骸骨道中膝栗毛   作:おt
<< 前の話 次の話 >>

14 / 15
お久し振りです!ちょっと何ヵ月ぶりか覚えてないですけどかなり久しぶりの更新です。
エタったと思いました?作者も思いました笑。

前回のあらすじ
モモン「戦争って言ってたのに、敵ワンパンで死んだやんけ!!」


12#幕間

コツコツコツコツと金属音が部屋に響く。

その音に反応した二人のNPCをモモンガは腰かけたベットの位置から視界に入れる。そして、気づかれないように小さく息を吐き王にふさわしい(と自分が思っている)威厳のある声で二人に話しかける。

 

「ナーベラルにコキュートス。私は今から少し出てくる。」

 

「はっ!ではお供いたします」

 

即座に平伏したナーベラルがモモンガの言葉にナザリックの下僕として当然の返答を行う。

モモンは一拍おき、力強く立ち上がると抑揚のない声で言葉を告げる。

 

「単身で行いたいことがある。供は許さん」

 

「しかし、御身に何かあった時に私たちが盾になって死ぬことが出来ません」

 

コキュートスが同意とばかりに頷く。

 

「ナーベラル…コキュートスお前たちの忠義は嬉しく思う。しかし、何度も言っているが私にとってもお前たちは大切な存在だ。軽々しく命を捨てる行為は慎め。これは命令だ」

 

命令という言葉に反応し、NPCが静かになる。しかし、表情は全く納得していないことが伺える。

 

「…今回、私が単身で動くのには理由が3つある。1つは、私自身の力がこの世界にきて変化していないか十全に確認することがまだできていないのでこれを行う際に一人の方が何かとやりやすい。2つは来訪者があった時、部屋に誰もいなくては怪しまれるだろうというところだ。3つ目は2つ目と関連するが三人で移動していると出国すると捉えられかねん。それはこの国の王としても不本意だろう。」

 

この国の王のことが嫌いなのか、モモンガの回答を聞いてなのかわからないがナーベラルが歯ぎしりをする。――なんか、ナーベラルが久々に怖いな…

 

「モモンガ様ノ考エハ確カニ理解デキマス。シカシ、何卒!ナーベラルカ私ドチラカ一人デモ供ニシテイタダケナイデショウカ!?」

 

「コキュートスよ。お前たちの心配は私とて好きで蔑ろにしたいわけではない。しかし、この世界はユグドラシルと差異が所々にある。例えばこの世界に来て、私のステータスが大きく上がっていたと仮定しよう。そんな状況で私が絶望のオーラⅤを発動してお前たちの身に悪影響がないと断言できるのか?」

 

コキュートスは下を見たまま顔を上げることが出来ない。それもそうだ、絶対の主人に確証もなく適当な誓いをすることは臣下として許されることではない。しかし、主人を一人にして何かあっては後悔してもしきれない。その二つの感情がコキュートスのなかで渦まき、コキュートスの首を重くしているのだ。

 

「安心しろ…そう長くは時間を空けない。ほんの…そうだな…2時間ほどだ」

 

ナーベラルやコキュートスとしては長すぎる時間だが、主人を説得することもできそうにない。先程とは打って変わり覇気のない返事しか二人は返すことが出来なかった。

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

「あぁぁぁっぁぁぁぁっぁ!!!!!」

「もぉ―――――!!qあsえふじこ!!」

 

アベリオン丘陵に奇声と誰に向けているかわからない怒号が響く。

その発信源はというと…豪奢なローブを羽織った骸骨…つまりモモンガであった。

 

魔法で作った全身鎧は解除されており、その肉のないご尊顔が顕わになっているが周りに生物がいないことは確認済みなので問題ない。一通り、叫ぶとモモンガは草原に倒れこみ、今度は声量を抑えてぶつぶつとひとりごちる。

 

「魔王ロール疲れた…。しかも、あいつらマジじゃん!!忠義が重い!重すぎるゥ!もう少しこうライトな感じでさ、接してくれな・い・か・な!いや、慕われるのは嬉しいんだけどさ…」

 

モモンガの精神は疲れ切っていたのだ。全く情報のない世界、忠義が重いNPC、引けない魔王ロール。

それを転移後、一時の休みなく持続した結果、モモンガのキチガイケージ(キチゲ)はMAXを振り切ってしまった。先程のNPCとの問答も事前に考えていた言い訳ストックをこの休息をえるために解放しただけにすぎない。

 

「はあ…盾になって死ぬことが出来ないってなんやねん!頭おかしなるでほんま。」

 

