップはその場の空気に流されうっかりエイセイの知り合いであるというウソを言ってしまったようだ……。
しかもトンタッタ族は一族揃って素直すぎる性格がゆえ、少々騙されやすいということを知らずに言ったので余計マズい展開になったのだ。

ロビン「知らぬが仏ね……。」

ウソップ「すまねェ…ホントすまねェ…。」

そんな気まずい顔をするロビンと落胆するウソップに、レオは声をかける。

レオ「ウソランド! ロビランド! これから僕達は“闇の工場”へ向かうれす!!」

ウソップ「え…? “工場”って…。」

ロビン「“工場”って……“SMILE工場”のことよね?」

そう、レオ達トンタッタ族はドレスローザにある工場を破壊するという。
具体的に言えば「工場で働かされてる500人の仲間達と、どこかで幽閉されているマンシェリー姫の救出」なのだが、いずれにしろ目的は丁度重なっており、作戦には支障どころか好都合なのだ。

ウソップ「ど、どうやら都合はいいようだな…。」

ロビン「上手くいく確証は無いわよ。」

ウソップ「言うなよ、俺だって心配なんだから…!!」

ロビンの冷たいツッコミに、ウソップは目を白くして「それを言うな」と呟く。
そんな中でも、トンタッタの兵士達は準備を進める。

「レオ!! 宮殿のドンキホーテファミリーが動き出したって!! おそらくコロシアムの地下へ!! カブさんの“イエローカブ”とビアンの“ピンクビー”!! いつでも飛べるよ!!」

レオ「よーーーし!! 行こう!! 決戦はドレスローザ!!! コロシアムの地下、“闇の工場”れす!!!!」

小人族、一斉蜂起する! 

 

第128話:Cブロック、決着

ライコウ「つまり…お前の意見をまとめると、リク王政権復活のために世界皇帝もドフラミンゴの首を狙っているってか。」

ギネス「そういうこと。」

ライコウはギネスから得た情報を分析・要約していた。
つい数分前に段ボール箱から出て来たギネスによると、王宮へ忍び込んだ際「スートの間」でエイセイがファミリーの幹部達と邂逅していたという。
しかもその際にエイセイは「地に堕ちてなお権力に執着する、愚かで哀れな男」とドフラミンゴを罵倒したり、「お前らを潰そうと企んでるのは百獣海賊団だけじゃない」とドンキホーテファミリーの討伐を画策していることを匂わせる発言をしていたとのこと。

ライコウ「(エイセイの野郎、藤虎と紅傘を従えてドフラミンゴを潰す気だな…表向きは俺らを標的にしてるってこたァ、アイツも俺と似たような魂胆か?)」

エイセイの真の狙いを察するライコウ。
元々エイセイは奴隷出身であり、元天竜人であるドフラミンゴとは相容れない関係だった。その上ドフラミンゴは七武海であるため、かなり目障りであったに違いないだろう。

ギネス「エイセイ(アイツ)もドが付く曲者だからな~…ドフラミンゴも手ェ焼くだろうな。」

ライコウ「ああ見えて化け物じみてるからな……さてと、ボチボチ頃合だ。」

ライコウは鬼王(あいとう)を腰に差し、立ち上がった。

ギネス「! ……動くのかい、旦那。」

ライコウ「ちったァ動かねェと空気になっちまうからな。」

ライコウはそのまま外へ出た。

ギネス「フッフフ、こりゃあ面白くなりそうだ……俺もちょっと喧嘩吹っ掛けてみるとしますか。」

ギネスもまた、捕食者のような獰猛な笑みを浮かべるのだった。









-グリーンビット-

グリーンビットでは、ドフラミンゴが傷だらけで地面に横たわるローと木の丸太に腰を下ろす藤虎にドレスローザの真相を語り始めていた。

ドフラミンゴ「その昔………今から800年昔の話だ、ロー…。 20の国の…20人の王が世界の中心に集い………1つの強大な組織を作り上げた。」

ドフラミンゴが話しているのは、現在の“世界政府”の話。
世界政府は800年前、20人の王達“創造主”によって創られた国際統治機関。創造主達はそれぞれの家族を引き連れ、アラバスタのネフェルタリ家を除いた19の家族が聖地マリージョアに住み始めた。その“創造主”の末裔達こそが“天竜人”である。
つまり800年前…その19の国からは“王族”がいなくなったのだ。勿論各国では次の王が選出され、新たな王族が生まれる事になるのは言うまでもない。

ドフラミンゴ「我が国ドレスローザで例えるなら…その新しい方の王族がリク一族。 世界の“創造主”として聖地マリージョアへと旅立ったのがドンキホーテ一族だ!!!」

ロー「……そこまでは知っている…俺が知りてェのは“CP-0”をどうやって動かしただ…!!」

ドフラミンゴ「フッフッフッ……そりゃあ酒でも飲みながらその話を聞かせてやってもいいが…そんな時間も無ェ。 ドレスローザの“麦わらの一味”と“百獣海賊団”を何とかしなきゃあな…特にライコウをどうするか…。」

ドフラミンゴの顔から、笑みが消える。
彼の脳裏には、かつて“北の海(ノースブルー)”であったライコウとの初めての邂逅が浮かび上がる。オペオペの実を奪われた悔しさが、今も忘れられないのだ。

ロー「(まだだ、今仕掛けるのはマズイ……大人しくしてるしかねェか…!)」

窮地に立たされてなお、ローはドフラミンゴを睨み付け機会を伺う。

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一方、コリーダコロシアムのルフィVSチンジャオはクライマックスを迎えていた。

チンジャオ「ハァ…ひやホホ、中々やる…!」

ルフィ「ハァ…お前なんかに負けられっか!!!」

伝説の海賊と最悪の世代の、壮絶な一騎打ち。
互いに覇王色を有する剛なる者の、拳と拳の語り合い。
今までの戦いとは比較にならない真剣勝負に、実況のギャッツも「コロシアム始まって以来指折りの激戦である事は間違いない」と豪語する。

チンジャオ「“最悪の世代”ともて囃され調子ばかり得た若僧共!! 己らには我らの戦った“あの海”は超えられん!!! 白ひげ亡き今、次の時代も知れている…唯一見映えするとすれば“黒ひげ”ティーチ…そして“百獣のカイドウ”くらいのものだろう。」

ルフィ「…“黒ひげ”もか…!?」

チンジャオ「今や牙をもがれた私に対して張り合う程度の実力ならば見込みはないわ…!! 海賊などやめてしまえ!!! レイリー程の男がこれしきの小僧を“新時代”の旗手に選んだというのなら奴も落ちたものよ!! “海軍大将”も“四皇”も蹴散らして!!! 己にロジャーを超えられるのか!!? 笑わせるな!!!!」

ルフィ「なら…俺はお前を越えてやる!!! “ゴムゴムのロケット”!!!!」

ルフィはチンジャオの頭部をゴムゴムの技で掴み、天高く飛ぶ。

チンジャオ「来てみろ…!! 洗礼を与えてやるっ…!!!! 30年の…ガープへの恨みを込めて…全霊をかけた一撃をくれてやるぞ“麦わらのルフィ”!!! 己のジジイの拳骨一発で私から全てを奪い去ったその罪を償えィ!!!」

チンジャオは“無錐龍無錐釘”を、ルフィは“ゴムゴムの雷将象銃(トールエレファントガン)”を放つ。
すさまじい気迫と力がぶつかり合うが、ルフィの力が競り勝ち、拳がチンジャオの頭に減り込んだに見えたその時、チンジャオに異変が起きた。


ベコォン!!


チンジャオ「!!?」

何とチンジャオの頭が錐のように尖った形になった!
実はこれこそがチンジャオの本来の頭。チンジャオは自慢の長い錐形の石頭から“錐のチンジャオ”と呼ばれていたが、30年前のガープとの戦闘で錐形の頭をへこまされたのだ。
それが…元に戻ったのだ。

『えええええ~~~っ!!!?』

さすがに観客達も度肝を抜かれてしまう。
なお、気絶したチンジャオはその尖った頭部でリングを真っ二つに割ってリング下の湖に落下し沈んでいった。

ギャッツ《何という男だァ~~~!!! 伝説をも討ち破り、激戦区Cブロックを制したのは!!! 我らが剣闘士・ルーシー~~~ッ!!!》

ルフィ「よっしゃーーー!!!」

こうしてルフィはCブロックの勝者となった。

キャベンディッシュ「……何がルーシーだ…!! ……憎きこの歓声…さァ、戻って来い…今度は逃がさないぞ“麦わら”…!!」

バルトロメオ「言ったハズだべ、お前には殺らせねェ…キャベンディッシュ!!」

キャベンディッシュ「邪魔すればキミも消すぞ!! バルトロメオ!!」

バルトロメオ「ヘハハ! 上等だべ。」

レベッカ「スゴイ…!」

ムラマサ「……さすがと言ったところですね。」

バージェス「ウィ~~~ッハッハッハ!!!! 面白ェ、そういう事かァ!!!!」

歓声に包まれるルフィ。
だが、その裏で選手達のそれぞれの思惑が飛び交っていることをルフィは知らない。 

 

第129話:囚人剣闘士

-ドレスローザ・王宮にて-

ベビー5「グラディウス…少し落ち着いたら?」

ベビー5は、目の前でイライラしている黒ずくめのコートを着用しゴーグルを掛けたマスクの男にそう声を掛けた。
男の名はグラディウス。ドンキホーテファミリーの幹部で、自身や触った無機物を破裂させる“パムパムの実”の能力者だ。

グラディウス「ベビー5…あの女の裏切りが…どれだけ我々の作戦を狂わせたと思う!? ヴァイオレットが“黒足のサンジ”を捕らえ…奴の頭の中から敵の全ての作戦とブラックマーメイドの力と居場所を引き出す…俺達はその作戦の全てを封じ一人一人消していく三段…!! それが何たるザマだ!! 部下を仕留めて逃げ出しただと!?」

ベビー5「落ち着いて!! ここで爆発するつもり!!!?」

グラディウスの怒りに反映するように心臓の鼓動のような音が鳴り響き、徐々にグラディウスが被っていたシルクハットが膨らみ、ベビー5は爆発を恐れ、身構える。
そして膨張したシルクハットは爆竹みたいな音を立て、粉々になった。
 
グラディウス「俺は計画と時間を守らねェ奴が死ぬ程嫌いなんだよ!!! ましてや 俺達を…いや…若を裏切る奴は…生かしちゃおかねェ!! ヴァイオレットは昨夜から様子がおかしかった…考えてもみろ…あの女の“千里眼”なら昨日の内に“麦わら”の船を見つけられた筈だ。」

ベビー5「!!」

ヴァイオレットもといヴィオラは、「目」を媒体に様々な能力を自在に行使する事ができる“ギロギロの実”の能力者。彼女の能力“千里眼”は、自分の視界を鳥のように飛ばす事が出来、その場にいながら八方4000kmのあらゆる視覚情報を取り入れる事ができる。ドレスローザの中心から国全体、ついでに近海の様子まで観察する事が可能で、視界だけ屋内に侵入される事もでき、壁などの障害物は一切役に立たないのだ。
だからこそ、何故ヴィオラがサニー号を見つけられなかったことに違和感があるのだ。

グラディウス「今日の世界皇帝の訪問もだ…!! リク王の時代が終わってから奴はこの国への訪問は極力拒否し続けてきた…!! だが今となって訪問し、しかも“百獣海賊団”と“麦わらの一味”の同盟の報せが広まってから何故か訪問だ!! どうも引っ掛かる……!!! まるで若の首でも取ろうと目論んでいるようだ…!!!」












-同時刻、お花畑-

ここドレスローザには広大な向日葵(ヒマワリ)畑…通称“お花畑”がある。
しかしそれは仮の名…本来のこの場所の名は“反ドフラミンゴ体制「リク王軍」決起本部”である。

レオ「イエローカブ!! ピンクビー部隊!! グリーンビットより到着!!」

兵隊「ごくろう、レオ!!」

レオ「いよいよれすね隊長!! 伝説の英雄(ヒーロー)もお連れしたれす!!」

兵隊「この戦いは!! 10年前!! 無念の内に退位されたリク王の名誉と我々の自由を取り戻す為の戦いである!!!!」

『うおおお~~~~っ!!!!』

兵隊「ある日この国にやって来て全てを奪い去ったあの日この国にやって来て全てを奪い去ったあの男の暴挙を私は忘れない!!! 作戦の準備には1年を費やしている!!! “七武海”の海賊団であれ、勝機はあるっ!!!!」

どこぞの巨人海軍中将のように檄を飛ばす兵隊に、士気を上げるレオ達。
完全に決戦へ向けて覚悟を決めている勇敢なる彼らに対し、ウソップは……。

ウソップ「(よし! 作戦をよく聞いていつ逃げるか考えよう!!)」

完全に逃げ腰であった。
そんな中、1人の小人が兵隊にある報告をした。

「隊長! “総司令官”の分身が到着したれす!!」

兵隊「何だと、本当か!? よし、通してくれ!!」

ウソップ「総司令官? このリク王軍…だっけか? そのトップはお前じゃねェのか?」

兵隊「作戦の実行部隊…いわゆる現場での最高指揮官は私だ。 海軍や陸軍でいう“大将”と同じだと考えればいい。 そして海軍や陸軍でいう“元帥”にあたるのが、我らリク王軍の総司令官だ!!」

その時、階段の方から足音が響き始める。
どうやら総司令官の到着のようだ。

?「…僕は“新世界の怪物”をはじめ、あらゆるコネを利用して情報を得て君達が動くのを待ち続けた……。」

『!!?』

?「僕の政治生命…いや、政府に対する全ての権限を剥奪されることを覚悟の上で動いたのさ。」

現れた総司令官の正体は、何と王宮にいた筈の“世界皇帝”エイセイだった。

フランキー「なっ…!?」

ロビン「あなたは……“世界皇帝”!!?」

エイセイ「役者は揃ったみたいだね……さァ、“リク王軍総司令官”として語ってあげるとしようか。 ドレスローザの全てを。」

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一方、Cブロックを勝ち抜いたルフィはレベッカとムラマサにコロシアムの剣闘士の宿舎に案内されていた。

レベッカ「試合すごかったね、驚いたわ! ルーシー強くって!!」

ルフィ「うん、まーな! しかしうめェぞ!? コロシアム弁当!!」

ムラマサ「話脱線してますよ、思いっ切り。」

ルフィとムラマサはコロシアム弁当にがっつきながら話し合う。
すると…。


ガシャァン!!


ルフィ「わっ!!」

ムラマサ「!」

「オラァ!! 捕らえた!!」

「レベッカ!! やるならやれ!! その気で連れてきたんだろ!!?」

ルフィ「何だ!? え? おいレベッカ!! 何だコレ!!」

レベッカ「…………………!!!!」

レベッカは獄舎から手を出してルフィを押さえる囚人達に促され、羽交い締め状態のルフィに剣を向ける。
しかしレベッカの剣の刃が自分に到達する前にムラマサが動いた。ムラマサは鞘に納めていた愛刀の鍔を親指で弾き、レベッカの手の甲に向けて飛ばしたのだ。刀の柄尻がレベッカの手の甲にあたり、思わぬ痛みにレベッカは剣を落とした。
そしてその隙にムラマサは彼女を押し倒し、愛刀を手にした。


ジャキッ!


ムラマサ「……コロシアム内での私闘は禁止の筈ですよね、お嬢さん。」

ムラマサはレベッカの首筋に刀を向ける。
獄舎の者達はムラマサの力を前にし唖然とする。

レベッカ「っ……好きにすればいい……報いは受けるわ…!! ルーシーを殺そうとしたもの……!!」

ムラマサ「フフ…どの道彼の前では出来ませんよ…殺生は嫌いではないですがね。」

微笑みながら何気に恐ろしいことを言うムラマサは、刀を鞘に納める。

「…はァ…そんなに余裕で許されちゃあ、力の差が浮き彫りになるだけだな。 レベッカ。」

ルフィは獄舎の者達に解放される。

ルフィ「え…ミイラ?」

『違うわ!!!!』

するとムラマサが、何かを悟ったかのように口を開いた。

ムラマサ「囚人剣闘士ですか…成る程、お嬢さんもそうでしたか。 罪状は大方、“ドンキホーテファミリーに少し逆らったから”というところでしょう。」

ムラマサの言葉に、獄舎の者達は無言で頷いた。

「俺達に逃げ場は無い…!! 10年前…ドフラミンゴが王になるまでは「剣闘」は殺し合いじゃなかったんだがな…奴の治めるこの国には極端な光と陰がある…!!」

ムラマサ「……お嬢さん、あなたは刺し違えてでもドフラミンゴを倒す気の様ですね。」

レベッカ「そうよ…!!! 今日…!! “兵隊さん”の率いる軍隊が私達を解放する為にドフラミンゴに決戦を挑むって…!! 彼は命と引き換えに…この国を滅ぼす気なの!! 彼より先に私がやるんだ!!! もう守られるだけじゃイヤなんだ!!! 今度は私が兵隊さんを守り゛たい!!!」

ルフィ「……!?」

レベッカ、涙の決意を口にする…。 
 

 
後書き
ライコウの出番少ないな~。
でも、彼はドレスローザ編後編で大暴れさせますのでご勘弁を。 

 

第130話:先代国王

 
前書き
ついに130話突破。
これからもよろしくお願いします。感想もドンドン送ってくださいね。 

 
レベッカ「兵隊さんが……死んじゃう…!!」

レベッカの言葉に、首を傾げるルフィ。

ルフィ「兵隊って……?」

レベッカ「片足の…オモチャの兵隊さん…。」

ルフィ「オモチャ? …コロシアムの入り口でそんな奴に会ったぞ?」

レベッカ「ええ…きっと彼……。」

レベッカは暫く仰向けになっていたが、漸く身体を起こし、涙を手で拭いながら話を続ける。

レベッカ「友達のいない人の友達になり、兄弟のいない人の兄弟になり、恋人のいない人の恋人になり…なぜ一緒に暮らしちゃいけないのか分からないくらい…私は…たった一人の家族だった母親を失ったその日から兵隊さんに育てて貰った…私にとって彼は…親も同然の人…!!」

その時、Dブロックの開幕を知らせるアナウンスが入った。
そろそろレベッカが戦う番なのだ。

ムラマサ「…お嬢さん、あなたの番ですよ。」

レベッカ「…うん…2人共、決勝で会いましょう。」

レベッカはそう言い残し、リングへと向かった。

ムラマサ「……どうします? ここで観戦しますかな?」

ルフィ「そうしよう!」

弁当を頬張りながらルフィはムラマサの提案を受け入れる。
すると、モニターが映りリング上にレベッカが入場した。
しかし、観客は歓声を上げなかった。その代わり……。

「くたばれー!! レベッカ!!」

「今日こそ斬られろ!! 人でなしの一族!!」

「死んじまえレベッカ!!」

「ドレスローザの恥ィー!!」

コロシアム会場の声援はレベッカへの罵倒の声へと変貌していた。

ルフィ「えー!? 何でアイツこんなに嫌われてるんだ!? スゲェイイ奴だぞ! ふざけるな!! アイツ俺に弁当奢ったんだぞ!!」

※ムラマサは自腹です。

「分かってるよ!! だが、レベッカのじいさんはかつて国中に恨みを買った“先代国王”なんだ!!!!」

ルフィ「…!!?」

異様な光景にルフィは激怒するが、囚人剣闘士の話で「レベッカは国中に恨みを買った先代国王リク・ドルド3世の孫」という血筋であったことが判明する。
ルフィは「孫だから何だ、関係ないだろ」と正論を口にするが、囚人剣闘士達は「その通りだ」と鼻で笑いつつも共感はした。
そんな中、ムラマサはある行動に出た。

ムラマサ「では、それについて訊いてみましょうか。」

『?』

ムラマサは電伝虫を取り出し、ある人物へ連絡を取った。
その人物は……。

ライコウ《誰だ、俺に連絡したの。》

ムラマサ「ムラマサですよ、副船長。」

ライコウ《お前かっ!! てめェ、何を身勝手な行動してんだ!? 色々大変だったんだぞこっちは!!》

そう、上司(ライコウ)である。

ムラマサ「少しお尋ねしたいことがありましてね…。」

ライコウ《? 珍しいな、お前がそういうこと言うなんざ。》

ムラマサ「レベッカという少女に出会ったのですが、彼女の情報を持ってますよね?」

ライコウ《……そいつァ、10年前に遡るぞ。》

ライコウは電伝虫越しに語り始めた。

ライコウ《今から10年前、リク王は世界政府を脅して七武海になったドフラミンゴの手によって操られ、国民と兵士を手に掛ける凶行を行った。 さらに兵士達も国民を襲いだし、ドレスローザは文字通り“地獄絵図”と化した……国中が恐怖に震え上がり、リク王を心底怨みきった時にドフラミンゴが英雄面して登場。 ドレスローザでは国中で国民達がドフラミンゴの名を呼び、讃えた。 たった1日で、平和な国が海賊国家になったんだよ。》

ルフィ「……。」

まるで悪夢のような過去に、ルフィはおろか囚人剣闘士達も絶句する。

ライコウ《ムラマサ…ルフィはいるのか?》

ムラマサ「えェ…私もコロシアムで戦うので。」

ライコウ《いいかルフィ…俺としてはドフラミンゴさえ潰せればこの国がどうなっても構わない。 だがこの国をどうしても救いてェなら…悔いのないように振る舞え。》

ライコウはまるで忠告のような言葉を口にして、通話を切った。

ルフィ「……。」

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-同時刻、リク王軍決起本部-

フランキー「…こりゃあ驚いた……!」

ロビン「あなたが裏で糸を引いてたのね。」

世界皇帝の暗躍が発覚し、驚きを隠せないフランキーとロビン。
そんな中、ウソップがあることについて指摘した。

ウソップ「待て待て、さっき分身って聞いたぞ! どういうことだよ!?」

エイセイ「そのまんま。 僕は“偽者”……本体じゃないって言えば分かるかな?」

するとエイセイは「見れば分かるかな」と呟き、剣を抜いて指を斬り落とした。
突然の常軌を逸した行動に、ウソップは絶叫するが……。

ロビン「……これは…!」

ロビンは斬り落とされた指を見て驚愕した。
何故なら、その指は土だったからだ。

エイセイ「“土偶分身”……この場にいる僕は、本物が生んだ土の分身。 斬り刻んでも焼いても、僕は復活するのさ。 戦闘力は本物よりもかなり劣るけどね。」

エイセイは口を開き、トンタッタ族・ドンキホーテ一族・リク一族にまつわる深い因縁を語り始めた。

エイセイ「遥か昔、トンタッタ族は自国にない資源を求め海へ出て人間に発見されては絶滅の危機に瀕していたと言われている。」

絶滅の危機に追い詰められたトンタッタ族はある時、隣国ドレスローザの王は「少しの労力」と引き換えに「資源と安心」を保障するという条約を提案してきた。
その時の王の名が“ドンキホーテ”である。
しかしそれが今から900年前まで続く事となるトンタッタ一族最悪の歴史“奴隷時代”の開幕だったのだ。

エイセイ「政府の機密文庫に残る書物に克明に記されるその残酷な王家の姿はまさに“悪魔”……人知れず地下深く働きに働かされ、人間達はトンタッタの生み出す富と栄華の上に生きた。 そして“空白の100年”に何があったか知られていないが、今から800年前…ドレスローザに新たな王が誕生する。 それが“リク王”。」

過去数百年地下で行われていた小人を人とも思わぬ所業を耳にしたリク王は涙を流し、深く深く謝罪してくれたという。
さらにリク王のとった行動は“償い”だった。
「この国から生活に必要な物を何でも持ち出して構わない」と言った王はその盗人同然の行為を“妖精の仕業”とし、国民達を笑ってなだめ…見事に「妖精伝説」を国に定着させたのだ。
リク一族の治める国は隣国の危機にも援助を惜しまず、お世辞にも豊とは言えなかったが、ドレスローザは笑顔のたえぬ素晴らき国になったのだ。

エイセイ「それがトンタッタ王国と代々リク王家との800年の“絆”……しかし、900年の時を経て舞い戻ったドンキホーテ一族の末裔ドフラミンゴはそれを繰り返そうとしているってこと。」

兵隊「ドレスローザにとってもトンタッタにとっても、ドンキホーテの帰還など百害あって一利なしなのだ!!」

ウソップ「……俺もそう思ってた!!!!」

フランキー「おおおう!! リク王…いい奴だぜ!! こんな虫ケラの様な種族にも優しくて…! いい意味で…!!」

エイセイ「結構失礼だね……。」

フランキーの変な言葉に、白い目で見るエイセイ。
その時、ロビンが兵隊に尋ねた。

ロビン「だけど隊長さん…今、コロシアムに映ってる女剣闘士さんは“リク王の孫”とひどい罵声を浴びてたわ…国の人達はリク王を嫌ってるみたいよ…。」

兵隊「10年前のあの日…リク王が国民達からの信頼を一夜にして失うあの事件の“真相”を国民達は知らない…!! 王は最後まで国を守ろうとしていたのだ…!!」

ドフラミンゴはリク一族を根絶やしを目論んでたが、兵隊はリク王の血を引くレベッカを連れて、長い長い逃亡を続けたという。
しかし、とうとう捕まり、彼女はコロシアムの晒し者になってしまったのだ。

兵隊「リク王の信頼とレベッカの命を守るのなら私はいつどこで死んでも構わない!! この戦いに全てを懸けている!!! 私はレベッカの母親を守れなかった…!!あの日の事は片時も忘れない!!オモチャになった私をあの子は憶えていない…!!」

ウソップ「お前…まさか…!?」

兵隊「そう…私は…レベッカの実の父親だ!」

「「「!!?」」」 

 

第131話:天夜叉VS雪害

-一方、サニー号では-

ドンキホーテファミリーの暗部・ジョーラの襲撃に遭っていた待機組は、ブルックの機転によって見事撃破。念のためフルボッコにした後、シーザー引き渡し場所のグリーンビット海岸に到着しようとしていた。

ナミ「トラ男は見える?」

チョッパー「うーん、霧でよく分かんねェ…変わった森が見えるけど。」

ナミ「…一応トラ男からシーザーを受け取れって連絡来たけど…その後どうするの?」

ブルック「少なくともドフラミンゴに狙われますね…え!? コワイ!!!」

その時、サニー号は海の中から攻撃を受けた。
ふと海を確認すれば、巨大な魚影があちこちに。

ジョーラ「とと…闘魚の群れざます~~~~~っ!!!! 島に近づきすぎたのざます!!!!」

「「何それ!!?」」

ジョーラ「軍艦を沈める“殺人魚”ざますわよォ!!!!」

『え~~~~!!?』

サニー号が闘魚の群れに襲われている頃、ローはシーザーを引き連れ、逃げるフリをし、ドフラミンゴを誘導していた。
ローは目指すは、グリーンビットに架かっている橋。今、船が狙われたら確実に待機組が全滅するため、橋までドフラミンゴを引きつけて船が逃げる時間を稼ぐという訳だ。

ロー「(ライコウさん、すまねェ…大幅に予定が変わっちまう!!)」

ドフラミンゴ「何だ、橋を渡る気か? ドレスローザへ行けば完全に俺のホームだぞ!?」

ローはドフラミンゴがサニー号に気付かぬよう船から引き離すよう逃げるが、運悪くドフラミンゴは闘魚に襲われて悲鳴を上げるナミ達の声に気付いてしまう。

ロー「っ…!! マジか…!!」

ドフラミンゴはローの狙いを察し、悪意丸出しの笑みを浮かべて標的を待機組に変更しサニー号へ向かった。

チョッパー「ドフラミンゴが飛んで来る!!!!」

ナミ「ええええええ!!? 何この悪夢!!? 私達死んじゃうの!!!?」

ジョーラ「若様~~~!!!」

ドフラミンゴ「フッフッフ、よく見てろロー!! 目の前で同盟の一味が無残に死ぬ姿を!!!」

ドフラミンゴがサニー号の上空まで瞬歩で着いたその時だった。

ドフラミンゴ「…ん?」

ドフラミンゴ目掛けて高速で接近する何かが現れた。
その正体を確認したドフラミンゴは、驚愕した。

ドフラミンゴ「お前は……シュガーの…!?」

そう…ライコウの嫁のモネだ。

モネ「ハッ!」

ドフラミンゴ「っ!?」


ドンッ!


武装色の覇気を纏ったモネの蹴りを、ドフラミンゴは武装硬化した左脚で容易く受け止める。

モネ「13年半ぶり…かしら。」

ドフラミンゴ「…フッフッフッフッ…!! これは驚いた…まさかそんな姿で俺の前に現れるとはなァ…!」

13年近くの因縁の再会に、ドフラミンゴは驚きつつも笑みを深める。
それを見ていたナミ達は、初めて遭遇する人面鳥(ハーピー)に戸惑いつつもローの仲間だと察し安堵する。

ドフラミンゴ「フフフフフフ…お前も覇気を扱えるとはな…!! ここへ来たのも、あの化け物の差し金か?」

モネ「…どうでしょうね。」

ドフラミンゴ「フフフフ!! まァいい、俺の邪魔をするならお前から殺すまでだ!! “五色糸(ゴシキート)”!!!」

ドフラミンゴは左手の指を爪を立てるように構え、指先から5本の糸を出して引き裂こうとする。
しかしモネは、紙一重で雪となって回避する。

モネ「“たびら雪”…。」

モネは白く大きな翼を氷の刃に変える。

モネ「“肌刀”!!」


ガキィィン!!


モネは翼で斬りかかるが、ドフラミンゴはそれを真っ向から受け止める。
さらに加えてモネは踵落としを炸裂させるが、ドフラミンゴはピンクのコートで防ぐ。

ドフラミンゴ「ウゥ…!! 想像以上に強力だ、フフフフ…!!」

ドフラミンゴはその後も続くモネの連続攻撃を軽々と受け流し、右手の中指を向けると、モネの動きが突然止まった。

モネ「っ!! やっぱりね…!」

攻撃が出来なくなったモネ。
彼女の真下のサニー号では、高笑いするジョーラと慌てふためくナミ達の声がする。

ドフラミンゴ「フフフフ!! 余興としては満足だ…礼を言う。」

モネ「……まさか私だけが助っ人だと思った? 天夜叉。」

ドフラミンゴ「何?」

その時、空中を蹴ってドフラミンゴに近づく男が。
そう…つい先程までヴァイオレットことヴィオラと情熱的な恋をしていたサンジだ。

サンジ「レディーとウチの仲間に近寄るんじゃねェ!!」

サンジが繰り出した蹴りをドフラミンゴは右足で受け止める。

ドフラミンゴ「今度は“黒足”か…フフフフ!!! お前ら2人をまともに相手取るのは面倒だ、まずは待機組(アイツら)からだ!!」

非情にも、ドフラミンゴはモネとサンジではなくサニー号待機組を狙って鞭のようなものを伸ばし構えた。

ドフラミンゴ「フフフフ、終わりだ!! “超過鞭糸(オーバーヒート)”!!」

ロー「“シャンブルズ”!!」


ガキィィン!!!


ドフラミンゴは鞭をサニー号に向けて放ったが、その鞭は瞬間移動してきたローに受け止められた。

ドフラミンゴ「ロー!!」

ロー「ドフラミンゴ!! これを見ろ!!」

ジョーラ「ひィ~~~!! ロー!! あーた何て事!!」

ドフラミンゴ「っ………!!」

ローは、ジョーラの首もとに刀を当て、ドフラミンゴの動きを止めさせる。
そんなロー達を遠くから見てるのは、“藤虎”イッショウ率いる海軍だ。

イッショウ「“災害”と呼ばれる4人の師団長の1人…まともに相手どりゃあ、思わぬ数の兵を失いそうだ……皆さん、ドレスローザへ先回りしやしょう。」

『え!?』

イッショウ「戦局が…移りそうだ。 …方角の指示を!」

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一方、コリーダコロシアムではルフィが窓ごしなれどゾロと錦えもんに再会していた。
百獣海賊団三妖星のムラマサも同行しており、会話が盛り上がっている。

ムラマサ「ほぅ、彼らが“麦わらの一味”ですか……成る程、副船長が見込んだ者達なだけあるようですね。」

ルフィ「だろ!? ニシシシ!!」

ムラマサ「……ところで、途中で泡を吹いて倒れた彼は?」

ルフィ「大丈夫だろ。」

ムラマサの視線の先には、バルトロメオの姿が。
実はバルトロメオはルフィの大ファンであり、今回のショクショクの実をルフィに献上しようとしていたのである。そんな彼の協力によって、ルフィはゾロ達と再会できたのだ。

ルフィ「トサカの奴が案内してくれてよ!!」

ゾロ「そうか……で、アイツは?」

ルフィ「それが途中で泡吹いちまって…。」

ムラマサ「…!」

ふとムラマサは、強い殺気を放ちながらルフィの背後に周り、ゆっくりと近付く男に気付いた。

べラミー「(………やっと見つけた…!! アイツを殺せば…俺はドンキホーテファミリーの幹部に…!! 悪ィな…“麦わら”!!)」

そう、ドフラミンゴからルフィ抹殺の指令を受けたべラミーだ。

べラミー「(だが問題はもう1人……ムラマサだ!)」

べラミーが警戒するのは、ムラマサである。
四皇の中でも最強と名高いカイドウの一味「百獣海賊団」。その中でも最強クラスの実力者がルフィについているのだ。
つまり、ムラマサの隙を突かねばルフィは殺せないという訳だ。

べラミー「(焦っちゃあ奴に仕留められる……慎重に…。)」

?「きゃー!! いたいた、ベラミー!!」

ルフィまであと少しという所で背後から声がし、ルフィに気付かれないか焦るベラミー。
声の主はドンキホーテファミリーの幹部・デリンジャーだった。

デリンジャー「“暗殺”終わった? あ! …まだなの?」

べラミー「…デリンジャー!! 何の用だ!?」

デリンジャーはベラミーの心中などお構いなしに大きい声で喋る。

デリンジャー「ん~~~あなた“暗殺”どうせしくじるし! 目障りだからトドメ刺しておけって、若様が…!! あ!! コレ言っちゃダメなんだった!! きゃー! ごめーん!!」

べラミー「何だと………!!?」

デリンジャー、衝撃の爆弾発言。 

 

第132話:ギネスVSランファ

 
前書き
タイトル抜かしてましたね、申し訳ありません。 

 
-プリムラ-

「離れろォォォォ!!! 大将が暴れるぞォォッ!!!」

「住民の避難を急げェ!!! 戦闘に巻き込まれないように迅速に!!! 海軍にも通告するんだ!!!」

逃げ惑う人々と、避難誘導をさせる陸軍兵士。
今、プリムラでは「政府に従する女」と「政府を憎む男」が激突していた。

ランファ「ハァッ!!」

ギネス「フンッ!!」


ドゴォォン!!


番傘を振り下ろす陸軍大将(ランファ)と、刀で真っ向から受け止める世界的犯罪者(ギネス)
ギネスは「ドフラミンゴ側の戦力を削ぐ」という目的の下、政府側の立場である陸軍をちょっかい……ではなく牽制しに暴れていた。その最中にランファも動き出し、こうして激闘を繰り広げているのだ。

ギネス「男も女も、やっぱ一対一(サシ)で語るのが一番だ。 世の中口じゃあ手に負えねェ喧嘩もあるしな。」

ランファ「男でも女でも拳で語ろうとする外道に言われたくないわ。 それとも女性には(グー)ではなく平手打ち(パー)で語るの?」

ギネス「生憎だが、俺ァ差別が嫌いだから両方グーだな!!!」

ギネスは覇王色を放って威圧する。
いきなりの強大な威圧感に一瞬怯んだランファは、咄嗟に身を引き番傘を勢いよく振り払った。
猛烈な風に見舞われると共に瓦礫が襲いかかり、視界が奪われる。

ギネス「(目くらましか……定石なのは…背中!!)」

ギネスがそう思ったと同時に、背後にランファが現れて番傘を武装硬化させて振るった。
瞬時にギネスは刀を逆手に持ち替え、弾く。

ランファ「くっ…!!」

ギネス「らァッ!!」


ズバァァン!!


ギネスは地面を抉るほどの斬撃を放つが、紙一重でランファは躱した。
しかしその後もギネスの猛攻が続く。

ギネス「“無間刀”!!」

ギネスは笑みを深めると、異空間を創り出し、そこに触れたランファの背後へ瞬間移動して斬りかかった。

ランファ「“ベクトルストーム”!!」

ランファは足元から円状の範囲に矢印を自分の周りに巻きつけて身を守る。
覇気も纏ってるため、ギネスに両断されずに済んだ。

ランファ「“ベクトルプレート”!」

ランファがそう唱えると、ギネスの真下に影のごとく巨大な矢印が発生してギネスは後ろへ吹き飛ばされる。
しかし即座に体勢を立て直し、刀を構える。

ランファ「“ベクトルアロー”!!」

ランファは自身の周囲に無数の矢印の帯を作り出し、それを一斉にギネスに向かって飛ばした。

ギネス「“次元刀”!!」

ギネスは次元刀を放ち、一太刀で無数の矢印を両断・粉砕する。

ギネス「ちっ、埒が明かねェや…。」

ギネス「アロアロの実か…でも空間と矢印じゃあ、能力の次元が違いすぎるぜ?」

ランファ「だったらそれを覆すまでよ。」

するとランファは、とんでもない行動に出た。


バゴッ!


ランファ「あなたのようなヤンチャ者には相応しい…でしょうっ!!」

ランファは持ち前の怪力を活かし、あろうことか家を投げつけてきた。

ギネス「いやいやいやいや!! 冗談だろ!!? ガープかよ!!!」

ランファ「あんな老いぼれと一緒にするな!」

ギネスとランファの乱闘は、被害を拡大させつつ続行する。

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一方、ライコウはコラソンと合流していた。

ライコウ「さて、これからどう動くか。」

コラソン「ローにドフィと藤虎の相手をさせたのは、全てアンタの思惑のか…?」

ライコウ「黙っていたことは悪かった。 だがこれぐらいしないとドフラミンゴを欺くことが出来んしな。」

ライコウは「それに俺はローを信じてる」と付け足しながら呟く。
ルフィとローの主役とも言える2人が囮というまさかの展開に戸惑いつつも、コラソンは「あのドフィだからな……」と頭を抱えながら言う。

ライコウ「一応手順通りなら…そろそろドフラミンゴに拉致されるだろう。」

コラソン「なっ……!?」

ライコウ「だがそれもまた俺の大きな狙いだ……!! 百獣海賊団でも強力な部類にあたる戦力(ロー)を削いだんだ、その気になれば俺を相手にローを人質にした交渉に持ち込むことも出来るだろう。 だがその思い込み(・・・・)がドフラミンゴを潰す数少ない手段。 思い上がり程、酷すぎる誤算を生むからな。」

ライコウはドフラミンゴにハメられた振りをすることで、ドフラミンゴに作戦に真の狙いを悟られないように活動するつもりだ。

ライコウ「コラソン、俺は少し単独行動をする。 お前は“オモチャの家”に先回りし、援軍が来るまで身を潜めてろ。」

コラソン「!」

ライコウ「本腰入れてやるとするさ……。」













-同時刻、新世界のある海-

百獣海賊団の古株である“旱害のジャック”は、自らが所有するマンモス号に乗って部下達と共にドレスローザを目指していた。
そんな中、ジャックはソファーに腰かけ新聞を見ていた。

ジャック「……七武海脱退は誤報…舐めたマネを…。」

ジャックは苛立ちを露にしており、部下達もいつブチギレてもおかしくないジャックに肝を冷やしている。

ジャック「これが海賊のすることか? シープスヘッド。」

シープスヘッド「いえ…!! ただの犯罪者の情報操作です…!!」

ジャック「だよなァ……コイツらを海賊と呼んで許される訳がねェ……!!」

ジャックは新聞をビリビリと千切って捨てる。

「ジャック様……ドフラミンゴを潰せば、次の敵は誰なんです?」

ジャック「目星はついてる……ヴィンスモークとビッグ・マムだ。」

『!!?』

ジャック「ヴィンスモークが、“SMILE”に手を染めてねェとでも…? 違う! 奴らは人知れずドンキホーテから購入し、クローン兵共に食わせて新たな部隊を編成しているだろう……!!」

ジャックの仮説に、一同は冷や汗を流す。
ヴィンスモーク家の目的は、“北の海(ノースブルー)”の完全征服…そのためにドフラミンゴから大量のSMILEを購入していても何ら不思議はない。

ジャック「まァ、んなモン今はどうだっていい。 俺達の目的はドレスローザでライコウさん達を回収すること…邪魔する奴は海軍大将だろうと関係ねェ!! まとめて潰してやる!!!」

ジャック、動く。 
 

 
後書き
【ランファ】
身長:298cm
年齢:33歳
誕生日:7月7日
容姿:黒髪ロングで青い瞳が特徴
武器:番傘
服装: チャイナ服の上に陸軍のコートを羽織っている
好きなもの:ボリュームのある料理、煙草(煙管)
嫌いなもの:味のない食べ物
所属: 世界陸軍/大将
異名:“紅傘”
イメージCV:豊崎愛生
性格:基本的にはクールだが、意志が強い。恩人であるジルドを敬愛してると共に、彼の命令以外は基本従わない極端な一面もある。
戦闘力:超人系悪魔の実でも最高レベルの「アロアロの実」の能力者で、矢印を操ることが出来る。また、番傘を振り回しての接近戦を得意としており、武装色の覇気も扱える実力者。見かけによらずバージェス並の怪力で家を根こそぎ持ち上げ投げ飛ばすことも。
モデル: 5年後神楽(劇場版銀魂完結編)、江華(銀魂)


ランファの能力は、ソウルイーターのメデューサの能力ですね。 

 

第133話:殿

コロシアム前では、“麦わらの一味”が電伝虫で作戦会議を始めていた。
傍にはバスティーユ率いる海軍が見張っているが、大将“藤虎”が来るまでまだ泳がせておくつもりのようだ。

サンジ《これで百獣海賊団以外は全員揃ったな、状況はどうだ?」

フランキー《こちらフランキー、ウソップとロビンが一緒だ。 俺達は今、ドフラミンゴと敵対するリク王軍ってのと一緒にいる。 しかも小人のな。》

サンジ《小人の軍隊だと!?》

サンジが電伝虫越しでびっくりする中、事情を説明するフランキー。

フランキー《ルフィ、コロシアムの前でおかしな兵隊のオモチャに会ったの覚えてるか?》

ルフィ「えっ?小人って言わなかったか?」

フランキー《そのオモチャな、実はこの軍の隊長だったんだ。 まさに今日ドフラミンゴと闘り合うらしい!!

