ー前回のあらすじー
オルランド「パーティーのはじまりだ!!」
レメゼン 「パーティーのはじまりだ!!」←new!!
左翼(将軍2人×軍VS山羊人900)
ふぁー、と大きな欠伸がその人物の口から漏れ出す。それも仕方がないと言えよう。
本日の天気は雲一つない晴天であったし、その余韻は日も暮れかかっている現在の時間まで残っていても誰も文句は言えない。
しかし、この人物の動作を仮に横で眺めるものがいれば満場一致でその人物は普通とかけ離れた人物と裁定を下すことだろう。
なぜなら、その人物――ボーザンのほんの2,3m先には山羊人と人間の決死の殺し合いが展開されているのだから…。
ボーザンは正直にいうと退屈していた。彼は今回の侵攻で捕虜の山羊人を指揮・統括することを偉大なる魔法詠唱者であるワッカから直接、指示された。
魔法の才能に溢れた自分の行使できない第5位階魔法を使いこなす人物からの指令は喜んで承ったが、目の前の戦いは魔法の行使もほとんどのない低俗な殴り合いであり正直見てても退屈しのぎにもならない。
(山羊人どもは、家族を人質に取られているから反乱の可能性はほぼなし。まあ、あってもこのレベルなら余裕で対処できる…。ああ、暇!)
ボーザンはもう一度、大きな欠伸をする。
(なんとか合法的に、ワッカ様の戦線に介入できないかなぁ。まあ、さすがに無理か…。)
ボーザンは、午後の授業を受けている学生の様に眠気と戦いながらも血生臭い戦場を視界に入れなおした。
◆◆◆◆◆◆◆◆
中央広場(カルカ+カストディオ姉妹などVS魔現人300+山羊人400)
こんなはずではなかった。ワッカの心境は焦りとイラつきがごちゃまぜになり、上手く思考がまとまらないほど乱れていた。
(な、なぜ下等な人間ごときにドドリアンが瞬殺される!?こんなの絶対おかしいだろ!!)
ワッカは人間のなかにも強者がいることは認めてはいる。しかし、それでも下等生物の枠は出ることはないと考えておりまさか自分なみに強い人間がいるなど夢にも思わなかった。
「はっはーん。さっきの多少は骨があったやつしかまともな前衛がいないのか?山羊人をぶつけるだけでは肉壁にもならんぞ!」
目の前に迫る人間の鳴き声が癪にさわる。
「黙っていただけますかね!!人間風情が!!第4位
ワッカの目の前に戦士姿の骸骨が3体並ぶ。大抵の敵なら問題ない前衛だがドドリアンを屠った相手では時間稼ぎも十分にはできないだろう。
「喰らえ!!我が雷を!
ワッカの両手から龍が波打つように雷が飛び出す。狙いは勿論、大剣で山羊人を切り裂いているレメディオスである。しかし、その雷撃もレメディオスに届くことなく間に天使が入り込み身代わりとなる。
「姉様!!相手の魔法は天使を身代わりにしますので、早くそこの氷炎雷をたたいてください!!」
ワッカのイライラが加速する。この援護が非常に厄介なのだ。仮に1対1の状態でこの人間と立ち会えば、ここまで苦戦することはないだろう。
様々な種類の魔法を使いこなすワッカならば多少、地力が上の相手でも勝利をつかみ取ることはさして難しいことではない。
しかし、この援護があるのでは話は別だ。このまま、戦闘が続けば間違いなく自分が負ける。
(このままでは、犬死するかもしれませんねぇ。逃げますか)
プライドもへったくれもない、ワッカの選択肢ではあるが、人間社会ならともかく野生の世界で生きていく中で逃げというのは重要な選択肢だ。
野生の世界に身を置く生物としてこの判断は間違えていない。
(しかし、私の龍雷を耐えきれる天使となると第5位階
しょうね…。なかなか人間も侮れない生物であるみたいですね…。)
逃げるという選択を確定させたワッカの思考に冷静さがよみがえる。
(まずは、目くらましでもしますか)
「<
今回も天使が身代わりとなるが、
(今回の天使はあちらの王の魔法ですか。人間の王風情でも第3位階程度の魔法を唱えることができるということは…、少し人間の強さを侮っていたようですね。)
人間の違いなどワッカには見当はつかないが、頭に王冠らしきものがついていたことから王と目をつけていた人間もある程度の魔法を使えることに驚く。
