実際、沖縄で古くから活動している右翼団体にとって、「花瑛塾」は地元右翼に対する"敵対組織"以外の何ものでもない。
糸満市に本部を置く右翼団体の会長(50歳)は、私の取材にこう答えた。
「理解できない。カネのために動いているんじゃないのか」
宜野湾市の別の団体代表(46歳)も、「(花瑛塾は)左翼を煽っているだけの連中だ」と突き放す。
仲村にとって、このような反発は当初から織り込み済みだった。
「中国の脅威というが、沖縄を苦しめているのは米軍の脅威です。
中国脅威論というのは結局、米軍を留め置くための口実として利用されているだけではないでしょうか。
過去に沖縄を侵略したのはヤマト(日本)と米国だけです。
それを棚上げして中国の脅威ばかりを煽るのは、どう考えてもおかしい。
そのうえ、あまりに不平等な日米地位協定を容認するなど、民族派として許容できるわけがない」
一方的に押し付けられる米軍基地に反対し、沖縄に向けられる偏見とも闘うことこそが右翼の“正道”だとするのが「花瑛塾」の考え方だ。
だからこそ、沖縄の基地反対運動を茶化し、反対運動参加者を「テロリスト」などと報じた『ニュース女子』(TOKYO MXなどが放映した情報番組)にも、「沖縄蔑視」「デマの流布」だとして繰り返し抗議の声を上げてきた。
これまでにも、放映局であるTOKYO MX前で抗議街宣を行ったほか、同局に対し、報じた内容の根拠を問う質問状などを送っている。
「沖縄は、茶化されるためにあるわけでも、日本の捨て石として存在するわけでもない」
仲村はそう強調した。
その点に関していえば、私は全面的に同意する。
かつて、右翼を「民族の触角」と表現したのは民族派の重鎮として知られた野村秋介だった。
時代への感受性と、危機に直面した際の順応性を、野村は火事場の半鐘に喩えた。
尻込みしない。素早く駆け付ける。人々の命を守るために自らが盾となる。
必要とあらば、そのための暴力でさえ肯定した。
人々の素朴な心情に寄り添うのが右翼だと説いた。
「弱いものが強いものに抗するための暴力が必要な時はある。
だが、一般の人に体を張れと言うことはできない。そのために民族運動家がある」
それが野村の持論だった。
実際、野村は大資本には容赦なく戦いを挑んだが、在日コリアンなどマイノリティに対する差別は許さなかった。
本来の右翼・民族派のあるべき生き方とはそのようなものだったのではないか。