ルフィ「ああ、あのオモチャの兵隊か!! レベッカが止めようとしてた奴じゃねェか!!」

フランキー《あァ、そうだ! レベッカと話したのか?」

ルフィ「ああ! めっちゃイイ奴だったぞ!! お金ないクセに3つも弁当買ってくれたんだぞ!! それなのに試合が始まった途端、ヤジがスゲェんだ!!腹立ってしょうがねェよ!!」

フランキー《あァ、同感さ。》

ルフィの言葉に、サンジは押し黙りフランキーは同感の意を示す。
するとその時、別の電伝虫が鳴り響いた。

ゾロ「何だ?」

サンジ《これは…百獣海賊団の電伝虫からだ!! ルフィ、フランキー! 出てくれ!》

サンジはルフィとフランキーそう告げる。
ルフィはゾロ達と顔を見合わせ受話器を手に取ると…。

コアラ《もしもし? こちら百獣海賊団双将軍のコアラです!》

ルフィ「? ソーショーグン?」

コアラ《“麦わらの一味”の皆さん、聞こえてますか? 私はつい先程、ライコウさんから指令を受けたので説明します!!》

『!!!』

コアラはライコウからの指示を説明する。

コアラ《これから皆さんは“リク王軍”と共に行動してください!! 海軍と陸軍はライコウさんが何とかしますので!!》

サンジ《コアラちゃんと言ったか!? 待ってくれ、それ以前にこの通話は…!?》

コアラ《“白電伝虫”に接続してあるので盗聴の心配ありません! それよりも、ルフィ君達は急いでください!! 今そちらに海軍大将が向かってます!!》

「「「海軍大将!!?」」」

海軍の最高戦力がドレスローザに上陸し、ルフィ達の下へ向かっているというコアラの情報を聞き、ルフィ側は騒然とする。
海軍大将ともなれば、まともに戦えば窮地に追い込まれるので早く逃走せねばならない。

錦えもん「そ、それは非常事態ではござらんか!!?」

ゾロ「……まァ、来ねェ方がおかしいけどな…!!」


ズバァ…ン!! ガララ…!!


ゾロ「ん? 何だ!? 町が…!?」

錦えもん「んん!?」

ルフィ「?」


ドカァン!!


「「「おわァ~~~っ!!?」」」

コロシアム付近の建物が次々崩壊していく中、錦えもんとゾロのいるコロシアム前に爆音と共に瓦礫と土煙が舞い、コロシアム前は騒然とする。
土煙が晴れると、そこには仁王立ちするドフラミンゴと力無く横たわる血まみれのローが。
ドフラミンゴは動く力もないローに銃口を向ける。

ロー「ハァ……ハァ……!」

ドフラミンゴ「ガキが…図に乗り過ぎだ…!!」

ドフラミンゴはローに向け、銃弾を放ち止めを刺そうとする。
その時だった。


チュドォォン!!


『!!?』

今度は、ドフラミンゴの隣で何かが地面に衝突し爆音を響かせる。
土煙が晴れると、何とランファとギネスがいた。
馬乗りの体制でランファの動きを封じるギネスと、ギネスに馬乗りにされても首元に番傘の先端を付きつけ一瞬の隙を狙おうとするランファ。互いに殺気を放っており、一瞬たりとも気が抜けない状況のようだ。

ランファ「……どきなさい、童貞が。 頭吹き飛ばしたいの?」

ギネス「……図に乗んなよ雌豚、てめェの首なんざその気になりゃあとれんだよ。 開発すんぞコラ。」

互いに色んな意味でギリギリの暴言を吐く。

ドフラミンゴ「……フフフフ!! フッフッフ!! こりゃあ面白ェ、まさかてめェまで潜り込んでたとはな、ギネス・スパーツィオ。」

ロー「(ギネス屋……!?)」

ギネス「“天夜叉”か……どうやら互いにお取込み中のようだな。」

ギネスはランファを解放し、ドフラミンゴと向き合う。
しかし刀は鞘に納めておらず、ドフラミンゴとも戦う気満々だ。

ギネス「……妙な話じゃねェの。 四皇の幹部ともあろう若者に、何故そこまでこだわる。」

ドフラミンゴ「フフフフフ…ローは元々俺の部下だ、ケジメは俺がつける。 それだけだ。」

するとギネスは刀の刃先をドフラミンゴに向けて力を込める。
それと同時にドフラミンゴはローを掴んで退避すると、先程までドフラミンゴとローがいた場所が大きく陥没した。

ドフラミンゴ「フフフフ!! 藤虎と同じ技か、これは油断しちまったな!」

ギネス「ウソつけ!!」

ゾロ「キン!! トラ男を取り戻すぞ!!」

錦えもん「承知した!!」

ドフラミンゴに向かって、ゾロと錦えもんが攻撃を仕掛ける。

ドフラミンゴ「“海賊狩りのゾロ”に…“狐火の錦えもん”だな? “モモの助”らしきガキを、さっき船で見たぞ!」

錦えもん「っ!!?」

ゾロ「のるな!! 渡しゃしねェ!!!」

錦えもん「無論でござる!!!!」

ドフラミンゴ「フッフッフ!」

ゾロはドフラミンゴに素早く斬りかかるが、その人達はドフラミンゴの目の前で同じ剣士に止められた。
ゾロの太刀筋を読み、巧みに止めた剣士…それは盲目の海軍大将“藤虎”ことイッショウであった。

ギネス「“藤虎”!!?」

ランファ「イッショウ!!」

イッショウ「フンッ!」


ベコォン!!


ゾロ「うォわァッ!!?」

イッショウはゾロに地面が陥没する程の強力な重力をかけ、奈落の底へ圧し沈めた。
とんでもない光景に呆気にとられた錦えもんは動揺し、その隙をドフラミンゴに突かれ“五色糸”で斬りつけられてしまう。

ルフィ「錦えもん!!! ゾロォ!!! 今行く…てェ…この檻…海楼石なんらよな~…。」

ルフィはとっさに窓枠に頑丈に付けられた海楼石の檻を掴み、ふにゃっ…という音を立て、倒れてしまう。
一方ゾロは、一度穴に墜ちたものの藤虎目掛けて斬撃を飛ばす。しかし相手は海軍大将……イッショウは見聞色の覇気で察知し、しっかりガードする。

大将殿(・・・)ォ!!!』

イッショウ「飛ぶ斬撃…これは凶暴……市民の皆さんを、なるべく遠くへ!!」

イッショウの一瞬の隙を突き、ゾロは持ち前の人並みはずれた運動量で穴から脱出する。
だが重力の攻撃でかなり身体に負担がかかったのか、息が荒い。

ゾロ「海軍大将は、あの時の盲目の賭博オヤジが…!!」

ルフィ「賭博のおっさんが“大将”~~~~!!?」

イッショウ「最善はどうも、御一行さんに親切にして頂いたってェのに恩を仇で返す様で…何とも…因果な渡世にござんす…!!」

イッショウは仕込み杖を納め、ルフィらに対し挨拶をする。
アカシアの町で出会った盲目の男性が海軍大将と知り、ルフィ達は困惑する。勿論、一連の流れはサニー号待機組とリク王軍に伝わっており、驚愕している。
するとイッショウは岩に乗りながら宙に浮き、ドフラミンゴもローを掴んだままイトイトの実の能力で宙に浮く。

ドフラミンゴ「フッフッフッフ!! 話は王宮でだ、藤虎!! 俺に協力すりゃ、小僧共の首はくれてやる。」

イッショウ「…話ァ聞きやすが、天夜叉のォ…判断はそれからで。」

ドフラミンゴとイッショウはローを連れ、ドレスローザの王宮へと向かう。
その直後にバスティーユがゾロ達の捕縛を命じ、海兵達が一斉射撃する。

ゾロ「……バレてんな…ひとまず逃げろ!!」

その時、コートをなびかせてギネスが現れて銃弾を全て斬り落とした。

ギネス「ここは俺が殿を務める。 行け。」

ゾロ「…すまねェ!!」

錦えもん「かたじけないっ!!!」

ギネスは囮役を買って出ることを告げ、錦えもんとゾロは礼を言いながら逃走する。

バスティーユ「!! ギネス・スパーツィオ…!!」

ランファ「何故そこまで加担するの? どこに接点が?」

ギネス「旦那の知り合いなんだ、手出し無用で頼む。」

ギネス、人生初の殿を担う。 

 

第134話:“3枚のカード”

ギネスが殿を務め、海軍及び陸軍と戦闘を繰り広げている中、ゾロ達はようやくルフィに追いつきこれからのことを話し合っていた。

ゾロ「おい、ルフィ!!! 早く出口を探せ!! 俺達ァこの辺り逃げ回って待ってる!!」

ルフィ「分かった!! 急ごう! トラ男の“声”、まだ消えなかった!!」

コアラ《え!? まさかロー君が連れ去られたの!?》

錦えもん「申し訳ないっ!!」

コアラ《っ……ロー君なら大丈夫だろうけど…。》

その時、電伝虫から悲鳴が聞こえてきた。
どうやらサニー号待機組で何かが起きたらしい。

ルフィ「…今度は何だ!!? ブルック達だ!! サニー号!! どうした!!?」

チョッパー《“ビッグ・マム”の海賊船だァ!!!》

『!!!?』

サニー号待機組の絶叫した理由。
それは、サニー号の数十倍はあろうかという巨大な船が迫っていたからなのだが、その船の正体が、何とカイドウやシャンクスと同じ海の皇帝達「四皇」の一角である“ビッグ・マム”の海賊船だったのだ……!!

ブルック《四皇の船が何でこんな所にィ~~~~~!!?》

ルフィ「ホントか!!!? “ビッグ・マム”の船ェ!!!? どういう事だ!!? “ビッグ・マム”も乗ってんのか!!?」

コアラ《えェーーーーーーーッ!!!? ちょっとォ!! 聞いてないけどォ!!?》

通話中のコアラも、思わず絶叫してしまう。
“ビッグ・マム”ことシャーロット・リンリンの本物の家族(・・・・・)を中心に構成されたビッグ・マム海賊団は、今の新世界で最大勢力を誇る大規模な海賊団であり、個の武が桁外れな百獣海賊団とは違い数で勝っている。
大幹部以上の者が万が一サニー号に迫っている船にいたら、全滅は間違いないだろう。

ウソップ「“ビッグ・マム”!!? ルフィ!! お前が魚人島で喧嘩売ったから!!!」

コアラ《喧嘩売ったの!!? カイドウさん並みにぶっ飛んだ船長さんなのルフィ君は!!?》

何気に毒を吐くコアラ。

サンジ《狙いはシーザーのようだ!!》

その直後、砲撃の轟音が電伝虫越しで響き渡り、サニー号が攻撃されていることが知れ渡る。

サンジ《くそォこんな時に!! ドレスローザから遠ざかって行く!!》

フランキー《大丈夫かサンジ!!? だがオイ! “四皇”なんてこの国へ引っぱって来んなよ!? 国中パニックになって兵隊達の作戦が狂っちまう!!!!》

コアラ《ドフラミンゴを潰すだけなら連れてきていいけど、こんな時に戦争するのはごめんだからね!!!》

色々大パニックの一同。
その時、再び電伝虫が鳴り響く。

コアラ《ライコウさんからだ……皆、聞いて!!》

サニー号待機組も、リク王軍も、ルフィ達も、ライコウの電伝虫を受話器を受け取る。

ライコウ《ローはどうした、上手く連れ去られたか?》

コアラ《そのよう……って、えェ!!? 今、何て言いました!!?》

ライコウ《だからローは計画通りドフラミンゴに連れ去られたのかって訊いてんだ。》

ライコウの爆弾発言が炸裂し、皆はさらにパニック。
何と今までの会話はトラブルではなく、ライコウの思惑通りに動いていたのだ…!!

サンジ《まさか、ローがドフラミンゴに連れ去られることは想定内だったのか!?》

ライコウ《そう動くようローに命じただけだ。 ドフラミンゴを本気(ガチ)で騙すにはこれぐらいやらなきゃダメなんだよ。》

ライコウの真意を知り、錦えもんは「何と恐ろしき男…」と呟く。

ライコウ《いいか、俺達はドフラミンゴと“3枚のカード”の奪い合いをしていることを伝えるぞ。》

『!!!』

ライコウの言う“3枚のカード”とは「シーザー」、「工場破壊」、「モモの助」のことである。
「シーザー」は人造悪魔の実“SMILE”を製造できる唯一の男。「工場」は新世界のパワーバランスに大きく影響する代物。「モモの助」は何かと隠し事があるのでそれが何らかの関係に繋がるとされる子供。
工場は未だに破壊できてないのでドフラミンゴの物だが、残り2つはここにいるサニー号にある。

ライコウ《俺がローにドフラミンゴと藤虎を相手取るよう命じたのは、工場破壊の“時間稼ぎ”のためだ!!》

ナミ《成る程…!》

ライコウ《モネ、聞いてるか!?》

モネ《えェ。》

ライコウ《お前のポケットに緊急集結地である“ゾウ”へのビブルカードがある筈だ、切れ端渡して向かわせろ!!》

モネ《了解。》

ライコウ《ルフィ、お前ビッグ・マムに喧嘩売ったんだよな? どの道ぶつかる相手だ、反撃するよう言っておけ!!》

ルフィ「おぅ!」

フランキー《おーーーし!! 工場破壊はこっちに任せろ!!!!》

ドフラミンゴ討伐、ついに本格化。

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散らばった麦わらの一味それぞれの明確な役割が子電伝虫や電伝虫で伝えあっている頃、ドフラミンゴにルフィ殺害を命じられ、ルフィの命を狙ったベラミーは、同じくドフラミンゴにベラミー殺害を命じられたデリンジャーに殺されかけていた。

デリンジャー「ごめん、ごめん! 楽に殺してあげようと思ってたんだけど、急所外しちゃったわ♪」

べラミー「し、信じねェ……俺はジョーカーの前で忠誠を誓ったんだ!! 作り話してんじゃねェぞ、デリンジャー!!!」

べラミーは“スプリング死拳(デスノック)”でデリンジャーを攻撃するが、いとも容易く躱されてしまう。

デリンジャー「気持ちはよく分かるわ…でもウチのファミリーに足手纏いはいらないの!」

デリンジャーは渾身の蹴りを見舞い、べラミーにダメージを与える。
その後も蹴り続け、べラミーは虫の息に。

デリンジャー「バイバイ、べラミー…!」

デリンジャーはべラミーの顔に狙いを定め、止めを刺そうとする。
その時だった。


ゾクッ!


デリンジャー「っ!!?」

濃厚な殺気を感じ、デリンジャーはべラミーから身を引く。
それと共に、何者かが2人の下へ近づいていく。

デリンジャー「誰!!!?」

デリンジャーは戦闘態勢に入りながら叫ぶ。
そこへ現れたのは、意外な人物だった。

ムラマサ「おや、バレちゃいましたか。 戦力は削っておいた方が後が楽だと思ってましたがね…。」

デリンジャー「ムラマサ…!!?」

そう、百獣海賊団三妖星の一角・ムラマサだった。

デリンジャー「そこをどきなよ…ベラミーを蹴り殺すんだから…どきなさいよ!!!!」

デリンジャーは高速で蹴りを見舞うが、ムラマサはそれを手だけで捌いている。
圧倒的な実力の差にべラミーは驚き、デリンジャーは舌打ちする。

デリンジャー「そもそも、これはウチのファミリーの問題なのよ!!」

ムラマサ「それが何か?」

デリンジャー「………この野郎が…!!」

その時、デリンジャーの電伝虫が鳴った。
どうやら最高幹部のディアマンテかららしい。

デリンジャー「ちょっと! 今お取込み中!!」

ディアマンテ《何だ、べラミーをまだ殺ってねェのか? ノロマめ……まァいい、ベラミーは後回しだ! 次もドフィの指令だ! ラオG達と“オモチャの家”を守れ!! 至急だ!!》

デリンジャー「っ……覚えてなさいよ!! ドレスローザから生きて出さないわ!!」

ムラマサ「はて…それはどちらのセリフか…。」

ムカムカしながら、デリンジャーはその場を後にした。

ムラマサ「さて……そこのお兄さん、彼を医療室へ運んでくれませんか? 私もそろそろ出番なので。」

ムラマサがそう言うと、物陰からバルトロメオが出て来た。
先程の会話を聞いていたのか、何も言わずべラミーの下に駆けつけた。

べラミー「………………!! 余計なマネすんな……俺はもう…生きる目的を失ったんだ!!! 大体何の筋合いでお前が俺を助ける…!!?」

ムラマサ「私としてはここで君の息の根を止めても何とも思いませんが……ルフィ君が“友”と呼んでいる以上は手出ししません。」

べラミー「!!!」

ムラマサはそう言い、マントをなびかせてその場を後にした。
そんな彼らを、サボは気配を消して見つめていた……。 

 

第135話:“ドレスローザSOP作戦”

-リク王軍決起本部にて-

兵隊「この国の実態は説明した通りだ!! そして闇に押し込められた悲劇を打ち壊す作戦を!! 名付けて、“ドレスローザSOP作戦”!!!!」

兵隊は10年の年月を費やして立てた“ドレスローザSOP作戦”について説明を始める。
ドレスローザには巨大な地下があり、そこには闇取引きの為の交易港と工場があり、トンタッタの仲間達及びオモチャにされた者達が常時労働を強いられているとのこと。
リク王軍はそこへ1年かけて掘った「地下通路」を使い侵入し、彼ら全員を救い出して設備を破壊し、ドフラミンゴファミリーを打ち倒してドレスローザをリク王の手に還すという。
これが“ドレスローザSOP作戦”の目的である。

ウソップ「簡単に言うがお前…。」

兵隊「計画は勿論“理想”だ!! そもそもこれから数十分後のドレスローザがどうなるか誰にも予想できない! まず我らがやらねばならない任務はたった一つだけ!! ドフラミンゴの部下にして我々の姿をオモチャに変えた張本人“ホビホビの実”の能力者の意識を奪う事だ!!! すると何が起きると思う!?」

ロビン「え…!! もしかして…“魔法”が解ける…!?」

兵隊「そうだ!! このドレスローザにいる全てのオモチャ達が一斉に人間の姿を取り戻す!!! 同時に国中の人々も失っていたあらゆる記憶を取り戻す!!! …そうなった時もう我々でさえ何が起きるか予測できない!!」

どれだけの人々が共に戦ってくれるのか。
ドレスローザの国民達は一体何を考えて、如何なる行動に出るのか。
全ての悪事が露見したドフラミンゴらドンキホーテファミリーはどう出るのか。
ドフラミンゴの悪事を知った“世界皇帝”エイセイ・海軍大将“藤虎”率いる「海軍」・陸軍大将“紅傘”率いる「陸軍」はどう動くのか。
少なくとも分かる事は…このドレスローザが一時大パニックに陥るという事だけだ。

ウソップ「その“ホビホビの実”の能力者ってのは今どこに!? 強ェのか!?」

兵隊「トンタッタの偵察部隊によれば、現在まさに地下の交易港にいるドンキホーテファミリー・トレーボル軍特別幹部“シュガー”がそうだ。 触れた者をみなオモチャに変える少女で、見た目は幼いがこの実の能力者は食べた瞬間から歳をとらないそうだ! 最重要人物につき…常に最高幹部トレーボルが護衛している。」

ロビン「…じゃあ…その子の意識を奪いさえすれば…。」

兵隊「そうとも!! シュガーを死ぬ程驚かせ気絶させる…それこそが“(S)シュガー(O)おったまげ(P)パニック作戦”!! 略してSOP作戦だ!!!」

ロビン「……。」

どうやらダジャレ的意味合いで「SOP作戦」ってネーミングにしたようだ…。

フランキー「よし!燃えてきたぜ!! “フランキーヘアサロン”!! 戦闘ヘア!!」

ウソップ「敵が少女なら、俺について来いィ!!!」

フランキー「負け戦はさせやしねェ!!! 地下通路へ案内しやがれチビ共ォ~~~~!!!!」

少女が相手と聞いて俄然やる気が出て来たウソップ。
髪型を変えて戦闘準備を整えるフランキー。
そんな2人に対し、ロビンは冷たい目で見ていたのは秘密だ。

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-コロシアム内-

出口を探すルフィ。
血まみれのベラミーを医務室に連れて行こうとベラミーをはこびながら自分の夢を語るバルトロメオとゾロ程ではないが方向音痴の為、なかなかコロシアム出入り口にたどり着けないルフィがさっきぶりに再会を果たす。

ルフィ「おお!! トサカの奴~~~!! いいトコであった!!」

バルトロメオ「おわあ~~~!!! ル…ル…ルフィ先輩~~~~…!!!! ハァ…ハァ…ル…ルフィ先輩…さっきァゾ…ゾロ先輩とお会いになら…なられ…!!」

ルフィ「ああ、会えた! ありがとな!! ほんで俺、急用ができて外に出てェんだけどよ!! 出口がなくて…。」

ルフィはバルトロメオのおかげでゾロ達と再会できたため、感謝しつつコロシアムから出る方法について尋ねるが…。

ベラミー「このコロシアムに…出口なんかねェよ…!!」

ルフィ「あ! ベラミー!! あれ? お前傷ひどくなってねェか?」

べラミー「選手は…一度入っちまえば二度と出られねェ…!! 探すだけ無駄だ…!!」

その事実を知り、ルフィは驚愕しつつもべラミーがドフラミンゴの部下であることを思い出し、何か知らないかを訊く。

べラミー「…俺は…今から外に出る…ついてくりゃもしかしてお前も…出られるかもな…。」

ルフィ「そうか ありがとう!! 連れてってくれんだな!!!」

べラミー「お前が勝手について来りゃ…偶然そうなるって話だ…!! ……俺にボスを裏切れってのか…!? ……俺はドフラミンゴを裏切れねェ…!!!! ……あの人を尊敬してる…!!!」

バルトロメオ「おいおい…お前さっき…!」

べラミー「黙ってろ!!!! 俺には通すべき筋がある…!!」

ドフラミンゴに裏切られ、デリンジャーに殺されかけて満身創痍になりながらも、あくまでもベラミーはドフラミンゴに忠を尽くすようだ。

ルフィ「分かった!! じゃあつけてく!」

バルトロメオ「だがしかしルフィ先輩、“ショクショクの実”は…!」

ルフィ「いいんだ、俺はそのために来たわけじゃねェし。」

?「どうやらライコウさんの思った通りだな。」

ルフィ「!?」

バルトロメオ「んだ!? てめェ何モンだァ!!? ルフィ先輩に気安く声ェかけやがって!!!」

ルフィらに近づく、黄色い髪の毛の青年。
背中に身の丈ほどの長さの鉄パイプを差し、ゴーグル付のシルクハットを被った彼はルフィの前まで来るとシルクハットを取って素顔を見せた。
その顔を見たルフィは、

ルフィ「サ、サササササ…サボォォ~~~~~!!!!」

サボ「久しぶりだな、ルフィ……!!」

義兄弟、運命の再会を果たす。 

 

第136話:ハクバの一太刀

-地下通路-

ここでは、リク王軍とウソップ・ロビンが標的のシュガーがいる敵地「交易港」に向かっていた。

ウソップ「て…敵の主力はどのくらいいるんだ!? レオ!」

レオ「最近ドンキホーテファミリーは、“カイドウ”と呼ばれる海賊との戦闘に備えて、戦力を強化しているという噂もあるれす!! 今までよりも大幅に増強されているのれす!!」

ウソップ「(カ、カイドウって……!!!!)」

ウソップに言われ、レオは現時点確認できたドンキホーテファミリーの戦力を言う。
国中にいる部下3000人をまとめるのは現在10人の幹部達で、さらにそれを束ねる3人の最高幹部…ディアマンテ・トレーボル・ピーカがそれぞれ特徴ある「軍」を組織している。
ディアマンテは格闘集団「ディアマンテ軍」を、トレーボルは特殊能力チーム「トレーボル軍」、ピーカは特攻部隊「ピーカ軍」をそれぞれ率い、その幹部の大半が何らかの能力者なのだという。その上「SMILE軍」という謎の軍隊も配備されているとも噂され、かなりの戦力であることが窺える。
なお、国外にも最高幹部・ヴェルゴがいるのだが、パンクハザードでローが倒したのでノーカンだ。

ウソップ「(じゃ…コッチは格闘集団じゃねェんだな! 頑張れフランキー!!)」

レオ「でもみんな結局強いれすよ。」

ウソップ「何だそりゃあ!!!!」

ウソップがレオのオチのある話し方にツッコんだその直後、レオ達が一斉にブレーキを掛け、そのせいでウソップはオモチャの家の壁に激突した。
相当痛かったのか、ウソップは涙目だ。

ロビン「…大丈夫…?」

ウソップ「じゃね~~よ!!」

レオ「ごめんれす!! ウソランド!! とにかく着いたれすよ!! ここが交易港と工場のある地下の世界れす!!!」

到着した場所は「工場」というより、「倉庫」の印象が強い場所だった。
そこでロビンとウソップが見たものは、巨大な地下都市だった…!!
















一方、コリーダコロシアムでは前代未聞の事件が起こっていた。

ギャッツ《何が起きた!!?》

サボ「速かったなァ…!! 噂には聞いていたが……。」

バルトロメオ「何だべ!!? 何も見えねがった……!!」

皆が驚くのも、無理はない。
何故なら、Dブロックを生き残った強豪達が突如としてバタバタと倒れ、最後に誰も立っていないという「こんな事があっていいのか」と言ってしまいたい怪現象が起きたのだ。
そんな中、立ち上がる者が1人いた。リングの上で倒れる選手の群れの中、唯一立ち上がったのは……。

ギャッツ《…………………レ、レベッカァ~~~~~~!!! 立ち上がったのはレベッカだァ~~~~!!!》

Dブロックからの進出者は、レベッカだった。
この結果に囚人剣闘士宿舎は歓喜に包まれ、観客とモニターを観戦していた国民は怒りに包まれた。
レベッカは観客から罵倒の言葉を浴びせられる中、闘技場に倒れるキャベンディッシュを見つめていた。

レベッカ「(彼の仕業…なの…?)」

そう、レベッカは見ていたのだ…この摩訶不思議な猛者達の意識喪失の実態を。
レベッカは闘いの最中、花提灯を膨らませながら寝るキャベンディッシュに気づき、その無防備なキャベンディッシュを他の選手が襲いかかる。
だが、花提灯が割れると同時にキャベンディッシュは光の早さで襲ってきた3人の選手を倒し、そのまま選手達を一太刀で斬り伏せたのだ。
実はキャベンディッシュは夢遊病を患っている「二重人格者」で、もう一つの男の人格の名は“ハクバ”…ロンメル王国で連続通り魔事件を引き起こした凶悪人物なのだ。
ライコウを筆頭とした世界四大剣豪には及ばないが、元々キャベンディッシュは剣術の天才であり、もう一つの人格・ハクバの強さはその倍と言われている。
ハクバが現れる時、それはキャベンディッシュが眠りに着いた時だ。

サボ「ハクバの剣を見切ったという意味じゃあ、ただのラッキーとは言えない…レベッカは見聞色を会得してるようだな。 まァ、アレぐらいなら俺も見切れるけどな。」

バルトロメオ「え…!? アレを捌けるんだべか!!?」

サボ「もっと速くてもっと力強い太刀筋を知っているからな。」

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-ドレスローザの王宮-

王宮では、ドフラミンゴがある老人を捕え笑みを浮かべていた。
実はドフラミンゴが捕えた老人は“奇跡の王”と呼ばれたドレスローザの前国王のリク・ドルド3世…リク王なのだ。

ドフラミンゴ「フフフッ…フッフッフッフッ…!!! 観たか今のを!? 運の強い女だなお前の孫は!! しかし…まさか孫と揃って大会出場とはなァ、リク王!!! 元国王が“悪魔の実”を欲するとは随分追い込まれたな…今日はお前の一族の行動が目に余る…。」

リク王「……貴様が今朝とった行動はこの国の全てを諦めるには余りある事件だった!! …それだけだ。」

リク王は今朝ドフラミンゴが引き起こしたあの誤報事件についてそう語る。
それに対しドフラミンゴは、「ヴィオラは違う」と口にした。

ドフラミンゴ「アイツは計算高い女だ…!! “賭け”に出たのさ!! “四皇”と“麦わらのルフィ”に俺が敗れる事を望んでやがる!!!! だが、ローはすでにこの通り戦闘不能…!! “麦わらのルフィ”はもうコロシアムから人間として出てくる事はない…!! 今の所、奴らの動きといえば“鉄人(サイボーグ)”フランキーが1人…オモチャの家を襲撃してるらしいがウチの幹部に敵うかどうか…!!」

ドフラミンゴは笑みをさらに深めてそう告げる。
その時、1人の男が現れる。

エイセイ「そんな茶番に付き合えってことかい? 天夜叉。 君の首を狙ってるのが奴らだけという保証は無いだろう。」

覇気を放ちながらドフラミンゴを睨むのは、“世界皇帝”エイセイ。
相当不機嫌らしく、顔にも青筋が浮かんでいる。

ドフラミンゴ「フフフフフ…!! そういやあお前はリク王家と随分仲が良かったな。 これが露見したら叩かれるんじゃねェか?」

エイセイ「僕としては“奇跡の国”を乗っ取った君の方が罪深いけどね。」

ドフラミンゴ「……何だ? 殺るのか?」

エイセイ「君のような外道はこの世から消えるべきだと言っているだけさ。」

エイセイはコートを翻し、その場を後にする。
その後ろ姿を、ドフラミンゴとリク王は眉間に皺を寄せて見据えるのだった。 

 

第137話:ドジとサイボーグ

-王宮付近-

コロシアムから出たルフィはゾロと錦えもんと合流し、ヴァイオレットもといヴィオラに王宮に入る指示を受けていた。
ルフィ達は今、王宮玄関へのリフト付近でヴィオラから忠告を受けていた。

ヴィオラ「通行書は私が持っているわ。 ここから伸びるリフトで王宮へは行けるけど、正体がバレてリフトを止められたら終わりよ! やめた方がいいわ…何より怪しすぎる…。」

錦えもん「むっ!? それは心外でござる。」

ヴィオラが真顔で怪しいと言うのも無理はない…。
何故なら、現在の3人の着ているのは丁髷(チョンマゲ)を付けた着ぐるみなのだから…。

ゾロ「お前さっきウチのコック連れてった奴だろ。」

ルフィ「サンジを?」

ヴィオラ「彼ならあなた達の船を救いに…。」

ゾロ「その先は知ってるよ」

ルフィ「さっきミンゴの部下だって言ってたじゃねェか!! お前自分で!!」

?「ドフラミンゴの部下のフリをしているのれす!!」

突如、ゾロの着ぐるみから青い髪の毛の小人が出てくる。
彼女の名はウィッカ…ゾロの刀を盗んだあの小人だ。

ヴィオラ「ウィッカ!!」

ウィッカ「お…!! 覚えててくれたんれすか!?」

どうやらヴィオラとウィッカは知り合いのようだ。

ヴィオラ「私の能力を忘れた? あなた達の行動はずっと見てた! 死んだ姉にかわって…レベッカを育ててくれた片足の兵隊さんと一緒にあなた達が戦い始めている事も…全部見てたわ! 父を信じてくれてありがとう。」

ウィッカ「うえ~~~~…ん…!! ヴィオラ様ァ~~~!!」

ルフィ「ええ!? お前王女!?」

ヴィオラ「昔の話よ…。」

ルフィ「ん? じゃあレベッカが王の孫だから…母ちゃん!?」

ヴィオラ「いいえ、レベッカは“姪”よ。 私の姉の子…。」

ヴィオラはルフィにレベッカとの関係性を手短に話すと、王宮玄関の裏に仕掛けられた隠し扉を開いてと案内する。

ヴィオラ「ここはリク王家に代々伝わる緊急通路…!! ドフラミンゴも知らない場所よ。 荷物用の滑車もあるし、階段で王宮まで行ける。」

ルフィ「おーーーー…。」

ゾロ「ルフィ! じゃあお前、この岩持って天辺まで行ってこい!」

錦えもん「おお! 名案でござる。」

ルフィ「ん?」

錦えもん「鎖を掴み降りて来てくれれば我々も上へ行ける!!」

ヴィオラ「そんな無茶な…!!」

ゾロと錦えもんの言ってることは尤もだが、いくら何でも無茶と言えよう。普通なら。
しかしルフィは「分かった」と一言告げて悪魔の実の能力でテトラポット並みの大きさの岩を持ち、上に行く。
そしてゾロと錦えもんは悠々と籠に乗り、スタンバる。

ゾロ「急げェ! ルフィ!!」

錦えもん「お主も早う乗るでござる! くのいち!!」

ヴィオラ「………………。」

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一方、オモチャの家ではフランキーが敵の目を引き付ける為に暴れていた。

フランキ-「だ~~~~~~~!!!! こざかしいィ~~~~!!!!」

あたり一面にロケットランチャーを撃つフランキー 。
ファミリーの手下達は、フランキーの無差別爆撃に逃げ惑う。
そんな中、ファミリーの幹部であるセニョール・ピンクは靴磨きで堂々と佇んで歯を磨いている。

「セニョール避けて下さい!! 能力で地面の下へ!!」


ドゴォォン!!


部下の言葉も虚しく、クツ磨きで歯磨きしていたセニョールにフランキーが放った砲弾が直撃し、セニョールは黒こげになった。

「セニョール!! 何故能力で逃げなかったんです!!?」

セニョール「オウ…勘違いすんじゃねェぞ! ボーヤ達…壁も地面も自在に泳ぐ俺の“スイスイの実”の能力は……何も…敵から逃げ回る為にあるんじゃねェよ………俺ァな…!! 泳ぎてェ時に泳ぐのよ!!」

全身血まみれで骨も折れているであろう深手にもかかわらず、ブランデーでアルコール消毒をするセニョール。

「セニョール!! アンタ今…死をも覚悟して!! 攻撃を正面からくらったのは…ウゥ…背後に…!! 動けねェ仲間がいたからでしょう!!?」

セニョール・ピンクがフランキーの攻撃を正面から受けた理由…それは自身の背後に横たわる同胞のマッハ・バイスを護るためであった…恐らく…。

セニョール「…そんな昔話は忘れたよ…おい、バイス…立てるか?」

フランキー「何てハードボイルドな奴だ…!」

バイス「ダイ~~~~ン…“トントン”!」

フランキー「!」


ドン!!!


フランキーがセニョール・ピンクのハードボイルドさに気を取られていると、先程まで地べたに横たわっていたマッハ・バイスがフランキー目掛けて落下してきた。
しかし、フランキーは間一髪でマッハバイスの下敷きを免れる。

バイス「ぶはー!! 腹痛イーン!! また外しただイーン!! お前すばしっコイーン!! だな!!」

マッハ・バイスは“トントンの実”の能力者…体重を万tまで自在に操れる男だ。
サイボーグであるフランキーでも、直撃すれば無傷では済まないだろう。

「そこまでだァ!!!」

「「!?」」

フランキーが叫んだ後、咎める声と共に現れたのは、バスティーユ率いる海軍であった。

「“オモチャの家”は四方!! 海軍が包囲した!!!」

フランキー「はァ!? 何で海軍が!!!」

バイス「何だァ!? 聞いてねェんだイーン!!!!」

セニョール「またうるせェのが……。」

その時だった。


バキィッ!!


バイス「ダイィィ~ン!!!?」


ドゴォン!!


『マッハ・バイス様ァ!!!?』

マッハ・バイスの巨体が、突如蹴り飛ばされた。
彼を蹴ったのは……何と意外な人物だった。

コラソン「ちっ!! “藤虎”の指令か…!!」

フランキー「コラソン!!」

そう、先程までどっか行っていたコラソンだった。

コラソン「ナギナギが使えねェ状況だが……ライコウさんから“鬱憤晴らして来い”って許可が下りた、加勢する!!」

フランキー「ヘッ!! ヒーローは遅れてやって来るってか?」

百獣海賊団の参謀総長の参戦に、海兵達は怯む。
ファミリーの手下達も、思わぬ加勢に動揺する。

バスティーユ「百獣海賊団の参謀総長か……いや、センゴクさんの元部下(・・・・・・・・・・)とでも言うべきだらァか? コラソン。」

『!!!?』

コラソン「成る程……全てお見通しって訳か。」

バスティーユは鮫切包丁を構え、それを機にセニョールらドンキホーテファミリーの幹部らも戦闘態勢に入る。

コラソン「陸軍の方はギネスが抑えてる。 こっちも抑えるぞ!!」

フランキー「スーパー任せとけ!!」

ドジとサイボーグの共同戦線が始まる。














-コリーダコロシアム-

一方、コロシアムでは予選最後のブロック「Eブロック」が始まろうとしていた。

ギャッツ《さァ皆さん!! 予選もついに最後のブロック!!! Eブロックの開幕です!!!》

ギャッツがそう言うと、観客席から盛大な歓声が沸き上がる。

ムラマサ「(ようやく暴れられますね…この時をどれほど待ちわびたか。)」

百獣海賊団三妖星の一角であるムラマサは、笠を被ったまま自らの正体をまだ(・・)隠しつつも、笑みを浮かべてその時を待つ。
そしてそれを選手観覧席からサボとバルトロメオ、そしてレベッカが見ている。

サボ「さて…果たしてどれほどの実力か…。」

バルトロメオ「(何だべ、アイツ…!? 殺気が尋常じゃねェべ…!!)」

レベッカ「(マズイ……あの人だけは剣を向けてはならない気がする…!!)」

サボは楽観的だが、バルトロメオとレベッカはムラマサから漏れている濃厚な殺気を感じ取り、冷や汗を流す。

ギャッツ《それでは皆様!!! 決勝進出を懸けた命懸けの舞台(ショー)最後の予選・Eブロック!! 今開戦のゴング~~~ッッッ!!!》


カァァンッ!!


開戦のゴングが鳴り響く。

ムラマサ「さて、出ましょうか……。」

三妖星、ついに出陣。 

 

第138話:三妖星最強

Eブロックが開始し、血を流し戦い始める選手達。

ムラマサ「(リングを斬ればすぐ終わりますが……せっかくですし2~3割程血祭りにあげてからにしましょうかね。)」

「余所見してんじゃねェよ!!」

ムラマサ「!」

呑気に考えていると、1人の巨漢が斧を振るって襲い掛かった。
ムラマサはそれを避けようとしない。
普通なら真っ二つにされてもおかしくないだろうが……。


ガッ!


「んなっ!!?」

ムラマサは何と、素手で斧を受け止めた。

ムラマサ「……その程度では私は殺せませんよ。」

そう言うとムラマサは拳に力を入れ、斧の刃を砕き割った。
その直後、目にも止まらぬ速さで刀を抜き、ムラマサは巨漢を斬り捨ててしまった。

ムラマサ「フフフ…この感触はやはり良いものです。」

得物の刀から滴る血を見ながら、微笑むムラマサ。
次の瞬間!


ヒュッ


『!!?』

観客達とギャッツ達は、目を疑った。
何とムラマサがまるで瞬間移動したかのように反対側のリングの端まで移動していたのだ。

ムラマサ「殺し屋の刃は刹那の出来事……痛みはありませんからご安心を。」

鞘と刀を前に付きだしゆっくりと刀を鞘に納めるムラマサ。


キンッ…


ブシュゥゥゥッ!!


刀を鞘に納める音と同時に、吹き出る血。
被った笠は選手達の返り血で赤く染まり、ムラマサは愉悦の表情を浮かべながら生き残った選手達を一瞥する。

ムラマサ「? ……どうしました? そんなに震えて。」

「ひ…ひぃ…!!」

「な、何だアイツ……化け物か…!!?」

選手達はカタカタと震え涙目になり、ムラマサはそれに対し微笑む。
その光景は、まるで恐怖と絶望で染まった獲物に対し、死神が微笑むような…そんな光景だった。
ムラマサ1人に対し、生き残った選手達は360人中100名余り。他のブロックならば徒党を組んで襲い掛かっているが…ムラマサの笑みに、選手達は恐怖で動けなかった。
それを選手観覧席で見ていたサボ達も、驚愕している。

サボ「ハハ……そりゃあ三妖星最強って呼ばれるよ…。」

レベッカ「皆どうしたの……まるで金縛りにあってるみたい…。」

サボ「ムラマサさんの殺気に…覇気に呑まれたんだろうな。 ああなったら負けたも同然……足搔いても刀傷どころか擦り傷すらつけられねェ。」

これが、“死の彗星”の実力。三妖星最強であるムラマサでも、百獣海賊団ではまだ三番手に過ぎない…その上を行くのが、船長(カイドウ)副船長(ライコウ)の2人なのだから。

ムラマサ「……興醒めです。 戦意を失った者を斬っても心がモヤモヤするだけ。」

するとムラマサは刀に覇気を纏わせ、力一杯振るった。
その時、リングに一筋の線が走り……。


ドンッ!!