(残念ですが今回、王を誘拐するのは無理そうですねぇ…ん!?私の警報が反応している!!これは…)
「ふっふっふっ。あの考えなしが役にたつとは思いませんでしたが、この乱入はかなりの幸運と思うべきでしょうね」
ワッカは当初の聖王国侵攻計画の時点で人間の戦力など眼中になかった。
よって、ワッカが警戒していた戦力は2つ。獣王ベスティアとその弟ベッド。
この2体の強襲を懸念しての
「はぁっはぁっ!あそこにいるのは強力な獣身四足獣ですよ!!増援に行かなければあの戦力では厳しいかもしれませんね!!」
「
意識を誘導しつつ攻撃も忘れずに行う。相手も先程の様に余裕をもって対応するのは困難だろう。またしても天使が盾になるが、攻撃側の人間の手に迷いが見える。
(このまま、攻撃しつつ隙をみて<
逃走というのはあくまで最後の手段であり、できるのなら取りたくはない。ワッカも今回の侵攻でドドリアンという右腕を失っているのだ。
それなりの対価は得たくなるのは当然の心理である。そして、さらにワッカの幸運は続く。
「山羊人の増援だ――!!左翼戦線の山羊人が現れたぞぉ!!」
どうやら、ボーザンに任せた戦線はうまくいったらしい。このタイミングで増援がくるのはやはりついている。とワッカは歓喜する。
「先程の余裕はどこにいったのですか人間共!!こちらからも反撃をさせていただきましょうかね!!」
ここまでの戦力がそろえば先程の状況から脱却するどころか、形勢は逆転したといっても過言ではない。そう確信したワッカの強気な発言に大剣をもった人間が後ろに飛びのいて笑う。そう、笑ったのだ。
「なっ!なにが可笑しい!!」
ひ弱な人間に強者がいたことは認めよう。しかし、アベリオン丘陵の亜人の中でもトップクラスの実力者達が敵に回った戦場で笑う余裕があるだと!気でも狂ったのか!?心の中で早口になったワッカにレメディオスが答え合わせとも言いたげに語りかけるように口を開く。
「いや、許してくれ…ここまで上手くいくとは思っていなかったものでね…」
…
――<
しかし、その威力故に連発は不可能であり使用にも相応の準備時間と使用者の体力を必要とする。
今回の亜人達の侵攻の規模は、前代未聞であり真っ向から殲滅戦を行えば相応の時間と途轍もない犠牲を払うことになるのは想像に難くない。
特に城壁の防御機能を最低限に設定している現在の状況が長引けば侵攻中の亜人以外の種類の敵による二次被害が発生するので聖王国側は短期決戦を行う必要が出てくる。
――つまり、この戦いで一番重要なのはカルカが<最終聖戦>をどのタイミングで放つか。ということになるのだ。
「早すぎても味方が安全な場所まで避難できず、遅すぎても亜人達にこちらのリソースが減らされる…かなり難しい調整でしたが上手くいったみたいね、ケラルト?」
カルカが現在も必死に山羊人を誘導するように戦う将軍や軍人の位置を確認しながら口を開く。
右翼で担当しているはずの獣身四足獣が乱入してきたのは予想外だがこのまま一緒に攻撃できると考えれば都合はいい。
「ええ、そうですねカルカ様。しかし、あの魔現人はかなり強いですね。第五位階天使召喚で召喚した天使が一撃でやられるとは…」
「確かに真っ向から当たりたくはない敵でしたね…さて!準備は完了しましたので発動しても大丈夫、ケラルト?」
「はい。先程、伝言にて各部隊は<最終聖戦>の範囲外に退避が完了したと報告がありました!しかし…多少の犠牲を払えば亜人達を駆除する数も増えたのでは?」
<最終聖戦>の攻撃は広範囲に及ぶ。
その範囲から退避するのは一瞬では不可能である。
結果、事前に少しずつ隊員たちは範囲外に退避しているのだがそうすると<最終聖戦>の範囲内にはいる亜人の数も自ずと少なくなってしまう。
「ですが、必死に祖国をまもる彼らを私の術で消滅させてしまうことは私にはできません。それに彼らなら自分達の力で亜人に打ち勝てると信じています。」
王としては相応しくない、合理的でない理由だ。
このようなカルカの性格を隣国の皇帝であるジルクニフは「王のくせに綺麗すぎる」と毛嫌いしているがケラルトは違う。
