38歳、女性右翼活動家がアメリカと断固闘い続ける理由

右翼と愛国──若き活動家の主張
安田 浩一 プロフィール

組織を取るか、自分の考えを貫くか

実は、「大行社」のなかには、仲村と同じ思いを抱えている同志がいた。現在、「花瑛塾」の塾長を務める木川智(33歳)である。

木川は学生時代からの右翼活動家で、2004年にはゼネコンに乗り込んで拳銃をぶっ放すという物騒な事件も起こしている。

彼もまた武闘派の先頭に立っていたが、一方で、沖縄が強いられた"植民地状態"に、ずっと疑問を持ち続けてきた。

 

16年11月、木川は「大行社」を離れ、新たな民族派組織として「花瑛塾」を立ち上げたのであった。

仲村も当然のように創設メンバーとして参加した。。

「迷いがなかったかと言えばうそになる」と仲村は言う。

「尊敬できる先輩もいました。私を右翼として育ててくれた人もいます。20年も関わってきた組織に愛着もありました。それでも、どうしても、沖縄の現状に無関心でいられることはできなかったんです」

組織を取るか、自分の考えに忠実に生きるか。さんざん悩んだ挙句、仲村は後者を選んだ。

「民族派であるからこそ、基地問題を無視できないのです。沖縄だけに基地を押し付けているのは、日本人としてあまりに不誠実とも思いました」

沖縄が強いられた苦痛に「誠実」でありたいと考えた。

慣れ親しんだ組織や仲間よりも、それは右翼人として優先されるべきことだった。

愛国者としての立場

「花瑛塾」の設立趣意書には、次のような一文が記されている。

<神道信仰において国土山川草木は神の生みの子であり、それは人間も同様です。

そうであれば神と人と自然は本質において繋がっているのであり、人間の欲得の為に安易に破壊してよいものではありません。

これは原発問題や基地問題にも通底することであり、神道信仰と神道精神に立つ時、自由民主党の財界優先政治にも対決しなければならないはずです>

右翼の源流ともいうべき自然信仰が、そこにはある。

また、愛国者を自称しながら、米国に追従するだけの政府や右派に対する反発も隠さない。

塾長の木川は、私の取材に次のように答えている。

「琉球処分以降、沖縄では常に地元の人々の意思がないがしろにされています。

日米両政府に翻弄されてきた負の歴史も直視すれば、愛国者としての立場は自ずと定まります」

だが、そのような考え方は右翼の中にあっては異端でしかなかった。

「中国の脅威はどうするのか」

「左翼勢力を利することになるのではないか」

基地建設反対という立場から沖縄に言及すれば、そうした反応が相次ぐ。