『うわあァァァァァァァァ!!!!』

リングは突如としてズレ、そのまま場外の水槽へ沈んだ。
ムラマサは生き残った選手達の足場を斬り落とし、斬り伏せられた選手達を含めた全員を場外落下させたのだ。

ギャッツ《な、何ということだ~~~~!!! まさに刹那の瞬間!! あれほどいたコロシアムの猛者達が、ものの数分で全滅!!! Eブロック勝者は、謎の剣客“雨傘”だァァ~~~~!!!!》

ムラマサ「(そういえば偽名を名乗ってましたね……頃合いだ。)」

ムラマサは被っていた笠を外し、素顔を露にした。
その瞬間、観客達が一斉に悲鳴を上げた。

ギャッツ《な、ななななな…何という事態だァァ~~~!!! Eブロック…いや、今大会予選ブロック最大の衝撃!!! 謎の剣客“雨傘”の正体は!! 百獣海賊団三妖星の一角にして、三妖星最強の男!!! “死の彗星”ムラマサだァ~~~~!!!》

ムラマサ「(……期待外れの茶番劇でしたね。)」

Eブロックは、ムラマサの圧勝で終わった。

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-王宮・スートの間にて-

ドフラミンゴ「海軍が動いた…よく決断してくれたな、“藤虎”。」

ドフラミンゴは笑みを深めてイッショウに目を配る。
イッショウがバスティーユらに命じ、オモチャの家で暴れるフランキーらを拘束するよう促したのだ。

イッショウ「何もアンタの味方をしようってんじゃありやせん…“麦わらの一味”に加え、さらに不審な者達の動きがあるというのなら、当然の“筋”…! 軍隊は、市民の被害を最小限に抑える為に戦うべきだ。 “麦わら”の目的がお前さんの首であるなら大きな破壊も厭わねェでしょう? だったらそれを止めんのがあっしの“正義”! アンタは…………その後でいい(・・・・・・)…!!!」

イッショウの言葉に、ドフラミンゴは訝しむ。

イッショウ「あたくしァ世界徴兵の新参者ですが、大将という立場を受けたからにゃ…やりてェ事がある。」

ドフラミンゴ「……何だ?」

イッショウ「それは……“王下七武海”制度の完全撤廃でごぜェやす!!!!」

仕込み杖を強く握り締めて語るイッショウに、ドフラミンゴは驚く。
イッショウがそう思ったのは、2年前のアラバスタの内乱…クロコダイルの一件だろう。
世界レベルの大海賊が名を連ね一般の海賊からは恐れられている王下七武海は、その権力を隠れ蓑にとんでもない悪事をやらかしている。現四皇である“黒ひげ”の七武海時代も例外ではない。これを危惧する者は多く、特に世界政府の中でも有数の権力者であるエイセイや陸軍元帥・ジルドは撤廃を唱えている程だ。
ミホークあたりは問題無いだろうが、ドフラミンゴのような輩にとってはかなり不利であるのだ。

ドフラミンゴ「…三大勢力の均衡ってやつはどうなる?」

イッショウ「さァ? 崩してみなきゃ分からねェ。 だから……。」

その瞬間、ドフラミンゴが覇気を纏った蹴りをイッショウ目掛けて放った。
イッショウはそれを仕込み杖で受け止める。

イッショウ「あんまり悪ィ事重ねると、首の値が上がりやすぜ? 天夜叉の旦那。」

ドフラミンゴ「フフフッ! “消すなら今の内に”と…言われた気がしたよ!!」

イッショウ「慌てなさんな、今は仲良くやりやしょう。」

そう告げ、イッショウは仕込み杖を納める。

イッショウ「アンタの()を守ろうってんだ…これからこの国のどんな“粗”が曝け出されても、あっしァ盲目…見えやせんのでご安心を。 今年は“世界会議(レヴェリー)”のある年。 否が応でも世界は動く…。」

意味深な言葉を残し、イッショウはスートの間を後にする。
その曲がり角で、イッショウはエイセイと再会する。

エイセイ「……どうするんだい? いつまでもドンキホーテファミリー(あちら)の思う通りに動く訳にはいかないんだけど。」

イッショウ「ヘヘ……そらァ百も承知でござんす。」

エイセイ「僕の予想が正しければ、ライコウは明らかにドフラミンゴを潰しに掛かってる。 “麦わらのルフィ”を手中に収めたのは、彼を囮にして真の計画をドフラミンゴに悟られないようにするためだ。」

イッショウ「……。」

エイセイ「このドレスローザの一件で、世界そのもの(・・・・・・)がひっくり返る“ヤバイ事件”が起こる……君の全ての行動は僕が責任を取るから好きにして。」

イッショウ「そらどうも、感謝いたしやす。」

虎と皇帝が、天を穿つために動き出す。 

 

第139話:コロシアムの英雄

-コリーダコロシアム-

ムラマサによって両断されたコロシアムのリングを替え、ついに決勝戦が始まろうとしていた。
決勝戦には予定していた4人の幹部が出ないが、その代わりに“コロシアムの英雄”と呼ばれるファミリーの最高幹部・ディアマンテが参戦することとなり、観客は大盛り上がりだ。

ギャッツ《決・勝~~~~~~っ!!!! 出揃った5人のブロックの覇者とMr.ディアマンテ!!! ここで勝者に贈られる商品とはァ~~~~!! 悪魔の実“ショクショクの実”だァ~~~!!!》

四皇の幹部3名、超新星の1人、ファミリーの最高幹部、無敗の女。
決勝戦には申し分ない歴戦の強者が揃っており、かつてない声援と罵詈雑言が飛び交う。
そんな時だった。

「その試合待てー!!」

ギャッツ《ん?》

「レベッカをリングから降ろせ!!」

「“Dブロック“は仕切り直しだ!!!」

決勝戦が始まろうとしたその時、Dブロックの負け犬(はいしゃ)達3名がリングに無断入場してくる。
Dブロックで起きたハクバの一件で何とか生き残ったレベッカが決勝進出という大会判定に納得出来ていないようだ。
そこへディアマンテがそれを邪魔するがごとくレベッカに襲いかかろうとする選手に立ちはだかるが……。


ザシュッ…!


ゴトトッ…


ディアマンテ「なっ…!!」

レベッカ「きゃあっ!」

バルトロメオ「!!?」

ムラマサが斬撃を放って一閃。
3人の首を非情にも斬り落とした。
さすがのディアマンテも殺す気は無かったので絶句し、レベッカは思わず悲鳴を上げ、さらには世間から“イカレたルーキー”と呼ばれるバルトロメオも戸惑いを隠せない。

ムラマサ「誠に醜い……結果は結果です。」

どうやら往生際の悪さがムラマサの癪に障ったようだ。
ムラマサは無表情で3人の死体に近づき、コロシアム会場の水場へ捨てた。
すると……。

ディアマンテ「! 引き返した方がいいぞ、お前!! 決勝には決勝に相応しい“闘魚“が放ってある! 奴らは血の匂いに敏感だ。」

ディアマンテの言葉と同時にコロシアム会場の水場から闘魚が飛び現れ、ムラマサに噛み付いた。
しかしムラマサは能力である「認識操作」を発動しており、闘魚が噛み付いたのは認識をずらして発生した幻影なのだ。

ディアマンテ「成る程、今のが“ぬらりひょんの能力”か…まァいい。」

するとディアマンテはマイクを手にし、スピーチをする。

ディアマンテ「さっきまでとは階級違いの闘魚達!!! 見たか、今の突進を!!? リング上の戦士にも手を出すルール無用の極悪ぶり性格は最悪!! 各群れのボスクラスの闘魚達!!! そしてその中のたった一匹の背に!! 今大会の賞品の“ショクショクの実”が乗っている!!!! ルールは簡潔!! そいつを奪って最後までリングに立ってた奴が優勝だァ~~~!!!」

ディアマンテのスピーチに観客は一気に歓喜の声を上げる。
いよいよ始まる、英雄ディアマンテを含めた五人のバトルロイヤル“悪魔の実争奪・闘魚乱入デスマッチ”。
そのゴングが鳴り響き、最終決勝戦が幕を開ける。

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-同時刻-

王宮の外壁塔前に辿り着いたルフィ達は、ヴィオラから説明を受けていた。

ゾロ「アレが王宮の入り口か?」

ヴィオラ「いいえ、まだ王宮の下段外壁塔の入口よ! 門番に見つからないで…!! 外壁塔にも秘密の入り口があるわ。」

とはいえ、騒いで“幹部”達に連絡が回ればとたんに動けなくなる。まだ王宮内にはパンクハザードでライコウに瞬殺されたバッファローとベビー5に加え、自身や触った無機物を破裂させる「パムパムの実」の能力者・グラディウスがいる。特に「イシイシの実」の能力者である最高幹部・ピーカに見つかったらドフラミンゴの元には到達できないとされている。

錦えもん「ん? ルフィ殿は…?」

ウィッカ「あの…アレ」

ルフィ「うおォォォ~~~~!!」

「「何やっとんじゃァ~~~~!!!」」

錦えもんがいつの間にか居ないルフィの存在に気付いたのも既に遅し、ルフィは正面玄関へ特攻。正面玄関を門番達ごとブッ飛ばそうとしていた。
その時!


ドクンッ!!


ドサ…ドサドサドサ…


「「「「!!!?」」」」


キキィン!!


ズズゥゥン…!!


突如として門番達が泡を吹いて一斉に失神し倒れた。
その直後、門に十字の線が走り斬り崩れ、正面玄関からあの男(・・・)が現れた。

ライコウ「やっと来たか。 待ち侘びてたぞ。」

ルフィ「ライコウ!!」

錦えもん「お主、いつの間に!?」

そう、いつの間にか単独行動で姿を消していたライコウだった。
ライコウの得物である刀から血が滴っていることから、どうやら一足先に王宮内へ侵入して敵を倒していたようだ。

ヴィオラ「“剣帝”……同盟は本当だったのね…!!」

思わぬ助っ人に、ヴィオラは驚愕する。
ライコウの名は世界中に知られている。知らない方がおかしいだろう。

ライコウ「中は大方血祭りにあげた……残る脅威はドフラミンゴと幹部共だけ。 藤虎は市街地(した)に向かったらしいから、攻めるなら今だ。」

ルフィ「脱いでいいよな? もうコレ!!」

錦えもん「うむ、最早変装せずとも敵陣へ行けるのだからな。」

ルフィ「じゃあガラ空きだな!! 待ってろ、ミンゴー!!」

ルフィ達は、王宮へ潜入する。 
 

 
後書き
イカズチのイメージ図です。

<i6771|38038>

画力については責めんといてください。(笑) 

 

第140話:ピーカ参上

ライコウのおかげで警備が手薄になった王宮に潜入するルフィ達。
同心・カン十郎を探しにウィッカと行動することに決めた錦えもんと二手に分かれたルフィ達一行は、王宮の奥へと進んでいく。

ライコウ「錦えもんとは別れたようだが……大丈夫だったのか?」

ゾロ「ルフィみてェにどっかとんでもねェ所に行く奴じゃねェ…アイツもそれなりに腕も立つしな。」

ライコウ「(それお前が言うなよ……。)」

自分のことを棚に上げるゾロに呆れるライコウ。

ライコウ「そういやあルフィ、チンジャオを倒したようだな。 試合みてたぞ。」

ルフィ「!」

ライコウ「強くなったじゃねェか、“あの海”を生きた伝説の1人を倒したんだからな。 だがその程度じゃあ俺やシャンクス、カイドウは越えられねェ……精進しろよ?」

ルフィ「シシシッ! 俺はもっと強くなってお前を越えてやるから芋洗って待ってろよ!!」

ライコウ「首な、首。 芋洗ってたら料理しか出来んぞ。」

ルフィの勘違いにライコウはツッコミを炸裂させる。
すると…。


…パキ…メキ…!


ルフィ「ん?」

ライコウ「! 来やがったか…!」


ドォオン!!


ルフィ「!!!! うわあああ~~~!!! 何だ!!?」

ゾロ「石の化け物!!」

ヴィオラ「しまった…!! ピーカ!!!!」

運が悪いことに、ファミリーの最高幹部であるピーカと鉢合わせ。
しかもイシイシの実は、触れた石と同化する能力。ピーカは実質、岩でできたこの王宮を丸ごと支配してると言えるのだ。

ライコウ「やっと来たか、探したんだぞ? どこにもいなかったから逃げたかと思ってた。」

ピーカ「……!」

ヴィオラ「そんな事言ってる場合じゃないわ!!! 早く逃げないと…!!!」

ヴィオラがそう言った直後、ピーカーは両手を宮殿の壁に入れ、まるでカーテンを閉めるかの如く王宮の廊下の壁をくっつけてしまった。
しかし……。


ピキキキキ……!


ドゴォッ!!


ピーカ「!」

廊下の壁に押し潰される前にライコウが抜刀・粉砕したので、全員無傷だ。

ライコウ「さて…どうするか。」

刀を鞘に納めるライコウは、居合の構えを取る。
するとライコウの前に、秋水と三代鬼徹を抜いたゾロが立ち塞がった。

ゾロ「俺がやる。 アンタはルフィと一緒に親分潰して来い。」

ライコウ「ほぅ…いいだろう、ここはお前に任せる。」

ライコウはゾロに譲り、ルフィとヴィオラに目を配る。
それを見たピーカはルフィとヴィオラに殴り掛かるが、ゾロに受け止められる。

ゾロ「余所見すんな、ぶった斬られたくなきゃあな!!」

ピーカ「……!!」

ルフィ「先に行くぞ!!」

ゾロ「おぅ!!」

ゾロとピーカの激闘が、幕を開けた。

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-コリーダコロシアム-

コリーダコロシアムは、決勝戦の真っ只中であった。

ギャッツ《また闘魚が飛び出したァ~~~~!! 避け切れるのか!? バージェス!!》

バージェス「“波動“!! “エルボー”!!」

バージェスは武装色の覇気を纏った右腕で、強力なエルボーを繰り出す。
その衝撃は凄まじく、コロシアム全体が地震災害のように建物ごと揺れる。

ギャッツ《コロシアムが揺れる~~~!!! 出たァ~~~!!! バージェスの“波動エルボー”!!! 客席に風穴ァ~~!!!》

成り上がりの海賊“黒ひげ”を支える「10人の巨漢船長」の1人であるバージェス。
たった2年の間に覇気を修得し、圧倒的な戦闘力を得たことにはサボとムラマサも少し驚く。

サボ「へェ……たまげた。」

ムラマサ「スマートではないですがね。」

闘魚を狙ったとはいえ、観客席一角を破壊したバージェスに観客の怒口(ドコウ)が飛び交う。
そんな怒口も気にせず、バージェスは高笑いを上げる。


ザバァ!!!


ギャッツ《現れた!!! 悪魔の実を乗せた闘魚!!! 闘魚の狙いは、“無敗の女”レベッカだァ~~~ッ!!!》

レベッカ「せめて鎖だけでも…きゃっ!!!」

悪魔の実の箱を固定した鎖だけでも斬ろうとしたレベッカだったが、それもままならずリングに倒れ込む。
だが、その圧倒的な闘魚の鎖にしがみつく者が1人……サボである。

サボ「よし! 捕まえたっ!!」

ディアマンテ「おっと、それはやらねェぞ“麦わら“ァ~~~!!!」

ディアマンテは剣を抜き、サボに斬りかかるが……。


ギィィン!!


ディアマンテ「っ!!」

サボは覇気を纏った鉄パイプで粉砕する。
ディアマンテはドンキホーテファミリーの中で一番剣術に長けているが、まさかいきなり剣を砕かれるのは想定してなかったのか驚きを隠せないでいる。

バージェス「ウィッハッハ!! まとめて撃ち落としてやる!!!!」

ギャッツ《バージェスが構えたァ!!!》

「ギャア~~~!! 逃げろーーーー!! またアレだ~~~~!!」

バージェスが構える事により、観客は的になりうるバージェスの正面にあたる客席から退避し、レベッカは空かさずバルトロメオの後ろに着く。

バルトロメオ「俺の後ろとは考えたな!!!」

ディアマンテ「! 受ける気かルーシー!!」

バージェスの波動エルボーが来ることを察したサボは、闘魚からバージェスに向かって跳ぶ。
そして手の人差し指と中指、薬指と小指を合わせて掌底の構えを取った。

サボ「“覇王拳”……!!」

バージェス「ウィッハハァ!! “波動”!!!」

互いに覇気を纏わせるサボとバージェス。

サボ「“竜王之爪”!!」

バージェス「“エルボー”!!!」


ドォォン!!


サボの掌底攻撃とバージェスの肘打ちが重なり、コロシアム全体に激しい爆音が響き渡る。
その数秒後、バージェスの強靭な鎧がガラスが割れるような音を立て、砕け散る。

『うおおオォ~~~!!!! ルーシ~~~~!!!!』

これには観客も大盛り上がりだ。

サボ「そう簡単にはくれねェか…!!」

ディアマンテ「おいおい、戦い方(・・・)が違うじゃねェか…コイツ本当に“麦わら“かァ~~~!?」

サボ、猛威を振るう。 

 

第141話:乱入者

地下の交易港。
そこは、無数のオモチャが強制的に働かされる「自由」の無い世界だった…。
中にはチンジャオの孫のサイやプロテンス王もいる。しかしそれを知る者は誰1人いない。
そんな様子を港出入り口から窺うロビンとウソップとトンタッタ族。

ロビン「あれがトレーボルとシュガーね…。」

ウソップ「ホントにガキだ…。」

シュガーの姿を見て、動揺するロビンとウソップ。
どう見ても少女にしか見えないが、そのシュガーこそが国中のオモチャ達を造り上げた張本人なのだから驚くのも無理はない。

レオ「彼女はグレープが大好きでいつも食べてます!!」

ウソップ「それがどうした?」

レオ「それが作戦れす!!」

ウソップ「!!?」

どうやらシュガーが食べてるグレープこそ、作戦の要のようだ。

レオ「これを見てください!! 世界一辛い調味料“タタババスコ”の塊れす!!」

ウソップ「まさかそれをシュガーに…!?」

レオ「御名答!! 僕があのカゴに入れてきます!!」

つまり作戦はこうだ!
およそ数十m離れた場所からシュガーのグレープが入った籠めがけて小人のウルトラマン・レオが潜入しタタババスコの塊をこっそり混入!
グレープに見立てたタタババスコを口にしたシュガーはあまりの辛さに口から火を噴き失神!!
これならバレずにシュガーを失神させ、SOP作戦は大成功するに違いない!!

レオ「因みにタタババスコの威力は、我々トンタッタ族50人で実験して100%気絶! 18人が死にかけました! えへへ♪」

ウソップ「試したのかよ!?」

ある意味人間よりスゴイ根性である。

ウソップ「………よし! レオ行け! 俺が見守っている!! (パニックが起きたら逃げよう!)」

レオ「なんて心強い!!」

「頑張れ、レオ!」

「トレーボルに気をつけて!!」

ウソップ「お前ら声デケェ!!」

レオ「問題無いれす!! 皆も心の準備を!! シュガーの悲鳴が上がる時…それは国中のオモチャ達が大人間に戻る時!! 忘れられた全ての記憶が蘇る時!!!! 全ての悪事が暴かれ…“海賊”ドフラミンゴが本性を現す時!! 行って来るれす!!! 仲間達を救い!!リク王の王国を取り戻すのれす!!!」

『うおおお~~!!!!』

ウソップ「声デケェって!!」

ロビン「! 皆、静かに!!」

ロビンがそう言うと、5名ほどの男が話し合いながら近づいてきた。
これにはさすがのトンタッタ族も、押し黙る。

「聞いたか!? あのシャーロット・コクトーが動き出してるらしいぞ…!!」

「ビッグ・マム海賊団の副船長がか!!?」

「確かにここ最近ビッグ・マムの一味の船が出入りしてたが……コクトーの指示か…!!」

「“新世界の魔王”が暴れ始めるとなると…今の新世界は相当な緊張状態だな…!!」

「近い内に四皇達が戦争するかもしれねェぞ…!!」

そんな会話をしながら、ウソップ達の前を通り過ぎる。
しかし、会話の内容を聞いた一同はドン引きだ。

ウソップ「四皇同士の戦争って……明らかに“麦わらの一味(おれら)”も巻き込まれるじゃねェかよ!!!」

ロビン「“新世界の魔王”コクトー……久しぶりに聞いた名前だわ…。」

ウソップ「知ってんのか?」

ロビンはコクトーについて語り始めた。
シャーロット・コクトーはビッグ・マム海賊団の副船長であり、海賊王ロジャーが生きていた頃から海賊として名を馳せていた男で、“剣帝”ライコウと幾度となく死闘を繰り広げた実力者だ。
新世界の船乗り達を襲い、その圧倒的な武力で瞬く間に海の藻屑と化させることから“新世界の魔王”と呼ばれ酷く恐れられているのだという。

ロビン「20年前にライコウに敗れてからは消息不明だったけど……療養中だったのかしら……。」

ウソップ「“新世界の魔王”って……もう異名の時点で危ねェじゃねェか…!!!」

ロビン「コクトーの部下も紛れてるかもしれないわ…気を付けましょう…。」

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-コリーダコロシアムー

ギャッツ《おっとォ!! 三妖星・ムラマサがMr.ディアマンテと剣戟を繰り広げたァ!!!》

ムラマサはディアマンテと壮絶な斬り合いを演じていた。
ディアマンテはヒラヒラの能力でムラマサを翻弄しようとするが、ムラマサは見聞色の覇気で容易く躱し刀を振るう。
コロシアムの英雄と三妖星最強の男の戦いに、観客はヒートアップする。

レベッカ「(ムラマサさんの動きを呼んで、ディアマンテを…!!)」

そして、レベッカが動いた。

レベッカ「やあああーーーー!!!!」

「「!!」」

ギャッツ《!!? な、何と!!絶対に攻撃を仕掛けないあのレベッカが!! 攻撃を仕掛けたァ~~~っ!!!》

レベッカは剣を振るい、ディアマンテに斬りかかる。
これには今まで彼女にブーイングしていた観客達も驚く。


ガギィィン!!


レベッカの剣がディアマンテの右足に直撃するが、ディアマンテ自身にはまるで変化がない。

ディアマンテ「? ………何だその剣は……“刃”が無ェじゃねェか…リング上は殺し合いの場だ!! 人が斬れねェならお前が血を流せ…!!」


ガッ!


レベッカ「えっ!?」

ディアマンテはレベッカの右足を自身の右足で踏み抑え、ヒラヒラの実の能力で出した金棒でレベッカの頭部を殴る。

ディアマンテ「それで客は興奮するのさ!!!!」

レベッカは金棒の攻撃を直に受け、兜が砕け散ると同時に頭部から血を流しながらリングに伏してしまった。

ギャッツ《直撃ィ~~~!! “無敗の女“手も足も出ず~!!!》

『ディアマンテー!!!』

サボ「しまった!! おい、マッスルメロン!!」

バルトロメオ「バルトロメオっスけど!!!?」

サボ「お前、あの子を守れ!!」

バルトロメオ「えェ!!?」

名前を間違えられた上に命令され、すぐにレベッカの前に立ちバリアを張ったバルトロメオの前に立つ。
そんな中、ディアマンテはレベッカに語り掛ける。

ディアマンテ「レベッカ…!! お前の母・スカーレットの死に様を知っているか…?」

レベッカ「……………!?」

ディアマンテのその言葉にレベッカの脳内に亡き母の最後の光景が過ぎる。
彼女の母・スカーレットはレベッカの食料を調達しに街に出たところを何者かに銃撃され、息絶えたのだ。
その亡骸を運んだのがあの兵隊であり、「すまない…君の母さんを守れなかった…!!」という言葉と共にレベッカの前に現れたのだ。

ディアマンテ「“オモチャの兵隊”が…泣き叫んで実に見苦しかった…。」

この時、レベッカは母の亡骸を抱きかかえた兵隊が言った「すまない…君の母さんを守れなかった…!!」という言葉の意味を悟った。

デ「何度でも教えてやるぞレベッカ~!! お前の母スカーレットを撃ち殺したのはァ…!!」

バル「オイオイ言葉攻撃でオレのバリアの立場は!!?」

バルトロメオの訴えを無視し続けるディアマンテ。

ディアマンテ「俺なんだよォ!!」

レベッカ「っ……!!!!」

真実を知り、悔しそうに顔を歪め口元を抑えるレベッカ。
その姿を満足そうに見下ろすディアマンテ。
その時だった。


ドガッ!


鈍い音と共に舞う鮮血。
苦しそうに顔を歪めフラつくディアマンテは、頭部から流れる血に動揺する。
ディアマンテの目の前には、リングに剣が突き刺さっていた。

ディアマンテ「…コイツァ……!!」

その剣は、見覚えがあった。
その剣の持ち主は、誰もが知る男のものだった。

エイセイ「ディアマンテ、お前がスカーレットを…。」

ディアマンテ「せ、“世界皇帝”…!!!?」

コロシアムに、まさかの乱入者。 
 

 
後書き
現時点でコラボしてみようかなと思ってる作品を公開いたしやす。
・家庭教師ヒットマンREBORN!
・HUNTER×HUNTER
このどちらかは確実にやろうと思ってやす。
上述のコラボネタのリクエストも募集するでござんす。具体的には「獄寺がダイナマイトで酒蔵を爆破し、酒癖最悪のカイドウを怒らせる」とかでごぜェやす。
皆様のご要望、是非どうぞ。 

 

第142話:SOP作戦、開始

 
前書き
お待たせしました。
すいません、地元に戻ってて更新できやせんでした。 

 
コロシアムの最終戦に乱入した世界皇帝。
バージェスも、ムラマサも、サボも、驚きを隠せずに彼を見つめる。

ディアマンテ「て、てめェ…何でここにいやがる…!?」

エイセイ「暇だから来ただけだが…たまたま彼女の死の真相(・・)を知ったんだよ。 僕は彼女を欲していたしね。」

ディアマンテ「あの女を…!?」

エイセイは少しずつ、レベッカの母・スカーレットとの接点について語り出す。

エイセイ「今から15年前か……リク王政権の頃に彼女と会って一目惚れしてさ、彼女にプロポーズもした。 勿論恋の敵ってのもいた。 今では誰だか忘れてしまった……いや、君達の手で忘れさせられてしまったというべきか。」

その言葉に、ディアマンテは目を見開き動揺する。
エイセイはシュガーのことを知っているのだ。彼女の能力と、その恐ろしさを。

エイセイ「10年前のあの日、ドフラミンゴから彼女の死を知った時の絶望は忘れられないよ。」














-10年前-

エイセイ〈スカーレットが……死んだ…?〉

ドフラミンゴ〈あァ…ウチの部下が発見した。 あの辺りは治安も悪ィ、仕方のねェ事だ…。〉

エイセイ〈……スカー…レット…。〉

ドフラミンゴ〈……想っていたのか。〉

エイセイ〈……。〉

ドフラミンゴ〈辛ェだろうが、これが現実だ。 ここで躓いちゃあ、いけねェぞ“世界皇帝”殿。〉

エイセイ「(スカー、レット…すまない……っ!!)」













エイセイ「あの日のことは、嫌でも忘れられない。 あの時程悲しみ、自らの無力さに嘆き、自分を憎んだ…。」

エイセイは哀しい顔を見せ、俯く。
しかしその直後、覇王色の覇気を放ってディアマンテを睨む。

エイセイ「だが彼女を殺したクズを知った…ここで…!! 許すものか…!! 彼女の幸せを踏み躙ったお前を生かすものか…!!! この“世界皇帝”の怒り触れたことを後悔させてやる!!!」

エイセイは剣を抜き、天に掲げた。
すると剣から火花が散り始め、それと同時に大きな地響きが襲う。

ムラマサ「……マズイですね、一旦退きましょうサボ君。」

サボ「そのようだな…マッスルメロン、彼女を頼むぞ!!」

バルトロメオ「だからバルトロメオだべ!!!」

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一方、世界皇帝(エイセイ)が暴れ始めたコロシアムの地下では、SOP作戦が始まろうとしていた。
とはいえ、最高幹部の護りがある以上シュガーに近づくのは困難だ。
そこで、出来るだけ離れた地区で“スズメバチ大量発生“というトラブルを起こし、ロビンが部下になりすまし、トラブル解決の為にトレーボルを誘導し、シュガーを独りきりにするという作戦に出ることにした。
これが思いの外効果があり、トレーボルをシュガーから離すことに成功したのだ。

レオ「え!? ウソランドは戦ってくれないんれすか!?」

ウソップ「俺がやるのは簡単だ! だが、こうする事でお前達の自信となる!!」

※単に幹部との戦闘を避けたいだけです。

ウソップ「安心しろ!! 何かあった時は俺が全てを救ってやる!!」

『うおー! 心強いれす!』

そして、ついにSOP作戦が開始した。


ガコン!!


シュガー「だぁれ?」

1人きりになったシュガーがグループを食べていると、戸の開閉音が部屋に響き、姿は見えないが気配を感じ、問い掛けるシュガー。
気付けばシュガーはトンタッタ族に四方八方囲まれ、袋の鼠状態となっていた。

レオ「観念するれす!! シュガー!!! 工場で働かされている仲間達を返して貰いにきたれす!! そしておまい(お前)を気絶させるのれす!!!」

シュガー「…………気絶? ふ~~ん…でもあなた達の仲間なんて知らないよ?」

レオ「ええっ!!? ホントれすか!? ならいいれすよ!」

ウソップ「よくねェよ!! 騙されんなよな!!」

レオ「ああっ!!! あ…危ない…仲間を返すれす!!」

シュガー「誰の入れ知恵? 間抜けなアンタ達が騙されてる事に気づく筈ないもんね…。」

シュガーは大好物のグループフルーツのカゴを放り投げ、戦闘体制に入る。

シュガー「“トンタッタ族”…ここ一年王宮に出入りしないと思ったら……誰かに唆されてたみたいね」

「かかれェ!!! 取り抑えて口を開けェ~~~っ!!」

シュガー「やな感じ…私、弱いと思われてる……。」

すると、シュガーは子供の姿とは思えない高い身体能力を発揮し、“小熊玩具(リトルブラックベアーズ)”を発動。
これにより、シュガーに向かって行ったトンタッタ達は呆気なく、小熊のぬいぐるみにされてしまった。

ウソップ「ん? ん?」

せっかくロビンがトレーボルをシュガーから引き離してくれたのに、これで台無しになった。
その間にも、シュガーは次の一手に出る。

シュガー「契約よ! “私の命令に命尽きるまで従うこと”!!!」

ウソップ「なっ!!! 気付いてたのか!!」

レオ「マズイれす!!」

辛うじて小熊玩具から逃れたトンタッタ族は小熊のぬいぐるみ兵士を仲間と忘れ、戦い始める

シュガー「(トレーボルに知らせないと…!!)」

シュガーは電伝虫でトレーボルに連絡を取ろうとした。
するとその時、何者かがシュガーの下に急接近し、電伝虫を殴り飛ばした(・・・・・・)

シュガー「誰っ!!?」

電伝虫を殴り飛ばしたのは……。

コアラ「危なかった、ライコウさんに言われて地下へ潜入したのは正解だったわ!」

何と、コアラだった。
実はコアラは、ライコウの緊急の命令で地下に潜入するよう言われたのだ。数日も前にドレスローザに潜伏した彼女はすでに地下への生き方を熟知してるので、容易く侵入できたという訳である。

シュガー「百獣海賊団双将軍…そう…あなた達が黒幕ね? なら納得がいくわ…!」

コアラはトンファーを構えると、シュガーも戦闘態勢に入る。

コアラ「(あとはウソップ君、あなたの狙撃の腕よ!!)」

コアラ、シュガーと戦闘開始。 
 

 
後書き
ここから原作と違う展開です。
SOP作戦の完遂をお楽しみに。 

 

第143話:事実を言っているまで

ウソップ「(え!? アイツ、助けてくれるのか!!?)」

シュガーと対峙するコアラに、動揺するウソップ。
しかし彼女の意図を察し、レオを呼び戻す。

ウソップ「レオ、タタババスコを貸せ!!」

レオ「どうするのれすか!!?」

ウソップ「機会を伺って撃ち込むんだよ!! そうすりゃ、無駄な兵力を使わずに済む!!」

レオ「成る程!! さすがウソランド!!」

ウソップ「声デケェって!!」

その間にも、コアラとシュガーは戦い始める。
シュガーはコアラをオモチャに変えるべく、少女とは思えぬ身体能力で移動しコアラに触れようとする。触った生物を強制的にオモチャに変えるホビホビの実の発動条件はかなり緩く、指先を掠めただけでも発動するので、少しでも触れただけで十分なのだ。
無論コアラはそれを熟知しており、十分な間合いを保って躱し続ける。

シュガー「…逃げてばっかじゃ勝てないけど?」

コアラ「躱してるって言って欲しいな。」

コアラが微笑みながらそういうが、コアラ自身は一度も攻めようとしない。

シュガー「(成る程、持久戦に持ち込む気ね…!!)」

コアラはかの“剣帝”ライコウに扱かれ、それ相応の修羅場を潜ってきた。
純粋な戦闘力や経験値、身体能力はコアラが圧倒的に上だろう。
持久戦に持ち込んでスタミナを削ぎ、そこを叩くという作戦だろう。

シュガー「(確かにオモチャ達はトンタッタと戦ってるし、交易港のオモチャもほとんど働いてる。 でもこっちにはトレーボルがいるわ。)」

最高幹部のトレーボルさえ戻れば、コアラを退けることも苦ではないと判断するシュガー。
するとここで、コアラが攻めに出た。

コアラ「はっ!!」

コアラはトンファーを構えて、目にも止まらぬ速さで振るい始める。
シュガーはトンタッタ族の超スピードに対応出来るので躱すことは出来るが、隙の無いコアラに触れるのは困難だと判断し躱し続ける。

シュガー「参ったわ……トレーボルを呼べないのはキツイ…!!」

コアラ「そのために電伝虫を殴り飛ばしたの!」

その時だった!

トレーボル「“ベタベタチェ~~~ン”!!!」

コアラ「っ!!?」

突如コアラに向かって粘液が飛んできた。
不意打ちであったが、そこは百獣海賊団双将軍…コアラは紙一重で躱す。

トレーボル「お前かァ~~~!!!? シュガーを狙ったのはァ~~~!!!?」

怒り心頭のトレーボルが現れ、鼻息を荒くしながらコアラを睨む。

コアラ「そう言われたんだから、言うまでもないでしょう?」

トレーボル「べへへへ!! 成る程~…“麦わらの一味”を囮にしたって訳か~~?」

それを聞いたトレーボルはいやらしい笑みを浮かべると、部下に成りすましたロビンを連れてきた。

トレーボル「べへへへ!! 残念だったな~…その囮もここでお役御免だもんね~~!!」

ロビン「っ…!」

粘液により身動きを取れないロビン。

トレーボル「そしてコイツらもお役御免だもんね~!」

トレーボルは、今度はオモチャにされてない方のトンタッタ達を連れてきた。
彼らもまた粘液で身動きを封じられ、もがいている。

トレーボル「いいか小娘~…この“ベタベタ”は可燃性なのだ…!! 火をつけただけでコイツらは木っ端微塵だもんね~!!」

コアラ「脅してるのね? それでどうする気?」

トレーボル「コイツらの命が惜しくば、仲間の名前を言え!! トンタッタも、“麦わらの一味”も、何もかもな…!!」

コアラ「そんなのバレた所で何になるの? 私達の主を誰だと思ってるの?」

コアラは闘気を放ち、トンファーを2人に向ける。

コアラ「私達の主は、新世界に名を轟かせる海賊達の頂点…四皇が1人“百獣のカイドウ”。 “剣帝”をはじめとした多くの大海賊達を手下に従え、歯向かう者は皆殲滅する…これは脅しじゃないわ、事実を言ってるの。」

コアラの言葉に、トレーボルとシュガーは押し黙る。
カイドウの意に違うことをした者は皆、カイドウ及び百獣海賊団の追及の前に破滅を免れない。彼を怒らせた場合、王下七武海の中でも最も危険とされるドフラミンゴもタダでは済まないだろう。

トレーボル「…だったら、これならどうだ!?」

トレーボルは先程コアラに向けて放った“ベタベタチェーン”を、違う方向へ飛ばした。
その先には、何とウソップが。

ウソップ「うわァっ!!?」

レオ「ウソランド!!」

トレーボル「コイツらがシュガーを狙っていたのは分かってたモンね~…!! これで残すはお前1人!! どうする?」

ウソップ「は、離せ!!」

何とここへ来てウソップが捕まった。
しかし幸いなことに、タタババスコの塊はベタベタチェーンに捕まった衝撃で床に転がっており、レオが隙を見て回収していた。

コアラ「っ…!」

トレーボル「べへへへ!! 万事休すだもんね~…!!」

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-王宮1F、兵隊と小人達-

ここでは、兵隊がグラディウスと戦い窮地に陥っていた。
囮役としてトンタッタ族のカブとランポーが攻撃を仕掛けたが、グラディウスは両腕を爆発させてカブとランポーを倒し、兵隊の胴体を鷲掴みにしたのだ。

グラディウス「オモチャの速度など知れている。 俺は“パムパムの実”の能力者! パンクさせられるものは…俺自身の体…そして俺が触れた”無機物”!!」


ボン!!!


兵隊「おおおお!!」

グラディウスは自身の実の能力を説明すると、片足の兵隊の頭部全体をまるで風船の様に膨らませる。

グラディウス「プリキなどは跡形もなく消し飛ぶ…!!!!」

兵隊「は…放せ!!! 私には使命が……!!」

グラディウス「粉々に消えてなくなれ!!!

ライコウ「はい、ドーン!」


ドォォオオン!!


グラディウス「!!?」

グラディウスが片足の兵隊をパンクさせようとした正にその時、強烈な剣圧が襲いグラディウスを吹き飛ばした。
それはライコウの剣技の中でも威力が高い“奥義・船割”だった。
グラディウスの腕から放れた片足の兵隊はまるで風船の空気が抜けるかのようにみるみる小さくなり、元の大きさに戻った所をルフィがキャッチした。

ライコウ「お、ナイスキャッチ!」

グラディウス「き、貴様らは…!!」

ライコウ達、グラディウスを急襲。 

 

第144話:コアラの作戦

ルフィ「兵隊!!フランキー達は一緒じゃねェのか!?」

兵隊「…………君は…!」

ヴィオラ「麦わら!! 話してる暇はないわ!!!」

グラディウス「麦わらのルフィ…!! ヴァイオレット!! 貴様よくも若様を裏切ったな!!!!」

ヴィオラ「!!!!」

ルフィ「よし来い!!」

ヴィオラ「ダメよ! 走って!! 時間が無い!! とにかく2階の“スートの間”へ!! あの人も極めて厄介な男!!」

兵隊「ヴィオラ様!!? 何故あなたが…!!?」   

ヴィオラ「!? 私を知ってるの!? 私もあなた達をずっと見てた!! あなたとレベッカを!! あなたの10年間の奮闘…私は知ってる…!! 辛かったでしょう…ありがとう!」

ルフィ「?」

ライコウ「…。」

片足の兵隊「!!? …よしましょう、今はまだ!! あなたやリク王の苦しみを越えるものがありましょうか!!」

グラディウス「ヴァイオレット!! 俺は裏切り者を絶対に許さねェ!!」

ヴィオラ「裏切ってなどいないわ!! 10年前のあの日から私はあなた達に心を許した事など一度もない!!」

グラディウス「若への侮辱に変わりあるまい!! “メットパ」


キンッ…


ドバッ!!


グラディウス「ガハッ…!!!」

ライコウ「危ねェマネすんな、ビックリするじゃねェか。」

グラディウスはヴィオラに問い掛けながら頭部を膨らませ、強大な爆発を起こそうとしたが、そうなる前にライコウの一太刀を食らい血を流して倒れる。

兵隊「あ、あのファミリーの幹部を一捻り…!!」

ヴィオラ「強い……強すぎる!」

ライコウの圧倒的な実力に、呆然とする2人。
その時、ルフィは何を思ったのか窓に向かって猪突猛進し、ガラスをぶち破った。

ヴィオラ「きゃあ!!? 何処へ行く気!?」

ルフィ「とにかく2階に行きゃいいんだな!? あの辺か!?」

何とルフィは窓を突き破った後、ゴムゴムの実の能力で2階へ直行。
あっという間にスートの間へ着いてしまった。

ライコウ「さて…あとはコアラがどうにかしてくれりゃあ思う存分暴れられるわな。」

ゴキゴキと首を鳴らし、コートにしまっていた酒瓶を取り出すライコウ。
グビグビと酒を飲む音が響く中、グラディウスが動いた。

グラディウス「ま、待て…!!」

ライコウ「?」

グラディウス「若様の下にはいかせんぞ…!!」

ライコウに斬られたグラディウスが、満身創痍で立ち上がる。
しかしその姿は今すぐにでも倒れそうで、かなり痛々しい。

ライコウ「中々の忠誠心だが…喧嘩売ってる相手分かってんのか?」

グラディウス「た…例えその身が尽きようとも、俺は…俺達は、若様に忠誠を誓っている限り決して命令には背かない…!!」

ライコウ「時と場合によっちゃあ……その忠誠心が、てめェ自身を滅ぼすんだよ。」

グラディウス「黙れ!!!」

グラディウスはライコウに突進し、パムパムの実の能力で攻撃しようとするが、ライコウは酒瓶に覇気を纏わせてグラディウス目掛けて投げつけた。
脳天にクリーンヒットし、グラディウスは脳震盪で地面に伏した。

ライコウ「七武海の手下風情が四皇の右腕に敵う訳ねェだろ、下らねェ。」

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一方、交易港ではコアラがシュガーとトレーボルの両者と対峙していた。
相手は人質が多数おり、作戦の要とも言えるウソップも捕まってしまった。対するコアラ側は、タタババスコの塊を回収したレオのみ。
圧倒的にコアラが不利な立場である。

コアラ「(どうしよう……どうすればシュガーを気絶できるの…!?)」

一味の頭脳でもあるライコウや参謀総長を担うコラソン、頭の切れるブラックやローならばこの状況を打破できる一手を予め用意してるだろうが、コアラは生憎それを用意していない。
つまり、コアラには一発逆転の「即興の作戦」に賭けるしかないのだ。

コアラ「(私の手元にあるのは“タタババスコ”、“トンタッタ族のレオ”、“得物のトンファー”の3つぐらい……これでどうすれば…!!?)」

トレーボル「べへへへ!! もう詰んだのか~? 双将軍もたかが知れたな~…!!」

シュガー「…。」

ウソップ「(頼む、お前しか出来ねェ!!)」

ロビン「(コアラちゃん、あなたには迷惑を……!!)」

するとコアラは何か作戦を立てたのか、微笑んだ。

コアラ「レオ君、それを私に投げて!!」

レオ「!? タタババスコの塊をれすか!!? これはシュガーに…!!」

コアラ「私に任せれば全部成功よ!!」

レオ「ならいいれす♪」

コアラ「(え~…。)」

レオはコアラに目掛けてタタババスコの塊を投げつけた。
するとコアラは…。

コアラ「(いけっ!!)」


カン!