むしろこの優しき王であるからこそ自分も姉も忠義を尽くすのだ。
「ええ、答えは知っていましたが念のための質問ですよ…本当にカルカ様はお優しい…
では!!カルカ様!<最終聖戦>の発動をお願いいたします!」
カルカが頭にかかる王冠に手を触れる。
――その瞬間、中央広場が大きな光に包まれる。
槍を構えた山羊も魔道の徒もその光の前では平等に灰になる。そして光が収束したその跡には数えられるほどの者しか息をしていなかった。
…
何が起こった…?ワッカは崩れてしまった左手を見ながら一瞬の間思考する。
人間の王が放った光が魔法的なものと察知したワッカはすぐに近くにいた山羊人を盾にすることを選択した。
ワッカの本能が告げてきたのだ――あの光はまずいと。結果は見ての通り、左手を失いそれ以外にも致命的ではないにしろダメージを受けてしまっている。
(まずは、距離をとり回復に従事せねば…このまま、人間共に攻撃されるのは洒落になりませんからね)
幸いというべきなのか、ほとんどの人間達はあの光の範囲外におりかなり距離がある。
「ワッカ様!!」
ボーザンが<
ボーザンは光の範囲外にいたらしく無傷である。
「すぐに治療を!!<
第4位階と治療魔法ではかなり高位の魔法だが勿論、なくした腕が再生することはない。
しかし、即座に傷は塞がり出血や痛みはなくなった。
「しかし、見たこともない範囲魔法でしたね…ワッカ様。あの頑丈なベッドも満身創痍のようでそこに倒れています。」
ワッカがボーザンの指さす方向に目を向けると確かに全身ボロボロで倒れている
あの光をもろに喰らっても息があるしぶとさに感心するがあの体では逃げ切ることは叶わないだろう。
「よし!!敵は致命傷だ!!今のうちに畳みかけるぞ!!」
遠くから癪に障る人間の鳴き声が聞こえる。軽い砂けむりで確定はできないがあの大剣を振り回していた人間だろう。
「ボーザンさん、今回は撤退しますよ!私に…
「グォァァァァァァァラァァ!!」
ボーザンに指示を飛ばすのを遮るように雄たけびが戦場に響く。発生源と思われる方向を見ると…そこには人間を吹き飛ばす怒り狂った獣王がいた。
◆◆◆◆◆◆◆
右翼(バラハ・カンパーノ・パルテナン・冒険者VS半人半獣)
ベッドがオルランドを前に敵前逃亡した後も戦いは聖王国側の優位に進んだ。
聖王国側の誰もが勝利を確信し始めた時…それは現れた。
最初に異変にきづいたのは突撃部隊の隊長であるレメゼンだった。
城門の方角から物凄いスピードで接近する物陰があったのだ。
それがレメゼンの攻撃範囲に入るのにそれほど時間はかからなかった。
長刀をトリッキーな動きで構え、そいつに振るう。その斬撃は武技ものせた強烈な一撃でありレメゼンの技でも上位に入る攻撃力である。
なぜ、レメゼンは初手から大技を持ってきたのか?
――それはレメゼンの攻撃を受けるその相手がアベリオン丘陵ひいては聖王国まで名を轟かせている獣王という強大な存在だからである。
(今の攻撃を受けても無傷!!噂通り硬い皮膚をしているみたいだねぇ)
「バラハ兵士長とオルランド班長に伝えろ!!“獣王”を確認!!至急、応援を要請する!!」
レメゼンが真剣そのものといった指令を飛ばす。
いつもお茶らけているレメゼンの真剣な声に周りの兵にも緊張が走る。レメゼンは集中し獣王の一挙手一投足に注目する。
そんな緊張感を上げるレメゼンを前にしている獣王は鼻を鳴らすだけで警戒する素振りは見えない。
(俺ごときに構える必要もないってかぁ!?)
確かに相手は強い。認めよう。しかし、自分もかなりの実力者であり今までに多くの亜人を屠ってきた。
そのなかには亜人部族の頭領も勿論含まれている。
そんなレメゼンに獣王の態度は勘に障るものだった。
そうこう、思考しているうちに獣王が無造作に攻撃を仕掛ける。
(確かに早いが…ただのパンチだな)
こちらを嘗めているのか獣王の攻撃に工夫は見られない。
「<武技・不落要塞>」
レメゼンが武技を発動する。
<不落要塞>は<要塞>の上位版の武技であり一握りの天才しか使用することはできない。
このことからもレメゼンがどれだけ戦士として優れているか伺うことができる。
(なにぃ!!)