キチゲ解放で関西人でもないのにエセ関西弁を言いながらゴロゴロする。

 

「酒場で安い酒を飲んで泥酔したい…どれもできないけどな」

 

横でおろおろしているデスナイトは無視しつつ、モモンガは寝返りをうち仰向けになる。

 

「いや…あの子たちを導けるのは今は俺しかいないってのは分かっているんですけどね…待っててくださいね!建御雷さん、弐式炎雷さん。」

 

「ただ合流したときは小言に付き合ってもらいますよ…この調子だと軽く10時間くらいはいきそうなので覚悟してくださいね」

 

ある程度、ガス抜きしたモモンガはその後、口実通り、能力の実験をして宿屋に帰った。しかし、モモンガが実験をしていた場所は、その後アベリオン丘陵の亜人の間では呪詛の丘と呼ばれ大きな破壊痕も相まって生者が寄り付かない場所となる。…もし近づいていたら、モモンガ作成のデスナイトがいるため大抵の者は生きては帰れないのだが。

 

◆◆◆◆◆◆◆

絢爛豪華という言葉を体現した部屋があった。

その部屋の最も目立つ場所に二人がけのこれまた豪華な装飾が施された長椅子があり、そこに余裕をもって腰かける人物がいた。

「支配者」の風格を放ち、眉目秀麗という言葉が似あうこの人物こそ、バハルス帝国の現皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスである。

そんな彼のいる部屋にノックもせずにある人物が入室する。護衛である兵士が眉を顰めるがその行為も入ってくる人物――主席宮廷魔術師・フールーダ=パラダインであると判明するとその行為を取りやめる。

 

「厄介ごとですぞ」

 

入室した老人――フールーダが外見とは似合わない若さの残った声で言い放つ。

 

「どうしたじい」

 

「魔法で調査しましたが、発見は不可能でした。」

 

会話の中には主語が入っていないが、だれを指しているのかは明白である。

数日前に聖王国を襲った亜人の情報はすでに帝国が人間国家各国――法国は除くに潜り込ませた間者から得ていた。そして、その事件の解決に一役買った三人組。特に第5位階魔法を使用したナーベという人物を注視して――この三人組の調査をフールーダに命令していたのだが、発見できなかったということだ。

つまり、それは…

 

「じい以上の魔法詠唱者ということか?」

 

ジルクニフが意地の悪いからかったような口調で問いかける。

 

「魔法アイテムという線もありますが、その可能性もあるでしょう。報告では第五位階魔法を使用していたということなので、普段は隠しているだけで第6位階魔法の使用も可能かもしれませんな。…できれば道を切り開いたものであるといいのですが。」

 

声には渇望があった。フールーダの望みは自分を超える魔法詠唱者に師事することである。しかし、いつでも道を切り開く側であったフールーダを超える魔法使いは見つかっていない。唯一可能性のある、法国は信仰系の魔法詠唱者の国であるためフールーダの望みを叶えることはできないだろう。法国は秘密主義のため隠匿している可能性もあるが。

 

「制御のできる強者なら帝国に取り込めるように動くべきだな。その時に好きなだけ魔法談義を行えばよい。まあ、接触する前にできるだけ多くの情報を得ておきたいので情報収集は続けて頼んだぞじい。」

 

「それは素晴らしい考えですぞ陛下。では、陛下からの命令を続行いたしましょう。」

 

 

「皆、今回の会議の招集理由は理解しているな?」

 

スレイン法国の最奥。神聖不可侵の部屋に12人の人影があり、会議の進行係――風の神官長であるドミニクが口を開く。

「わざわざ、そんな確認を入れずとも理解していて当然じゃろうが。そんな愚者がこの部屋にいたのならわしが叩ききってやるわい」

 

年老いた顔に似合わない、可憐な中華服を身にまとった老女が苛烈な性格を隠しもしない口調で言い放つ。

 

「確かに、時間の無駄であったかもしれないですね、カイレ様。今回の議題は聖王国の亜人襲来を解決した三人組についてですが――単刀直入に聞こう。彼らは神であると思うか?」

 

ざわざわと会議室の空気が揺れる。今回の会議に参加したものは聖王国の件は認識していたが、まさかスレイン法国ひいては人類の安寧の為に最重要である単語が飛び出すとは思ってもみなかったからである。

 

「な…その三人組はそれほどの力を持っていたというのか?神の可能性を感じるほどの」

 

火の神官長が驚愕で声を震わせながら問う。しかし、そんな彼女と対照的に光の神官長が陰湿そうな細い目をさらに細めて風の神官長に言葉を投げかける。

 