『!!?』

コアラはトンファーを駆使し、シュガーの口に目掛けてタタババスコの塊を打った。
しかしそれはシュガーによって受け止められてしまう。

コアラ「っ!!? 何て反射神経…!!!」

レオ「そんな~~!!」

シュガー「私に毒を混ぜたグレープを食べさせる…考えたわね。 でもこれでお終いよ。」

トレーボル「べへへへ~…今度こそ終わりだな~~!!!」

この時、シュガーがグレープを毒入りと勘違いせず、タタババスコの塊と知っていたら違った展開だっただろう……。

シュガー「あなたに食べさせるのは骨が折れるだろうし…毒入りグレープはこの男に食べさせるわ。 この男が作ったんでしょう? 小人に出来るとは思えないわ。」

コアラ「!!」

『ウソランド~~!!!』

そして食べさせる相手もウソップでなければ、違う展開だったろう……。

シュガー「アンタが食べて死になさい!!」


ゴッ…クン!


ウソップ「ぎィやああああああああああ!!!!!」

シュガー「きゃああああああああ!!!!」

コアラ「きゃあっ!!?」

あまりの辛さに某芸人顔負けのものすごいリアクション顔したウソップ。
シュガーはゼロ距離でこれを見ていたため驚きの余り気絶してしまった!

トレーボル「おい! シュガー!! 気をしっかりもてェ!!」

レオ「あァ~~~!!!」

SOP作戦、思わぬ形で完遂!? 
 

 
後書き
ピンポンパンポン♪
いつも閲覧してくれる皆様にお知らせいたします。やっとドレスローザ編前編が終わりました。ここから先は大乱闘メインの後編となります。
ですがその前に、コラボネタを実施します。リボーンがいいかハンターハンターが良いか…感想かメッセージで選んでくれると嬉しいです。
ネタとしてなら、リボーンの方が早く出来上がると思います。 

 

第1話:2人の少年

 
前書き
ハンターハンターとのクロスオーバー企画です。
自分にはこれが限界です……すいません。ご容赦ください。 

 
事の発端は、つい先程…数時間程前であった。
ゴンとキルアが暇潰しに街を散策していたところ、怪しい念能力者に絡まれたのだ。勿論、ゴン達はそんな念能力者に負ける筈がなく、実際弱かったのでキルアが気絶させようとした。
しかし念能力者は最後の悪あがきに念能力を発動。これが想定外の事態を生んだのだ。
その念能力者は「人をあっという間に飛ばすことができる」という能力だが、それがまさか別次元の世界へと飛ばせるとは思いもしなかっただろう…。




















-新世界、とある島-

この島には、“人間屋(ヒューマンショップ)”という人間や珍しい種族のオークションが盛んに行われている「人類売買(人身売買)ショップ」がある。
政府や海軍が「職業安定所」と称し黙認しているこの忌まわしき場所の檻の中に、1人の女性が酒を飲みながら待っていた。
着物姿にフード付きマントを羽織った、黒髪ロングで漆黒の瞳を有したプロポーション抜群の女性…名をハゴロモといい、海賊界の皇帝として新世界に君臨する「四皇」の一角“百獣のカイドウ”が率いる百獣海賊団の幹部の1人である。
何故こんなところに居るのかは…ギャンブルで一文無しになったので身を売り、店の有り金を盗もうとしているのである。

ハゴロモ「今日は大損だったな……泣き上戸になりそう…。」

グビグビと酒を飲むハゴロモ。
一応檻からはいつでも抜けられるが、ごっそり強奪(ちょうだい)したいのでこうして忍耐強く待っているのだ。
その時だった。

「あの、まだ寝てますけどいいですかね…?」

「気にすんな、早くぶち込め!!」

そう言って運営側のスタッフが、2人の少年を自分の隣に投げ入れた。
1人は、ツンツンに逆立った緑色がかった黒髪で詰襟のような服装をしている少年。もう1人はツンツンに立った短い銀髪でラフな格好をしている少年だ。
例の爆発する首輪と手錠をつけられてるとはいえ、幸いケガはしておらず、まだぐっすり眠っているようだ。

ハゴロモ「これは参った……。」

ハゴロモは頭を掻いて溜め息を吐く。
海賊という立場とはいえ、ハゴロモは敵には情けはかけずとも無害な子供に手を掛けるような外道ではない。むしろ助けたいタイプだ。
三十路を過ぎた彼女にとって、さすがに母性というモノが湧く。この2人の少年を見殺しにするのは少しキツイのだ。

ハゴロモ「どうするか…。」

そう呟いた時、例の2人の少年が目を覚ました。
ボーっとした顔をしており、どうやら睡眠薬を飲まされたようだ。

?「アレ…?」

?「んだよここ…まるで牢屋じゃんか。 しかも何だよこの首輪…犬じゃねェんだけど。 手錠までご丁寧にしやがって。」

ハゴロモ「(……もしかして、“人間屋(ヒューマンショップ)”を知らないのか…?)」

2人の反応を目にし、瞬時に判断するハゴロモ。
もしかしたらこの世界の常識すら知らない可能性もあると思い、彼女は声を掛けた。

ハゴロモ「気が付いたかな? 2人共。」

?「!」

?「……誰だよ、アンタ。」

ハゴロモ「私はハゴロモ…海賊だ。」

?「海賊!?」

?「…マジで?」

ハゴロモ「ウソを言う女に見えるかな? あ、初対面だから疑って当然だな…フフッ♪」

クスクスと笑うハゴロモ。
それに対し、2人の少年は困惑気味…特に銀髪の少年の方は明らかに警戒している。

ハゴロモ「そちらこそ、名前は? 私だけ名乗ってだんまりじゃあ筋が通らないぞ? フルネームじゃなくて結構だ。」

?「俺はゴン!」

?「…俺はキルア。」

ハゴロモは微笑みながら「そうか…」と言い、酒を飲む。

キルア「ハゴロモ…つったっけ。 アンタ何でここにいるんだ?」

ハゴロモ「ギャンブルで大負けして一文無しになってな…この店の有り金を丁重に頂こうとしてたところさ。」

キルア「質悪っ…。」

ゴン「強盗だね。」

ハゴロモ「フフ…褒め言葉と受け取ろう。」

ハゴロモの目的を知り、引き攣った笑みで彼女を見つめるゴンとキルア。
金とるために身を売り、店を潰そうというのだから2人の反応は当然の反応とも言えよう。

ハゴロモ「そうそう、その首輪は爆発するから触らない方が良い。」

ゴン「え!?」

キルア「なっ…。」

爆発する首輪をつけられたことを知り、さすがに驚く2人。
逃げられないようにするのが目的だろうが、いくら何でもやり過ぎではと言いたげな顔で2人はハゴロモを見る。

ハゴロモ「ま、私ならすぐ外せるが…今外すのはダメだな。 スタッフが来たら私が動くから、それまで待ってくれ。」

ハゴロモの提案を聞き、ゴンとキルアは互いに顔を見合わせ小声で話し合う。

ゴン「キルア、どう思う?」

キルア「あの女の言ってることは信じにくいけどな…多分こういうのには詳しい類だと思うぞ。」

ゴン「じゃあ、あのお姉さんを信じよう。」

キルア「(ま、妙なマネしたら殺すからいいか…。)」

一応2人はハゴロモを信じることにした。

ハゴロモ「しかし…キルアと言ったか? 場合によっては私の首を取ろうと考えているだろうが、それは考え直すべきだと思うぞ。」

キルア「!!?」

ハゴロモの言葉に、キルアは目を見開く。
何とハゴロモはキルアの心を読み取ったのだ。

キルア「……アンタ、何者だ…!?」

ハゴロモ「そうだな……それ相応の修羅場を潜り抜けた歴戦の女傑、とでも言っておこうか。 ただの海賊とは思ってないだろう?」

微笑みながら残った酒を飲み干すハゴロモに、キルアは一筋の汗を浮かべる。
少年ながら多数の実戦経験を積んでいるキルアでも、自分の心を読まれるのは想定外。ゆえに、ハゴロモがかなりの実力者であるのがすぐに分かるのだ。

キルア「(もしかしたら、とんでもねェ大物かもな…。)」

そんな中、ゴンがハゴロモに尋ねた。

ゴン「ねェ、ハゴロモさん。 ここって何なの?」

ハゴロモ「……やはり知らないのか?」

ゴン「うん。 俺達全然違うところで暮らしてたし、正直別の世界に来てる気がするんだ。」

ハゴロモ「そうか…なら説明しよう。 ここは人間屋(ヒューマンショップ)という人身売買専門店。 ここにいる人らはオークションで売られ、余程運が良くないと一生奴隷暮らしを強いられる。 因みにここは商品管理部屋だ。」

ゴン「人身売買って、いけないことなんでしょ?」

ハゴロモ「その通り…法で厳禁されてる。 だが海軍や政府は黙認してるのさ…訳アリでね。」

キルア「んだよそれ…最低だな。 じゃあこのままだと俺とゴンとアンタは奴隷ルート直通なんだな?」

ハゴロモ「私はただ金稼ぎに来ただけだが、本来ならそうだろうね。」

その時、10人程のスタッフが現れ檻を開けた。

「オラ、早くしろ!!」

「時間だ!!」

その横暴な態度に、嫌悪感を露にするキルアとゴン。
そんな中、ハゴロモが口を開いた。

ハゴロモ「行くぞ2人共。」


ドクンッ!


『!!?』

ハゴロモがスタッフ達を睨むと、一斉に泡を吹いて倒れた。
まるでハゴロモによって意識を奪われたかのようで、それを間近で見ていた2人は呆然とする。

ハゴロモ「これは運が良い…いっぱい金持ってるじゃないか。」

ハゴロモはそう言ってスタッフの財布を全部奪い、その後に鍵を奪って首輪と手錠を解き、ゴン達も解放する。

ゴン「皆気絶してる……。」

キルア「アンタ…マジで何なんだよ…。」

ハゴロモ「それはここを出てから教えよう。」

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檻から出て金奪ってトンズラした3人は、空腹時だったので食事をすることとなった。
因みにハゴロモはパエリア、ゴンとキルアはミートスパゲティを頬張っている。

ハゴロモ「いやあ、儲かった!!」

ゴン「やってることは犯罪だけどね。」

キルア「ゴン、それ犯罪者(かいぞく)に言っても意味ねェから。」

キルアのご尤もな言葉に、ゴンは「あ、そうか!」と頷く。
ハゴロモに至っては吹き出しそうになるのを堪えている。

ハゴロモ「若々しいな~…。」

キルア「いや、アンタそこまで老いてないだろ…。」

ハゴロモの呑気な呟きにツッコミを炸裂させるキルア。
すると店員が現れ、領収書をテーブルにおいた。

「会計は124ベリーです、食べ終えたらお支払いください。」

ハゴロモ「あァ、ごちそうさま。」

キルア「ベリー? 何だそりゃ? 通貨変わってるじゃん。」

ゴン「おっかしいな~…世界共通通貨はジェニーの筈なのに…。」

ハゴロモ「(……ベリーすら知らないのか? それにジェニーという単語……もしかしたら、2人は“別世界”から来たかも知れないな。)」

ゴンとキルアの反応に、目を鋭くするハゴロモ。
恐らくこの世界の知識は皆無だと判断し、2人に告げる。

ハゴロモ「この世界の知識なら私に任せろ。 裏社会のネタも教えておく必要もありそうだ。」

ゴン「裏社会?」

ハゴロモ「この“新世界”は海の覇権争いが激しいからな。」

その時だった。

?「何やってんだ、姐さん。」

ハゴロモ「!」

ハゴロモに声を掛けて来る者が。
スーツを着用し黒い羽毛のコートを羽織った隻眼の大男だ。

ハゴロモ「奇遇だな、オールドメイド。 お前も来てたのか。」

オールドメイド「情報収集で来てたんだよ。」

男はオールドメイドという名で、どうやらハゴロモの仲間のようだ。

ゴン「おっきいね、あの人…3mはあるんじゃない?」

キルア「どうなってんだ、この世界の身長ってのは……。」

オールドメイド「!」

小声で会話をするゴンとキルアに気付いたオールドメイドは、溜め息を吐いた。

オールドメイド「姐さん…アンタっつー人は…。」

ハゴロモ「別にいいだろう? 自己責任が原則だろう、ウチの一味は。」

オールドメイド「そーっちゃそうだが…。」

明らかに困った仕草を見せるオールドメイドに、ゴンは声を掛けた。

ゴン「おじさん、出来ればハゴロモさんのお家に行きたいんだけどいいかな?」

キルア「ハァ!? バカかお前、不用心すぎるだろ!! いいか、ただでさえあの女は何もしないで大の大人約10人の意識奪ったんだぞ? そいつの仲間なんてロクでもねェに決まってんだろ!!」

オールドメイド「ハハ…ロクでもねェっていう点は事実だな…。」

オールドメイドはキルアの言葉に顔を引き攣らせる。
何せ自分の仲間は暴れん坊や武闘派が多いのだから。

ハゴロモ「ゴン、キルア。 案ずることは無いぞ? 私はこう見えて一味でもかなり地位が高い方だ。 信頼も厚いから何とかできる。」

キルア「……。」

ハゴロモの一言に、半信半疑なキルア。
だが…。

ゴン「キルア、行こうよ! ハゴロモさんがウソをつくとは思えないよ? 俺とキルアをハメる理由も分からないし。」

キルア「……まァ、動機が見当たらねェのは事実だな…。」

ハゴロモが自分達を助けたのに、何故わざわざハメるのか…その理由が見つからない以上、彼女がウソをついている可能性はかなり低い。
ゴンの言うことには一理ある。

キルア「……分かった。 だけど俺とゴンに危害加えるんなら、容赦しないから。」

そう言ってキルアは、凄まじい殺気を放つ。
それを浴びたハゴロモとオールドメイドは…。

オールドメイド「……ムラマサさんと似たかよったか…姐さん、とんでもねェ逸材拾ったな…。」

ハゴロモ「それなりに出来る子だってことが分かっただろう?」

キルアの殺気に怯むどころか、平然と評価していた。

キルア「! …スゲェな、俺の殺気を至近距離で浴びてビビんねェ奴なんて久しぶりに見た。 結構マジだったんだぜ?」

オールドメイド「こちとら大海賊だからな…そういうの(・・・・・)は慣れっこなんだよ。 ケツの青いミーハー共なら圧倒できるだろうがな。」

ハゴロモ「それじゃあ、案内するとしよう。 我ら百獣海賊団の本拠地へ。」

これが、別世界から来た「ハンター」と大海に君臨する「大海賊」の邂逅の瞬間であった。 
 

 
後書き
今後の方針は、予定では以下の通りになるかと思います。

・一味のトップである四皇・カイドウと副船長ライコウとの邂逅
・幹部達と模擬戦
・敵対勢力と交戦

少し更新が遅くなるかもしれませんが、お楽しみに。
 

 

第2話:ゴンとキルア、ワノ国へ

キルア「海が沸騰してる…。」

ゴン「こんな海見たことないよ、キルア!」

ハゴロモによって船に乗せられ、彼女が属する百獣海賊団の本拠地であるワノ国へ向かうことになったゴンとキルア。
その道中で見た沸騰する海を見て、キルアはドン引きしゴンは目を輝かせる。

ハゴロモ「“新世界”の海は何もかも常識外れだからな。」

ゴン「“新世界”?」

ハゴロモ「この世界を一周する航路“偉大なる航路(グランドライン)”の後半の海の通称さ。常に海の覇権争いが起こっていてな…私達百獣海賊団は他の勢力より一歩リードしてるところだ。」

ゴン「じゃあ、ハンターとかいるの!? ハンター試験もありそう!」

ハゴロモ「賞金稼ぎはいるが…資格とかそういうのは無いな。」

キルア「(成る程、何となくこの世界のことが分かってきたぞ…。)」

ハゴロモとゴンの会話に、キルアはある事実に辿り着く。
キルア達のいる世界には稀少な事物を追求することに生涯をかける「ハンター」がおり、数百万分の一の難関と言われるハンター協会主催のハンター試験を突破した者はプロのハンターの資格を得ることが出来る。
しかし今自分達がいる世界は、ハンター協会どころか自分達の知る「ハンター」が誰一人いないということが分かった。むしろ海賊がハンターになりかけているのだ。

キルア「(完全に別の世界に飛んでんな、俺ら…どう帰るか……。)」

その時、雪が降ってきた。

ゴン「雪!?」

キルア「さっきまで沸騰してた海も穏やかになってやがる…本当にデタラメだな…。」

ハゴロモ「雪が降り始めたなら…そろそろ本拠地が近くなった証拠だな。」

「「!!」」

ハゴロモ「ワノ国は冬島という一年中冬の季節である島なんだ。 雪見酒は最高なんだ…上陸の際は余っていたコートを貸すからそれで我慢してくれ。」

ハゴロモの気配りに、ゴンは満面の笑みで「ありがとう、ハゴロモさん!!」と礼を述べる。

ハゴロモ「さァ、そろそろ到着だ。」

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-ワノ国-

雪景色が広がるこの国にある、鬼の角のような外見が特徴の山がそびえている。
それこそが、かの百獣海賊団の根城。
ゴンとキルアは、そこへ連れられていた。

「ハゴロモの姐さんが何か連れて来てるぞ…!」

「何だアレ? ガキが2人?」

「銀髪の方、割と美人だな…男だが。」

ガヤガヤと騒ぐ海賊達。
ハゴロモは「客人だ」と告げたが、元々新世界の海に君臨する四皇の客人は、大抵は大海賊か闇の世界の大物達だ。
百獣海賊団も、この世界で最も危険な犯罪者の1人である“犯罪界の絶対王者”ギネス・スパーツィオと同盟関係であり、“新世界の怪物”と呼ばれ裏社会を牛耳る大富豪ギルド・テゾーロともパイプがある。
そんな中、一大勢力を誇る海賊団の幹部が見知らぬ少年2人を招き入れたのは異例中の異例であった。

ゴン「何か…ガラが悪そうだね…。」

ハゴロモ「案ずるな、皆この一味の者だ。」

その時、散弾銃を腰に差して煙草を咥えた長身の男がハゴロモの前に現れた。
名をバロン・ブラックといい、“海賊男爵”の異名で知られる一味最古参の海賊の1人だ。

ブラック「……何連れて来たんだアンタ。」

ハゴロモ「“人間屋(ヒューマンショップ)”で知り合ったんだ。 色々あって家出してたところを攫われたらしくてな。」

ブラック「また金取りに身ィ売ったのかよ……ギャンブルに負けたんだな? ちったァ自重しろよ。」

ハゴロモ「お前も人のこと言えないだろ。」

ブラック「それ言うなや…。」

紫煙を燻らせながら、頭を抱えるブラック。

ブラック「つーか、それ以前にそういう趣味(・・・・・・)あったのか。」


メコッ!!


ブラック「ぶっ!!」

ハゴロモはその言葉にカチンと来たのか、満面の笑みでブラックの顔面を掴んで壁に叩きつけた。
それを間近で見た一同はドン引きする。

ハゴロモ「そういう言い方(・・・・・・・)はいかんなァ~♪」

ブラック「ってーな、事実を言ってるまでだろ…じゃあそう言い切れる証拠出せよ。」

ハゴロモ「“悪魔の証明”をしろと言いたいのか男爵殿?」

ブラック「その言葉、使い方合ってんのか?」

ハゴロモとブラックが口論を繰り広げる中、オールドメイドがブラックに尋ねた。

オールドメイド「この2人、どうする?」

ブラック「船長と副船長に聞かねェと何とも言えねェな…一応あの2人がこの一味を仕切ってるからな。」

オールドメイド「まァ、そういう訳だから2人共、今からこの一味のトップ2名の所に行くから。」

ゴン「う、うん…。」

キルア「……OK。」

ハンター2名、最強2人と邂逅? 

 

第3話:“覇王達”との邂逅

ゴンとキルアは、オールドメイドによって山の奥…カイドウとライコウの居座る広間へと案内されていた。

カイドウ「オールドメイド…何だ、そのガキ共は。」

酒をガブガブ飲んでいたカイドウは、ゴンとキルアに目を向ける。

オールドメイド「ハゴロモの姐さんが連れてきたんだよ。」

すると今度は、刀の手入れをしていたライコウが口を開く。

ライコウ「アイツが? こんな化け物屋敷に客人として呼び込むたァ、相変わらず物好きな女だ。」

オールドメイド「2人共、デッケェ方がカイドウさんで小せェ方がライコウさんだ。」

ゴン「分かりやすいね。」

キルア「特徴ぐらい言えよ…。」

オールドメイドの雑な紹介の仕方にツッコミを炸裂させるキルア。

ゴン「……ところでキルア、あのおじさん人間なのかな?」

キルア「いや、どう見ても人間じゃねェだろ…。」

カイドウを指差しながら尋ねるゴンに、キルアは複雑な表情で返答する。
彼らは色んな者達と出会い、時には戦ってきたが、鬼のような見た目と自分達の数倍以上の体躯を誇る人間なのか生物なのか分からない輩には動揺するに決まっている。
一方のライコウは…。

ライコウ「(どういう因果でこの2人が“ONE PIECE(こっち)”に来てんだ!!?)」

※忘れている方もいるでしょうが、ライコウは転生者です。

ライコウ「(マジでか!? ハンターハンターのゴンとキルア!? こんなんアリか!?)」

内心では滅茶苦茶焦っているライコウ。
顔に一切出さないのは、さすがである。

カイドウ「おいガキ共…本当にただのガキ共(・・・・・・)なのか?」

酒を飲みながら問うカイドウに、ゴンとキルアは目を見開く。
2人共、念能力者であるということはカイドウとライコウに告げていない。だが、多くの修羅場を潜り抜けた猛者であるカイドウは、2人の底知れぬ力を感じ取ったようだ。

ライコウ「まァ……俺達は血で血を洗う“覇権争い”を若ェ頃からやってきたからなァ。 お前ら2人の力量ぐらいは分かるわな。」

刀を鞘に納め、ライコウはゴキゴキと首を鳴らす。

ライコウ「…んで、その2人連れて来て何をしに?」

ゴン「おじさん、ここに居てもいい?」

キルア「ゴン!!?」

ゴンのストレート過ぎる質問に、キルアはビックリしてゴンに詰め寄って耳打ちした。

キルア「……あのな、ゴン。 そもそも、あの怪物とオッサンが話し合い通じる奴に見えるか?」

ゴン「それは…。」

キルア「それに元の場所に帰りてェ俺達を見逃すとは思えねェ…絶対俺達を利用するに決まってる。 相手は海賊だ、絶対ロクなモンじゃねェよ。」

ライコウ「ここに居たいのか? 別にいいが。」

キルア「いいのかよ!?」

ライコウの即断に、思わず突っ込むキルア。

ライコウ「別にお前ら2人を傘下に引き込もうとはしねェさ。 だが…野放しにして他の勢力の手中に収まるのは御免だ。」

ゴンとキルアの実力は知らないが、2人の潜在能力を知られるのはリスクを伴う。
ビッグ・マムのような軍事力の増強を始めている勢力に引き取られたら何をされるか分からない。ならば子供であろうと客人として自分の目が届く範囲に置いておく方が余程いい…ライコウはそう判断したのだ。

ライコウ「ま、お前らのためにも“百獣海賊団(おれたち)の旗”を貸してやる。悪くねェ話だ。」

「「旗?」」

ライコウは笑みを深めながら説明を始める。
海賊界の頂点に君臨し、新世界の海を統治する四皇は多くの島々を支配下に置きナワバリとして護っている。その戦力は国を容易く滅ぼせる程の強大さを誇り、想像を絶する実力者で構成されている。
全てを望むがままに掌握でき、不可能なことはほとんどない……それは海賊達にとっては恐怖の象徴である。
その旗を貸してやるとなれば、ゴンとキルアは最低限の身の安全を保障されることとなる。四皇の旗は、一種の保険のようなモノなのだ。

ライコウ「……どうだ?」

キルア「……アンタ、何考えてんだ?」

キルアの言葉に、ライコウはピクリと反応する。

ライコウ「……と言うと?」

キルア「見ず知らずの他人に恩恵をもたらしていいのかって言ってんの。 もしかしたら、俺がアンタの首取るかもしれないんだぜ?」

ライコウ「何だ、そんなことか? 俺ァ海賊だ…目の前の輩を生かすも殺すも自由だし、お前らに恩恵を与えるか束縛するかも自由だ。 それに客人として呼ばれた以上、お前らに俺が刃を向ける理由は無ェ。」

ライコウの言葉に、ゴンとキルアは妙に納得してしまう。

ライコウ「そういやあキルア…俺の首取るかもしれないっつったな? それは無理だ。」

キルア「?」

ライコウ「呑気に突っ立ってるが、2人共俺の得物の射程範囲内だからな。」


ゾクッ!!


「「!!?」」

一瞬だけライコウから放たれた強烈な威圧感に、ゴンとキルアは身構えた。
それを見たカイドウは、笑みを浮かべた。

カイドウ「ウオロロロロ…!! やるじゃねェか…!!」

グビグビと酒を飲み、笑い上戸になるカイドウ。
それに釣られ、ライコウも笑みを浮かべる。

ライコウ「ハハハハ! スマン、脅かすつもりじゃなかったんだ。 しかし…俺の“覇気”を直に浴びて倒れるどころか反応できたとは驚いた。」

ライコウは杯に酒を注ぎ、グビグビと飲む。

ライコウ「益々気に入った…好きなだけ居るがいい。 おい、オールドメイド。 どっか部屋5室分開いてたろ? どれか一部屋選んどけ。」

オールドメイド「うっす。」

オールドメイドは欠伸をしながらコートをなびかせその場を去る。

ライコウ「というこった…便宜上は俺がカイドウの代役として仕切ってるが、そもそもここにいるのは正義の味方とは無縁の呑んだくれ・暴れん坊・戦闘狂・殺し屋・能天気・自信過剰・後先考えない脳筋共といった“海のクズ”の梁山泊だ。 気にせず好きに関わるがいい。」

キルア「余計危険さが伝わったわ!!」

こうしてゴンとキルアは、ワノ国での無期限滞在を許可された。 

 

第4話:キルア曰く

百獣海賊団を仕切る怪物2人…カイドウとライコウとの邂逅を果たしたゴンとキルアは、オールドメイドに空き部屋へ案内されていた。

オールドメイド「ここがお前らの部屋だ。 一応押し入れに布団とか色々あるし、何か用でもあったらその辺の幹部とっつかまえて訊け。 以上。」

キルア「雑だな、オイ。」

オールドメイドのザックリとしすぎた説明にツッコミを炸裂させるも、了承するキルア。
ゴンも同様に頷く。

キルア「風呂とか飯はどうなんの?」

オールドメイド「飯は食いてェ時にライコウさんにでも頼め。 ウチのオカンは家事全般得意だし。 風呂は…タイミングにさえ(・・・・・・・・)気を付けりゃあ好きなだけ入れ。 詳しいこたァライコウさん辺りが言ってくれるだろ。」

オールドメイドは背を向け、障子を閉めてその場を後にした。

ゴン「許可貰えて良かったね、キルア。」

キルア「そうだな。」

四皇の客人として迎え入れられた2人は一安心する。
これで事実上の衣食住を保障され、さらに人攫い等の被害も受けずに済む。
隠れ蓑としては最高だ。

キルア「でもよ…ゴン、お前分かってる?」

ゴン「何を?」

キルア「あの吞んだくれの船長…カイドウは相当ヤベェよ。 言ってたろ? 俺達に対して“本当にただのガキ共なのか”って。 多分俺達がハンターだってことと念能力者だってことまでは把握できてねェと思うけど、少なからず俺達が只者じゃねェって見抜いてる。」

ゴン「でも、俺達に対し危害を加えるような感じはしなかったよ?」

キルア「それはどうだか……。」

その時、障子をスパンッと開けてハゴロモが現れた。

ゴン「ハゴロモさん!!」

ハゴロモ「許可は得られたようだな。 私だからかもしれないが。」

畳の上に上がり「どっこいせ」と言って座るハゴロモ。

キルア「何でここに来たんだ?」

ハゴロモ「副船長から“然るべき時が来るまでお前が世話をしろ”と言われてな。 まァ見ず知らずの幹部よりも私の方が信用は出来るだろう?」

その言葉に、キルアは目を細める。
副船長・ライコウの言う「然るべき時が来るまで」とは、間違いなくゴンとキルアがこのワノ国から去る時のことを指しているのは明白だ。しかし見方を変えれば、ライコウはゴンとキルアが「この世界の人間でない可能性があるのでは」と推測しているのだ。
つまり、キルアとしては「元の世界に戻れるまで死なせないよう世話をしろ」と言っているようなものなのだ。

キルア「(一番厄介なのは、副船長の方か…。)」

圧倒的強者としての覇気と殺気。副船長としての優れた洞察力。
ゴンとキルアは、今まで様々はハンター達と出会ってきたが、これ程までに強大な輩は久しぶりに出会っただろう……。

ハゴロモ「それよりも2人共、その服装では辛いだろう? このワノ国は冬の季節…風邪をひいては大変だ。」

ハゴロモはそう言うと、2人に着物と羽毛のマントを渡した。

ハゴロモ「緑のがゴン、紫がキルア。 マントは同じ色だからどちらでもいい。」

キルア「ご丁寧に……っ!?」

ゴン「え…!?」

2人は目を見開いた。
よくよく見ると、着物とマントを持っていたのは手ではなく、ふわふわと何か…まるで狐の尻尾のようなモノだった。というか、狐の尻尾である。

ハゴロモ「? どうした?」

さらによく見ると、ハゴロモの頭に狐の耳も生えている。
それを見た2人は、放心状態になる。

ゴン「ハ、ハゴロモさん……そ、それは…。」

キルア「アンタ……キメラアントだったのか…!?」

ハゴロモ「何だそれは…。」

色んな意味のズレが生じ、困惑する3人。
すると、別の声が部屋に響いた。

?「“悪魔の実”を知らねェんだろ?」

「「「!!!」」」

部屋に入ってきたのは、ハートをあしらった服の上に羽毛のコートを羽織った、顔に道化師のようなメイクをした男だ。
男の名はコラソン…本名はドンキホーテ・ロシナンテと言い、百獣海賊団の参謀総長を務める大物海賊だ。

ハゴロモ「コラソン、お前も知っていたのか? この子らを。」

コラソン「ライコウさんから話を聞いたまでだ。」

コラソンは悪魔の実について語り出す。
悪魔の実は「海の悪魔の化身」とも呼ばれる不思議な果実で、一口でも食べると実に宿っている特殊な能力を手に入れることが出来る。
悪魔の実は超人(パラミシア)系・動物(ゾオン)系・自然(ロギア)系の3系統があり、海に嫌われて一生泳げない体質になってしまう等の弱点を抱えてしまうが、実によっては自然災害を引き起こすなどの脅威的能力を得られるのでリスクに見合った利益はある。
さらに悪魔の実の能力は稀に「覚醒」し、さらに強力な力を得ることが出来る。

コラソン「まァ、この世界における“強者”に類する大海賊や軍人の多くは悪魔の実の能力者であるって覚えておきゃあいい。」

ゴン「じゃあ、ハゴロモさんはその“悪魔の実”の能力者なんだね!」

コラソン「あァ、それも動物(ゾオン)系の“幻獣種”。 強力かつ希少な能力を宿している。」

コラソンの説明を聞き、ゴンは目を輝かせる。
今まで見たことない世界で目にしたことのない希少な能力を見れたのだから、興奮するに決まっている。

コラソン「んなことより、副船長から伝達事項だ。」

ハゴロモ「何?」

コラソン「ゴンと…キルアか? 2人の実力を見てみたいって話になった。 外で模擬戦やるから着替えとけ。」

ハンター2名、大海賊と激突? 
 

 
後書き
途中でレオリオのイベントをぶっこもうと思ってます。
内容は秘密です。
 

 

第5話:“死の彗星”

 
前書き
久しぶりです。
すいません、色々あったので…。 

 
珍しく雪が降らない中、外には多くのギャラリーが集まっていた。
客人として迎えられた2人の少年の模擬戦を聞き、海賊達が集まっている。
海賊達の視線を受けながら、ゴンとキルアは互いに準備運動をし、強豪を相手取っても問題無いよう戦闘準備をしていた。

ゴン「誰と戦うんだろうね。」

キルア「さァ? 少なくとも幹部以上の実力者だろ。」

「この世における最強生物」と呼ばれている男・カイドウとその右腕・ライコウが率いる百獣海賊団は、新世界有数の大所帯である。
戦闘員の人数は「まるでゾンビの軍団」と評される程に無尽蔵で、幹部以上ともなればこの世界における最強の軍隊「海軍本部」の最高戦力である4人の“海軍大将”や略奪行為を許可された大物海賊達“王下七武海”と渡り合える腕っぷしを誇るのだ。

キルア「(ま、腕試しっていうならそれ相応の相手を用意するんだろうけど。)」

すると酒瓶を持ったライコウとカイドウが現れ、胡坐を掻いた。
どうやら対戦相手は船長と副船長ではないようだ。

キルア「アンタは相手してくれないの?」

ライコウ「俺ァ見る方だ。 俺やカイドウが出張っちゃあお前らがもたんだろ。」

ライコウのその言葉にカチンと来たのか、キルアはライコウに対し殺気を飛ばした。
キルアの凄まじい殺気は周囲の者すら圧し、幹部達すらも身構える。
しかしライコウは平然としており、「落ち着け、キルア」と諫めた。

ライコウ「そう心配するな、お前らに相応しい相手を用意している。」


ゾクッ!


キルア「なっ!!?」

ゴン「っ!!?」

ライコウの言葉の直後、ゴンとキルアに殺気が襲い掛かった。
濃厚で、全身を食い荒らされる様な殺気(それ)に、キルアは久しぶりに冷や汗を流した。

?「この子らと戯れてよろしいので?」

ライコウ「相性がいいんじゃねェかなって。 一味きっての殺し屋である三妖星最強のお前とな…。」

ゴンとキルアの背後には、1人の男が立っていた。
羽毛の付いた黒いマント、腰に差した一振りの刀、赤い瞳と長い茶髪、顔の刀傷…何より、穏やかな表情からは無縁な強者のみ分かる“禍々しさ”。
明らかに「危険な臭い」が漂っている。

キルア「(マズイ……コイツ、本気(マジ)でヤベェ奴だ!!)」

キルアは冷静さを装うも、目の前の男には怯んでいた。

?「百獣海賊団三妖星・ムラマサと言います。 以後よしなに。」

物腰柔らかなムラマサに、一瞬呆気にとられる。
しかしその瞳から感じられる“凶気”は嫌というほど伝わっている。

ムラマサ「……ハゴロモ、全くあなたという方はつくづく面倒ごとを引っ張って来る……と言いたいですが、今回だけは違うようだ。 子供とは思えぬプロの殺し屋のような殺気…客人としては上出来です。」

クスクスと笑いながら語るムラマサ。

ゴン「……キルア…。」

キルア「分かってる。 このオッサン、相当ヤベェ。」

ムラマサ「オッサンは失礼ですよ。」

ライコウ「何言ってんだ、てめェ俺と同世代じゃねェか。 十分オッサンだ。」

ライコウの一言に、周囲は大爆笑する。
まァ、確かにゴンとキルアから見ればムラマサは十分オッサンだろう……。

ムラマサ「全く……まァいいでしょう。 2人共、準備はよろしいでしょうか?」

ムラマサは腰に差した刀を抜き、構える。
それと同時に、ゴンとキルアも構える。

ライコウ「審判は俺が務める。 ルールは簡単…戦って、何らかの要因で戦闘不能になったら勝敗は決する。 制限時間は10分…俺らを楽しませるんだな。 始めろ。」

ライコウがそう言った直後、キルアとゴンの目の前にムラマサの凶刃が迫った。
身の危険を感じた2人は紙一重で避ける。

キルア「(速い…!)」

その直後、ムラマサがキルアの目の前に現れる。

キルア「なっ…!」

キルアの想像を遥かに超えた速さでムラマサは左手を突き出し、キルアの首根っこを掴んで岩へ叩きつけた。
その衝撃に、キルアは吐きそうになる。

ムラマサ「……おや? もう終わりとは言いませんよね?」

キルア「くっ…!」

その時だった。

ゴン「ジャン!! ケン!!」

ムラマサ「!?」

ゴン「グー!!!」


ドンッ!!


ムラマサの腹部にゴンの拳が減り込み、衝撃が襲う。
ゴンが念能力を用い、お得意の“ジャジャン拳”を見舞ったのだ。

ライコウ「やるじゃねェか…だが…。」

ムラマサ「…そう、それでいいんですよ。」

ゴン「!?」

何とムラマサには通じなかった。
ムラマサの腹部をよく見ると、黒く変色しており殴られた痕すら残っていない。

キルア「……それが“覇気”って力か…?」

ムラマサ「! ……ほぅ、誰かさんに習ったようですね。」

キルア「おかげさまでね…“雷掌(イズツシ)”!!」


ドンッ!!


ムラマサ「ぐっ!?」

キルアは掌から強力な電撃を繰り出した。
至近距離で直撃したため、さすがのムラマサもこれは効いたのか片膝をつく。

キルア「ゴン!!」

ゴン「うん!」

隙を突き、ゴンは再び“ジャジャン拳”を放つ。
今度は覇気による防御が出来てないため、モロに食らったムラマサは吹き飛び岩に激突した。

「ムラマサ様!!」

「何だあのガキ!?」

「ウソだろ、相手は三妖星最強だぞ!?」

混乱する海賊達。
幹部達もこれには驚く。

カイドウ「……甘ェ。 そんなんで倒せる相手なんか相棒が寄越すかよ。」


ボゴォン!!


「「!!?」」

突如土煙が舞い、ムラマサが立ち上がる。
ジャジャン拳を2度食らい、電撃を浴びてなお立ち上がり笑みを浮かべるムラマサに、ゴンとキルアは驚愕する。

ゴン「効いてない…!?」

キルア「いや、効いてはいた。 ただ…向こうが俺らの想像を超えた化け物だってこと。」

ムラマサ「フフ……新世界(このうみ)はタフさと強運が一番大事です。」

ムラマサは首をゴキゴキと鳴らすと、獰猛な笑みを浮かべた。
それはまるで、獲物を見つけた捕食者の如く。

ムラマサ「おおよそ君達の能力は理解出来ました……ここからが正念場ですよ。 持ちうる力を全て使いなさい。」

“死の彗星”、本領を発揮する。 

 

第6話:殺し屋同士

 
前書き
お待たせしました、やっと更新です。 

 
ゴン&キルアVS三妖星・ムラマサの模擬戦。
ハンターとしての戦闘力を見せつけた2人に、“死の彗星(ムラマサ)”はついに本領を発揮しようとしていた。

ムラマサ「私達の知らぬ世から舞い降りし2人の狩人…君達の力に敬意を表し、私も本気で行きますよ。」

キルア「じゃ、こっちから行くよ。」

そう言うと、キルアはムラマサの懐へ急接近して変形した爪で斬り裂いた…はずだった。


スカッ…


キルア「!!?」

キルアは確かに、ムラマサを斬り裂いた。
しかし手応えが無く、それどころかムラマサは血を一滴も流さず生きているではないか。

キルア「(目の前にいるのに…!!?)」

突然起きた現象に、戸惑うキルア。
すると、ゴンが叫んだ。

ゴン「キルア!! 退いて!!」

キルア「!!」

ゴンの声を耳にし、キルアは一旦退いた。
するとその直後、キルアがいた場所にムラマサの刀が襲い掛かっていた。
そのままいれば、確実に斬られていただろう。

キルア「ゴン、何か分かったのか…!?」

ゴン「うん…キルアさ、ムラマサさんとは別の所に(・・・・)攻撃してたよ…!」

キルア「!?」

ゴンの言葉に、目を見開くキルア。
何とキルアは錯覚を起こしてたというのだ。

キルア「……アンタの仕業だろ。 何した?」

ムラマサ「勘がいいですね、如何にもその通り…。」

ムラマサが歩き出すと、ゴンとキルアは驚愕した。
キルアは暗殺術として、死角からの攻撃に重宝される“肢曲”を用いる。“暗歩”という音も無く歩く技に緩急をつける事で自身の残像を相手に見せる事が出来る、暗殺術の中でも高等技術に属する技だ。ムラマサは何とそれを見せつけたのだ。

ムラマサ「私はヒトヒトの実の幻獣種である“ぬらりひょん”の能力者。 敵の自らに対する認識をズラし、ぬらりくらりと戦場を駆ける。 つまり、あなたの私に対する認識をズラしたのですよ。」

ムラマサの能力である“認識操作”は、対象の自らに対する認識を強制的にズラしたり認識させなくすることが出来る。それは自分以外ではなく指定した一定空間にいる全ての存在の認識をも操れる。
ムラマサがやったことは、自らの最小範囲の間合い(・・・・・・・)に能力を発動させ、急接近したキルアの認識をズラしたのだ。だから、ムラマサの能力の範囲外にいたゴンは認識を操作されなかったのだ。

コラソン「相変わらずえげつねェ能力だな…。」

ハゴロモ「アレを見切れる副船長はもっとえげつないぞ?」

ムラマサの恐ろしき能力にコラソンは改めて戦慄する。
尤も、ハゴロモの通りそんなムラマサをも超える怪物が2人いるが…。

キルア「(強制的に錯覚を引き起こすってなると…遠距離による攻撃じゃねェとダメージを与えられねェか、アイツより速く戦わなきゃいけねェのどっちかになるな…。)」

だが、ムラマサの能力の限界は不明とはいえ少なからず万能とは言い切れない。
暫く考えた後、キルアは…。

キルア「さすがにスイッチ入れた方がいいか…。」


ゴゥッ!