しかし、そんな高等な武技にも弱点はある。
例えば今回の<不落要塞>はタイミングを合わせなければ攻撃の威力を殺すことはできない。
レメゼンがそのタイミングの計算違いをすることはないが、獣王はパンチの速度を遅くするフェイント仕掛けてきたのだ。
「ごふぅっ!!」
レメゼンの体が後方に大きく飛び何回転も転がる。
それをみた獣王はほう…と感心したような声を挙げ、確認するように声を出す。
「くっく、完璧にフェイントは成功したと思ったんだがなぁ…。インパクトの瞬間に後ろに飛び、しかも回転で勢いを殺してるねぇ。人間にしてはかなり出来る野郎みたいだな」
そんな感心している獣王ベスティアに複数本の矢が飛び、ベスティアの硬質化した皮膚に弾かれる。
続いて剣を両手に構えた人間がベスティアに斬りかかる。
勿論、ベスティアはそれを受け止めそいつを殴り飛ばす。
人間は後ろに飛ばされるが、勢いを殺し切れていないのか、バランスを崩して着地する。
「おいおい、レメゼンの救援支援に呼ばれてきたがこいつ獣王か…。かなり大物じゃねぇか!!」
大物?と言葉の意味を計りかねるベスティアにもう一度、矢が飛んでくる。
今回は先程と異なり、複数ではなく1本のみである。これも鋼と化した皮膚でベスティアが防ごうとする。しかし…
(これはまずい!!)
寸前で身を捩らせ弓矢を避ける。多くの戦闘をこなしてきたベスティアは勘づいたのだ、今の攻撃は自分に通ると…。
「おーおー、旦那の弓は相変わらず凄いもんですなー」
剣を両手に持つ人間が声を挙げる。はしゃいでいるような声に応答が聞こえる。
「あまり、はしゃぐなオルランド。こいつはかなり強い。3人でかかっても勝てるかは5分5分ってところだろう。覚悟して挑むぞ」
ギィーーン
今度は後方から接近してきた斬撃にベスティアは蹴りで合わせる。先程、吹き飛ばした人間だが威力を殺したからか、思っていたよりもダメージは負っていない。
「オルランドさん、バラハ兵士長、連携して倒しましょう!!」
「くっーくっくっく、はぁっははっは!!」
ベスティアが耐えきれないといったように笑う。今まで見るからにローテンションだった獣王の変貌に緊張状態の3人も怪訝な顔をする。
「素晴らしい!!素晴らしいぞ!お前ら3人で俺に勝てる確率は30%と言ったところか?ちょうどいいくらいだな!テンションが上がるぜぇ」
獣王が動く。その動きは速く、オルランドですら反応にコンマの遅れが生じる。高レベルの戦場においてコンマという遅れは生死に直結する。
結果、オルランドの防御は少し遅れベスティアの一撃を受けてしまう。オルランドの巨体が宙に浮いたのと同時にベスティアが言い放つ。
「決死の覚悟でかかってこい!!」
…
そこには、多くの人間が転がっていた。そのなかにはパベル・バラハ、レメゼン・パルテナン、オルランド・カンパーノの聖王国9色も例外なく含まれている。
そんな中、半人半獣が50体程その場に到着する。
他に異形の姿はない中、彼ら半人半獣の目的はただ一つこれら人間の死体…または負傷して動けない人間を持ち帰り食料にすることだ。
そんな彼らが作業をする中、彼らのうちの一体が倒れる。
他の半人半獣も異変に気付き警戒するがそれをあざ笑うように次々と半人半獣は倒れていく。
やがて原因を見つけられない中10体目が倒れた時、彼らはその場を逃げるように去った。
「しかし、ひどい目にあったな」
憔悴したといったトーンでひとりごちながら殴られた下腹部を摩る。咄嗟に装備していたポーションを使わなかったらどうなったか考えたくもない。
パベル・バラハは、そのまま倒れているレメゼンとオルランドにポーションを振りかける。
特にオルランドの負傷はひどく、右腕があり得ない方向に曲がっているし下手すると死んでいるかも…と思えるレベルである。
(まあ、息はある…このタフネス馬鹿なら復活できるだろ)
かなりぞんざいな扱いだが、パベルがオルランドの生命力を認めている証拠でもある。
「俺は運が良かったのか?」
パベルは自問する。
ポーションを使う体力があったのも幸運だが、一人だけ倒れた位置が離れており回収にきた半人半獣を追っ払えたのも幸運だった。もしかしたら、娘のくれた人形の加護かもな…とか考えた後、獣王の強さを思い返す。
(しかし、獣王…かなり強いな…)
獣王との闘いは聖王国9色として最高峰の戦闘力をもつ三人でも勝てなかった。
確かに鋼の肌を持つ獣王と物理特化の三人では相性が悪かったのもある。
しかし、それを込みでもかなりの強者だった。
(聖王女の戦線に獣王が参戦したら厄介だ…何よりあそこには娘と妻が従軍している。オルランドとレメゼンがある程度回復したら俺だけでも増援に向かわなければ…!)