「私が手に入れた情報では、少なくともアベリオン丘陵の獣王の撃破。第5位階の魔法の使用が認められたことのみだが…。確かに驚愕すべき内容だがこれなら漆黒聖典の幾人かでも再現は可能であろう」

 

そんな、懐疑的な質問を行う光の神官長にこの会議で最高齢の人物が考えた込んだように返答する。

 

「いや…確かに神というには証拠が足りていないが、十三英雄の様に最初は弱い神、いやプレイヤー様もいた。従属神様の可能性も捨てきれないじゃろうしな。それに突然に現れたというのが非常に気にかかる。」

 

「これは、皆さんに対する質問であり調査した風花の見解ではないということは理解してほしい。しかし、カイレ様の仰るように神…もしくは神に連なる方である可能性も浮かび上がってきている現在、どう対処すべきか。意見をのべてほしい」

 

「意見もなにも、少しでも可能性があるのなら接触すべきであろう!聖王国の一件を見る限り悪しきものである可能性は低い!それに第一席次であればその3人組が武力に訴えてもなんとかなるではないか!」

 

法国の軍を統べる大元帥が我慢できないとばかりに声を張り上げる。彼らにとって神とはそれだけの存在であり急いで接触すべき対象であるからである。しかし、法国の重鎮であるカイレが大きなため息をつき、反論する。

 

「情報が錯綜している段階での接触は危険じゃ。特にそれが法国…人類の命運を握るような存在であるなら尚更じゃ。少しでも行き違いの可能性を防ぐために情報を多く収集することは鉄則であろう?エルフとの戦争がうまく運ばないからと苛立ちが募ってないかね?」

 

エルフとの戦争を話題に出され、大元帥の目に怒りが灯るがカイレのいうことも一理ある。それに立場上、エルフとの戦争に手間取っている自分が人類の神器を身にまとうことを許可された人物に罵声を浴びせることは難しい。結果として大元帥は押し黙る。

 

「まあ、大元帥のいうことも理解できますがカイレ様のいう様に早期の接触は危険でしょう。それに、彼らが実力を隠していないとは限りません。私の経験上、飛びぬけた強者というのは実力を隠したがりますし…」

 

この会議では最年少である土の神官長が意見を述べる。彼は元漆黒聖典であり、その経験を踏まえての意見であるため説得力がある。

 

「ふむ、であるならまずは情報収集に努めるべきという意見を採用してよろしいかな?」

 

出席者からの反論・異論は見られない。

 

「では、風花を中心に情報を集め、次元の目などの大儀式の使用も行い情報を集めることを今後の方針とする。」

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

(けが人の俺まで呼び出すとはただごとじゃねーな)

 

包帯をぐるぐる巻きにした人物が、首都ホバンスの王城を早足で歩いていた。先程まで寝ていたところを急用だとたたき起こされたため機嫌は悪いが素直に従った。

粗暴な彼にしては珍しく素直だが理由は二つある。一つは自分をたたき起こすほどの重要事項を決定する場合、さすがに参加しなくてはまずい。時々、会議をふける彼ではあるがあんな大ごとの後である為、さすがに空気を読んだ。

そして、もうひとつ…

 

(ケラルト・カストディオは、怒らすとまじで怖ぇからな…)

 

今回の会議の招集者がケラルト・カストディオであった為である。昔、オルランドが増長していた時に、パベル・バラハに敗北した話は聖王国内の兵士には知れぬものがいないほど有名ではあるが、その後にオルランドとケラルトは戦闘を行ったことがある。

内容は些細なことであったが、まだ少し増長が残っていたオルランドは魔法詠唱者など恐るるに足らないと意気込んでケラルトと口論の末に決闘を行った。

結果…大惨敗であった。パベル・バラハとの決闘は自分の成長の為の一戦と位置付けられたが、ケラルトとの一戦はいまだにオルランドのトラウマにしかならなかった。

 

(天使をあんな使い方するかね普通…おっといかん!急がねーとな)

 

恐怖で止まりそうになる足を動かして、ギリギリ時間内に会議室の前に到着する。

 

「班長オルランド・カンパーノです!到着したので入室していいですか!?」

 

了解の返事のあと、部屋に通されたオルランドは違和感を覚える。

会議室が使用される際の人数は少なくても6人、多くて20名ほどの大人数で使われることが多い。しかし、部屋には入室した自分と中央に座したこの国の王カルカ・ベサーレスとその横に控えたケラルト・カストディオのみであったからである。

 

「全く…聖王女様のいるであろう部屋に入る時くらい綺麗な言葉が使えないものかしらね。いいですかではなく、よろしいですかでしょう?」

 