ゴン「キルア!」

『!!?』

ムラマサ「!」

ライコウ「(ほぅ…ついに本気出したか…?)」

キルアから漏れ出る、凄まじい殺気。
それを感じ取ったムラマサは、笑みを深め殺気を出す。

ムラマサ「一言だけ言っておきます。 あなた達の前にいるのは“海賊”……海賊界の決闘は生き残りを懸けている。 “卑怯”という言葉は通じませんよ。」

キルア「分かってるよ…俺、アンタを殺す気で行くから。」

ムラマサ「心してかかりなさい、若き力よ……数多の人間達の生き血を啜り続けた、この私の前に立った以上は!!」

ムラマサはキルアの下へ向かい、突きを放った。
キルアはそれを紙一重で躱す。

キルア「(“蛇活”!)」

ムラマサ「!?」

キルアは突然自らの両腕の関節を外し、その両腕を鞭のようにしならせ攻撃を始めた。
虚を突かれたムラマサだが、そこは三妖星最強の男…見聞色の覇気を用いてすべての攻撃を避けていく。

カイドウ「ありゃあ…!」

ライコウ「関節を外して鞭のようにして操る……CP9も真っ青だな。」

今まで見たことのない攻撃法に、さすがのカイドウも驚く。

ライコウ「(とはいえ…こりゃあ俺も止めに入るのは本気じゃねェといかんな…。)」

ライコウは「あそこでやめとくべきだったかな」と頭を抱える。
今のキルアは完全に殺る気モードであり、ムラマサも完全に殺し屋モード。まるで猛獣同士の食い合いのような展開になっており、ゴンすら置いてけぼりだ。

ライコウ「…誰か、あん中入って止められる?」

『無理だよ!!!』

ライコウの提案を即行拒否する一同。
死にたくはないようだ。

ライコウ「女性陣、止められる?」

百獣海賊団の女性幹部であるアリスティアとヒオ、傘下の女海賊・マイにライコウが声を掛けるが…。

アリスティア「どうやって止めろと!? 実力だったらまず無理ですって!!」

ヒオ「副船長命令でもさすがに無理です。」

マイ「そもそも三妖星最強の男を超える実力者はアンタとカイドウさんぐらいだろう…。」

ライコウ「だよな…。」

その一方、キルアとムラマサは激闘を繰り広げていた。
互いに急所を狙ったその戦いは模擬戦どころか殺し合いだ。

キルア「(奴の太刀筋は読めてきた…後は隙を突くだけか。)」

ムラマサ「(彼は私と同じ殺し屋気質…だがそれこそが命取り。 同じ殺し屋としてなら、能力が違うだけでも取る行動はほぼ同じ。 相手が悪かったようですね。)」

ムラマサの斬撃と張り合う、キルアの蛇活。
しかしキルアの手や腕には刀傷が増え、徐々に押されていく。

キルア「(仕方ねェ、ここで決める!!)」

するとキルアは上空へ跳び上がり、ムラマサに向けて電気を帯びた手を向けた。

キルア「“落雷(ナルカミ)”っ!!!」


ドドォッ!!


ムラマサ「ぐぁっ!?」

キルアは落雷のようにムラマサに向かって電撃を落とした。
高圧電流を送り込まれたムラマサは感電するが…。

ムラマサ「成る程…そう来ましたか…!」

キルア「ちぃっ!」

ムラマサは何とか耐えた。
ダメージは受けたものの決定打になっておらず、思わずキルアは舌打ちする。

キルア「まだだムラ「はい、そこまで。」…!!」

ムラマサ「!」

ゴン「ライコウさん!」

ライコウが声を上げ、模擬戦の終了を告げた。
しかし…。

ムラマサ「……副船長、せっかくこれからだってタイミングに何て愚行を…。」

キルア「まだ勝負終わってないんだけど?」

ライコウ「制限時間は10分って言ったろ。 ルールは守りましょう。」

「「…。」」

反論する2人を一言で退けるライコウ。

ライコウ「ま、色々不満も溜まってるだろうが分かったこともある…ここまでだ、飯にすんぞ。」

ライコウはコートをなびかせ、手を振りながら解散を告げるのだった。 
 

 
後書き
コラボは前編と後編で分けようかな…。 

 

第145話:“核”

 
前書き
お待たせしました、やっと投稿再開です。 

 
響き渡る悲鳴。
図らずもシュガーは気絶し、驚愕するトレーボル。

トレーボル「シュガーが…シュガーが気絶しちまったァ~~~~!!!」

コアラ「スゴイ……さすがヤソップの息子さん…!」

『ウソランド~~~~!!!!』

ドフラミンゴ体制の崩壊が始まろうとしていた。














-同時刻、コロシアムでは-

エイセイの前には、満身創痍のディアマンテが。
コロシアムの英雄と称された海賊も、世界政府に君臨する強大な「皇帝」の前では無力と同等……己自身が持ちうる力の全てが通じなかったのだ。

ディアマンテ「ハァ…ハァ…ゲホ、ゴホッ!!」

爆弾のような「突き」。
雨のように降り注ぐ「斬撃」。
剣客達の頂点に立ち続けている大海賊“剣帝(ライコウ)”や大剣豪“鷹の目(ミホーク)”とも張り合えそうな凄まじい攻撃に、ディアマンテは為す術もなかった。

エイセイ「万物よ、我が使役となれ。」

エイセイがそう唱えると、バージェスの“波動エルボー”で散らばっていたコロシアムの瓦礫がエイセイの頭上に集まり始める。
そしてエイセイが無造作に剣を振るうと、瓦礫が一斉にディアマンテに襲い掛かった。

ディアマンテ「瓦礫が…!?」

エイセイの能力は、無機物すら意のままに操れる。
瓦礫に念を与えれば、敵を潰すまで逃さない自動追尾の砲丸となる。
水に念を与えれば、使役することで能力者を溺れさせることが出来る。
エイセイの能力は、それほどまでに強大なのだ。

ディアマンテ「くっ…!!」

このままでは「命が危ない」と感じたディアマンテは、ヒラヒラの実の能力で鋼鉄製のマントを盾にする。


ドガガガガガガガン!!


嵐のように襲う衝撃を、何とか耐えたディアマンテ。
もう瓦礫は襲ってこないと判断し、安堵の息を吐いた。
だが、次に聞こえた声に彼の安心しきった心は崩れる。

エイセイ「僕がその程度で許すとでも?」

すぐ後ろで聞こえたその声に、全身に寒気が走り冷たい汗が額から流れる。

エイセイ「スカーレットを殺したお前も、それを命じたであろう天夜叉も…ファミリー全員この世から消えてもらう。 尤も、あの怪物2人を敵に回して生きていられるかどうかすらも曖昧だが。」


ドガッ!!


ディアマンテの胸から噴き出す血。
怒れる世界皇帝の刃が、ディアマンテの胸を貫いていた。

ディアマンテ「…っは…!!」

血を口から吐き力の抜けたように膝をつくディアマンテ。

エイセイ「……痛いのか? 安心しろ、楽にしてやる。」

ディアマンテ「こ、この……化け物がァ…!! ハァ…ハァ…てめェより先に野垂れ死んだ女がそんなに恋しいか…だったら…てめェも、ここで死にやがれェ!!!」

ディアマンテは拳銃を取り出し、照準をエイセイの眉間に合わせる。
しかしエイセイは、剣に覇気を纏わせ一閃。拳銃を粉砕した。

エイセイ「スカーレット……待たせてすまない…。」

エイセイから放たれる、純粋な殺意と強大な憎悪。
圧倒的強者の「怒り」を前に、ディアマンテは自分の死を確信した。
だが、その時!

「オモチャが人になっていく~~~~!!!!」

「うわああ!! ゴリラになったァ!!」

エイセイ「……これは…まさか…!!?」

ディアマンテ「…っ…何の騒ぎだこれは…。」

血が溢れ出る胸を押さえながらコロシアムを見回すディアマンテ。
周囲を見渡すと、先程まで決勝の乱闘を観戦していたオモチャ達の姿が消え、代わりにオモチャと化していた“人間”達が信じられないかのように自分の姿を見つめ涙を流していた。
中には動物だったオモチャの暴れる姿もあり、色んな意味でコロシアム中、いや“国中”が大パニックとなっていた。

ディアマンテ「何て事に…トレーボルの奴…! シュガーから目を離したかマヌケめ…!」

彼らの“作戦”に大きな亀裂が入った瞬間だ。

バルトロメオ「おう!! いづま泣いてんだァ! 俺ァ子守か!」

自分の後ろで泣き続けるレベッカに怒鳴るバルトロメオ。
口ではそう言ってるもののしっかりと指を結びバリアを張りレベッカを守り続けているが。

レベッカ「違うの…!!」

バルトロメオ「!?」

手の甲で涙を拭いバルトロメオを見上げるレベッカ。

レベッカ「私には…お父様がいたの!!! 思い出した…!!」

バルトロメオ「はァ!?」

涙でぐしゃぐしゃになった顔でそう言うレベッカにバルトロメオが訳の分からない顔をする。
すると、ここでサボがレベッカ達の近くにしゃがみトントンとリングを軽く叩き始めた。

サボ「それがどうやら、この国のカラクリだったようだな…! ライコウさんの言ってた通りだ…!! レベッカ!! 世界皇帝!! 物には必ず…“核”がある。」

ムラマサ「ひとまず…試合に決着をつけましょうか。」

サボ「俺に任せろ!!」

サボの両腕が、武装色の覇気で黒く染まる。

サボ「これが“覇王拳”の…最強の技! “覇王拳奥義・鯨王之唸(げいおうのうなり)”!!!」


ドゴォォォォン!!!


凄まじい爆音と共に爆発するリング。
衝撃がコロシアム全体に響く。

ギャッツ《何と~~!! ルーシーの一撃でリングが沈む~~!!》

もうコロシアムはパニックで済むほどの騒ぎでではなかった。

バージェス「足場が!!」

ディアマンテ「貴様、一体何を!!?」

突然の出来事にうろたえるバージェスとディアマンテ。
するとニッとサングラスの下で目を細めサボが笑顔でディアマンテに向かって口を開いた。

サボ「用ができた、優勝する!!」

ギャッツ《リングは完全に崩壊!! 心なしか水位も下がっていく様だ!!》

地響きとともに崩れていくリング。

ギャッツ《ただちに非難して下さい!!! コロシアムの安全は保証できない~~!!》

雪崩のように出口へと逃げる観客達。
能力者であるバルトロメオとディアマンテは自分たちの立つリングが囲んでいる水に沈んでいき力が抜けていく。
因みにエイセイ・ムラマサ・レベッカの3人は、エイセイの能力で浮いた瓦礫の上に乗って避難済み。

ディアマンテ「…! 力が…。」

特に既にエイセイからの怒りの猛攻で意識が朦朧としていたディアマンテは気絶する寸前だった。
視界の揺らめきが激しくなる中闘魚に飛び乗ろうとしているサボの姿が見えた。

ディアマンテ「やめろォ!! それはやるつもりのねェ商品だ!!」

だが叫びも虚しく軽々と闘魚に飛び乗るサボ。
闘魚の背には「悪魔の実」の入った箱。
黒く染まった両手で箱を開けるサボ。


バカンッ!


箱が開き中から現れる“ショクショクの実”。

ギャッツ「え!?」

マイク越しではなく声を上げる司会。

サボ「全員場外!! ムラマサさん達は譲ってくれるって訳で、俺の優勝だ!! これ取った奴の勝ちだろ? 貰っていいよな!!」

サボ、ショクショクの実を手に入れる。 
 

 
後書き
“覇王拳奥義・鯨王之唸”は、ぶっちゃけ“竜の息吹”とほぼ同じです。ただし、元々は「グラグラの実」の対抗策という設定なので、ライコウの場合はサボ以上の実力者であるゆえ威力は規格外です。サボはリングの破壊が精一杯でしたが、ライコウだとちょっと本気出しただけでコロシアム木っ端微塵に出来ます。

あ、ついにサボが能力者となりますよ。
後、コラボに関しては前半と後半で分けます。 

 

第146話:ドデケェ“闇”

一応コロシアムで優勝したサボは、勢いよく実に齧り付いた。
そして突如訪れる吐き気に顔を歪ませた。

サボ「うっぷ…マズ~~っ!!」

オエッと口を大きく開きながら、崩れるリングの瓦礫を次々と飛び移り、未だに呆然としているレベッカを抱きかかえエイセイらの元に向かう。

レベッカ「きゃあ!」

バルトロメオ「あー!! 大先輩ィ! 俺も助げてけろー!!!」

能力者であるバルトロメオは助けを求めるが…。

ムラマサ「海賊でしょう? 自分のことは自分で何とかしなさい。」

サボ「男だろ!! 自分の身は自分で守れ!!」

バルトロメオ「ひでェ先輩達だべ!!?」

あっさりと切り捨てる2人。
だがその時、バルトロメオがしがみついていた瓦礫が宙に浮きあがる。

バルトロメオ「うわァ!?」

何とかよじ登るバルトロメオ。
浮かしたのは、エイセイだった。

エイセイ「レベッカちゃんを庇った恩だ、助け舟です。」

その直後、サボは身につけていた兜と付け髭を宙に放り投げた。

サボ「あり? ショクショクの実ってどう使うんだ!?」

エイセイ「ちゃんと調べてないのか!? しょうがない後輩だ…。」

エイセイは溜め息を吐くと、再び能力を発動させ、今度はコロシアムの水に念を与えた。
すると突然、轟音と共に水柱が上がり拳の形となった。

バージェス「野郎、“ショクショク”を食いやがったァー!!!」

ディアマンテ「ん!? …アイツもしや“百獣海賊団”の…!?」

サボ達を見上げ叫ぶバージェスと、眉をひそませ呟くディアマンテ。
そんな2人に目掛け、エイセイは非情なる一撃を与えた。

エイセイ「“水拳”!」


ドォォンッ!!


巨大な水の拳がバージェスとディアマンテに直撃し、凄まじい爆音と共にリングを貫通した。

エイセイ「さァ、天を穿つ時間だ。」


















-同時刻、王宮では-


《応答願います!! 「王宮」~~!!》

「若!! 非常事態の報告が鳴り止みません!!!」

ドフラミンゴ「っ……そうか、全て繋がった…!!」

次々と寄せられる報告に、頭を抱え汗だくになるドフラミンゴは、今日ドレスローザで起きた全ての事が繋がった。
百獣海賊団とエイセイの仕業だ。機会を伺っていた百獣海賊団と、世界会議を控え暗躍していた世界皇帝…両勢力の陰謀が「偶然」にも利害も重なり、最悪の事態を迎えたのだ。

ドフラミンゴ「クソッ…!!」

闇のルートを牛耳り、政府の弱みを握って利用し、善良な王族や人々を殺害し苦しめた天夜叉の悪事が全て露になる。

ヴィオラ「スゴイわ…あなたの仲間は!」

ルフィ「だろ!?」

ウソップのシュガー気絶の成功に、喜び合うルフィとヴィオラ。
その時だった。


ドゴォォン!!


『!!?』


突如“スートの間”の床が爆発し、1人の男が現れた。

ライコウ「ロー、首繋がってるか~?」

ドフラミンゴ「剣帝…!!」

そう、グラディウスを無傷で蹴散らしたライコウだ。

ライコウ「さて、まずはこちらから解放しようか。」

ライコウはそう言い、目にも止まらぬ速さで刀を抜いてリク王の鎖を粉砕した。
自由の身になれたリク王は、ライコウに声を掛けた。

リク王「剣帝…!!」

ライコウ「俺達ァ利害が一致しただけ…アンタが死のうが知ったこっちゃねェ。 だが、死なせると隊長さんが泣いちまう。」

リク王「!?」

リク王は、ドフラミンゴの方に向かって駆けていく男の姿に気付く。
その姿は、紛れもなくあの“英雄”だった。
ホビホビの呪いによってオモチャの兵隊となり、人々から忘れられていた、ドレスローザが誇る偉大なる戦士。

リク王「(何故思い出せなかった…!! …だが、今…はっきりと…!!)キュロスか!!?」

キュロス「はい!!! 10年間!! お待たせして!!! 申し訳ありませんっ!!! 今、助けに来ました!!!!」

ドフラミンゴ「!? てめェは…!!!」


ズバッ!!


人間の姿に戻ったキュロスは、剣を降り下ろしドフラミンゴの首を刎ねた。

ヴィオラ「!!?」

ベビー5「きゃあーーーっ!!!」

バッファロー「若ァ~~!!!」

ライコウ「(……。)」

ルフィ「うおー!!ミンゴが死んだァ!!!」

ヴィオラ「! 今よ、麦わら!!」

ルフィ「お、おぅ!! トラ男を助けよう!!!」

ヴィオラを抱え走るルフィ。

キュロス「真のドレスローザを!!! 取り戻しに来た!!!!」

-------------------------------------------------------------------------------

一方、陸軍大将ランファと壮絶な戦闘を繰り広げていたギネスは国中の異変に動揺していた。

ギネス「これは……!」

ランファ「オモチャが…!?」

シュガーが気絶したことで、ホビホビの能力による呪いが解けた。
泣いて喜ぶ国民、ドフラミンゴに怒る海賊、ドレスローザのリク王軍兵士、政府の役人達、海兵、各国要人、猛獣……あらゆる生物が、元の姿に戻っていく。
ドフラミンゴの10年間の悪事が、発覚した瞬間だ。

ギネス「……ドンキホーテ・ドフラミンゴ…想像以上のクズだったな。」

刀を鞘に納めるギネス。
ギネスの心中を察したランファも、戦闘をやめる。

ランファ「まさか、ドフラミンゴはこの手段で隠蔽工作を…!!?」

ギネス「じゃなかったらこんな大混乱にはならねェっての。」

ランファ「イッショウはどうしてる…!?」

ギネス「藤虎は惚けたフリしてスゲェ思慮深いからな、動くタイミング窺って待ってるんだろうな……。」

ギネスの予想は、当たっていた。
イッショウ率いる海軍サイドは、この大混乱の中でも静観していた。

バスティーユ「イッショウさん、これは一体どうなってるんだらァ……!?」

イッショウ「……この国のドデケェ“闇”が暴かれたようで…エイセイの旦那にゃあ恐れ入る。」

バスティーユ「“闇”……だらァか?」

窮地に追い込まれた「ドンキホーテファミリー」。
王下七武海・ドフラミンゴを追い詰めた「海賊」麦わらの一味と「四皇」百獣海賊団、そして“犯罪界の絶対王者”ギネス。
“世界皇帝”エイセイと、それに従じた海軍本部大将“藤虎”と世界陸軍大将“紅傘”。
ドレスローザの英雄・キュロスが率いる「リク王軍」。
コロシアムの選手達とドレスローザの国民達を巻き込み、一つの島で巨大な戦が始まろうとしていた。 
 

 
後書き
こっから怒涛の戦闘ネタですぜ! 

 

第147話:10年前以上の“惨劇”

キュロスが次々とドフラミンゴの部下を斬り倒す。

バッファロー「コイツ片足のクセにィ~!!! よくも若をォ~~!!!」

怒り任せに突進するバッファローに、キュロスは身構える。
しかし、そんなキュロスの前にライコウが現れる。

ライコウ「ほいっと!」


バゴッ!


バッファロー「ぶっ!?」

ライコウは踵落としを炸裂させ、バッファローの脳を揺らした。
そして右腕を覇気で黒く染め……。

ライコウ「歯ァ食いしばれ!」


ドゴォンッ!!


ライコウはバッファローの腹に“竜王之爪”を叩き込む。
たった一撃で床に大きな亀裂が生じ、衝撃の余波で窓ガラスが全て割れる。
サボとは比べ物にならない威力だ。

ベビー5「バッファロー!!」

バッファローが撃沈し、ベビー5は叫ぶ。
今までドレスローザを支配した凶悪な“王下七武海(ドフラミンゴ)”の優秀な部下が瞬殺されたことに、開いた口が塞がらないリク王とキュロス。

ルフィ「トラ男~~!! 助けに来たぞ~~!!! よかった生きてて~~~!!!」

ロー「……“麦わら屋”、工場はどうした…? コロシアムは…。」

ヴィオラ「彼の手錠の鍵よ!!」

ルフィ「お前何でも準備いいなー!! 先の事見えてるみてェだ!!」

ロー「おい、話を聞いてるのか?」

すると突然ゾロと戦っていた筈のピーカが現れ、ドフラミンゴの首を持ち上げた。
その直後、ピーカの掌に乗って生首のまま喋り出すドフラミンゴ。

ドフラミンゴ「フッフッフッ…想像以上にしてやられたな……これはマズイ事態だ…!! “鳥カゴ(・・・)”を使わざるを得ない…!! なァ…ロー…!!!」

ロー「っ…またエグイ事を…。」

ドフラミンゴ「早急な対応が必要だ…。」

キュロス「気味が悪い…!!! 何故まだ、生きてる!!?」

すると突然、キュロスの背後に本物の(・・・)ドフラミンゴが現れた。

ドフラミンゴ「首の切り方を教えてやろうか? こうやるんだ!!!」

リク王「キュロス!!!」


ドォン!!


ドフラミンゴ「!? 剣帝…!!」

ライコウ「下駄ガードってな!」

ドフラミンゴは糸を用いてキュロスを斬ろうとするが、ライコウの覇気を纏った蹴りに阻止される。
それと共にライコウとドフラミンゴの“覇王色”が衝突する。

ドフラミンゴ「ぐっ!」

とはいえ、“七武海”と“「四皇」の副船長”では地力が違う。
実力も経験値も遥かに上なライコウにドフラミンゴは押されてしまうが、体勢を立て直す。

ベビー5「若様が2人っ!?」

ルフィ「“ゴムゴムの”!!」

ドフラミンゴ「っ!! “武装”!!」

ルフィ「“JET銃乱打(ジェットガトリング)”!!!」

不意打ちでルフィは“ギア2(セカンド)”を発動しドフラミンゴを攻撃するが、ドフラミンゴは咄嗟に武装色の覇気を纏いガードする。
そして背後から首の無いドフラミンゴがルフィを切り裂き、正面のドフラミンゴは武装色で硬化した拳を顔面に食らわす。
吹っ飛ばされるルフィ。

キュロス「ルフィランド!! 何だあの分身は…!?」

ヴィオラ「糸でできた“操り人形(マリオネット)”の様ね! あんな技、初めて見た…!!」

ドフラミンゴ「リク王!! 10年前の…あの夜を憶えているか? 愛する国民を斬り、平穏な町を焼いた日!!」

リク王「……!! 未だ夜な夜なうなされるわ…憶えていたら何だと言うんだ…!!?」

ドフラミンゴ「これから起きる惨劇は、あんな小規模なものじゃない…!」

リク王「バカな事を!!! 何をする気だ!!? あんな悲劇はもう二度と!!!」

ドフラミンゴ「逃がしてやるよ、お前ら。 ピーカ、邪魔者共を外へ!!!」

城の床が変形し、ルフィ達を外へと落とすピーカ。地面に激突する寸前に、ルフィは“ゴムゴムの風船”で皆を救出する。
因みにライコウは普通に着地した。

ルフィ「ハァ、ハァ…外壁塔の庭まで落とされた…!!!」

ヴィオラ「ピーカがいる以上ドフラミンゴには近づけないわ!!」

ふと、空を見上げるローとライコウ。
空には糸がヒュンヒュンと放たれていた。

ライコウ「…始まったな……“鳥カゴ”。」

ロー「この国の真実が漏れる前に、この島にいる奴らを皆殺し(・・・)にするつもりだな…!!!」

するとその直後、突然ローの“ROOM”と酷似した奇妙な空間が展開し、あのギネスが瞬間移動で現れた。

リク王「お、お前は…ギネス・スパーツィオ!!」

キュロス「“世界最凶の単独犯”か…!! リク王には指一本触れさせないぞ!!」

キュロスは冷や汗を流しつつも、ギネスに剣を向けるが……。

ギネス「いやいやいやいや!! お兄ちゃんそこまで外道じゃねェよ!!? さすがにその程度の(・・・・・)善悪の判断ぐらい弁えてるって!!! 俺味方だよ!!?」

ライコウ「テロリストが言うな、説得力に欠ける。」

ギネス「海賊に言われたくないんですけど!!」

ギネスは何故か“覇王色”を放って怒りを露にするが、ライコウは意にも介さず受け流す。

ヴィオラ「剣帝……彼は一体…!?」

ライコウ「同盟関係。 コイツも何だかんだ言ってパイプあるからな。」

ライコウの爆弾発言に、驚愕するヴィオラ。

ギネス「……それよりも旦那、これは一体…。」

ライコウ「それくらい察しろよ…。」

その時だった。


ヒュンヒュンヒュンヒュン……


「「!!」」


パシッ!!


何かの接近を感じたライコウとギネスは、自分に迫った「それ」を掴んだ。
その正体は……あの“ドフラミンゴの糸”だった。

ライコウ「コイツァ……。」

ギネス「まさか、この島を覆うあの糸の…!?」

ロー「(ドフラミンゴの糸を…見切った上に掴んだだと……!?)」

強靭かつ肉眼で捉えることはほぼ不可能なドフラミンゴの糸をあっさりと掴んだ2人に、さすがのローも引いた。
ルフィとキュロスですら呆然とし、リク王とヴィオラに至っては放心状態だ。
すると……。

ルフィ「おい!! 地面が下がってくぞ、どうなってんだ!!?」

ロー「ピーカだ!! 石なら地形でさえ変えられるっ!!!」

ピーカは島の岩盤と同化し、王宮を何処かへ持っていくと同時に工場も地面の中から上げさせる。
ピーカの能力で地形を大きく変えていくドレスローザ。
その時、国内放送でドフラミンゴの声が島中に響く。

ドフラミンゴ《ドレスローザの国民達…及び…客人達。 別に初めからお前らを恐怖で支配してもよかったんだ……!!! 真実を知り…!! 俺を殺してェと思う奴もさぞ多かろう!! だから“ゲーム”を用意した…この俺を殺すゲームだ!! 俺は王宮にいる…逃げも隠れもしない!!! この命を取れれば、当然そこでゲームセットだ!! だが、もう一つだけゲームを終わらせる方法がある…!! 今から俺が名前を挙げる奴ら全員の首を、君らが取った場合だ!!! なお、首一つ一つには、多額の懸賞金を支払う!! 殺るか殺られるか!! この国にいる全員が“賞金稼ぎ(ハンター)”!!! お前らが助かる道は…誰かの首を取る他にない!!!》

簡単に言うと、脱出不可の檻の中で戦争と言える規模の殺し合いが始まるという訳だ。

ドフラミンゴ《誰も助けには来ない…!!! この“鳥カゴ”からは誰も逃げられない!! 外への通信も不可能…外の誰にも気付かれず…お前達は死んでゆく!! 暴れ出した隣人達は無作為に人を傷つけ続けるだろう……それが家族であれ…!! 親友であれ…!!! 守るべき市民であれ……!! 逃げても隠れても、このカゴの中に、安全な場所などない!!! 鳥カゴの恐怖は幾日でも続く!! 全員が死に絶えるが早いか!! お前らが“ゲーム”を終わらせるのが早いか!!!》

ドフラミンゴの罠にハメられて、まんまとその手に踊らされてしまうのか。それとも本当に信じるべきものを、しっかりと見抜くことができるのか。
究極のバトル・ロワイアルが始まる。 

 

第148話:黒幕に星6つ

ドフラミンゴの“鳥カゴ”でドレスローザは覆われた。
非情なる“寄生糸(パラサイト)”で操られた人達が破壊や攻撃を続ける中、ドフラミンゴが提案したバトル・ロワイアル。
ドフラミンゴの首を取るか、ドフラミンゴに仇なす者達の首を取るか。この選択肢に対し、ライコウは呟く。

ライコウ「ったく、とぼけやがって。 どっちみち皆殺しルートだろ。」

ギネス「それだったらドンキホーテファミリーの首取りに行く方が賢明だよな、旦那。」

ライコウ「バトロワに賢明もクソもねェだろ。」

ギネス「言うね~、人生経験違うわ~。」

ドフラミンゴの与えた選択肢に苦言を呈するライコウと同調するギネス。
あのドフラミンゴが「生存者は生かして返す」など考えてるとは思えない。旨い話ほど本質は真面ではないのだ。
そもそも鳥カゴで情報を外へ漏らさないようにしたことから、全員殺して何事も無かったようにゼロからやり直そうというドフラミンゴの算段が読み取れる。

ギネス「という訳で…どうする? エイセイ達の動きが分からないからアレだけど…少なくともリク王一族は狙われるぜ。」

ライコウ「まァ俺が出張ればドフラミンゴくらいフルボッコにできるが、それだと納得しねェだろ? ルフィ。」

ルフィ「おぅ!! 俺がぶっ飛ばしたい!!!」

『(いや、そこは出張れよ…。)』

ルフィ以外は白い目でライコウを見る。
そんな中でも、ドフラミンゴの嫌な演説は続く。

ドフラミンゴ《考えろ…俺の首を取りに来るか!! 我々ドンキホーテファミリーと共に、俺に楯突く愚か者達に裁きを与えるか!! 選択を間違えれば、このゲームは終わらねェ…!! 星1つにつき1億ベリー!!! コイツらこそが…!! ドレスローザの受刑者達だ!!!》

スクリーンに映し出された者達は、そうそうたる面子だった。

【コリーダコロシアム囚人剣闘士(リク王の孫)・レベッカ…☆】
【海賊 「麦わらの一味」“悪魔の子”ニコ・ロビン…☆】
【ワノ国の侍“狐火の錦えもん”…☆】
【ドレスローザ“元王女”ヴィオラ…☆】
【海賊「麦わらの一味」“鉄人フランキー”…☆】
【ドレスローザ元軍隊長・キュロス…☆☆】
【海賊 「麦わらの一味」 “海賊狩りのゾロ”…☆☆】
【四皇「百獣海賊団」双将軍“橙色御前”コアラ…☆☆】
【四皇「百獣海賊団」“雪害のモネ”…☆☆☆】
【四皇「百獣海賊団」双将軍“拳豪”サボ…☆☆☆】
【海賊「麦わらの一味」船長“麦わらのルフィ”…☆☆☆】
【四皇「百獣海賊団」船医総監“死の外科医”トラファルガー・ロー…☆☆☆】
【ドレスローザ“元国王” リク・ドルド三世…☆☆☆】
【“犯罪界の絶対王者”ギネス・スパーツィオ…☆☆☆☆】
【四皇「百獣海賊団」三妖星“死の彗星”ムラマサ…☆☆☆☆】

ドフラミンゴ《各組織“主犯格”は…もれなく“三つ星”!! コイツらに加担し我々ドンキホーテファミリーを滅ぼそうとしたギネスとムラマサは“四つ星”だ…!!》

《さらに…今日俺を…最も怒らせた男がいる…!! お前らをこんな残酷なゲームに追い込んだ全ての元凶!! こいつの首を取った奴には!! 5億ベリーだ!!!》

その言葉と共にスクリーンに映るのは…。

【海賊「麦わらの一味」“ゴッド”ウソップ…☆☆☆☆☆】

ギネス「ブーーッ!!!」

ライコウ「…くくく…っ…ゴ…ゴッドだってよ…ダメだこれ、ウケるわ…くくっ…!!」

盛大に吹き出すギネスと、腹を抱えて爆笑するライコウ。
ここまで爆笑するのは随分久しいことだろう……。

ドフラミンゴ《そして…今回の一連の事件の黒幕と言えるこの男には断トツの額だ!!》

【黒幕・四皇「百獣海賊団」副船長“剣帝”ライコウ…☆☆☆☆☆☆】

ライコウ「…分かってるじゃん。」

ロー「感心するなよ…!!」

どこか満足げに呟くライコウに呆れるロー。
むしろ“「四皇」の副船長”という肩書のせいで誰も襲わないかもしれない。

ゾロ「おい、ルフィ!!」

ルフィ「ゾロ!!」

ここでようやくゾロが到着した。
あまりにも遅かったので、どうやら道に迷ってたようだ。

ゾロ「どうなってやがる!?」

ライコウ「バトロワ状態だ、俺達が狙われてる……状況を打破するにはドンキホーテファミリーをボッコボコにするしかないって訳だ。」

ゾロ「! 成る程……。」

ライコウのザックリとした説明に、ゾロは状況を理解する。

ライコウ「さて…これからどうしますかね……。」

ライコウの記憶が正しければ、最近増強したことを加味してドンキホーテファミリー(てき)の戦力は約3000人。
国民の中には、ファミリーを相手にするより賞金首を捕まえた方がいいと判断する人も増えるだろう。
それに、このドレスローザには“黒ひげ”の部下のバージェスもいる。万が一にもドフラミンゴと手を組まれたら厄介だ。

ライコウ「……やっぱ、俺が出張るのか……。」

すると、ゾロの電伝虫が鳴った。
通信の相手はロビンだ。

ロビン《ゾロ! 今どこ?》

ゾロ「ロビンか。 今ルフィ達と一緒にいる。」

するとルフィはゾロから受話器を奪い取り、ロビンと会話をする。

ルフィ「ロビンか!? 見たか今の!? ムカつくなァミンゴ!! レベッカもリストに入っちまってたけど大丈夫か!?」

そう言うと…。

レベッカ《私いるよここに!! ルーシー!?》

ルフィ「ちょうどよかった!! 今兵隊がここに…あれ!? 兵隊どこ行った!?」

ルフィ達の前からいつの間にかいなくなっているキュロス。
どうやら一足先に一人でドフラミンゴの首を取りに行ったようだ。

レベッカ《兵隊さんも人間に戻ったんでしょ…!!? ねえ、ルーシー! どんな人?》

と人間に戻った兵隊のことをルフィに尋ねるレベッカ。

ルフィ「何言ってんだ!! あの片足の兵隊がお前の父ちゃんだったんだよ!!! コロシアムの銅像のおっさんだった!!」

片足のオモチャの兵隊の正体が、ドレスローザの英雄であるキュロスだということをレベッカに教えるルフィ。
レベッカは「…やっぱり……!!」と涙声で呟く。

ルフィ《兵隊は死なせねェ!!! お前も無事でいろ!!! 俺が必ずドフラミンゴをブッ飛ばしてやるから生き残れ!! いいな!!!》

レベッカ《うん…!!》

ルフィの言葉に頷くレベッカ。
すると、ここでライコウが口を開いた。

ライコウ「そっちにムラマサいねェか? コロシアムで暴れてたろ?」

ムラマサ《呼びましたか?》

ムラマサの声が、電伝虫越しに伝わった。
どうやらレベッカ達と一緒にいるようだ。

ライコウ「ちょいと考えてみたんだが、お前は藤虎と紅傘達を抑えろ。 多分俺達を狙うはずだ。 バージェスの件もそっちに任せるぞ、俺とギネスはルフィ達と行動する。」

ムラマサ《えェ、そのつもりです。》

ライコウ「頼んだ。」

そう言って通話を終えるライコウ。

ライコウ「ドフラミンゴは“王の台地”にいるが…ルフィ、どういうルートを考えている?」

ルフィ「まっすぐ!!」

王の台地の崖の方に向かって走りだすルフィ。

ヴィオラ「まさか飛び降りるの!?」

ルフィ「待ってろドフラミンゴ~~!!! うおおおおおおお!!!」

ルフィはゾロと海楼石の錠をされたままのローを抱え、ドフラミンゴのいる王宮にまっすぐ飛び出していく。

ギネス「俺達も行きましょうか。」

ライコウ「ちゃっちゃと終わらせるか…。」

ルフィに続き、ライコウとギネスも飛び出した。
ドレスローザの命運を賭けた一大戦争が幕を開けた。 

 

第149話:元天竜人と元奴隷

一方、藤虎率いる海軍はランファ率いる陸軍と合流していた。

ランファ「くっ…元天竜人でもここまで違うとは…。」

イッショウ「………。」

黙って何かを考え込む藤虎。
そこに別の海兵が慌てて報告にやって来る。

「中将殿! 大将殿!! 大変です!!」

バスティーユ「今度はどうしたらァ?」

「もうお聞きになられてるとは思いますが…ドフラミンゴによってオモチャに変えられていた者の中には一般市民だけでなく、海兵や政府関係者、さらには他国の王族まで含まれているとのことで…その数、推定ですが1万人は下らないとの報告です!!」

「「!」」

バスティーユ「1万人だらァ!? よくぞ隠し通せたもんだ…。」

イッショウ「人々の“記憶”まで失うのなら…それだけの数でも納得でしょう…。」

するとその直後、コロシアムに潜入していたメイナードが戻ってきた。
メイナードは独断で潜入捜査したのでバスティーユに怒られるが、彼もまたコロシアムの一件における一部始終の目撃者。
ドフラミンゴを検挙すれば世界が多少傾くかも知れないと主張する。
だが……。

ランファ「…イッショウ。」

イッショウ「えェ……標的は変わらず“海賊同盟”でさァ。」

メイナード「!!? 何故です、イッショウさん!! ドフラミンゴは、もう七武海じゃいられねェ!! 今捕らえるべきだ!!」

メイナードの言い分は一理ある。
ドフラミンゴは自分の身に危機感を持ち、直後に悪事を国外には漏らさんと“鳥カゴ”を発動させ、ドレスローザの人間の皆殺しを画策したのだ。
かのクロコダイルの一件も踏まえれば、間違いなく七武海の権限は剥奪だろう。
だが、イッショウは違った。

イッショウ「……そうやって同じ事繰り返して来たんでしょうが。 アンタ、海軍長いんでしょう? 中将さん……。」

メイナード「!!」

イッショウ「ずっと聞き流してきたんですかい? この怒りに満ちた悲鳴を…彼らは泣いてんじゃねェよ…怒ってんだよ…!! 世界政府ってのァ、神かなんかですか。」

静かに怒る藤虎。
その気迫に尻もちをつくメイナード。

イッショウ「…あっしの決定にゃ従っていただきやす。」

ランファ「……。」


















-王宮にて-

ドフラミンゴ「……手当はしたが、ケガは大丈夫なのか? ディアマンテ…。」

ディアマンテ「何とか、な……それにしてもあの野郎(ガキ)、ドフィの味方をするかと思ってたが…!!」

最高幹部で唯一重傷を負ったディアマンテは、胸を押さえながら口を開く。
ドンキホーテファミリーの最高幹部ともあろう実力者がここまで追い詰められたことから、エイセイの戦闘力の高さが窺える。
そして、それを知り身震いする部下達。

トレーボル「んねーねードフィ! シュガーについちゃあ本当に悪かった!!」

トレーボルがドフラミンゴに向かって必死に言い訳をする。
ディアマンテもトレーボルに続く。

ディアマンテ「ショクショクの実もそうだ……!! ハァ、ハァ…まさか大会に百獣海賊団の“双将軍”と“三妖星”が出場してるとは想像できねェ……おまけに“世界皇帝”も殴り込んで来やがった…!!!」

弁明する最高幹部達。
それを見ていた幹部・ラオGは両腕を使って“G”のマークを作って「見苦しい」と吐き捨てるが、ドフラミンゴは愉快そうに笑って口を開いた。

ドフラミンゴ「過ぎた事だ…お前らを責めても時間が戻る訳じゃあるまい。」

?「随分と幹部君達には優しいんだね…ドフラミンゴ。」

『!!?』

全員驚きで目を大きく見開く。
声が下方向へ振り向くと、そこにはコートをなびかせて黒髪を揺らす1人の青年がいた。

ドフラミンゴ「…フッフッフッ……まさかお前から来るとはな、エイセイ。」

青年の正体は、エイセイだった。
額に汗を浮かべ、エイセイを見つめるドフラミンゴ。

エイセイ「君は元天竜人…僕は元奴隷。 相容れぬ立場ではあったけど、こういう形で激突するとは思わなかったな。」

ドフラミンゴ「フッフッフ……つまらねェことを言うな、エイセイ。 本題を言え。」

エイセイ「……潔くお縄につくんだ…そうすれば命だけは助けてやる。 僕がイッショウとランファを連れて来たんだ、それぐらいの権限もある。」

エイセイの言葉は聞いたドフラミンゴは、沈黙する。
そして、いつも以上に笑みを深めて高笑いする。

ドフラミンゴ「フフフフ…フッフッフッフ!!! ……理解しがたいな、何故俺を殺さない? お前が想っていた女を手に掛けたんだぞ?」

その直後、エイセイの雰囲気が変わった。
鬼のような形相でドフラミンゴを見据え、静かに呟いた。

エイセイ「……言葉はちゃんと選んだ方が良い。 命が短くなるだけだ。」

エイセイから放たれる覇王色。
凄まじい圧がその場にいる全員に襲いかかり、部下の何名かが泡を吹いて倒れる。

ドフラミンゴ「フッフッフ……まァそう熱くなるな。」

ドフラミンゴは不敵な笑みを浮かべながら両手を上げる。
エイセイに対する戦意は無いようだ。

?「海軍も海賊も…!」

特徴的な甲高い声にエイセイは振り向く。
エイセイの視線の先には、十字状の飾りがついた兜を被り服装の所々にトゲがあしらわれた筋肉質の巨漢が。

ピーカ「暴れていいのなら…俺一人で充分だ…!」

まさかの超ガタイのいい最高幹部(おっさん)だった。
エイセイは吹き出しそうになる。

ドフラミンゴ「ピーカ、そう急ぐ事もない…。 いいか、このゲームはいわば国王を決する“選挙”だ。 ドレスローザの国民に問うた…! 王に相応しいのは“リク一族”か“ドンキホーテ一族”か…国民が王を選ぶ!! 当然の権利だ!! 俺達は来る者を叩き潰し…!消し合う者達をゆっくり傍観していればいいんだ。」

ピーカ「周りくどい…ドフィ俺は…。」

エイセイ「……ぶっふぉぉ!」

エイセイ、我慢できず。
ピーカの声質がツボにきたのか、盛大に笑い転げた。

エイセイ「アハハハハハハハハ!! スッゴイ…ソプラノボイス……ヒヒ…反則だ…!! 笑うなという方が無理だって……!!」

そんなエイセイに激昂したのか、ピーカは怒り心頭でエイセイに近づいた。

ピーカ「“生き埋め”だ…! 貴様を石の中に…!!」

ドフラミンゴ「よせ、ピーカ!!」

ピーカ「!? ドフィ……!!?」

ドフラミンゴ「耐えろ…お前を失う訳にはいかねェ…!!」

その言葉を聞き、ピーカは汗を一筋流す。
そう、相手は“世界皇帝”と呼ばれている青年。ピーカ1人で手に負えるような輩ではないのだ。

エイセイ「アハハハ……やたらめったら喋る訳にはいかないよな、これは…!」

未だに笑っているが、エイセイは堪えながらドフラミンゴに忠告する。

エイセイ「アハハ…まァ、いずれにしろ君達は終わりだ。 もしまた会う時は……インペルダウンでね…。」

エイセイはそう言うと王宮から飛び降り、能力で瓦礫を浮かせ飛び去って行った。

ドフラミンゴ「フッフッフ…お前の思う通りには行かねェぞ、エイセイ…。」

ドフラミンゴはエイセイを嘲笑うように呟くのだった。
 

 

第150話:剣帝VS藤虎

-工場では-

工場入口を警護していたセニョール達。

バイス「海軍は俺達と敵対する気はなイーンだな!!」

セニョール「あくまで七武海として扱う気か…もの解りがよすぎねェか? それよりあの変態野郎とコラソンはどこ行きやがった?」

フランキーを見失うバイス・セニョール・デリンジャーの3人。
実はシュガーが気絶する前まで、フランキーとコラソンはドンキホーテファミリー・海軍・陸軍と交戦していたのだ。
シュガーが気絶してからは隙を突かれ逃走したようだ。

バイス「ん? 風船と人が降って来るんだイーン!!」

空から落ちてくる何かに気づくバイス。

ルフィ「ぶえ!!」

落ちてきたのは膨らんだルフィ・ロー・ゾロの3人と…。

ライコウ「よっと!」

ギネス「ドスンッと!」

ライコウとギネスだ。

バイス「ロー!!」

セニョール「どの顔下げて現れやがったクソガキ!!」

デリンジャー「ロー兄ィ!! ほぼ記憶に無いけど!!」

ルフィの抱えたローを見て驚くバイス達。
ファミリーの幹部3人を含む兵士達と海兵達に取り囲まれるルフィ達。

ルフィ「えれェ所に落っこちた!!」

ライコウ「何を言う、どこに落ちても一緒だぞ? どう転んでも戦うんだ、今更臆することもないだろ。」

ライコウはそう言って、刀に手を添え臨戦態勢であることを周囲に知らしめる。
それを見た兵士達は怯む。

ギネス「どうするんで、旦那?」

ライコウ「正面突破だ。」

するとセニョールはスイスイの実の能力で地面を泳ぎ、セニョールに気付いていないルフィの足を掴んだ。

ルフィ「どわー!! 捕まったーー!!」

ロー「!? 何やってやがる!!」

セニョール「やれ!! バイス!!」

バイス「“10トンヴァイス”!!」

バイスはルフィ+ローに目掛けてダイビングする。
しかしルフィの前にライコウが現れ、右腕を無造作に上げた。

ライコウ「ルフィ、ロー。 任せな。」

「「!!」」


ドォン!!