◆◆◆◆◆◆◆
レメディオスは、荒れ狂う獣身四足獣の攻撃を受けながらも混乱した思考を組み立てる。
(獣身四足獣は、右翼に一体だけだったのではないのか!?しかも獣王とか聞いてないぞ!)
中央戦線の戦況は芳しくないと言える。
まず、主力の一人のカルカは<最終聖戦>の発動により動くことが出来ず、その無防備なカルカの防御に専念しなければならないのでケラルトもレメディオスの援護に意識を本格的に向けられないでいる。
他の神官や聖騎士も獣王が連れてきた半人半獣の対応でそれどころではなく、実質、獣王をレメディオスの一人で抑えている状況である。
「おぉい!ワッカ!てめー、助太刀してやるからベッドの治療にも人員を割け!!ベッドが死んだらてめえも殺すからな!!」
獣王が吠える。
半分後ろを向き隙だらけに見えるが、攻撃を誘っているとレメディオスの勘が告げるため下手な攻撃はしない。しかし、獣王は強い。
接近戦で倒すには、かの王国戦士長が王国の至宝を装備した実力と同程度なければ厳しいと言える。
レメディオスにそれほどの実力があるかというと…本人は否定するだろうが、ない。つまり、均衡はいつ破られてもおかしくないのだ…
「ぐふっ!」
レメディオスが聖剣で獣王の一撃をガードする。しかし、2撃目を喰らってしまう。
これはレメディオスのプレイが間違えていたわけでなく実力の差なのだ。援護のない今の状況ではある意味、必然の結果と言える。
しかし、今回はもろに入ってしまいレメディオスが気を失い飛ばされた先で倒れてしまう。
「誰か!!姉様が気を失いました!救護に向かいなさい!」
ケラルトが神官団に指示を飛ばす。
レメディオスは聖王国の最高戦力であるため皆必死に守りに向かう。
しかし、ケラルトは判断ミスを犯した。
なぜなら、最大戦力よりも重要なこの国の王の元に獣王が足を動かしているからである。
しかし、このことはケラルトが悪いとも言い切れない。亜人は人間の王だとか社会的立場は考慮せず、基本的に戦闘力が高いものを重要だと考える傾向にある。
普通の亜人であれば最善手であったが今回は最悪手となってしまった。
そのことに気づきケラルトの顔色から血の気が引く。
「くっ!!<
援護を呼ぶ暇もない接近に防御魔法で対応する。しかし…
「ふん!!ふん!!」
一撃でひびが入り、二撃目で粉砕される。
(こんなもの、どうすればいいのよ…)
ケラルトは第5位階まで使用できる信仰系魔法詠唱者である。しかし、魔法詠唱者は距離を詰められると弱い。今のケラルトにできることは、二撃で破壊されるバリアを作ることだけである。
「ケラルト…あなたは逃げなさい…相手の狙いはどう見ても私なのだから…」
カルカが悟ったような声でケラルトに語りかける。
しかし、そんなことできるはずがない。魔法の障壁を作るのにもいつか限界はくる。
自分にできるのは2分も持たないであろう時間稼ぎだけだと考えると絶望感がケラルトを襲うが他にできることはない。
しかし、ケラルトの稼いだわずかな時間は聖王国の運命を変えた時間だったといえる。なぜなら…
ベキィーーン!!
空から降ってきた戦士が獣王の攻撃をその大剣で受け止める。
「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
漆黒の英雄が駆け付けるのに必要な時間だったからである。
原作のモモンさんがイビルアイを助けるシーンは最高だよね…マッチポンプだけど
アニメもそろそろ、そのシーンを回収するとこまで迫ってるね…放送まで待ちきれねーぜ!!
miikoさん誤字報告ありがとうございます。