ケラルトが入室してきたオルランドに早速、あいさつ代わりと嫌味をかます。オルランドは冷や汗が落ちる感覚を覚えながら申し訳ない、次から気を付けるという旨のことを綺麗な言葉に着飾って述べる。何度も行っていることなので慣れたものである。

 

「もうケラルト、カンパーノ班長をあまり責めてはだめよ。それよりも本題に入りましょう。今回、あなたを呼んだことは他でもありません。ケラルト彼に説明してあげてもらえるかしら」

 

ケラルトが承ったとカルカに礼をしオルランドに向き直る。言葉に棘があるケラルトよりもカルカから本題とやらを聞きたいが仕方ない。と覚悟を決め、ケラルトの言葉を聞く態勢をとる。

 

「今回、国の窮地を救ってくださった三人組のことなのだけどもう一度情報を聞き取っておきたいと考えた結果、一番あの方々と接した時間が長いあなたに白羽の矢が立ったということよ。理解できたかしら?」

 

確かに、自分が呼び出された理由は理解できた。しかし…

 

「あの三人組の情報は報告した以上のことは分かっていないですよ?これ以上、おr…私に何か聞きたいことがあるんですか?」

 

すでに報告は行っており、その報告後は大して彼に関わったことはない。

 

しかし、オルランドの疑問を予測していたのかケラルトが瞬時に反応する。

 

「今回で言うところの情報というのは彼らの個人的な情報よ。例えばリーダーであると思われるモモンの好物や家族の話などね…。今回の件の慰労や褒美の授与を行うために式典を開く際に主賓である彼らには気を遣うのは当然でしょう?まさか、そういったことを私達が本人に聞くわけにもいかないでしょうしね」

 

説明に多少の違和感はあったが、納得はしたオルランドが返答する。

 

「そういうことなら、了解しや…しました。確か、食事については宗教のきまりが…

 

ーー

 

「カルカ様…気を落とされないでください。」

 

オルランドの退室した部屋でカルカは某ボクシング漫画(明日のジョー)の主人公が如く、椅子の上で燃えつきいた。目は完全にレイプ目である。

 

「まっまさか…恋人がいたとは…えっえっ!?ならナーベさんのあの瞳おかしくない?完全に恋している顔よ?あれ!」

 

ケラルトが困ったような顔で狂乱したカルカに相槌を打つ。

 

「ですが、モモン様本人は肯定自体はなさらなかったということなのでナーベの勘違いの可能性は捨てきれませんよ?それにもし恋人がいたとしても転移してしまったことで昔の相手と割りきってくれるかもしれません。…とにかくそのあたりは私がそれとなく探りを入れてみましょう。」

 

ふぅーとケラルトは大きく息を吐き言葉をそこで区切る。そこでジト目になりカルカに念を押す。

 

「ですので、式典の前に勝手に行動はとらないことを約束していただけますか?」

 

カルカがギックゥという効果音が付きそうなリアクションをとる。

実は今回の聞き取りが行われたのはモモンのことが気になりすぎているカルカを落ち着かせるために開かれたものである。オルランドに説明した側面を含んでもいるが9割以上の目的はそこである。

 

(この忙しい時期に公務は何処か上の空…なんて状況は勘弁してほしいのだけれど)

 

あたふたしているカルカが落ち着くのを待っている間、ケラルトは思考を深める。

 

(でも、もしもモモン様がカルカ様と婚姻なされば聖王国にとっては大きなプラスといえるわね…あの強さは勿論、将来的に生まれるであろうご子息は将来有望であることは間違いないだろうし)

 

しかし、ケラルトの頭を悩ませている問題がもう一つ。姉の様子があの事件後少しおかしい。今までも鍛錬の時間は大きくとっていた――頭が良くないので平時の仕事がそれほどないが、最近は1日の大半を鍛錬に費やしているらしい。今は復興の時期で単純な肉体労働やキャンペーン的な意味でも聖騎士団団長の仕事は多い。なので平時よりも働いてほしいのだが…。

 

(はぁ…。式典が終わったら、お姉さまの悩みも解決に動かないといけませんね)

 

いつもは、頼れる女王であるカルカと二人で問題に当たって来たが今回に限りその女王もそっちサイド(ポンコツ)である。面倒なことになってきたと頭を押さえながら落ち着いてきたであろうカルカと話し合いを再開した。

 




先週、やっと13巻見れたんですけども…まさか、獣身四足獣と魔現人がでてくるとはね…思ってもみなかったですよ笑。

miikoさん、スペッキオさん大量にあった誤字報告ありがとうございます!







※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。