バイス「ギャイ~~~ン!!?」

『えェ~~~~!!!? 弾き返した~~~~!!!?』

何と能力で体重10トンとなったバイスの押し潰し攻撃をライコウは腕一本で弾き返した。
これを見ていたファミリーの下っ端達は口をあんぐりと開けて驚く。

バイス「腹痛イ~~~ン!!!」

ライコウ「……怒り上戸のカイドウに比べりゃあ、どうってことねェ。 覇気の達人である俺にとっちゃあ、腕一本で十分さ。」

余裕と自信に満ちた笑みを浮かべるライコウに、怯む一同。
ライコウは「四皇」に並ぶ現役最強の大海賊の1人であり、覇気の達人。いくら七武海の幹部とはいえ、世界中の剣客達の頂点に君臨する男には到底及ばない。

ギネス「うわォ、とんでもねェ。」

そこへ…。

デリンジャー「キャハハハ!! 余所見してていいの?」

ギネス「!」

デリンジャー「“ピストルハイヒール”!!」

跳び上がって足を振り上げるデリンジャーだが、ギネスはそれを躱し、武装硬化させた拳でデリンジャーに左ストレートを炸裂。
デリンジャーはそのまま吹き飛ばされ、次々に建物を貫通していく。

ギネス「ガキだからって油断ならねェってか……こりゃあ骨が折れそうだ。」

そう呟きながらも殴り飛ばされたデリンジャーを嘲笑うギネス。
ドレスローザの国民達は武器を構えるも、圧倒的な実力を誇るライコウとギネスを前に動けずにいる。

ギネス「ルフィ、旦那…どうする? 一般人を巻き込むのは俺の信念に反するから嫌なんだけど……。」

ゾロ「確かに言えてるな…。」

ルフィ「よし、俺が覇気で…!」

ふとその時、下駄の音を鳴らして“藤虎”イッショウが現れた。
その後ろには、多くの海兵達が。

イッショウ「ここはあっしに任せなさい…。」

ゾロ「海軍大将…!!」

ルフィ「賭博のおっさん…!!」

海軍大将の参戦に、戸惑うルフィとゾロ。

ライコウ「……お前と戦う気はないんだが。」

ギネス「やっぱそっち(・・・)か…まァ当然と言えば当然か…。」

ライコウ「……しゃあねェ、久しぶりに出張るとするか。」

ライコウは前に出て、居合の構えを取る。

イッショウ「……あっしが出るようで…。」

『大将殿!!』

イッショウも応じ、前に出て仕込み杖を構える。
互いに居合。海賊と海兵の最高峰に立つ男同士の斬り合いが始まろうとしている。

ライコウ「らァッ!!」

イッショウ「ぬんっ!!」

ライコウとイッショウは、肉眼では捉えきれない速さで刀を抜く。
覇気を纏った互いの刃はぶつかり、火花を散らす。
それを境に、2人は目にも映らぬ速さで斬撃をぶつけ合う。
どちらも急所狙いの一太刀…並大抵の強者では瞬殺されてしまうだろう。

イッショウ「ぬんっ!」

イッショウはここでライコウに目掛けて重力を掛ける。
しかしライコウは“縮地”でイッショウの重力攻撃を躱し、覇気を纏った蹴りを放つ。
だがイッショウも見聞色の覇気の使い手…咄嗟に仕込み杖を持ち替えガードする。

ライコウ「ちっ…。」

ライコウは舌打ちすると、刀による突きを放つ。
イッショウはそれを躱し、すぐさま放たれる横薙ぎをも躱す。
さらにライコウは唐竹割りを放つが、ここでイッショウは仕込み杖の柄の先で刀を受け止め、上へと薙ぎ払った。
体勢を崩したライコウに、イッショウは刀に重力を込め打ち込もうとするが…。

ライコウ「(掛かった!!)」

ライコウは笑みを浮かべ、刀を背中に回して逆手に持ち替えイッショウの肩を狙った。
しかしイッショウはそれに気付いたのか、後ろへ退避する。

ライコウ「……“背車刀”を躱しやがった…行けると思ったんだがな。」

イッショウ「……こらァいけねェ、隙を見せやしたね。 さすがは世界四大剣豪が1人“剣帝”ライコウ…大した技量だ。」

互いに笑みを浮かべながら、刀を構える。
すると突然、国中に響くような大きな音と振動が走る。
倒壊していく建物の中、逃げ惑う人々。

イッショウ「…!?」

ロー「……ピーカ!!」

ライコウ「ちっ、また厄介な…。」

現れたのは、王の台地から姿を現す巨人を遥かに凌駕する大きさのピーカだった。

ピーカ「さァ…我がファミリーに盾つく者達は…!!」

ルフィ「へ?」

ゾロ「は?」

ライコウ「あっ。」

ギネス「えっ?」

一瞬の沈黙。

ピーカ「俺が相手だ!!」

「「声!!! 高ェ~~~~っ!!!」」

ピーカの笑うなという方が無理である程の甲高い声に、大爆笑するルフィとギネス。
ゾロとライコウは吹き出すのを何とか堪えているが、後一声出たら吹き出しそうだ。

『し~~~~っ!!!』

ルフィとギネスの笑い声に慌てる兵士達。

ルフィ「似合わね~~~~っ!!! あっはっはっはっは!!!」

ギネス「こんなの…こんなの笑うに決まってんじゃん!! アハハハハハハハハ!!」

ルフィとギネスの大笑いに…。

ピーカ「“麦わら”……!!」

ピーカ、キレました。(笑) 

 

第151話:将星来襲

ルフィ「だ~はっはっはっはっ!! 変な声~~~~っ!!」

ギネス「ハハハハ…!!」

ピーカのことを大笑いするルフィとギネス。

「おいおいやめろ!! やめてくれェ!!」

「ピーカ様は甲高い声を気にしてんだ!! あの姿で暴れられたら…!!」

焦るドンキホーテファミリーの兵士達だが、それも虚しくピーカはルフィとギネスに向け拳を振り上げる。

『逃げろォ~~!!!』

デリンジャー「キャー! ピーカが怒っちゃった~!」

バイス「逃げるなら、王宮へ向かうダイ~ン!!」

逃げ出すドンキホーテファミリー一同。
海兵や民衆も逃げ始める。

イッショウ「何やら大変な気配が。」

「イッショウさん!! お逃げ下さい!! 岩の巨人が!!」

ゾロ「おい、ルフィ!! お前、敵をおちょくるのもいい加減に…「逃がさんぞ!!!」ぷーっ!!」

逃げながら吹き出すゾロ。

ルフィ「ホラ、お前も笑ってんじゃねェか!!」

ロー「お前ら…!」

爆笑する2人に呆れるロー。

ギネス「ズラかろう旦那!! 危険だ!!」

この展開はマズイと判断したギネスは、ライコウに撤退を促した。
しかし、ライコウは…。

ライコウ「バカ野郎、逃げるったってどこへ逃げるんだよ。」

ギネスの言葉を一蹴。
ライコウは一歩前に出て、刀を構える。

ギネス「!? まさか剣一本でアレを!!?」

ライコウ「よく言うだろ、鬼ごっこで捕まりそうになったら鬼を潰せばいいって。」

ギネス「聞いたことねェけどな!!」

ライコウは刀に覇気を纏わせ、刀身を黒く輝かせる。
その間にも、ピーカの巨大すぎる拳が迫る。

『来たーーーーー!!!!』

ドレスローザ全域の岩石と一体化したピーカの攻撃に、ライコウは挑む。

ライコウ「“奥義・船割”!」

「町が降って来る」レベルの大きさのピーカのパンチを前に、ライコウは刀を天高く掲げ一気に振り下ろし、巨大な三日月状の斬撃を放った。


ドゴォォン!!


『!!!?』

ピーカ「っ!!?」

ギネス「んなっ!!?」

ライコウが放った斬撃は、巨大な岩の巨人となったピーカの右腕を貫き粉砕した。
斬撃はそのまま鳥カゴにぶつかり、空気を震わせて砕け散った。

ライコウ「“剣帝”名乗ってんだ、これぐらい出来んとなァ。 とはいえ…参ったなァ、ちと鈍ってる(・・・・)。」

ギネス「え!? アレでも本調子じゃないのか!!?」

ライコウ「久しぶりにやったからな、本当ならもうちょいキレイにスパッと出来るんだよ…こりゃあ鍛え直さにゃあいかんか。」

ライコウは頭を掻きながらピーカを見据える。
一太刀で渾身のパンチが破壊されることが想定外だったがゆえ、困惑するピーカ。

ライコウ「丁度いい機会だ…“本物の海賊”を教えてやるよ、ソプラノ野郎。」

ピーカ「……!!」

ギネス「(……旦那ばっかじゃあ、カッコ悪ィな…俺も本気になるか。)」

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-同時刻、新世界のある海域-

一隻の船が、海に沈んでゆく海賊船の艦隊を間を進んでいく。
かの「四皇」百獣海賊団の有能な傘下海賊である“剣鬼”マイとその部下達が、凄まじい力で捻じ伏せたばかりなのだ。

マイ「戦闘のせの字すら分からないゴミ共だったな。」

「はっ! 数では勝っていましたが、地力が違ったようで。」

マイ「よし、ワノ国へ帰還するぞ。」

マイは船員達に命令する。

マイ「(……しかし、最近妙な感覚に襲われる。)」

マイは袖を捲って自分の腕を見つめる。

マイ「(この身体がうずくような、何とも言えない感覚…まさかだとは思うが…。)」

マイは、「人殺しの一族」として闇の世界では有名なヴィンスモーク家の血を受け継いでいる。
過去にあった一件で完全に縁を切ったのだが…。

マイ「(……いいや、今はあんなクズ共どうだっていい。 私は私…あの連中に捧げるために生きている訳じゃない。)」

マイは首をブンブンと横に振って、ヴィンスモーク家のことを忘れようとする。
その時だった。

「船長!!」

「緊急事態です、ビッグ・マム海賊団の艦隊が!!!」

マイ「何!?」

マイはその報告に驚愕した。
ビッグ・マム海賊団は、自分達の主であるカイドウ率いる百獣海賊団と同じ「四皇」の一角“ビッグ・マム”ことシャーロット・リンリンが首領を務める一大勢力。
大国に匹敵する規模を誇り、数としてならば四皇の中でも最大とも噂されているのだ。

マイ「(だがどういうことだ、この海域はビッグ・マムのナワバリじゃない筈だ…なのに何故…!?)」

ビッグ・マムは拠点であるホールケーキアイランドとその近海の34の島、そしてその周辺海域をナワバリとして治めており、多彩な人種構成となっていることから周囲から“万国(トットランド)”と呼ばれている。
しかしマイが航行しているのはその「海域外」。ビッグ・マム海賊団が現れたのは、侵入者への攻撃とは思えない。

マイ「となると…ビッグ・マム海賊団から接触に来た…?」

?「さすがに勘が鋭いな。」

マイ「!!?」

マイの背後から聞こえた声。
それに驚いたマイは剣を抜いて構えながら声の主に刃を向ける。

マイ「貴様は……カタクリ!!」

カタクリ「俺の名はさすがに知っていたか、ヴィンスモーク・レイ・マイ。」

マイと対峙するのは、ビッグ・マム海賊団の最高幹部である「将星」の中でも10億5700万ベリーという規格外の賞金が懸けられているシャーロット・カタクリだった。
強力な“武装色の覇気”と鍛えぬいた“見聞色の覇気”、名前からはピンとこない脅威の“モチモチの実”という3つの力を有する、新世界でも屈指の猛者である。

マイ「くっ…ここへ来て私の首が狙いか…いいだろう、掛かって来い!! 覚悟は出来てる!!」

カタクリ「バカが……小娘1人のために艦隊引っ張って来てリンチなんざ性に合わねェ。 まァ、てめェに用があるのは事実だ。」

マイ「何…?」

カタクリ「一緒に来てもらうぞ。 断ってもいいが…その時はお前の弟(・・・・)がどうなっても知らんぞ? “黒足”じゃなくても血縁は結べるからな。」

マイ「!!!?」

ドレスローザの騒乱の裏で、巨大な力が蠢き始めていた。 
 

 
後書き
最終章の伏線が出ました。
最終章は四皇同士の大戦争ですので、お楽しみに。
一応このペースだと来年か再来年まで続く…かな? 

 

第152話:狼煙

ライコウとピーカが対峙していた頃、ルフィ・ゾロ・ローの3人はコロシアム前の広場まで退避していた。

ゾロ「ったく岩人間め…オーズよりでかくなりやがった…それにしてもあの腕をぶった斬った“剣帝”もスゲェな…。」

?「麦わら!!」

ルフィ「ん…?」

退避したルフィらに話しかける男が現れた。
話しかけてきたのは、“海賊貴公子”や“白馬”と呼ばれる海賊・キャベンディッシュだ。

ルフィ「あ!!キャベツ!!」

ゾロ「何だ!? コイツは!!」

キャベンディッシュ「海賊狩りのゾロか…!! そして…トラファルガー・ロー!!! おのれ、よくも僕の人気をォ!!! 僕の人気を返せーー!!!」


ガギィィン!!


「「「おわァ!!?」」」

いきなり斬りかかるキャベンディッシュ。
世間を賑わす“最悪の世代”が相当嫌いらしい。

ルフィ「おい何すんだ! コイツは俺の仲間に…!!」

ロー「なってねェよ! ……じゃねェ!! おい“白馬屋”!! 俺はてめェが逆恨みしている“最悪の世代”じゃねェぞ!!!」

キャベンディッシュ「何…!?」

ローの言い分は一理ある。
ローはコラソンと共に10年以上も前からドンキホーテファミリーから離脱し百獣海賊団に属している。
年齢的にはキャベンディッシュらと似たかよったかだが、海賊としての経歴はルーキーである彼らとは違う。若いが、ほぼベテランの領域なのだ。

ロー「八つ当たりすんじゃねェ!!」

キャベンディッシュ「うるさい、黙れ!!」

キャベンディッシュはローの言い分を封殺。
あまり触れて欲しくなかったようだ。

ルフィ「何だ、まだ俺を恨んでんのかよ!」

キャベンディッシュ「いや、ゴッド・ウソップに僕は人生を救われたんだ…君の仲間だろう? もう君たちを狙いはしない。 それより恩返しにドフラミンゴの首を獲ってあげることにしたよ。」

ルフィ「いいよ、それは俺がやるんだ! レベッカには弁当の恩もあるしな!」

キャベンディッシュ「ふざけるな!どうせドフラミンゴを討って人気を取るつもりだろ! その手にはのらないぞ!」

ロー「何を勘違いしてんだ…。」

するとそこへ、八宝水軍のチンジャオ達にが現れる。

ルフィ「うわ、また来た!!」

チンジャオ「ひやホホ!! ガープの孫よ、己の一族への恨みなどとうに消えている!!」

ブー「俺達は元々、ドフラミンゴの商売をブチ壊しにきたんだ! あれしきの賞金じゃあ俺達は動かねェ!」

チンジャオ「ついては…ゴッド・ウソップへの恩返しにドフラミンゴの首を獲ってやろうと思ってな。」

ルフィ「だからそれは俺がやるんだよ!」

妙な知り合いが増え始める。
さらに巨人戦士ハイルディン、エリザベローとその部下ダガマ、アブドーラ&ジェット、オオロンブスら実力者達が次々に名乗りを上げる。
みなウソップをゴッドと称えている。
仁義、人気、誇り、リク王、神……ウソップに対し通すべき筋(一部おかしい)を持つ「我が強すぎる」彼ら揃ってはドフラミンゴを狙う。
すると、オモチャから人間に戻った者達が懸賞金をかけられたルフィ達を狙い大勢やって来た。

「いたぞ!! 三ツ星に二ツ星の受刑者達だ!! 首を取れー!!」

ブルーギリー「アイツら、共に地下にいたオモチャだった奴らじゃねぇか! よくもぬけぬけと…!!」

怒りを露にするブルーギリー達コロシアムの実力者。
その時だった。


斬!!


『ギャアアアアア!!!』

ルフィ達を狙った戦士達は、何者かによって一瞬で斬り捨ててしまった。
突然血を噴き出して倒れる戦士達に、驚愕するルフィ達。

?「面白い関係ですね、これもまた奇縁ですか?」

死体を踏みつけながら、血塗れの黒刀を手にした男が現れた。
正体は…三妖星のムラマサだ。

ルフィ「あーー!! お前!!」

チンジャオ「ひやホホ、これは驚いた…!!」

百獣海賊団の幹部達の中でも最強クラスの実力者であるムラマサの登場に、驚く一同。

ムラマサ「随分と気が荒くなってますが…?」

ルフィ「だって俺がドフラミンゴぶっ飛ばしに行くのにコイツら邪魔する気なんだぞ!!」

『邪魔者扱いすなァ!!!』

ムラマサ「……でもメンバーのほとんどがルフィ君に負けてますよね?」

ムラマサの一言に、ショックを受けるコロシアムの実力者達。
そう、今まで誰も触れてなかったが実力者とはいえ予選敗退した者で揃っているのだ。

ムラマサ「ルーキーのルフィ君に負けて七武海のドフラミンゴに勝てますかね? 自信の部分は褒めますが。」

淡々と毒を吐かれ、精神的に傷ついていくコロシアムの実力者達。

ムラマサ「そこで提案があります……副船長には上手く伝えておきますので。」













一方、ピーカとライコウは凄まじい戦闘を繰り広げていた。
ピーカはイシイシの実の能力で様々な攻撃を仕掛けるが、剣帝の名に恥じないライコウの圧倒的戦闘力に苦戦している。

ライコウ「どうした、小賢しいマネばっかしやがって。 そんなに俺が怖いのか?」

ピーカ「くっ……おのれ…!!」

すると…。

「あそこから人影が!麦わらもいます!」

「さっきの3人…いや、4、5…たくさん人が増えてるぞ!」

「うわああ!! 実力者達を引き連れてきています!!」

「何で増えてんだ!!」

「それもヤベエ奴らばっかりだぞ!」

猛進するルフィ達。

ピーカ「3人も300人も…一緒だーーー!!!」

手を伸ばすピーカ。

ギネス「旦那方、ここは俺に…。」

ギネスは球体状の空間を展開し、刀を抜いて何度も振るう。
そしてゆっくりと刀を鞘に納めていき…。

ギネス「“圧刀剣閃(あっとうけんせん)”!」


キンッ…!


ボゴォォン!!


『!!?』

ギネスが刀を鞘に納めた瞬間、ピーカの腕がまるで全方向から押し潰されたかのように破壊・粉砕された。
突然起きた現象に、ファミリーの兵士達は絶句する。

ライコウ「圧力か…コイツは効くな…!」

ギネス「道は開けた、後は彼らに…!!」

ルフィ「お前ら、付いてくんなよ!!!」

『うるせェ!!!』

ギネス「……任せるの、心配だな…。」

ライコウ「だろ?」

総力戦、開始!! 

 

第153話:ドレスローザ国防戦・その1

粉砕される、ピーカの腕。
ギネスの攻撃で砕かれたピーカの腕が崩れ落ち、地上に降り注ぐ。

ギネス「どんなモンだいってね。」

エリザベロー「まだ使う時ではないという訳だな? それはありがたい!」

チンジャオ「ひやホホ、礼を言うぞ若造!」

チンジャオとエリザベローは、ギネスに対し「とっておき」を温存できることに感謝する。

「あいつらを通すな!! 王宮へ向かってる!!!」

ルフィ達に銃を向けるファミリーの兵士達。
だが、ここでムラマサが動き彼の剣技によって無双される。

ピーカ「おのれ…!!」

ピーカは破壊されていない右腕を振り上げて、チンジャオとエリザベローは構える。

ゾロ「お前ら、やめとけ!! 壊した腕もまた戻る!! 能力の理屈が分からねェままじゃ力の浪費だ!!!」

ピーカは右腕を振り下ろし街を破壊する。
厄介なピーカの拳から逃げる一同はどうしようかと相談するが…。

キャベンディッシュ「!? “麦わら”はどこへ行った!?」

ルフィ達がいないことに気づくキャベンディッシュ。

ハイルディン「あそこだ…!!! 正気か!!? あの野郎!!!」

ピーカの腕をウーシーで登っていくルフィ達を見つけるハイルディン。

『え~~っ!!? 登っとるーっ!!!』

ムラマサ「いや、普通あァ出るでしょう?」

ギネス「いや、普通じゃないでしょアレは…。」

一方のルフィ達は…。

ルフィ「行けェ!! ウーシ~~!!! 近道だァ~~!!!」

「「そうだァ!! 行け行け牛~~っ!!!」」

はしゃぐルフィと何故かちゃっかりウーシーに便乗してるジェットとアブドーラ。

ルフィ「行け行けじゃねェよお前ら!! 降りろよ、ウーシーが重いだろが!!」

ジェット「あ、申し遅れました。 俺はジェット。 そして後ろにいる大きい方が…。」

アブドーラ「アブドーラです。」

自己紹介する2人。
ルフィは「聞いてねェよ!!」とツッコミを炸裂させる。
すると、ここで腕を上がってくるルフィ達を見たピーカが崩れた左腕を再生しルフィ達に向け振り上げた。
それに気付いたルフィもギア3で腕を巨大化し…。

ルフィ「“ゴムゴムの”ォ~~~!!! “灰熊銃(グリズリーマグナム)”!!!!」


ボゴォン!!


ピーカの頭を吹き飛ばすルフィ。
一撃で巨岩を破壊したルフィに驚くチンジャオ達。
だが、肝心の本体は無傷のようだ。

ゾロ「ルフィ、今の頭はただの石だ!!」

ルフィ「え!?」

ゾロ「今、俺達が乗っている場所もただの石像!! 本体はあそこにいる!!」

ルフィ達の行く手に石像の中から現れる本物のピーカ。
ゾロは「初めて人らしい姿を見せたな」と呟き不敵に笑う。
するとピーカは、自らの巨体の数倍はある大きな大剣を構え、振り上げる。

「「うわー!! でけェ刀持ち出したー!! 逃げろ~~!!!」」

ウーシー「モ゛~~~ッ!!!」

必死に止まろうとするウーシーだが間に合わない。
ピーカの刃が迫ったが、その瞬間、ウーシーを抱え飛び上がりピーカの一太刀を躱すルフィ。
そのまま先に進もうとするルフィ達をピーカが追いかけるが…。

ルフィ「先に行くぞ!」

ゾロ「おう!! 任せとけ!!!」


ガキィン!!


ピーカの追撃を受け止めるゾロ。

「「うわーっ!! スゲ~~ッ!!」」

驚く2人。

ピーカ「麦わらに用がある!! どけ!!」

ゾロ「ウチの船長はお前みてェな石コロに用はねェよ。 俺で我慢しときな…!! ソプラノ野郎…!!」

ピーカ「……!!!」

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ライコウ「流れが良くなりそうだ、これでいい。」

次々と進撃を開始するコロシアムの実力者達に、笑みを浮かべるライコウ。

ギネス「これで何とか上手く行きゃあいいんですがね。」

ムラマサ「心配ないでしょう。 人間はいざという時だけ協力しますから。」

ライコウ「……ま、それよりもアイツらをどうにかせんとな。」

「「!!」」

ライコウが後ろを指差し、振り向くムラマサとギネス。
すると振り向いた先に手と腕が動物の顔だったり角や鉤爪になっている、身体のどこか一部が動物の一部となった異形の海賊達が現れた。

ギネス「何だありゃあ…!!?」

ライコウ「“SMILE”の能力者の軍団か…有事の際の切り札っぽいな。」

どうやらドフラミンゴは、非常事態に備えて下っ端達よりも遥かに強力な“SMILE”の能力者の実で構成された軍団を用意していたようだ。
それに乗じたのか、賞金目当ての海賊達も集い始めた。

ライコウ「アイツらは俺とムラマサがやる。 お前はサボと合流して藤虎と紅傘を牽制しろ。」

ギネス「!! ……了解。」

ギネスはそう言うと、能力で球体状の空間を展開し瞬間移動した。

ライコウ「ひーふーみー……ざっと500か?」

ムラマサ「思ったより少ないですね、てっきり金に目を眩んだのかと。」

ライコウ「まァ、そんな脳筋共の思考回路なんざ気にすんな。 俺達はただ斬るだけさ。」

ムラマサ「作戦名は?」

ライコウ「“全滅”だ!!!」

剣豪達の宴が始まる!
 

 

第154話:ドレスローザ国防戦・その2

頭が取れてピーカの動きが止まったことにより、進撃するキャベンディッシュ達。
一同はドフラミンゴの首を取りに躍起になっており、その勢いはファミリーの兵士達には手に負えず一瞬で蹴散らされてしまう。

デリンジャー「キャー、何て勢い!!」

バイス「だが、無駄だイ~~ン!!」

グラディウス「どこまでも愚かな…。」

ラオG「ここまで来るには“藤虎”率いる海軍と“紅傘”率いる陸軍がおる!! 辿りつけぬ!!」

ベビー5「……!! ピーカ様を止めたのはやっぱり麦わら達ね。」

キャベンディッシュ達の様子を高台から見下ろすドンキホーテファミリー幹部達。
ドンキホーテファミリーは海軍及び陸軍と交渉し、双方戦い合うことは無いようになっている。
尤も、ドフラミンゴにとって“海軍大将(ふじトラ)”と“陸軍大将(ランファ)”が脅威であることは変わらないため、利用し終わったら始末しようと目論んでいるが…。

グラディウス「唯一の厄介者は“剣帝”……後は放っておけばいい。」
















-一方、「旧・王の台地」では-

―地下交易港より地上へ出たゴッド・ウソップの一団は
コロシアムを伝い王の台地へと到着――

バルトロメオ「あんれ~~~!!? ルフィ先輩がいねェべェ~~!!!」

ルフィが不在であることに、声を上げるバルトロメオ。
しかしルフィは同じ場所に5分とじっとしていられぬ男だ、当然と言えば当然である。何せあの自由人なガープの孫なのだから。

レベッカ「ロビンさん!! 下からまだ追っ手が!!」

ロビン「えェ、みんな登り終わったらネットを外さなきゃね。」

失礼と能力で作り出したネットを非情(笑)にも壁から外すロビン。
それを登ろうとしていた兵士達が断末魔の叫びと共に次々と落下していく。
そんな中、ヴィオラが何かの鍵を持ってくる。

ヴィオラ「あったわ!!」

レベッカ「あ!! ヴィオラさんっ!!」

リク王「何をしてた?」

ヴィオラ「鍵よ! お父様!! トラファルガー・ローの手錠の鍵!!」

ヴィオラが手に入れたのは、ローの手錠の鍵。
ローはオペオペの実の能力者であるため、海楼石の手錠を嵌められている。ロー解放の唯一の手段なのだ。

ヴィオラ「やっと見つけた…何とかして届けなきゃ…!!」

リク王「待てヴィオラ、あいつらが何だと言うんだ!! 海賊だぞ!!」

ヴィオラを制止するリク王。
この国を乗っ取ったドフラミンゴも海賊…10年前の一件以来海賊は信用できないのだ。
しかし、ヴィオラは力説する。

ヴィオラ「えェ、でも彼らこそがこの国の“見せかけの平和”を壊してくれる無法者達!! お父様…私…彼らに賭けたの!! 世界政府が称号を与えこの国に君臨した海賊ドフラミンゴに私達はこれだけのキズを負わされたのに、今更正義を掲げた海軍や陸軍、政府なんかに助けて欲しくない!! 彼らには聞こえないのよ…自ら出した犠牲者の声が…この国の怒りの声が…!! 権力者の耳は都合よくできているから…!! 少なくとも麦わら達の言葉には血が通い!! 彼らの行動は心と共にある!!」

ヴィオラの言葉は、これまでドレスローザ編で描かれてきた虐げられてきた人々の怒りを、ハッキリと言語化した。
すると、ここでレオがリク王に声を掛けた。

レオ「リク王様、彼を見てください!!」

リク王「君は…五ツ星の…!!」

レオ「ゴッド・ウソップことウソランドれす!! この方こそが命の危険も顧みず 10年間この国にかかったオモチャの呪いを解いてくれた僕らのヒーローなのれす!! その勇姿には僕ら涙したれす!!」

厳密に言えばカイドウの右腕であるライコウのシナリオであったが…それでもレオ達にとっては“麦わらの一味(ウソランダーズ)”はドレスローザの希望の光。
たとえ海賊でも最後まで信じ抜くのだ。
そんなヴィオラとレオ達の声を、リク王はただ黙って聴く。

レベッカ「ねェ!! ヴィオラさんその鍵、私がルーシーに届けに行くよ!!」

ヴィオラ「レベッカ!!」

レベッカ「どの道じっとしていられないの!!」

バルトロメオ「よーしそうすべ!! ルフィ先輩んとこさ行くなら俺も付き合うべ!! 任せとけ!!」

リク王軍も、動き出そうとしていた。

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-同時刻、新地・王宮では-

デリンジャー「変よ!? キャー変っ!! どおしてコロシアムの集団が登って来るの!? 下には海軍と陸軍の兵士が何千人もいたハズよ!? バスティーユ中将も、海軍本部大将“藤虎”も、世界陸軍大将“紅傘”も!!! どうやって切り抜けてきたの!?」

駆け上がってくるキャベンディッシュ達に驚くデリンジャー。
すると、双眼鏡で街の様子を伺っていたベビー5が叫んだ。

ベビー5「いたわよデリンジャー!! 海軍と陸軍は全員、“拳豪”とギネスに足止めされてる!!」

デリンジャー「!?」












海軍及び陸軍は、2人の人物に足止めされていた。

イッショウ「どうしても…どいていただけやしませんかね。」

ランファ「……同感だな。」

イッショウとランファの前に立つのは、鉄パイプを手にした青年と血が滴る刀を手にした青年がいる。
ショクショクの実でパワーアップしたサボと、圧倒的実力を有するギネスである。
周囲は2人の手によって倒された兵士達で一杯だ。

サボ「そうだなァ…海賊麦わらの一味及び…それを手助けする戦士達。 それらに危害を加えようとする者を、この先通すわけにはいかない。」

ギネス「……誰を援護しようが知ったこっちゃねェだろ?」

イッショウ「ほぅ…それがあんさんらの答えですかい。」

サボとギネスは、藤虎とランファと対峙する。 

 

第155話:ドレスローザ国防戦・その3

バスティーユ「止せと言うのに!! 何故仕掛けたんだらァ~!! お前らじゃあ勝てん相手だぞ!!」

2人に攻撃を仕掛ける兵士達を止めるバスティーユ。
サボとギネスは、次々に兵士達を薙ぎ倒していく。

ギネス「雑魚に用はねェってのに…何で挑むかなァ?」

ギネスは笑みを浮かべながら、コートをなびかせ刀を振るう。
ギネスが刀を振るう度に、刀剣が、槍が、銃火器が、全てが斬られていく。

サボ「さすがは世界的犯罪者…実力が桁違いだ。 負けられねェな!」

サボも鉄パイプを振るい、次々に殴り飛ばしていく。
そんな中、1人の兵士が斧を振るった。

「食らえェ!!!」

サボはそれを避けず、鉄パイプに力を込める。
すると鉄パイプが徐々に高速で振動し始め、サボはそれを思いっ切り振るい、斧にぶつけた。
その瞬間、斧は粉々に砕け散り、鉄パイプが兵士の腹を抉って吹き飛ばした。

サボ「スゲェな、これが“ショクショクの実”か!」

全てを粉砕する衝撃波を操る「ショクショクの実」。
ショクショクの実の真髄は、衝撃波を武器に纏わせることにある。
剣などの刃物に纏わせればチェーンソー状態になり、鉄パイプなどの打撃系武器に纏わせれば対象に高速で衝撃を与え続ける。
覇気も纏わせれば、凄まじい威力を発揮するのだ。

バスティーユ「どけい! お前らじゃ無理だらァ!」

バスティーユはサボとギネスの前に飛び出し、愛刀である“鮫切包丁”を振り落とす。
それに立ち向かうは、ギネスの愛刀“和泉安定”。
覇気を纏った刃同士が、ぶつかる。


ガキィィン!!


ギネスの和泉安定(あいとう)が、バスティーユの鮫切包丁(あいとう)を圧し折った。

「バスティーユ中将の鮫切包丁が!!」

「何て奴だ!!」

バスティーユ「おんどれェ!!!」

ギネス「おいおい、今時の中将はこんな程度か? コーメイやおつるの方がヤバかったぞ。」

ランファ「どけ、バスティーユ!!」

ここで、陸軍大将(ランファ)が動いた。
陸軍の最高戦力の参戦に、表情を変えるサボとギネス。

ランファ「はっ!!」


ドゴォン!!


番傘を振るい、叩き下ろすランファ。
覇気を纏ったその一撃は、クレーターのように地面を大きく窪ませた。

サボ「っ…マジか!?」

ギネス「言っとくがランファも能力者だからな! 女だからって見くびると足元掬われるぞ!!」

ランファが能力者であることを告げ、サボに注意を促すギネス。
だが、その瞬間ギネスの顔面にランファの番傘が直撃した。

サボ「なっ…!!」

ランファ「油断したな? ギネス。」

だが、その程度でやられるギネスではなかった。

ギネス「そりゃあ違うなァ…これは“余裕”ってモンだよ。」

ギネスは咄嗟に覇気を纏ったらしく、目立った傷は顔には1つもない。
若いとはいえ、その天性の戦闘力はランファの想像以上であるようだ。

ギネス「ったァ言え、このままじゃあ何ともならねェから…ちと本気で行くぜ。」

ギネスが獰猛な笑みを浮かべると、覇王色の覇気を放ち始めた。
強烈な威圧感により兵士達を次々に卒倒させ、周囲の建物も威圧しヒビを入れる。
その時だった。


キィィィィン!!


「「ん!?」」

イッショウ「弱りやしたね…鳥カゴとやらが邪魔して、ウチの隕石が切れちまってやしませんか…?」

空を見上げると、イッショウが召喚した隕石が鳥カゴによってキレイにスライスされていた。
そして勿論、その隕石は鳥カゴの中に降り注ぐ。

ランファ「おいイッショウ!! まさか鳥カゴのこと忘れて召喚した訳じゃあるまいな!!?」

イッショウ「……こらァいけねェや。」

ランファ「バカヤローーーーーーーー!!!!」


ドゴゴゴォン!!!


『うわああああああ!!!!』

降り注ぐスライスメテオ。
人々は逃げ回り、大パニックだ。

イッショウ「あちゃあ~…こらいけねェ…! 随分広範囲に広がっちまって…市民の皆さんにおケガァねェか…!!」

『隕石落とす時は言ってください、イッショウさんっ!!』

イッショウ「あいすいやせん、落としやした!」

『やる前っ!!』

ランファ「おいイッショウ!!! お前の能力は匙加減を間違えたら島1つ消し飛ばしかねないんだぞ!!? 少しは気を配れ!!!!」

一斉に藤虎叩きが始まる。

バスティーユ「ったく、この人は…。」

さすがのバスティーユも呆れ気味だ。

ギネス「っぶねェな…たかが札付き2人にそこまでやるかよ…。」

サボ「さすが海軍大将…スゲェ力だ。」

頭を掻きながら立ち上がるギネスと、被っているシルクハットを整えるサボ。

イッショウ「派手にやってくれたモンだ…。」

「「「ほとんどお前だろ!!!」」」

ギネスとサボだけでなく、味方のランファからもツッコミを入れられる藤虎。

ギネス「ったく、世界徴兵で特認された奴がこうも抜けてると戦いにくい……。」

サボ「……つっても、ここを切り抜けるのが大事だ!!」

ギネス「あァ、全くだ。」

互いに得物を構え、サボは鉄パイプに衝撃波を、ギネスは愛刀に覇気を纏わせる。
それに応じ、藤虎は仕込み杖に重力波を纏わせ、ランファは番傘にベクトルを巻き付かせる。

イッショウ「メイナードさん…全ての兵士達を避難させておくんなさい。 バスティーユさんは皇帝の旦那の捜索を頼みやす。」

ランファ「行くぞ…!」

サボ「望むところだ!!」

ギネス「こりゃあ後始末大変だな、エイセイは。」


ドゴゴォン!!


『うわああああああ!!!』

陸海軍の最高戦力(たいしょう)と、新世界の強者2人が激突した。 

 

第156話:ドレスローザ国防戦・その4

 
前書き
大分遅れました、申し訳ありやせん! 

 
ドレスローザ各地で戦闘が勃発する一方、エイセイは民間人の避難誘導を進めていた。

エイセイ「随分とまぁ、荒れたモンだな…。」

汗を一筋流し、足にケガを負った少年の手当てをするエイセイ。
エイセイは武道以外にも様々な事に精通し、緊急事態に備えて刀創傷や骨折の手当てを心得てもいるのだ。
ここで役立ったようだ。

エイセイ「(イッショウとランファには申し訳ないけど、これも全て僕の目論見のため。 付き合ってもらうよ。)」

そう…海軍と陸軍をサボとギネスにぶつけたのは、海軍と陸軍の独断ではなくエイセイの「勅命」なのだ。サボとギネスと交戦することで、あえてルフィ達ドンキホーテファミリー討伐隊とぶつからないために行ったという訳だ。

エイセイ「これで大丈夫…安静にしてれば止血するから。」

「…ありがとう!」

エイセイ「どういたしまして♪」

すると、エイセイと共に来ていた政府の役人達が武装した状態で整列した。

エイセイ「何のつもりだい?」

「エイセイ様、一刻も早く捕らえましょう!!」

「お言葉ですが、ドフラミンゴに一旦加担して後々捕縛しましょう!!」

「その方が、我々“世界政府”の面子が保てます!!」

彼らの意見に対し、エイセイは…。

エイセイ「却下。」

「!? 何故ですか…!!?」

エイセイ「どの道ドフラミンゴはこの国の人間を皆殺しにする気だよ。 あんな狡猾な男が、はい分かりましたとこの国の人間助けるかい?」

「そ、それは…!」

エイセイは既に見破っていた。
ドフラミンゴの残忍さや狡猾さを知る数少ない人物であるエイセイにとって、彼の思考は全てお見通しなのだ。

エイセイ「だからこそ…僕はあの無法者達に……彼らに全てを賭けた。 この国にいる人間全員が想ってる筈だよ、“今更正義を掲げた海軍や政府なんかに助けて欲しくない”って。」

『!!?』

エイセイ「少なくとも……僕は元奴隷だから、そんじょそこらの権力者と違って都合のいい耳じゃないよ。」













一方、王宮への台地2段目ではコロシアム軍団VSドンキホーテファミリーの激しい戦いが繰り広げられていた。

スレイマン「道を開けろ子供!! 先を急いでいる!!」

デリンジャーを幹部と気付かず声をかけるスレイマン。

デリンジャー「“首切りスレイマン”…!! キャー、怖い名前!! いくつ首を切ったの? 100? 1000? 戦争の処刑人だったんでしょ!?」

軽妙なステップでスレイマンに近づくデリンジャーは、角のついたヘルメットでスレイマンを貫く。
デリンジャーは能力者ではないが、あの狂暴な闘魚の半魚人…角による攻撃は闘魚譲りだ。

ブルーギリー「スレイマン!! ファミリーの幹部か!!!」

角から血を滴らせ笑うデリンジャー。
幹部達の参戦に、注意を促すブルーギリー。

チンジャオ「ひやホホ、遅いわ!! 先に3段目に行かせて貰う!! 壁に兵を配置しようがムダだ!!!」

壁をよじ登るチンジャオ。

チンジャオ「ん? 何だこの膨らんだ石は!!」

チンジャオが妙に膨らんだ石に手をかけたその時、爆発が起きチンジャオが吹き飛ばされる。

ブー「じいちゃん!!」

チンジャオを心配するブー。
しかしそんなブーの上にバイスが落ちてくる。

バイス「“10tヴァイス”!!!」


ズドン!!


ブー「ギャアア!!!」

コロシアム軍団は、幹部達を前に徐々に押されていた。
ラオGに殴り飛ばされるオオロンブス、ベビー5に蹴り飛ばされるダガマ…皆苦戦している。それもそうだろう…ドンキホーテファミリーの幹部達は、ラオGとデリンジャー以外は全員能力者。弱点を突くか覇気を纏わねば勝つことは容易ではない。
しかし、ドンキホーテファミリーは必ずしも優勢とは言えない。何故なら…。

「グラディウス様ーーー!!」

グラディウス「何だ?」

「SMILE部隊、全滅を確認しました!!」

「我々の戦力も、急激に減っているのが目に見えてます!!」

ラオG「!!?」

ベビー5「何ですって!?」

グラディウス「ちっ、何をしている……!! 相手は艦隊じゃない…たった2人の海賊(おっさん)だぞ!!!」

焦るグラディウスの視線の先にあるのは、得物の刀を携えドンキホーテファミリーの幹部達がいる台地を見据えるライコウとムラマサが。
2人の戦闘力は想像を絶しており、切り札でもあったSMILE部隊の全滅の早さは想定外だったようだ。新世界最強クラスの大海賊としての無双っぷりを発揮され、ドンキホーテファミリーの戦力はほとんど壊滅的である。

グラディウス「くっ、あの怪物共を真面に相手取る訳にはいかんか…!!」

その時だった。


バゴッ!


デリンジャー「うェぐっ!?」

グラディウス「デリンジャー!!?」

デリンジャーが何者かに蹴り倒された。

デリンジャー「な、何…!? 誰なの!?」

コラソン「俺だよ。」

『!!? コラソン…!!?』

デリンジャーを蹴り飛ばしたのは、先程まで行方知らずだったコラソンだった。

コラソン「しっかりしろ、生半可な覚悟じゃあ倒せる相手じゃねェぞ。」

煙草の紫煙を燻らせ檄を飛ばすコラソン。

コラソン「おいダガマ、てめェ“軍師”だろ? 軍師らしい戦いぶりぐらい見せろよ、これは総力戦だぞ?」

ダガマ「!!」

その一声に目を見開くダガマ。
そして、笑い始めた。

ダガマ「ガマハハハ…そうだ、我こそはプロデンス王国が軍師ダガマ!! 確かに貴様の言う通り、これは総力戦…“戦”だ!! ならば見せてやろう、丁度いい策を思い付いたぞ!!」

軍師ダガマ、秘策アリ…!? 

 

第157話:ドレスローザ国防戦・その5

-新地、王宮-

ドフラミンゴの下へやって来るベラミー。

ドフラミンゴ「俺は今…感傷に浸ってたんだ。 何をしに来た、麦わらの首は取ったのか?」

ベラミー「何故デリンジャーを俺の下へ送った!! ホントにアンタの命令なのか!? もう俺に望みは無ェのか…!?」

ドフラミンゴに問うベラミー。
べラミーは数時間前、デリンジャーに殺されかけた。デリンジャーにべラミーの始末を命じたのがドフラミンゴだと知り、その真意を問い質しに来たのだ。

ドフラミンゴ「…フフフ!! ハッキリ物を言わせるな…ベラミー。 俺とお前は目的が違うんだ、昔からな…!!」

ベラミー「!?」

ドフラミンゴ「お前はずっと海賊になりたがってた。 だが俺は違う…。」

ドフラミンゴは、狂気を孕んだ笑みを浮かべた。

ドフラミンゴ「何でもよかった、この世界さえブチ壊せればな!!!!」

ベラミー「!!?」















-王宮への台地、2段目-

キャベンディッシュの馬で先へ進むルフィ達。

キャベンディッシュ:「いいな麦わら!! 僕が壁を斬って道を作る!!」

ルフィ「俺が敵をブッ飛ばす!」

キャベンディッシュ「それで一気に3段目へ登る!! ……って一人多いぞ!! 誰だ君は!?」

いつの間にか相乗りしてるキュロス。
どうやらルフィの作った道を辿ってきたようだ。

キャベンディッシュは「知り合いでも重量オーバーだ」と下馬するよう言うが、スルーされる。

ルフィ「これからレベッカと合流するんだぞ!!」

キュロス「レベッカがこの敵陣にいるのか!? 何故止めなかった!!」

キャベンディッシュ「聞いてるのか!?」

ルフィ「4段目のひまわり畑で待ち合わせてんだ!!」

キュロス「あの子も受刑者リストに入っているんだぞ!?」

ルフィ「大丈夫!! 俺の仲間も一緒だから!! それよりおっさん、何で真っ先に飛び出したんだ!?」

ロー「(牛の方が背中が広かった…。)」

キャベンディッシュ「聞け!! 愛馬ファルルが美しく走れるのは本来2人まで!!」

キャベンディッシュの愛馬ファルルの上で、口論勃発。
ローに至っては呑気にファルルの乗り心地を評価する。

キュロス「状況がどう転ぼうと…私がやりたい事は一つだ……!! ファミリーの最高幹部に、何としてもこの手で討ち取りたい男がいる…!!」

そう言いディアマンテの顔を思い浮かべるキュロス。

ルフィ「おっさん、死ぬ気じゃねェだろうな!!」

キュロス「バカ言え、人間の体で負けやしない!!」

ルフィ「ならいいや。」

キャベンディッシュ「よくない!! 下りろ!!」

ルフィ「何でだよ!? お前が下りろ!!」

キャベンディッシュ「意味が分からない!! 最悪だ、まさに最悪の世代!!」

ルフィ「危ねぇってお前!! 前見ろ、前前っ!!」

すると、ルフィは前方の何かに気付く。
ルフィ達の進む先にはコロシアム軍団の面々とコラソンが。

コラソン「先を行け“麦わら”!! コイツらは俺達が止めておく!!」

バイス「何だイーン!! コイツら急に~~!!!」

さっきまでケンカする程バラバラだった戦士達が、何と一致団結したのだ。

ルフィ「何だ!? どうしちまったんだァ!!? お前ら!!」

ダガマ「ガマハハ!! 我こそは軍師ダガマ!! これは戦だァ!!! 闇雲に暴れも誰一人頂上に行き着けぬ!!!」

ハイルディン「お前を先に行かせるのが筋だ!!!」

サイ「しっかり送り届けろ、キャベンディッシュ!!」

エリザベロー「勝たねばならん!! この戦ァ!!!」

デリンジャー「余計なマネを…!!」


ドスッ!!!


ダガマを頭の角で突き刺すデリンジャー。
ダガマは血を吐き倒れる。

ルフィ「ダルマー!!!」

しかしデリンジャーを掴んで離さないダガマ。

デリンジャー「何よ、ちょっと離せ!! コイツ!!」

ダガマ「ガマハハ…頂上を目指せェ~~~!!!」

仲間達の想いを背に先へすすむルフィ達。

キャベンディッシュ「“美剣”…!!」

ルフィ「“ゴムゴムの”ォ!!」

キャベンディッシュ「“斬・星屑王子(ザン・テグジュペリ)”!!!」

ルフィ「“JET銃乱打(ジェットガトリング)”~~~~!!!!」

キャベンディッシュは壁を斬って道を作り、ルフィは敵をブッ飛ばす。
バラバラだった猛者達が、ようやく手を組み始めた。 

 

第158話:ドレスローザ国防戦・その6

-一方、ライコウとムラマサは-

ライコウ「ざっと、こんなモンか。」

愛刀をキンッと鳴らして鞘に納めるライコウ。
それに応じ、ムラマサも刀を鞘に納める。

ムラマサ「表に出る機会が減ったのでそろそろかと思いましたが……腕は落ちてませんね副船長。」

ライコウ「なァにが“腕は落ちてませんね”だ、副船長舐めんなコラ。 つーかそろそろ(・・・・)ってどういうことだ!? 臨終か? くたばれってか!?」

青筋を浮かべてライコウは覇王色の覇気を放つが、ムラマサは笑みを浮かべてそれを受け流す。

ライコウ「…まァいい、それよりもとっとと幹部を潰すぞ。 あんなガキ共相手に手古摺る訳にはいかねェぞ? あのフラミンゴ野郎が何もしてこない訳が無ェ。」

ムラマサ「“天夜叉”な狡猾な男ですからね。」

ライコウは欠伸をし、ムラマサはゴキゴキと首を鳴らす。

ライコウ「取り敢えずは幹部から血祭りにあげるか。」
















ライコウが動き始める一方で、旧王の台地の地下にある幹部塔のさらに下にあるスクラップ場では、錦えもんがある人物との再会を果たしていた。

錦えもん「うぉー!! 探したぞー!! 無事であったかカン十郎~!!!」

カン十郎「錦えもん!! よく戻ってくれた!! スマンな、少々捜させたか…。」

錦えもんが再会を果たしたのは、“夕立ちカン十郎”ことカン十郎。刀の柄のような模様の柄を持つ筆を背負っている、錦えもんの同心だ。

「壁の中から人が…。」

「どうなってんだ…?」

カン十郎は悪魔の実の能力者であり、描いた絵を実体化させたり自身を絵に変化させることが出来る。
カン十郎は先程まで壁に絵になって隠れていたのだ。

カン十郎「壁の中にて隠れ飽きて眠っておったわ。」

錦えもん「随分待たせた。」

カン十郎「カッカッカ!! 信じておったゆえヘチマの皮とも思っておらぬわ水くさい! それがしの妖術があれば食う物にも困りはせぬのでな! いやなに別段腹など空いてはおらんのだが。」

そう言いながらキャベツのようなものをパリパリ食べるカン十郎。

カン十郎「モモの助さえ無事でござれば…。」

錦えもん「無論!! お主のお陰でござる!!

カン十郎「萵苣(ちしゃ)だ、食うか?」

錦えもん「いや、いらぬ。 お主のは腹に障る。」

※萵苣はレタスです。

カン十郎「よし出ようか!! 何やら上が騒がしいな!!」

錦えもん「一言には言い難し!! 話すことあいくらでもある、後程詳しく!!」

カン十郎「あい分かった!!」

カン十郎は背にした大きな筆て壁に鳥の絵を書き出す。
大きな筆でカン十郎は、子雀の絵をあっという間に描く。唯一残念なのは、画力の低さか。

カン十郎「出でよ!! “抜け雀”!!!」

カン十郎がそう唱えた瞬間、壁の中の鳥の絵が動き出し抜け出てくる。
描いた絵が動き出したことに、騒ぎ出す人々。

『うおー!! 絵に描いた鳥が現れたァ!!!(しかし画力が気の毒!!)』

カン十郎「ゆこうぞ!!」

錦えもん「うむ!」

それと共に、抜け雀は2人を乗せて空を飛ぶ。
しかし、2人に乗り込まれ苦しそうだ。

『(能力がすごいのに!! 画力のせいで飛ぶのが苦手そうな雀が出てきた!!)』

抜け雀に乗り込むカン十郎と錦えもん。
そんな2人に、リク王軍の元兵士が声を掛けた。

「我々は今までオモチャにされていた旧リク王軍及び市民!! この事態が何事かは知らんがリク王様は無事なのか!? 街には家族もいる、我々も連れ出してくれ!! 頼む!!」

-------------------------------------------------------------------------------

-新地・王宮2段目-

こちらでは、共闘を開始したコロシアム軍団とドンキホーテファミリーが激突していた。

「麦わら達を3段目に行かせるなァ~!!」

「撃ち落とせーー!!」

ルフィ達を足止めするために砲撃する兵士達。

ブルーギリー「狙うのはこっちにしろ~~~!! ヒャオ!!!」

兵士達を蹴り飛ばすブルーギリー。
そのブルーギリーに背後から近づき…。

デリンジャー「“断頭ハイヒール”!!!」

コラソン「らァッ!!」


ガッ!!


コラソン「うらァッ!!」


ゴッ!!


デリンジャー「ぐっ!!?」

グラディウス「デリンジャー!!? くっ、面倒な相手を寄越しやがったな“剣帝”め…!!!」

コラソンの参戦により、コロシアム軍団の仲間達も何とかファミリー幹部達と互角に渡り合う。
しかし、そこは七武海の部下…そう易々と倒れない。

ルフィ「しっかし、アイツ強ェなァー…!」

キャベンディッシュ「おい余所見するな、麦わら!! この鳥カゴってゲームは全てウソだ!!! 君ら受刑者を全員討ち取ろうが誰も助かりはしない!! 少なくとも武器の密売とオモチャの秘密がバレた時点で今この国にいる者達の皆殺しは確定していると思う。」

ルフィ「!!?」

キャベンディッシュ「ドフラミンゴは情報を絶対に漏らさない…!! ドレスローザは今世界から隔離された絶海の孤島! 奇跡を信じてゲームの終了を待っていては全員殺される!!! 前へ進みドフラミンゴを討ち取る事以外この島から生きて出る方法はない!! 何が起きてもその一枚上を行くドフラミンゴにたった一つの落ち度があるとすれば、今回のコロシアムに各国より一癖も二癖もある強力な戦士達を集めてしまった事だ!! ―僕らは敗けやしない!! 何より僕がドフラミンゴを討ち取るからだ!!」

ルフィ「何言ってんだ!! ミンゴは俺がぶっ飛ばすっつってんだろ!」

憤慨するルフィ。
するとここでキュロスが…。

キュロス「気持ちはありがたいが、私がやる!!」

ルフィ「!? 兵隊ィーー!! お前さっき幹部の奴討つって言ってたろ!」

キュロス「それは個人的な戦い!! リク王の国を取り戻すのは私の当然の役目だ! 10年前の悲劇にケリをつけねばならない!!」

ロー「……俺は過程はどうだっていい、奴を潰せりゃあ十分だ。」

ルフィ「じゃあ、俺は30年!!!」

キャベンディッシュ「ウソつけ!! 君が僕より年上な訳あるか!! 君ら降りろ!!」

ルフィ「お前が降りろ!!」

やはり揉め合う3人。
そうこうしているうちに3段目が目前に迫る。

キャベンディッシュ「着くぞ3段目だ!!!」

ルフィ「よーし!! このまま4段目まで突っ走れ!! 馬~~~っ!!」

しかし足を止めるキャベンディッシュの愛馬ファルル。

ルフィ「何だ!? このデカ人形!!」

そしてルフィ達の前に立ちはだかる大きなドクロの人形の群れが。
人形といえば…そう、彼女(・・)が復活したのだ…!! 
 

 
後書き
感想、お待ちしております! 

 

第159話:ドレスローザ国防戦・その7

-ピーカの石像上 ピーカVSゾロ-

ここでは、ゾロとピーカが互いの得物を用いて剣劇を繰り広げていた。
この戦いは、誰がどう見てもゾロの優勢であり、ピーカはイシイシの能力をもってしても息を切らしていた。

ピーカ「ゼェ、ゼェ……!!」

ゾロ「そんなんでよく“麦わら”の首を取ろうと思ったな。」

余裕たっぷりに笑うゾロ。
そんなゾロに対し、石の腕を伸ばしてピーカは攻撃する。
しかしゾロは容易く見切って、ピーカの腕を3枚に下ろしながら迫る。

ピーカ「っ!!」

突如、ピーカの目から光が失せる。
それに気付いたゾロは、石化した腕を斬り進んでそのまま斬り裂く。

ゾロ「逃げた(・・・)な…。」

その時!

ピーカ「“蛸石(プルポストン)”!!」

石像の中に潜り距離をとったピーカは、複数本の石の触手をタコの足のように伸ばして包囲するよう相手を襲う技“蛸石”でゾロに奇襲を仕掛ける。
しかしゾロは、八方から取り囲むように飛び出してくる石の触手を瞬時に躱す。

ゾロ「!! ん?」

ふと、上空を飛ぶ何かを見つけるゾロ。
それは、ゾロに接近しつつあった。

ゾロ「お前ら!! 何で空飛んでんだ!?」

ゾロの傍に飛んできたのは、ロビン達だった。
実はヴィオラが手に入れたローの枷の鍵をルフィに届けるために、トンタッタ族の力を借りて移動している最中だったのだ。
空を飛んでいるのは、街へ降りて襲撃されないようにするためだ。

レベッカ「ピーカ!! 最高幹部よ!!」

ロビン「ゾロ!! 敵を止めておいて!! 私達この石像の向こう側に用があるの!!」

ゾロ「そりゃいいが…お前ら何で空を!?」

ゾロの背後で再び石像に潜るピーカ。

バルトロメオ「あれ!? 敵逃げたべ!! いや、逃げてねー!!」

レベッカに向け巨大石像の左腕を動かすピーカ。

レベッカ「キャー!!」

ロビン「石像が動いた!!」

バルトロメオ「ヤッベー!! あんなデカイバリアはれねェべ~!!」

ゾロ「入ったな(・・・・)…“三刀流・千八十煩悩鳳(ポンドほう)”!!!!」

巨大石像を真っ二つになるほどの斬撃を飛ばすゾロ。
それは見事にピーカに直撃し、ピーカの巨石像が袈裟斬りになる。

ピーカ「ゲホッ…!! ウォオオオーー!!」

ダメージを受け、吐血しながら叫ぶピーカ。

ゾロ「大体掴めてきた…!! お前に1つ言い忘れたが…!! 麦わらの一味は何も…“麦わらのルフィ”と“ゴッド・ウソップ”だけじゃねェ。 忘れるな…!! 俺はいずれ世界一の大剣豪になる男だ!! お前とは格が違う!!!」

ピーカ「!!?」

不敵に笑うゾロに、一瞬怯むピーカ。

ピーカ「…調子に乗るなよ、お前ら如きがこの国から出られると思うな!!」

ピーカはそう言い、再び“蛸石”でゾロを攻撃した。
その時だった!

?「“神無突(かんなづき)”!!」


ボゴォォン!!


ゾロ「なっ!?」

ピーカ「アアアアアア!!?」

突如として真下からの斬撃がピーカの石像を襲い、ピーカ本体に直撃した。
ゾロの“千八十煩悩鳳”を上回る破壊力をモロに食らったピーカは、さらに吐血する。

ピーカ「な、なにが…!!」

混乱するピーカだが、ある男を目にした。
それは、この“ゲーム”で賞金首となった者達の中でも最強クラスの海賊だ。

ムラマサ「いい筋をしているようですね“海賊狩りのゾロ”君。」

ゾロ「アンタは…!?」

そう、百獣海賊団における切り札ともいえる3人の大幹部「三妖星」の一角にして、三妖星最強の男である百獣海賊団の三番手、“死の彗星”ムラマサだったのだ。

ムラマサ「副船長とは別行動することになりましてね……。」

ゾロ「それ以前にどうやって上ってきたんだよ。」

ムラマサ「企業秘密です。」

ゾロの隣に立ち、刀を鞘に納めるムラマサ。

ムラマサ「そういえば…君は“鷹の目”からの手ほどきを受けてたようですね。」

ゾロ「!! 何でそれを…?」

ムラマサ「副船長は鷹の目(かれ)とは旧知の仲ですからね。 さて…少しバトンタッチと行きましょうか。」

ゾロ「あ? 何言ってやがる、俺の獲物だぞ。」

ムラマサ「そう固いことを言わずに。 少しくらい遊びたいんですよ。」

ピーカ「な、舐めるな…!!」

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-同時刻-

ここはSMILE工場の工場内側、扉前。
工場に囚われた仲間を救出すべく、小人達が動いていた。

「ハンドルを回して扉を開けろ!!」

『おおおおおお!!!!』

小人達がハンドルを回して扉を開けようとしたその時。

「待ちなよ!! チビ共!!」

小人達が何者かが呼び止める。
現れたのは大柄なおばさんみたいな工場長・キュイーン。まさか20歳とは夢にも思うまい。

キュイーン「調子に乗ってんじゃん!! 出て行かせやしねーよ!! 最初っからアンタ達はSIMLEを造る奴隷なんだよ!! 今頃気付いてギャーギャー騒いでんじゃないわよォ!!!」

「マズイ! 工場長れす! 吸引マシーンに気を付けろ!!」

その直後、吸引マシーンのスイッチを入れるキュイーン。
かなりの吸引力らしく、力の強い小人達は次々に吸引マシーンに吸い込まれていく。

「耐えろ!! 扉を早く!!」

その時!

フランキー「よくやったお前ら!!」

外から扉を開けるフランキー。

キュイーン「んん!?」

『わー!! ロボのオモチャーー!!』

「強そうなロボが助けに来てくれた」と歓喜する小人達。
フランキーと共にやって来るインヘルら仲間達が、次々と救出に向かう。

「インヘルー! ボンバ!!」

インヘル「この人は大人間フラランド!! 僕らの味方れす!!」

『人間ーー!?』

キュイーン「麦わらの一味の“鉄人フランキー”ね!!? アンタ、星一つついた受刑者のはずだよね? よく無事で…!! 無事ならあたしの手で殺して…!!」

そう言って吸引マシーンを振り上げるキュイーン。
それと同時にフランキーはキュイーンに抱きつく。

『抱きついたーー!! フラランドは工場長を好きになったのか!?』

キュイーン「何のつもりよ!! 離しなよ!!」

周囲に誤解を与えながら、キュイーンに殴られるフランキー。
その時!

セニョール「あのサイボーグ野郎!! ダマしやがって!! 困ってるババアなんてどこにもいねェじゃねェか!! ひとまずそれはよかったが!!」

工場へバタフライで戻るセニョール。
実はセニョールはフランキーに「右手の路地裏で、体が弱く困っている老婆を見かけた」というハードボイルド精神を利用した策略にまんまとハマったのだ。
まぁセニョール本人としては安堵しているようだが。

フランキー「大体さっきからガンガンゴンゴンスープレックスキメやがって…!! 終いにゃあ、俺の後頭部で温泉でも掘り当てようってのかァ!?」

キュイーン「はぁ? アンタ一体何を…?」

フランキーのところへ突っ込んでくるセニョール。

セニョール「死に晒せ! “ネコ耳パ~ン”…!」

その瞬間!

フランキー「“フランキーサウスランドスープレックス”!!!」

キュイーンに強烈なスープレックスを決め、セニョールにぶつけるフランキー。
あまりの痛みに2人は絶叫する。

キュイーン「痛ェなァてめェ!! 人の頭をハンマーかなんかみたいに使いやがって!! よくもアタシを邪険にしやがったな!? アタシは工場長!! ここじゃ一番、偉いのよ!! 裁きの権限だってある!!」

フランキーに喚くキュイーン。
小人達は「工場長がキレたらもう誰にも手がつけられなくなる」と必死に警告数する。

キュイーン「アンタは死刑ね!! 体を引き裂いて…吸引マシンで内臓を引きずり出して泣き叫…っ!?」

キュイーンがそう言いかけた時、フランキーがキュイーンにキスをして口を塞いだ。
フランキーのまさかの行動に、小人達だけでなくキュイーン自身も驚愕する。
乙女の目になり急にしおらしくなるキュイーンは、フランキーから離れる。

フランキー「さァ立て、スイミング野郎!!」

キュイーン「ち…ちょっと待ちなさいよ!! アンタ一体どういうつもり!? せせせ責任取って恋人になってよ!? んもーバカ!!」

「(工場長がちょっと女らしくなってるれす!!)」

すると、倒れていたセニョールが…。

セニョール「そいつを責めるな工場長…関わったお前が悪い。」

キュイーン「ピンク様…でも…!」

起き上がるセニョール。

セニョール「大人の男の決闘に…言葉をはさむ様な女の口を…他に一体…何で塞げってんだ!!」

キュイーン「!!?」

フランキー「接吻の一つや二つで動じる様な…まだ尻の青い小娘が愛だの恋だの騒ぐんじゃねェ!!」

セニョール「全くだ…ガキとの恋なんざ…。」

「「悪酔いしそうだぜ!!」」

ビシッと決める2人に、キュイーンやセニョールの取り巻きの女性達はメロメロになる。

セニョール「工場は破壊などさせねェ。」

フランキー「フン…!! 拳で示せ、男なら!!」

『始まるれす、男の戦いが…!!!』

セニョール「おむつ爆弾!!」

フランキー「乳首(ニップル)ライト スペシャル!!

ハードボイルドな変態(おとこ)達の戦いが、再び始まる。 

 

第160話:ドレスローザ国防戦・その8

―旧・王の台地―

ウソップ「? まだ何か探してんのかヴィオラ?」

ヴィオラ「さっき…三段目の戦塵の中にオモチャの様な影が見えて…何か…嫌な予感が……!! あっ!!」

ウソップ「どうした!?」

ヴィオラ「いた!!! シュガーが目覚めてるっ!!!」

ウソップ「ええ~~!!!? おい! 何言ってんだ!!? シュガーならこの俺様の必殺顔面びっくり箱で完全に気絶して2、3日は意識を戻らねェ勢いで…!!」

ヴィオラ「能力も復活してるわ!! 麦わら達が危ない!!」

ウソップ「え~~~っ!!?」

ウソップが絶叫した同時刻、新地王宮では…。

シュガー「ギャ~~~っ!!!」

ソーセージを持ってきた鼻の長い兵士の顔を見て声を上げるシュガー

「…え?」

シュガー「は……! 鼻の長い奴は私の傍に来るな!! 鼻の長い奴は皆死んで!!」

『ええ!?』

どうやらシュガーは相当のトラウマを抱えているようだ。
恐るべしゴッド・ウソップ。

「シュガー様、お腹すいてないかと…ソーセージを。」

シュガー「長いものもってくるな!! そもそもおやつならグレープでしょ!? バカなの!? アンタも頭割り人形になって戦ってきなさい!!」

兵士をガイコツの人形へと変えるシュガー。
しかし、おやつに何故ソーセージを持ってきたのかは不明のままだ…。

シュガー「若様に申し訳ないわ…この国中の全員、再びオモチャにしたげる!! まずは憎い憎い長鼻とその仲間“麦わらの一味”!!!」




















その頃、王宮のとある一室では小さな牢屋に捕らわれ泣いている“小人の姫”が助けを待っていた。
彼女は、マンシェリー姫。トンタッタ族の姫君で、桁外れの可愛さと愛くるしさを誇る心優しき姫だ。

マンシュリー「え~ん…!! グリーンビットに帰りたいよう…早く助けに来てよう…レオ…!!」

彼女は牢屋に奴隷として囚われているが、基本的には他の小人と違ってそ優遇されている。何故なら、彼女の有する悪魔の実の能力にある。
マンシェリーは“チユチユの実”の能力者。身体から出る水分を流し、全生物を治癒するというとんでもない能力者なのだ。

マンシェリー「レオ~……助けて~…!!」

彼女の声は、未だ届いていない。

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-一方、王宮のある台地の3段目-

ガイコツ人形に囲まれるルフィ達。
何とか攻撃を躱すも…。

キャベンディッシュ「避けろ、ファルル!!!」

巨大なガイコツ人形がキャベンディッシュの愛馬・ファルルの頭に思いっきり噛み付く。

キャベンディッシュ「!!?」

ルフィ「馬ァ!!! コンニャロ!! “ゴムゴムの”ォ!! “JET(ピストル)”!!!」

一撃でガイコツ人形の胴を撃ちぬくルフィ。

キャベンディッシュ「しっかりしろファルル!! 何て顎だ…頭を砕かれた!! ファルル、死ぬな!!」

頭を砕かれ、息も絶え絶えのファルル。
すると、倒したはずのガイコツ人形が再び起き上がった!

ルフィ「何だコイツ!! 穴空いたのに!!」

キャベンディッシュ「おのれ、よくもファルルを!! “美剣・円卓(ラウンドテーブル)”!!」

ガイコツ人形の首を斬り落とすキャベンディッシュ。
しかし首を拾い上げすぐに元通りになるガイコツ人形。

ルフィ「コイツら!! 不死身かァ!!?」

ガイコツ人形を前に身構えるルフィ、キャベンディッシュ、キュロスの3人。

ロー「…クソ、錠の鍵さえありゃあ…!! こんな奴ら俺が…!!」

そこへ空から人が降ってくる。

ルフィ「え!? 上からなんか降ってくる!!」

バルトロメオ「ぐわあァ!!!」

ガイコツ人形の上に落ちてきたのは、バルトロメオだった。
それと同時に、ファミリーの幹部であるグラディウスも落ちてくる。
さらにはロビンが能力を用いて地上に降り立った。

ルフィ「おわー!!」

バルトロメオ「おあ…あ、油断したべ…!!」

ルフィ「トサカの奴~~!!」

バルトロメオ「!?」

ルフィ「ロビン!!」

ロビン「ルフィ!? トラ男君!! ここにいたの!?」

バルトロメオ「(ルルルル…ルフ…ルフィ先輩だべええ!!!)」

どうやらローに鍵を届けるチームが、ルフィ達4人と合流したようだ。
しかし肝心の鍵はレベッカが所持しており、彼女は既に先に行ってしまっている。

ロー「ニコ屋! 俺の鍵はどこだ!! すぐよこせ!!」

ロビン「レベッカが鍵を持ってるわ!!」

グラディウス「レベッカを逃したな…!? あんな小娘1人王宮へ辿り着こうが何もできやしねェがな!! 後で追って消してやる!!! 俺の名はグラディウス!! まず お前らを片付」


ズドッ!


グラディウス「…が、はっ…!?」

『!!?』

その場にいた全ての者が、目を見開き驚愕した。
何とグラディウスが、突如刀で胸を貫かれていたからだ…!!
何が起こったのか分からないグラディウスは、血が溢れ出て止まらない胸を見て震える。

ライコウ「悪ィな、こちとら急いでてな……今までご苦労、てめェはここで脱落だ。」

グラディウス「け…剣、帝……!!?」

グラディウスの背後に立ったのは、ムラマサと別れて行動していたライコウだった。
ライコウは気配を殺していたらしく、グラディウスは避ける暇もなくモロに貫かれたようだ。
ライコウが刀を抜くと、胸から噴水のように血を出してグラディウスはそのままうつ伏せに倒れる。

グラディウス「ゲホッ……バ、バカな…!! いくらSMILE軍団を蹴散らしても、まだ援軍が向かってた筈だぞ……!!」

ライコウ「ついでに潰しといたよ。 あんなの、肩慣らしにもならなかったぜ? てめェらの戦力、天夜叉とてめェら幹部だけだぜ多分。」

グラディウス「ク、クソ…化け物が……!!!」

ライコウ「たァいえ、俺ァそこまで鬼じゃねェさ…地面で(・・・)勘弁してやるよ。」

そう言った瞬間、ライコウは刀でグラディウスが倒れている地面を一閃。
すると、轟音を立てながら地面がズレ始め、グラディウスのいる地面が崩落した。

グラディウス「き、貴様ァァ…!!!」

ライコウ「これで生き残れたら、俺の部下も考えてやるよ。 まぁそれ以前に藤虎達が逃がさねェと思うし、今のお前は死んだも同然だがな…ハッハッハッハッ!!!」

剣帝(ライコウ)の高笑いが響き渡り、グラディウスは脱落した。
その光景を間近で見ていたルフィ達は、ライコウの規格外さに絶句する。

ライコウ「さてと、まずは1人。 そっちも順調らしいな、早く上へ登る必要があるぞ?」

ドレスローザ国防戦、コロシアム軍団が優勢。 

 

第161話:ドレスローザ国防戦・その9

グラディウスを瞬殺したライコウがルフィ達と合流した頃、アカシアの町では陸海軍の大将とサボ&ギネスが激しい戦闘を繰り広げていた。
あまりの戦いの激しさについていけず、兵士達は逃げ出す。

「うああぁぁぁ!!」

「とても麦わら達を追えねェ!!!」

互いに獲物を構え、対峙する両組。
そんな中、イッショウが口を開く。

イッショウ「おかしな人達だ…アンタの目的は、あっしらを止める事でしょう…?」

ランファ「…。」

サボ「いつまでシラを切り通すつもりだ?」

ギネス「そーそー、エイセイに命令されて動いてんのは分かってるっての。」

イッショウ「…参ったな…! …へへ……あっしゃあ盲目ですよ? 少しは同情くらいしてもらわねェと…。」

サボ「俺は差別はしねェんだ!!」

イッショウ「ほぅ、そいつァ恐ェなァ…革命軍の言い分みてェで…!!」

イッショウは笑みを浮かべるが…。

イッショウ「しかし…あっしにも立場ってモンがござんす…どうかご理解を。 “重力刀(ぐらびとう)”!!!!」


ズシンッ!!


「「!!」」

イッショウ「“猛虎”!!!」


メキィッ!!


イッショウは仕込み杖に重力をかけて振るい、真横に重力を放出することで強力な重力帯を発生させた。
その一振りで周囲の建物が横に潰れていく。

サボ「(真横に重力!?)」

ギネス「ちっ、重力帯かっ…!!」

するとその直後、ランファも能力を行使した。

ランファ「“ベクトルアロー”!!」

ランファは無数の矢印の帯を作り出し、 それを一斉に対象に向かって飛ばす。
すると、突然急加速してサボとギネスに襲い掛かった。

ギネス「しまった、藤虎の“重力”が掛かってる!!」

そう…イッショウの重力攻撃は自分以外なら万物が対象。
それは悪魔の実の能力も同様なのだ…!!

ギネス「クソッタレ…!!」

ギネスは刀を逆手に持ち替え、覇気を纏わせながら思いっきり振るった。

ギネス「“次元刀”!!!」

悪魔の実による攻撃・防御すらも切断してしまう“次元刀”を放つギネス。
その瞬間、イッショウの放った重力帯とランファの矢印を粉砕し、重力から解放される。

サボ「“覇王拳・竜王衝掌(りゅうおうしょうしょう)”!!!」

サボはイッショウとランファに急接近し、ショクショクの実を行使して衝撃波を右手の掌に纏わせ、掌底攻撃を仕掛けた。
そこへランファが立ちふさがり、番傘を広げて防ぐ。
ぶつかり合うサボの掌底とランファの番傘…互いに覇気を込めてるため、放電のような現象も起こっている。
その隙を突き、イッショウは仕込み杖を持ち替え突きを放つがギネスの蹴りで阻止される。
最終的には衝撃が相殺され、互いに距離を置くことになった。
そんな中、イッショウが再び口を開いた。

イッショウ「一が出るか八が出るか…あっしらは、この首一つ賭ける覚悟だ…だが…転がすサイコロを失っちゃあ、ツボ振る前からお釈迦でござんす。」

「「!?」」

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-王宮前、4段目「ひまわり畑」-

レベッカはレオ達の助けにより、ひまわり畑に辿り着いた。

レオ「着いたれす!!」

レベッカ「ロビンさんたち大丈夫かな…。」

レオ「大丈夫れす!! ウソランドとその仲間達は強いのれす!!」

レベッカ「そっか…そうね!!」

レオ「レベッカ様、僕らはすぐマンシェリ―姫を助けに行かな行かなきゃ!!」

レベッカ「うん。」

レオ「1人になるけど大丈夫れすか!?」

レベッカ「平気よ、すぐにルーシー達が来るから!! 早く行ってあげて!」

レオ「はい!! レベッカ様もお気をつけて!!」

レベッカを残し姫の救出に向かうレオ達トンタッタ軍団。

レベッカ「(この戦場に…きっとお父様も来てる!!)」

そこへ…。

?「ふああ……誰か来たな?」

レベッカ「!」

ひまわり畑で寝ていた何者かが、起き上がってレベッカを見た。
その正体は…!!

ディアマンテ「あぁーん……??」

レベッカ「!!?」

何と、ドンキホーテファミリー最高幹部の一角にしてファミリー随一の剣士…ディアマンテだった。
よく見ると、エイセイとの戦闘の傷が生々しく、包帯が巻かれている。

ディアマンテ「お前か…!」

レベッカを見下ろし笑うディアマンテ。

レベッカ「…………!!!」

立ちふさがる母の敵に鼓動が速くなるレベッカ。
10年にも渡る、因縁の対決が始まろうとしていた…! 
 

 
後書き
ギネスの技を紹介します。
多分、もう出ないから。(笑)


・次元刀…悪魔の実の能力による結界やバリアをも切断する剣技。悪魔の実による攻撃すらも切断してしまうという恐ろしい威力を誇る。
・掌空間…掌に穴を開け、自身の異空間と干渉する。物質を吸い込んで閉じ込めることが可能で、一応吸い込まれても生きてはいける。
・密閉連結…箱のような「密閉空間」と自らが作り出した「異空間」の2つの空間をスぺスぺの能力で干渉させることで、2つの空間の間を自由に行き来する技。普段はあまり用いないらしい。
・無間斬…相手の眼前に黒い霧のような空間を瞬時に召喚し、それに触れた相手の背後へワープして斬りつける技。ギネスの持つ技の中では一番強力。 

 

第162話:ドレスローザ国防戦・その10

ドンキホーテファミリーのグラディウスを瞬殺したライコウは、ルフィ達に近づき笑みを浮かべた。

ライコウ「ロー、お前それでも百獣海賊団(ウチの)幹部か? 覇気使えるんだから足で何とかなるだろ?」

ロー「アンタは能力者じゃねェからそんなこと言えんだよ…。」

ライコウがそう言って笑うと、ローは青筋を浮かべる。
元々四皇クラスの実力者であるライコウと比べるのはいかがなものか。

ライコウ「さてと…まずはあのガラクタをどうするか。」

ライコウは、ガイコツ人形を見上げる。

ルフィ「ライコウ、何だよありゃあ!!?」

ライコウ「“頭割り人形”…複数の生物をオモチャのパーツに変えて合体させることでああいうガラクタを作ったって訳だ。 どうやらシュガーが復活したようだな。」

キュロス「何っ!?」

ライコウの一言に、驚愕するキュロス。

ルフィ「シュガー?」

ライコウ「一番厄介な奴だ。」

シュガーは合法ロリだが、その能力は「絶大」を通り越して軽く「チート」のレベルだ。
触った生物を強制的にオモチャに変える“ホビホビの実”は、指先を掠めただけでも発動する、数ある悪魔の実の中でも極悪に近い性能だ。オモチャにされた者は、シュガーの命令に絶対に逆らえなくなりファミリーの意のままに動く奴隷と化し、さらに人々の記憶から忘れられる。
まぁ、要するに触れたらアウトだ。

ルフィ「そのシュガーって奴をぶっ飛ばせばいいんだな!?」

ライコウ「いいや、その必要は無いぞ。 こんなこともあろうかと対策は打ってある。」

『?』

ライコウ「それに……アイツ自身が(・・・・・・)そう言ったんだ、落とし前を付けたいってよ。 だったら夫として(・・・・)それに応えるべきだろ。」

ロー「……!! アンタまさか…!!?」

ローはライコウの対策とやらを察する。

ライコウ「まァ、それにしてもあのガラクタは邪魔だな。 どう処分するか……。」

刀をクルクルと掌で回転させながら呟くライコウ。
ガイコツ人形もとい頭割り人形は次々とライコウ達に近づいていく。

ロビン「気を付けて! あの人形は不死身よ!!」

ライコウ「だったら、戦闘不能状態にさせりゃあいいってこった。」

そう言うとライコウは頭割り人形軍団に突進し、跳び上がって一閃。
空中で一回転を決め、人形の頭から胴体まで一撃で叩き割った。背後から人形が噛みつこうとするがライコウはギリギリの所で躱し、横薙ぎに刀を振るって両断する。
横から人形が口を開けて襲い掛かるもライコウは冷静に対処。覇気を纏った強烈な突きで吹き飛ばす。

キャベンディッシュ「(あれが…世界四大剣豪の一角である男の剣技か…!!)」

この世の剣客達の頂点に立つ4人の剣豪…世界四大剣豪。
その一角を担う大海賊の剣技は、天才剣士のキャベンディッシュすら魅了する。

ライコウ「おいおい、見とれてる場合か三下君。」

キャベンディッシュ「なっ…誰が三下だ!! 僕は才能だけで上り詰めてきたんだぞ!!」

ライコウ「だったら俺ァ“叩き上げ”だ、てめェよりは修羅場潜った数多いんだよ。」

ライコウに三下呼ばわりされて憤るキャベンディッシュ。

ライコウ「さて、ドフラミンゴの次の一手はどうするのかねェ…エイセイの出方も面白そうだ。」

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-王宮のある台地の前-

海軍大将“藤虎”及び陸軍大将“紅傘のランファ”とのやり合いの後、サボとギネスはコアラと合流していた。

ギネス「んで、嬢ちゃんはどう動く気だ? あの怪物副船長がちょっとマジになってるから、下手に介入する訳にはいかねェぞ。」

コアラ「でも、1人でもファミリーの幹部を倒さなきゃあ終わらないのよ?」

ギネス「それがダメなんだっつってんの。 あのな、お前らのトコの副船長さんはルーキー時代からカイドウの旦那と一緒に“白ひげ”や“ビッグ・マム”とガチンコバトルしてきた本物の化け物だぞ。 本気で暴れたら一都市どころか一国を滅ぼしかねねェ……そんな奴が暴れ回るところに潜り込めると思うか?」

ギネスから見れば、ライコウを敵に回した時点でドンキホーテファミリーの破滅ルートは確定のようだ。

ギネス「それにあの人は御年46だぜ? 最近は勘が鈍ってるっぽいから、ここはライコウの旦那に任せて俺達は高みの見物と行こうや。」

ケラケラと笑うギネス。

ギネス「しっかし、藤虎の奴…何か企んでると思ってたら…やっぱりエイセイの勅命か。 アイツも抜け目のねェこった。」

その時だった。

?「クッソォ…“拳豪”の野郎はどこへ行った!?」

「「「!」」」

遠くから、聞き覚えのある声が。
一旦隠れて様子を見ると、3人の視線の先には、かつて頂上戦争の引き金となった男の部下がいた。

コアラ「バージェス…!!」

ギネス「……“黒ひげ”の部下か。 そういやあアイツもドレスローザ(このしま)にいるんだったな。」

サボ「狙いは能力者だな…。」

ギネス「“能力者狩り”か。」

黒ひげ海賊団の提督として四皇の一角を担うようになった“黒ひげ”マーシャル・D・ティーチは、マルコ率いる白ひげ海賊団残党との全面対決「落とし前戦争」での勝利と“白ひげ”のナワバリ制覇を果たして以降、戦力増強のためか強力な悪魔の実を手に入れるべく“能力者狩り”を行っている。その手段は部下達にも伝えられているようで、新世界中の能力者を襲っているという。

コアラ「海賊王の座を狙ってるわね…。」

サボ「俺だけじゃなくルフィも狙う筈だ、アイツは俺が倒す。」

コアラ「サボ君、勝手に他の四皇の部下に手を出さないでよ!!」

小声でサボに怒鳴るコアラ。
しかし、ギネスはサボのフォローに回る。

ギネス「いや、バージェスなら討ち取れるだろ。 アイツの攻撃は大振りの攻撃が多い…威力は申し分ないが、避けられるとその後の隙が大きいからな。」

コアラ「あなたまで…!!」

ギネス「それに黒ひげとて、今の戦力で百獣海賊団に喧嘩吹っ掛けようとはしねェだろう。 世界最強の生物である大海賊“百獣のカイドウ”、世界四大剣豪の一角である覇気の達人“剣帝”、一味の切り札とされる“三妖星”、幹部格の主戦力“災害”…何れも新世界に名を轟かす化け物共。 かつては白ひげの次に海賊王に最も近いと言われた大所帯と戦うのは時期尚早と判断するさ。」

「「……。」」

ギネス「ま、俺としちゃあ政府さえ潰せればどうだっていいけどな。」

ギネスは憎悪に満ちた顔でそう呟くのだった。

 

 

第163話:ドレスローザ国防戦・その11

四肢が斬り落とされ、転がっている頭割り人形。
ガラクタと化したその人形達の山に立つ帝王は、刀を鞘に納めて宣言した。

ライコウ「うっし、終わり!」

キュロス「何という強さ…あれほどいた人形がものの数分で全滅…!!!」

ライコウの圧倒的なまでの実力に、コロシアム史上最強の剣闘士と謳われたキュロスも驚かざるを得ない。

ライコウ「しかし情けないぞ三下君。 俺よりも斬り倒してねェじゃねェか。」

キャベンディッシュ「貴様がほとんど倒したからだろうが“剣帝”!!!」

※9割ライコウが倒し、1割キャベンディッシュ達(・・・・・・・・・・)が倒しました。

キュロス「しかしこれで厄介な人形は戦闘不能だ!! 今なら行けるぞ!!」

この隙を突き、ひまわり畑への移動を始めようとするキュロス。
しかしここでキャベンディッシュが声を掛けた。

キャベンディッシュ「待て!! ファルルがやられた今、上へ行く手段は無いし時間もかかるぞ!!」

キャベンディッシュの言い分は尤もだ。
彼の愛馬・ファルルは頭割り人形の攻撃で倒されてしまい意識不明の重体。その上ひまわり畑とドフラミンゴのいる王宮へ行く道もない。
冷静に考えれば、結構詰んでいるのだ。

ライコウ「あの崖ぐらい素手で登るとしよう。 フィッシャー・タイガーは“赤い土の大陸(レッドライン)”を素手でよじ登ったんだ、可能っちゃあ可能だろ。」

キャベンディッシュ「僕はお断りだ、服が汚れる!!」

ライコウ「生意気言うんじゃねェよ、ペーペーのクセによ。」

バルトロメオ「だったらここァ俺の出番だべ!! “流動防壁(バリアビリティ)”!! “階段(ステアーズ)”!!!」

バルトロメオがここで声を上げ、人差し指と中指を絡ませバリアを展開させ、さらにバリアの形を階段状に変えひまわり畑への道を作った。

ルフィ「おおーー!!!! こりゃ助かる!!!」

バルトロメオ「使ってけれルフィ先輩ィ!!」

照れながらルフィに背を向けそう言うバルトロメオ。

ライコウ「さァて、こっから先はチーム分けだ。 ドフラミンゴ討伐組と幹部討伐組で分けるぞ。」

ひまわり畑及び王宮にはドフラミンゴ・ディアマンテ・トレーボル・シュガーがいる。下の段にはベビー5・ラオG・バイス・デリンジャーがいる。さらに市街地にはセニョールとピーカがいる。
グラディウスはライコウの手により瞬殺されたが、それでも厄介な奴が残っている。

キュロス「申し訳ないが、私にはレベッカがいる!! 先に行くぞ!!」

ライコウ「おぅ。」

キュロスは急いでバリアの階段を駆け上がっていく。

キャベンディッシュ「僕はファルルをこのフロアでやられてる…ファルルを守るためにもここに残る!!」

ルフィ「キャベツ!」

怒りを燃やすキャベンディッシュ。

ライコウ「ニコ・ロビンは?」

ロビン「私はレベッカを守るから、上へ行くわ。 ルフィとトラ男君にドフラミンゴを任せるわ。」

ライコウ「……バルトロメオ、異論は?」

バルトロメオ「!!? 俺に選択肢はァ!!?」

ライコウ「ねェに決まってんだろ、甘ちゃんが。」

バルトロメオ自身に異論はないが、どこか不憫であった。

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-同時刻、ひまわり畑~4段目~-

ここでは、レベッカがファミリー最高幹部のディアマンテと戦っていた。
しかし、レベッカはディアマンテから逃げている。

レベッカ「(やだよ!!戦いたくないっ!!)」

ディアマンテ「おいおいレベッカァ!! 何故逃げる!! 何故戦わない!! お前は剣闘士だ!!! 俺を殺しに来たんじゃねェのか!? コロシアムじゃあお前をネタにいい興行ができたが!! もう用済みだな!!」

レベッカの背中を剣で斬るディアマンテ。

レベッカ「きゃあ!!」

倒れこむレベッカ。
それと共に、ディアマンテの言葉…「お前の母スカーレットを殺したのはこの俺なんだよ」と脳裏に蘇る。

ディアマンテ「銃の方がいいよな…スカーレットも…銃で死んだ…!!」

ディアマンテは懐から一丁の拳銃を取り出した。
ゲスイ笑みを浮かべ、銃口をレベッカの頭に向ける。

レベッカ「(助けて…!!)」

ディアマンテ「ハハハハ…!! 10年前を思い出す…!! 死ねェ!!」

レベッカ「助けて、兵隊さァ~ん!!!」

叫ぶレベッカ。
その時だった。

キュロス「ハァッ!!!」


ズバンッ!!


ディアマンテ「ぐわァ!!!」

レベッカ「!!?」

キュロスがバリアの階段を猛烈な速さで駆け上り、レベッカの呼ぶ声に応えるように現れてディアマンテの左腕を剣で斬りつけた。

ディアマンテ「キュロス~!!!」

キュロス「家族を2人も奪われてたまるかァ!!!!」

ディアマンテの所業に怒り、叫ぶキュロス。

レベッカ「(お父様…。)」

キュロス「すまなかったレベッカ…未来のないオモチャだった私には…戦いしか教えることしか…できなかった…!! 本当は母親に似て…心の優しい君なのに…!!」

キュロスの言葉に首を横にふるレベッカ。

キュロス「だがそれも今日で最後だ…もう………闘わなくていい。」

レベッカ「………!! うん……!!」

レベッカの目から涙が溢れ出す。

ディアマンテ「そりゃあどういう意味だ、キュロス…!!」

キュロス「お前達と決着をつけるという意味だ!!!」

そこへルフィとローがやって来た。

ルフィ「レベッカ~~~!! 鍵ィ~~~!!」

レベッカ「え!?」

ルフィ「急げーー!! カギくれェ~~!!」

レベッカ「ルーシー!?」

レベッカは慌てて鍵を
そして錠を外したローが、ルフィの抱えていた愛刀“鬼哭”を手に取る。

ディアマンテ「てめェらァ!!!」

ロー「やっと自由だ……!!」

ルフィ「ついた!! ミンゴのいる4段目!!」

ディアマンテ「ロー!!! 麦わらァ~~!!!」

キュロス「すまんが2人…!! やはり私はコイツで手一杯だ、ドフラミンゴは 任せていいか!?」

「「勿論だ!!」」 

 

第164話:ドレスローザ国防戦・その12

ついにひまわり畑に到達したルフィ達は、ディアマンテと対峙する。

ルフィ「じゃあここは任せるぞ、兵隊!!」

キュロス「ああ!!」

ロー「俺達はドフラミンゴの所へ!」

ルフィ「行こう!!」

ディアマンテ「行かせるかァ!!」

ディアマンテは剣を振るうが、キュロスに防がれる。

キュロス「貴様の相手は私だ!! ディアマンテ!!」

ディアマンテに対峙するキュロスは、ローとルフィをドフラミンゴの所へ行かせようとする。

レベッカ「……!!」

ルフィ「ししし!! よかったなレベッカ!! 父ちゃんに会えて!!」

レベッカ「うん!!」

ルフィ「鍵ありがとな! 行ってくる!!」

ローと共に先へ進もうとするルフィ。

レベッカ「…ねェ、ルーシー!!」

ルフィ「?」

レベッカ「……!! 本当にあのドフラミンゴを…倒してくれるの!?」

ルフィ「……ルーシーじゃねェ…。」

レベッカ「!?」

ルフィ「俺はルフィ!! 海賊王になる男だ!! 安心してろって!!!」

レベッカに笑ってみせるルフィ。

ディアマンテ「~~~ん何を小賢しいィ~~! お前らを王宮になど……!! 行かせるわけねェだろうが~~!!!! この裏切り小僧がァ~~!!!」

ローにヒラヒラにして持っていた剣で攻撃してくるディアマンテ。
だが……。


ズキッ!!


ディアマンテ「ぐぅっ!!?」

胸を抑え、苦しむディアマンテ。
コロシアムでの怒り狂った世界皇帝(エイセイ)の猛攻が相当なダメージを与えてたようだ。

ロー「……随分と満身創痍だな。」

ディアマンテ「ぬ、ぬかせェェェェ!!」

ディアマンテは再び剣を振るい、ローとルフィに斬りかかる。
しかしローはオペオペの実の能力で躱し、ルフィと共に王宮プールの庭へ瞬間移動する。

キュロス「……やはり、手負の身か。」

ディアマンテ「舐めやがって…!!」


















-王宮内・プールの庭-

ローの能力で王宮内に移動したルフィ達。

ルフィ「わっ…! ここ王宮か? …便利な能力だ!!」

ロー「その分体力を消耗する…錠が外れずここまでお前に運ばれたのは不幸中の幸いだったかもな、体力を温存できた……うっ!」

ルフィ「え!? どうした!?」

ロー「手術をした…ハア…ハア…わざわざ鉛球を…あの野郎…!!」

能力でドフラミンゴに撃ち込まれた弾丸を摘出するロー。
そんな2人を発見し物陰から報告するファミリーの兵士。

《ローと麦わら! プール方面の庭に現れました!》

兵士から報告を受けるシュガー。

シュガー「了解…10年かけてコツコツと増やしてきた何万体ものオモチャの奴隷…!! それを一瞬で無かった事にされた…復讐は簡単よ…この手で触れるだけ…アンタ達の存在を私は…無かった事にしてあげる…!」

シュガーは何万体ものオモチャ奴隷を一瞬でなかった事にされたことが相当許せないらしく、ルフィとローに復讐すべく近付いていく。
尤も、その姿を見られているとは、シュガー自身夢にも思わなかっただろうが…。

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-同時刻、旧・王の台地-

こちらではウソップが狙撃の準備をしていた。

ウソップ「分かるか、事態の深刻さが…!!! 俺ァさっき!! ロビンもオモチャになってた事に背筋が寒くなったんだ!! アイツを忘れた事に気付きもしなかった!! シュガーに触られたらそうやってルフィのことも忘れちまう!! 仲間が消えて…それに気付きもしねェなんて!! そんなのは嫌だ!!! 絶対に阻止してやる!!」

シュガーの能力の危険さを錦えもん達に語るウソップ。

錦えもん「とはいえウソップ殿!! こんな距離を狙撃とは! …不可能でござるよ!! 王宮など拙者の肉眼ではやっと確認できる程度、しかも敵は壁の向こう!! 見えもせぬ!!」

はるか遠くに見える王宮めがけ黒カブトを構えるウソップ。

ウソップ「どんな条件だろうと…アイツら電伝虫にも出ねェ! もう時間がねェ!!」

その時、突然電伝虫が鳴った。
カン十郎が気になって受話器を取る。

カン十郎「こちらカン十郎。」

ライコウ《お~い、ヤソップの息子いるか? ウソップっつーんだが。》

『!!?』

その声は、剣帝(ライコウ)だった。

カン十郎「ライコウ殿!! お主でござったか、いつも世話になってるでござる。」

ライコウ《んなこたァいいさ、カン十郎…それよりも今、シュガーを狙撃しようとしてるだろ? その必要は無いと伝えとけ。》

カン十郎「!? ウソップ殿、狙撃の必要は無いというぞ!!」

ウソップ「何!? どういうこった!?」

ライコウ《お、通じてるか。 実はな、こんなこともあろうかと手を打っておいた。 お前らはいざという時まで休んどけ。》

ウソップ「!? シュガー対策か!?」

ライコウ《まァ、のんびり茶でも飲んで休んどきな。》























一方、ドレスローザのカルタという町の中でも、港に最も近い通りでは、胡坐をかいたまま鳥カゴを見据える男が1人いた。

?「君のやりそうなことぐらい想定済みだ…来い、ドフラミンゴ…!!」

男はそう呟き、腰に差した剣の柄を深く握るのだった。 

 

第165話:ドレスローザ国防戦・その13

 
前書き
実習の影響で遅れて申し訳ありません、更新します。
暫く亀更新となります。 

 
王宮内にあるプールの庭にて、ついに復活を果たしたシュガーがルフィとローに近づいていく。

ルフィ「何だあの子供?」

ロー「……!」

シュガー「(これで終わりよ…2人共私の奴隷に…!!)」

グレープを手に笑いかけながらルフィ達に近づくシュガー。
その時だった。


ビュオオオオオ!!


シュガー「え!?」

ルフィ「なっ!!?」

ロー「くっ…!!」

突如吹き荒れる突風。
それと共に降り注ぐのは…。

ルフィ「雪ィ!? おい、ここに雪なんか降るのか!!?」

何と、雪だった。
勿論ドレスローザは冬島ではない。とすれば、考えられるのはただ一つ。

ロー「モネ!!」

モネ「あら、こんなところで奇遇ね。」

百獣海賊団の幹部であるモネの「ユキユキの実」だ。

ロー「何しに来た!?」

モネ「副船長の命令よ…“あなた達じゃあ時間かかる”って♪」

ロー「(……完全に舐めてやがる…。)」

クスクスと笑うモネに対し、青筋を浮かべるロー。
そんな中、シュガーは叫ぶ。

シュガー「アンタ何者(・・・・・)!? 邪魔をしないで!!!」

モネ「っ!! ……やっぱり、私のことを忘れさせられたのね…。」

実妹・シュガーの言葉を聞き、哀しげな顔を浮かべるモネ。
しかしすぐにいつも通りの余裕のある顔を見せ、雪をもっと多く降らせる。その影響で、プールの庭が冬島のような外景になってしまった。

ロー「おい、行くぞ麦わら屋!!」

ルフィ「!? おい、いいのか!?」

ロー「いいから早く来い!! ドフラミンゴを潰すのが先だ!!!」

ローはルフィを連れて王宮内に侵入する。
シュガーは追おうとするが、モネは“万年雪”でシュガーの手足を拘束する。

シュガー「雪…!?」

モネ「能力を発動して私をオモチャに変えようって思っても無駄よ。 それはただの雪(・・・・)なのよ?」

モネはそう言うと、自身の羽でシュガーの身体に抱き付く形で覆う。

シュガー「ひゃっ!? 冷た…氷みたい……!? …ちょっと、離れ「る訳ないでしょ。 手足を拘束された上に能力を発動できない状況で私に抱きつかれたのよ? もうそんな力は出せない…この冷たい体にみるみる体力を奪われてゆく…ホラ…もう辺りは深い雪……たまらなく眠いはず。」…何を…?」

抵抗しようとするシュガーだが、モネの言う通り、シュガーはモネの冷たい体の影響で凄まじい眠気に襲われる。

モネ「あなたがどういう形で私を忘れたのか…ビッグ・、マムに何をされたのかは聞かないわ。 もう私のことを忘れてしまったのだから。 でも感動の再会なの、苦しませないように眠らせるわ。 そのままゆっくり目を閉じて…さァ、楽に…。」

モネが優しく耳元で呟く度に、シュガーの瞼がゆっくりと閉じていく。
そして、シュガーは目を閉じた。

モネ「……私も罪な女ね…そうは思わない? あなた。」

モネはシュガーを拘束していた雪を取り除きながら呟く。
すると、壁の裏から下駄の音を鳴らしてライコウが現れる。

ライコウ「……止めは刺せなかったか。」

モネ「詰めが甘い女だと思う?」

ライコウ「実妹で見た目がガキとはいえ、海賊は海賊だ。 それに女って生き物は想像以上に厄介なモンだしな。」

深く溜め息を吐きながらそう言うライコウ。

ライコウ「ドンキホーテファミリーはインペルダウン行きは確定なんだ、最期のお別れぐらいしとけ。」

モネ「あなたは?」

ライコウ「ちょいとばかし、動くとするさ…いい加減片ァ付いてほしいからな。」

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一方、ゾロとムラマサは2人でピーカを追い詰めていた。

ピーカ「ハァ…ハァ…おのれ、卑怯な…!!」

ムラマサ「卑怯? 甘いことを言わないでいただきたいですね、まさか自分の目の前にいる男2人が聖者だと思ってるんですか?」

ゾロ「全くだ、俺達ァ“海賊”だぜ?」

刀の峰で肩を叩くゾロとムラマサに、ピーカは息を荒くしながらも怒りを露にする。

ムラマサ「海賊同士の戦いは生き残りを賭けてるんです……卑怯なんて言葉、存在してたら海賊稼業なんかやれませんよ。」

ムラマサはそう言って刀を構えるが…。

ムラマサ「! おや、あちらの動きが変わったようですね。」

ゾロ「ん?」

ピーカ「…!?」

ムラマサが視線を向ける先は、王宮のプールの庭。
そこは雪景色と化しており、ライコウ・モネ・戦闘不能となり倒れたシュガーがいた。

ピーカ「……まさか、シュガーが…!?」

ムラマサ「この場は君に預けます、ロロノア・ゾロ。 私はここで失礼します。」

ムラマサはそう言うと、ピーカの上を跳び越え王宮のある大地へ向かった。
それを見たピーカは笑みを浮かべた。

ピーカ「(バカめ、敵に背を向けるとはな!!)」

ピーカは手にしている刀をムラマサに向け、突きを放った。
だが…。


スカッ……


ピーカ「何っ!?」

ムラマサはすでに能力を発動していた。
認識操作の影響をモロに受けていたことに気付かぬピーカは驚愕する。

ゾロ「さて…気を取り直すか。 ソプラノのおっさん。」

ピーカ「っ…!!」

ゾロ、再びピーカとのタイマンに臨む。 

 

第166話:ドレスローザ国防戦・その14

-同時刻-

シュガー気絶後、新地王宮のある台地3段目では…。

キャベンディッシュ「何だ!? オモチャ達が勝手にバラバラに!!」

目の前で突然崩れだした頭割人形たちに驚くキャベンディッシュ。
崩れた人形が人の姿に戻っていく。

ロビン「大きいオモチャだと思ったら…8人で1体の人形だったのね!」

バルトロメオ「おーし!! バリアが戻ったべ~!!」

「怖かった…!!」

「俺ら、このまま一生オモチャでいるのかと…!!」

不死身の頭割り人形から人間に戻ったファミリーの兵士達は、「呪い」からの解放に歓喜する。

キャベンディッシュ「味方の兵をオモチャにしてたのか!!? 部下を何だと思ってるんだ、アイツら!!!!」

それは下の段でも確認され……。

ラオG「これは…!!」

ベビー5「シュガーが……!! また気絶…!!?」

シュガーの気絶(厳密には戦闘不能)に、戸惑うファミリーの幹部達。

デリンジャー「大丈夫、若様がいるし世界皇帝も手を出さないわ!!」

バイス「シュガーが気絶しても、俺達で何とかなるんだイーン!!」

そう意気込むデリンジャーとバイス。
その時だった。

イデオ「!? 何か来るぞ!!」

イデオが空中を指差し、敵味方問わず皆がその方向へ向く。
その先には、黒いマントをなびかせて高速で飛来した。

サイ「あ、ありゃあ…!!」

ブルーギリー「まさか…!!」

『ムラマサ!!?』

そう、ゾロとの共同戦線を(一方的に)終えてきたムラマサだ。
ムラマサはすさまじい速さで滑空しながら刀を振るい、ファミリーの兵士10人を一瞬で斬り捨ててしまった。

ムラマサ「人の肉を斬り、人の血を浴び、見知らぬ顔の屍を踏む…やはり私の居場所はここですね。」

狂気的な言葉を口にしながら、兵士達の屍を踏み越えていくムラマサ。

ムラマサ「しかし、こうも散らばっていると(・・・・・・・・)面倒だ、お掃除といこう。」

ムラマサはそう言うとその場から姿を消した。
まさに、彗星の如く……肉眼では捕らえきれないほどの速さであった。
そんな彼にファミリーの兵士達はおろか、コロシアムの戦士達ですら気付くは無かった。
そして…!


ザシュッッ…


ファミリーの兵士達の身に、身体が張り裂ける様な一瞬の激痛が走る。


ブシュゥゥッ!!


『ギャァァァ!!!』


吹き出る鮮血。
大量の赤を周囲に撒き散らし、倒れていく兵士達。
気が付いた時には船員達の多くは倒れていて、残されたのは幹部とコロシアムの選手達、そしてかろうじで斬られずに済んだファミリーの兵士達だけだった。

ムラマサ「“鬼斬(きき)黄泉送舞(よみおくりのまい)”…。」

ムラマサはそう静かに言うと、愛刀・月読を振るい刀身についた血を飛ばす。
地面に落ちる血の雫にゾッとするファミリーの兵士達。

ムラマサ「おや…随分と生命力の無い方々だ、新世界の海はタフネスがモノを言うのに…。」

少し残念そうな顔をするムラマサ。
その時…。

ベビー5「ちっ、仕方ないわね!」

ベビー5が両手を刀に変えてムラマサに襲い掛かる。
だが…。


ガッ!


ベビー5「!!?」

ムラマサはベビー5の刃を素手で受け止め、彼女の首を掴んで投げ飛ばした。

ムラマサ「未熟者が本物に敵うはずがないでしょう?」

ムラマサはそう言い、ベビー5に追い打ちをかける。
しかし、ムラマサの手に衝撃が走る。

ムラマサ「!」

ムラマサの手に、ハイヒールが食い込んでいた。
そう、デリンジャーの蹴りである。

ムラマサ「仲間意識は一丁前…ですか。」

ムラマサは冷たい目でデリンジャーを見据えると、掌底を食らわせた。
覇気を纏った掌底をモロに食らったデリンジャーは、吐血し膝をつく。

ムラマサ「コロシアムの皆さんには申し訳ありませんが、助太刀いたしますよ。 暇ですのでね。」














-一方、王宮の最上階では-

王宮の最上階にて、椅子に座ったドフラミンゴとその側に立つトレーボルが、ルフィとローの2人と対峙していた。
そしてドフラミンゴの足元には、ベラミーが倒れている。

ドフラミンゴ「…一応聞いておこう、万が一って事もある……2人共、ここへ何をしに来た?」

ルフィ「お前をぶっ飛ばしにだ!!」

ロー「同じだ。」

ドフラミンゴ「失望したよ…フッフッフ…!ところで麦わら、気になるか…? お前ら昔…モックタウンで戦りあった筈だよな?」

ベラミー「ハア…ハア…。」

ベラミーの頭を踏みつけるドフラミンゴ。

ドフラミンゴ「これがお前なりのケジメなんだよな? ベラミー。勝手に俺を慕い……思い通りに事が運ばねェとヤケを起こす。 人は生まれ持った性を変えられない!! お前はどこまで行こうとチンピラなんだよ、ベラミー!!!」

グイッとベラミーの頭を掴むドフラミンゴ。
ポロポロと涙を流す、ボロボロのベラミー。

ドフラミンゴ「フフフ…!!」

ルフィ「何言ってんだ!! ベラミーは変わったんだ!!」

ベラミー「……もうイイ…殺シてクれ゛…!!」

完全に心が折られたベラミーを見てドフラミンゴに怒るルフィ。

ルフィ「ベラミーを離せ!!ミンゴォ!!」

ロー「おい!! 麦わら屋!!」

ドフラミンゴ「!」

ドフラミンゴに蹴りを繰り出すルフィ。
しかし、ドフラミンゴはルフィの蹴りをベラミーの顔面で防ぐ。

ルフィ「うわああああ!!! ごめん、ベラミー!!」

慌てて足を引っ込めるルフィ。

ロー「麦わら屋、怒りや憎しみを出せば相手の思うツボだ!! それを煽るのが奴の手だぞ、冷静さを欠けば命を落とすと思え…ドフラミンゴはそういう男だ、いつでも一瞬のスキを狙ってる!!」

ドフラミンゴ「フッフッフッフッフ!! “そういう男”か、言ってくれるじゃねェか……。」

ドフラミンゴがそう言って笑うと、隣にいたトレーボルも嘲笑うかのように鼻水を垂らして爆笑する。
しかしドフラミンゴは、覇気を放ちながらルフィとローに告げた。

ドフラミンゴ「いいかお前ら、俺は充分頭にきてる…!! お前らのやってきた事を考えてみろ。 パンクハザードのSAD破壊に始まり…ヴェルゴを手にかけ…シーザーを連れ去り!! このドレスローザじゃ国中のオモチャ達を開放した!! 今なお一味はSMILEの工場を狙っている…!! もう充分だ、怒りを通り越して笑っちまってるだけさ。 終いにゃオレの首を取れる気でいる!! 全くお笑いだ!!!」

ドフラミンゴは高笑いし、ローを見下す。
その直後、顔に青筋を浮かべながら口を再び開く。

ドフラミンゴ「どうやって知ったのかは今更言わねェが……あの時、剣帝があの場に来なけりゃお前は3代目コラソンとしてここにいて!!! お前のその能力と俺の力で世界を牛耳り!!! あの怪物2体(・・・・)を手中に収めることができただろう!!! 影騎糸(ブラックナイト)!!」

ドフラミンゴがローに向けて自分の糸分身を飛ばす。

ロー「また分身を!!」

ドフラミンゴの分身の爪糸を、愛刀・鬼哭で防ぐロー。

ルフィ「じゃあ俺が本物の方だ!!」

ドフラミンゴに向かって走りだすルフィ。
しかし、そこでベラミーが突然ルフィに斬りかかった。

ベラミー「うわっ!?」

ルフィ「ベラミー!!? おい何すんだ!! さっきのはホント悪かっ「麦わら屋!! そいつも操られている!!」…え!?」

ドフラミンゴの方を見るルフィ。
するとドフラミンゴは、ルフィの様子を見て笑っていた。

ロー「どういう知り合いか知らねェが、止めたかったら意識を失うまでブッ飛ばせ!! 意識さえ奪えばそいつを操る糸は切れる!!!」

ベラミー「そう゛シロ…麦わら…!!」

ベラミーもローの言葉に同意し、ルフィに頼む。
しかしルフィはそんなことなどできない。
その様子を楽しそうにドフラミンゴは見ている。

ルフィ「あの野郎!! 俺達がここまで来たのにまだ自分で戦わねェのか!!! トラ男!! もうブッ飛ばす!! 頭に来た!!!」

するとここで、ルフィがローめがけて攻撃を仕掛けた。
トレーボルはその様子を「血迷ったか」と嘲笑い、ドフラミンゴは怪訝そうに見る。

ロー「なっ!? おい、アレは秘策だぞ!!?」

ルフィ「“ゴムゴムの”ォォ…!!」

ロー「(クソ、酔っぱらったカイドウさん並みに手に負えねェな…!!) ちっ…“ROOM”!!!」

心の中でそう思いながら、“ROOM”を発動させるロー。

ドフラミンゴ「(しまった…!!)」

ロー「“シャンブルズ”!」

ドフラミンゴと自分の位置を入れ替えるロー。

ドフラミンゴ「!!!」

ローと入れ替わったドフラミンゴに向かってくるルフィ。

ルフィ「“火拳銃(レッドホーク)”!!」


ドォン!!!


ドフラミンゴ「グゥオ!!!」

ドフラミンゴの腹に強烈な一撃を喰らわせるルフィ。
炎が腹を貫き、ガフッと吐血するドフラミンゴ。

トレーボル「んドォフィ~~ィ!!!!」

ロー「……フッ…。」

トレーボル「ん?」

ドフラミンゴと入れ替わったローが、トレーボルを見上げ笑う。
それにトレーボルは気付き、引こうとしたが…時既に遅く。

ロー「“ラジオナイフ”!!」


ズパパパン!!


トレーボル「ぬおォオオオ~~!!」

ドフラミンゴと入れ替わったローがトレーボルに不意打ちを決め、“ラジオナイフ”でバラバラにこれを斬り刻む。

ロー「麦わら屋ァ!! お前あとで覚えてろよ!!」

ルフィ「にっしっしっし!!」

ドフラミンゴ「ガキ共、が…!!」

ルフィとロー、先手を打つ。 

 

第167話:ドレスローザ国防戦・その15

新地王宮のある台地3段。
突如襲来したムラマサの奇襲により、その場にいたファミリーの大半が斬り捨てられ、コロシアム軍団は優勢に立っていた。

ムラマサ「さて、次はどの手を打つか…。」

狂気すら孕んだ笑みを浮かべるムラマサ。
すると、ムラマサの頭上に影ができた。

キャベンディッシュ「抜け駆けはさせないぞ“死の彗星”!!」


ガギィィン!!


ムラマサ「先程の“海賊貴公子”ではないですか。 戦場で眠るなんて随分と舐めきった後輩だ、腹立たしい。」

キャベンディッシュ「…? 何の話だか知らないが、僕の人気をこれ以上横取りはさせないぞ!!!」

ムラマサ「そのためには味方を斬り捨てるのも厭わない…と? どうやら総力戦には向いてない若造だ。」

※ムラマサも勝手に行動するので総力戦には向いてません。

サイ「キャベンディッシュ、お前上の段にいたんじゃねェのか!?」

キャベンディッシュ「倒すべき敵がいなかっただけさ、幹部の1人…グラディウスが剣帝によって秒殺されたからね。」

『!!?』

キャベンディッシュの一言に動揺するファミリー。
グラディウスは海楼石以外の無機物であればものの数秒で木っ端微塵に破壊してしまえる“パムパムの実”の破裂(パンク)人間…覇気使いではないが、幹部の中でも強者の部類だ。
そんなグラディウスが、“剣帝”ライコウの前には成す術もなく惨敗した。その事実に、ファミリーの兵士達は震え上がる。

ムラマサ「助太刀は無用ですがね…まァいいでしょう、ゴミ掃除の担当ぐらいは任せましょう。」

キャベンディッシュ「ぬかせ、アレは全員僕の獲物だ!!」

すると…。

バルトロメオ「だべさっ!!!」

バルトロメオが2人の前に墜落。どうやら着地失敗のようだ。

ムラマサ「……大丈夫ですか?」

バルトロメオ「し、死ぬかと思ったべ……。」

キャベンディッシュ「だったら飛び降りるな!!!」

ムラマサ「まァいいでしょう、これで向こうは圧倒的不利なんですから。」

こうして、キャベンディッシュとバルトロメオも合流しコロシアム軍団はさらに有利になった。
しかしこれが後に、別の意味で修羅場になるということには誰も知る由もなかった。

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-場面変わり、旧王の台地-

国民達がウソップ達と対峙しているが、彼らは一斉に武器を降ろした。

ウソップ「何だ? 俺達の首を獲りに来たんじゃないのか?」

「まさか…そんなことしても事態は良くなりませんよ!!」

「ドフラミンゴにたった一夜操られたリク王様を10年間恨み続け、海賊の国王を称え…真相が分かっても…まだアイツのゲームに救いを求め…!!! もう自分達が何やってんのかもよく分からねェ!!」

「この国は…どうなっちまうんですか…?」

「助けてください!!! リク王様……!!! 我々はどうしたらいいですか……!!?」

「戦えというのなら 武器でも取ります!!!」

集まった国民達がリク王の前に跪く。
それに対しリク王は…。

リク王「……もう少し、待ってみないか。 死を選ぶのはそれからでも遅くない。」

「え…?」

その時だった。

イッショウ「かつての平和の象徴ドレスローザに戦争なんざさせやしません……。」

エイセイ「同感だね、僕の想い入れもある。」

そこに現れたのは“藤虎”イッショウと“世界皇帝”エイセイだった。

「うおっ!! 海軍大将“藤虎”!!?」

「“世界皇帝”まで…!!!」

周囲がどよめく。
ウソップ達も、政府側の大物2人の登場に怯む。

エイセイ「”麦の目に一点張り”…。」

イッショウ「リク王の旦那…あっしらも…あんたと同じ“賭け”をしていやす…!」

意味深な言葉を口にする2人。
さらにその時…!

ギネス「随分と意味深に語るねェ…。」

『!!!?』

“犯罪界の絶対王者”と呼ばれ、革命家ドラゴンと並び称されるほどの世界的犯罪者のギネスも乱入し、周囲は騒然となる。

ギネス「サボとコアラと別れて行動した甲斐があった、ここから色んな気配感じたから辿り着いたらオールスターときた。 しかし、わざわざ分身造ってリク王に寄越すとは、何考えてんだエイセイ? 本体はどこだ?」

エイセイ「離れたところ。 君に言う筋合いはないよギネス、今は君よりもリク王を優先しているんだ。」

ギネス「よく言うぜ、俺の思想にめっちゃ感化されまくったくせに。」

色々とツッコミどころの多い発言をするが、ギネスは笑みを浮かべながらリク王に顔を向ける。

ギネス「っつー訳だ、俺も首突っ込ませてもらうぜ。」

リク王「ギネス…お前には立場というモノが…。」

ギネス「“ここで”捕まえる気はねェだろうよ。 島や国の1つや2つ、地上から消し飛ばす覚悟がねェと俺は殺せねェからな。」

そう豪語するギネスに、リク王は困惑する。

ギネス「さてと、俺もエイセイの本体んトコに行くか。 何か目論見があるに決まってる。」

ギネスはそう言ってコートをなびかせ台地から飛び降りる。

エイセイ「全く、彼という人間はホント面倒だなァ。」

そういった瞬間、エイセイの身体は突如砕け土に還った。

リク王「(土の人形だったのか…そういえばアイツも能力者だったな。)」

ドレスローザ国防戦は、ついに折り返し地点へ。 

 

第168話:ドレスローザ国防戦・その16

 
前書き
9月最初の投稿です。 

 
ドフラミンゴ「ふーっ…ふーっ…!」

血を流し、よろめくドフラミンゴ。
ルフィの攻撃が効いている様子。

ルフィ「どうだ! 痛ェだろこの野郎!!」

ペッと血を吐くドフラミンゴ。

ロー「よく見ろ!! まだやる気だ、もう同じ手は通用しねえぞ!!!」

トレーボル「おいロー、お前の能力は知り尽くしてるもんねー!! 元々、その“オペオペの実”の能力は俺達がずっと欲していた力!!」

そう言って斬り落とされた身体をくっつけようとするが、ズルズル滑ってなぜかくっ付かない。

トレーボル「ん? んんん!?」

ロー「“ラジオナイフ”はただ斬るだけの技じゃねェ。 数分間はいかなる処置・能力でも接合できないのさ…暫く元には戻れねえぞ!!」

そう言ってトレーボルに追撃を加えようとするロー。

トレーボル「えええっ!! ピンチで鼻水垂れてるもんねー!!」

しかしローは問答無用で“注射(インジェクション)ショット”を仕掛ける。

トレーボル「止めろ!! 散々俺の世話になったのを忘れたのか!! くらえ! “鼻水真剣白刃取り”!!」

鼻水で相手の攻撃を受け止めようとするが、鼻水をズバズバ斬ってローが迫る。

トレーボル「ギャーッ!! こっち来るなー!!」

ローの刀がトレーボルを捉えたかと思われたその瞬間、
その時ドフラミンゴが乱入し、ローの刀を蹴っ飛ばす。

ドフラミンゴ「トレーボル!!」

トレーボル「べっへっへ!!」

トレーボルは一瞬の隙を突き、粘液でローの足を掴み、動きを封じる。
そこにドフラミンゴの“降無頼糸(フルブライト)”が放たれ、幾本もの糸がローを貫いた。

ルフィ「トラ男!!」

さらにドフラミンゴの武装色の蹴りがルフィの顔面に炸裂。
ドフラミンゴは更に倒れるルフィの腕を後ろ手に糸で縛り、ベラミーの方に吹っ飛ばした。

ベラミー「逃げろ麦わら!! 頼む!!」

ドフラミンゴに操られ剣を構えるベラミー。

ルフィ「ベラ…!!」

糸で操られたベラミーがルフィを斬りつける。

ルフィ「あああ!!!」

ロー「麦わら屋!!」

倒れるルフィ。
それを間近で見たベラミーは、涙を浮かべる。
そんな様子を嘲笑いながら、ドフラミンゴは口角を上げて口を開いた。

ドフラミンゴ「俺が最も嫌うことを覚えてるか、ロー? 見下される事だ……!!! てめェらみてェなガキ共に!! 一瞬でも勝てると思い上がられた事が耐えられねェ程の屈辱!!! 俺はそれを最も憎み、忌み嫌う……!!」

怒りを爆発させるドフラミンゴは、叫んだ。

ドフラミンゴ「いいか、俺ァ世界一気高い血族…世界貴族“天竜人”だぞ!!! 生まれただけでも偉い…この世で最も得難い力を、俺は持って生まれたんだ!!!」

ルフィ「はあっ!?」

ベラミー「………!? え……。」

絶句するルフィとベラミー。
ライコウあたりならば「それがどうした」と返すだろうが、いずれにしろドフラミンゴのとんでもない爆弾発言に驚かざるをえない。

ドフラミンゴ「だがある時、愚かな父はゴミ溜めのような下界へ下った…家族を連れて4人でな…かつての絶対的権力を放棄したんだ!!! “人間らしい生き方”だとよ…下らねェ!!」

ドフラミンゴは、かつて天竜人の横暴で傲慢な生き方に嫌気が差した実父・ホーミング聖によって天竜人の地位を放棄したために、家族と共に北の海の世界政府非加盟国に移住した。しかし自らの出生がバレてしまい、天竜人に恨みを持つ人々から逃げ回りながら劣悪な環境の中で生活することを余儀なくされた。逃亡生活を送るうちに母が病気で他界、更に追っ手に捕まり凄惨なリンチを受け殺されかけたのだ。
この経歴があったからこそ、ドフラミンゴは自分以外のあらゆる全てを憎み、全ての秩序が壊れ強大な海賊達が跋扈する混沌とした新たな大海賊時代「新時代」の到来を誰よりも望んでいるのだ。

ドフラミンゴ「俺は愚かな父親のせいで…8歳にして世界の天国と地獄を見た!! 俺は父親を殺し、その首をマリージョアに持って行ってやったよ…!! だが天竜人は受け入れなかった!! “裏切り者の一族”だとな…!! その時に誓ったのさ…コイツらの牛耳るこの世界を…全て破壊してやるとな!!! お前らの生きてきた人生とはレベルが違う!!! ガキと遊んでる暇はねェんだ、俺には!!!」

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-新世界・ワノ国にて-

「カイドウ様ァ~~!! カイドウ様ァ~~!!」

百獣海賊団の下っ端が、カイドウの元へと駆け付ける。
カイドウは相も変わらず酒を飲み、大分酔っ払っている。
ちょっとした事でも泣き上戸や怒り上戸になりやすい酒癖の悪さは副船長のライコウ以外手に負えないため、カイドウの機嫌を損ねないように報告した。

「も、申し上げます…我が海賊団の傘下である“剣鬼”マイが、つい先程行方不明になりました!!!」

カイドウ「……んん?」

『っ!!!!』

酒を飲むのをやめたカイドウに、たじろぐ一同。
地雷を踏んだ感覚に陥るが…カイドウが再び酒を飲み始めたことで安堵する。

カイドウ「……何だと?」

『ひっ!!!』

と思ったら、地獄の底から響くような声でカイドウは口を開いた。
カイドウ自身は怒り上戸ではないが、不穏な空気が流れる。

カイドウ「あのガキが…何も言わねェで百獣海賊団(ウチ)をやめたってのか…?」

「い、いえ…それが…。」

百獣海賊団にはライコウが作成した「掟」というモノがあり、海賊達はそれに従っている。
「仲間を見捨てないこと」「有事の際は船長及び副船長の指示には幹部でも従うこと」「戦力をむやみやたらに削ぐ真似はしないこと」など、色々とある。そんなライコウが作成した掟に、「脱退を望む際は、船長又は副船長に申し出ること」というのがある。
これはどの掟よりも重大であり、情報漏洩に関わるのでこれを破った者は誰であろうと海に沈められてしまうのだ。ただし「情報を漏洩せず2度と戻ってこないこと」を条件に脱退を認めてはいるが。
いずれにしろ、マイが行方不明になったことはこの掟に反しかねず、百獣海賊団の手によりマイは始末せざるを得なくなるのだ。

「実は先程、彼女からの手紙を彼女の部下から預かりました…その男はそのまま息絶え、水葬しましたが…。」

部下はそう言いカイドウに手紙を渡した。
カイドウはその手紙に目を通す。

カイドウ「……ガキが…何か弱みでも握られたか…?」

手紙には、「弟が心配だから、ケジメを付けに行きます 必ず戻ります」と書かれていた……。